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古川 睦久*・矢竹 正弘* 横山 哲夫*

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(1)

長崎大学工学部研究報告 第15巻 第24号 昭和60年1月 105

  ポリエーテル系ポリウレタン網目の 13C‑NMRによるキャラクタリゼーション

一原料・モデルウレタン・ウレア・アロハネートー

古川 睦久*・矢竹 正弘*

横山 哲夫*

   Characterization of Polyether−Polyurethane Networks          by 13C‑NMR Spectroscopy

−Raw Materials,Model Urethanes, Urea, and Allophanates一        by

Mutsuhisa FURUKAWA Masahiro YATAKE*

         and Tetsuo YOKOYAMA

  13C・NMR spectra of polyether−polyurethanes, model compounds, and raw materials were measured in deuterated dimethylsulfoxide. Polyether・polyurethane networks were prepared from poly(oxypropylene)

glycol(PPG), 2,4−tolylenediisocyanate(TDI), and 1,4・butanediol(BD). Tolylenedialkylurethanes,

tolylenedibutylurea, and{ろγ・diphenylalkylallophanates were used as model compounds. The chemical shifts of carbonyl carbon were found at 125.43 and 124.08 ppm for TDI,154 and 153 ppm for urethane,

155.39and 155.28 ppm for urea, and 154 and 151 ppm for allophanate, respectively. The chemical shifts of urethane carbonyl peak gf the soft segment model were different from亡hose of the hard segment model.13C−NMR spectra of network chains which曽ere obtained by the.amine degradation of PPG」TDI・

BD polyurethane network showed five peaks in the range from 152.6 ppm to 154.3 ppm. Chemical.shifts of aromatic carbon for 2,4・tolylene group were influenced by the structure of polar substituents. Fr6m these results, it is possible to distinguish between polaf groups formed by polyurethane.reaction.

1.緒  言

 ポリウレタンは,広範囲な実用の他に,極性高分子 から成るモデル網目として用いられている1−5㌧著者ら は低分子グリコール架橋ポリエーテルウレタンの力学 物性が,化学架橋点に基づく他にかなりの部分が物理 架橋に基づいていることを,また同一原料及び同一配 合比で合成しても合成法が異なると物性が異なること

を見出し,ポリウレタンの極性基の配列やその濃度な

どが重要な因子であることを明らかにしてきた4 51従 来,ポリウレタンの極性基の配列などの構造のキャラ クタリゼーションは,赤外吸収スペクトル6『8)や1H−

NMR9−11)を用いてなされてきたが,近年普及してきた

13b−NMRは,分子骨格構造を直接観測できるため1H−

NMRでは測走できなかったカルボニル.やイソシアナ ートが直i接観測できる利点を持っている.また1H−NMR の化学シフトより13C−NMRのシフトは約30倍大きく 昭和59年10月1日受理

*材料工学科(Department of Materials Science and Engineering)

(2)

解析に有用であるが,ポリウレタンについての測定例 は少ない.

 Delidesら12}はポリエステルグリコールージフェニ ルメタンジイソシアナート系ポリウレタンについて,

Kircheldorfら13)は一分子ジオールと各種ジイソシア ナートからの規則性ポリウレタンについて13C−NMRを 用いて研究を行っている.また,斉藤,田中ら14)は高 分子の13C−NMRの化学シフトを図表にまとめポリウレ

タンの分析に用いている.

 本研究ではポリ(オキシプロピレン)グリコール

(PPG)一2,4一トリレンジイソシアナート(TDI)一1,4一 ブタンジオール(BD)系架橋ポリウレタンのキャラク タリゼーションを行うために,低分子モデル化合物・

ポリウレタンオリゴマー・網目鎖構成分子を用いてポ リウレタンの13C−NMRについての基礎的知見を得る ことを目的とした.

