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消費者文脈における探索行動

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Academic year: 2021

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(1)消費者文脈における探索行動 西 原 彰 宏 要 約  本研究は、消費者行動研究において、心理学の探索行動( exploratory behavior ) およびその動機づけに関する理論の適用過程やその背景の整理を行った。その中 で、消費者文脈における 3 つの探索行動(好奇心に動機づけられた行動、リスク・ テイキング、バラエティ・シーキング)と、それぞれの顕在的行動(情報探索、革 新行動、ブランド・スイッチング)が明らかにされた。そして、これらの探索行 動は密接に関連していると考えられるため、探索行動の背後にある動機づけの観 点からヨリ精緻な研究が必要である事を示した。 【最適刺激水準( OSL )、探索行動】. 1. はじめに 2. 心理学領域における探索行動と最適刺激水準 ( OSL ) 3. 消費者文脈における探索行動と最適刺激水準 ( OSL ) の適用 4. 消費者文脈における一般的な探索行動 . 好奇心に動機づけられた行動と情報探索. . リスク・テイキングと革新行動. . バラエティ・シーキングとブランド・スイッチング. 5. まとめと今後の研究の展望. 1.

(2) 消費者文脈における探索行動. 1 .はじめに  消費者行動研究において、心理学領域における探索行動( exploratory behavior ) ならびにその動機づけを説明する最適刺激水準( OSL )等の理論が適用されはじ めて、 5 0年近くになろうとしている。心理学領域における探索行動は、生活体に よって環境を理解するために行われる環境情報の収集行動であると考えられてい る。それでは、消費者文脈において探索行動( exploratory behavior )とはいかな る行動なのであろうか。  消費者行動研究における探索行動は、 好奇心に動機づけられた行動、 リ スク・テイキング、 バラエティ・シーキングが識別され、それぞれ  情報探 索、 革新行動、 ブランド・スイッチングといった消費者による顕在的行動を 説明する概念として用いられてきた。  本研究では、こうした消費者文脈における探索行動、顕在的行動、その背景に ある動機づけを整理する。そのため、本研究では、第2章で心理学領域において 議論された探索行動、その動機づけに関わる理論として最適刺激水準( OSL )を 概観する。続く第3章でそれらの理論の消費者行動研究への適用過程を明らかに する。第4章においては、Raju(1980)によって示された消費者文脈における一 般的な3つの探索行動を示した枠組みをもとに、それぞれの探索行動や顕在的行 動ならびに動機づけとの関係について明らかにする。続いて、第5章では消費者 文脈における探索行動に対する研究において、今後の展望を示す。. 2 .心理学領域における探索行動と最適刺激水準( OSL )  心理学に端をなす探索行動( exploratory behavior )は、学習心理学における動 物を使った学習実験において示された、学習された行動に従わない行動の1つで ある 1)。一般に、探索行動とは生活体が新たな環境に置かれた際にその環境を見 回し、かぎまわり、歩きまわって調べることで環境についての情報を積極的に収 集することを指す( cf.外林他 1981;deCatanzaro 1 99 9)。この探索行動は、外 的な報酬が無くとも環境内にある程度の新奇性や複雑さがあれば、生活体が置か れた環境の探索を行うものであると考えられる。 1)この学習された行動を取らない行動として、探索行動以外にも、操作行動や好奇行動が挙げられ る( Dember and Earl 1 95 7;Deci 1 97 5)。詳 細 は、Dember and Earl(1957)や Deci(1975)に 詳しい。. 2.

(3) 西 原 彰 宏  消費者行動研究においてよく用いられる Berlyne(196 0)の探索行動の定義に 従えば、探索行動は以前まで利用できなかった環境情報を利用可能にする行動で あり、既知の刺激対象からの刺激を強めたり明らかにすることでその刺激対象が 持つ特性についての不確実性を低減する行動でもある 2)。  この探索行動は報酬が得られなくても引き起こされるため、内発的に動機づけ られた行動 3)として、その行動を説明する動機づけの観点から研究が行われてき た。この内発的動機づけに関する研究は動因低減説に反論する形で提示され(鹿 毛1 99 5) 、そ の 内 発 的 動 機 づ け を 説 明 す る 理 論 の 内 の1つ が 最 適 刺 激 水 準 ( optimal stimulation level;以下 OSL )である。この OSL は、消費者文脈にお ける一般的な探索行動の動機づけを説明する概念として広く用いられている 4)。  以下、本章ではまず心理学において探索行動に関する研究に注目が集まった背 景として、学習理論ならびに動因理論を取り上げる。そして、探索行動がなぜ行 われるのかを説明するために提示された動機づけに関する理論を整理し、OSL の 位置づけを明らかにする。  新行動主義の立場に立つ Hull による学習理論に従うと、一般的に人は生理的欲 求(要求)が満たされない場合に内的緊張状態である動因( drive )が生起され、 その動因を低減するような行動がとられる 5)。この動因は低減されるものである とする動因低減説( drive reduction theory )では、動因低減が行われた際の直前 の行動が強化される。その強化された行動は学習された行動となり、欲求が繰り 返された時にその行動が繰り返されることになる 6)( Faison 19 77) 。  しかしながら、学習心理学領域における動物を使った学習実験において、学習 された行動を取らない行動が取られたため、探索行動という名の下でその行動を 説明する動機づけの観点から動機・動因が数多く提示された。例えば、探索動因 ( Montgomery 1 954)、退屈動因( Myers and Miller 19 54) 、そして視覚的探索 の動因( Butler 1 953)等である。この時提示された探索行動を導く動機や動因 7) 2)Goodwin(1 9 8 0)が指摘するように探索行動はノベルティ・シーキングとも呼ばれる。 3)内発的に動機づけられた活動とは、 「当の活動以外には明白な報酬がまったくないような活動のこ とである( Deci 1 9 75 (訳 p.2 5)) 」。 4)この OSL は、バラエティ・シーキングを単体で扱った研究においてもその行動の動機づけを説 明する理論的基礎となっている。 5)これは生体内のバランスを保とうとする生理的機制を指す Cannon によるホメオスタシスの原理 によって仮定されたもので、生理的欲求により生起する一次動因や、その一次動因と結び付けら れた生理的欲求とは関係の無い二次動因を満たし、これらの動因を低減する行動をとるように人 を駆り立てるものである。 6)これは Thorndike の効果の法則に従った考えである。 7)これらのホメオスタシス性の動因とは異なる動因を提示したアプローチは動因命名アプローチと 呼ばれる( Deci 1 9 75) 。. 3.

