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博 士 ( 農 学 ) 奥 瀬 一 郎 学 位 論 文 題 名

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 奥 瀬 一 郎

学 位 論 文 題 名

キ ュ ウ リ 果 実 の 生 長 特 性 に 関 す る 研 究

学 位 論 文 内 容 の要 旨

  本研 究は キュウ リ果実 の生長 特性 を明ら かにす ると共 に有種 子着 果と単為結実の栽培上の意義 に っ い て 比 較 検 討 し た も の で 得 ら れ た 結 果 の 概 要 は 次 の と お り で あ る 。

1. キ ュ ウリ果 実の生 長期間 は生 長パラ メータ ーによ って 異なっ ており ,最大 果径と 果実 長は30

〜 40日と品 種によ って変 動す るが, 果実生 重量と 果実乾 物重量では品種・結果様式に関係なく50 日であ った。 果実の 生長曲 線も 生長パ ラメーターによって異なり,最大果径と果実長は品種によっ てシン グルシ グモイ ド型あ るい はダブ ルシグ モイド 型を 示した が,果 実生重 量と果実乾物重量は 品 種 ・ 結 果 様 式 に 関 係 な く 開 花 後20日 を 転 換 期 と す る ダ ブ ル シ グ モ イ ド 型 で あ っ た 。   品種に より単 為結 果性が 著しく 異なり , 最 上 は全く 単為結 実しな いが , ときわ光A3型 と'F,長 日V2型 の 両品 種 は 極 め て単 為 結 実 性 が強 く ,それ らの単 為結 実果の 生長は 果実乾 物 重量以 外では 有種子 果と差 がな かった 。

  有種子 果では 開花 後20日ま でに胎 座組 織割合 が高ま り,そ れに対 応し て果肉 組織割合が低下し たが, 以後そ れらの 割合は 一定 値とな る。し かし, 単為 結実果 ではそ のよう な変化はみられず,

単為結 実果は 有種子 果より も果 肉組織 の厚い 果実が 得ら れた。

2. 果 肉 細胞は 開花後50日ま で生長 し,生 長曲線 は開 花後20日 を転換 期と するダ ブルシ グモイ ド 型であ った。 果皮細 胞の生 長曲 線も同 様のダ ブルシ グモ イド型 である が,生 長期間は表皮細胞が 30日,皮 下細胞 が40日 であっ た。ま た, 果実の 各細胞 の容積 は結果 様式 によっ て異なっており,

単為 結 実果 の果実 各細 胞容積 は有種 子果よ りも 大型で あった 。Sinnottの変 曲点は 果肉細 胞で は 開花 後4〜5日 に み ら れ た が, 皮下 細胞で は開花 後10日 にみら れた。 また 単為結 実果で は各細 胞 とも有 種子果 よりも 変曲点 が遅 れる傾 向があ った。 した がって 果肉細 胞の分 裂は開花後4〜5日,

皮下細 胞では 開花後10日で 終了し ,以後 は専ら 細胞 容積の 増大に よって 生長 するものと考えられ た。

3. 胚 乳 は胚に 先行し て生長 し, 開花後20日に種 皮に 充満し た後, 開花後40日に 消失し た。胚 の

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生長は開花後10日から著しくなり,開花後50日に終了した。種子生重量は開花後25日に最大に達 した後,滅少し,開花後50日に最終生重量に達した。種子乾物重量は開花後45日まで増加した。

単為結実果でも種皮は形成され,その生重量は稔実種子より劣るが,生長経過は稔実種子と同様 であった。また,単為結実果の開花後5日の種皮は稔実果の種皮よりも60%大型となる特異点が 認められた。

  種子の発芽は開花後30日から認められ,40‑‑‑45日に発芽率が最も高く,50日以降は発芽率の低 下が認められた。このことからキュウリ種子にも休眠があることが知られる。また,若齢果では 後熟処理は種子の発芽を向上させたが,完熟後の採種果では逆に発芽を低下させる傾向があった。

後熟処理日数を着果日数と見倣した場合の採種果から得た種子は,それと同数の着果日数の無後 熟処理の採種果から得た種子と発芽率は一致しないことから考えて,後熟処理と着果日数は種子 発芽に若干異なる影響を与えるものと考えられた。

4.キュウリ果実の糖質はグルコースとフラク卜一スが主成分であり,それに微量のシュク口ー ス,澱粉,イノシトールが存在した。グルコース,フラクトース,シュクロ―スは何れも開花後 5日に最高含有率を示した後,開花後20日に最低含有率となり,以後開花後60日まで上昇した。

澱粉は糖とは逆に開花後20日に最高含有率となり,以後急激に低下した。イノシトールは開花当 日 に 最 高 含 有 率 と な り , 特 異 点 で は グ ル コ ー ス , フ ラ ク ト ー ス と 同 様 で あ っ た 。   1果実当たりの糖質各成分含有量は開花後20日以前は結果様式による差がなかったが,それ以 後は単為結実果が有種子果より高い傾向があった。ただし,イノシトールのみは逆に単為結実果 が有種子果より低い傾向があった。

