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ヒト尿路上皮癌組織を用いた

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 医 学 ) 安 部 崇 重

学 位 論 文 題 名

ヒト尿路上皮癌組織を用いた

SCID マウス移植モデルの樹立と癌研究への有用性

.学位論文内容の要旨

緒言

  癌基礎研究において適切な動物実験モデルの樹立は必須と考えられる.ヌードマウスを 代表とする免疫不全マウスヘヒト培養癌細胞株を移植することが多いが,長期にわたり培 養,継代をくり返された培養癌細胞株は,癌の多様性を失った少数クローンであり,種々の 治療反応性が実際に臨床癌で期待されるものと異なる危険性がある,これに対し患者癌組 織をdishを介さず直接ヌードマウスに移植しXenograft modelを樹立する方法も多種の癌 で試みられ,尿路上皮癌についてその樹立は15‑ 40%と報告されている.本手法で樹立され た早期継代モデルは,癌細胞株由来モデルに比ベ,本来の癌細胞の性質の保持が期待され る.また,T‐ cell,B―cell系ともに障害されたSevere combined immunodeficient mice

(S CIDマウス)を利用する方法も報告され,尿路上皮癌においてはMcCueらにより17例中 10例(59翻と 高率にSCIDマウス皮下で尿路上皮腫瘍を再現出来たと報告されている.しか し彼らの報告では継代が可能だったのは3系のみで,その維持,継代に伴う性質の変化,早 期継代モデルの基礎実験利用への容易性は不明なままである.

  本研究では様々な背景をもつ患者尿路上皮癌組織をS CIDマウス皮下に移植し,尿路上皮 癌Xenograft modelを作成,樹立の可否に影響を与える背景因子,継代に伴う組織像及び 性 質 の 変 化 を 評 価 し , 最 終 的 に 癌 基 礎 研 究 へ の 有 用 性 を 検 討 し た . 材料及ぴ方法

(Xenograft modelの樹立方法)

  遺伝子解析研究を含む医学研究への使用に関し同意が得られた尿路上皮癌手術検体を,

切除後すぐに4‐ 5mm片の腫瘍塊に調整し6週〜10週齢の雌SCIDマウス右背部皮下に移植,

移 植後6ケ月 間観察 した,腫 瘍を形 成した症 例では, 腫瘍体 積が1000mm3̲1500mm3に達 した時点で麻酔下に犠牲死させ,腫瘍の一部を次のマウスヘ継代し,一部はホルマリン固 定後 組織学的 に評価した.残りは凍結保存した.以後もXenograftは同様の方法で継代維 持した.Ki67ラベリングインデックス(LI)及ぴp53遺伝子を各継代で再評価した.患者癌検 体からの初代移植で樹立されたモデルをP1と定義し,以後は継代を重ねるごとにP。(n=継 代数1と表現した.

(組織学的検討)

  摘出組織はホルマリン固定後,バラフイン包埋し,HE染色を行い組織学的観察を行った.

さら にサイト ケラチン,Ki67,CD20,ヒトHLA‑ AJ3Cの発現に関し免疫組織学的に検討し た. なおKi67 11は対物400倍 数視野で少なくとも1000個の細胞をカウントし,陽性細胞 数 / 全 細 胞数 を 百 分率 で 示 した .  ま たEpstein‑Barr virus (EBV) encoded RNAs (EBERs)の発現の有無は,バラフイン切片を使用しIn situ hibridization法(ISH)により検 討した,

‑ 468

(2)

  (RNA抽 出及び酵母p53機能アッセイ )

  50‑100 mgの 凍 結 組 織 を 粉 砕 後1mlのTriReagent (SIGMA‑ALDRICH,St. Louis, USA)に 溶 解 し ,RNAを 抽 出 し た . 続 い てp53遺 伝 子 は 酵 母p53機 能 ア ッ セ イ で 評 価 し た .   (Xenograftを用いた放射線治療シミ ュレーション)

  4系 のXenograft modelを 用 い てSGy単 回 照 射 治 療 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン を 行 っ た .4‑5 mm 径 の 腫 瘍 塊 を マ ウ ス 右 背 部 皮 下 に 移 植 し 腫 瘍 体 積 が250―350mm3(8・9mm径 ) に 達し た時 点 で, コン ト ロー ル群 ,照 射群 に 無作 為に 振り 分 けた (一 群5‑8匹 ). コントロール群と治 療 群 に つ い て , 治 療 開 始 体 積 か ら3倍 に な る 時 間 の 差 を も っ てAbsolute growth delay(AGD) を 算 出 し た . ま た , 今 回 用 いた4系 は腫 瘍 倍加 時間 が異 なる た め, 各モ デル 間 での 放射 線反 応 性 の 比 較 に はAGDを 各Xenograftの 腫 瘍 倍 加 時 間 で 除 す る こ と でSpecific growih delay(SGD)を算出した.

