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博士(歯学)森 幸徳 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(歯学)森   幸徳 学位論文題名

骨 芽細 胞様 細胞 のカ ルシウム依存 ATPase 活性 学位論文内容の要旨

緒言

  硬組織の形成は、硬組織形成細胞による基質の合成および分泌と、基質へのミネラル沈着 による石灰化の過程を経て進行する。我々は、マウスの頭蓋冠から樹立された骨芽細胞様細 胞株で あるMC3T3−El細胞(El細胞)を用いて、細胞の石灰化にALPの活性が必須であるこ とと、ALPはプロテインホスファターゼとして機能している可能性について示してきた。その過 程で、 精製したEl細胞のALPがATPase活性を示すことも明らかになった。そこで、El細胞 におけるATPase活性の役割を調べる必要があると考え、特にカルシウムによって活性化され るATPaseの検出を試みた。

材料と方法

1.細胞培養と分画

  El細胞を10%牛胎 児血清を 加えたQーMEMで5%C02ー95%空気 、37℃気 相下にて 培養 し、十分に石灰化が行われた培養開始後約30日の細胞を回収した。超音波処理後、遠心操 作 に よ っ て 核 お よ び ミ ト コ ン ド リ ア 、 細 胞 質 と ミ ク ロ ソ ー ム 分 画 を 得 た 。  

2.各種酵素活性の測定

  トリス塩酸あるいは炭酸緩衝液によって広くpHを変えて、ATP、ADP、B―グリセロリン酸の 加水分解反応を行い、酵素反応の結果生じた無機リンをChifiletらの方法にて定量した。また、

あらかじめ300ロ1のSDSを加えて酵素を変性させてからATP、ADP、ロ―グリセロリン酸を加え ても検出される値を、ブランクとして差し引いた。主に以下のような条件について測定を行つ た。

1)ATPase活性のpH依存性

2) ATPase活性の金属イオン要求性

  種々濃度の2価金属、Cu2十、Ca2十、Mg2゛存在下でのATPase活性の変化を調べた。また、2 価 金 属 イ オ ン の キ レ ー タ ー で あ るEDTAのATPase活 性 に 与 え る 影 響 を 調 べ た 。 3)各種ATPase阻害薬のATPase活性に与える影響

  ATPase阻害薬であるvanadate、ouabain、N―ethylmaleimide、bafilomicin、azideをカロえて ATPase活性の変化を調べた。

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3.パラニトロフェニルリン酸加水分解( pNPPase)活性の測定

  酵素反応の結果生じたパラニトロフェノール(pNP)の発色を、420nmで測定することにより定 量した。

鈷果

1.MC3T3−El細胞(El細胞)のカルシウム依存性ATPase活性の検出

  核とミトコンドリア、細胞質及びミクロソームのカルシウム依存性のATPase活性を測定したと ころ、比活性はそれぞれ24.2,19.7および110.3 nmol Pi/mg protein/minであった。これ以 降の実験では比活性の一番高いミクロソーム分画を用いた。

2.カルシウム依存性ATPase活性のpH依存性

  ImMのCa2゛ あるいはMg2゛存在下でのATPase活性のpH依存性を調べた。Ca2゛の方が活 性は低いpHで増加し始め、pH7.43から8.16まではCa2゛存在下の活性はMg2゛存在下の活性 の約2倍であった。pH8.56からは両活性ともほぼプラトーに達したが、Mg2゛存在下の活性のほ うが10%程度低かった。Ca2゛存在下での最大活性は約pH10.5で得られた。一方、Mg2゛存在 下では、pH8.56から9.79まではほばプラトーであったが、それより高いpHでは活性は低下し た。これらのアルカリ性pH、でのATPase活性は、あらかじめSDSを添加してタンパク質を変性 させると観察されなかった。

3.アルカリ性pHでのATPase活性のCa2゛およびMg2+濃度依存性

  pH10.43において活性はCa2゛およびMg2+濃度に依存して増加した。Ca2゛の場合50%活性 化濃度は約150ルM、Mg2゛存在下では60uM以下であった。Ca2゛存在下での活性はMg2゛存 在下の約5倍の値を示した。

4.pH 7.4でのATPase活性のCa2十およびMg2+濃度依存性

  実 験に用い たEl細胞 はpH7.4前後のQ―MEMを用い て培養すると、石灰化部位を形成す る細胞である。そこでpH7.4におけるATPase活性の性質を調べた。pH7.4においてもATPase 活 性はCa2゛およぴMg2゛濃度に依存して活性化され、50%活性化濃度はいずれも約100HM 程度であった。ImMのCa2十存在下での活性はMg2゛存在下での活性の約2倍であった。また、

