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自然概念の獲得と発達に関する最近の研究

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自然概念の獲得と発達に関する最近の研究

著者 杉村 健

雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学

巻 41

号 1

ページ 121‑142

発行年 1992‑11‑25

その他のタイトル Recent Studies on Acquisition and Development of Natural Concepts

URL http://hdl.handle.net/10105/1752

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自然概念の獲得と発達に関する最近の研究

杉 村   健 (奈良教育大学心理学教室)

(平成4年4月30日受付)

概念とは、何らかの特徴を共有する事物や事象のまとまり(カテゴリー)について、人々が 持っている知識ないし心的表象のことである。人々は、何らかの概念を用いて外界の事物や事象 を知覚したり、記憶したり、思考したりしている。話したり書いたりするときに用いる言語も、

概念と密接に結びついている。例えば、 "動物"というのは言語でもあり、イヌやネコの上位概 念でもある。このように、概念は日常生活における認知および言語活動の基礎をなしている。

多くの概念はカテゴリー化によって獲得される。カテゴリー化とは、 2つ以上の異なる事物や 事象を等価であると認識し、その等価性に基づいてカテゴリーを形成する働きである。また、特 定の事物や事象がある概念に属するかどうかを決める働きも、カテゴリー化と呼ばれている。知 識ないし心的表象としての概念を直接とらえることが困難な場合には、カテゴリ‑化の過程や形 成されたカテゴリ‑の内容などに基づいて、概念の獲得過程、獲得された概念の内容、概念の作 用などが推論されるO概念には外延と内包が区別できるO外延とは、ある概念に属する事物や事 象の範囲のことであり、内包とは、ある概念に属する事物や事象が共通に持っている特徴のこと である。概念に関する知識は外延的知識と内包的知識からなっている。確実な内包的知識の獲得

は大人でも難しい場合があり、子どもの概念研究ではもっぱら外延的知識が扱われている。

伝統的な概念研究では、主として色や形、図形などからなる人工概念に焦点があてられていた が(例えば、 Bourne, 1966)、 Roschら(Rosch, 1978; Rosch & Mervis, 1975; Roschら,

1976)やAnglin (1977)の研究以来、日常的、生物学的な自然概念に関心が向けられている。

そのような趨勢を反映して、 "概念とカテゴリー化(1988)および"生物学的概念の発達"

(1989)といった特集がHuman Developmemt誌に取り上げられている.人工概念はカテゴリー 内の事物が共有する特徴によって明確に定義できるが、自然概念では2つのカテゴリーが同じ特 徴を共有していることがあり、その場合には、特定の特徴によって概念を定義づけることができ ない。

周知のようにRosch (1978)は、自然概念の構造について水平次元と垂直次元を仮定した。

水平次元とは、同じように"動物"という概念に属しているものでも、もっとも動物らしいのは ライオンやトラであり、もっとも動物らしくないのはヘビやカエルであるというように、ある概 念に属する事例が、その典型性("動物らしさつ によって配列される族類似構造(Rosch &

Mervis, 1975)のことである.垂直次元とは、秋田犬、イヌ、晴乳類、動物、生き物というよう に、より下位の水準からより上位の水準へと配列されるカテゴリーの階層構造のことである。秋 田犬に相当するのが下位水準、イヌに相当するのが基礎水準、晴乳類、動物、生き物に相当する のが上位水準と呼ばれている(Roschら, 1976)。 Rosch (1978)によると、これら3つの水準 のうちで基礎水準が最も基礎的、普遍的であり、カテゴリー内の事物が類似していてカテゴリー

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のイメ‑ジが生じやすく、基礎カテゴリー名が日常会話でしばしば用いられている Roschら の研究については、土居(1979, 1982)および伊藤(1980)が展望を行っている。

本論文の目的は、自然概念の獲得と発達に関する最近の研究のうち、筆者が関心を持っている 分野の研究について展望することである。 (1)概念はカテゴリ一化によって獲得されるという 観点から、カテゴリー化における等価性の基礎に関する研究。 (2)概念と言語が密接に結びつ いているという観点から、事物を指示する語の獲得過程に関する研究。 (3)獲得された語がど のような心的表象を持っているかという観点から、概念の外延と内包に関する研究。 (4)概念 が階層構造をなしているという観点から、異なる水準のカテゴリー獲得に関する研究(5)同 様な観点から、下位水準と基礎水準、基礎水準と上位水準などの、階層間の関係の理解に関する 研究(6)概念の獲得と発達はカテゴリー情報の影響を受けるという観点から、周囲から与え られるカテゴリー情報に関する研究。 (7)同様な観点から、実験者によって与えられた種々の カテゴリー情報の解釈と利用に関する研究 (8)概念が思考や推論に用いられるという観点か

ら、カテゴリーの成員性や特性に基づく推論に関する研究。

カテゴリ‑化における等価性の基礎

どのような基準に基づいて、子どもが事物の等価性を認識し、カテゴリー化するかという問題 については、古くから関心が持たれている。周知のように、 Olver and Hornsby (1966)は42 枚の彩色画を提示し、 "何らかの点で似ているもの(thatarealikeinsome way)をグループ にさせ、その理由を説明させた。このようなグルーピングとその理由付けを10回繰り返し、理 由付けに基づいて等価性の基礎を同定した。その結果、 "赤い"というような知覚的属性に基づ く等価性は6歳から11歳にかけて減少するが、 "食物"というような名義的属性に基づく等価性 は増加し、 "切る"というような機能的属性に基づく等価性は6歳から8歳にかけて増加した。

Jahandarie (1986)は、この研究と同じ方法でサルバドールの子どもについて調べ、知覚的属 性に基づく等価性の減少は年齢(成熟)によるが、機能的属性と名義的属性に基づく等価性の増 加はスク‑リングによることを示唆した。

Denney (1975)は、 42枚の絵から任意の選択をさせるのは、特に年少児の場合に困難である と考え、幼児から4年生に、 "何らかの点で似ているもの"や"仲間のもの(thatgotogether in some way)を2枚ずつ選択させてその理由付けを分析し、 Olver& Hornsby (1966)とほ ぼ同様な結果を得た。しかし、 3歳から9歳までの子どもを用いたDenney& Moulton (1976) の結果は、発達的変化が必ずしも直線的でないことを示した。 Bernet (1989)は、 30枚の線画 の対選択で小学生の理由付けを分析した。知覚的選択はどの学年でも10%以下であり、分類学 (名義)的および機能的選択は2年生から4年生にかけて増加した。どの学年でも最も多かった のは"机の上に皿がある"というような主題的選択であり、これは色がない線画を用いたことに よると考えられた。以上の諸研究から、カテゴリー化の基礎は年齢やスクーリングだけでなく、

課題や教示などに依存することが示唆される。

上述の課題は、カテゴリー化の多様な基礎を知ることができるという長所があるが、特に年少 児の場合には、多くの絵や事物からの選択が極めて困難であり、しかも、分類学的基礎では上位 水準だけを扱っている(Markman & Callanan, 1984)。また、選択理由だけに基づいてカテゴ

リー化の基礎を同定しているので、言語能力の影響を受けやすい。このような理由から、 3つの

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組課題を用いた研究が行われている。この種の課題では、 1つの標本事例と2つの選択事例が用 意される。 1つの選択事例は標本事例とある属性または関係(例:知覚的)によってカテゴリー 化でき、もう1つの選択事例は別の属性または関係(例:名義的)によってカテゴリー化できる。

Sugimura (1977)は4‑6歳児で線画を用い、リンゴに対してキャベツかバナナ(類似課 題)あるいはタンバリンかバナナ(非類似課題)を選択させる3つ組課題で、カテゴリーの類似 性と教示の効果を検討した。類似課題で"似ているもの"を選択させた場合は殆どの者(85%) が知覚的選択(キャベツ)を行い、 1司じ仲間のもの"を選択させた場合には知覚的選択が52%