(4) 消費者文脈における探索行動 は、先の動因低減説とは異なり、動因を低減させるのではなく増加させる行動が 取られる( cf. Deci 1975;Faison 1977)。しかし、これらの動因は、欠乏状態と しての生理的欲求を持たないという点等で批判がなされた。  そのため動因低減説においては最適とされる刺激の状態が“ゼロ水準”であっ たのに対して、刺激の“最適な水準”というものが仮定され( cf. Weiner 19 80) 、 その最適水準を示す枠組みがいくつか提示されることになった。例えば、最適不 適 合( Hunt 1 96 3)、最 適 覚 醒( Berlyne 1960)、最 適 刺 激( Hebb 19 55 ;Leuba 1 9 55) 、などである。  ここで提示された理論は、最適な刺激を求める生活体の欲求の基盤として、心 理学的水準もしくは生理学的水準(例えば、覚醒)、あるいはその両方を基礎に置 くといった仮定の違いや、他においてもいくつかの相違点がある( Deci 19 75) 。 これらの理論を消費者行動研究においてまとめた Raju and Venkatesan(19 80) によると、これらは共通して最適刺激( optimal stimulation )概念を用い、個人が 好むとされる最適刺激の水準は個人個人で異なるという考えに基づいているとさ れる 8)。そのため、消費者行動研究においては、内発的に動機づけられた探索行 動を動機づけの観点から説明する理論の中でも特に OSL が消費者行動研究にお いて取り上げられた。  この OSL は、心理学の領域においてほぼ同時に提示された Leuba(19 55)や. Hebb(1955)による論文に由来し( Raju 1980;1981;Price and Ridgway 1983; Hoyer and Ridgway 1984)、これらの研究で最適刺激( optimal stimulation )が 提示された。OSL とは個人の環境刺激に対する反応を特徴づける特性であり ( Raju 1 98 0; 1 981)、人は刺激に対する最適なもしくは選好される水準を持ち、刺 激がその最適水準を上回れば刺激を減らすよう試みられ、刺激が最適水準を下回 れば飽きや退屈( bored )の状態となり刺激を増やすために新奇な刺激や複雑な刺 激を求める行動がとられる( cf. Hoyer and Ridgway 19 84) 。この最適な刺激水 準に関する刺激の複雑さとその魅力度の関係は、逆 U 字型 9)が仮定される。その 最適な刺激の水準を維持するため、人はバラエティまたはノベルティ( novelty: 新奇性)を探し求める動因や動機を持っているとされる( Raju and Venkatesan 8)消費者行動研究において議論されたこれらの心理学領域の理論の異同や共通点に関しては、Raju and Venkatesan(1980)、Raju(1981)等を参照のこと。 9)心理学領域において議論されたいくつかの研究においては、刺激と選好の基本的な関係について は同意されるが、それらの正確な関係の形は異なるため異なる解釈になる( Raju 1981)。この異 同に関しては、Deci(1 97 5)を参照のこと。. 4.

(5) 西 原 彰 宏 1 9 80) 。ここでの動機や動因は実際の刺激水準と OSL との差によって低減され ることもあれば、増加されることもあると考えられる。一般に、低い OSL を持 つ人よりも高い OSL を持つ人の方が探索行動に従事することが知られている 97 9;Steenkamp and Baumgertner 19 92) 。このような最適刺激の ( Zuckerman 1 水準といった視点から見た際に、探索行動は環境からの刺激を調整する行動と して位置づけられた( Raju 1980)。  さらに探索行動を導く要因として、動因理論では関心が示されなかったノベル ティや不適合( incongruity )、曖昧さ、不確実性といった刺激の特徴に関心が寄せ られている( cf. Weiner 1980)。Berlyne(1960)によればこの刺激の特徴は対 照特性と呼ばれる。その対照特性の中でも、先にあげた特定の対照特性は覚醒ポ テンシャルを持つとされる。この対照特性が覚醒の原因となり、その覚醒を低減 させる行動が探索行動というわけである10)。探索行動は、環境における刺激を他 の刺激との比較との中で認識するという意味で認知的な行動であると考えられ る。. 3 .消費者文脈における探索行動と最適刺激水準( OSL )の適用  探索行動およびその関連した概念を消費者行動の領域において最初に用い、そ 69)であると考えられ の後の研究に先鞭を付けたのは Howard and Sheth(19 る11)( cf. Raju 1 977)。新 行 動 主 義 の 立 場 に 立 つ Hull の 学 習 理 論 を 援 用 し、. S-O-R 型の代表的な包括モデルとみなされるハワード・シェスモデルは、製品カ テゴリーに対する購買意思決定が消費者の購買経験の蓄積によって単純化されて いくことを仮定している。  そのモデルの中に、Berlyne の探索行動をモデルに組み込んだ Howard and 1 2) 1 3) を用い、消費者の Sheth(1969)では、刺激の曖昧性( stimulus ambiguity ). 刺激に対する反応である注目( attention )との関係を示している。ここでの刺激の 10)Berlyne は当初、覚醒が低減されるという立場を取ったが、後に改めている( Deci 1975)。 11)実際には、Tucker(196 4)において探索行動( explorator behavior )に関する記述がみられる。 12)この刺激の曖昧性は、Berlyne(1 96 0)の対照特性であると考えられる( Goodwin 1980)。 13)Howard and Sheth(19 69)は、新奇性、驚くべきこと( surprisingness )、変化、曖昧さ、不鮮明 さ( blurredness ) 、不適合、複雑さ、不可解さ( puzzlingness ) 、不確実性を誘発する力( power to induce uncertainty )等の対照特性を総称した概念として、刺激の曖昧性と呼んでいる。それ以外 にも Goodwin(1 9 80)の研究では、不完全さ( incompleteness )、不調和な並置( incongruous juxtaposition )が識別されている。. 5.

