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富松 望 学位論文審査要旨

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Academic year: 2021

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平成19年3月

富松 望 学位論文審査要旨

主 査 箸 本 英 吉 副主査 佐 藤 建 三 同 汐 田 剛 史

主論文

Ku70/80 modulates ATM and ATR signaling pathways in response to DNA double strand breaks

(DNA二本鎖切断応答時にKu70/80がATMとATRのシグナル伝達経路を制御する) (著者:富松望、Candice G. T. Tahimic、大槻明広、Sandeep Burma、福原暁子、

佐藤建三、汐田剛史、押村光雄、David J. Chen、栗政明弘) 平成19年5月 Journal of Biological Chemistry 282巻 掲載予定

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学 位 論 文 要 旨

Ku70/80 modulates ATM and ATR signaling pathways in response to DNA double strand breaks

(DNA二本鎖切断応答時にKu70/80がATMとATRのシグナル伝達経路を制御する)

最も危険で細胞の生死に重大な影響を与えるDNA損傷として、DNA二本鎖切断がある。細 胞内ではDNAの断端が認識され、損傷のシグナルが伝達され、細胞周期がチェックポイント において停止し、断端の修復が行われる。この損傷応答反応においてATM(Ataxia-

telangiectasia mutated) はDNA断端付近で活性化され、直接的にあるいはATR(ATM- and Rad3-related) を介して、その基質であるp53などをリン酸化することで損傷応答時におこ るシグナル伝達を制御している。一方、DSB損傷断端にはKu70/80二量体(Ku)が結合し、こ れがDNA-PKcs(DNA-dependent protein kinase) を誘導し、非相同末端結合修復を導く。

これまで、このATMとATRを主とするシグナル伝達とKu結合を介した非相同末端結合経路 との関わりは明らかにされていない。今回、Ku欠損型細胞株を用いて、KuがATMの活性にど のような影響を与えるかを検討した。

方 法

野生型細胞とKu欠損型細胞株に放射線を照射して、一定時間後のp53ser18のリン酸化を 検討した。次に、そのp53リン酸化がどのキナーゼに起因するかを、ATMとATRのsiRNAを用 いて、そのタンパク質発現量とp53のリン酸化の変化を検討した。さらにATMやATRのキナー ゼ阻害剤を用いて、その際に起こるp53のリン酸化の変化を検討した。

また、ATM非依存性ATRの活性化が起こっているかどうかを検討するために、Cre-LoxPシ ステムを利用したATM欠損/Ku70コンディショナル(flox)型マウスを作製した。このマウス から細胞を樹立し、Cre組換え酵素を発現するアデノウイルスを感染させ、ATM/Ku70二重欠 損型細胞株を樹立した。これらの細胞においてp53のリン酸化を同様に、siRNAとキナーゼ 阻害剤を用いて検討した。

結 果

野生型細胞では、p53のリン酸化は放射線照射後2時間をピークに終息したが、Ku欠損型 細胞株では終息することなく放射線照射後16時間まで続いた。すなわち、Kuが欠失すると p53のリン酸化が遅延化することが明らかになった。このリン酸化を行うキナーゼを特定す るため、siRNAによるノックダウン実験を行った結果、野生型細胞において放射線照射後2 時間では、ATMとATR各々のタンパク質発現量の減少に伴いp53のリン酸化も減少した。Ku

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欠損型細胞株において、放射線後2時間ではATMの発現を抑制したときのみp53リン酸化が減 少した。放射線照射後12時間では、ATM、ATR各々の発現を減少させるとp53リン酸化が減少 した。また、それぞれの細胞株にキナーゼ阻害剤を処理してATMやATRのキナーゼ活性を抑 制したところ、siRNA実験の結果と同様の結果が得られた。すなわち、野生型細胞株と異な りKu欠損型細胞株ではキナーゼの活性化機構に違いがあることが示唆された。

新たに樹立した細胞を用いてp53のリン酸化を検討した結果、ATM単独欠損型細胞株では p53のリン酸化がみられなかったが、ATM/Ku70二重欠損型細胞株ではp53のリン酸化が再び みられるようになった。このリン酸化はATM非依存的に起こったものと考えられた。さらに ATRのsiRNAにより、ATRの発現量を減少させたところ、ATRの消失に伴いp53のリン酸化も減 少した。ATRキナーゼ阻害剤を用いた検討でも同様の結果が得られた。すなわちKuが欠損す ることによりATM非依存性ATRが活性化していることが明らかになった。

考 察

一般的に、野生型細胞株において放射線照射後は主にATMが働き、ATRは紫外線照射によ って引き起こされる損傷により活性化されると考えられている。また近年、放射線照射後 にはATM依存的なATR活性化が存在することも明らかとなってきた。今回の研究では、野生 型細胞株の放射線照射後2時間において、ATM依存性ATRが活性化していること、またこのATM 依存性ATR活性がKu欠損型細胞株の放射線照射後2時間では起こっていないことから、ATM 依存性ATRが活性化するためにはKuが必要であることを明らかにした。KuがDNA損傷断端に 結合することでATMからATRへとシグナルが伝達されている可能性が考えられた。

Ku欠損型細胞株の放射線照射12時間後の遅延したp53のリン酸化にはATM、ATR共に働いて いることがわかった。ATM/Ku70二重欠損型細胞株で認められるp53のリン酸化はATM非依存 性ATRによって引き起こされていることが示唆された。以上より、Ku欠損型細胞株での遅延 したp53のリン酸化には、(1)ATMとATM依存性ATRとATM非依存性ATRが活性化している、ある いは(2)ATMとATM非依存性ATRが活性化している、この2つのモデルが考えられた。

結 論

今回、KuがDNA二本鎖切断応答の早期段階におけるATM依存性ATRの活性化に関与している ことを見出した。Ku欠損型細胞株では、ATM非依存性ATR活性が存在することも明らかにし た。これらはKuとATM、ATRが密接に関与していることを示唆している。

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