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(早期特発性大腿骨頭壊死症の予後)

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 伊 藤    浩

     学位論文題名

Prognosis of Early Stage Avascular     Necrosis of the Femoral Head

(早期特発性大腿骨頭壊死症の予後)

学位論文内容の要旨

  MRIを 用 いて 早期 に 診断 した 大腿 骨頭 壊 死症 の予 後を 臨床 的 かつX線 学的 に検 討し 、症 状 発 生の 有 無に 関与 する 要因 を 考察 した 。症 例は1985年 から1993年 までMRIT1強調画像冠状断 でbandかhomogeneousまた はinhomogeneous pattemを示 し た、 早期 特発 性大 腿骨頭壊死症63 例72関 節 であ る。 アル コー ル 性が9例 、ス テロ イド 性が49例、 狭義 の特 発性 が5例。MRI使用 機種は シーメンス社製で、1988年ま では0.5 Tesla、それ以降は超伝導型1.5 Teslaを用いた。骨 頭 中心 を 通るTl強 調画 像冠 状 断に おい て、Sug anoらの方法で臼蓋荷 重部を3等分し骨頭健常 部 の 占 め る 割 合 に 応 じ てTypeA、B、Cの3つに 分類 した 。TypeAは壊 死 範囲 が臼 荷重 部の 内 側1/3以 内 、TypeBは内 側1/3を 超え2/3以内 、TypeCは2/3を 超え るも の とし た。 初回 にMR画 像で異 常所見を示した時の平均年齢は35歳(17 ‑ 64歳)で、平均経過観察期間は6年1か月く4〜12 年 )であった。X線学的評価は前後像とLow ensteinの側面像で行い、大 腿骨頭壊死症の病期は Steinbergらの 方法 で 分類 した 。MR画 像でTypeCを 示しかつ最終経過観 察時に症状のなかった 症 例のX線学的 評価項目として、Steinberg病期、帯状硬化像の有無、骨 透亮像の有無、壊死部 の骨硬 化像の有無の4っを検討した 。

  MR画 像 をType分 類 す る と 、72関 節 中TypeAが5関 節 、TypeBが8関 節 、TypeCが59関 節 で あ っ た 。 初 期のX線 病期 分類 は、Stage1が35関節 、Stage2が33関 節、Stage3が4関 節で あ った。 最終観察時には72関節中46関節(64ゲ。)に股関節痛の症状を認めた。手術的治療として4 関 節に大腿骨転 子間内反骨切り術、6関節に 大腿骨頭前方回転骨切り術 、20関節にBipolar人工 骨 頭置 換 術、12関 節に 人工 関節置換術が施 行されていた。MR画像のTyp胡|」に観察時の股関 節 痛 の 有 無 を 検 討 す る と 、 股 関 節 痛 を 認 め た 例 はTypeAは な し 、TypeBは8関 節 中2関 節 (250/0)、TypeCは59関 節中44関節(75)で あり、TypeAおよびB群とTypeC群とを比較すると、

TypeC群で有意 に症状発生率が高かった(pく0.0001)。性別、年齢、初 期X線病期と症状の有無 と の 間 に は 有 意 差 を 認 め な か っ た 。MR画 像でTypeCを 示し たに もか か わら ず観 察時 に症 状 を 認 め な か っ た15関 節 をX線 学 的 に 検 討し た。15関節 中9関 節 はStage1のま ま で、6関節 は Stage2ま たは3であ っ た。Stage2ま た は3で あっ た6関中、厚い帯状硬 化像が6関節に、壊死部 の骨硬 化像が6関節に、骨透亮像が1関節にそれぞれ認められた 。

  特発 性 大腿 骨頭 壊死 症の 早 期診 断に おけ るMRIの 高い 有 用性 は世 界中 で認 められている。

168 ‑

(2)

大腿骨頭壊死症の予後には壊死病変の局在や広がりが大きく関与するため、MRIによって描 出された壊死範囲によってその予後を予測しようとする試みが諸家によってなされている。

SuganoらのType分類では、壊死範囲が各々のTypeの中間である例があり判定に苦慮すること があるが、分類方法が簡便で用いやすいとぃう長所がある。MRIによる予後予測を行う場合、

冠状断のみでなく糸状断など他の断面を含めて3次元的に検討して壊死部位と壊死範囲を総合 的に考慮すれば、よりその精度は上がるとする報告も多いが、検討方法がやや煩雑となる欠 点があり、撮影肢位の違いや複数の画像観察者の間でその結果が異なる可能性がある。本研 究により、Suganoらの分類でTypeC、すなわち壊死範囲が臼荷重部の2/3を超えるものは有意 に臨床成績が劣ることが明らかになった。この分類法はX線病型に準じていて分かりやすく、