  主要有機酸はりンゴ酸とクエン酸であった。また最主要有機酸は果実の生長時期によって異な り,開花後35日まではりンゴ酸であるが,開花後40日からはクエン酸であった。その他には微量 のフマール酸とコハク酸,それにキナ酸が検出された。また1果実当りの有機酸含有量は,遊離 有機酸,全有機酸と も開花後20日以後には単為 結実果が有種子果より低い傾 向があった。

  可溶性チッソ含有率は開花後低下し,開花後20日に最低値を示した後,上昇に転じた。単為結 実果の可溶性チッソ含有率は開花後25日〜 40日までの種子の充実期に有種子果より高かったが,

不溶性チッソ含有率は逆に単為結実果が低い傾向があった。

5.果実の植物ホル モン活性はオーキシンがIAAに,ジベレリンがGAi,GAユ ,GA4,GAア,

GA9に,サイトカイニンがZeatin,Zeatin riboside,Zeatin類似物質のGlucosideとribotide によることが明らかにされた。また,阻害活性はアブサイシン酸であった。これらの各植物ホル モン活性は結果様式に関係なく常に認められた。

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  果実 生長 過程に おける オーキ シン活 性は 開花後5日 に最高 を示した後,開花後20日まで低下し,

以後 再び上 昇して , 開花後35日には ピークに達し,開花後50日には極めて低活性となった。単為 結実 果のオ ―キシ ン活 性は有 種子よ りも全 般的 に低い が,果 実生長 過程に おけ る活性変化は有種 子 果 と 同 様 で あ っ た 。 ア ブ サ イ シ ン 酸 活 性 は 開 花 後50日 以 後 に 認 め ら れ た 。   果実 の 生 長 過 程に お け る 遊 離ジベ レリン 活性 はGA。+ ,とGA。が果 実の生 長盛期 に最 高を示 し , 以後 急激 に低 下した 。GA,+。活 性は開 花当 日に最 高に達 した後 ,開花 後20日 まで低 下した が, 以後活 性は再 び上 昇し, 開花後35日に ピーク に達し た。単 為結 実果の 活性は 有種子果よりも 全般 的に低 かった 。ま た水溶 性ジベ レリン 活性 の種類 は遊離 ジベレ リンと 同様 であり,果実生長 過程 におけ る活性 変化 も遊離 ジベレ リンと 同様 であっ た。

  果実 生 長 過 程 にお け る サ イ トカイ ニン活 性はZeatin,Zeatin類似物 質のribotideの何 れもが 開 花 後10日 に 最 高 を 示 し た 。 開 花15日 以 後 のZeain活 性 は 急 激 に低 下 し て 微 弱と な る が , Zeatin類 似 物 質 の ribotide活 性 は 開 花 後15日 以 後 も 高 い 傾 向 が あ っ た 。 6. 有種 子 着果株 は単為 結実 着果株 よりも 黄変雌 花数が 多く ,開花 雌花数 の日変 動が 大きい 傾向 があ った。 果実の 収穫 割合の 日変動 も大き かっ た。さ らに有 種子着 果株は 単為 結実着果株よりも 生長 停止果 割合が 低く ,生長 不良割 合が高 い傾 向があ ったが ,この ことは 単為 結実果のシンク能 が有 種子果 よりも 弱い ことに よるも のと考 えら れた。 単為結 実着果 株の葉 中糖 含有率と葉中チッ 素含 有率は 有種子 着果 株より 高い傾 向があ った 。した がって 単為結 実着果 株は 有種子着果株より も 株 の 草 勢 が 良 好 に 維 持 さ れ て お り , 栽 培 上 有 利 な 特 性 を も っ て い る も の と推 論 し た 。

学位論文審査の要旨 主 査    教 授    八 鍬 利 郎 副査    教授    筒.井    澄 副査    教授    喜久田嘉郎

  本 論 文 は , 表1, 図51, 引用文 献125を含 む総ぺ ージ数176の 和文論 文で あり,8章 に分け て論 述さ れてお り,別 に参考 論文16編が添 えられ てい る。

