遊 離 骨に対
す
る血管束 移植
の 実 験 的研 究金沢大 学医 学 部 整形外 科学 講 座 く主任二野村 道 教 授1
金 柏 浩
く昭和6 3年5 月1 9 日貸 付I
大き な骨 欠 損に対し従 来の遊 離 自 家 骨移 植で は移 植 骨が 吸収さ れ た り腐 骨と な り 不成 功に終わ る こと が少な く ない . そこ で遊 離 移 植 骨の吸 収. 腐 骨 化の予 防と確 実な 生者のた めに, 遊 離 骨に血 管 束移 植を行い, 血行 再 建と骨 新 生が促 進さ れ るかを検 討す る た め 以下の実 験を行っ た. 7 5頭の雑 種 成 犬を用
い, 伏 在 動 静脈を血 管 束と し. 腸 骨よ り採 取し た遊 離 骨 内に移 植し, 遊 離 骨の血 行 再 建と骨の修 復機 転 を組 織 学 的に検 討し た. 実 験 方 法は, 採 取し た 3.OX3.Oc m 大の腸 骨 片の骨 髄 中心 部に長 軸 方 向に直径 2.5m m の孔を穿ち, こ こ に血管 束を挿入 し た. 腸 骨 片はいずれ も大腿部 皮下に埋没し た. 骨 髄 中心一部の 孔に血管 束を移 植し た も の を A 群, 血 管 束 移植 後 遊 離 骨をシリコ ン膜で包み周 囲 組 織よ り隔 離し た も のを B 群, 対照 と し て血 管 束を移 植し なかった もの C 群, オ ー ト クレ ー ブ処理 く121
d
C ,2 0分 間I にて 実 験 捌こ壊 死 骨を作 成し, 血管 束を移 植し た ものを D 群, オ ー ト クレ ー ブ処理骨に血管 束を移 植し な かった も の を E 群と し た. 移 植 後 経 時 的に摘 出し て微 小血管 造 影, He m ato xylin−e O Sin 染 色, Ralis
tetr a chr o m e 染 色およ び テ ト ラ サ イ ク リン骨標 識 法を行った. 結 果は, A 群では移 植後3週で, B 群
では移 植 後4 遇で新 生血管は遊 離 骨 全体に分布し, 血管 網を 形成す る よ うにな り, 新 生 血 管を足場と し て壊死 骨の修 復 像およ び骨 新 生 像が見ら れ た. 一 方, C 群で は 血行 再 開が遅延 し, 移 植 後4 週経 過後も 遊 離 骨の中心 部には無 血 菅野 と壊死骨が残 存し, 骨の修 復 像は 血管 束を移 植し たの に比べ て劣っ てい
た. ま た D 群で は新 生血管 網は移 植 後6 週で オー ト クレ ー プ処理骨の約8 0%に分布し ていた が,E 群で は 血行 再 開が遅延し, 6 週 経 過 後も新 生血管 網は オ ー ト クレ ー プ処理骨の約2 4%を占め るにす ぎ なかっ た. D 群と E 群で は壊死骨の修 復 像は遊 離 骨に比べ て明らか に劣っていた. 以上の所 見よ り. 遊 離 骨に 血管 束を移 植す る と遊 離 骨への血 行 再建に優れ た効 果が あ り, 早 期の 血行 再 開によ り中心部 壊死 を起こ さずに, 骨 新 生に優れ た効 果が期待で き ること が 示 さ れ た. ま た オ ー ト クレ ー ブ処理骨に対し て も 血管 束を移 植す ることによ り 血行 再 建が認め ら れ た,
E ey w o rds v a s c ula r bu ndle tr a n spla ntation ,b o n e gr aft, a utO Cla v ed bo n e gr aft, r e V a S C ula riz atio n
四肢の外 傷や 腫瘍の切 除な どによ り広 範 囲の骨 欠 損を き た し た場 合, 従 来遊 離骨 移 植に よ る種々の再 建が試み ら れ て き た.
新 鮮 自 家遊 離 骨 移 植は A lbe e
l ,以来 広く臨 床に応用 さ れ てい る. しかし, 骨 欠 損が大きい症 例や骨 移 植 母 床と し て条件が悪い症 例では, 従 来の自 家 遊 離 骨 移 植ではせ っか くの移 植 骨が萎 縮. 吸 収さ れ た り,
腐 骨 化し て最 終 的に骨 移 植が失 敗す ること も少な く ない. そ の た め最 近で は, 血 管 柄 付 骨 移 植が多く 用 いら れ ている. 血管柄 付 骨 移 植は骨の血行を温 存し
た ま ま骨を移 植す る た め従 来の自 家 遊 離 骨 移 植と異 な り, 骨 細 胞が 死滅せずに生存し続け るの で最も確 実に骨 癒 合が得ら れ る. しかし, 血管 柄 付 骨 移 植は 血管 吻 合な どの可 能な 場所でな け れ ば な ら ず, 吻合 血管の開 存に高 度の技 術が 必要で あ る な どの制 限が 存 在す る. そこ で著 者は, 新鮮 自 家 遊 離 骨 移 植に際 し, 早 期に移 植 骨への血行 再 開を はかることによ り.
