賃銀の分布に關すろノート・
脚早川三代治
/
て帥労働所得の分布に就いて次のように述べた︒
は他の何れの所得より竜その分布範園は最も独く︑曲線の峰が割合に高く鋭く襖形を爲す︒非樹稻性は他
も少いが︑同じく正の非甥稽性分布であることにぽ攣りはない︒但し︑同一の工業に於ても男女工別賃銀
ば︑男工賃銀分布曲線は曲線の丘は低くなだらかであり︑著しく正常分布に接近しているに反し︑女工賃
線は峰が高く鏡く︑分布範園は男工の場合よりも遙かに狭く︑略ぼその二分の一位である︒然しこの爾者
ば︑前述の如き正の非封稻性分布曲線を爲す︒斯くて賃銀所得分布の非封繕性を支配するものは女工賃銀
である︒辱.
論は若干の統計資料に基く所見の概括であるが︑この推論の結果を確讃するためにはなお進んで多くの観
面的な考究を必要とするところであつた︒私は其後︑取扱うことの出來た種々な統計資料の内の若干のも
賃銀の分布に關すろノート
ノ 乱
一2‑一
﹁
賃掻の分布に關するノ7ト}
のに擦つて︑如上の推論の追讃を試み度いと思うのであるが︑こ玉では主として次のような二つの黙に就いて賃銀分
布の問題を考察する︒.
パレートは双樹籔目盛上に描かれた所得の累積度数分布曲線(Oσq署①)に關して︑総所得︑財産所得︑勢働所得等
に匠別して考察を試みていることは周知の如くである︒而して所得のパレート線ど稻せられる累積度敏分布曲線は総
所得としてはほとんど直線に接近するが︑財産所得と勢働所得とは異つた形欺の曲線を現わすことを述べている︒即
ちパレートは次の如く言う︒
﹁動産に關する曲線並に艸労働所得に關する曲線は著しく直線から離れる︒前者は正の軸の方向に凸歌であり︑後者は
ヨね凹歌である︒﹂
動産乃至廣く財産に關してはパレート線が正の軸の方向に凸欺であることはパレートの言うが如ぐであり︑私も
ヨリ亦︑拙稿[財産の分布に關する一考察﹂に於いてこれを承認するこ吐が出來た︒併しながら勢働所得に就いてはその
パレート線がパレートの言うが如くに正の軸の方向に凹歌をなすということは事實に於いてこれを肯定することが
出來ないと思はれる︒︑
賃銀の分布に關連し兎こ翼に私の興味を感する問題は凡そ左の二貼に就いて堅ある︒
9賃銀のパレート線の形歌がパレートの立言とは反封に︑正の軸の方向に凸歌であること︒從つて門財産所得と勢
働所得とが綜合されて総所得のパレート線が一直線に接近するという推論の困難なるとと︒冤税窯或は更に下つて
男目o坤国鴛○蜀日.∪欝く謬の所謂.︑名o龍弓o診げ︑.以下の小所得を考慮に入れるとき︑総所得のパレート線は直線とは
なり得ないこと︒この事は私が屡々述べ來たつた事である︒
圓所得分布の欺態を︑從つて所得分布の不李等を考察するとき︑不奉等の原因は何かという問題︒所得分布の不卒
一3一
㌦
等の原因の最大なものとして財産所有並に財産所得を學げるごとは通読となつているところである︒財産並に財産所
得の分布が著しい正の非樹稽性を持つことは事實上︑明白であるが︑是れに反して︑酪〃働所得の分布に於いては︑正
の非封稻性が認められるが︑概してその羅度は少く︑観察者によつてはこれをガウス曲線に著しく接近しているもの
と見ている︒此事實は勢働所得の分布の範園が狡く︑最頻値が分布領域の略ぼ中央に接近している事に外ならぬが︑
此事實の意味を読明するために︑勢働所得の分布は主として人々の能力の分布に竿行し︑その能力は又︑ガゥス分布
ハる 曲線に從うものであると考えられている︒O算oP罠唐o昌がそうであり︑後年のパレートも亦︑淘汰読に於いて此見
ハら 解の方向を示し︑榮働所得乃至小所得階級が淘汰される裏によつて所得分布の封稽性が失はれる事を説明している︒
謬私は以上の二黙に關連して若干の統計資料に櫨つて考察を試みよう
と思うが先づ最初にパレート自身の禍げている事例の吟味から始めよ
5︒
勢働所得のパレート線が直交軸の正の方向に凹歌であるという事
は・パ¥ト自身の墨げている引例に依れば婆當し難いと思はれる・
パレートは一八九二年︑瑞西國ヴオ縣に於ける帥労働所得として左の第
一表の如き藪字を示している︒
'
第 一 表
1892年 瑞 西 國 ヴ オ 縣 勢 働 所f'
区(累 積度籔)
12 ,!62
804 241
692916贈
x(フ ラ ソ) 1,250 2,500 5,000 10,000 20,000 40,000
今︑第唄表に擦つて双劉数目盛上にパレート線を描いてみると第一圖の如くになる︒
これに封して直線を當てはめると︑
ざσQ男引堕OG◎コQoー一謄蟄㊤おざσq区.