2.実  験 2.1 試  料

 合成原料である1,4一ブタンジオール(BD),2,4一ト リレンジイソシアナート(TDI)は,市販品を減圧蒸留 することにより精製したものを用いた.分子量の異な るポリ(オキシプロピレン)グリコール(PPG)は,三 洋化成工業製のものを加熱減圧下乾燥窒素ガスを通す ことにより乾燥して用いた.低分子モデル化合物の2,

4一トリレンジメチルウレタン(TMC),2,4一トリレン ジーn一ブチルウレタン(TBC),2,4一トリレンジーn一ブチ ルウレァ(TBU)は, TPIと相当するアルコールまたは アミンとの反応により合成した後,再結晶により精製 した.また,α,γ一ジフェニルーn一ブチルアロハネート

(DPBA),傷γ一ジフェニルーiso一プロピルアロハネー ト(DPPA)は, Kogonの方法15}により合成した.網目 鎖中のポリウレタンハードセグメントのモデルとして のポリウレタンオリゴマーは,TDIとBDをベンゼン 中で反応させることにより合成した.またソフトセグ メントのモデルとしては,TDIとPPG(Mn=1000)を モル比2/1で反応さぜて得たイソシアナート末端プレ ポリマーをメタノールで保護したものを用いた..ポリ ヴレタン網目構成分子には,アロハネート架橋点の選 択的な分解法であるアミン分解法16)によりPPG−TDI

−BD系アロハネート架橋ポリウレタンを分解して得た 分解生成物を用いた.すなわち,架橋ポリウレタンを n一ブチルアミンージメチルスルポキシド(DMSO)溶液 で分解後,分解物溶液からDMSOを減圧留去して得

2.2 NMR測定

 13C−NMRの測定には日本電子製FX−90Q FT−NMR 装置を,1H−NMR測定には日本電子製JNM−MH400 NMR装置を用いた.13C−NMRスペクトルは完全プ

ロトン照射(Proton Noise Decoupling)法を用いて得

た.

 NMRの測定溶媒には市販品の重水素化ジメチルス ルホキシド(DMSO−d,)を,内部基準にはテトラメ チルシラン(TMS)を用いた.試料0.039〜0.19を DMSO−d60.5糀Zに溶解しNMR測定用溶液とした.

3.結果と考察

3.1 ブタンジオール・ポリ(オキシプロピレン)

   グリコール・トリレンジイソシアナート  Table 1に,合成原料についての炭素の化学シフト

とその帰属を示す.また,Grant及びPaulの方法17)

やこの方法を利用したDelidesの方法12), Levyらの方 法18 19}によって予測される値を示した.

 分子量の異なるポリ(オキシプロピレン)グリコー ル(PPG)の13C−NMRスペクトルをFig.1に示す.

PPG 2000(Mn=2000)には3本のピークが観測され る.二子が規則正しい頭一尾結合をしている結晶性ポ リマーでは高磁場側から17.2,73.3,75.2ppmのシグ ナルが各々メチル,メチレン,メチン炭素に帰属され ていること14)を考慮すると,PPG 2000の3本のピー

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Fig.1 13C−NMR Spectra of Poly(oxypropylene)

    glycol.

    The number(200,400,950,2000)re−

    fers to molecular weight(Mn)of PPG.

(3)

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古川睦久・矢竹正弘・横山哲夫

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107

(4)

種の炭素に帰属できる.しかしながら,分子量の低下 に伴って72ppmのピークが分裂する他に,65ppm及び 20ppm付近に複数の新しいピークが出現した.特に,

PPG 200の74,65,20ppm付近のピークはTable 1に 示すように複数に分裂した.また65,20ppm付近に観 察されるピークの強度は,用いた測定法の完全プロト ン照射法ではピーク強度の定量はできないが,分子量 の低下に伴って増加する傾向を示した.1,2一プロピレ

ングリコール(PG)の炭素の化学シフトは本来3本の ピークが観察されると予想されるが,67,20ppm付近 に2本のピークが観察されたのみであ、つた.しかしな がらPGの1H−NMR測定ではメチル,メチレン,メチ ン基のプロトンピークが確認されたため,PGの炭素 の化学シフト67ppmをメチン,メチレン基の炭素に,

20ppmをメチル基の炭素に帰属した.これらの結果か ら,比較的低分子量のPPGに見られる65ppm及び20 ppm付近の化学シフトはPPGの末端に存在するメチ

レン,メチン炭素とメチル基炭素に帰属できる.また PPG 200で観測される65ppmと20ppm付近の複数のピ

ークは1級あるいは2級の末端水酸基の構造を反映して いると考える.低分子量PPGにおける72ppm付近の 複数ピークは頭一頭,頭一尾結合の混在を示唆してい

る.また,1,4一ブタンジオールではα一メチレン炭素の 化学シフトが60.85ppm,β一メチレン炭素が29.2ppmに 観察された.

 2,4一トリレンジイソシアナート(TDI)については,

イソシァナートのカルボニル炭素の化学シフトは125.43 と124.08ppmに,メチル炭素は17.12ppmに観測された.

