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唐下泰一 学位論文審査要旨

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Academic year: 2021

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平成 19 年 2 月

唐下泰一 学位論文審査要旨

主 査 池 口 正 英 副主査 井 上 幸 次 同 清 水 英 治

主論文

Diverse activation states of RhoA in human lung cancer cells: Contribution of G protein coupled receptors

(ヒト肺癌細胞における多様なRhoAの活性化状態:G蛋白質結合受容体の関与)

(著者:唐下泰一、千酌浩樹、井岸正、倉井淳、牧野晴彦、田村啓達、高田美也子、

米田一彦、中本成紀、陶山久司、J. SILVIO GUTKIND、清水英治)

平成19年 International Journal of Oncology 掲載予定

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学 位 論 文 要 旨

Diverse activation states of RhoA in human lung cancer cells: Contribution of G protein coupled receptors

(ヒト肺癌細胞における多様なRhoAの活性化状態:G蛋白質結合受容体の関与)

近年、細胞増殖や転移に関係する細胞内シグナルの研究が進展し、その研究結果が分子 標的治療という形で新たな肺癌の治療に役立てられている。細胞内シグナル伝達物質の一 つであるRho GTPasesは細胞の形態、移動、増殖、進展に関与していることが知られており、

特にそのサブファミリーであるRhoAは癌細胞の転移や増殖に関与していると考えられてい る。細胞の癌化、転移においてはRhoA自体の発現が亢進すること以上にRhoAの活性化亢進 が重要であると考えられるが、その活性化状態についての報告はほとんど無い。今回の研 究では、ヒト肺癌細胞株を用いて、RhoAの活性化状態を

in vivo

Rho guanine nucleotide exchange assay(Rho 活性化assay)を使って検討し、さらにこの活性化をもたらす細胞表面 レセプターであるGタンパク質共役型受容体(GPCR)からRhoAまでのシグナル伝達経路の関 与を、Gタンパク質共役型受容体拮抗剤(GPCR拮抗剤)であるSubstance P analogとGαq/11 選択的阻害剤であるYM-254890を使って解析した。

方 法

肺癌細胞株22株(小細胞癌細胞株 6株、腺癌細胞株 7株、扁平上皮癌細胞株 5株、大細 胞癌細胞株 4株)におけるRhoAの発現状態をreal-time quantitative RT-PCR 法により明 らかにし、RhoA活性化状態をRho 活性化assayを使って評価した。RhoAを活性化する細胞内 シグナル経路を解析するために、二つの拮抗剤(Substance P analog、YM-254890)を使っ てRhoA活性化状態の変化を、4種の肺癌細胞株で検討した。RhoAの活性化状態として、ウエ スタンブロッティング結果をNIH Image ソフトウェアを用いて定量化し、RhoA蛋白のバン ド濃度に対する、活性化RhoA蛋白バンド濃度を算出し活性化率とした。

結 果

RhoA発現状態を肺癌細胞株22株で検討した結果、高発現していた細胞は、小細胞癌細胞 株で6株中1株(17%)、扁平上皮癌細胞株で5株中2株(40%)、大細胞癌細胞株で4株中3株(75%) であった。腺癌細胞7株では高発現している細胞は認めなかった。

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これと対照的に、RhoAの活性化状態の検討では、小細胞癌細胞株では6株中4株(67%)は20%

以上の活性化率であり、内2株は80%以上の高い活性化率を示した。扁平上皮癌細胞株では5 株中1株(20%)、大細胞癌細胞株で4株中1株(25%)、腺癌細胞株では7株中3株(43%)の細胞が 20%以上のRho活性化率を示した。このようにRhoAの活性化はその発現状況に関係なく、主 に小細胞癌細胞株で強い傾向があることが明らかとなった。

次にこの小細胞癌細胞株でみられるRhoA活性化亢進の活性化経路について検討を行った。

GPCR拮抗剤であるSubstance P analogを作用させると、小細胞癌細胞株であるH69ではRhoA 活性化が60%抑制されたが、腺癌細胞株の1-87、扁平上皮癌細胞株のSq-1ではRhoAが抑制さ れることはなかった。このことから小細胞癌細胞株ではGPCRがRhoAの活性化に強く関わっ ていることが示された。

さらに、GPCRに結合している三量体Gタンパク質が、RhoAの活性化にどのように関与して いるかを検討した。Gαq、Gα12/13は以前の報告により、どちらもRhoAを活性化することが知 られている。そこでH69細胞をGαq/11選択的阻害剤であるYM-254890にて処理したところ、

RhoA活性化は抑制されなかった。このことから同細胞においてはGPCRを介する刺激が、Gαq

ではなく、Gα12/13を通してRhoA活性化の主要な部分を占めていると考えられた。

考 察

本研究により、肺癌細胞株において、RhoA発現状態とRhoA活性化状態が異なることが初 めて明らかとなった。ことに小細胞癌細胞株ではRhoA発現亢進はみられないが、RhoAは強 く活性化しており、これが小細胞癌でみられる、強い増殖能、転移能に関与している可能 性が示唆された。さらに、小細胞癌細胞株においてはGPCR-Ga12/13-RhoAが主なRhoA活性化 経 路 で あ る こ と を 明 ら か に し た 。 小 細 胞 癌 に お い て は bombesin/gastrin-releasing peptide receptorなどのGPCRを介したオートクライン機序による増殖機構があることが報 告されているが、RhoA活性化に本経路が関与していることを明らかにしたのは新しい知見 である。本研究は本経路の阻害が小細胞肺癌治療の分子標的になりうる可能性を示してい る。

参照

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