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博士(法学)安念和哉 学′位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(法学)安念和哉 学′位論文題名

肝 細 胞 の 再 生 お よ び 癌 化 に お け る 肝 細 胞 増 殖 因 子 受 容 体 の 解 析

学位論文内容の要旨

緒 言

  細 胞 は 外 界 か ら の シ グ ナ ル を 細 胞 膜 の 受 容 体 で 捉 え 、 そ れ を 細 胞 質 を 介 し て 核 へ と 伝 達 す る 。 そ の 最 も 代 表 的 な 機 構 と し て 、 細 胞 増 殖 因 子 、 神 経 成 長 因 子 、 サ イ ト カ イ ン に よ る チ ロ シ ン キ ナ ー ゼ の 活 性 化 を 介 し た 細 胞 の 増 殖 制 御 機 構 がよ く 研究 さ れて い る。

  近 年 、 肝 細 胞 のpotent mitogenと し て 肝 細 胞 増 殖 因 子 (hepatocyte growth factor[HGF])カヾ 同定さ れるとともに 、そ の 受 容 体 がcーmet前 癌 遺 伝 子 産 物(Met蛋 白 ) であ る こと が明 ら か と な っ た 。Met蛋 白 は チ ロ シ ン キ ナ ー ゼ 活 性 を も つ 糖 蛋 白 で 、170kDaの1本 鎖 のpro receptorと し て 生 成 さ れ た 後 、 プ 口 セ シ ン グ に よ っ て50kDaのQ鎖 と145kDaの13鎖 か ら な る 二 量 体 と な り 、 細 胞 膜 表 面 に 発 現 す る 。l3鎖 は 細 胞 内 領 域 のC末 端 側 に チ 口 シ ン キ ナ ー ゼ ド メ イ ン を も ち 、 HGFの 増 殖 刺 激 を 細胞 質 内の 種 々の 酵 素群 に伝 達 する 。

  c‑metの 過 剰 発 現 は 、 胃 癌 、 甲 状 腺 癌 、 大 腸 癌 、 肝 癌 で 報 告 さ れ て い る が 、 ヒ ト 肝 癌 症 例 の 癌 部 と 非 癌 部 を 用 い た 定 量 的 な 解 析 や 、 肝 再 生 過 程 に お け るMet蛋 白 の 解 析 は 未 だ 報 告 が な い 。 さ ら に 、proreceptorか らmatureな 受 容 体 蛋 白 に 至 る プ ロ セ シ ン グ の 過 程 、 お よ び そ れ ら の チ ロ シ ン リ ン 酸 化 を 含め たMet蛋 白 動態 の 詳細 は不 明 であ る 。

  本 研 究 で は 、 肝 細 胞 の 再 生 お よ び 癌 化 に お け るMet蛋 白 の 動 態 を 明 ら か に す る た め 、 ラ ッ ト 肝 部 分 切 除 後 の 肝 組 織 と ヒ ト 肝 細 胞 癌 手 術 材 料 を 、 抗 リ ン 酸 化 チ ロ シ ン 抗 体 お よ び 抗 Met抗 体 を 用 い た western blot法 で 解 析 し た 。

材 料 お よ び 方 法

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1 .試料採取

  1 )肝部分切除後ラット肝組織

   雄のWist ar 系ラット(約260g) を用い、2/3 肝部分切除術を 施行した。術後0 分、 30 分、 1 時間、 12 時間、24 時間、5 日、

7 日に肝組織を採取した。RIPA buffer を用いて組織を用手的 に homogenze し、 15 ,000 回転30 分遠沈後、上清を採取した。

ラ ッ ト は各 時 間 3 匹 ず つ 計19 匹 用 い た( 5 日の み n = 1 )。

  2 )ヒト肝組織

   肝細胞 癌の手 術症例 18 例から 癌組織及び非癌部肝組織を 採取し、前述と同様に蛋白を抽出した。

2 .WeSternblot 法

   蛋 白 を SDS ー PAGE で分 離し、 polyvinylidenedifluoride membrane ( PVDF 膜)に転 写した 。 Membrane を 1 % Ovalbumin あ るいは 5 % skimm 川〈で 室温 4 時間ブ口ッキングし、 1 次抗 体で室温 1 時間、あるいは4 ℃ overnlghtincubate した。洗浄 後 、2 次抗 体で室 温 1 時間 incubate し、 ECLimmunodetection system を用いて発色した。

