膵管・下部胆管の狭細像を認め自己免疫性膵炎 (AIP)と 診断された. その後, 血液検査上の肝機能障害の増悪に 伴いステロイド内服治療も検討されたが, 本人希望によ り外来にて経過観察となった. 以後, 臨床症状などの出 現はなかったが,IgG4値および肝胆道系酵素の高値は継 続して認められた. 外来経過観察中の平成 20年 12月頃 より徐々に血液検査上は改善傾向を認め, 画像所見では 膵胆管の狭細像は残存するもやや改善傾向を認めた. 平 成 21年 9 月には IgG4値も正常化し, 症状も安定してお り, 現在当科外来にて経過観察中である. 【結 語】 今 回, 我々は自然緩解を認めた自己免疫性膵炎の 1例を経 験した. 慢性骨髄増殖性疾患と AIPとの関連は明確では ないが, 貴重な症例であり報告する. また, AIPはステロ イド治療に良好に反応する病態と えられているが, 再 燃および維持療法の課題もある. 一方で無治療や一時的 な胆道ドレナージにて自然緩解する症例も報告され今後 もさらなる症例の蓄積による検討が必要である. 10.当院における急性膵炎治療の現状 古谷 介,伊島 正志,鏑木 大輔 新井 洋佑,入江 江美,平野 裕子 高草木智 ,迫 陽一,嶋田 靖 飯塚 賢一,廣川 朋之,増尾 貴成 押本 浩一,荒井 泰道 (伊勢崎市民病院 内科) 【目 的】 平成 20年 10月より急性膵炎重症度判定基準 が改訂され, 9 つの予後因子及び造影 CT Gradeによる 判定がなされることとなった. 今回, 当院において過去 3 年間に入院加療を要した急性膵炎患者を対象として, 改 訂基準の有用性, 問題点などを retrospectiveに検討した. 【対象・方法】 平成 18年 4月から平成 21年 3月の 3年 間に急性膵炎の診断にて当院当科で入院加療を要した 92例を対象とした. 改訂基準に当てはめ, 重症度や絶食 期間, 入院期間などについて検討を行った. 判定は入院 後 48時間以内の最重症時のスコアで行った. 【結 果】 全 92症例数のうち, 男性 57例, 女性 35例であった. 改 訂基準での軽症例は 80例, 重症例は 12例であった. 平 年齢は 57.4歳であり, 平 入院日数は 16.0日であっ た. 重症例のうち 1例は敗血症により死亡した. 成因と してはアルコール性が 24例, 胆石性が 31例と多く, ア ルコール性は全例男性であった. 胆石性では男性 16例, 女性 15例と性差は認めなかった. 軽症例と重症例の比 較では平 入院期間が軽症例では 13.0日であったのに 対し, 重症例では 40.0日と, 重症例で入院期間が長くな る傾向にあった. 重症 12例のうち, 蛋白 解酵素阻害 薬・抗菌薬持続動注療法 (CRAI), 持続的血液濾過透析 (CHDF) をそれぞれ 6例施行していた. 手術施行例は 2 例であった. CT Gradeのみで重症と判定した症例は 4 例, 予後因子スコアのみで重症と判定した症例は 4例, CT・スコア両者とも重症と判定した症例も 4例であっ た. 平 絶食期間はそれぞれ 8.5日, 21.0日, 33.3日で あった. また, 平 入院期間はそれぞれ 15.6日, 39.3日, 65.0日であり,CT・スコア両者での重症例は絶食期間,入 院期間ともに長くなる傾向があった. 【 察】 改訂 基準では前基準と比較し, 重症例が 30例から 12例と減 少した. 