博 士 ( 医 学 ) 北 川 浩 彦
学 位 論 文 題 名
ア ポ ト ー シス に 陥 っ たり ン パ 球 に対 す る B 2‑glycOprOtein I ( 汐 2‑GPI) と
抗 汐 2 ― GPI の 結合 性 の 検 討
学 位 論文 内 容 の 要旨
多 臓器 にわたる障宙と多彩な1!J己抗体の出現を認めるf℃ 表『r、JなI‑l己免疫疾患で ある全身性 エ リ テ マ ト ー デ ス (SLL)で は 、 そ の 血 栓 症 ・ 習 慣 流 産 .JnL小 板 減 少 な ど の 病 態 に , 抗 カ ル ジ オ リ ピ ン 抗 体 (aCL) や ル ー ブ ス ア ン チ コ ア グ ラ ン ト (LA) と い っ た 抗 リ ン 脂 買 抗 体 の 存 カ : が 聞 ケ し て い る こ と が 知1ら れ て い る .SLEの 診 断 基 准を 満た さず 、 他の 自己 免疫 疾 患の 所 児を 持た ない蕃jlこ発づ|芭の脳 梗塞,心筋梗聖,簡fi梗塞 忠肴や,習慣流産患者におい ても,抗リ ン 脂 買 抗 体 が 誑IサJさ れ る て と が あ り 、 こ の よ う な 患 者 群 に 対 し て , 抗 リ ン 脂 買 抗 体 症 候 群
(AI S)の私稀;が川 いられるようになった・
近〓|ミ, 1CLはカ ′レジオリピンそのものを認識するのではなく,力′レジオリピンとp2.グリコ ブロ テイ ンI(p2・Gl I)の締合 したcomplcxを認識し,その 結合岡;位(cpiめI)e)は ,カルジオ リ ビ ン に 結 合 す る こ と で 構 造 変 化 を起 てし たp2,GPIに出 現す る crypticなcpitope で ある こ と が 示 さ れ た . こ の よ う な 病 的 意 義 の あ るaCLはp2.GPI依存 性aCL, さら には 単 に抗p2.GPI抗 体と呼ばれるようになり っっある.
分 予 量50kDaのJfnIH嫡 蛋 ロ で あ るp2・GPHま ,血 漿q に150〜300いg/mlの 濃度 で存 在 して お り , カ ル ジ オ リ ビ ン や ホ ス フ ァ チ ジ ル セ リ ン (PS) な ど の 酸 性 リ ン 脂 買 と の 結 合 性 を 有 す る, 活t|! 化InL小 版で は,p2・G)Iは 脂質 二重 膜 である 細胞膜の外層に露出したPSに 結合して,
カル シウ ム依 存 性凝 固反 応を 抑J制す る.aCL(抗p2.GPI抗 体)は,血小板膜に結合し たD2.GI I に結合し卩2・GI Iの働 きを抑制して逆に過凝固の 状態に導くと考えられる.I)Sの露fJjは活制:化
|m小板 のみ でみ られ る 現象 では なく ,細 胞 死の 一形 態で あ り、 ¨programmedcelldcath ともI呼 ば ォLる ア ボ ト ー シ ス で も そ の 初 期 段 階 か ら 認 め ら れ る . リ ン 脂 買 結 合 蛋 白 で あ りか っ 凝固 抑 制 蛍 匚Iで あ る ア ネ キ シ ンVを ブ ロ ー ブ と し て 細 胞 表 面 上 に 露 |nし たPSをnowcytomctryで検 出 す る と , ア ボ ト ー シ ス の 諦 変 化 の ; 岱 行 と よ く 細 関 す る こ と が 示 さ れ た . ア ネ キ シ ンVは血 管 I勺皮細胞|勺に佇n:しているのに対し,p2・GI Iは|觚,1 に高濃度で存在していることから、Jm流 lI. の ア ボ ト ー シ ス 細 胞 に 対 し て 容 易 に 紂i合 し て 影 響 を 及 ばす もの と考 えら れ ,ア ネキ シンV と ア ボ ト ー シ ス 細 胞 と の 縦i合 と 比 較 し て , 臨 床 『r、J意 義 が 大 き い と 推 測 さ れ る . 