  (統計 学的処理)

  Xenograft model樹 立 の 可 否 と 背 景 因 子 と の 関 連 はX2検 定 を 用 い て 検 討 し た , また グル ープ間で のIくi67 11の差はStudent st―testを使用し検討した .

結果

(初代移 植の結果)

  尿 路 上皮 癌30検体 ( 膀胱 腫瘍24検 体, 上 部尿 路腫 瘍6検体 )を 移植 し ,18検体(60c70)がマ ウ ス 皮 下 で 腫 瘍 を 形 成 し た . 組 織 学 的 に15例 の 形 成 腫 瘍は 患 者腫 瘍の 特徴 を よく 保存 し,

免 疫 組 織 学 的 検 討 の 結 果 こ れ ら15例 は サ イ ト ケ ラ チ ン ,HLA−ABCを 発 現 し ヒ ト 由 来 の 上 皮 系癌 細胞 で ある こと が確 認さ れ た. 一方 ,3例の 形成 腫瘍 の 組織 像は 移植癌組織と異なり , 小 中 型 の 円 形 の 細 胞 の 増 殖 像 を 呈 し た . 免 疫 組 織 学 的 に 腫 瘍 はHLA‑ABC.B‑cellマー カー で あ るCD20を 強 発 現 し た が , サ イ ト ケ ラ チ ン は 陰 性 で あ っ た . さ ら にISHに よ り 腫瘍 細胞 はEBERsを 発 現 し て い た . ま た ,EBERs発 現 リ ン パ 球 は 由 来 患 者 膀 胱 癌 の 問 質 に 浸 潤 し て い る こ と も 確 認 さ れ , こ れ ら3例 は 腫 瘍 問 質 に 浸 潤 し たEBV感 染Bリ ン バ 球 由 来 の り ン バ 増 殖 病 態と 診断 した . マウ ス皮 下で の腫 瘍 の形 成の 可否 に関 し ては ,浸 潤癌 , もし くは 低分 化 癌 で よ ル マ ウ ス 皮 下 で 腫 瘍 を 形 成 す る 率 が 高 か っ た が統 計 学的 有意 差は 認 めな かっ た.

また,p53変異を有する腫瘍のlくi67 11(平均値土標準偏差,52.2+12.1e70)は野生型のそれ(26.4土 20.7% )の お よそ2倍 で有 意に 増殖 能カ が 高い 結果 であ った が(=0.0004), 移 植さ れた 患者 腫 瘍 のp53変 異 の 有 無 お よ びIくi67 11と マ ウ ス 皮 下 腫 瘍形 成 の可 否に は関 連 を認 めな かっ た.

(継代に よるXenograft modelの維持 )

  現 在15検 体 中11検 体 がP2を 超 え て 継 代 維 持 さ れ て い る . 継 代 に 伴 い 細 胞 は や や 大 型 化 し , よ り異 型度 の高 い 集団 が優 位と なる 傾 向を みと めた が, 細 胞形 態, 組織 構 築バ ター ンは 非 常 に よ く 保 持 さ れ ,p53遺 伝 子は ,す べ ての 検体 は継 代を 重 ねて もオ リジ ナ ルの 患者 腫瘍 のp53遺 伝 子 を 保 持 し た ,lくi67uに関 して はXenograflでは オ リジ ナル の患 者 腫瘍 にく らべ 若 干 増 加す る傾 向が あ った が, 各世 代間 で の変 動は 非常 に小 さ く各 モデ ルで 安 定し てい た.

(放射線 単回照射による治療シミュレ ーション)

  樹 立 し たXenogtaftの う ち ,4系 を 用 い て 腫 瘍 増 殖 遅 延 反 応 を エ ン ド ポ イ ン ト にSGy単 回 照 射 を 施 行 し た . 使 用 し た4検 体 は す べ て 移 行 上 皮 癌 よ り 樹 立 さ れ た モ デ ル で ある がそ の 反 応 は 大 き く 異 な り ,AGDは20.3+2.4目 ( 平 均 値 土 標 準 誤 差 ) か ら76.4+7.4日 に 分 布 し た .4系 のSGDは0.8+・ 0.3か ら4.5 +1.3に 分 布 し , こ の 結 果 はXenograftの 増 殖 速 度 及びKi67 11とは関連がなかった.