に減少した。非類似課題で"似ているもの"を選択させた場合は知覚的選択(タンバリン)が 55%、名義的選択が18%であり、 "同じ仲間のもの"を選択させた場合には名義的選択が50%

に増加した。このように、幼児におけるカテゴリー化の基礎は教示と課題によって著しく異なっ ている。 Tversky (1985)は、知覚的属性として色と形、分類学的属性として上位水準名を用 いた3つ組課題で、事例の言語提示と絵画提示ではあまり違いがなく、ともに3歳から8歳にか けて、分類学的選択とその正しい理由付けが増加することを示した。 Fensonら(1988)は、 4 つの選択事例の中から標本事例と一致するものを2歳児に選択させたとき、分類学的選択よりも 知覚的選択の方が多いことを示した。

別の研究では、標本事例と選択事例の分頬学的関係と主題的(相補的)関係に関心が向けられ ている。主題的関係とは、複数の事物の時間的、空間的、相互作用的関係であり、周囲の事物の 多くはこの関係で配置されている。 Smiley&Brown (1979)は彩色画を用い、標本事例(例:

ウシ)に対して分類学的事例(例:ブタ)か主題的事例(例:ミルク)を選択させた。 4歳児、

1年生および老人(66‑85歳)の殆どが主題的事例を、 5年生と大学生の殆どが分類学的事例 を選択し、カテゴリー化の基礎が年齢にともなって単純に変化しなかった。また、選択しなかっ た事例でも、標本事例と同じ仲間であることを教えると、どの年齢でも殆どの者が正しい理由付

けをすることができた。このことから、発達的に変化するのは概念的能力よりも概念的偏好であ ることを示唆した Greenfield & Scott (1986)は彩色画を用い、 3歳から14歳までのどの年 齢でも相補的選択がチャンスよりも多く、 5、 6歳児が最高で逆U字型になることを示した。こ れは先の研究と異なる結果であり、年齢だけでなく、課題や教示などの影響を検討する必要があ ることを指摘している。課題に関しては、 Fensonら(1989)が標本事例と選択事例の知覚的類 似性を操作しており、杉村(1992a)は、標本事例と選択事例の関係の強さ、および標本事例と 分類学的選択事例に共通する概念の有無によって、 3種の課題を構成している。

最近の研究では、熟知した場所や活動に基づく文脈的カテゴリ一化(Mandlerら, 1987)、日 常の出来事における機能的役割の同一性に基づくカテゴリー化(Nelson, 1988a)、事例の部分 に基づくカテゴリー化(Tversky, 1989)、事物が移動する空間に基づくカテゴリー化(杉村・

福田, 1991)の存在が指摘されている。

事物を指示する語の獲得過程

周囲にある事物の名前が理解でき、産出できるということは、言語獲得の初期における重要な 課題であるだけでなく、概念の獲得と発達の基礎をなしている。乳幼児が事物名を獲得できるの は、親が事物を指差してその名前を言う指示‑命名の反復によるところが大きいが、その際、子 供が事物と命名語の関係に注目できるかどうかが問題になる Oviatt (1980)は、 11、 12か月

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児に未知の事物名を繰り返し教え、そのあとで、その名前と新奇名を事物に与えて凝視時間を比 較した。その結果、事物名を与えた場合の方が凝視時間が長く、発語が不十分な乳児でも指示‑

命名により事物と事物名を結合する能力があることを示唆した。 Baldwin & Markman (1989) は10‑20か月児を用い、 2つの玩具の一方(標的)に対して指差すだけよりも、玩具の名前を 言いながら指差す指示一命名の方が、後のテストにおいて槙的玩具への凝視時間が長いことを示 した。この結果は、子どもにとって新奇な事物名であっても、その命名によって事物への注意が 高められて語一事物関係が確立されることを示している。

未知の事物の名前を教えられたとき、その意味について、子どもは色、形、大きさ、素材など、

さまざまな仮説を持つかもしれない。その際、子どもがすでに知っている語と新奇語を対比する ことによって、新奇語の意味領域が限定され、新しい事物名の獲得が促される。これは言語対比 と呼ばれている。 Heibeck & Markman (1987)は、名前を知らない色(形、素材)と名前を 知っている色(形、素材)を2‑4歳児に提示して、 "Ⅹ (既知のもの)ではなく、 Y (未知の もの)をください。 Yですよ。"と教示してから、 3種のテストを行って新奇語の獲得を査定し た。 ①産出課題:各事物について"それは何ですか"と尋ねる。 ②領域同定(hyponym)課 題:既知のものを提示して"それはY (未知名)ではありません。何故なら○○だから"と教 示し、 ○○の名前を子どもに言わせる。 ③理解課題: ①と同じものを提示し、各事物について

"○○ (事物名)をください。"と指示する。その結果、理解得点には年齢差がなく、高い方から 形、色、素材の順であった。領域同定得点も同じであったが、 2歳児でもかなり良い成績を示し、

言語対比により意味領域が狭められることを示唆した。産出得点は形が最も高かったが、他の2 つの得点と比べて著しく低く、色と素材の名前は殆どの者が言えなかった。

Au & Markman (1987)は3、 4歳児を用い、色と素材で新奇語と既知語の対比条件が新奇語 だけを教える条件および新奇語も教えない条件よりも、特に素材の場合に効果があることを示し、

子どもは新奇語の意味について素材に関する仮説を持っていることを示唆した。この研究では、

標本と同じものを選択させる3つ組課題、領域同定課題、および10の事物の中から新奇語の事 物を指摘させる事物同定課題が用いられた。 Au (1990)は3、 4歳児を用いて、分類課題、領域 同定課題および事物同定課題で対比効果を査定し、新奇語だけを教えた場合には素材よりも形の 得点が高く、素材では言語対比の効果があったが、形では効果がないことを示した。語の知識と 対比効果との間には高い負の相関があり、これは、新奇語の知識がある場合には、熟知語との対 比によって語意味の獲得が干渉されることを示唆する。このように、言語対比による語学習は、

子供が持っている意味領域に関する仮説と新奇語に関する既有知識に依存している。

これまでの研究では、同じ意味領域内の新奇語と既知語が対比されたが、実際に子供の命名語 の誤りを修正する場合には、 "それはⅩ (子供の命名語)ではなく、 Y (新奇語)です。"という ように、子ども自身が命名した語と新奇語を対比させる修正的対比が用いられる。 Au&

Laframboise (1990)は、色名の獲得において2つの対比効果を比較し、対比が1回の場合は5 歳児だけで、 2回の場合は4歳児で、 3回の場合は3歳児でも、修正的対比の方が意味的対比よ

りも有効であることを示した。この結果は、言語対比における反復の重要性を示唆する。

事物名の獲得の初期において、子どもは、 1つの事物には1つの名前しかないと考える傾向が ある。これは相互排他性の仮定と呼ばれており(Markman, 1987; Merriman & Bowman, 1989)、事物名の獲得に役立っといわれている。 Markman & Wachtel (1988)は3歳児を用い、

既知の事物と未知の事物を対提示して、 "1つください"と言う場合と、 "Ⅹ (新奇名)をくださ

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い"と言う場合を比較した。前者では既知物と未知物がほぼ同程度に選ばれたが、後者では未知 物が有意に多く選択された。この結果は、既知物については既に1つの名前を知っているので、

相互排他性仮定により新奇名は当てはまらず、従って、新奇名に対して未知物をより多く選択す ると解釈された。針生(1991)は3‑5歳児を用い、相互排他性仮定に及ぼす文脈の効果を検討 した。 2つの事物から1つ選んで人形に渡すという場面で、新奇語の有無と、既知物を提示する ときの文脈(‑ブラシの場合は、人形が"歯磨きをする"という教示を付加する)の有無により、

