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明日をたくましく生き抜く思考力・判断力・表現力を育む国語科授業の創造

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Academic year: 2021

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(1)

を育む国語科授業の創造

著者

上原 孝夫, 赤石 祐樹, 野間 なつき

雑誌名

鹿児島大学教育学部教育実践研究紀要

26

ページ

459-468

発行年

2017-03-30

別言語のタイトル

Creating Japanese lessons for developing

abilities of thought, decisivness, and

expression to live healthy and strong in the

future

(2)

Bulletin of the Educational Reseach and Development, faculty of Education, Kagoshima University

2017,Vol.26,00-00

報告

明日をたくましく生き抜く思考力・判断力・表現力を育む国語科授業の創造

上 原 孝 夫〔鹿児島市立田上小学校〕

・赤 石 裕 樹〔鹿児島市立田上小学校〕

野 間 なつき〔鹿児島市立田上小学校〕

Creating Japanese lessons for developing abilities of thought, decisivness, and expression to live healthy and

strong in the future

UEHARA takao・AKAISHI yuuki・NOMAnatuki

キーワード:思考力・判断力・表現力、描写、説明 1 研究の背景 平成24年度までの四年間,本校では,「よりよい生き方と未来を拓く国語科教育」を研究テーマに, 「自分の考え」や「主体的」などをキーワードに,言語活動の充実を図りながら「自分の考えの形成及 び交流に関する指導事項」を大切にした授業作りを行ってきた。特に,一人一人が意欲的な学びの中で 自分の考えを形成し,活発に表現し合う「子どもと進める授業」を推進し,主体的で協働的な「学び合 い」の姿が見られるようになった。一方で,子供の思考を広げたり深めたりする活動や子供同士の「学 び合い」を充実させる取組を継続して行っていく必要があると考えた。 そこで平成25年度からは,「明日をたくましく生き抜く思考力・判断力・表現力を育む国語科授業 の創造」を研究テーマに,言語を手掛かりにしながらものの見方や考え方を広げたり深めたりし,自分 の思いや考えをより豊かに伝え合う子供の育成を目指すことにした。 2 研究の方向 自分の思いや考えをより豊かに伝え合うには,どの言語活動も重要である。特に「書くこと」は,相 手に伝える手段だけではなく,自己と向き合い心を耕す営みであるとも言える。そこで,「書くこと」 の領域で,「描写」と「説明」という2つのキーワードを掲げ,思考力・判断力・表現力を育む手立て について研究を行うことにした。その際,取材の工夫や語彙・技法の充実を図った「書くこと」の学習 を通して,子供のものの見方や考え方を広げていきたいと考えた。また,協働的な「学び合い」を通し て,これまでの生き方を見つめ直したり,これからの生き方を考えたりするよい機会を充実させたいと 考えた。 3 「描写」と「説明」 「書くこと」において,描写的に書くことと説明的に書くことの違いを,経験報告文の構成例を挙げながら説明 していくことにする。図1のように一般的な経験報告文は,主に「自分で見たり聞いたりしたこと(事実)」と「感 じたり思ったりしたこと(意見)」の2つのまとまりで構成されていることが分かる。(図1) − 459 − − 459 −

Bulletin of the Educational Research and Development, Faculty of Education, Kagoshima University

2017, Vol.26, 459-468

報 告

明日をたくましく生き抜く思考力・判断力・表現力を育む国語科授業の創造

上 原 孝 夫

[ 鹿 児 島 市 立 田 上 小 学 校 ]

・赤 石 裕 樹

[ 鹿 児 島 市 立 田 上 小 学 校 ]

野 間 なつき

[ 鹿 児 島 市 立 田 上 小 学 校 ]

Creating Japanese lessons for developing abilities of thought, decisivness, and expression to

live healthy and strong in the future

UEHARA Takao・AKAISHI Yuuki・NOMA Natuki キーワード:思考力・判断力・表現力、描写、説明

(3)

2

この「事実」部分と「意見」部分とは,それぞれ以下のように書き分けることで,相手によりいきいきと分かり やすく自分の経験したことやその時の思いなどを伝えることができると言える。 経験報告文に限らず,小学校で学習する文章様式のほとんどが,この「事実」と「意見」の2つのまとまりで構 成されており,その関係性をまとめると表1のようになる。 表1 小学校で学習する15の文章様式 系列 第1学年及び第2学年 第3学年及び第4学年 第5学年及び第6学年