結論

  尿 路 上 皮 腫 瘍30検 体 をdishを 介 す る こ と な くSCIDマ ウ ス 背 部 に 直 接 移 植 す る こ と で 15検 体(50め でXenotransplantが 可 能 で あ っ た . こ れ ら モ デ ル の 大 半 が 継 代 可 能 で . ま た 患 者 腫 瘍 の 性 質 を 十 分 残 し た 状 況 で 治 療 実 験 が 可 能 であ っ た. 本モ デル は 癌基 礎研 究に 有 用 で , 近 年 注 目 さ れ る オ ー ダ ー メ イ ド 医 療 研 究 の 基 礎と な るも ので 今後 の さら なる 解析 に繋がる ものである,

    ―469ー

(3)

学位論文審査の要旨 主査   教授   野々村克也 副査    教授    守内 哲也 副査    教授    高田 賢藏

     学位論文題名

     ヒト尿路上皮癌組織を用いた

SCID マウス移植モデルの樹立と癌研究への有用性

   現在、ヒト癌基礎研究おいて頻用される動物モデルは、ヒト培養癌細胞株をヌードマウ スを代表とする免疫不全マウスに移植する Xenograft である。このモデルは樹立が容易 である利点を有するが、培養癌細胞株は長期にわたる継代培養に伴い由来癌腫の性質を大 幅に失っている危険性があり、このXenograft での反応が臨床癌での反応を反映してい ない可能性が危惧される。本研究では、SCID マウスヘ直接ヒト尿路上皮癌検体を移植す る方法でXenograft を樹立し、由来腫瘍の性質を十分残した状態で治療実験を行い得る か 評価 した 。結果 、初 代移植時30 例中15 例 (50 %)でXenograft を樹立出来たこと、

肉眼的に固形腫瘍のみからなる系と、嚢胞を形成し内腔に腫瘍細胞が裏打ちする系の2 種類の増殖様式を呈したこと、また30 例中3 例では膀胱癌問質に浸潤したEB ウイルス 感染リンパ球カs 腫瘍化する現象が生じ Xenograft の樹立を妨げる現象があったこと、樹 立モデルの大半が安定して継代維持出来たこと、継代によってもp53 変異、Ki67 ラベリ ングインデックスは由来腫瘍を反映し組織構築バターンの保持も良好であったこと、4 系 の早期継代モデルを用いたSGy 単回照射放射線感受性試験では放射線感受性と腫瘍の増 殖速度には関連がなく p53 変異をもつ系が最も放射線耐性を示したこと、最終的に本モ デルの治療実験への利便性を報告している。

   質疑応答では副査の高田賢藏教授から、放射線感受性試験が行われたXenograft での

反応と由来患者の治療成績との相関は認められるか、またオーダーメイド医療を考えた場

合 Xenograft を用いた治療試験に要する時間が問題とならないか質問があった。これら

の質問に対し申請者は、放射線感受性試験を施行した4 系のうち由来患者が放射線治療

を受けている1 系では観察期間も短く相関は現時点では不明であること、またXenograft

を利用した治療試験は時間を要するが、尿路上皮癌が表在性癌から浸潤癌へと進行するの

(4)

に要する時間、また浸潤癌が遠隔転移を生じるのに要する時間も数年であることが多く、

時間は大きな問題ではないと考えられると回答した。

   次 い で 副査 の 守 内 哲 也 教 授 か ら膀 胱癌に おけ るp53 変 異の 意味 につい て今 回の Xenograft での知見も併せて質問があった。申請者は、 p53 変異は膀胱癌の予後不良因 子とする報告と関連無しとする報告があり結諭が出ていないこと、またXenograft の増 殖速度からはp53 変異が膀胱癌のgrowth advantage になるとは言い切れないと回答し た。さらに今回の樹立Xenograft を用いた放射線感受性試験がすべてのモデルで行われ ていない点に関し質問があり、申請者はその理由として嚢胞形成を伴う系では外表からの 腫瘍計測が難しく、超音波による腫瘍体積のみの測定など別の測定方法で嚢胞形成性モデ ルの実験利用を考慮していると回答した。また、出席者からは p53 変異癌細胞を伴う Xenograft では継代に伴い p53 変異癌細胞が優位となっていくか質問があり、質問者の 指 摘 ど う り の 現 象 が p53 酵 母 機 能 ア ッ セ イ の 結 果 み ら れ た と 回 答 し た 。    次いで主査の野々村克也教授よりEB ウイルスと膀胱癌の発生の関連に関し質問があっ た。申請者は、発表内容では触れなかったが追加実験にて約6 割の症例で膀胱癌問質に EB ウイルス陽性リンパ球の浸潤を認め、かつ一部の症例でEB ウイルスの溶解感染を膀 胱癌問質で生じていること、またこのEB ウイルス陽性リンバ球の浸潤は表在性癌に比較 し浸潤癌で高率に認めることから癌の進行に関与する可能性を考えていると回答した。最 後に野々村克也教授より、実際の臨床応用への距離を埋めるべく、さらに多くの症例で Xenograft での反応と実際の患者の治療反応性を比較することが必要とのコメントで終 了となった。

   この論文は、将来の新たな医療の可能性を示しているものとして高く評価され、今後の 発展によるオーダーメイド治療への寄与が期待される。

   審査員一同は、これらの成果を高く評価し、大学院課程における研鑽や取得単位なども

併せ申請者が博士(医学)の学位を受けるのに充分な資格を有するものと判断した。

参照

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