博 士 ( 医 学 ) 安 部 崇 重
学 位 論 文 題 名
ヒト尿路上皮癌組織を用いた
SCID マウス移植モデルの樹立と癌研究への有用性
.学位論文内容の要旨
緒言
癌基礎研究において適切な動物実験モデルの樹立は必須と考えられる.ヌードマウスを 代表とする免疫不全マウスヘヒト培養癌細胞株を移植することが多いが,長期にわたり培 養,継代をくり返された培養癌細胞株は,癌の多様性を失った少数クローンであり,種々の 治療反応性が実際に臨床癌で期待されるものと異なる危険性がある,これに対し患者癌組 織をdishを介さず直接ヌードマウスに移植しXenograft modelを樹立する方法も多種の癌 で試みられ,尿路上皮癌についてその樹立は15‑ 40%と報告されている.本手法で樹立され た早期継代モデルは,癌細胞株由来モデルに比ベ,本来の癌細胞の性質の保持が期待され る.また,T‐ cell,B―cell系ともに障害されたSevere combined immunodeficient mice
(S CIDマウス)を利用する方法も報告され,尿路上皮癌においてはMcCueらにより17例中 10例(59翻と 高率にSCIDマウス皮下で尿路上皮腫瘍を再現出来たと報告されている.しか し彼らの報告では継代が可能だったのは3系のみで,その維持,継代に伴う性質の変化,早 期継代モデルの基礎実験利用への容易性は不明なままである.
本研究では様々な背景をもつ患者尿路上皮癌組織をS CIDマウス皮下に移植し,尿路上皮 癌Xenograft modelを作成,樹立の可否に影響を与える背景因子,継代に伴う組織像及び 性 質 の 変 化 を 評 価 し , 最 終 的 に 癌 基 礎 研 究 へ の 有 用 性 を 検 討 し た . 材料及ぴ方法
(Xenograft modelの樹立方法)
遺伝子解析研究を含む医学研究への使用に関し同意が得られた尿路上皮癌手術検体を,
切除後すぐに4‐ 5mm片の腫瘍塊に調整し6週〜10週齢の雌SCIDマウス右背部皮下に移植,
移 植後6ケ月 間観察 した,腫 瘍を形 成した症 例では, 腫瘍体 積が1000mm3̲1500mm3に達 した時点で麻酔下に犠牲死させ,腫瘍の一部を次のマウスヘ継代し,一部はホルマリン固 定後 組織学的 に評価した.残りは凍結保存した.以後もXenograftは同様の方法で継代維 持した.Ki67ラベリングインデックス(LI)及ぴp53遺伝子を各継代で再評価した.患者癌検 体からの初代移植で樹立されたモデルをP1と定義し,以後は継代を重ねるごとにP。(n=継 代数1と表現した.
(組織学的検討)
摘出組織はホルマリン固定後,バラフイン包埋し,HE染色を行い組織学的観察を行った.
さら にサイト ケラチン,Ki67,CD20,ヒトHLA‑ AJ3Cの発現に関し免疫組織学的に検討し た. なおKi67 11は対物400倍 数視野で少なくとも1000個の細胞をカウントし,陽性細胞 数 / 全 細 胞数 を 百 分率 で 示 した . ま たEpstein‑Barr virus (EBV) encoded RNAs (EBERs)の発現の有無は,バラフイン切片を使用しIn situ hibridization法(ISH)により検 討した,
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(RNA抽 出及び酵母p53機能アッセイ )
50‑100 mgの 凍 結 組 織 を 粉 砕 後1mlのTriReagent (SIGMA‑ALDRICH,St. Louis, USA)に 溶 解 し ,RNAを 抽 出 し た . 続 い てp53遺 伝 子 は 酵 母p53機 能 ア ッ セ イ で 評 価 し た . (Xenograftを用いた放射線治療シミ ュレーション)
4系 のXenograft modelを 用 い てSGy単 回 照 射 治 療 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン を 行 っ た .4‑5 mm 径 の 腫 瘍 塊 を マ ウ ス 右 背 部 皮 下 に 移 植 し 腫 瘍 体 積 が250―350mm3(8・9mm径 ) に 達し た時 点 で, コン ト ロー ル群 ,照 射群 に 無作 為に 振り 分 けた (一 群5‑8匹 ). コントロール群と治 療 群 に つ い て , 治 療 開 始 体 積 か ら3倍 に な る 時 間 の 差 を も っ てAbsolute growth delay(AGD) を 算 出 し た . ま た , 今 回 用 いた4系 は腫 瘍 倍加 時間 が異 なる た め, 各モ デル 間 での 放射 線反 応 性 の 比 較 に はAGDを 各Xenograftの 腫 瘍 倍 加 時 間 で 除 す る こ と でSpecific growih delay(SGD)を算出した.