(6) 消費者文脈における探索行動 曖昧性は、不確実性の知覚と環境からの情報の意味の欠如を指し、注目や顕在的 探索( overt search )に影響を与えるものである。この環境に対する明確さの欠如 それ自体が新規性のニーズのような動機を満たすことができる14)と指摘してい る。この背景には、刺激の特徴に目を向け、刺激の特徴と覚醒との関係を示した. Berlyne の影響があると考えられる。Howard and Sheth(1969)は探索行動を 情報追求( information seeking )と位置付け、探索行動を主に情報の獲得行動15) として議論した。  彼らの研究以降、消費者行動研究において OSL や探索行動に関連した概念を 適用した研究は広がりをみせることになる。ここで探索行動としてノベルティ・ シーキングおよびバラエティ・シーキングが広く一般的な消費者文脈における適 用 の 議 論 が な さ れ た16)( e.g. Venkatesan 1973;Raju and Venkatesan 19 80) 。 また、刺激対象として主に情報と製品が取り上げられ、その刺激の特徴、動機ま たは動因、消費者の反応や探索行動などの関係について取り上げた研究が広く行 わ れ た( cf. Mittelstaedt et al. 1976;Goodwin 19 80 ;Raju 19 80 ;19 81 ;Hoyer. and Ridgway 1984)。  例えば、Howard and Sheh(1969)が刺激の特徴と消費者の反応との関係を 示し一方で探索行動を情報の獲得行動として捉えたことから、刺激の特徴と消費 者の反応との関係を示した研究( Copley and Callom 19 71 ;Miller et al. 19 71 ;. Goodwin 1980;Morrison and Dainoff 1972;Bettman 1979)、好 奇 心 な ど の 動機・動因と、広告または製品との関係を示した研究( Maloney 19 62 ;Hewett 1 9 75 ;Mazursky et al. 1987;Hirschman and Wallendorf 19 80)等が行われた。  加えて、心理学領域における探索行動に関連した研究は、以前から消費者行動 研究において研究が蓄積されていた Bauer による知覚リスク、Rogers による普 14)彼らの立場は、刺激の曖昧性が覚醒を導き、覚醒が探索行動や知識行動を導くというものである ( cf. Venkatesan 1 97 3)。これは刺激の特性が覚醒に与える影響を強調していると思われるが、 Raju(1977)では覚醒それ自身は刺激と個人の両方の機能であることが強調されている。そのた め、刺激が直接的に覚醒を導くのではなく、覚醒ポテンシャル( arousal potential )が覚醒を導く 際に媒介的な機能を果たすものと捉える必要があると指摘している。この Raju(1977)による指 摘は Berlyne(1 9 6 0)による記述とも一致すると考えられる。 15)続く Hansen(1 9 7 2)では、選択プロセスにおいて探索( exploration )と熟考( deliberation )とを 識別している。それぞれ探索を Berlyne 同様、前もって利用できなかった環境情報へのアクセス とし、熟考を考える事( thinking ) 、問題解決( problem solving )、記憶( memorizing )の様な内部 プロセスとしている。 16)これは探索行動がノベルティ・シーキングとしても捉えられ( e.g. Venkatesan 1973;Goodwin 1 9 8 0 ;Raju and Venkatesan 1 98 0;Hoyer and Ridgway 1 98 4)、バ ラ エ テ ィ・シ ー キ ン グ と 関 連 している( e.g. Raju 1 98 1)とみなされたためである。例えば、Sheth et al.(1991)は探索(行動)、 ノベルティ・シーキング、バラエティ・シーキングを同等に扱っている。. 6.

(7) 西 原 彰 宏 及理論から派生した消費者による革新行動や消費者革新性に関する研究と結び付 きながら研究が進められていくことになる17)。例えば、OSL と新製品および小 売 店 の 採 用 プ ロ セ ス に お け る 差 異 に 関 す る 研 究( Mittelstaedt et al.19 76 ;. Grossbart et al. 1976)が行われている。  このノベルティ・シーキングやバラエティ・シーキングといった概念が消費者 行動研究へ適用された背景として、当時消費者行動研究において一般的に知られ ていた認知的一貫性理論では、心的緊張を低減するというよりも増加に導くと思 われる消費者による新製品の購買・採用を十分に説明ができなかったためである と考えられる( cf. Venkatesan 1973;Faison 1977)。認知的一貫性理論では、消 費者の認識の上で不一致( inconsistency )な対象や不確実な対象は他の動因状態 と同じように心的緊張を生み、そのため人は動因を低減する( cf. Venkatesan 1 9 73)とされる。そのため、消費者が不確実な対象そのものから逃避する事が考 えられるが、新製品の採用の場面ではしばしば不確実な対象を消費者が自ら求め るため、動因を増大させる行動を行っていると考えられた。そういった現象に対 して、認知的一貫性理論では説明が不十分であったからである。このような背景 もあり、新奇性や不確実性に加えリスクも高いと思われる新製品や革新的新製品 の購買に関する説明を与えるため、ノベルティ・シーキングやバラエティ・シー キングといった概念が消費者行動研究で広く適用されるに至った。  このように、主に1970年代を通して数多くの研究が蓄積された18)。しかしな がら、これらの研究は様々な領域で個々別々に研究が進められたために包括的な 枠組みを持たなかったと考えられる。このため1 980年代初頭にそれまで取り組 まれてきた研究を包含する形で、消費者行動文脈における一般的な探索行動を示 80) 。 す包括的な枠組みが提示されることになる( e.g. Raju 19. 4 .消費者文脈における一般的な探索行動  消費者文脈における一般的な探索行動の枠組みとして、多くの研究が Raju (19 80)の 枠 組 み を 踏 襲 す る 形 で 行 わ れ て い る19)( e.g. Joachimsthaler and. Lastovicka 1984;Steenkamp. and. Baumgartner 1992;Baumgartner. and. 17)Raju(1 9 8 0)では OSL とリスク・テイキングと正の相関があるとの指摘がなされている。 18)Hoyer and Ridgway(1 98 4) 、Raju and Venkatesan(1 98 0)や Raju(1981)において、消費者行動 研究に適用された探索行動に関する初期の研究がまとめられている。 19)Raju(1 9 8 0)の枠組みは、バラエティ・シーキング研究において、バラエティ・シーキングの包 括的な枠組みとして位置づけられている、McAlister and Pesseminer(1982)による多様性行動 ( varied behavior )の規定要因を示した枠組みにも用いられている。. 7.