なる方程式が得られる︒此方程式からの計算値と襯察値とを比較すれば第二表の如くである︒
ノ
賃銀の分布に關すろノート.
賃銀の分布に關するノート ︑
̀
●
一4‑一
2000
;OOO
)100
斜800
へ⇒ρ08
δOOC
℃
いOOO
盤Oo
10L」
鰹 ・略 一
〇 へ⊃
oPt oo
表二
第 値算
値i計
察麹
所得階暦
各轡 儲i累
各暦所得 者1累 計 N計
n N
2,146 748 261 91 32 11
甥捌⑳男烈H
2,162 804 241 69 29 16 1,358
563 172 40 13 16
■(フ ラン)
1,250 2,500 5,000 10,000 20,000 40,COO
2,146 2,162
計
是れによつてみれば︑此場合︑パレート線はぼ璽一直線を示していると言うことが出來︑dの値H・αH⑩おもパレー
トが一般に総所得に關して與えた結論とよく接近している事を示している︒併しながらこの勢働所得に關するパレー
ト線としての形欺については︑バレー}の言うが如き︑上方へ凹状を示しているものとは見ることが幽來ない︒パレ
ートの準撫した統計資料(前掲第一表)に於いては︑千二百五十フラン以下の小所得階暦が欠けている︒是等の所得
階暦に就いての累積度数分布曲線は私が屡々記述したようにや玉右下りの曲線で上方へ凸歌であつて︑決して上方ヘ
ロへ凹歌ではない︒この事を考慮に入れて全膣の累積度数分布曲線の形歌を考えるならば︑バレーLの示したヴオ縣の勢
ネ働所得の全艦のO讐く①は上方へ凹歌ではなく︑文字通り凸状であるに相違ない︒
ノ
︑
引
凸
︑
1掴稿﹁所得分布に關す︑る諸考察﹂︒日本統計墨會編﹁國民所得とその分布﹂所載︒第二八〇頁︒昭和+九年︒
2<皆守90守お3uOo奪︒・島.詞8ロ書﹂Φで9筐暑①二〇葺o器8μ斜昌c◎ゆ8やQ︒OQQ.
3小樽商科大學開學記念論丈集︒第二分冊︒昭和二十五年三月︒
498>日居o♪ヨ㊦○①moロ︒・︒冨怖需臼量弓σq自巳鵠円o眉勢仲川巳憲δbO鰭口臼品oロuHQOOい・
5<籠晃︒貯蚤9§呂︒乙︑浮︒冨︒邑Φ豊団件喜︒弘o貰o冨マくロ冨鴨︒覧葺一︒戸
6響く琴①8皆き"︒︒蕊臼跡§邑ε︒ま⁝"言︒・・§呂L§ら︒︒蜀
=噛‑ 噛.
