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<教育講演 4―2>多系統萎縮症の変性のはじまりは神経細胞からかグリア細胞からか
多系統萎縮症の変性のはじまりは神経細胞からか
グリア細胞からか:グリア細胞
山田 光則
(臨床神経 2011;51:843) Key words:多系統萎縮症,グリア封入体,グリア細胞多系統萎縮症(multiple system atrophy,MSA)は,線条 体・黒質系,オリーブ核・橋核・小脳皮質系,ならびに自律神 経系を主体に神経細胞死が生じる神経変性疾患である.神経 細胞変性の病態機序は未解明であるが,グリア細胞(主として オリゴデンドログリア)の胞体内に嗜銀性の封入体(glial cy-toplasmic inclusion,GCI)が形成されることが明らかにされ, MSA に特異的な病理診断価値の高い病的構造物と考えられ ている.GCI はヘマトキシリン・エオジン染色で淡いピンク 色に染まり,高倍率の検鏡で検出可能であるが,Gallyas 渡銀 染色やα-synuclein 免疫染色の方が容易に観察でき,烏帽子 状と表現される独特の形態を呈している.α-synuclein 陽性の 構造物は変性部位における神経細胞の核・胞体にも観察され ることから,神経細胞とグリア細胞に共通した分子病態の存 在が示唆されるが,興味深いことに Purkinje 細胞には確認さ れていない. GCI は MSA 剖検脳において広範囲に出現し,とくに変性 部位からの投射経路に多数みとめられる.また,運動野直下の 白質から錐体路にも比較的多く形成される.GCI は病変の進 行にともない増加するが,神経細胞脱落が高度になると逆に 減少する.変性の高度な神経路ではオリゴデンドログリアが 減少することから,グリア細胞の変性脱落にともなう GCI の減少と考えられる.また,GCI 数のピークを迎える時期は脳 内の各部位で一律ではない.線条体黒質変性症と臨床診断さ れる症例では,GCI の形成は線条体ならびにその投射路に早 期に生じ,橋・小脳系では遅れる.運動野白質ではさらに遅れ る傾向にあるが,形成後比較的長期にわたり GCI 密度が高く 維持されることが示唆されている.他方,オリーブ橋小脳萎縮 症と臨床診断される症例では,線条体黒質変性症と比較して, GCI 数のピーク時期は線条体ならびにその投射路で遅れ, 橋・小脳系では早まることが示唆されている.MSA 以外の 剖検脳のスクリーニングから GCI が潜在的に出現している 症例がこれまで数例報告されている.これらでは線条体・黒 質系ならびにオリーブ核・橋核・小脳皮質系にほとんど神経 細胞変性がみとめられないにもかかわらず,線条体系あるい は橋・小脳系に GCI が出現していた. こうした病理所見は,GCI を指標としたグリア細胞の病態 が MSA の臨床型と密接に関連していることを示唆してい る.しかしながら,均一にみえるグリア細胞がいかにして MSA の選択的病変形成に関与しているのか今後の大きな研 究課題である. Abstract
Initial cellular target in multiple system atrophy: Glial cell
Mitsunori Yamada, M.D.
Department of Clinical Research, National Hospital Organization, Saigata National Hospital
(Clin Neurol 2011;51:843) Key words: Multiple system atrophy, glial cytoplasmic inclusion, glia
国立病院機構さいがた病院臨床研究部〔〒949―3193 新潟県上越市大潟区犀潟 468―1〕 (受付日:2011 年 5 月 18 日)