(8) 消費者文脈における探索行動. Steenkamp 1996;Helm and Landschulze 2009;Venkatraman and Macinnis 1 9 85) 。  Raju(1 9 80)の研究では、パーソナリティ特性、デモグラフィック特性、OSL や消費者による探索行動の関係が示された。彼は2つの調査を行い、 1つ目の調 査でパーソナリティ特性20)と OSL の関係、 2つ目の調査で OSL と探索行動(傾 2 1) 向) の関係を示した22)。その際、OSL をパーソナリティ特性と探索行動(傾. 向)を媒介する構成概念として扱っている23)(パーソナリティ特性→ OSL →探索 行動(傾向)) 。  彼は、識別された消費者文脈における7つの探索行動を3つにまとめた上で、 それぞれの動機を提示している(図表1参照) 。ここで示された3つの動機と探 索行動(傾向)はそれぞれ下記である。 好奇心(①ショッピングを通した探索、 ②情報追求、③個人間コミュニケーション)、 リスク・テイキング(④革新性、 ⑤リスク・テイキング)、 バラエティ・シーキング(⑥ブランド・スイッチン グ、⑦(反対の行動として)反復購買傾向)である。 図表1 Raj u(1980)による3つの動機と顕在的な探索行動(傾向) 好奇心(動機) ①ショッピングを通した探索:ショッピングやブランドを調べる事に対する選好 ②情報追求:主に好奇心による様々な製品やブランドについて知る事への関心 ③個人間コミュニケーション:購買について友達と話し合う事 リスク・テイキング(動機) ④革新性:新製品/サービスについて知ったり買ったりすることへの意欲 ⑤リスク・テイキング:危険を冒すか、冒険好きであることへの選好 バラエティ・シーキング(動機) ⑥ブランド・スイッチング:主に変化またはバラエティのためにブランドを変える事 ⑦(反対の行動として)反復購買傾向:時がたつにつれて同じ反応を続ける傾向 出典:Raju(1 9 80)を基に作成 20)彼は、パーソナリティ特性として①曖昧さへの不耐性、②硬直性、③教条主義を用いた。 21)Raju(1 9 8 0)では、探索行動を実際には探索行動傾向として測定している。 22)しかしながら、Raju(1 98 0)の研究に対する批判が行われる。例えば、Raju(1980)による調査 について、パーソナリティ特性、OSL、探索行動のデータが同時に集められていないため、OSL がパーソナリティ特性と探索行動を媒介しているかどうかがわからないとの指摘がなされた ( e.g. Joachimsthaler and Lastovicka 1 98 4)。さらに、Baumgartner and Steenkamp(1996)は、Raju (1 9 8 0)による7つの消費者探索行動はその内のいくつかが重複しているとし、さらに尺度が複 数の行動にまたがっていることを指摘している。Joachimsthaler and Lastovicka(1984)は、他 にも Raju(1 9 8 0)で扱われたパーソナリティ特性が限定的であること、Raju(1980;1981)に おける OSL の位置づけが不明確であることを指摘している。 23)このような枠組みは、OSL が個人間で異なるためにパーソナリティ特性やデモグラフィック変数 等の個人差変数と関連があるとされ( Raju and Venkatesan 1980)、OSL の個人間の差異を個人 差変数の差異に求める形で研究が進められた。. 8.

(9) 西 原 彰 宏  この Raju(1 9 80)によって示された消費者文脈における一般的な探索行動の枠 組みは、OSL と探索行動間の関係の差異によって、以降の研究では2つに大別さ 84)等 の 初 れ る。 1つ 目 は、Raju(1980)や Joachimsthaler and Lastovicka(19 期の研究にみられるような「 OSL →探索行動(傾向)」といったモデルである。  2つ目は、後の Steenkamp and Baumgartner(1992)や Helm and Landschulze (20 09)の研究において示された「 OSL →探索行動傾向→探索行動」というモデ ルである。これは、Raju(1980)によって指摘された3つの動機(好奇心、リス ク・テイキング、バラエティ・シーキング)を探索行動傾向として解釈し直し、 「 OSL →探索行動」の間を媒介する概念として用いている24)。ここで、Raju (19 80)による3つの動機は、 3つの探索的行動傾向として  好奇心に動機づけ られた行動、リスク・テイキング25)、バラエティ・シーキングが識別されて 09) 。 いる( e.g. Steenkamp and Baumgartner 1992;Helm and Landschulze 20 3つの探索 そのため、「 OSL →探索行動傾向→探索行動」というモデルにおいて、 的行動傾向はそれぞれが3つの消費者による探索行動(  情報探索、 革新行 動、 ブランド・スイッチング)を説明する概念として用いられている26)( cf.. Steenkamp and Baumgartner 1992;Helm and Landschulze 2009)。  しかしながら、ここで探索行動として示される  情報探索、 革新行動、  ブランド・スイッチング自体は探索行動そのものではない。例えば、購買後の 不満足、結果の不確実性を低減するために情報探索が行われたり、既存の購買問 題を解決するために革新的新製品の採用が行われたり、現在のブランドに対する 不満足によってもブランド・スイッチングは生起するためである。そこで、本研 24)Raju(1 9 8 0)では、 「探索行動」を測定する際に、行動ではなく「探索行動傾向」を測定しており、 彼の論文中においても「探索行動」と「探索行動傾向」の表記を代替的に用いている。そのため、 本研究では探索行動と代替的に用いられた際には「探索行動(傾向)」として表記する。一方、Raju (1 9 8 0)に指摘された3つの動機を、 3つの行動傾向( 好奇心に動機づけられた行動、 リス ク・テイキング 、 バラエティ・シーキング)として用いる際には「探索行動傾向」と表記して いる。 25)Raju(1 9 8 0)以前の探索行動に関する初期の研究では、ノベリティ・シーキングがその中心と なっていたが、彼の枠組みではリスク・テイキングに取って代わられたようにみえる。これは、 探索行動それ自身がノベルティ・シーキングとして扱われているため( e.g. Goodwin 1980)、3 つの探索行動は全てノベルティ・シーキングの要素を持っているとも考えられる。例えば、好奇 心によって情報を収集するのはある程度未知なノベルティ(新奇性)のある情報であると考えら れる。ノベルティ(新奇性)が著しく高い革新的新製品の採用は、その製品が不確実であるとの 点でリスク・テイキングであると考えられる。 26)この点に関して、Raju(1 98 0)による3つの動機の内の好奇心は別として、リスク・テイキング やバラエティ・シーキングは動機ではなく行動を表す概念であるため、動機として捉えるのは正 しくない。そのため、本来ならば行動として捉える必要がある。尚、Raju(1980)自身も用語の 用い方が曖昧であった。. 9.