血管 柄 付 骨 移 植に近い成 績を得ら れ るの で は ないか と考え, そ の手 段と して実 験 的に自 家 遊 離 骨の骨髄 内に血管束を移 植し た. 血管 束を移 植し た群と対照 A b br e viations こB M P ,b o n e m o rph oge n etic protein.
遊 離 骨に対す る 血管 束 移 植の実 験 的 研 究
として血管 束を移植し なかった群を 比較し, 経 時 的
に遊離 骨の血行 再 開と骨の修 復 機 転 像を組 織 学 的に 検討し た. ま た, 新 鮮 自 家 骨 移 植で骨の採 取量 が 不 足し た 場合な どには保 存 骨が 用いら れ てい る. 多く は同種 骨移 植で あ る が, 免疫な どの問 題を除 外す る た め, 本 実験では保 存 骨と し て オ ー トクレ ー プ 処 理 を行った自家骨 を 用いた■ 新 鮮 自 家 遊 離骨 と同 様に オー ト クレー ブ 処 埋骨の骨 髄 内に血管 束を移 植し,
血管 束を移植し た群と対 照と して血管 束を移 植し な かった群を比較し, 経 時 的にオ ー トクレ ー プ処理骨
の血行再 開と骨の修 復機 転像を組 織 学 的に検 討し た.
対 象およ び 方 法 工. 実験 動物
10 ル15 kg の雑種 成犬 7 5頭を使用 し 以 下の実 験を 行った. フロ ー セ ン の全 身 麻酔下に , 仰 臥 位で下 肢 を開排させ大腿内側に皮 膚 切 開を加え伏 在 動 静 脈を
6 5 3
展開し た. 伏 在動静脈を 一 つの血管 束と し て剥 離し, 大腿動 静 脈の分岐 部よ り約8c m 末 稗郡で結 染■切 離 し た後, 血管周囲の月旨肪 組 織を温 存しつ つ愛 護 的に 中枢に向か って反転し た. なお実 験には動 物の左右 両側を 用い た場 合 く2 8頭1 が含ま れ る.
II . 実 験 方法 1 . 新 鮮 遊 離 骨 移植
腸骨よ り 3.Ox3.Oc m 大の骨 片を採取し, 骨 膜を除 去 し た後, 骨 髄 中心部に長 軸 方 向に骨 髄 腫を貫く よ うに, ド リル で直 径2.5m m の孔を穿っ た. こ の中へ 先に遊 離して おい た 血管 束を 通 し たの ち, 腸 骨 片を 大腿部 皮下に埋 没 し た. 遊 離 骨周囲の母 床の変 化が 血 行 再 建へ 与え る影 響を比較す る た めに次の3 群に 分 類し た. 遊 離 骨周囲の血行が良い群と し て 血管 束 を移 植し た ものを A 群 く2 7頭コ, 遊 離骨周囲の血行が 悪い群と し て 血管 束を移植 後, 腸 骨 片をシリコ ン膜 で包み周囲組 織よ り隔 離し た ものを B 群 く2 6頭I, 対
F ig.1. Sche m a of the v a s c ula r bu ndle tr a n spト
a ntatio n to the ilia c bo n e. An a utologo u s
bo n e gr aft,3.Ox 3.O c m,is obtain ed fr o m the
ilia c bo n e. A hole of 2.5 m m in dia m ete r is
drilled alo ng the lo ng a xis at the c e nte r of the bo n e m a r r o w . T he n,the s aphe n o u s a rte ry a nd v ein s take n a s a v a s c ula r bu ndle a rld tr a n spla nted into the hole, T he bo n e gr aft is
bu ried in the s ubc uta n e o u s tis s u e ofthe th igh . Gr o up A,the v a s c ula r bu nd le is tr a n spla nted into the bo n e gr aft 三Gr o up B,the bo n e gr aft is c o v e r ed with silic o n e m e mbr a n e to is olate
itfr o m the s u r r o u nd ing tis s u e afte r v a s c ula r
bu nd le tr a n spla ntatio ni Gr o up C,the v a s c ula r
bu nd le is n ot tr a n spla nted a s a c o ntr ol. 1, fe m o r al a rte ry a nd v eini 2,S aphe n o u s a rte ry a nd v einニ3,fr e eilia c bo n e gr aft こ 4, Silic o n e m e mbr a n e.
