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(新規を機能性酸化還元系の研究:多重入出力型分子応答系の構築)

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 理 学 ) 樋 口 博 紀

     学 位 論 文 題 名

Studies on Novel Functionalized Redox Systems:

Construction of R/Iulti‑input and ‑output rvIolecular     Response Systems

(新規を機能性酸化還元系の研究:多重入出力型分子応答系の構築)

学位論文内容の要旨

  光、熱、電場などの外部刺激によってその物性値を可逆に変化させる分子応答系は、分子スイッチや デバイスなどへの応用が期待されている。電気化学的入カによって色調の変化するエレクトロクロミズ ム系はその代表例である。分子応答系の多くは原理的に単一の入カに対して単一の出カを与える。しか しながら近年では、複数の入カや出カを行うことができる応答系へと興味が移行している。このような 観点から本研究ではエレクトロクロミズム系の分子素子としての応用をも踏まえ、さらなる機能の付与 された酸化還元系の構築を目指した。.特に、1,3.ジェン骨格の2,3−位がジプロトン化された特異な構造 を有するブタン‐1,4―ジイルジカチオンの安定化に初めて成功し、このものを機軸とした様々な応答系に ついての研究を展開した。本論文は以下の五章で構成されている。

  第一章では、プロトン移動によってスイッチされる二重モードエレクトロクロミズムという特異な系 のプロトタイプの構築に成功した(スキーム1)。淡黄色のオレフイン1の酸化的二量化によって濃青色 の1,4‐ジカチオン22゛が安定な塩として単離することができた。またこの塩を還元するとC‑C結合の開 裂を伴って出発物のオレフイン1へと変換できる。さらに22゛に塩基を作用させて脱プロトン化を行う ことで強い黄色のジェン3へと変化することができ、このものは紫色のジカチオン42゛とでニ電子移動 を伴い可逆に相互変換する。したがって、この系ではプロトン移動の前後でニつの異なったモードの色 調変化を示すエレクトロクロミズム系であり、電場、pHのニっの信号を入カとする多重入力型応答系 としての展開が可能である。

    Scbeme1

    Ar Ar  2H ゛   Ar Ar      一 上 → ArAr

Ar 斧 ‑Ar 一 Ar#Ar

3      42+

[‑ ‑l  Mode‑2

       Ar = p‑Me2NC6H4

  第二章では、ビフェニル骨格を有する酸化還元系を設計した(スキーム2)。ジオレフィン5は酸化に よって分子内でC‑C結合を形成し、渡環型1,4|ジカチオン62゛を生成する。このものは安定な塩として     ―218―

      p /          2

2

(2)

単 離さ れ 、 還 元に よ っ て 出発 物 の ジ オレ フ ィ ン5を 再 生す る 。 ま たこ の時、 中性状 態とカ チオン 状態で 大 きく 色 調 が 変化 す る た めこ の 系 は 分子 内 で のC‑C結合 形 成 、 切断 過程 を伴っ たエレ クトロ クロミ ズム 系 とな る こ と が明 ら か と なっ た 。 こ の時 、5の軸 不斉に基 づく鏡 像体は 容易に 変換し てしま うが、(R)‑5 からはぽ,R)̲62゛が、(S)‑5からは(S,S)̲62゛が特異的に生成すると予想されるためビアリール骨格の修飾によ っ て 、 キ ロ オ プ テ ィ カ ル 出 カ が 付 与 さ れ た 多 重 出 力 型 応 答 系 に 展 開 で き る 可 能 性 が 示 さ れ た 。     Scheme2

ArAr   と´ArAr 蕊1 .蕊

    Ar  p‑Me2NC6H4

  第三章 では、 電子移 動によ って可逆 なシク ロファ ン構造 の形成 と消失 を伴う 酸化還 元系を構築した(ス キー ム3)0中 性状 態 の 電 子供 与 体7は 直 線 状の 構 造 を 有し て い る が、 酸 化 に よっ て ジ カチ オン状 態へと 変化す る際に 分子内で のC‑C結 合形成 を伴って シクロ ファン 型構造 になる 。シク ロファ ン型】,4・ジカチ オン82゛ は安 定 な 塩 とし て 単 離 され 、 還 元 によ っ て 直 線状 の7を定 量的に 再生す る。ま たこの時 、淡黄 色と 濃 青 色 とい う 劇 的 な色 調 の 変 化を 伴う。 したが って、 この系 は電子 移動によ って大 きく構 造が変 化 する 動的シ クロファ ン と も呼ぶ べき特 徴を有 するこ とが明 らかと なった。 シクロ ファン 類は一般に、

渡環 相 互 作 用や 分 子 の 歪み に 由 来 する 特徴的 な物性 を有す ること が知ら れている ことか ら、そ れらを 出 カとし て取り 出す系の プロト タイプ を与え たこと になる 。