'
一5‑i・ 一■
以上の如き問題に關蓮して日本に於ける芳干
の事例を考察してみよう︒
私が嘗つて實際に調査した帝國製麻會就札幌
工場に於ける昭和八年中の全從業者(高級職員
をも含む)の所得分布は第三表の如くである︒
本工場は多敏の女工を含むものであるが︑資
料の上では男女性別に置別することは出來な
い︒今︑假りに所得年額二千圓以上十名(その
所得総額三万圓yを高級職員に屡するもの玉給
ヒ料と見なすならば︑百圓以上︑二千圓未満の所
得者七百三十三名(その所得総額二十万二千六
賃銀の分布に關するノート
第三表 囎 懸欝 翻 諜 趨 負噸L竺 盤 額
39559,250
135133,750
曙 圓障 阿 中(央圓)値
Il
E{
I
t
26,600 22,050 16,500
・13 ,000 71500 2,550 1,900 19,500 15,000 10,500 4,500
232,600
76493020m3213631
150 250 350 450 550 650 750 850 950 1,500 2,500 3,500 4,500
100‑
200‑・
300‑
400‑
500‑
600‑
700‑
800一
200 300 400 500 600 700 800 900
900‑1,000 1,000‑2,000 2,000‑3,000 3,00(ト4,000 4,000‑5,000
743
計
磁 '
〆
●
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噂賃銀の分布に關寸'ろノート
百圓)は︑これを主として職工の賃銀と見ることが出來るであろう︒豊これを表示すれば第四表の如くである︒
而して所得分布のモードは百圓以上二百例未澗の所得階居にあり︑全所得金額の算術牛均値は三百十三圓である︒
以上の如き所得分布表によつてパレ・ート線を描けば第二圖の如くである︒.
表四
第
鴨
帝國製駈會肚札幌工揚從業員構成
職 工i職 員i合 計
743 232,600
73310
202,600130,000
人 員
所得 年額(圓)
1.35 2‑90
100 100 98.65
87.10
人 員%
所得年額%
一第二図
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;OCO \ 笛寵エ蕩
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竃ψOO
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第二圃に於いて見られる如く︑そのパレート線は全膣として上方へ凹歌ではなく︑叉︑賃銀のみを探つた場合のパ
レート線も亦︑上方へ凸歌であつて︑凹歌ではない︒今︑給料と賃銀とを併せた全所得分布の場合及び︑賃銀のみの
場合に別けてパレート線の補間直線方程式を求めれば次の如くである︒
賃銀と給料とを併せた場合には︑'
︑
b ︑
'
'
亀 ざσq属11の・㊦誤豊‑団為Q◎δこpざ騎図
となり︑賃銀のみの場合には︑一〇σq属11臼悼OOb9⑪ーb9.Oお⑦Uごσq図
.となる︒爾者のパレ﹁ト係敏dの値︑ド刈◎◎δ︒︒と悼O一霧α.とを比較して︑後者の方が分布の不李等度が少ないこと玉
なる︒即ち︑所得分布の不亭等度は高級職員の給料を含めたことによつて高められている︒
他の一例として私の調査した札幌鐵道局札幌市苗穗工場に於ける昭和八年中の給與に就いて考察しよう︒同工場は
汽罐車︑車輌等の修理加工を行う工場で︑男工が主であるが︑その所得分布表は次の第五表の如くである︒
一7‑一
, 表五第
札鐵 苗穗 工揚 、昭和 八年 中、給 與並 に賃銀 所 得金額
(圓)
75 ,150
7,50 9,450 16,200 ヱ6,500 20,150 42,750 103,700 125,400 571,500 30,000
0 9,000
所摺 暦 幡 鯛 灸階質
1[
ii
30 3』
57 122 132 381 12
0 2
乃切卿蜘靭卿碗
750 850 950 1,500 2,500 3,500 4,500
50‑
100‑
200‑
300̲
400‑‑
500‑
600‑
700‑
800一
100 200 300 400 500 600 700 800 900
900‑一 ・1,000 1,000‑一 一2,000 2,000‑3,000 3,000‑4,000
ノ 4,000‑5,000
945,625
.計 835表
ノ 、
第
札 鐵 苗 穗 工 揚 從 業 者 構 成
,〆
1職 工1職 員1合 計 835 945,625
100 100 14
39,000 821
906,625
人 員
所得年額 圓1
1.68 4.12 98.32
95.88
人 員%
所得年額%
︑
賃銀の分布に關すろノート
︑
︑