文章様式

主に事実を 伝えるもの 主に意見を 伝えるもの ・説明文 ・観察記録文 ・経験報告文 ・感想文 ・物語文 ・報道文(新聞) ・調査報告文 ・紹介文 ・手紙文 ・詩 ・活動報告文 ・推薦文 ・随筆 ・意見文 ・短歌・俳句 特に,第5学年及び第6学年で学習する随筆や推薦文などは,「事実」と「意見」とを巧みに織り交ぜながら, 自分の思いや考えを効果的に伝えていく文章である。この構成上の特性に着目し,自分の思いや考えを豊かに表現 する力を育むためには,「事実」と「意見」を適切に書き分ける力を身に付けさせることが大切であると考え,以 下のように具体的な手立てを工夫した。 4 研究の実際 (1) 描写的に書くための手立ての工夫 ① 取材の充実 「描写的に書く」とは,書き手が直接体験したことや本や人から間接的に見聞きしたこと,または,観察し たことなどの事実を読み手にも伝わるようにいきいきと描き写すことである。例えば「物語文」や「経験文」 では,読み手が想像し,追体験できるようにいきいきと場面の様子を描くことが大切である。一方で,「記録 文」や「報告文」においても,見聞きしたことや調べたことなどの事実をくわしく書き表すことが大切である。 自分の経験や事柄の様子などを読み手にも伝わるよういきいきと描写的に書く。 図1 経験報告文の構成例 い つ ・ ど こ で ・ だ れ と ・ な に を し た

自 分 で 見 た り 聞 い た り し た こ と 自 分 で 見 た り 聞 い た り し た こ と 自 分 で 見 た り 聞 い た り し た こ と 感 想 ・ 意 見

はじめ

おわり

な か

意見 事実

感 じ た り 思 っ た り し た こ と 感じ た り 思 っ た り し た こ と

意見 事実

意見 事実

感 じ た り 思 っ た り し た こ と

事実

意見

自分が感じたことや思ったことなどを読み手にも伝わるよう分かりやすく説明的に書く。 事実部分 意見部分

(4)

上原・赤石・野間:明日をたくましく生き抜く思考力・判断力・表現力を育む国語科授業の創造

3

そこで,欠かせないのが取材の充実である。取材には,大きく分けて4つの方法(図2)がある。ま ずは,子供がこの4つの取材方法を自覚し,目的に応じて適切に使い分けられるよう意識付けを図 る。次に,取材を行う際は,感覚器官をいっぱいに使って多様な感じ方(図3)をすることやどん な点に着目して材料を集めればよいか(図表4)などの観点を与え,「多面的にみる」思考スキル を育てる。更に,これら取材の方法や観点を踏まえた上で,子供自身が楽しくいきいきと取材を行 えるよう取材メモのあり方を工夫し,書きたい思いと材料を豊かにしていくようにしていった。写 真1のように視点を教室内に掲示することで,子供へ意識付けを図ることができた。また,写真2・ 3のように取材メモの手作りや付箋紙を活用した操作活動を取り入れることで,子供の意欲付けを 図ることもできた。 ② 語彙・技法の充実 語彙や技法を豊かにすることで,より「豊かな表現」が生まれる。教科書や関連図書の中から優れた表現を 子供自身が見付け,国語辞典で調べたり,比較・分類したりすることで,より定着が図られ子供の文章に生か されるようになる。主に「経験文」を書くときには,人物や情景の様子をいきいきと書くための技法(図5) を,自分が直接経験したことではなく,人の考えを引用して書くときに必ず必要となる引用のルール(図6) を,子供に活用させるようにした。 ① 見たことやした事を思い返す。【想起・回想】 ② 見たり触ったりして観察する。【観 察】 ③ 友達や家族,先生にたずねる。【質 問】 ④ 本や資料などを使って調べる。【資 料】 図2 取材の方法 図3 諸感覚と心を使って 図4 五感と心を生かした取材の観点 写真1 物語を書くときの工夫する観点 写真2 付箋紙で作る「花メモ」 写真3 手帳型の取材メモ − 461 −

(5)

4

【本などの資料から引用する時の書き方】 ・書いた人の名前「書名」(出版社名,出版さ れた年)では,「引用する文章」と述べられ ています。 【人から聞いたことを引用する時の書き方】 ・○○さんは「~」と言っています。 ・○○さんによると,「~」だそうです。 ・○○さんから「~」という話を聞きました。 【よく言われていることとして書く時の書き方】 ・~と言われています。 ・~と聞いています。 (2) 説明的に書くための手立ての工夫 「説明的に書く」とは,自分が思ったことなどを読み手にも分かりやすく順序よく書いたり,自分の考えやその 根拠などを筋道立てて説明的に書いたりすることである。下(写真4)のように随筆の締め括り方には文型がいく つあり,どのような書き出しや文末表現で記述すればよいのか,モデル文を分析的に読ませながら分類・整理させ るようにした。また,自分を見つめ直して書く場合には,過去の自分と現在の自分とを対比的に書くとよいことな ど,構成の工夫についても学ばせるようにした。 第1学年「おみせやさんごっこをしよう」では,写真5のように一枚のちらしの中に,描写的にいき いきと書く部分と説明的にくわしく書く部分があることを短冊の色の違いで捉えさせた。短冊を使うこ とで言葉や文を自由に移動したり選択したりすることができるので,表現の効果を吟味する場合に大変 有効であった。写真6は,自分が推薦したい事柄について,自己・相互評価するためにPM表を活用し た実践である。自分のアイデアをプラス面とマイナス面から客観的に評価し,また友達からも評価して もらうことで,読み手が納得できるような明確な推薦理由となり得ているかを考えさせていった。 このように,自分の考 えを可視化できる「見 える図」の活用は,文 章を説明的に書く際に 大変効果的と言える。 図5 様子をいきいきとくわしくする書き方 図6 引用するときのルール 【 た と え た り 比 べ た り す る 】 ○ り ん ご の よ う に 赤 い ~ ○ 夕 日 み た い に 赤 い ~ ○ い ち ご よ り も 赤 い ~ ○ ポ ス ト く ら い 赤 い ~ 【 心 の つ ぶ や き を 書 く 】 ○ 心 の 中 で 「 が ん ば れ 。」 と つ ぶ や い た 。 【 体 で 気 持 ち を 表 現 す る 】 ○ 思 わ ず ガ ッ ツ ポ ー ズ し た 。 【 会 話 や そ の 時 の 様 子 を 書 く 】 ○ 「 き ん ち ょ う す る ね 。」 と ふ る え る 声 で 言 い 合 っ た 。 【 擬 態 語 ・ 擬 声 語 を 使 っ て 】 ○ に っ こ り ど っ さ り ○ ド ン ド ン ポ チ ャ ン 写真5 色別の短冊で示したちらしの構成