一 方 ,p2−GPIが 酸 化 低 比 重 リ ポ 蛋 白 ( 酸 化LDL) に 結 合 す る こ と , お よ び 酸 化LDLに 結 合 し たp2―GPIに 対し て更 にp2.GPI依存 性aCL( 抗p2ーGPI抗 体) が結 合す る こと によ って マ クロ フ ア ー ジ へ の 酸 化LDLの 結 合 が 増 加 す る こ と が 報 告 さ れ て お り ,Fcレ セ プ タ ー を 介 し た 自 己 抗 体 依 存 的 な 酸 化LDLの 貪 食 機 序 が 存 在 す る こ と が 考 え ら れ る . ア ボ ト ー シ ス 細 胞 は , 酸 化 LDL同 様p2―GPIの 結 合 の 標 的 と な っ て お り , 血 中 に 抗p2‐GPI抗 体 が 存 在 す る こ とで ア ポト ー シ ス 細 胞 がp2―GPIを 介 し た 抗p2・GPI抗 体 の 結 合 の 標 的 とな り得 る. 従 って ,自 己抗 体 依存 的
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な マ ク ロ フ ア ー ジ に よ る ア ボ ト ー シ ス 細 胞 貪 食 の 機 序 が 存 在 す る 可 能 性 が あ る . 本研 究ではヒトT細胞自血病細胞であるJurkat細 胞に抗ヒトFas抗体によルア ボトーシスを 誘導し,アボトー シスの過程におけるl32−GPIおよび抗p2―GPI抗体の生理的意義を解明するた め に,APS患 者由 来お よびAPSモデ ルマウス由来の モノクローナル抗p2−GPI抗 体を用いて,
これらの抗体のア ボトーシス細胞およびp2−GPIへの反応性をflow cytometryで検討した.これ までにみられたマ クロフアージによるアボトーシス細胞の貪食に対する[32‑GPIおよび抗p2・ GPI抗体の関与についての報告では,抗p2−GPI抗体としてはp2ーGPIを動物に免疫して人為的 に 作成 した もの ,あ るい は,APS患 者由 来で あっ ても ポリ クロ ー ナル な抗 体が 使わ れて お り ,そ の反 応特 異性 につ いて は必 ず しも 論じ られ ては いな い.APS患者あるいはAPSモデル マ ウス 由来 であ り,APS患 者血 中に 認め られ る抗p2―GPI抗 体と同様p2ーGPI上のcryptlcな epitopeを認識する,モノクローナル抗駈―GPI抗体を用いて解析を行ったのは本研究が初めて である.
Jurkat細胞を抗 ヒトFas抗体で刺激しアボト ーシスを誘導した結果,経時的な形態学的変化 お よびDNAの断片化の進行と,アポトーシス誘導細 胞への[32‑GPIの結合がほぼ 並行している て とが 示された。ヒトp2−GPIをマウスに免疫して 得られたモノクローナル抗[32‑GPI抗体で は,32‑GPIの第3ドメインを認識するCof‑22抗 体ではアポトーシス細胞,p2ーGPI,およびCof‑
22抗体の三者によ る複合体を形成する傾向が見られたのに対し,第5ドメインを認識するCof‑
18抗体 を用 いた 実験 では アボ トー シス細胞に対す る[32‑GPIの結合を抑制する 傾向が見られ た.p2‑GPI上のcrypticをepitopeを認識するヒトAPS患者由来のモノクローナル抗体(EY‑1C8 抗 体) ,あ るい はヒ トAPSの動 物モ デル (WBF1マ ウス )由 来の 抗 体(WB‑CAL‑I抗体 )を 用 いた場合には、Cof・22抗体と同様にアポトーシス細胞,p2・GPI,および抗p2ーGPI抗体の三者 に よる 複合 体を 形成 する 傾向 が見 られた。しかし ながら、抗阯ーGPI抗体の結 合が明らかな Jurkat細胞数と,32‑GPIの結合のみが明らかな細胞数とに乖離が認められた。個々のアポトー シス細胞上の[32‑GPIの結合量の差や,結合した{32‑GPIの構造変化の程度,各抗体のp2・GPIに 対する親和性の違いなどが原因となり,32‑GPIの結合のみが明らかなJurkat細胞数と抗§2ーGPI 抗 体の 結合も明らかと なる細胞数,またその結合程度にてのような差をもたら していると考 えられる・
