11 犯罪被害者とその家族の人権について考えよう
Aさんのお兄さんは、昨日の夕方、通りがかりの人に暴行されて意識不明となり、病院 で手当を受けています。Aさんなど家族の人たちは、交代でお兄さんに付き添うことにし、
Aさんは先ほど自宅に戻ってきました。
先ほど朝のニュースで事件のことが報道され、事件の概要とお兄さんの名前、自宅の住 所が町名まで伝えられていました。すると…
ワーク1
ニュースで報道されたためか、報道陣や近所の人がAさんの自宅の前に集まってきまし た。その人たちは、何を話していると思いますか。3つあげてみましょう。
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ワーク2
Aさんの自宅の電話やインターホンが何度も鳴りました。どのような人が、どのような 用事で電話をしてきたり、訪ねてきたと思いますか。3つあげてみましょう。
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ワーク3
(1)2人一組のペアグループを作り、「話す人」と「聞く人」に分かれましょう。
(2) 「話す人」は、自分が考えたワーク1・ワーク2の内容を「聞く人」に伝えましょう。
「聞く人」は、Aさんの家族の立場に立って「話す人」の言葉を聞きましょう。
(3)「聞く人」は、「話す人」の言葉を聞いて感じたことを下に書きましょう。
(4)「話す人」と「聞く人」を交代し、(1)~(3)を行いましょう。
ワーク4
ワーク1~3をもとに、事件の被害者の家族が本当にしてほしいと思う「周囲の人々の 支えや協力」とは、どのようなことだと思うか、自分で考えてみましょう。
ワーク5
ワーク4で考えたことをグループ内でお互いに発表した上で、事件の被害者の家族が本当に してほしいと思う「周囲の人々の支えや協力」について話し合い、3つにまとめてみましょう。
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解説
11 犯罪被害者とその家族の人権について考えよう
1 ねらい
犯罪被害者やその家族は、犯罪そのものによる被害だけでなく、第三者から「二次被害」
を受けることも多い。シミュレーションを通じて犯罪被害者の家族の立場や気持ちを想像 させ、将来二次被害を作り出さないようにすることをねらいとしている。
2 進め方
ワーク1・2については平常の机配置で行い、生徒は各自自分の考えを記入する。ワー ク3・4はペアワーク、ワーク5はグループワークとし、考えを共有させる。
(1)ワーク1について
自宅前に集まってきた人々が何を話しているかを想像させ、3つ以上記入させる。
この時点では、相談せずに自分の力で考えるように指導する。
(2)ワーク2について
自宅の電話やインターホンで誰がどのような言葉を発するのかを想像させ、3つ以 上記入させる。(1)と同様に、相談せずに自分の力で考えるように指導する。
(3)ワーク3について
最小グループである2名で「犯罪被害者の家族」の側に立って考えることで、(2)
で第三者が特に意図せずに発した言葉や行為、またその繰り返しが、当事者にとって 大きな痛手となりうることを理解させる。
ワーク3の取組みの際には、生徒の中に犯罪被害者やその家族としての体験を持つ 生徒がいる可能性もあることに十分配慮し、そういったことを配慮しない不適切な発 言が生徒に見られた際にはその時間内に正すよう留意する。また、教員側からの言葉 として、「犯罪被害者やその家族は、犯罪そのものの心の痛手のみならず、時として、
周囲の人々やマスメディア、またはそれらを通じて間接的に事件を知った人々からの 好奇の目や心無い言葉に苦しめられ、事件が忘れ去られたあとも、後遺症として苦し むことにもなりかねないのだ」ということ伝えたい。
(4)ワーク4
ワーク3で、家族の気持ちになって聞いた感想や、教員から説明されたことをもとに、
犯罪被害者の家族にとって必要なこととは何かを、引き続きペアで考えさせる。
(5)ワーク5
ペアグループ2つを合体させ、4人程度のグループを作る。ワーク4で書いたこと をもとに、グループで話し合いをさせ、重要だと思われることを3つにまとめさせる。
その際にはいろいろな考え方があることを尊重し、他の人の意見や感想を一方的に否 定しないよう配慮させるとともに、犯罪被害者の家族にとって必要かどうかという観 点から精査する方向で話し合いを進めるように助言する。最後にまとめとして、各グ ループから全体に対して発表させる。
(6)まとめ
犯罪被害者やその家族というと、生徒は遠い存在だと思ってしまうかもしれないが、
実際には予期せずにその立場に置かれるものであることを説明することで、犯罪被害 者等の置かれている立場を生徒に理解させたい。また、二次被害に関しては、生徒た ちが場合によっては加害者になる可能性もあることをふまえ、どういうことをされた ら嫌な気持ちになるか、どんな支援をしたらよいかを考えさせたい。特に場面Aで示 したような近所の人が自宅前で話している中に、うわさ話のようなものが出てくる可 能性がある。その際には、うわさ話をされて嫌な思いをするケースは日常の中にもあ るので、身近なことから気をつけることが大切であり、自分が加害者になっているこ とはないかということについても考えさせたい。
3 解説
犯罪の被害者は、命を奪われる、けがをする、物を盗まれるなどの生命、身体、財産上 の被害だけではなく、さまざまな二次被害を受けることが多い。その被害は家族や知人に も及ぶことから、犯罪被害者等と「等」をつけていることも生徒に理解させたい。
犯罪被害者等は、犯罪そのもので大きな被害を受けているにも関わらず、場合によって は近隣の人々、マスメディアやそれを通じて犯罪被害を知った者から好奇の目で見られた り、根拠のない誹謗や中傷を受け、二次的に大きな精神的打撃を受けることがある。
二次被害には、次のようなものがあげられる。
•事件に遭ったことによる精神的ショックや身体の不調 •医療費の負担や失職、転職による経済的困窮
•捜査や裁判の過程における精神的、時間的負担
•周囲の人々の無責任なうわさ話やマスコミの取材、報道によるストレス、不快感 これらの中でも精神的な被害は深刻で、犯罪による著しいストレス障害を抱え、精神的、
経済的支援を求めている犯罪被害者等が多数認められる。
平成12(2000)年には、犯罪被害者や遺族は優先的に裁判を傍聴することや、裁判中 でも捜査記録などの公判記録をコピーすることができるようになった。また平成16
(2004)年には※犯罪被害者等基本法が制定され、犯罪被害者等は個人の尊厳が重んぜら
犯罪被害者等によって作られている団体の中には、犯罪被害者等へのカウンセリングの 実施など、さらなる支援を国などに求めている団体もある。
●犯罪被害者等の主な相談窓口
*かながわ犯罪被害者サポートステーション(かながわ県民センター14階)
(045)311-4727 *犯罪被害者等早期援助団体 NPO法人 神奈川被害者支援センター
(ハートライン神奈川) (045)328-3725
※ 「犯罪被害者等基本法」(平成16年(2004)年12月8日制定)
この法律は、犯罪被害者等(犯罪やこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす行為の被害者及びそ の家族又は遺族)のための施策を総合的かつ計画的に推進することによって、犯罪被害者等の権利 利益の保護を図ることを目的としており、その基本理念として、犯罪被害者等は、個人の尊厳が重 んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有することなどが定められています。(神 奈川県・神奈川県教育委員会「HUMAN RIGHTS」より)
<参考資料>
神奈川県・神奈川県教育委員会「HUMAN RIGHTS-人権を考える-」
平成23年3月発行
内閣府・犯罪被害者等施策「犯罪被害者等基本法」
ホームページhttp://www8.cao.go.jp/hanzai/kihon/hou.html