(10) 消費者文脈における探索行動 究ではこれらの行動(情報探索、革新行動、ブランド・スイッチング)を「探索行 動」ではなく「顕在的行動」として扱う。さらに、探索行動傾向として示される  好奇心に動機づけられた行動、 リスク・テイキング、 バラエティ・シー キング)は、そもそもが行動を示す概念であり、本研究においてはこれらを探索 行動として位置付けている( OSL →探索行動→顕在的行動)。 9 80)以降に行われた研究では、例えば下記の研究がある。まず、  Raju(1. Joachimsthaler and Lastovicka(1984)の研究では、OSL がパーソナリティ特 2 8) 性27)と消費者による探索行動(傾向) との間を媒介するモデル(パーソナリ. ティ特性→ OSL →探索行動(傾向))、媒介しないモデル(パーソナリティ特性お よび OSL →消費者探索行動(傾向))の2つを分けて検証した。結果として、後者 のモデルの方が前者のモデルよりも適合度が高いことが示されている。続く. Steenkamp and Baumgartner(1992)は、先行研究における OSL および諸変数 に関する測定尺度について言及を行い、探索行動傾向と具体的な消費者による行 動との関係ならびに OSL の役割について示した。Baumgartner and Steenkamp (19 96)は、OSL、情報の獲得行動、製品の獲得との関係を示している。  最近の研究では、Helm and Landschulze(2009)の研究があり、これまでの 研究をまとめた上でその枠組みを示している(図表2参照) 。彼らは探索行動を製 品(カテゴリー)特定的な行動であると捉え、顕在的行動が生起するには製品特性 09)では、 が影響を与えるという視点を示した29)。Helm and Landschulze(20 特定の製品カテゴリーにおける媒介変数として、「製品関与」、「知覚された快楽 価値」、 「購買間隔」 、 「選好の程度」を識別し、中でも「製品関与」が重要な変数で あると指摘している。また、個人の好まれる刺激水準を示す一般的な状態として の OSL だけでなく、個人が得る実際の刺激レベル( actual stimulation level;. ASL )との間の差を踏まえた上で研究がなされている。. 27)パーソナリティ特性として統制の所在( locus of control )と社会的性格( social character )を用い ている。 28)ここでの消費者による探索行動(傾向)は、情報追求と革新性を用いている。 29)この背景には、革新行動や革新性に関する研究ならびにバラエティ・シーキング研究において、 それらが製品カテゴリー特定的な行動であるとみなされているためである。. 10.

(11) 西 原 彰 宏 図表2 消費者文脈における一般的探索行動の枠組み. 出典:Helm and Landschulze(2 0 0 9 p.4 4)を修正して引用.  しかしながら、この消費者文脈における一般的な探索行動を示した枠組みにお いて、3 つの問題点があげられる。  まず第1に、探索行動自体は完了行動( consummatory behavior )はもたないと 考えられるため( Deci 1975)、情報探索、革新行動、ブランド・スイッチングと いった顕示的行動が生起した事でもって行動が完了するわけではない。そのた め、顕在的行動が起きた際の動機づけの観点から探索行動を捉える必要がある。  第2に、 3つの探索行動を生起させる動機づけは相互に関連しあっているもの と考えられる( cf. Steenkamp and Baumgartner 199 2)。これは、好奇心、リス ク・テイキング、バラエティ・シーキングは識別可能なのかといった問題と関連 する。Steenkamp and Baumgartner(1992)は特定の探索行動はいくつかの動機 (探索行動傾向)によって動機づけられるかもしれないためこれらの識別は曖昧 であるが、文献を構造化するためには有益であるとした。しかしながら、後の研 究でリスク・テイキングとバラエティ・シーキングを概念的に明確に区別するこ とが出来ないと指摘している( e.g. Baumgartner and Steenkamp 19 96) 。加え 11.

(12) 消費者文脈における探索行動 て、探索行動それ自体がノベルティ・シーキングとみなされ( e.g. Venkatesan 1 9 73 ;Goodwin 1 980;Raju. and. Venkatesan 1980;Hoyer. and. Ridgway. 1 9 84) 、リスク・テイキングのみならず、好奇心に動機づけられた行動ならびに バラエティ・シーキングにおいてもある程度のノベルティ(新奇性)が伴い、そ の結果リスクが伴うと考えられる。しかしながら、探索行動間、顕在的行動間の 関係については明らかになっていない。そのため、探索行動の動機の識別や、探 索行動、顕在的行動間の関係については今後も検討が必要である。  最後に、第2の問題点と関連して、探索行動傾向間の識別が難しいことから、. Raju and Venkatesan(1980)の指摘にあるように、OSL と探索行動の間に OSL を基にした、好奇心、ノベルティ、バラエティなどを求める動因や動機を持つと いう事を想定し、OSL と探索行動との間に動機や動因を媒介させるモデルが必要 であると考えられる( OSL →動機・動因→探索行動傾向→顕在的行動)。  以上、これまでは消費者文脈における一般的な探索行動の枠組みと問題点を明 らかにしてきた。以下では、識別が難しいとされる一般的な探索行動とその顕在 的行動との関係について、今後の研究の足掛かりとすべくそのそれぞれの関係に ついて取り上げていく30)。尚、本研究では、各研究領域における OSL や探索行 動が果たす役割や位置づけについては、ここではその基本的な枠組みを示すこと に留めたい31)。  好奇心に動機づけられた行動と情報探索  消費者文脈における探索行動において、好奇心に動機づけられた行動によって 生起する情報探索( information search )は、購買を前提としておらず、問題解決 文脈以外の情報探索がいかに行われるかについての示唆を提示する32)( cf. Raju. and Venkatesan 1980)。そのため、主に購買を前提としない情報探索に関する 研 究 と 深 く 関 わ り な が ら 研 究 が 蓄 積 さ れ て き た( e.g. Steenkamp and. Baumgartner 1992)。  消費者行動研究において心理学領域の探索行動を適用し、それを情報追求 ( information seeking )とみなした Howard and Sheth(19 69)では、探索行動 30)本研究と同様に、Steenkamp and Baumgartner(1 99 2)などを参照のこと。 31)第3章で明らかにされたように、情報探索、革新行動、ブランド・スイッチングといった顕在的 行動については以前から研究が行われ、 1 970年代以降に OSL や探索行動の概念が持ち込まれな がらそれぞれの研究が進められている。 32)これは、消費者行動研究において、主に購買を前提とした情報探索( information search )が議論 されている探索行動( search behavior )研究とは立場を異にする( cf. Bloch et al. 1986)。. 12.

