博 士 ( 理 学 ) 法 花 泰 利
学位論文題名
New Reactivity and Selectivity Induced by Designer Aluminum and Organosilicon Reagents (デザイン型アルミニウム・有機けい素反応剤による 新しい反応性及び選択性の獲得)
学位論文内容の要旨
精 密 有 機 合 成 に お い て 要 求 さ れ る 反 応 性 及 び 選 択 性は よ り 高 度 に、 よ り 多 彩 にな り つ つ あ り 、そ の 達 成 に は 反 応 剤 の 適 切 な 選 択 お よ び デ ザイ ン が 重 要 とな る 。 こ の こ とを ふ ま え 、 本研 究 は 有 機 ア ル ミ ニ ウ ム 反 応 剤 及 び 有 機 ケ イ 素 反 応 剤 の 適 切 な デ ザ イ ン か ら 従 来 に は な い 反 応 性 及 び 選 択 性 を 獲 得 す るこ と を 目 的 とし た 。
例 え ば 、 分 子 内 ラ ジ カ ル 環 化 反 応 は 有 機 合 成 化 学 にお い て 極 め て重 要 な 位 置 を占 め る 分 子 変 換プ ロ . セ スで あ り 、 環 骨格 を 一 挙 に 構 築す る 簡 便 か つ直 接 的 な 方 法論 で あ る 。 ラジ カ ル 種 の 独 特な反 応 性 の た め 以 前 は 高 度 な 立 体 制 御 は 困 難 と され て き た が 、ル イ ス 酸 の 添 加が 有 効 で あ るこ と が 明 ら か に な っ て き て お り 、 ラ ジ カ ル 反 応 の 高 度 な立 体 制 御 法 に関 す る 研 究 が 大き な 関 心 を 集め て い る 。 筆 者 は 精 密に デ ザ イ ン され た ル イ ス 酸 型レ セ プ タ ー ・アル ミニウ ムトリ ス(2,6−ジ フェニ ルフ ェノキ シ ド)(ATPH)を テ ン プ レ ー ト と し た 新 し い 分 子 内 ラ ジ カ ル 環 化 プ ロ セ ス の 開発 に 成 功 し た 。ATPHは親 酸 素 性 で あ る ア ル ミ ニ ウ ム の 前 面 に 配 位 子に よ り 形 作 られ る 特 異 な 反 応場 を 有 し 、 この 内 部 に 基 質 を 取 り 込 む こ と で 環 化 反 応 に 有 利 な 遷 移 状 態 の 形 成 を 容 易 に す る と 考 え ら れ る(Fig.1) 。
designer Lewis acid as tamplate
(ATPH)
Fig.l ATPH (Spacerilling modeD Fig.2 Template effect of designer Lewis acid モ デ ル 化 合 物1を ラ ジ カ ル 反 応 条 件 で 反 応 さ せ る と 通 常 の 方 法 で は環 化 生 成 物2の 収 率 は 低 い が、
A'IPH・1複 合 体 を 形 成 さ せ た 後 の 同 様の 反 応 か ら は2の み が ほ ぼ 定量 的 に 得 ら れた(Scheme1)。 こ の 際 通 常 で は 困 難 な 立 体 選 択 性 が 観 測 さ れ た 。
H3冫
catEtaBIBU3SnH I l)ATPH
toluene, ‑78 aC, 1 h 2) cat Et3B/BU3SnH
toluene. ‑78 0C, 1 h
32i53% 16% (EIZ = 54 : 46)
′邨
(2)‑2 (E)‑2 99% (ZIE = 81 : 19)
モ デ ル 化 合 物4を 用 い た ジ ア ス テ レ オ 選 択 的 ラ ジ カ ル 環 化 反応 に お い て 、通 常 の 条 件 では 高 い ト ラン ス 選 択 性 が観 測 さ れ た が、ATPHの添 加 は 選 択 性に 劇 的 な 変 化を も た ら し 、高 立体 選択 的にCISー5
ー222一
を 得 た(Scheme2)。
catEt3B/BU3Sn廴 r¥
to,uene 'j+
‑200C.lh 5/ 5(3,g7) trans‑5
99% (92 : 8) with ATPH
一方 、フッ化物イオンを触媒と するケイ素化合物のカルボニ ル化合物への付加反応は、 ほぼ中性 条件下 で行うことができるため、 有機合成上極めて有用な炭素 ―炭素結合形成反応のーつ である。
しかし 、例えばァリルシランは最 も卑近な化合物といえるが、 アリルシランのテトラブチ ルアンモ ニ ウム フ ルオ リド(TBAF)に よ る脱 シリ ル化 の 条件 はTHF中 環流 とぃ う比較的厳し いものであるた め、分 子内に不安定な官能基があ る場合などには利用できない とぃう問題がある。これは 主にアリ ル シラ ン とTBAFと の錯 形成 の 平衡 が反 応剤 の側に大 きく偏っているためと考えら れる俗cheme3‐ 1)。 そこで筆者は、分子内の適当 な位置にニつのシリル基を有するビス(アリル)シランAをデザイ ンし、 これを用いることでフッ化 物イ、オンとのキレート形成 より平衡を五配位ケイ素錯体Bの側に 偏らせ ることができるのではない かと考えた(Scheme 3‑2)。このようなアリルアニオン種の活性化が 実現す れば、敏感な官能基に影響 を与えることのない温和な条 件下でのカルボニル化合物 のアリル 化が可 能となる。
Scheme 3‑1
づ ゲ SiMa3 + BU4NF ‑ tSiMe3NBU4 Scheme3・2
\\/丶S.