前基準項目で予後因子項目として採用されてい た空腹時血糖 (FBS) は糖尿病患者で陽性となりやすく, また,ヘマトクリット (Ht)や 蛋白は補液の影響を受け やすい. これらの項目が改訂基準では削除されたことが, 重症例減少の要因の一つと えられた. また, 平 入院 期間について, 改訂基準と前基準とを比較すると, 改訂 基準の方が軽症例と重症例での差が大きくなった. これ は, 改訂基準でより重症な症例を検出することができる ようになったことを示唆するものであった. 急性膵炎は 疾患概念の啓蒙や医療技術の進歩により, 以前と比較し 死亡率の改善を認めているが, 重症例では死亡率 8.9% との報告があり, いまだに良性疾患としては死亡率の高 い疾患である. 重症度判定を用いて, 死亡する確率の高 い症例を検出することにより, 速やかに高次医療施設へ の転送や特殊治療の開始などを決定することができる. さらに, 重症急性膵炎は厚生労働省の難病指定疾患であ り, 費負担の基準として改訂基準は軽症例を除外する 点で有用と えられた. 11.当院における切除不能膵癌の治療成績と予後因子の 検討 鏑木 大輔,伊島 正志,新井 洋祐 入江 江美,平野 裕子,古谷 介 上野 裕之,高草木智 ,迫 陽一 嶋田 靖,飯塚 賢一,廣川 朋之 増尾 貴成,押本 浩一,荒井 泰道 (伊勢崎市民病院 内科) 【目 的】 当院における切除不能膵癌治療の現状把握を 目的として, 生存期間および予後因子の検討を行った. 【対象および方法】 2006年 4月 1日から 2009 年 3月 31 日までに当院で診断・治療を行った切除不能膵癌全 76例 を対象に検討をおこなった. この内の大多数を占める StageⅣ膵癌の中で Performance status (PS) が 0または 1の全 64症例について, 各因子 (化学療法の有無, 性別, 年齢, 腫瘍占拠部位, PS, 病期, 他臓器転移の有無 (M 因 子), 腫瘍径) での生存期間の比較と多変量解析をおこ なった. 生存 析は Kaplan-Meier法を用い, 有意差につ いての検討は Logrank検定を用いた. 多変量解析には Cox比例ハザードモデルを用いた. さらに 64症例の内, 279
化学療法を行った 47症例を対象として予後規定因子の 検討をおこなった. ここでも各因子 (二次化学療法の有 無,性別,年齢,PS,病期,M 因子)での生存期の比較と多 変量解析をおこなった. 【結 果】 切除不能膵癌全体 の生存期間中央値は 229.6日であり, 1年生存率 17.1%, 2年生存率 3.9%であった. 解析対象となった StageⅣ膵 癌では, 化学療法の有無・性別・全身状態 (PS: 0/1) が 予後規定因子であった. 特に化学療法群では 84%の死亡 リスク低下を認めた. 化学療法をおこなった症例では, 二次化学療法の有無・他臓器転移の有無 (M 因子)が予後 規定因子であった. 二次化学療法で 85%の死亡リスク低 下と, M 因子陽性で 3倍の死亡 リ ス ク 上 昇 を 認 め た. 【結 論】 当施設における切除不能膵癌の治療成績と予 後因子について検討をおこなったところ, 切除不能膵癌 に対する化学療法の有用性を裏付ける結果であった. 化 学療法は生存期間を 長しており, 化学療法群では二次 化学療法の有無と他臓器転移の有無が予後規定因子で あった.