(13) 西 原 彰 宏 を2つに識別している。その内の1つである多様的( diversive )探索行動は、満足 する刺激水準を維持し環境について学習するための好奇心から情報追求するもの である33)34)。そのため、研究の当初から「好奇心による情報探索」がその議論の 中心となっていた。  19 6 0年代や1 970年代に行われた研究では、特に広告への注目、繰り返され た 広 告 に 対 す る 消 費 者 の 反 応 に 関 心 が 当 て ら れ た。例 え ば、好 奇 心 と 広 告 96 2) 、好奇心と野外広告( Hewett 1975)との関係が示されている。 ( Maloney 1 さらに、刺激の曖昧性と注目および覚醒の関係について記述した Howard and. Sheth(1969)の研究以降、Copley and Callom(1971)は産業購買者における 刺激の曖昧性を知覚リスクとみなした上で情報探索との関連を研究し、Miller et. al.(1971)はブランドの曖昧性が態度にどのように影響するかを明らかにしよう と試みている。他にも、刺激の特徴(複雑性、不鮮明さ、不完全さ)と反応(注視 時間など)の関係を調べた研究( Goodwin 1980)、雑誌広告の複雑性と注視時間 の関係を調べた研究( Morrison and Dainoff 1972) 、知覚される刺激の特徴が生 み出す葛藤( conflict )と注目および知覚プロセスの関係を示した研究( Bettman 1 9 79)などがある。  19 70年代までの研究は Raju(1980)によってまとめられ、ショッピングを通 しての探求、情報追求、個人間コミュニケーションの3つが購買を前提としない 情報探索として位置付けられ、その顕在的行動である情報探索は好奇心といった 動機によって生起すると指摘された。  現在、このような購買を前提としない情報探索は、好奇心による知識獲得を目 指しており、製品カテゴリー特定的な行動であると考えられる( e.g. Helm and. Landschulze 2009)。この特定の製品カテゴリーにおける好奇心による情報探索 は、製品カテゴリーに対する興味・関心に基づき、製品カテゴリーに対するヨリ 深い理解を目的とした行動であると考えられる。これは、消費者の興味・関心が 高い領域に対して、情報を求める欲求がその基盤にあると思われる( Helm and. Landschulze 2009)。 33)もう一方の特定的( specific )探索行動を購買問題の解決のために情報を求める行動とし、情報を 得ることによってこれらの問題を解決するニーズを満たすものであるとした。 34)しかしながら、Howard and Sheth(1 96 9)における識別は Berlyne(1960)の識別とは異なって いる。Berlyne(1 9 6 0)においては、特定的( specific )探索行動が1つの情報源から1つの対象ま たはイベントに関する情報を得ることであり、多様的( diversive )探索行動は、情報源や対象に 限定されない。この点に関する指摘は、Raju(1 97 7)でもなされ、問題解決は特定的探索行動の 唯一の理由である必要はないとの指摘がなされている。. 13.

(14) 消費者文脈における探索行動  尚、このような特定の製品カテゴリーに対して、購買を前提とせずに行われる 情報探索は永続的探索( ongoing search )として議論されている( e.g. Bloch et. al. 1986)。この永続的探索は購買プロセス外で起こり、特定の購買ニーズや決 定とは独立した探索( search )活動である( cf. Bloch et al. 19 86 p.11 9-12 0)。 この永続的探索は、製品カテゴリーに対する関与水準が高い状態で生起するとさ れ( cf. Bloch et al. 1986)、好奇心に動機づけられた行動としての情報探索と 非常に関連が高い( cf. Bloch et al. 1986)。そのため、好奇心に動機づけられた 情報探索における製品カテゴリー毎の差異に関しては、製品関与( Bloch et al. 1 9 86)や製品に対する興味( Bloch and Richins 1983)から捉えていく必要があ ると考えられる。  さらに、このような製品に対する関与や興味関心を基に、好奇心に動機づけら れた情報探索は、他の探索行動である製品の獲得行動に影響を与えるものである と考えられる( cf. Baumgartner and Steenkamp 19 96 ;Helm and Landschulze 2 0 09) 。この時、消費者による情報探索は、好奇心に動機づけられた行動によっ て製品カテゴリーといった環境を理解するためになされると考えられる。  リスク・テイキングと革新行動  Howard and Sheth(1969)が心理学領域における探索行動および関連した概念 を持ち込む以前から、消費者行動の領域において消費者による革新行動や消費者 革新性に関する研究がなされていた。後に、心理学に端をなす探索行動(特にノ ベルティ・シーキングやリスク・テイキング)や OSL は、この革新行動や消費者 革新性を説明する概念として取り上げられている( e.g. Wood and Swait 20 02 ;. Cotte and Wood 2004;田嶋 2000;秋本 2005)。  消費者による革新行動や消費者革新性は普及理論を背景に持つ。普及理論は農 村社会学を基礎にもつ Rogers によって提示され、ある特定の社会基盤において、 イノベーションが時間の経過を伴って普及するプロセスを扱うものである。彼に よる研究以降、イノベーションの普及研究は消費者行動およびマーケティング領 域においても「新製品の普及」を説明する有用な研究として取り入れられてきた (田嶋 2 00 0) 。  普及理論が社会におけるイノベーションの普及過程をマクロ的に捉えた研究で あるのに対し、ミクロ的な視点として個人の消費者がイノベーション、ヨリ具体 的には新製品や革新的新製品をどのように採用するのかについての議論がなされ 14.