十BU4NF一濱) も‥
〆ゴ丶/s クヘ ´ [A] (Bl
モ ノ アリ ルシ ラン7と フッ化物イオン触媒によるべ ンズァルデヒドのアリル化 反応は温和な条件 下ではほとんど進行 しない(Scheme4)。これに 対し、二つのアリルシラン部 分を繋ぐスペーサーと してべンゼン環を用 いたビス(アリル)シラン6を用いた同様の条件での反応からは、望ましいアル ル化 体8がほ ぽ定 量的に 得られた。この結果は期待し たキレート形成による反応 性の大幅な増大を 示唆 し てい るが 、筆 者は 、19F NMR測定 により6とフ ッ化物イオンから形成され るキレート型五配 位錯体に関する直接 的な知見を得ることに成功 した。
5 mal% BU4NF HCI MeOH THF. O'C. 1 h
けは
7
OH r Pr亅 丶丶 ´ ′ 丶
8 >99% with 6 4% with 7
さらに、ビス(プ ロバルギル)シラン9とフッ 化物イオン触媒によるべンズァルデヒドのプロバル ギル 化反 応 はほ ぽ完 全に 進 行し 、生 成物としてアレニル化 体11、プロパルギル化体12、工ンーイ ン体13が71:22:7の 比で 得ら れた(Scheme5) 。対 照的 に9のモ ノ体 で ある10に よる 同 様の反応は ほと んど 進 行しない。この例か らピスシリル化合物とフッ 化物イオンのキレート錯体Bの形成がプ ロパルギル化におい ても有効であることが明らか となった。
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Scheme 5
9 0r10 + PhCHO 1) 5 mol% BU4NF 21 HCI‑ MeOH P Meヨ Sし ァ ク 10
OH OH メ ィ ク ア ぷ 丿
1 1 1 2
+ Phv 移 13
>99% (71:22:7) with 9 trace with 10
以 上、 筆者 は デザイン型ルイス酸A'IPHを テンプレートとする分子内 ラジカル環化プ口セス、及 び新規なビス(アリル) シラン反応剤を用いるカルポニル化合物の触媒的アリル化反応を開発し、従 来にはない反応性・選択 性の獲得に成功した。
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学位論文審査の要旨
主査 教授 宮下正昭
副査 教授 丸岡啓二(京都大学大学院理学研究科)
副査 教授 辻 康之
副査 助教授 大井貴史(京都大学大学院理学研究科)
学位論文題名
New Reactivity and Selectivity 工 nduced by Designer Aluminum and Organosilicon Reagents
(デザイン型アルミニウム・有機けい素反応剤による 新しい反応性及び選択性の獲得)
本論文 は、有機アルミニウム化合物 及ぴ有機ケイ素化合物の本 来的特性を活かし、さらにそ の有用性 を向上させることを目的とし た新規分子変換法について 述ぺている。ここで扱ったル イス酸型 レセプターを鋳型とする分子 内ラジカル環化反応はルイス酸一塩基複合体形成を機軸と した近年 の立体制御法に端を発しつつ 、分子認識化学的視点に基 づぃたユニークな発想に立脚 している 。これは他に類を見ないだけ でなく高度な反応制御を実 現しており、その意義は大き い。また キレート型ビスシリル反応剤 とフッ化物イオン触媒によ るカルボニル化合物のアリル 化反応は 既に広範な研究が為されてい る高配位ケイ素化合物の化 学において、フッ化物イオン による適 当な位置のニつのケイ素原子 への同時配位という概念的 に新規な活性化法の導入を指 向するこ とでさらなる展開を試みてい る。その成果は合成化学的 見地及び反応論的見地の両面 において 非常に興味深く、従来の認識 を一変させる可能性を有し ている。これらの研究成果は いずれも 著者の持つ優れた独創性から 導かれたものであり、ルイ ス酸化学・有機ケイ素化学に おける新 たな知見を提供した点でその 貢献は大きい。
よ っ て, 著者 は, 北 海道 大学 博士 (理 学 )の 学位 を授 与さ れ る資 格あ るも の と認 める 。
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