   抗リン 酸化チ 口シン抗 体には 、マウスモノクローナル抗 体 PY20 を 用 い た 。 抗 Mer 抗 体 は 、 Mer 蛋 白 p 鎖 C 末 端 の oligopeptide を免疫原とするウサギポリクローナル抗体で、

胤 f 蛋 白 p 鎖 お よ び proreceptor を 特 異 的 に 認 識 す る 。   2 次抗体には、peroxidase 標識抗マウスおよびウサギ免疫 グ口ブリン抗体を用いた。

3 .レクチン沈降法

   受 容 体 な ど の 糖 蛋 白 を 選 択 的 に 抽 出 す るた め 、 wheat germlectin ( WGL )を用 いた。 WGL に吸着した蛋白を電気泳 動 で 分 離 し 、 PVDF 膜 に 転 写 し 、 westemblot を 行 っ た 。 4 .ラット肝部分切除後のMef 蛋白の解析

   レクチン沈降で得られた試料をwestemblot 法で解析した。

検出された/ヾンドを、画像解析システムを用いて定量化し、

0 分〜 7 日の時系列群3 グループについて経時的変化を検討し た。

5 .ヒト手術材料の解析

   肝細胞癌について、抗リン酸化チロシン抗体および抗 Mer

抗体によるwesternblot を行い、検出されたノくンドを画像解

析 システ ムを用 いて定量 化し、 同一症例の癌部と非癌部に

つ いて比 較検討 した。さ らに肝 炎ウィルスの関与、癌部お

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よ び 非 癌 部 の組 織 型 と 、Met蛋 白 の 発現 量との 関連を 検討 し た 。

結 果

1. 肝 部 分 切 除 後 再 生 肝 細 胞 に お け る Met蛋 白 の 動 態   1) Met蛋白発現量

  Met l3鎖 の 発 現 量 は経 時 的 に 減 少傾 向 を 示 し 、肝 部 分切除 後7日で 約80% に低 下した 。proreceptorの 発現量は、l3鎖より 強 い 減 少 傾 向 を 示 し 、 7日 後 約 50% に 低 下 し た 。   2)チ口シンリン酸化蛋白

  Metp鎖 の り ン 酸 化 は7日 目 ま で ほぼ 一 定 で 、proreceptorの り ン 酸 化 は 術 後12時 間 以 後 、0分 時 の20〜40% に 低 下し た 。 2. ヒ ト 肝 細 胞 癌 お よ び 非 癌 部 組 織 に お け る Met蛋 白   1) Met蛋白発現量

  Metp鎖(p14513MEのとMet proreceptor (p160proA伍のの発現 量 を 、 同 一 症 例 の 非 癌 部 と 癌 部 に つ い て 比 較 す る と 、 p145|3A循 ア の 発 現 量は 非 癌 部 よ り癌 部 で 多 く 、p160proMET の発 現量は 癌部よ り非 癌部で 多かっ たQく0.05)。また、分化 度 の 低 い 肝 細 胞 癌4例 中3例 で は 、 非 癌部 でproreceptorが 存 在 す る に も か か わ ら ず 癌 部 で はp1456MEア の 発 現 が 検出 さ れ なかった。

  2)チロシンリン酸化蛋白

  18例中11例(61%)の癌部、および18例中ユ7例(94%)の非癌 部 に おい て160kDaの 位置 に / く ン ドが 検 出 さ れ た。 癌 部およ び 非 癌 部 の チ ロ シ ン リ ン 酸 化 蛋 白 量 に 明 ら か な 差 を 認 め な かった。

考 察

  ラ ッ ト 肝 で は 、 部 分 切 除 後 1〜2時 間 で 、 血 中HGFは15〜 17倍に 上 昇 す る。ま た、 加vitr〇では 、Met蛋白 はHGF処 理後 数 分で り ン 酸 化 する 。HiguchiらとTajimaら は、 肝 細胞 膜分 画に対するHGFの結合が術後3時間後にはば)‐7()%に減少し、