(15) 西 原 彰 宏 た。このような新製品や革新的新製品を早期に採用する革新者と呼ばれる消費者 と、他人の影響を受け、遅れて採用する模倣者と呼ばれる消費者の差異に注目が 当てられた。特に消費者行動研究においては、新製品を早期に採用する消費者を 識別するべく、革新行動35)や消費者革新性36)に関連した多くの研究がおこなわれ ている。  さらに、これらの研究は、Bauer(1960)による知覚リスク37)との関係で議論 されている。一般に、消費者の知識が不十分になるため新製品(ブランド)が導入 72) 、新製品や革新的 されることはリスク増加を意味し( Deering and Jacoby 19 新製品は、不確実性が高くリスクが高いと考えられる。  そのため、これらの革新行動、消費者革新性ならびに知覚リスクに関する研究 を背景に、Howard and Sheth(1969)による研究以降、心理学における探索行 動がこれらの研究においても適用されたと考えられる。この探索行動や OSL と いった概念がこの領域に適用された初期の研究では、例えば、OSL と新製品・小 売店の採用( Mittelstaedt et al. 1976)、個人の OSL の差異と新しい小売施設の 採用( Grossbart et al. 1976)について言及した研究、探索行動に関する知見か ら使用の革新性の測定尺度の開発( Price and Ridgway 19 83)を目指した研究等 がある。知覚リスクとリスク・テイキングに関しては、知覚リスクと製品に対す る選好( Deering and Jacoby 1972)、外部環境および選好の変化に対する不確実 性とリスク38)( Pessemier 1978)の関係を示した研究があり、また、消費者の使 用場面の文脈で消費者革新性、ノベルティ・シーキングならびに創造性について 示した研究( Hirschman 1980)などがある。 980)によって示された消費者文脈における探索行動において、  後に、Raju(1 革新性、リスク・テイキング(行動)を導く動機はリスク・テイキング(動機)が 識別され、革新行動や消費者革新性との関係で議論された。  最近の研究においても、Cotte and Wood(2004)で OSL が平均より高い消 費者は革新行動を行うかもしれないとの指摘がなされている39)。反対に、刺激が 35)革新行動については、田村(1 9 6 7)を参照のこと。 36)消費者革新性については田嶋(1 9 9 8; 2 000) 、秋本(2 0 05)に詳しい。尚、消費者革新性は、 「新 しい行動または製品に変えたい、または試したいという受け入れを示す傾向( Cotte and Wood 2 0 0 4 p.7 9) 」と定義される。 37)知覚リスクと Berlyne の知見の類似性については Deering and Jacoby(1972)を参照のこと。 38)Pessemier(1 9 7 8)は、知覚リスクと葛藤( conflict )の類似性を指摘した。 39)時は遡るが、Mittelstaedt et al.(1 97 6)によって、低い OSL を持つ人は、新しいブランドを試用 する前に多くの注意( caution )と熟講を要する傾向があることが指摘されている。. 15.

(16) 消費者文脈における探索行動. OSL を越えると、新しい刺激、新奇な刺激、複雑な刺激を控えることが指摘され ている( Steenkamp and Baumgartner 1992)。  また、この革新行動を製品カテゴリー特定的な現象であるという視点でみた際 ( e.g. Helm and Landschulze 2009)、例えば、革新行動においては、その行動 が生起する要因として、製品カテゴリーに対する興味や製品関与が指摘されてい る( e.g. Foxall and Bhate 1991;田 嶋 2000)。た だ し、田 嶋(2 00 0)が 指 摘 す るように、製品に対する興味関心(製品カテゴリー関与)は、対象となる革新的新 製品が既存の製品カテゴリーと関連が薄い際には、あまり意味をなさない点に注 意する必要がある。  また、この領域における製品の対象は、イノベーションの研究に依拠した革新 的新製品の採用から、新しい製品の採用といった新しさの程度に関しては議論が わ か れ て い る( cf. Raju 1980;1981;Joachimsthaler and Lastovicka 19 84 ;. Price and Ridgway 1983;Helm and Landschulze 2009)。  バラエティ・シーキングとブランド・スイッチング  顕在的行動であるブランド・スイッチングに関わる研究は、Howard and Sheth (19 69)が自身の消費者の包括的モデルに探索行動を適用する以前から、ブラン ド・ロイヤルティ研究においてなされている。例えば、Tucker(19 64)はブラン ド・ロ イ ヤ ル テ ィ が 形 成 さ れ る 前 に 探 索( search )や 探 索 行 動( exploratory. behavior )がなされ、その間は同じブランドが再び選ばれる確率が減ると指摘し た。また、Howard and Sheth(1969)では、消費者が購買意思決定に対する単 調さ( monotony )や退屈( boredom )の解消のために、最も選好度の高いブラン ドから何か新しい物を探し求めると指摘している。  1 97 0年代に行われた消費行動文脈における探索行動の研究では、例えば、バ ラエティ動因を検討した Faison(1977)の研究、バラエティ・シーキングを2つ のタイプに識別した Hirschman and Wallendorf(1 98 0)の研究等がある。両研 究で異なるのは、Faison(1977)によるバラエティ動因は、飽きによる“気分転 換”による動機づけを指すのに対し、Hirschman and Wallendorf(19 80)ではバ ラエティ・シーキングの下位概念に既知な対象だけでなく、未知な対象を求める 行 動 の2つ の 側 面 を 含 め て い る 点 で あ る。ま た 心 理 学 領 域 で な さ れ た 研 究 ( Brickman and D ’ Amato 1975)も広く引用されている。この時、バラエティ・ シーキングはノベルティ・シーキングとの関係の中で考察されてきた。これは、 16.

(17) 西 原 彰 宏 消費者が新しい刺激(製品や情報)を求めるだけでなく、既知の刺激(製品や情報) についても求めていると考えられたからだと思われる( cf. Venkatesan 19 73) 。  また、消費者文脈における一般的な探索行動を示した Raju(19 80)において、 顕在的行動としてのブランド・スイッチング(反対の行動として、反復購買傾向) を導く動機としてバラエティ・シーキングが識別された。そのことが一因として、 バラエティ・シーキングはブランド・スイッチングを説明する概念として扱われ ることになる。  そのバラエティ・シーキングが単独で研究がなされるようになったのは、主に 19 8 0年 代 以 降 で あ り、先 の Raju(1980)や、McAlister and Pessemier(19 82) の研究が大きく寄与したと思われる。バラエティ・シーキング研究では、多くの 84 ;Menon 研究が OSL を理論的背景にしているなど( Hoyer and Ridgway 19. and Kahn 1995;Roehm and Roehm 2004;Inman 2001;Van Trijp et al. 1 9 96) 、 3つの探索行動の中では最も心理学領域における探索行動や動機づけの 理論と深く関わりながら研究が進められている。  しかしながら、OSL を理論的背景とした研究では、個人間の差異は説明可能 であるが、個人の消費者において製品カテゴリーが異なれば取られる行動もまた 異なるため、バラエティ・シーキングは製品カテゴリー特定的な行動としてみな されている( e.g. Hoyer and Ridgway 1984;Van Trijp et al. 19 96) 。  この時、多くの研究が製品特性としての製品関与水準が低い際にバラエティ・ シーキングが生起するとみなしているが( e.g. 土橋 20 00 ;Hoyer and Ridgway 1 9 84 ;Van Trijp et al. 1996)、これは製品レベルで捉えた際、低関与製品は購 買の重要性が低く、頻繁に購買され、刺激が少ないために「飽き」やすいという 事が想定されているためである。  しかしながら、他の探索行動(好奇心に動機づけられた行動、リスク・テイキ ング)は、関与水準が高い状態で生起するとされるのに対し、バラエティ・シー キングだけが関与水準が低い状態で生起するとみなされている。その一因として、 実際の刺激が OSL より低い状態、または Faison(1 97 7)によるバラエティ動因 のように、 “飽き”の状態から“気分転換”を求めるために動機づけられた状態が想 定されているためであると考えられる。  けれども、その認識の違いについては今後理解を深めていく必要がある。その 理由として、探索行動は他の刺激との相対的な評価を伴うため認知的な行動であ ると考えられるが、製品に対する関与水準が低い場合にそのような探索行動とし 17.