また,ベンゼン誘導体の置換基効果によるTDIの芳香 環部分の化学シフトの計算18)より,Table 1に示すよ

うに各炭素を帰属した.

の炭素においてTDIでの化学シフトは138.54ppm,ウ レァ(TBU)で138.65ppmであるのに対し,ウレタン

(TBC)では,137.24ppmと変化した.また4位の炭素に おいてTDIでは131.66ppmであるのに対し,ウレタン

(TBC)で136.48ppm,ウレア(TBU)で138.21ppmと化 学シフトは低磁場側へ移動した.1位の炭素及び3,

5位の炭素の化学シフトもTable 2に示す様に各化合 物により異なっているが,特にウレア(TBU)の炭素の 化学シフトはTDI,ウレタン(TBC)のそれよりも著し

く大きい高磁場シフトを示した.

 極1生基であるウレタン,アロハネート,尿素基の隣 接するアルキル炭素(n一ブチル基)の化学シフトへの影 響はα炭素の化学シフトでウレタン(TBC)では63.77,

63.66ppm,アロハネート(DPBA)では66.37ppm,ウレ ァ(TBU)では38。63ppmと著しいが,β,γ;δ炭素と極 性基から離れるに従って減少した.

 カルボ三ル炭素を比較すると,予想されるようにい ずれの化合物においても結合位置の構造を反映して2 本のピークが観察された.各ピークの帰属はTable 2 に示した通りであるが,TDIの2っのイソシアナート

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3.2 ウレタン・ウレア・アロハネートモデル化合物  2,4一トリレンジーn一ブチルウレタン(TBC),2,4一ト

リレンジ¶一ブチルウレア(TBU),α,γ一ジフェニルーn一

ブチルアロハネート(DPBA)及び傷γ一ジフェニル ーiso一プロピルァロハネート(DPPA)の13C−NMRの炭 素の化学シフトとその帰属をTable 2に示す.帰属は 前述した方法と斉藤・田中らのマスターチャート14)を 参考に行った.TDI, TBC, TBU及びDPBAの13C−

NMRスペクトルをFigs.2,.3に示す.

 Figs.2,3及びTable 2に示すように,イソシアナ ートからウレタン・ウレアに誘導した時の芳香環炭素 のシフトの変化は,2,4一位でのカルボニル含有置換基

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(5)

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古川睦久・矢竹正弘・横山哲夫 109

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(6)

ボニル炭素のそれよりも高磁場の125.43ppmと124.08 ppmに見られた.これはイソシアナート基の隣接二重 結合の共鳴構造による脱遮蔽効果のためと考える.こ れに対しウレタン(TBC)では154.36ppmと153.55ppm に,ウレァでは155.39ppmと155.28ppmに観察され,

いずれのカルボニル炭素の化学シフトもTDIのそれに 比較して低磁場側へ移動した.またアロハネートでは DPBAで154.68ppmと151.6(>ppmに, DPPAで154.14 ppmと151.16ppmにカルボニル炭素の化学シフトが見

られた.

 これらのカルボニ.ル炭素の化学 シフトの観察から,

ウレタンとウレアの区別がウレタンの153.55ppmのカ ルボニル炭素の化学シフトにより,アロハネートとウ レタン・ウレアとの区別が若干低磁場に現われる151.16 ppmのカルボニル炭素の化学シフトにより可能である

ことが示唆される.特に従来1H−NMRや赤外吸収ス ペクトルでは困難であったアロハネートの存在の確認 に13C−NMRが有用であることがわかった.

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Fig.4 13C−NIMR Spectra of Hard Segment(a), Soft     Segment(b)Model of PPG−TDI−BD, and     Polyurethane Network Chains(c)obtained     from PPG−TDI−BD Polyurethane Network     by the Amine Degradation.

   リウレタン網目鎖

 ポリウレタン中にはポリエーテル部分から成るソフ トセグメントとウレタン連鎖から成るハードセグメン トが含まれている.これらのセグメントのモデル化零 物とPPG−TDI−BD架橋ポリウレタ』ンのアミン分解に

よって得たポリウレタン網目鎖構成分子の13C−NMR スペクトルをFig.4に,その炭素の化学シフトと帰属 をTable 3に示す.特に高分子化合物となるとFig.4 に示されるようにスペクトルは複雑iとなり,各化学シ フトの帰属は困難を伴うが,既述の方法とモデル化合 物の結果により行った,

 ポリウレタンハードセグメントはBDとTDIの反応 により得られた規則性ポリウレタンであり,この化合 物の炭素の化学シフトはモデル化合物のTBCの場合 とメチレン連鎖のβ位の炭素の化学シフトが異なる以 外はほぼ同様であった.ハードセグメント中のウレタ

ン基のカルボニル炭素の化学シフトは154.25ppmと 153.44ppmであった.