7日 後 に 元 の レ ベ ル の1.7倍 に 復す る と 報 告 し 、こ の 結 果 を HGF受容体のin temalizationに伴うdown‑regulationと結TiRHして い る。 今 回 の 実 験で は 、 肝 再 生の 過 程 でp鎖 の発 現 量お よび チ 口 シ ン リ ン 酸 化 の 経 時 的 変 化が 軽 度 で あ っ たの に 対 し 、

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pro receptor は発現量、チロシンリン酸化ともに術後早期か ら強 い減少 傾向を 示した 。この結 果から、 Met 蛋白は HGF と 結合 してチ ロシン リン酸 化され、 膜表面から細胞質へ移動 し 代 謝さ れ る 一 方、 プ 口 セ シン グ の 亢 進に よ っ て 新た に matu re なMet 蛋白が供給されるため、prorecep tor は減少する が Met6 鎖 は 著 変 を 示 さ な い も の と 推 測 さ れ た 。   Met の mRNA と 蛋 白は いずれ も上皮 性組織 由来の悪 性腫瘍 で発 現が高 い傾向 にあり 、癌化に 関わる要因のひとつであ るこ とが示 唆され ている 。同一症 例の癌部と非癌部につい て、 Met 蛋白 の発現 を比較 したと ころ、癌部ではp1453ME 丁 の発現が多く、非癌部ではp160MET proreceptor の発現カヾ多 かっ た。こ の結果 から、 蛋白質プ ロセシングの亢進及びそ れに伴うma ture な Met 蛋白の生成は、肝細胞の癌化と密接に 関連していることが推測された。

  Tsarfaty らは、ヒト乳癌の腺管構造をもつ部分にMet 蛋白 およびチロシンリン酸化蛋白の強い発現がみられ、 Met 蛋白 の発現および活性化が、管腔形成に重要であるとしている。

今回 、管腔 構造な いし索 状構造に 乏しい低分化型の肝細胞 癌で、 Met 蛋白の発現低下がみられたことは、 Tsarfaty らの 結果と一致するものであった。

     結語

   ヒト肝 細胞癌 の手術材 料およびラット肝部分切除後再生 肝 を用い て、肝 細胞癌お よび肝再生における肝細胞増殖因 子受容体 /Met 蛋白の動態を、western blot 法により解析し、

次の結果が得られた。

ユ.ラット肝部分切除後早期にprorecep tor の減少傾向がみら    れた。

2 . ヒト手 術材料 の癌部 および非癌部の比較において、 Met    蛋白p 鎖は癌部で発現量カヾ多く、Met 蛋白prorece ptor は非    癌部で発現量カヾ多かったが、チロシンリン酸化に明らか    な差はなかった。

3 . 低分化 型肝細 胞癌で は、 Met 蛋白の発現量が低かった。

   以 上 の結果 より、 肝細胞 の癌化 および再 生には Met 蛋 白

proreceptor のプ口セシングが重要であること、また Met 蛋白

発現の有無が、分化度に関与していることが、推測された。

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   学位論文審査の要旨 主査   教授   内野純一 副査   教授   西   信三 副査   教授   牧田   章

    学位論文題名

肝細胞の再生および癌化における肝細胞増殖因子受容体の解析

  細胞は、蛋白のりン酸化を介して増殖刺激等の情報を核内に伝達 している。その代表的なものとして、チ口シンキナーゼの活性化を 介した細胞の増殖制御機構がよく研究されている。近年、肝細胞増 殖因子hepatocyte growth factor (HGF)の受容体が、C−met前癌遺伝 子にcodeされる受容体型のチロシンキナーゼであることが明らかと なった。Met蛋白tま、チ口シンキナーゼ活性をもつ糖蛋白で、170kDa の1本鎖のproreceptorとして生成された後、プロセシングによって 50kDaのロ鎖と145kDaのp鎖からなる二量体となり、細胞膜表面に発 現する。これまでに胃癌、甲状腺癌、肝細胞癌等、様々な上皮性悪 性腫瘍でc―Metの発現が報告されているが、同一症例の癌部と非癌 部を用いた定量的な解析や、肝再生過程におけるMet蛋白の解析は いまだ報告がなぃ。