(18) 消費者文脈における探索行動 てのバラエティ・シーキングを行うのかについては再考する余地があると考えら れるためである。. 5 .まとめと今後の研究の展望  これまで、消費者文脈に適用された心理学の探索行動ならびに動機づけの理論 である OSL を明らかにしてきた。消費者文脈における探索行動は、 好奇心に 動機づけられた行動、 リスク・テイキング、 バラエティ・シーキングの3つ が示された。そして、それぞれが顕在化した行動として  情報探索、 革新行 動、 ブランド・スイッチングが識別された。  3つの顕在的行動は、OSL やそれらを背景にした動機や動因といった動機づけ 以外によっても生起する。さらに、 3つの探索行動はそれぞれ1つの顕示的行動 にしか影響を与えない事が示されているが( e.g. Helm and Landschulze 20 09 (図表2参照) ) 、リスク・テイキングやバラエティ・シーキングは概念的に明確 に区別することが出来ない事が指摘されている( Baumgartner and Steenkamp 1 9 96) 。さらに、識別が容易である“合理的な( rational )”動機に対して、探索行 81) 。 動における動機は簡単に識別できないとされる( Raju 19  そのため、Helm and Landschulze(2009)が想定しているような( OSL →探 索行動傾向→顕在的行動)では、その動機・動因の識別に関する深い洞察が難し い。そのため、顕在的行動を内的に説明する動機や動因を OSL と探索行動の間 に媒介する形でモデルに組み込む必要があると考えられる( OSL →動機・動因→ 探索行動→顕在的行動)。その上で、好奇心に動機づけられた行動、リスク・テ イキング、バラエティ・シーキングといった探索行動を導く動機・動因を各1つ ずつではなく、包括した概念としてヨリ精緻に見ていく必要があると考えられ る。  また、これまで消費者文脈における探索行動は情報、製品の獲得行動を説明す る概念として議論されてきた。環境情報の収集行動として探索行動を見た際に、 消費者文脈における環境は製品カテゴリーである考えられる。情報や製品の獲得 を通じて消費者が製品カテゴリーに対してヨリ深い理解を深めていく行動として 捉えることができる。その背景にあるのは、消費者による製品カテゴリーに対す る興味関心であり、製品カテゴリーに対する高関与な状態であると考えられる。 けれども、探索行動の内のバラエティ・シーキングだけが、製品カテゴリーに対 18.

(19) 西 原 彰 宏 する関与水準が低い事を前提で議論が進められてきた。  このような探索行動間での製品カテゴリーに対する関与水準の異同についても 今後取り上げていく必要がある。そのため、今後の展望として、消費者が積極的 に探索する場(環境)としての製品カテゴリーと消費者との間の関係についてヨ リ深く究明していくことが求められる。. (筆者は、関西学院大学大学院博士課程後期課程3年). 19.

(20) 消費者文脈における探索行動 参考文献・引用文献 Bauer, Raymond A. (1960) “ ,Consumer Behavior as Risk Taking, ”in Robert S. Hancock, ed., Dynamic Marketing for a Changing World, American Marketing Association, 3 89-398. Baumgartner,. Hans. and. Jan-Benedict. E.. M.. Steenkamp(199 6) “ ,Exploratory. Consumer Buying Behavior: Conceptualization and Measurement, ”International Journal of Research in Marketing, 13, 121-137. Berlyne, Daniel E.(1960) ,Conflict, Arousal, and Curiosity, New York: McGraw-Hill Book Company. Bettman, James R.(1979) ,An Information Processing Theory of Consumer Behavior, Addison Wesley. Bloch, Peter H., Daniel L. Sherrell, and Nancy M. Ridgway(198 6), “ Consumer Search: An Extended Framework, ”Journal of Consumer Research, 1 3 ( June ), 1 1 9-1 26. Bloch, Peter H., and Marsha L. Richins(198 3), “Shopping without Purchase: An Investigation of Consumer Browsing Behavior, ”in Richard P. Bagozzi, and Alice M. Tybout, eds., Advances in Consumer Research, 1 0, Ann Arbor, MI: Association for Consumer Research, 389-393. Amato (1975) “ ,Exposure Effects in a Free-Choice Brickman, Philip, and Barbara D ’ Situation, ”Journal of Personality and Social Psychology, 32 (3), 41 5-42 0. Copley, P. Thomas, and Frank L. Callom(1971), “ Industrial Search Behavior and Perceived Risk, ”Proceedings of second Annual Conference, Association for Consumer Research, 208-231. Cotte, June and Stacy L. Wood(2004),“Families and Innovative Consumer Behavior: A Triadic Analysis of Sibling and Parental Influence, ”Journal of Consumer Research, 31 ( June ), 78-86. deCatanzaro, Denys A. (1999),Motivation and Emotion : evolutionary, physiological, developmental, and social perspectives, Prentice Hall(デニス.A.デカタンザ ロ(2 0 0 5) ,『現代基礎心理学選書第5巻:動機づけと情動』 ,共同出版). Deci, Edward L.(19 75),Intrinsic Motivation, New York: Plenum Press( E. L. デ シ(1 9 8 0) ,『内発的動機づけ:実験社会心理学的アプローチ』,誠信書房). 20.

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