あらかじめImMのCa2゛が存在する条件下でMg2゛の濃度を増加させると、活性は低下した。

Cu2十存在 下では 、ImMま での濃 度範囲で 活性が増 加する ことはな くむし ろ低下した。

5. 各 種 ATPase活 性 、 お よ び ア ル カ リ 性 ホ ス フ ァ タ ー ゼ 阻 害 剤 の 効 果   EDTAは 濃度に 依存してATPase活性を抑制し、lOmMではほぼ完全に抑制した。また多く のATPaseの阻害剤として知られているvanadateもその濃度に依存してATPase活性を抑制し たが、最大でもlOmMにおいて約50%であった。ouabain、bafilomycin、N→ethylmaleimideおよ びazideを添加しても活性は抑制されなかった。また、アルカリ性ホスファターゼの阻害剤であ る レ バ ミ ゾ ー ル 存 在 下 に 船 い て も 、 ATPase活 性 のpH依 存 性 を 示 し た 。

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6. 酵素 活 性の 基質 特異 性

  pNPP分解 活性 は アル カリ 性pHより 、 むし ろ酸 性pHにお い て高 かった。 ロ―グリセロリン酸 分 解活 性は 、レ バ ミゾ ール の有 無に か かわ らず 顕著 なpH依 存性 を示 さな か った 。ADPの 分解 活 性 はATPase活 性 よ り 低 い が、ATPase活性 の場 合と 類 似し たpHプロ ファ イ ルで 加水 分解 さ れ た。 レバ ミゾ ー ル存 在下 でも 、同 様 の結 果が 得ら れた 。

考察

1. 従 来 知 ら れ て いる 筋小 胞体 あ るい は形 質膜 に存 在 する 主要 なCa2+―ATPaseはい ずれ も 至 適pHが 中性 付近 で ある が、 この 酵素 の至適pHはかなり高い アルカリ性であった。あら かじめ、

SDSを添 加 して タン パク 質変 性 操作 を行 って か ら活 性測 定を 行うと検出されないので 、高いpH でのアーチフ ァクトではない。また、アルカリ性ホスファターゼ阻害剤の作用、パラニ卜ロフェニ ル リン 酸お よび8ーグリセロリ ン酸を基質とした結果などか ら、測定しているATPase活 性がアル カリ性ホスフ ァターゼによるものとは考え られなかった。

2. ATPase活 性 のpH依 存 性 、Ca2+お よ びMg2+の 濃 度 依 存 性 、vanadateによ る阻 害様 式な ど から 、 測定 して いる 活性 が1種類 と は考えにくい。膜結合 酵素であると推定したので 、界面 活 性剤 で 可溶 化し た後 にグ リ セロ ール の密 度勾 配 遠心 を行 う方 法を試みたが、今回は 精製を 行 う こ と が で き な か っ た 。 精 製 し て 、 さ ら にATPaseの 性 質 を 検 討 す る 予 定 で あ る 。

3. 実 験 に 用 い たEl細 胞 が 基 質 を 石 灰 化 するpH7.4で のこ の 酵素 の性 質に つい て 調べ たと こ ろ 、Mg2+で も活 性 化し うる が、 本質的にはCa2+依 存性のATPaseが存在するもの と考えられた。

阻 害 剤 に 対 す る 反 応 性 か ら は 、 従 来 知 ら れ て い る ATPaseと は 異 按 る 。

結諭

  骨 芽細 胞様 の細 胞 であ るMC3T3ーElのミ クロ ソ ーム 分画 に、 アルカリ性に至 適pHをもちCa2

゛に よっ て活 性化 さ れるATPaseを 見 出し た。 種々 の性 質 より 、新規のATPaseで ある可能性が ある 。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

骨芽 細胞様細 胞のカル シウム依存ATPase 活性

  審 査 は 、 全 審 査 委 員 出 席 の も と 行 い 、 ま ず 学 位 申 請 者 に 対 し て 提 出 論 文 の 内 容 の 説 明 を 求 め た 。 学 位 申 請 者 か ら は 以 下 の 内 容 の 論 述 が な さ れ た 。

  硬 組 織 の 形 成 は 、 硬 組 織 形 成 細 胞 に よ る 基 質 の 合 成 お よ び 分 泌 と 、 基 質 へ の ミ ネ ラ ル 沈 着 に よ る 石 灰 化 の 過 程 を 経 て 進 行 す る こ と か ら 、 カ ル シ ウ ム の 能 動 輸 送 を 行 う シ ス テ ム が 必 要 で あ る 可 能 性 が あ る と 考 え ら れ る 。 そ こ で 、 骨 芽 細 胞 様 細 胞 株 で あ るMC3T3−El細 胞(El細 胞 ) を 用 い て 、 カ ル シ ウ ム に よ っ て 活 性 化さ れるATPaseの 検出 を試 みた 。

  通 法 に 従 っ てEl細 胞 を 培 養 し 、 十 分 に 石 灰 化 が 行 わ れ た 培 養 開 始 後 約30日 の 細 胞 を 回 収 し た 。 超 音 波 処 理 後 、 遠 心 操 作 に よ っ て 核 お よ び ミ トコ ンド リア 、 細 胞 質 と ミ ク ロ ソ ー ム 分 画 を 得 て 、 カ ル シ ウ ム 依 存 性 のATPase活 性 を 測 定 し た と こ ろ 、 比 活 性 は そ れ ぞ れ24.2,19.7お よ び110.3 nmol Pi/mg protein/min で あ っ た 。 こ れ 以 降 の 実 験 で は 、 比 活 性 が 一 番 高 い こ と と 、 輸 送 に 関 与 し て い る可 能性 があ ると いう こと から ミク ロソ ーム 分画 を用 い た。