4条件を設定した。先の研究と同様に、新奇語と文脈がない条件では2つの事物が同程度に選ば れ、新奇語を与え文脈がない条件では未知物が多く選択され、相互排他性が適用された。しかし、

文脈を与えた場合、新奇語に対して既知物が多く選択されて相互排他性仮定が通用されず、特に 5歳児では殆どの者が既知物を選択した。この結果から、事物名獲得における相互排他性仮定の 適用は、文脈と年齢に依存していることが示唆される。

Au & Glusman (1990)は、次の方法でこの仮定を査定した。大人でも名前付けが難しいキ ツネザルに似た2つの玩具とオットセイに似た2つの玩具を用いた。 ①実験者1が1つの事例 (例:キツネザル)を提示して、 "これはⅩ (新奇語)です。 Ⅹはどれ?"などにより新奇語を7 回教えてから、 4事例を提示して"Ⅹはどれ?もう1つのⅩは?''と質問し、 Ⅹについて確認 する。 ②実験者2が4事例を提示して、 "Y (新奇語)はどれ?もう1つのYはどれ?"と質閉 する。 ③先にⅩと命名したものを指差して、実験者2が"これはYですか?''と質問する。段 階①で2回ともⅩ (キツネザル)を選択した者が、段階②で2回ともⅩ以外(オットセイ)を 選択した場合、および、段階③で2回とも"いいえ"と答えた場合に、相互排他性仮定を適用し たと判定する。段階②では幼児の94%と大人の全員が、段階③では72%と62%が相互排他性 を通用していると判定された。このように、基礎水準内では大人でも相互排他性仮定を適用する が、幼児を用いた実験では、 1つの事物が複数のラベルを持っという階層的知識がある場合は、

基礎と上位といった異なる水準間で、また、言語が異なれば事物名が異なるという言語的知識が ある場合には、同じ水準内でも相互排他仮定を適用しないことが示された。このように、幼児が 相互排他性仮定を適用するか否かについては、関係する種々な要因について検討するとともに、

カテゴリー階層の獲得との関係を明らかにする必要がある(湯沢, 1991)。

概念の外延と内包

概念の外延的知識は、幼児と大人では異なることが知られている。大人の概念よりも狭く限定 された事物だけに概念名が適用される場合を過小外延といい、逆に、大人の概念よりも広い範囲 の事物に適用される場合を過大外延という。これらはともに、事物に対する命名の誤りである。

この現象は母親の観察日記でとらえられるし、また"これは何ですか"と問う所産テストと、

"これはⅩ (事物名)ですか"と問う理解テストで実験的にとらえることができる。過小および 過大外延は、子どもの年齢、査定の方法、概念の種類、事例の典型性や事例間の類似性などに依 存することが指摘されている(Anglin, 1977)。

Key & Anglin (1982)は2歳児を用い、 1つの実験計画の中で産出と理解における過大外延 と過小外延を検討した。ローソク、カードなど5つの事物を種々に変形した彩色スライドを作り、

それぞれについて特定の標的語の指示物か非指示物かを大人に判断させた。指示物の場合は典型 性を7段階で評定させ、非指示物の場合はその熟知度と、標的指示物との知覚的類似性を7段階

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で評定させた。次に、幼児が理解はできるが産出できない標的語を持っ最も典型的な指示物を選 択し、それに対する標的語の産出と理解が十分できるように訓練した。その後で外延テストを 行った。こ?テストでは、訓練した指示物に加えて典型指示物、非典型指示物、それに熟知・非 熟知および訓練指示物との知覚的類似・非類似を考慮した非指示物が提示された。指示物に対し て理解テストで"いいえ"と答え、所産テストで標的語が言えない場合は過小外延、非指示物に 対して"はい"と答え、標的語を言った場合は過大外延と判定された。その結果、過大外延は産 出よりも理解の方が、過小外延は理解よりも産出の方が多かった。産出、理解ともに過小外延は 典型指示物よりも非典型指示物の方が、過大外延は非類似非指示物よりも類似非指示物の方が多 かった。理解の過大外延は熟知非指示物よりもは非熟知非指示物の方が多かった。過大外延およ

び過小外延の発達的変化を知るためには、異なる年齢の幼児で検討する必要がある。

年少児の内包的知識を査定することは困難であるといわれているが、 Scott & Green field (1986)は、 3‑5歳児(2歳児は実施不能)の内包的知識に接近する方法を考案した。 4種類 のイヌの絵を提示し、 "これはみんな○○です" "これは○○の仲間です"と教示し、 ○○が犬で あると言えない場合には教えた。次に、事例間の類似性について尋ね、その回答にかかわらず 色々な類似点を教えた。続いて、事例問の差異性について尋ね、色々な相違点を教えた。このよ うにして課題を理解させてから、果物、乗物、動物など14の上位カテゴリーについて各4事例 を提示し、 "○○とは何ですか"と尋ね、そのあとで類似点と相違点を言わせた。カテゴリーに よって著しく異なるが、全体では差異反応よりも類似反応の方が多く、 9つのカテゴリーで少な くとも半数の者が同じ機能的反応を示した。このことは、幼児の内包的知識は主として事物の機 能的特徴に関するものであることを示唆する。

Caplan&Barr (1989)は、内包と外延の関係の発達的変化を検討した。 6歳児、 2年生、 5 年生、大学生を被験者とし、テーブル、道具、植物、烏の特徴を3つずつ挙げさせることによっ て内包的知識を査定し、次に、各カテゴリー12事例についてカテゴリー成員かどうかを判断さ せることによって外延的知識を査定した。そのあとで、 12事例のうち6事例を同時提示し、被 験者が生成した3つの特徴と大学生が最も多く生成した3つの特徴について、どの事例がそれぞ れの特徴を持っているかを判断させた。これにより内包的知識と外延的知識の関係を調べた。内 包では一般的特徴の指摘が年齢とともに増加し、子供に見られる過小内包は特殊な特徴の使用に よることが示唆された。外延は子どもよりも大人の方が大きいが、子どもは非典型事例を含める 傾向があった。事例に対する特徴所有判断には年齢差がなく、幼児でも内包と外延がかなり一致

していると解釈された。以上の結果と従来の理論との不一致が指摘されているが、内包および内 包と外延の関係の査定方法について、さらに工夫する必要がある。

異なる階層水準のカテゴリー獲得

先に述べたように、概念は階層構造をなしており、下位、基礎、上位といった少なくとも3つ の概念水準が区別されている。 Anglin (1977)は、事物に命名する場合に基礎水準名が最も多

く用いられることを指摘し、 Roschら(1976)は、基礎水準の事物ないしカテゴリーの特徴を 明確にした。その後、多くの研究が行われているが(伊藤, 1980;土居, 1982)、以下では分類 課題や3つ組を含めたマッチング課題を用いた研究を申し、に検討する.