抗p2―GPI抗体はp2―GPIを介してアボトーシス細胞に結合するてとでもAPSの病態形成に関 与 して いる 可能 性が 示さ れた 。ま た 、抗 駈―GPI抗体 のAPSの病態への関与を 論じる場合に は、用いる抗体が 認識するepitopeb<正しく把 握されていないと、結果に大きな違いが生じう る てと が示 され た。 てれ らの 結果 は、APSの病態形成に対する抗p2‑GPI抗体の 果たす役割を 解明する上で、重 要な情報を与えるものと考えられる。
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学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
アポトーシスに陥ったりンパ球に対する グ 2 − glycoproteinI (B2 ― GPI) と
抗 p2 −GPI の結合性の検討
本 研 究は 、 抗 リン 脂 質 抗体 症 候 群患 者 に 出現 す る 、酸 性 リ ン 脂質 とp2‑glycoprotein icp2―GPI)との複 合体を 認識レ、 酸性リ ン脂質に 結合し たp2‑GPI上に露出される¨cryptic なepitopc に 結 合 する 抗p2―GPI抗 体 が 、細 胞 死 の 一形態で あるアポ トーシ スに陥っ た り ン パ 球 を 夕 一 ゲ ッ トと し て 結合 し う るこ と を 示 すも の で ある 。 研 究に あ た って は 、 マ ウ ス に ヒトp2―GPIを免 役 し て得 ら れ た抗 ヒ トp2−GPI抗 体(Cof・22抗体 、Cof・18抗 体 ) 、 抗 リン 脂 質 抗体 症 候 群の モ デ ルマ ウ ス 由来 の"crypticなcpitope に 結合 する抗 p2,GPI抗 体(WB‑CAL‑1抗 体)、抗 リン脂 質抗体症 候群患 者に由来する¨crypticなepitope
に 結 合 する 抗p2・GPI抗 体(EY‑ 10.8抗体) の、す べてモノ ク口ー゛ ナルな 抗体を用 い た 。 ヒ トT細 胞 性 自 血 病 細 胞 で あ るJurkat細 胞 を 抗 ヒ トFas抗 体 を 用 い て ア ポ ト ー シ ス に 誘 導 し 、 ヒ ト 血 漿 か ら 精 製 し たl32‑GPIを ピ オ チン 化 し 、ア ポ ト ーシ ス 細 胞へ の p2.GPIの 結 合をrlow cytomctryで観 察 し た とこ ろ 、ア ポトーシ スの進 行過程と32−GPI 結 合 細 胞 の 出 現 は 平 行し て 認 めら れ た 。ま た 、 ピ オチ ン 化p2・GPIと と もにp2−GPI上 の 異 な る ド メ イ ン を 認識 す る 抗p2・GPI抗 体 を加 え 、 ピオ チ ン 化p2−GPIの アポ ト ー シ ス 細 胞 へ の 結 合 に ど の よ う な 影 響 を 与 え る の か を 観 察 レ た 。 ア ポ 卜 一 シ ス 細 胞 へ の 132・GPIの 結 合 は 、p2,GPIの り ン 脂 質へ の 結 合部 位 を 含む 第5ドメ イ ン を認 識 し て結 合 するC.of ‑18抗 体によ って挧J制さ れたが、 第3ド メイン を認識するCof・22お.〔体では 抑 制 さ れ なか っ た 。こ の こと より、抗 体が認 識するエ ピト` 一プが異 なると 、抗32.GPI 抗 体 が ア ポ ト ー シ ス 細 胞 へ のp2‑CJPIの 結 合 に 与 え る影 響 は 違っ た も のに な り うる こ と が 示 さ れ た 。 ま た 、ア ポ ト ーシ ス 細 胞へ のp2・GPIの結 合 に はp2・GPIの りン 脂 質 結
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夫 光
敬
隆 利
池 出
木
小 上
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授 授