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12.急性巣状細菌性腎炎と同時に発症し,特徴的な内視 鏡所見を呈した大腸炎2例 工藤 智洋,星野 崇,乾 正幸 長沼 篤,高木 (国立病院機構 高崎 合医療センター 消化器科) 前澤 晃 (同 内科) 小川 晃 (同 研究検査科) 【はじめに】 急性巣状細菌性腎炎 (AFBN) は,腎実質に おける腫瘤性病変の形成を特徴とした感染症で, 発熱以 外の臨床所見に乏しく, 白血球尿を呈さない場合もある. したがって診断には難渋するが, 確定診断には超音波検 査や造影 CT 検査などが有用とされている.今回,消化器 症状をきっかけに受診し下部消化管内視鏡検査にて大腸 炎と診断したが, 同時に造影 CT にて AFBN と診断され た 2症例を経験した. 特徴的な内視鏡所見を認めたので, 臨床的特徴や経過を含め報告する. 【症例1】 16歳, 男性.主訴は下痢,腹痛,関節痛,発熱.平成 21年 4月,前 記症状が出現したため外来を受診. 当科にて大腸内視鏡 検査を行ったところ右側結腸優位に粘膜の発赤腫脹, ア フタなどの所見を認めた. また同時に行った腹部造影 CT にて AFBN と診断した. 抗菌剤投与にて消化器症状 は軽快したが, 発熱, 関節痛は持続したためサラゾスル ファピリジンを開始, さらに当院内科にてリウマトレッ クスを開始したが改善なく, ステロイドを追加したとこ ろ, 症状および炎症反応は改善した. 一方, その後行った 大腸内視鏡検査では, 症状が消失しているにも関わらず 依然右側結腸に同様の炎症所見を認めた. 【症例2】 34歳,女性.主訴は発熱,腹痛,下痢.平成 18年 7月,前記 症状にて外来を受診. 大腸内視鏡検査で右側結腸優位に 粘膜の発赤腫脹, アフタを認めた. また同時に行った腹 部造影 CT にて AFBN を認めた. 抗菌剤投与により症状 は改善したが, 内視鏡所見が改善しないため炎症性腸疾 患 (IBD) との鑑別に苦慮した. 現在も症状および炎症反 応を認めないものの内視鏡所見は残存している. 【おわ りに】 AFBN と大腸炎の合併に関しては文献報告がほ とんどなく, その意義は不明である. しかし右側結腸優 位の粘膜炎症所見や, 症状消失後も内視鏡所見は遷 し ているなど特徴がある. 鑑別困難な右側結腸炎をしばし ば経験するが,発症初期に AFBN を合併している症例が 他にもあるものと推測されたため, 文献的 察を加え報 告する.13.Clostridium difficileと MRSAの感染を合併した重 症潰瘍性大腸炎の1例 木村 幸,新井 和子,小柏 剛 高瀬 貴章,高鶴 裕介,三浦 陽介 岩崎 靖樹,土屋 天文,下山 康之 佐藤 賢,河村 修,森 昌朋 (群馬大医・附属病院・消化器内科) 草野 元康 (同 光学医療診療部) 橋爪 真之,佐川 俊彦 (前橋赤十字病院 消化器内科) 【症 例】 36歳, 男性. 【主 訴】 下痢, 下血. 【家族 歴】 母,姉,母方祖 が脊髄小脳変性症 (SCA3).IBD な し. 【現病歴】 2001年より SCA3の治療を受けていた. 2009 年 4月初旬より下痢と下血が出現し, 全大腸炎型の 潰瘍性大腸炎 (UC)と診断された.5-ASA 製剤の内服を 開始したが改善せず, 7月初旬に当科を紹介受診. 重症 UC と えられ,近医に入院となった.ステロイド療法を 開始したが効果が認められず, CyA 持続静注療法を併用 した. 下血は消失したが頻回の下痢が続くため, 7月下旬 に当院転院となった. 【入院後経過】 大腸内視鏡で偽 膜形成や炎症所見の悪化はなかったが, 培養で C. dif-ficile (CD) と MRSA が検出されたため,VCM を経口投 与したところ改善した. 【 察】 SCA3で腸管運動 障害を来すことはまれである. 潰瘍性大腸炎の難治化に 腸管感染症の合併が関与することが知られており, 特に CD 感染は免疫抑制療法の進歩に伴って近年増加傾向に ある. 本例では CD と MRSA 感染の合併により下痢が 遷 したと えられた. MRSA 感染により UC が重症化 した症例も報告されており, ステロイドや免疫抑制剤を 投与する際には CD や CMVだけでなく, MRSA 感染の 合併も念頭に置く必要があると えられた. 280 第 28回群馬消化器病研究会