この種の研究を最初に行ったRoschら(1976)は、幼児(5歳7か月)、 1年生、 3年生、 5

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年生および大人を用い、仲間教示による自由分類の成績とその理由付けを調べた。上位水準課題 は衣類、家具、乗物、人の顔、それぞれ4事例からなり、基礎水準課執ま靴、椅子、車、男の顔、

それぞれ4種類の事例からなっている。上位課題では幼児と1年生では半分の者しか正しく分類 できなかったが、 3年生以上では全員が正しく分類でき、基礎課題では幼児も1年生もほぼ全員 が正しく分類できた。上位課題では幼児と1年生ではカテゴリー名("衣類" "家具"など)を言

うことができず、基礎課題では幼児、 1年生、 3年生でもはぼ全員がカテゴリー名("靴" q椅 千"など)を言えた。基礎課題では幼児も大人と同様に、分類も理由付けもできたことから、基 礎カテゴリーの獲得が上位カテゴリーの獲得よりも容易であると主張した。

Horton& Markman (1980)は、いくつかの人工動物(線画)が2つのカテゴリーのいずれ かに属することを教えた後で、 2つのカテゴリーに分類させて、その理由を言わせた。その結果、

4歳児よりも5、 6歳児の成績の方が、上位課題よりも基礎課題の成績の方が良かった。教授と 分類において、事例の提示に加えて分類の基準となる言語情報を与えた場合には、上位課題の分 類が著しく促進され、この促進効果は年齢が増すにつれて大きくなった。しかし、基礎課題では 言語情報の促進効果は全くなかったO この結果から、基礎カテゴリーは事例間の知覚的類似性に よって獲得されるが、上位カテゴリーの獲得には、知覚的非類似性を克服するような言語情報が 必要であることが示唆された。言語情報の促進効果と関連して、 Benelli (1988)は上位カテゴ

リーの起源が言語ないし言語能力であることを指摘している。

これに対して、事例問の知覚的類似性の重要性を指摘した研究がある。 Mervis & Crisafi (1982)は、無意味図形の3つ組課題を仲間教示によって2‑5歳児に与え、基礎課題の成積が 最も良く、次に上位課題、下位課題の順であることを見出した。次の実験では、課題に用いた事 例を対にして各対の知覚的類似性を大学生に評定させたところ、基礎水準事例が最も類似してお

り、次に上位水準、下位水準の順であった。この結果から、カテゴリー獲得と関係があるのは、

カテゴリー名を知っているかどうかよりも、事例問の知覚的類似性であることを示唆した。これ と関連して、 Fensonら(1988)は2歳児を用い、標本事例と選択事例が知覚的に類似している 場合には、上位水準と下位水準のマッチング課題がほぼ同じ成績であり、類似性が低い場合には 下位水準でもマッチングができないこと、 Fensonら(1989)は3歳児を用い、知覚的類似性が 低くても上位水準のマッチングが可能なことを示した。また、 Brownら(1988)は基礎水準の カテゴリー化において大学生でも知覚的類似性の影響を受けることを示した。

Mervis & Crisafi (1982)の研究では、無意味図形で3水準の課題を作成したが、 Saxby &

Anglin (1983)は、果物‑リンjLマッキントッシュリンゴ、乗物‑クルマースポーツカーと いったように、自然概念で3水準の分類課題を作成した。 3、 4歳児では下位課題の成績が最も 良くて、基礎課題、上位課題の順であったが、 1年生と4年生では3っの課題がほぼ同じ成績で あった。 3、 4歳児の結果は先の無意味図形の場合と異なり、基礎水準の優位性を支持しない。

先に述べたRoschら(1976)の基礎水準課題は、衣類、家具、乗物、人の顔といった上位水準 でもカテゴリー化が可能であり、 2種のカテゴリー水準の査定が混同されている。この点は Saxby & Anglin (1983)の課題も同様である。これに対してBrownら(1988)は、上位水準 では分類できず基礎水準のみで分類できる特異課題(ネコ1、ネコ2、イヌ)を考案し、 Mandler

& Bauer (1988)は、同じ基礎カテゴリーでも異なる上位カテゴリーを持っ課題(イヌとクル マ)の方が、同じ上位カテゴリ‑を持っ課題(イヌとウマ)よりも、事物操作課題における16

‑20か月児のカテゴリー化が容易であることを示した。

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杉村・野本(1990)は4歳児と6歳児を用い、基礎水準のみ(例:リンゴ1とリンゴ2/ブド ウ1とブドウ2)、中位水準のみ(例:リンゴ.とブドウ1/キュウリ.と‑クサイl)および上位水準 のみ(例:スズメ1とキンギョ1/リンゴ1とキュウリ.)で分類可能な課題を与え、そのあとで分 類の理由を求めた。続いて、 Mervis & Crisafi (1982)と同じ方法で、各水準の課題に用いた事 例間の知覚的類似性を同じ被験者に評定させた。分類課題の成績は、 4歳児では基礎水準>上位 水準>中位水準、 6歳児では基礎水準>中位水準≒上位水準であり、基礎水準が最も良かった。

分類得点と言語得点(カテゴリ‑名を言えた数)の偏相関は、すべて有意で中程度の値を示した が、分類得点と類似得点では、 4歳児の上位水準と中位水準、 6歳児の中位水準だけで有意だが 低い値を示し、その他では殆ど相関がなかった。平均値でも分類得点と類似得点は必ずしも対応

しなかった。これらの結果から、自然概念の獲得は事例間の知覚的類似性だけでなく、言語要因 としてのカテゴリー名の利用に依存していることが示唆された。

階層間の関係の理解

周知のように、 Inhelder & Piaget (1964)が類包摂課題を考案し、その後、包摂関係の理解 という観点から多くの研究が行われてきた。この種の課題では、例えば、 2匹のイヌと4匹のウ サギを提示して、 "ウサギと動物ではどちらが多いか"と尋ねる。 "動物"と答えた場合には、基 礎水準のウサギと上位水準の動物を同時に比較して多少判断を行っているので、 2つの概念水準

の階層関係を理解していると判定される。 Winer (1980)は、類包摂の理解と年齢および他の Piaget課題の成績との関係、類包摂の理解に及ぼす知覚および言語変数の効果、それに訓練効 果等の観点から従来の研究を展望している。その後、事例の典型性の効果(Lane & Hodkin,

1985; Suga, 1984)、包摂関係と意味記憶との関係(Whitney & Kunen, 1983)、関係理解と階 層的情報の外的表象との関係(Greene, 1989)を検討した研究が行われている。類包摂課題で査 定される階層関係の理解は、イヌ+ウサギ‑動物という数の加法と、ウサギ‑動物‑イヌという 減法の操作を行う能力に依存しているといわれている。

別の研究では、質問文課題を用いて階層関係の理解を査定しようとする試みがなされている。

類包摂課題では2つの階層間の関係に焦点があてられているが、質問文課題の場合には、その作 り方によって2つ以上の階層を扱うことができる。 Smith (1979)は4‑7歳児に、 "すべての 動物はネコですが' "すべてのイヌは動物ですか" "ある(some)果物はリンゴですか" "あるバ ナナは果物ですが'といった質問文を与えて、 "はい"か"いいえ"で答えさせた。最初の2つ の質問文の正答率はどの年齢でも80%以上であり、後の2つの質問文では7歳児は80%以上で 4、 5歳児は60%前後であった。この結果から、 ̀̀ある"よりも"すべで の方が、階層関係の 理解を容易にすることが示唆される。

国立国語研究所(1982)は、 "キンギョは動物ですか"といった基礎一上位の関係、 "キンギョ は魚ですか"といった基礎一中位関係を問う質問文を4歳児〜4年生に与えた。正答率は年齢に よって若干異なるが、全体的に、基礎一中位関係が基礎‑上位関係よりも著しく高かった。理由 付けの内容を見ると、多くの子どもはトンボは虫、キンギョは魚ととらえており、少なくとも動 物に関しては、基礎‑上位関係が殆ど理解されていなかった。同じように基礎‑中位関係でも、

用いる基礎事例によって正答率がかなり異なっていた。山口(1988)は、基礎一上位関係で真の 文("キャベツは食物ですか")と偽の文("食物はリンゴですか")、中位一上位関係で真の文

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("果物は食物ですかつ と偽の文("食物は果物ですかっ を作り、小学2‑6年生に実施した。

どの学年も、基礎‑上位関係の方が中位一上位関係の理解よりも容易であった。真の文の理解に は学年差が殆どなかったが、偽の文の理解は低学年で著しく困難であり、学年が進むにつれて容 易になった。このように、階層関係の理解は学年(年齢)だけでなく、関係のタイプ、用いる基 礎事例、文の真偽などによって異なっている。