    Scheme3

    Ar  p‑Me2NC6H4

  第 四 章で は 、 ベ ンゼ ン 環 上 の離 れ た 位 置に ニ つ の 発色 団 を 有す る電子 供与体9の酸化 還元応答 系を研 究した(スキーム4)。このものは酸化によって分子間でCーC結合形成を行い、オリゴメリックなポリ(1,4‐ ジ カチオ ン)102n十 を生じ た。102n十は安定 な塩と して単 離され 、還元によってモノメリックな9を再生す る 。 し た がっ て こ の 系で は 、 電 子移 動 によっ てモノ マーと オリゴ マーと で可逆な 相互変 換をす る特異 な 酸 化 還 元 系と な る こ とが 明 ら か とな っ た 。 これ ら の 系 はN上の 置 換基に よって、 流動性 や粘性 のよう な 溶媒のバルクの性質をスイッチできる可能性が示された。

219

  

  

(3)

Scheme4

(Ar て丶丶◎釧カ

Z。 ,

  ‑     2ne一

    Ar  p‑Me2NC6H4

  第五章では、電気化学的入カに対して三重の出カを有する応答系の構築に世界で始めて成功した(スキ ーム5)。ツイ ン型の電子供与体11は発色団としてテトラシアノアントラキノジメタン(TCNAQ)ユニツ トを有し、またキラルなスペーサーを持っためにエキシトンカップリングに由来するCD活性を有する。

さらにはアニオン状態12においてアントラセン骨格を生じることで螢光性をも示す。これによってこ の系では、11の電気化学的な還元によってUV‑VisやCDスベクトルの変化ばかりでたく、蛍光スペク トルもが変化する多重出力型応答系となることが明らかとなった。

    Scheme5

coo‑c.L ‑ooc

4e111′ ゜ 。 ・

    ア / ch‑l‑ira、 、 COO‑・ ・丶丶量 壁呈竺[ ー・LOOC

    12

  これまで、多くの有機酸化還元系においては溶液中でその挙動が研究されてきたが、分子デバイスヘ の適応という側面から金属表面上での検討も行われ始めている。さらには、低分子量ゲル化特性をもあ わせもったエレクトロクロミック系も最近報告されている。本研究で開発した様カな酸化還元系は分子 応答系の応用研究、さらには分子素子の開発における非常に有用なプロトタイプを与えるものである。

220

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学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主査    教授    鈴 木孝紀 副査    教授    宮 下正昭 副査    教授    澤 村正也 副査    教授    及 川英秋 副査   助教授   藤原憲秀

     学位 論 文 題名

Studies on Novel Functionalized Redox Systems:

Construction ofMulti‑input and ‑output Molecular     Response Systems

(新 規 な 機能 性 酸化 還 元 系の 研 究 :多重 入出力型 分子応答 系の構築 )

   本論文は 外部刺激 によってその物性値が可逆に変化する分子応答系に関するものである。光、

熱、電場 などの外 部刺激に よってそ の物性値 が可逆に 変化する分 子応答系 は、分子スイッチへ の応用が 期待され るもので あり、最 近、構造 有機化学 の分野で注 目を集め ている。電気化学的 な入カに よって化 合物の紫 外可視ス ベクトル 、即ち色 調の変化す るエレク トロクロミズムは、

酸化還元 反応を利 用した代 表的な応 答機能で あり、調 光材料や表 示物質と して実用化された例 もある。 著者は、 エレクト ロクロミ ズム系を 将来的に 分子素子へ と展開す ることを目指し、こ れまでに ない新た な機能の 付与され た酸化還 元系の構 築を行って いる。特 に、従来の応答系で は、単一 の入カに 対して単 一の出カ を与える ものが殆 どであるこ とを考え 、電気化学信号以外 の入カに 対しても 応答する ような多 重入力型 の応答系 、また、紫 外可視ス ベクトル以外の別の スペクト ル応答が 可能な多 重出力型 の応答系 を構築す ることを目 的に検討 を行い、顕著な成果 を得ている。

   可逆な応 答系を構 築するた めには可 逆な酸化 還元対が 必要である が、本論 文では既存のもの を修飾して用いるのではなく、ブタン−1 ,4 ‐ジイルジカチオンというこれまで検討例のない陽イ オン種に着目した検討を行っている。このイオン種は、1 ,3 −ジエン骨格の 2 ,3 一位がジプロトン化 されたと ぃう特異 な構造を 有するも のであり 、これま で化学反応 の中間体 として提案されたこ とはあっ たが、ス ベクトル 的な観測 さえされ ていなか った不安定 化学種で ある。著者は電子供 与性アリール基を複数導入することで、立体的および電子的にブタン‑1 ,4 ―ジイルジカチオンの 安定化と その単離 に初めて 成功し、 このもの を機軸と して、様々 な応答系 についての研究を展 開し た 。 例え ば 第 1 章に 示 し され た 化 合物 は 、電 気化学的 入カとプ ロトン授 受とぃう2 つ の外 部刺激に よって色 調の変化 する多重 入力型応 答系のプ ロトタイプ となるも のである。また、第 5 章 では 、 別 途デ ザ インしたツ イン型電 子受容体 骨格を用 いた検討 を行い、 紫外可視、 円二色 性、 螢 光 とぃ う 3 種 のスペクト ル出カを 与える多 重出力型 応答系の 構築に世 界で初めて 成功し ている。

    ‑ 221 ―

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   これらの結果は構造有機化学分野ばかりでなく、広く材料科学や機能物讐科耋岔墅2 書曇ヒ

貢献するとミ考大妻るものがある。よって著者は、北海道大学博士(理学)の学位を授与され

る資格あるものと認める。

参照

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