照と して遊 離 骨に血 管 束を移 植し なか っ た もの を C 群 く3 0頭1 と し た く図1 L
2 . オ ー トクレ ー プ処理骨 移植
腸 骨よ り実 験1 と同様に腸 骨 片を採 取し た後,
E6b le rら2Iの方法に準じてオ ー トクレ ー プ処理 く1 2 l
OC, 2 0分 間I にて壊死骨を作 成し大腿部 皮下に埋没
し た. オー トクレ ー プ 処 理骨に血管 束を移 植し た も のを D 群く1 0頭1 ,対照 と し て オ ー トクレ ー プ処理骨
に血 管 束を移植し なか った ものを E 群 く1 0頭う と し
F ig.2. Sche ma ofthe v a s c ula r bu nd le tr a n spl−
a ntatio n to the n e c r otiz ed bo n e. Gr o up D,the
bo n eis a uto cla v ed to m ake a n e c r otic bo n e,
a nd the v a s c ula r bu nd le is tr a n spla nted in side
it i Gr o up E, the v a s c ula r bu ndle is n ot tr a n spla nted to the n e c r otiz ed bo n e. 1,
fe mo r al a rte ry a nd v ein こ2, S aPhe n o u s a rte ry a nd v ein三 5, a utO Cla v ed ilia c bo n e.
た く図 2コ. III. 観 察 方法
血管 束 移 植 後1 凰 2週, 3 凰 4 過,
一 部の榎本
では 6 鳳 2 カ月, 3 カ月経 過 時に腸 骨 片を摘 出し て以 下の検 討を行った く表1 L
l . 微小血 管造 影 法 1I 墨 汁注入法
全 身 麻 酔 下に開腹し, 約400Cに加温 し たヘパリン
加 生 食 水くヘ パリン 50単 位ノmり を約1 0 0m m Hg の加 圧 で腹 部大動 脈よ り 注 入 しつ つ , 腹 部 大 動 脈よ り潟 血操 作を行った. 流 出 液が透明化し たのちに. 5% ゼ ラ チン .1 0%ホル マ リン■ 20% 墨 汁 加生 理食 塩水 を約400C に加温 し 1 0 0 0〆−15 0 0ml注入 し た. 爪床が異 変す る時を もっ て注入 を中止 し た. 注入後は直ちに
全 身を冷 却し, 約 半日後に骨を摘 出し た. 摘 出 標本 は1 0%ホル マリン液で 1週 間 固 定 後, ぎ酸 . く え ん 酸ナ ト リ ウム法に て脱 灰 し た.
21 新 生血管網 計 測 法
各 群そ れ ぞ れ 3 〆−5頭について計 測し た. i . 標 本の中 央 部分から約 5m m の切 片を切り出 し, 横 断切片を約5 0 0ノノm の厚さに作 製し た. ア ル
コ ー ル脱 水 後ツ ェ ー デル油に浸 し て透 徹 標 本と し て 接 写 撮影 し た.
11 . i と同様に約5m m の切片を切り出し,
パラ フ ィ ン包埋 を行い 1 5ノJ m の横 断切片を作 製し た.
He n ning3切 point c o u nt 法に準じ て, 顕 微 鏡倍 率
10 0倍 下で マイクロ メ ー タ ー ディ ス クを 用いて墨汁の 存 在す る部分 を計 測し, 標 本の全横 断 面 積に対する 新 生血管網の範 囲を測 定し た.
2 . H e m ato xylin−e O Sin 染色 法
10%ホ ル マリンで固定 し, 脱 灰後パラフ ィ ン包埋 を行い 4 へ 6声 m の横 断切 片を作 製 .染 色し た.
3 , R畠1is tetr a chr o m e 染 色 法
パ ラ フ ィ ン包埋後に約1 5 ノノm の横 断切片を作製し R畠1is tetr a chr o m e 染 色を行っ た. 本法によ り 頬骨 は膿 青色に染 色さ れ, 石 灰化 骨はレ ンガ色に, 骨芽 細 胞は オレ ンジ色に染 色さ れ 明 瞭に区 別さ れ る.
4 . テ fl ラサ イ ク リン骨 標 識 法
各 群そ れ ぞ れ1 へ 2頭につ い て標 本 摘出の 1週間 前に テ トラサ イ クリン によ る骨 標 識をお こな一二j た く2tlm gノkgノday, 3 日間経口投 与l . 摘 出 標 本を70 % アル コ ー ル によ って固 定し, メチル メタ ク リ レート 樹 脂 包埋 し研 磨 標 本を作製, 2 0 へ50 ノノm の厚 さで蛍 光 顕 微 鏡にて蛍 光を観 察し た. 本 法により, 骨 新生 の行わ れ ている所でテ トラサ イクリン の蛍光 が 認め ら れ る.