階層関係の理解に影響する要因を組織的に分析するために、杉村・多喜(1990)は、食べ物 (果物、野菜/バナナ、キャベツ)と生き物(鳥、魚/‑ト、コイ)の上位一中位関係、中位一 基礎関係、上位一基礎関係について、それぞれ"ⅩはYの仲間ですが の形式で、包摂関係が 真の文(例: "鳥は生き物の仲間ですかつ と偽の文(例: "生き物は烏の仲間ですかっ を作り、

幼稚園年長児、小学2、 4、 6年生に実施した。関係理解得点は幼児と2年生は殆ど同じで、 4年 生から6年生にかけて増加した。真の文では幼児でもかなり高く4年生まで全く変化しなかった が、偽の文では幼児と2年生が低く4年生から6年生にかけて増加した。これは山口(1988)の 結果とほぼ同じであった。中位‑基礎関係のみで真の文が偽の文よりも有意に高かった。 3つの 関係理解得点の間の相関は、幼児から順に.23、 .49、 .46、 .73であり、 6年生では階層間の関 係理解がかなり安定することが示唆された。 3つの関係とも正答であった者は真の文では食べ物 の方が、偽の文では生き物の方が多く、関係理解は概念の種類と文の真偽に依存している。真の 文と偽の文のすべてに正答をした者は、幼児では殆どなく6年生でも45%であった。

以上のように、質問文でとらえた階層関係の理解には、年齢だけでなく文の真偽、概念の種類 などが関係しているが、同じ年齢でも関係理解の能力には個人差がある。多喜・杉村(1991)は その1つとして、子供が持っている概念的知識を取り上げた。概念的知識は、上位概念名あるい は中位概念名から連想される事例数によって規定された。 2、 4、 6年生ともに、関係理解得点は 高知識群の方が低知識群よりも有意に高かったが、 2年生の高知識群の理解得点が、同程度の概 念的知識を持っ6年生の理解得点と殆ど同じであった。この結果は、階層関係の理解にとって概 念的知識が重要であることを示唆する。

なお、湯沢(1990)は架空の動物の絵を用いた学習‑分類実験で、階層的概念の理解について 次の3つの発達水準を同定した。 ①小学1年生は、同一の対象を異なる水準のカテゴリーに同時 に分類することが困難で、階層関係の情報の利用が制約される。 ②4年生は、階層関係を教えら れた対象については、異なる水準のカテゴリーに分類することができる. ③6年生は、階層関係 を教えられなかった対象について、階層関係を推論し、異なる水準のカテゴリーに分類すること ができる。

周囲から与えられるカテゴリー情報

乳幼児は周囲の人々、とりわけ母親や保母から、概念やカテゴリーに関わるさまざまな情報を 与えられる。概念の獲得と発達はそのような情報の影響を受けると考えられる。 Blewitt (1983) は、 1‑4歳児に対して教師または母親が発話した普通名詞を記録し、その中から動物、家具、

衣類、乗物に関するものについて、下位水準名̀(例:コリー)、基礎水準名(刺:イヌ)、上位水 準名(例:動物)に分類した。その結果、母親、教師ともにどの年齢の子どもに対しても、基礎 水準名(70‑89%)を最も多く用い、次が下位水準名(10‑27%)で、上位水準名(1‑

5%)は殆ど用いなかった。この傾向は4つの概念であまり変わりがなかった。この結果から、

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3、 4歳頃までの乳幼児に対して与えられるカテゴリー情報は、事物に関わる基礎水準名である ことが明らかである。次の実験では、大学生を被験者とし、絵に関する物語を子どもの聞き手と 大人の聞き手に話すように求めた。その結果、子どもの聞き手に対してのみ基礎水準名が有意に 多く用いられ、子どもは基礎水準でカテゴリー化するように方向づけられていることが示唆され

る。

Shipleyら(1983)は、母親が1 ‑4歳児に対して、動物、衣類、家具の事例について話をす る場面において、基礎水準名(86%)が最も多く用いられ、次が下位水準名(13%)、上位水準 名(11%)であることを示した。これは、 Blewitt (1983)と同様な結果であった。提示された 事例の数によって異なり、上位水準名は1事例提示の場合には6%しか用いられなかったが、

3事例が同時に提示された場合には47%も用いられた。前者の場合は、すべて大人が熟知して いない(確実な名前を知らない)動物の事例であり、どの水準名が用いられるかは事例の熱知性 と数に依存している。

White (1982)は、鳥、動物、衣類などのカテゴリ‑ごとに、 2つずつの事物が含まれている 風景のスライドを提示し、就学前児の母親に、日常生活で子どもに言うのと同じように事物に命 名するように求めた。 2つの事物が典型事例の場合には、それらに共通する上位水準名が多く用 いられたが、非典型事例の場合には、上位水準名は殆ど用いられなかった。先に述べたBlewitt の研究で子どもが聞き手の場合、典型事例に対しては基礎水準名が、非典型事例に対しては下位 水準名がより多く用いられる傾向があった。以上の結果から、周囲から与えられる情報の水準は 言及する対象の典型性や聞き手の年齢に依存していることがわかる。

Walesら(1983)は、命名させる事物の数が1つの場合と3つの場合、提示される事物が同 じものや同じ概念に属するものなどを組み合わせて7つの条件を作り、 2歳児、 4歳児および実 験者に対して、母親に事物の名前を言わせた。 3種類のリンゴを提示して1つのリンゴの名前を 言わせる場合は下位水準名が、 3つのリンゴのグループ名を言わせる場合は基礎水準名が最も多 く用いられた。リンゴ、メロン、イチゴを提示してそのグループ名を言わせる場合と、異なる概 念に属する3つの事物とリンゴ、メロン、イチゴを提示して後者のグループ名を言わせる場合に

は、上位水準名が最も多く用いられた。リンゴを1つだけ提示した場合と3つの果物を提示して 1つだけの名前を言わせた場合には、 2歳児に対しては基礎水準名と下位水準名が同じ程度に用 いられたが、 4歳児と実験者に対しては下位水準名がより多く用いられた。このように、母親が 用いる水準名は、命名させる事物の数、事物の提示条件、聞き手の年齢によって異なっている。

Callanan (1985)は、概念の水準によって母親の教え方が異なることを示した。 2‑4歳児 の母親に、 4枚ずつの絵を与えて実験者が指定した水準の概念名を教えるように教示し、絵を指 差して名前を言う指示‑命名を用いるか、 "コアラは動物(または動物の一種)です"といった 包摂文を用いるかを検討した。基礎概念名と上位概念名を教えるよう教示した場合、 1つの事物

に対する指示一命名では基礎ラベルが、事物のグループに対する指示‑命名では上位ラベルが多 く用いられた。上位概念名を教えるときには、母親の70%が基礎概念名を含む包摂文を用いた が、基礎概念名の場合には誰も用いなかった。基礎概念名と下位概念名を教えるように教示した 場合には、 1つの事物に対する指示一命名では、教えるように教示した水準と母親が用いたラベ ルの水準が‑致したが、事物のグループに対する指示丁命名も包摂文も殆ど用いなかった。基礎 概念名を教える場合に指示一命名法が多く用いられたという結果は、 Ninio (1980)の研究と一 致している。上位概念名を教えるときに基礎概念名を含む包摂文を用い、基礎概念名を教えると

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きには下位概念名を含む包摂文を用いなかったことは、階層関係の非相称性を示唆する。このこ とと関連して、 Shipleyら(1983)は、母親がカテゴリー関係を表すのに"一対の○○"とか

