69 学 会 〔東女医大誌 第64巻 第10・11号頁1037∼1038平成6年11月〕 東京女子医科大学学会第300回例会
シンポジウム 血栓・止血の最近の話題一診断と治療を中心として一
日 時 会 場 司 会 平成6年11月10日(木)午後4:00∼6:30 東京女子医科大学 臨床講堂1 武田佳彦教授(産婦人科学),溝口秀昭教授(血液内科学) 1.血小板減少症と増加症 診断と治療一・……・…………・………・ 2.虚血性脳血管障害と血小板機能 血小板機能と抗血小板療法を中心として 3.虚血性心疾患と凝固線溶系 抗凝固療法および線溶療法を中心として …・ 4.産婦人科領域における血栓症 抗リン脂質抗体症候群を中心として ……・ 5.糖尿病と血栓症一糖尿病性壊疽を中心として一………・・………・……・ 6.血栓症の画像診断 最近の進歩一………・………・………・・…・………・・… …・・…… i血液内科学)溝口秀昭 …… i神経内科学)内山真一郎 ・・…… i循環器内科学)岩出和徳 ・・ i第二病院産婦人科)安達知子 ・…・…… i第三内科学)中谷文夫 ……・…・ i放射線医学)成松明子 1.血小板減少症と増加症一診断と治療一 (血液内科学) 溝口秀昭 血小板数の正常範囲は15万∼35万/μ1であるからそ の範囲以下であれば減少症で,その範囲を超えれば増 加症である.今年トロンボポエチンが発見されたので 種々の疾患の病態が一層明らかになろう. 減少症の診断と治療:減少の起こる機序は,⑦骨髄 での産生の低下,②末梢での破壊の充進,③脾の貯留 である.まず直接法で算定し,偽血小板減少症でない ことを確認する.ついで,骨髄所見から産生の低下, DIC, SLE, TTPの所見から破壊の万進,肝機能異常 や脾腫から脾の貯留を診断する.それらの所見がなけ ればITPである.ITPにはステロイド剤が専ら使われ るが,脾摘,γグロブリン大量療法なども行われる. TTPに血漿交換が用いられ,著効を示している.抗リ ン脂質抗体症候群による血小板減少は血栓を起こすの で注目されている. 増加症の診断と治療:全て産生の充進による.反応 性の増加と骨髄増殖性疾患(MPD)による増加がある. MPDによる例が治療の対象になる. 2.虚血性脳血管障害と血小板機能一血小板機能と 抗血小板療法を中心として一 (神経内科学) 内山真一郎 NINDSの脳血管障害分類第III版によれば,脳梗塞 はatherothrombotic, cardioembolic,1acunarの3っ のclinical categoryに分類される.atherothrombotic strokeとその前段階であるTIAではアゴニストおよ びずり応力による血小板凝集能の下町,血小板放出因 子の増加,血小板内遊離Ca2+濃度の上昇など血小板活 性化が認められるが,lacunar strokeではこれらの所 見に乏しい.また,cardioembolic strokeでは血小板 寿命の短縮や血小板融解率の増加など血小板の消費・ 破壊がみられ,病型による血小板動態の相違が示唆さ れる.血小板凝集能や放出因子と再発との問には有意 な相関があり,これらの検査は抗血小板療法のmoni− torに有用と考えられる. Antiplatelet Trialists℃oL Iaborationの最新のmeta−analysisによれば,脳梗 塞・TIAの再発はaspirinやticlopidineなどの抗血小 板療法により明らかに減少することが判明したが,厚 生省の班研究では抗血小板薬によるlacunar stroke の再発予防効果は証明されなかった.今後,血小板凝 集のmultipathwayや且nal common pathwayを阻害 する薬物がより有効な抗血小板薬として臨床応用が期 待される. 3.虚血性心疾患と凝固線溶系一男凝固療法および 線溶療法を中心として一 (循環器内科学) 岩出和徳 近年,虚血性心疾患とくにacute coronary syn− dromeと呼ばれる不安定狭心症および急性心筋梗塞 症は,その病態に冠動脈血栓が重要な役割を占めてい ると認識され,抗血栓療法がさかんに行われている. 今回,acute coronary syndromeの凝固線溶因子の変 化を検討し,その意義および抗血栓療法施行例ではそ の変動を検討した. 一1037一70 凝固能の指標としてthrombin−antithrombin III complex(TAT)の検討では,不安定狭心症(UAP) および急性心筋梗塞症(AMI)は安定狭心症(SAP) に比し明らかに凝固充進状態にあった.UAP中,TAT 値が高値を示した例は,冠拡張薬に抵抗する症例が多 く,このような症例には抗凝固薬併用の適応を考慮す べきと考えられた.また,AMIに対する線溶療法は, 線溶薬投与によりplasmin生成の増加,およびplas− minogen activator inhlbitor−1の減少,またD−dimer の増加から線溶充進に伴う血栓溶解の存在が示唆され た.線溶療法の問題点の出血性合併症についても述べ る. 4..産婦人科領域における血栓症一抗リン脂質抗体 症候群を中心として一 (第二病院産婦人科) 安達知子 抗リン脂質抗体(antiphospholipid antibodies: APA)は血栓症のリスク因子として知られているが, 現在産婦人科領域では反復流死産の原因の1つとなる ことが知られており,このほか,初期流産,胎児発育 障害,重症妊娠中毒症,子宮内膜症,産褥または手術 後下肢深部静脈血栓症などとの関係が報告されてい る.本シンポジウムでは,APAの測定法,抗リン脂質