臨床的予後をある程度予測可能で有用な方法と思われた。

  これまでの諸家の報告では、予後予測に用いる壊死部位や範囲の評価方法は様々であって も、骨頭荷重面に対する壊死範囲が広いほど骨頭圧潰が進行し予後不良である点では一致を みている。しかしMRIで異常所見を示してから股関節痛が発生するまでの期間は症例により 異なり、壊死部位や範囲がほぽ同等でも早期に症状が出現する例と比較的長期間症状が出現 しない例がある。そこで本研究ではTypeCを示したにもかかわらず観察時に症状がなかった 15関節をX線学的に検討し、病理学的に考察した。壊死部位に対して生じる生物学的修復反 応は、壊死周辺部から始まり壊死骨梁が吸収されつつ新しい骨形成反応起こる。しかしその 骨吸収と骨形成のバランス、修復速度にはある程度の個体差があり、骨吸収反応が旺盛で骨 頭圧潰が早期に進行して症状が出現する例と、添加骨形成反応が比較的強く骨頭圧潰が生じ にくい例があることが推測された。15関節中Stage1のままであった9関節では骨壊死の修復反 応が遅いものと思われた。GlimcherとKenzo剛よ、壊死骨は長期間に渡り構造上の変化を伴わ ずに機能し、修復反応の遅延や停止が起きると骨頭圧潰は遅れると報告し、修復反応が進行 していく過程で圧潰が生じると述べているが、これらは本研究結果と合致する。Kopeckyらや MullikenらはMRIを用いた大腿骨頭壊死症の研究でStage1のまま治癒する可能性を示唆した が、彼らの平均経過観察期間はそれぞれ16か月、22か月と本研究より短く、その後の経過中 に骨頭圧潰が生じる可能性もあるものと思われる。また、本研究においてTypeCを示して観 察時に症状がなかった15関節中Stage2または3であった6関節では厚い帯状硬化像や壊死部の 骨硬化像が認められたが、これらの修復反応では壊死骨吸収に比べて添加骨形成反応が旺盛 でカ学的に強いため骨頭圧潰が進行しにくいと考えられた。これは我々が以前に報告した、

壊死骨梁が肥厚して修復反応に乏しい例や骨吸収反応に乏しく添加骨形成が旺盛である例で は 骨 頭 圧 潰 が 進 行 し に く い と ぃ う 内 容 と 合 致 す る も の と 思 わ れ た 。   以上、本研究によって、MR画像で壊死範囲が臼荷重部の2/3以上を占めるにもかかわらず X線学的に異常所見のないStage1のまま経過する例などで、比較的長期間股関節痛が出現し ない例があることが判明した。

  早期特発性大腿骨頭壊死症においてはその予後予測が重要である。本論文は、早期にMRI を用いて診断した特発性大腿骨頭壊死症を経時的に観察して壊死部位による股関節痛の発現 率を明らかにした点で、予後予測に関する重要な情報を提供している。また、壊死域が広範 囲に臼荷重部を占めるとその予後は不良なことは従来から知られていたが、壊死域が広範囲     ー169―

(3)

でも症状が出現しにくい例が存在することを報告し、その理由をX線学的に分析して病理学 的考察を含めて報告した初の論文である。壊死範囲が広い大腿骨頭壊死症の予後を、X線像 による経過観察である程度予測し得ることを明らかにした報告は過去に例がなく、今後より 長期 の経 過観 察を 行う こ とで 、さ らに 精度 の高い予後予測法の確立が期待される。

170ー

(4)

学位論文審査の要旨

     学位論文題名

Prognosis of Early Stage Avascular     Necrosis of the Femoral Head

( 早 期特 発 性 大腿 骨 頭 壊死 症 の 予後 )