(統計 学的処理)
Xenograft model樹 立 の 可 否 と 背 景 因 子 と の 関 連 はX2検 定 を 用 い て 検 討 し た , また グル ープ間で のIくi67 11の差はStudent st―testを使用し検討した .
結果
(初代移 植の結果)
尿 路 上皮 癌30検体 ( 膀胱 腫瘍24検 体, 上 部尿 路腫 瘍6検体 )を 移植 し ,18検体(60c70)がマ ウ ス 皮 下 で 腫 瘍 を 形 成 し た . 組 織 学 的 に15例 の 形 成 腫 瘍は 患 者腫 瘍の 特徴 を よく 保存 し,
免 疫 組 織 学 的 検 討 の 結 果 こ れ ら15例 は サ イ ト ケ ラ チ ン ,HLA−ABCを 発 現 し ヒ ト 由 来 の 上 皮 系癌 細胞 で ある こと が確 認さ れ た. 一方 ,3例の 形成 腫瘍 の 組織 像は 移植癌組織と異なり , 小 中 型 の 円 形 の 細 胞 の 増 殖 像 を 呈 し た . 免 疫 組 織 学 的 に 腫 瘍 はHLA‑ABC.B‑cellマー カー で あ るCD20を 強 発 現 し た が , サ イ ト ケ ラ チ ン は 陰 性 で あ っ た . さ ら にISHに よ り 腫瘍 細胞 はEBERsを 発 現 し て い た . ま た ,EBERs発 現 リ ン パ 球 は 由 来 患 者 膀 胱 癌 の 問 質 に 浸 潤 し て い る こ と も 確 認 さ れ , こ れ ら3例 は 腫 瘍 問 質 に 浸 潤 し たEBV感 染Bリ ン バ 球 由 来 の り ン バ 増 殖 病 態と 診断 した . マウ ス皮 下で の腫 瘍 の形 成の 可否 に関 し ては ,浸 潤癌 , もし くは 低分 化 癌 で よ ル マ ウ ス 皮 下 で 腫 瘍 を 形 成 す る 率 が 高 か っ た が統 計 学的 有意 差は 認 めな かっ た.
また,p53変異を有する腫瘍のlくi67 11(平均値土標準偏差,52.2+12.1e70)は野生型のそれ(26.4土 20.7% )の お よそ2倍 で有 意に 増殖 能カ が 高い 結果 であ った が(=0.0004), 移 植さ れた 患者 腫 瘍 のp53変 異 の 有 無 お よ びIくi67 11と マ ウ ス 皮 下 腫 瘍形 成 の可 否に は関 連 を認 めな かっ た.
(継代に よるXenograft modelの維持 )
現 在15検 体 中11検 体 がP2を 超 え て 継 代 維 持 さ れ て い る . 継 代 に 伴 い 細 胞 は や や 大 型 化 し , よ り異 型度 の高 い 集団 が優 位と なる 傾 向を みと めた が, 細 胞形 態, 組織 構 築バ ター ンは 非 常 に よ く 保 持 さ れ ,p53遺 伝 子は ,す べ ての 検体 は継 代を 重 ねて もオ リジ ナ ルの 患者 腫瘍 のp53遺 伝 子 を 保 持 し た ,lくi67uに関 して はXenograflでは オ リジ ナル の患 者 腫瘍 にく らべ 若 干 増 加す る傾 向が あ った が, 各世 代間 で の変 動は 非常 に小 さ く各 モデ ルで 安 定し てい た.
(放射線 単回照射による治療シミュレ ーション)
樹 立 し たXenogtaftの う ち ,4系 を 用 い て 腫 瘍 増 殖 遅 延 反 応 を エ ン ド ポ イ ン ト にSGy単 回 照 射 を 施 行 し た . 使 用 し た4検 体 は す べ て 移 行 上 皮 癌 よ り 樹 立 さ れ た モ デ ル で ある がそ の 反 応 は 大 き く 異 な り ,AGDは20.3+2.4目 ( 平 均 値 土 標 準 誤 差 ) か ら76.4+7.4日 に 分 布 し た .4系 のSGDは0.8+・ 0.3か ら4.5 +1.3に 分 布 し , こ の 結 果 はXenograftの 増 殖 速 度 及びKi67 11とは関連がなかった.
結論
尿 路 上 皮 腫 瘍30検 体 をdishを 介 す る こ と な くSCIDマ ウ ス 背 部 に 直 接 移 植 す る こ と で 15検 体(50め でXenotransplantが 可 能 で あ っ た . こ れ ら モ デ ル の 大 半 が 継 代 可 能 で . ま た 患 者 腫 瘍 の 性 質 を 十 分 残 し た 状 況 で 治 療 実 験 が 可 能 であ っ た. 本モ デル は 癌基 礎研 究に 有 用 で , 近 年 注 目 さ れ る オ ー ダ ー メ イ ド 医 療 研 究 の 基 礎と な るも ので 今後 の さら なる 解析 に繋がる ものである,
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