平成25年度龍谷仏教学会学術研究発表会 発表要旨
ガンダーラ仏三尊像にみられる尊名
一一『大阿弥陀経』所説の阿弥陀仏との関連について一一
壬 生 泰 紀
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氏によって,台座にカローシュティー銘が刻まれ たガンダーラの仏三尊像(右脇侍欠損)[
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所 蔵]が紹介された。Brough
氏は,台座の碑文を“b
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との両氏は,Brough
氏がα
mridahaとした 碑文は,正しくは αmridaeと読むべきであり,阿弥陀仏を示す尊名ではな く,‘不死(=浬繋)のために'とし寸意味である, という見解を提出した。 しかし近年,辛嶋静志氏によって言語学的側面よりBrough
氏のような理解 が支持され,現在では,再ぴ当該仏三尊像を阿弥陀三尊像とみる説が優勢で あるといえる。 きて,阿弥陀仏は主としてAmitabha/Amitayus
という尊名でサンスクリッ ト文献中にあらわれる。一方,Brough
氏は,碑文中のAmridaa(
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は阿弥陀仏であるとした。また辛111,鳥氏は,このAmridaa
という語形 は A m
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のガンダーラ語形Amitaha/
串Amidaha
がamrta
に結びつけられて解釈された形である,と指摘した。では,いかにして
Amitabha
がamrta
と結ぴつけられ, A mr
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と解釈されたのであろうか。そこで,本発表では, <無量寿経〉の最古訳『阿禰陀三耶三仰薩棲仰檀過 度人道経.!I
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:以下,『大阿弥陀経』と称す)所説の阿弥陀-ガンダーラ仏三尊像にみられる尊名 仏に関する記述を手掛かりとして,ガンダーラにおいて阿弥陀仏が