  MRIの進歩により特発性大腿骨頭壊死症は早期に診断可能となったが、これまでMRIで診 断した早期大腿骨頭壊死症を長期に経過観察し、その自然経過を研究した報告は皆無であっ た。そこで申請者は、予後を明らかにするために、MRIを用いて早期に診断した大腿骨頭壊 死症の予後を臨床的かつX線学的に検討し、症状発生の有無に関与する要因を考察した。症 例は1985年から1993年までMRIで異常像を示した、早期特発性大腿骨頭壊死症63例72関節で ある。アルコール性が9例、ステロイド性が49例、狭義の特発性が5例。骨頭中心を通るTl強 調画像冠状断において、Suganoらの方法でTypeA、B、Cの3つに分類した。TypeAは壊死範 囲が臼荷重部の内側1/3以内、TypeBは内側1/3を超え2/3以内、TypeCは2/3を超えるものとし た。初回にMR画像で異常所見を示した時の平均年齢は35歳(17〜64歳)で、平均経過観察期間 は6年1か 月(4〜12年 ) で あ っ た 。X線 病 期 はSteinbergら の 方 法 で 分 類 し た 。   MR画像 をType分類 すると、72関節中TypeAが5関節 、TypeBが8関 節、TypeCが59関節 であった。初期のX線病期分類は、Stage1が35関節、Stage2が33関節、Stage3が4関節であ った。最終観察時には72関節中46関節(64%)に股関節痛の症状を認めた。手術的治療として4 関節に大腿骨転子間内反骨切り術、6関節に大腿骨頭前方回転骨切り術、20関節にBipolar人工 骨頭置換術、12関節に人工関節置換術が施行されていた。MR画像のTyp eSIJに観察時の股関 節痛 の有無を 検討す ると、股 関節痛 を認めた 例はTypeAはなし、TypeBは8関節中2関節 (25ゲ。)、TypeCは59関節中44関節(75鋤であり、TypeAおよびB群とTypeC群とを比較すると、

TypeC群で有意に症状発生率が高かった(pく0.0001)。性別、年齢、初期X線病期と症状の有無 との間には有意差を認めなかった。MR画像でTypeCを示したにもかかわらず観察時に症状 を認めなかった15関節をX線学的に検討した。15関節中9関節はStagelのままで、6関節は Stage2または3であった。Stage2または3であった6関中、厚い帯状硬化像が6関節に、壊死部 の骨硬化像が6関節に、骨透亮像が1関節にそれぞれ認められた。

  本研究により、MRIを用いて診断した早期特発性大腿骨頭壊死症の自然経過が明らかにな

171

則 志

和 清

田 田

安 金

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

った。これまでの諸家の報告では、骨頭荷重面に対する壊死範囲が広いほど骨頭圧潰が進行 し予後不良である点では一致をみている。しかしMRIで異常所見を示してから股関節痛が発 生するまでの期間は症例により異なり、壊死部位や範囲がほぽ同等でも早期に症状が出現す る例と比較的長期間症状が出現しない例がある。その理由を本結果から考察した。壊死部位 に対して生じる生物学的修復反応は、壊死周辺部から始まり壊死骨梁が吸収されつつ新しい 骨形成反応起こる。しかしその骨吸収と骨形成のバランス、修復速度にはある程度の個体差 があり、骨吸収反応が旺盛で骨頭圧潰が早期に進行して症状が出現する例と、添加骨形成反 応が比較的強く骨頭圧潰が生じにくい例があることが推測された。TypeCを示して観察時に 症状がなかった15関節中Stagelのままであった9関節では骨壊死の修復反応が遅いものと思わ れた。GlimcherとKenzo raは、壊死骨は長期間に渡り構造上の変化を伴わずに機能し、修復反 応の遅延や停止が起きると骨頭圧潰は遅れると報告し、修復反応が進行していく過程で圧潰 が生じると述べているが、これらは本研究結果と合致する。また、TypeCを示して観察時に 症状がなかった15関節中Stage2または3であった6関節では厚い帯状硬化像や壊死部の骨硬化 像が認められたが、これらでは壊死骨吸収に比べて添加骨形成反応が旺盛でカ学的強度が高 いため骨頭圧潰が進行しにくいと考えられた。

  公開発表に際し、副査の眞野行生教授から壊死発生機序についての質問があった。また副 査の金田清志教授からステロイド投与が壊死修復反応へ及ぽす影響についての質問があった。

さらに主査の安田和則教授から本疾患における細胞レベルでの骨形成・吸収機構の病態、お よび本研究から臨床への提言に関する質問があった。申請者は何れに対しても研究成果と文 献を応用し、妥当な回答を行った。

  特発性大腿骨頭壊死症の予後を、MRIを用いての早期診断と、X線像による経過観察で検 討した報告は過去に例がなく、今後より長期の経過観察を行うことで、さらに精度の高い予 後予測法の確立が期待される。

  審査委員一同はこれらの成果を高く評価し、申請者が博士(医学)の学位を受けるのに十 分な資格を有すると判定した。

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参照

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