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自然数概念の無際限拡張可能性 菊池誠(

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自然数概念の無際限拡張可能性

菊池誠(Makoto Kikuchi)・黒川英徳(Hidenori Kurokawa)

神戸大学システム情報学研究科・学振

PD(神戸大)

ダメットは幾つかの論文で自然数概念は無際限拡張可能であると論じている.ある 概念が無際限拡張可能であるとは,その概念を満たすものの全体が確定しているとす る想定そのものが,その概念を満たすものの全体の拡張を示唆することであり,ダメ ットは無際限拡張可能な概念の例として自然数の他に集合,順序数,実数などを挙げ ている.しかし,集合論を基礎にする数学観のものでは,これらの概念が確定的であ ることは明らかであって無際限拡張可能であるとは言い難い.また,自然数の全体は 有限的には列挙できないことを考えるならば自然数概念が無際限拡張可能であること は納得がいくが,これは自明な事実の指摘にすぎず,興味深い主張であるとは思えな い.自然数概念が無際限拡張可能であることは,見方によっては明らかに間違ってい るか,自明に正しいかのいずれかであり,これまでダメットの主張については十分な 検討がなされていないように思われる.

このダメットの主張の是非そのものを論じるためにも,まず,無際限拡張可能性と いう概念を明確にする必要がある.本発表は無際限拡張可能性という概念の背後にあ る考え方を検討し,我々の自然数の理解にとって自然数概念が無際限拡張可能である という主張がどのような意味を持ちえて,その主張から自然数概念についてのどのよ うな洞察が得られるのか検討することを目指すものである.

数学の基礎についての考え方には,集合に基づく考え方(the set-based view)と関 数に基づく考え方(the function-based view)の二つが存在する.関数をグラフと同 一視し,自然数を含む数学的対象全てを集合によって表現する見方が集合に基づく考 え方である.一方,数学を構成的に捉える視点や,カテゴリー論に基づいて数学的概 念を定式化する見方は関数に基づく考え方と相性が良い.数学においてこの二つの考 え方は相補い合うものであり,一方が正しく,もう一方が誤りであるとは断定できな い.しかし,この二つの考え方は完全に互いに還元可能であるというわけでもなく,

一つの考え方を通して見える他の考え方には限界があろう.本発表の論点は,ダメッ トの主張は,話題を自然数概念に限定したとしてもこの二つの考え方がもたらす齟齬 に関わるものであり,無際限拡張可能性とは二つの考え方の軋轢によって引き起こさ れる現象に与えられた名前である,というものである.

無際限拡張可能性という概念が分かりにくいのは,この二つの考え方を包括的に捉 えることが困難だからであり,二つの考え方のいずれかを選べば無際限拡張可能性と いう概念は出てこない.おそらく自然数概念はいずれか一つの考え方に割り切っては 理解できず,ダメットの無際限拡張可能性という概念は自然数の理解にとって一定の 重要性を持つものであろう.

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