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素粒子と物性の不思議な関係

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Academic year: 2021

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素粒子と物性の不思議な関係

素粒子と物性では,対象とする系も違えば,計算や実験 の手法も大きく異なる.しかし,物理学の歴史を振り返っ てみると,この 2 つの分野には不思議な交流があることが わかる.たとえば 1960 年代,物性分野で 2 次相転移近傍 の臨界現象が,粗視化やスケーリング理論などの手法で盛 んに研究された.これらを素粒子分野の「くりこみ群」の 理論で自然に記述できることがウィルソン(K. G. Wilson) により指摘され,現代的なくりこみ群の理論へと発展した. また同じころ,物性分野で超伝導の理解が進みつつあり, 対称性の自発的な破れが議論されていた.これが真空でも 実現しているのではないかと指摘したのが南部陽一郎であ る.この指摘は,ヒッグス機構の発見のきっかけとなった. 素粒子と物性の間に交流があるのは,「場の理論」とい う共通の言語を有しているからである.そして,素粒子と 物性の交流は現在でも続いている.たとえば素粒子分野で は,ゲージ場の理論と重力理論との対応関係(AdS/CFT 対 応)が盛んに議論されているが,これを物性分野で強相関 系の非平衡現象や量子もつれの評価へと応用する研究がな されている.またトポロジーに関する場の理論の手法は, 量子ホール効果やトポロジカル絶縁体における非可換統計 や分類理論などの研究で必須の道具となっている.さらに, クォーク・グルーオン・プラズマなどの高密度クォーク物 質における物理現象には,強相関電子系で生ずる多体現象 と共通する側面があり,今後交流が増えるかもしれない. 素粒子では物事をなるべく少数の原理から統一して説明 しようとし,物性では物質の多様性に向き合った研究がな される.このように対照的な分野間の交流は,双方にとっ て,思いもよらなかった斬新な視点をもたらすことが多い. 今後も素粒子と物性を行き来することで,物理学のブレー クスルーが生まれることを期待しよう. 会誌編集委員会 素粒子分野 物性分野 くりこみ群 漸近的自由 相転移臨界現象 自発的対称性 の破れ ヒッグス機構(素粒子の質量の起源) 秩序相(磁性・超伝導・誘電体) トポロジー 強相関系の臨界現象 インスタントン 位相的場の理論 量子ホール効果 トポロジカル絶縁体 アンダーソン局在 AdS/CFT 対応 量子重力理論、QCD 超対称性ゲージ理論 ブラックホール モノポール、量子異常 ・非平衡特性 量子もつれ ©2016  日本物理学会

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