 PPG(Mn=1000)の両末端にTDIを反応させた後,

メチル基で保護したソフトセグメントのモデル化合物 には,カルボニル炭素の化学シフトに3本のピーク

(154.63,153.87,153.06ppm)が見られた.ウレタン 基は3種あるいは4種の異なる構造を取っていると考

えられる.すなわち,Table 2に示すように2,4一トリ レンジメチルウレタン(TMC)のウレタン基のカルボ ニル炭素が,154.68ppmと153.93ppmに見られること とソフトセグメントのウレタン基のカルボニル炭素 154.63ppmはortho一位のメチルウレタン基とイソプロ ポキシルウレタン基に,153.87ppmはpara一位のメチル ウレタン基に,153.06ppmはpara一位のイソフ.ロポキ シルウレタン基に帰属されるが,para一位のメチルウ レタン基は少ないと考えられる.その他の化学シフト はモデル化合物とPPGの炭素の化学シフトと同様で

あった.

 ポリウレタン網目のアミン分解より得られた網目鎖 構成分子は粘稠なポリマーであった.このためDMSO−

d、に溶解させた後も高粘度の溶液であり,室温ではき れいなスペクトルを得ることが困難であった.従って スペクトルは40℃で積算回数を増す測定によって得た.

しかしながら,ポリエーテル鎖部分のSP3炭素のシグ ナルは強く現われたが,SP2炭素の芳香環炭素,カル ボニル炭素のシグナルは非常に弱かった.

 芳香族炭素の領域137.2〜115ppmに微小な吸収が,

またアルキル基炭素領域74.5〜17ppmに3本の大きな

(7)

古川睦久・矢竹正弘・横山哲夫

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(8)

ポリウレタンハードセグメント及びソフトセグメント に見られる吸収であった.

 カルボニル炭素の化学シフトには5種の吸収が観察 され,各カルボニル炭素はTable 3のようにソフトセ グメントとハードセグメントに帰属できるが,152.63 ppmの吸収は帰属することができなかった.これらの 化学シフト中にはTBUで見られた155.39ppm,155.28 ppmの尿素結合に基づく化学シフトが見られないこと

により,末端ウレァ基のカルボニル炭素はその濃渡が 薄いために現われなかったものと考える.Fig.4のス ペクトルの強度の比較より相対的にこの網目鎖中には ソフトセグメント部分が多く,ハードセグメント部分 は少ないことが示唆された.

4.結  言

 ポリウレタン網目構造のキャラクタリゼーションへ の基礎的知見を得るため,原料及び低分子モデル化合 物・ポリウレタン網目モデルの 3C−NMRスペクトルを 測定した結果次のことが得られた.

①PPGはアタクティク構造を取っており,低分子量グ  リコールでは末端基ジオールの構造の判別が可能で  あること。

②TDIのイソシァナートのカルボニル炭素の化学シ  フトは125.43と124.08ppm,ウレタンは154〜153ppm,

 ウレアは155ppm付近,アロハネートは154ppmと151  ppm付近に2本見られ,各極性基の置換位置の差を  反映すること.

③ハードセグメントとソフトセグメントではウレタ  ンのカルボニル炭素の化学シフトがわずかであるが  異なること.

④TDIから合成されたウレタン・ウレア・アロハネ  ートにおいて,四極1生平は芳香環炭素の化学シフト  にわずかであるが差異をもたらすこと.

 これらの結果より,ポリウレタン合成で生成される ウレタン結合・尿素結合・ビウレット結合・アロハネ ート結合の異種結合の識別が13C−NMRスペクトルの 測定により化学シフトの差から可能であるとともに,

ハードセグメント部とソフトセグメント部のウレタン 基のシフトの差からその識別が可能となるが,さらに 詳細に調べることが今後の課題である.

支部中国四国支部合同大会(北九州)にて発表した.

 13C−NMRスペクトルの測定には本学薬学部合同分析 室の機器を用いたことを記すとともに,測定に協力頂 いた専任技官の稲田勝博氏に感謝する.

         引用文献

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参照

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