3つの文型と文末表現

思考イメージの可視化

対比的な文章構成

写真6 自分の考えを自己・相互評価できるPM表 写真4 第6学年「自分を見つめ直して~随筆を書こう~」の板書例

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上原・赤石・野間:明日をたくましく生き抜く思考力・判断力・表現力を育む国語科授業の創造

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(3) 協働的な「学び合い」の中で思考力・判断力・表現力を高める手立て 昨年度の研究から継続して,子供と教師が共に授業を作り上げていく「子どもと進める授業」を推進している。 子供は,司会や記録などの役割を分担しながら,自分の考えを「一人で→グループ(ペア)で→みんなで」の順に 沿って高めていく。その際,付箋紙やホワイトボード,ICT などの思考を可視化するツールを活用した。書き上げ た文章を相互に読み合い,推敲・評価し合う場合,それぞれの考えを付箋紙やホワイトボードを使って可視化して 伝えることによって,互いの表現のよさをより効果的に交流することができる。また,ICT を活用することによっ て,個やグループの考えを学級全体でも共有できるようになった。 (4) 授業実践 図7 ホワイトボードでグループの考えを可視化し,共有化する協働的な「学び合い」の場面 働 − 463 −

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6

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上原・赤石・野間:明日をたくましく生き抜く思考力・判断力・表現力を育む国語科授業の創造

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− 471 − り上げることができた。 子供は,品物のよさをいきいきと描写するためには五感を働かせて豊かな取材を行った − 465 −

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子供

は出来事の順序を自由に並べ替えたり,何度も加除修正したりするなど,より思考を深めながら 自分だけの物語の構想を豊かに膨らますことができました。

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5 研究の成果と課題 ⑴ 成 果 ○ 「書くこと」の学習場面において,適切な「思考スキル」を活用し,子供の考えを可視化する手立てを取り入 れてきたことで,子供自身が,どのように考えたらよいかが分かるようになってきた。 ○ 描写的に書く部分と説明的に書く部分を意識して書き分け,それぞれに必要な語彙や表現技法等を身に付けさ せてきたことで,子供の表現力がより豊かになってきた。 ○ 協働的な「学び合い」を通して,他者との対話を通して,自分の考えを再構築する姿が見られるようになって きた。 ⑵ 課 題 ○ 「書くこと」の学習場面において,適切な「思考スキル」を活用し取材した内容を,よりよい表現へとつなげ ていく手立てを更に研究していく必要がある。 ○ 必要な語彙や表現技法等を用いながら文章様式を意識して書き分けることができるように,継続した書く活動 を行わせていく必要がある。 ○ 協働的な「学び合い」の中で,更に主体的に学習に取り組んだり,自分の考えを再構築したりすることができ るように,単元の中で適切な「学び合い」を設定したり,話合いのテーマを工夫したりする必要がある。 6 参考文献 文部科学省(2008)「小学校学習指導要領解説国語編」」 文部科学省(2005)「読解力向上に関する指導資料-PISA調査(読解力)の結果分析と改善の方向-」 水戸部修治著(2013)「小学校国語科 授業&評価パーフェクトガイド」.明治図書 − 473 − めたことで,子供は物語の構想をより豊かに広げ,自分だけの楽しい物語のイメージを膨らますこ とができた。 鹿児島大学教育学部教育実践研究紀要 第26巻

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− 472 − 子供 は出来事の順序を自由に並べ替えたり,何度も加除修正したりするなど,より思考を深めながら 自分だけの物語の構想を豊かに膨らますことができました。 − 467 −

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別資料「思考力・判断力・表現力を高める国語科『書くこと』の学習過程(単元)」 供 供 供 供 供 供 供 供 供 供 供 働 働

参照

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