  本研究では、肝再生におけるMet蛋白の動態を明らかにすること、

また、肝細胞癌および非癌部肝組織におけるmet蛋白の発現を解析す るこ とを目 的に、 実験的 およ び臨床材料による研究を行った。

材料と方法:

1.試料採取

  1)肝部分切除後ラッ卜肝組織

  雄のWistar系ラットを用い、2/3肝部分切除術を施行した。術後0 分 、30分 、1時 間 、 12時 間 、24時 間 、5日 、7日 に 肝 組 織 を

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採取し、蛋白を抽出した。

  2)ヒト肝組織

  肝細胞癌の手術症例18例から癌組織及び非癌部肝組織を採取し、

蛋白を抽出した。

2.Western blot法

  蛋白をSDS−PAGEで分離し、polyvinylidene difluoride membrane

(PVDF膜)に転写した後1次抗体、2次抗体でincubateし、ECL immu− nodetection systemを用いて発色した。抗リン酸化チロシン抗体に は、マウスモノクロナール抗体PY20を用いた。抗met抗体はmet蛋白 ロ鎖C末端のoligopeptideを免疫原とするウサギポリク口ーナル抗体 で、met蛋白ロ鎖およびproreceptorを特異的に認識する。2次抗体 にはpe roxidase標識抗マウスおよぴウサギ免疫グ口ブリン抗体を用 いた。

3.レクチン沈降法

  受容体などの糖蛋白を選択的に抽出するためwheat germ lectin (WGL)を用い、WGLに吸着した蛋白を電気泳動で分離し、PVDF膜に転 写しwestern blotを行った。

4.ラット肝部分切除 後の.met蛋白の解析

  レクチン沈降でえられた試料をwes tern  blot法で解析した。検出 されたノヾンドを、画像解析システムを用いて定量化し、0分〜.7日 の 時 系 列 群 3グ ル ー プ に つ い て 経 時 的 変 化 を 検 討 し た 。 5.ヒト手術材料の解析

  肝細胞癌について、抗リン酸化チ口シン抗体および抗Met抗体によ るWestern blotを行い、検出されたバンドを画像解析システムを用 いて定量化し 、同一症例の癌部と非癌部について比較検討した。

  結果:

1. 肝 部 分 切 除 後 再 生 肝 細 胞 に お け る Met蛋 白 の 動 態   Met蛋白ロ鎖は,発現量、リン酸化ともに明らかな変化を示さなか ったが、Met proreceptorは発現量、リン酸化いずれも術後早期に減

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少 傾 向 を 示 し 、 7日 後 に は 0分 時 の 40〜 60% に 低 下 し た 。 2. ヒ ト 肝 細 胞 癌 お よ び 非 癌 部 組 織 に お け るMet蛋 白 の 解 析   1)Met蛋白発現量

  Metロ鎖 の発現 量は非 癌部よ り癌 部で多 く、Met proreceptor の発現量は癌部より非癌部で多かった(pく0.05)。また、分化度の 低い肝細胞癌4例中3例では、癌部でのMetロ鎖の発現が低かった。

  2)チ口シンリン酸化蛋白

  18例 中11例 (61% ) の 癌 部 お よ ぴ18例 中17例 (94% ) の 非癌部において1,60 kDaの位置にバンドが検出されたが、両者のチ 口 シ ン リ ン 酸 化 蛋 白 量 に 明 ら か な 差 を 認 め な か っ た 。   以上の結果より、肝細胞の癌化および再生にはMet蛋白proreceptor のプ口セシングが重要であること、また、Met蛋白の発現が肝細胞癌 の分化度に関与していることが推測された。

  審査にあたって、牧田教授より肝細胞の癌化に及ばすHGFの影響に ついて、西教授よルレクチン沈降の際の蛋白定量について、宮崎教 授よルウィルスマーカーとMet蛋白の関連の有無などに関して質疑 が あ っ た が 、 申 請 者 は お お む ね 妥 当 な 回 答 を 行 っ た 。   本研究は、ラット肝再生過程におけるMet蛋白プ口セシングの亢進、

および肝細胞癌と非癌部肝組織におけるMet蛋白発現の差を示した ものであり、増殖と癌化の両面からMet蛋白の動態を解析した新し い 試 み と し て 意 義 が あ り、 学 位 授 与 に値 す る も の と考 え る 。

参照

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