  1 mMのCa2゛ あ る い はMg2゛ 存 在 下 で のATPase活 性 のpH依 存 性 を 調べ たと ころ 、 Ca2゛ の 方 が 低 いpHで 活 性 が 増 加 し 始 め 、pH7.43か ら8.16ま で はCaz→存 在下 の 活 性 はMg2゛ 存 在 下 の 活 性 の 約2倍 で あ っ た 。pH8.56か ら は 両 活 性 と も ほ ば プ ラ ト ー に 達 した が、Mg2゛ 存在 下の 活性 のほ うが10% 程度 低か った 。Caz→存 在下 で の 最 大 活 性 は 約pH 10.5で 得 ら れ た 。 一 方 、Mg2゛ 存 在 下 で は 、pH8.56から9.79 ま で は ほ ぼ プ ラ ト ー で あ っ た が 、 そ れ よ り 高 いpHで は 活 性 は 低 下 し た 。 こ れ ら の ア ル カ リ 性pHで のATPase活 性 は 、 あ ら か じ めSDSを 添 加 し て タ ン パ ク 質 を 変 性 さ せ る と 観 察 さ れ ず 、 ア ル カ リ 性 ホ ス フ ァ タ ー ゼ(ALP)の 阻 害 剤 存 在 下 で も 活 性 に 変 化 が な か っ た こ と か ら 、ALP以 外 の 酵 素 活 性 に よ る も の と 結 論 し た 。   pH 10.43にお いて 、活 性 はCa2゛ およ びMgz+濃 度に 依 存し て増 加した。Ca2→の場 合50% 活 性 化 濃 度 は 約150ロM、Mg2゛ 存 在 下 で は6 0uM以 下 で あ っ た 。   実 験 に 用 い たEl細 胞 はpH 7.4前 後 のQ‑MEMを 用 い て 培 養 す る と 、 石 灰 化 部

明 人

   

   

邦 正

木 村

鈴 田

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

位 を形 成す る細胞 であ る。 そこ でpH7 . 4 にお ける ATPase 活 性の 性質を調べた。

ATPase 活性はCa2 ゛およびMg2 ゛濃度に依存して活性化され、50 %活性化濃度はいず れ も約 lOOuM 程度 であ った 。lmM のCa2 → 存在下 での 活性 はMgz ゛ 存在下での活性 の 約2 倍 であ ろた 。ま た、 あら かじ めlmM のCa2 ゛が 存在 する 条件 下でMgz ゛の濃 度 を増 加さ せると 活性 は低 下し たこ とか ら、 本質 的に はカ ルシ ウムに依存する ATPase 活性が存在すると結論した。

   従来 知ら れてい る各 種ATPase に対 する 阻害 剤の 効果 を検 討し た。EDTA は濃度 に 依 存 し て ATPase 活性 を抑制 し、 10 mM で はほ ぽ完 全に抑 制し た。 また 多く の ATPase の 阻 害 剤 と し て 知 ら れ て い るvanadate も そ の濃度 に依 存し てATPase 活 性を抑制したが、最大でも10 mM において約50 %であった。ouabain 、bafilomycin 、 N − ethylmaleimide お よ び azide を 添 加 し て も 活 性 は 抑 制 さ れ な か っ た 。    酵素活性の基質特異性を調べたところ、ALP の基質は良い基質とならなかった。

ま た 、 ATP の 約 50 % の ADP 分 解 活 性 が 検 出 さ れ 、 ATPase 活 性 の 場 合 と 類 似 し たpH プロファイルを示した。

   以 上 の 結 果 か ら 、 カ ル シ ウ ム 依 存性 で 、 ア ル カ リ性に 至適 pH を 持つ 新規 の ATPase ある いはヌ クレ オチ ダー ゼが 存在 する と考 え酵 素の 精製 を試みたが、界 面 活 性 剤 に 対 し て 不 安 定 で あ り 、 今 回 は 精 製 で き な か っ た 。

   以 上の論 述に 引き 続き 、各 審査 委員 より提出論文の内容ならびにそれに関連 のあ る学術 につ いて 口頭 によ り質 疑お よび試問が行われた。主な試問内容とし ては 、ATPase と ALP の関 連、 ミク ロソー ム分 画の 定義 、カ ルシ ウム で活性化さ れ ない basic な ATPase の性 質、 ADP 分解 活性と ヌク レオ チダ ーゼ の関 連な どが あり 広範囲 にわ たっ た。 いず れの 質問 に対しても学位申請者から適切かつ明快 な回 答が得 られ た。 また 、今 後の 研究 の方向性と将来の展望などについても明 確な方針が示された。

   本 論文の 内容 は高 いレ ベル にあ り、 今後のこの分野の研究の発展に大きく寄

与す るもの と考 えら れた 。加 えて 、試 問の結果より学位申請者は専攻分野の専

門領 域のみ なら ず関 連分 野に つい ても 十分な学識を有していることが認められ

た。従って、学位申請者は、博士(歯学)の学位を授与されるのにふさわしいと

認められた。

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