"一種の○○" (○○は上位概念名)などの句を用いることを指摘しているO

これまでの研究では、母親の与えたカテゴリー情報が、主として各水準の概念名によって分類 されていたが、 Callanan (1990)は、先の研究(Callanan, 1985)で得た資料を、事物の知覚的 特徴、部分、機能(典型的な活動や位置)という観点から分類しなおした。基礎概念名と上位概 念名を教えるように教示した場合、基礎概念では知覚的特徴と部分が、上位概念では機能が多く 用いられた。機能について分析すると、基礎機能は上位概念と基礎概念を教えるときに同じ程度

に用いられ、上位機能は上位概念を教えるときだけに用いられた。基礎概念と下位概念を教える ように教示した場合には、基礎概念では機能が、下位概念では知覚的特徴と部分が多く用いられ た。また、基礎機能も下位機能もともに、下位概念よりも基礎概念を教えるときに多く用いられ た。以上の結果から、より上位の概念は機能を、より下位の概念は特徴や部分を用いて教えられ ることが示唆される。

カテゴリー情報の解釈と利用

これまでは、主として親によって与えられるカテゴリー情報がどのようなものであるかを検討 してきたが、次に、実験者によって与えられるカテゴリー情報が、子どもによってどのように受 け取られ、解釈され、そして概念の獲得にどのように役立っかを扱った研究に焦点を当てる。

新奇語情報の解釈

初めて接する事物名や概念名は、乳幼児にとっては無意味な新奇語である。カテゴリー情報と しての新奇語を子どもがどのように解釈するかということは、概念獲得の基礎をなしていると考 えられる Markman & Hutchinson (1984)は、 1つの標本事例と分類学的関係または主題的 関係にある2つの選択事例からなる3つ組課題で、通常の仕方で事例を選択させた場合と、標本 事例に新奇語を命名し(例: "このfepを見なさい")、その新奇語に相当する事例を選択させた 場合(例: "もう1つのfepを見つけなさい")を比較した。 2、 3歳児では基礎水準の課題で、 4、

5歳児では上位水準の課題と未知のものからなる課題で、新奇語の命名によって分類学的選択が 有意に増加した。これは新奇語が分類学的関係について言及していると解釈されたことを示す。

彼女らは、新奇語の意味に関する分類学的制約は生得的なものであり、子どもの語学習を単純化 するものであると主張した。

Bauer & Mandler (1989)は、分類学的制約が生得的であるならば、もっと年少の子どもで も新奇語の命名による促進効果が生じるはずであると考え、 16‑31か月児について3つ組課題 を用いた実験を行った。先の研究と材料や手続きなどの違いはあるが、基礎水準課題において新 奇語の命名の効果は全くなかった。これに対してWaxman & Kosowski (1990)は、 2歳児と

3‑5歳児を用い、 1つの標本事例に対して2つの分類学的選択事例と2つの主題的選択事例か らなる課題で、新奇語の命名によって分類学的選択が増加することを示した。しかし彼女らは、

この増加が生得的制約によるというよりも、言語経験に基づいて推論されたものであることを示 唆した。

上述した強制選択課題では、新奇語の命名によって分類学的選択が増加したのか主題的選択が

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減少したのか明らかでないと考え、 Waxman & Gelman (1986)は、動物、衣類、食物それぞ れ4事例からなる上位分類課題を用いた。練習課題で本課題とは異なる動物の3事例に

"dobutsus と命名し、そのあとで動物とそれ以外に分類させた。同様にして、 "gohans"を命 名して食物とそれ以外に、 "kimonos"を命名して衣類とそれ以外に分類させた。アメリカの子 どもにとって、このような日本語のラベルは新奇語である。 3歳児の結果は、日本語を与えた場 合と英語の上位概念名("動物" "食物" "衣頬")を与えた場合の分類成績が殆ど同じであり、事 例名を教えた場合よりも有意に良かった。これは、 Markman & Hutchinson (1984)の3つ組 課題の結果と同様に、新奇語による生得的な分類学的制約を支持するものと解釈された。なお、

この種の制約を含めた語学習に関する制約について、 Nelson (1988b)とBehrend (1990)に よる論争が行われている。

Waxman (1990)は、上位水準(動物、食物、衣類)、中位水準(晴乳類、鳥、魚)、基礎水 準(イヌ、ネコ、ウマ)および下位水準(コリー、セッター、テリア)、それぞれの分類課題に 及ぼす新奇語(各水準名の日本語)の効果を検討した。先の研究(Waxman & Gelman, 1986) と異なって、この研究では3つのカテゴリーを指定してそれぞれに分類させた。その結果、 3、 4 歳児の上位分類は新奇語を与えた場合に促進され、これは先の研究と一致した。しかし、下位分 類と中位分類は新奇語の命名によって抑制されたので、新奇語命名による制約は、どの水準のカ テゴリー化にも適用できるような生得的なものではなく、分類課題の概念水準に依存しているこ とが示唆される。 Waxmanら(1991)は次の研究で、下位分類における新奇語命名の抑制効果 に注目した。 3歳児に対して、下位水準事例のそれぞれに固有の下位情報を与えてから新奇語 (日本語)を命名した場合、および、基礎水準名と新奇語を同時に与えた場合には、新奇語命名 の抑制効果が生じなかった。これらの結果から、先の研究において下位分類で新奇語命名の抑制 効果があったのは、新奇語を子どもが熟知している基礎水準名として解釈したために、下位水準 の事例間の区別ができにくかったことによることが示唆された。

前田(1992)は、対提示される2事例が同じ仲間であるかどうかを判断させる仲間判断課題を 用いて、新奇語の命名効果を検討した。烏課題と獣課題が作られた。まず、基礎対(スズメ1‑

スズメ2)、中位対(スズメ1‑ツバメ)および上位対(スズメ1‑ウサギ)について仲間判断を求 めた。次に、基礎対(スズメ3‑スズメ4)に対して新奇語(例: "これとこれはクテの仲間で すつ を命名し、先の3対について再び仲間判断を求めた。同様にして、中位対(スズメ3‑カラ ス)および上位対(スズメ3‑ネコ)に対しても、それぞれ異なる新奇語(ケヨ、ワモ)を命名 してから、再び仲間判断を求めた。このようにして、 3つの概念水準に対して3つの命名水準の 効果をみることができる。被験者には、既有知識が異なると考えられる幼児、 6年生および大学 生が用いられた。基礎対命名によって、大学生で中位および上位概念対の仲間判断が抑制された。

中位命名によって、幼児と小6では基礎概念対の仲間判断が抑制され、どの年齢でも中位概念対 の仲間判断が促進された。上位対命名によって、小6と大学生では基礎概念対の仲間判断が抑制 され、どの年齢でも上位概念対の仲間判断が促進された。この促進効果は、年齢が増加するにつ れて著しく大きくなった.以上の結果から、カテゴリー化に及ぼす新奇語命名の効果は、概念水 準、命名水準および被験者の既有知識に依存していることが示唆された。

概念名情報と機能情報の利用

カテゴリー情報として概念名を与えることにより、種々の課題におけるカテゴリー化が促進さ

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れることが知られている。北尾・秦(1971)は、果物、野菜、花、烏それぞれ4事例を用いた自 由分類課題において、それぞれの絵を提示する際に"リンゴは果物です"とか"ハクサイは野菜 です"というように、事例の上位概念名を教示した。教示なしの通常の分類と比べた場合、 4、 5 歳児の概念分類は教示によって著しく促進されたが、 6歳児では教示の促進効果がなかった。こ のように、 6歳児は自発的に上位概念名を用いて分類できるが、 4、 5歳児は教示によって上位 概念名を用いるようになる。 Waxman & Gelman (1986)は動物、衣類、食物それぞれ4事例 ずつを用い、上位概念名と事例名の命名効果を検討した。練習課題では本課題とは異なる動物の 3事例に"動物"と命名し、そのあとで12事例について動物とそれ以外に分類させた。同様に して、 "衣類"を命名して衣類とそれ以外に、 "食物"を命名して食物とそれ以外に分類させた。