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l.キュ ウリ果 実の 生長期 間は, 最大果 径と果 実長tま30〜40目と 品種 によっ て変動するが,果実 生重 量と 果実乾 物重量 では50日であ った。 また, 果実の 生長曲線fま,最大果径と果実長は品種に よっ て異 なるが ,果実 生重量 と果実 乾物 重量は 開花後20日を 転換期 とする ダブルシグモイド型で あ っ た 。 ま た , 単 為 結 実 果 は , 有 種 子 果 よ り も 果 肉 組 織 の 厚 い 果 実 が 得 ら れ た 。 2. 果肉細 胞は 開花後50日まで 生長 し,生 長曲線 は開花 後20日 を転換 期とす るダブ ルシ グモイ ド 型で あっ た。果 皮細胞 の生長 曲線も 同様 のダブ ルシグ モイド 型で あるが ,生長期間は表皮細胞が 30日 ,皮下 細胞が40日で あった 。また,単為結実果の果実各細胞容積は有種子果よりも大型であっ た 。 果 肉細 胞 の 分 裂 は開 花 後4 ‑5日 ,皮下 細胞で は開 花後10日 で終了 し, 以後は 専ら細 胞容積 の増 大に よって 生長す るもの と考え られ た。

3. 胚乳は 開花 後20日に 種皮に 充満 した後 ,開花 後40日 に消失 した。 胚の生 長は開 花後10日から 著し くな り,開 花後50日 に終 了した 。種子 生重量 は開花 後25日 に最大 に達し た後,滅少し,開花 後50日 に 最 終 生 重 量 に 達 し た 。 種 子 乾 物 重 量 は 開 花 後 45日 ま で 増 加 し た 。   種 子の発 芽は開 花後30日から 認めら れ,40〜 45日に発芽率が最も高く,50日以後は発芽率の低 下が 認め られた 。この ことか らキュ ウリ 種子に も休眠 がある こと が知ら れる。また,後熟処理と 着果 日数 は種子 発芽に 若干異 なる影 響を 与える ものと 考えら れた 。

4. キュウ リ果 実の糖 質はグ ルコー スとフ ラク トース が主成 分であ り, それに 微量の シュク ロー ス, 澱粉 ,イノ シトー ルが存 在した 。グ ルコー ス,フ ラクト ース ,シュ ク口一スは何れも開花後 5日 に最高 含有 率を示 した後 ,開花 後20日 に最低 含有率 となり ,以 後開花 後60日ま で上 昇した 。 澱粉 は糖 とは逆 に開花 後20日 に最高 含有率 となり ,以後 急激 に低下 した。 主要有機酸はりンゴ酸 とク エン 酸であ った。 また最 主要有 機酸 は果実 の生長 時期に よっ て異な り,開花後35日まではり ンゴ 酸で あるが ,開花 後40日 からは クエン 酸であ った。 また1果実 当た りの有機酸含有量fま,開 花後20日以 後には 単為結 実果 が有種 子果よ り低い 傾向が あっ た。可 溶性チ ッソ含有率は開花後低 下し ,開 花後20日 に最低 値を 示した 後,上 昇に転 じた。

5. 果 実 の 植 物 ホ ル モ ン 活 性 は オ ー キ シ ン がIAAに , ジ ベ レ リン がGA,,GAヨ ,GA4,GA7 GA9に , サ イ ト カ イニ ン がZeatin,Zeatin riboside,Zeatin類 似物質 のGlucosideとribotide によ るこ とが明 らかに された 。また ,阻 害活性 はアブ サイシ ン酸 であっ た。これらの各植物ホル モン 活性 は結果 様式に 関係な く常に 認め られた 。

オ ー キシン 活性は 開花後5日 に最高 を示し ,開 花後20日 まで低 下し ,以後 再び上 昇して ,35日 に tまピー クに達 し, その後 は低活 性とな った。 単為 結実果のオーキシン活性は有種子果よりも全般 的に 低い が,果 実生長 過程に おける 活性 変化は 有種子 果と同 様で あった 。アブサイシン酸活性は

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開花後50日以後に認められた。

  遊離ジベレリン活性はGA。+アとGA。が果実の生長盛期に最高を示し,以後急激に低下した。

GA,+ヨ活性は開花当日に最高に達した後,開花後20日まで低下したが,以後活性は再び上昇し,

開花後35日にピークに達した。サイトカイニン活性はZeatin,Zeatin類似物質のribotideの何 れもが開花後10日に最高を示した。開花15日以後のZeatin活性は急激に低下して微弱となるが,

Zeatin類 似 物 質 の ribotide活 性 は 開 花 後15日 以 後 も 高 い 傾 向 が あ っ た 。 6.有種子着果株は単為結実着果株よりも黄変雌花数が多く,開花雌花数の日変動が大きい傾向 があった。また,果実の収穫割合の日変動が大きく,さらに,生長不良果割合が高い傾向があっ た。

  単為結実着果株の葉中糖含有率と葉中チッ素含有率は有種子着果株より高い傾向があった。し たがって単為結実着果株は有種子着果株よりも株の草勢が良好に維持されており,栽培上有利な 特性をもっているものと推論した。

  以上のように本研究は,学術上重要な知見を加えたばかりでなく,応用面においても高く評価 される。

  よって審査員一同は,別に行った学力認定試験結果と合わせて,本論文の提出者,奥瀬一郎は 博 士 ( 農 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 十 分 な 資 格 が あ る も の と 認 定 し た 。

参照

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