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教 教
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査 査
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主 副
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合 部 位 が 重 要で あ るこ とが 示さ れた 。ま た、32.GPIを 介し ての 抗p2・Gl)I抗 体の アポ トー 一シス細胞への結合をrIo¥丶 cyl川11etryで検討したところ、抗p2・GPI抗体が結合した ア ポ ト ー シ ス 細 胞 の 出 現 も ま た 、 ア ポ ト ー シ ス の 進 行 に 沿 っ て 増 加 し て い た 。 こ れ ら の 結 果 に よ り 、 ア ポ ト ー シ ス 細 胞 はp2‐GPIと 抗p2‐GPI抗 体 と の複 合 体を 形成 する 事が 示された。また、マクロファージ(M¢)のFc‐レセプター(Fc−R)を介して貪食除去 さ れ う る こ と 、 抗 リ ン 脂 質 抗 体 症 候 群 にお い て出 現す る抗B2.GPI抗体 は 、ア ポト ー一 シ ス 細 胞 へ の 結 合 に よ っ て も 病 態 形 成 に 関 与 し う る こ と が 考 え ら れた 。 発表 終了 後、
副 査 の 古 木 教 授 か らM¢ を 用 い た 実 験 の 有 無 、 ス カ ベ ン ジ ャ ー レ セ プ タ ー を 介 す る 貪 食 とFc・Rを 介し た貪 食で の差 の有 無、 血小 板 以外 に活 性化 され た細 胞に 対し てD2・GPI と 抗p2・GPI抗 体 の 結 合 の 可 能 性 に つ い て の 質 問 が あ っ た 。 続 い て 、 副 査 の 上 出 教 授 か ら 、 実 際 にp2・GPIと 抗p2・GPI抗 体 お よ び ア ポ ト ー シ ス 細 胞 に よる 複 合体 の患 者血 中 で の 増 加 の 確 認 の 有 無 、p2・GPIと 抗p2,GPI抗 体 と の 複 合 体 が もた ら す影 響は 、凝 固 系 に 対 す る 場 合 とM中 に よ る 貪 食 処 理 と ど ち ら に 優 位 に 働 く の か 、p2・GPIとア ネキ シ ン‐Vとで はど ちら の方 がア ポト ー シス の検 出の 感度 がよ いの か、p2−GPIと抗p2−GPI 抗 体 、 お よ び ア ポ ト ー シ ス 細 胞 に よ る 複 合 体 は 一 般 の 免 疫 複 合 体 と 同 様 に 考 え て よ い の か と の 質 問 が あ っ た 。 こ れ ら の 質 問 に 対 し 、 申 請 者 は 概 ね 適 切 な 回 答 を し た 。 最後 に、今後の研究に対する展望を述べ、質疑応答を終了し た。
こ の 論 文 は 、 抗 リ ン 脂 質 抗 体 症 候 群 に お い て 出 現 す る 主 要 な 自 己抗 体 であ る抗p2・ GPI抗 体 の 生 体 内 で の 役 割 の 一 部 を 解 明 す る 研 究 と し て 高 く 評 価 さ れ 、 今 後 の 研 究 に よ り 抗 リ ン 脂 質 抗 体 症 候 群 の 病 態 形 成 機 序 の 一 端 が 解 明 さ れ る も の と 期 待 さ れ る 。 審 査 員 一 同 は 、 こ れ ら の 成 果 を 高 く 評 価 し 、 大 学 院 課 程 に お け る 研 鑽 や 取 得 単 位 な ど も 併 せ 申 請 者 が 博 士 ( 医 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 十 分 な 資 格 を 有 す る も の と 判 定し た。
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