事例名の場合には、本課題とは異なる3事例の名前を言ってから分類させた。 4歳児はどちらの 場合も殆ど完全に分類できたが、 3歳児では事例名よりも概念名の成績が良く、概念名を与えた 場合は4歳児と殆ど同じであった。北尾・秦(1971)と異なって、 4歳児でも事例名の成績が良 かったのは、主として4カテゴリー分類と2カテゴリー分類の違いによるものであろう。

杉村(1992b)は、分類学的選択事例と主題的選択事例からなる3種の3つ組課題で、標本事 例に与えた事例名と上位概念名の効果を検討した。課題によって異なるが、命名しない場合と比 べて、事例命名によって幼児と3年生の分類学的選択は増加する傾向があったが、大学生では命 名の効果がなかった。上位概念名の命名によって、どの年齢でも分類学的選択が増加したが、そ の増加は幼児よりも3年生と大学生の方が顕著であった。これらの結果から、事例名や概念名の 命名効果は、年齢だけでなく用いられる課題によっても異なることが明らかである。

土居(1986)は、命名によるカテゴリー水準の等位化という観点から、次の実験を行った。例 えば、ゾウとシカの絵を提示し、ゾウの絵に対して"ゾウ"という基礎水準名、 "けもの"とい う中位水準名、あるいは"動物"という上位水準名を与え、それぞれについて、シカに対してど のような名前を付けるかを調べた。シカに対して、基礎命名では"シが、中位命名では"けも の"、上位命名では"動物"という名前が付けられた場合に、命名によるカテゴリー水準の等位 化が行われたと判定された。用いられた基礎事例によって異なるが、小学1年生から5年生にか

けて等位化が容易になり、カテゴリー化における文脈依存性の発達的変化が示唆された。

上述の研究では、 3つの命名水準が設定されているが、提示される絵の対については概念水準 が操作されていない。そこで杉村(1991)は、先に述べた仲間判断課題を用いて、 3つの概念水 準のカテゴリー化に及ぼす3つの命名水準の効果を検討した.この研究では、生き物課題(スズ メ、ツバメ、キンギョ)と食べ物課題(バナナ、リンゴ、キャベツ)が用いられた。 3つの概念 対について仲間判断をさせた後で、各概念対の一方(スズメまたはバナナ)に対して、 "これは スズメ(バナナ)です"と基礎水準名を教えてから、再び仲間判断を求めた。中位水準では"こ れは鳥(果物)です"、上位水準では"これは生き物(食べ物)です"と教えた。被験者には幼 児、 2年生、 4年生が用いられた。基礎命名によって2年生と4年生で中位概念対の仲間判断が 抑制され、上位命名によってどの年齢でも上位概念対の仲間判断が促進された。これらの抑制お よび促進効果は、年齢が増加するにつれて著しく大きくなった。抑制効果は概念名情報による知 識領域の限定により、促進効果はカテゴリー知識の活性化によるものと解釈され、それらが被験 者の既有知識に依存していることが示唆された。

これまでの研究は概念名情報を扱ったものであるが、飯倉(1992)は、 Callanan (1990)の 研究を参考にして、仲間判断課題に及ぼす機能情報の効果を検討した。イヌセットで例示すると、

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まず、基礎対(イヌ1‑イヌ2)、中位対(イヌrウサギ)および上位対(イヌ1‑ツバメ)につい て仲間判断をさせた。次に、各対のイヌに対して"これはわんわん鳴きます"という基礎情報を 与えてから、再び仲間判断を求めた。中位情報の場合は"これは土の上を走ります"、上位情報 の場合には"これは餌を食べます''という情報を与えてから、仲間判断を求めた。このように、

3つの概念水準に対して3つの情報水準の効果をみることができる。基礎情報によって、どの年 齢でも中位概念対の仲間判断が抑制されたが、その抑制効果は、幼児、小6、大学生と年齢が増 加するにつれて著しく大きくなった。中位情報によって、どの年齢でも中位概念対の仲間判断が 有意に促進された。上位情報によって中位概念対と上位概念対の仲間判断が有意に促進され、上 位概念対の促進効果は年齢が増加するにつれて大きくなった。以上の結果から、情報水準よりも 上位の概念対は、情報として与えた機能を共有していないので抑制効果が生じ、情報水準と同じ

かそれ以下の概念対は、機能を共有しているので促進効果が生じることが示唆された。

情報の与え方(教授方略)

先に述べたように、 Callanan (1985)は母親が子どもに基礎概念名を教えるときには指示‑

命名を用い、上位概念名を教えるときには基礎概念名を含む包摂文を用いることを示した。この ことを実験的に検討するために、 Callanan (1989)は2つの教授方略のもとで事例の絵に新奇 語を命名し、それがどの水準の概念名として解釈されるかを判定できる方法を考案した。イヌの 絵を用いた場合、指示一命名方略では、イヌの絵を指示して"これは○○ (新奇語)です"と教

授し、包摂方略では、 "これは△△ (別の新奇語)です。 △△は○○の一種です"と教授した。

そのあとで、 12枚の絵を1枚ずつ提示して"これは○○ですか"と質問した。 12枚の絵には、

提示したのと同じ種類のイヌが3事例(下位事例)、異なる種類のイヌが3事例(基礎事例)、他 の動物が3事例(上位事例)およびイヌや動物とは異なる3事例(無関連事例)が含まれいる。

先の質問に対して、下位事例だけに"はい"と答えた場合は新奇語が下位水準として、下位事例 と基礎事例に"はい"と答えた場合は基礎水準として、下位事例、基礎事例および上位事例に

"はい"と答えた場合は上位水準として解釈されたと判定する。

3 ‑ 5歳児の結果は、どちらの方略でも新奇語を基礎水準として解釈した者の方が上位水準と して解釈した者よりも多く、予測と一致しなかった。その原因として、包摂方略では2つの新奇 語が用いられたので、被験者が混乱したのではないかと考え、 ○○の代わりに子どもが知らない 非熟知語を、 △△の代わりに子どもが知っている熟知語を用いた。スプーンの絵を用いた場合、

指示‑命名方略では"これは食器です''、包摂方略では"これはスプ‑ンです。スプーンは食器 の一種です"と教授した。食器(utensil)はアメリカの子どもにとっては非熟知語である。包 摂方略では、新奇語を基礎水準として解釈した者(31%)よりも上位水準として解釈した者 (50%)の方が多く、指示‑命名方略では両水準とも同じ割合(31%)であった.この結果から、

新奇語の意味について子どもが持っ仮説は、カテゴリー情報の与え方で異なることが示唆された。

この研究では、 "これは○○です''というように、絵の名前(基礎水準名)を命名しなかった が、 Sugimura (1992)は絵の名前の命名効果をみるために、次の4つの教授方略を設定した。

リンゴの外国語を教えるという教示のもとに、命名一包摂方略では"リンゴはプルナー(新奇 語)の仲間です"、命名‑非包摂方略では"リンゴはプルナーです"、非命名一包摂方略では"こ れはプルナ‑の仲間です"、非命名一非包摂方略では"これはプルナーです''と、それぞれ2回 ずつ教えた。テストには基礎事例1つ(標本と異なるリンゴ)、上位事例5つ(他の果物)、それ

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に無関連事例5つを用いた。大学生は幼児よりも新奇語を上位水準として解釈する者が多く、基 礎水準として解釈する者が少なかった。基礎水準名の命名によって、幼児、大学生ともに新奇語 を基礎水準として解釈する者が増加した。 "仲間''の付加によって、大学生では新奇語を上位水 準として解釈する者が増加し、基礎水準として解釈する者が減少した。以上の結果から、新奇語 の解釈は教授方略と被験者の既有知識に依存していることが示唆された。

Gelmanら(1989)は、概念水準(下位と上位)と語型(単一と複合)を組合わせた4つの教 授方略のもとで、新奇語がどのように解釈されるかを検討したO 下位一単一方略では、チュー リップと雛菊の絵を提示して、一方の絵に対して"これは花です。それは○○ (新奇語)です"、

他方の絵には"これは花です。それは○○ではありません"と教示し、下位一複合方略の場合は、

○○の代わりに001花が用いられた。そのあとで、 2枚のチューリップと2枚の雛菊の絵を提 示して、 "○○ (新奇語)はどれですか" "花はどれですか"と尋ねた。新奇語質問に対して先に 命名した2枚の花の絵を選択し、花質問に対して4枚の花の絵を選択した場合を正答とした。こ れは、新奇語が花の下位概念として解釈されたことを示す。新奇語質問に対して先に命名した2 枚の花の絵を選択し、花質問に対しては他の2枚の花の絵を選択した場合を相互排他的下位セッ トと分類した。上位一単一方略では、花と木の絵を1枚ずつ提示し、花の絵に対して"これは花 です。それは○○ (新奇語)です"、木の絵には"これは木です。それもまた○○です''と教示 し、上位一複合方略の場合には、 ○○の代わりに花一〇〇と木一〇〇が用いられた。そのあとで、

2枚の花と2枚の木の絵を提示して、先と同様な質問を行った。新奇語質問に対して2枚の花の 絵と2枚の木の絵を選択し、花質問に対して2枚の花の絵を選択した場合を正答とした。これは、

新奇語が花の上位概念(植物)として解釈されたことを示す。新奇語質問に対して2枚の木の絵、

花質問に対して2枚の花の絵を選択した場合を相互排他性下位セットと分類した。 3歳児と5歳 児の正答は、下位概念では複合方略の方が単一方略よりも多く、上位概念では2つの方略の間に 有意差がなかった。この結果は、新奇語一基礎水準語の複合で教授した場合、新奇語が下位水準 語として解釈されやすいことを示す。相互排他性下位セットは正答よりも多く、 3歳児では概念 水準間に有意差がなかったが、 5歳児では下位概念の方が有意に多かった。このように、子ども による新奇語の解釈は概念水準、語型および年齢に存在している。

カテゴリーの成員性と特徴に基づく推論

これまでは主として、カテゴリー獲得に関わる研究について述べてきたが、いったんカテゴ リーが獲得されると、カテゴリーの成員性や特性に基づいた推論が可能になる。 Smith (1979) は2種類の推論課題を考案した。クラス推論課題では、 "バグは犬の一種です"というように2 水準のカテゴリー名を含む命題を与え、 "バグは動物ですか"と質問した。また、 "バグは動物の 一種です"という命題を与え、 "バグは猫ですが と質問した。特性推論課題では、 "すべてのミ ルクには乳糖が含まれています"というようなカテゴリーの特性に関する命題を与え、 "すべて のチョコレートミルクには乳糖が含まれいますか"とか"すべての飲み物には乳糖が含まれてい ますか"といった質問をした。その結果、特性推論課題よりもクラス推論課題の方が容易であり、

どちらの課題の正答率も、 4歳、 5歳、 6歳と年齢が増すにつれて増加した。

Gelmanら(1986)は、性別の推論に関して特性情報に基づく新しいカテゴリーの推論と、カ テゴリー情報に基づく新しい特性の推論を区別した。長い髪の典型的な女児の絵、短い髪の典型

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的な男児の絵、それに性別と外見が矛盾する子どもの絵(女児のように見える男児、男児のよう に見える女児)のセットが用意された.カテゴリー推論(分類)課題では、最初の2枚の絵につ いて性別を教え、次に3枚の絵について性の特性を教えた。男児の場合は、体内に精液を持っ、

成長すると声が低くなる、トラックで遊ぶなどであり、女児の場合は、体内に卵巣を持っ、成長 しても声が変わらない、人形で遊ぶなどである。そのあとで、第3の絵の性別を言わせた。特性 推論課題では、 3枚の絵について性別を教え、次に男女の絵についてそれぞれの性の特性を教え、

そのあとで、すでに性別を教えてある第3の絵について、どちらの特性が当てはまるか言わせた。

4歳児の結果は特性推論課題の方が良い成績を示し、これは、カテゴリー情報によって矛盾する 知覚情報を無視することができることによると考えられた。この結果から、事物が属するカテゴ リーが決定できなくても、確立されたカテゴリーによって推論が促進されることが示唆された。

Gelman & Markman (1986)は、 4歳児の推論が事物の知覚類似性よりもカテゴリー成員性 に基づいて行われることを実証した。熱帯魚、イルカ、サメのセットで、サメと熱帯魚はカテゴ リー名(負)は同じであるが知覚的に非類似であり、サメとイルカは知覚的に類似しているがカ テゴリー名が異なる。まず、熱帯魚とサメに対して"負"、イルカに対して"いるか"が正しく 言えるまで教えた。次に、熱帯魚には"この魚は呼吸するのに水中に留まる"、イルカには"こ のイルカは呼吸するのに水上に跳び上がる"という特性情報を与えた。そのあとで、サメが呼吸 をするのに、熱帯魚のように水中に留まるか、イルカのように水上に跳び上がるかを尋ねた。熱 帯魚の方がより多く選択されたことから、知覚的、外見的類似性よりもカテゴリー名の方が強力 であり、カテゴリー成員性に基づく推論が行われていると主張した。

Gelman & Markman (1987)は、推論に及ぼすカテゴリ‑と外見の相対的な効果を検討した。

例えば、ネコを標的として"暗やみで見える"という特性情報を与え、そのあとで、類似した外 見のネコ(同一一致似)、外見が似ていないネコ(同一‑非類似)、異なるカテゴリーで類似した 外見のスカンク(差異‑類似)および異なるカテゴリーで外見が類似していない恐竜(差異‑非 類似)の絵について、標的の特性が当てはまるかどうかを質問した。標的の提示に際して、絵を 裏返して"これはネコです"と名前だけを教えた場合には、 3、 4歳児ともに、同一カテゴリー 事例では外見に関わりなく推論することができ、外見よりもカテゴリー成員性に基づいて推論し ていることが示唆された。標的の絵を見せて名前を言わなくても、外見が類似しているときはカ テゴリー成員性に基づいて推論することができた。 Gelman &Coley (1990)は、標的の名前を 教えた場合およびテストに典型事例を用いた場合には、 2歳児でもカテゴリーに基づく推論が可 能であることを示唆した。菅・梅本(1987)もまたカテゴリーに基づく推論を実証している。

Davidson&Gelman (1990)は4、 5歳児を用い、ウシに似た人工動物の絵に"4つの胃袋を 持っている"といった特性を教える際に、新奇語命名(̀̀これはzavですつ、熟知語命名("こ れはウシです")および命名なし条件を作り、命名語の同異と外見の類似・非類似を操作した条 件下で推論テストを行った。結果はこみいっているが、標的に新奇語を命名した場合には、テス

トでの命名による違いはなく、ともに外見の類似性によって推論が促進され、標的に熟知語を命 名した場合には、外見の類似性と命名語の同一性によって推論が促進された。このように、同じ 特性を教えても、命名する語の熟知性によって推論の成績が異なっている。

これまでの研究では、推論におけるカテゴリーと外見の役割に焦点があてられたが、 Gelman (1988a)は4歳児と2年生を用い、動物、植物、物質などの自然物と、家具、衣類、楽器など の人工物といったカテゴリーの種類を問題にした。赤いリンゴの絵を標本に用いた場合、 "チャ

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