奈良教育大学学術リポジトリNEAR
絵と語の記憶の分散効果に関する研究
著者 藤田 正, 加藤 理絵
雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学
巻 57
号 1
ページ 65‑72
発行年 2008‑10‑31
その他のタイトル A Study of the Spacing Effect in Memory of Pictorial and Word Lists
URL http://hdl.handle.net/10105/726
1.問題と目的
記憶する材料の特性によって、情報処理のされ方や記 憶システムが異なることはすでによく知られている。そ の中でも特に、絵が単語よりもその記憶成績が優れると いう現象は、「画像優位性効果(pictorial superiority
effect)」として実験的な検討が行われている。
この効果を説明する代表的な説に、Ritchey(1980) の提唱する項目内精緻化(within-item elaboration)説 がある。精緻化とは、記銘語に情報を付加すること(豊 田,1987)であり、それによって記銘語の保持が促進さ れる。精緻化には、項目内精緻化と項目間精緻化がある。
絵と語の記憶の分散効果に関する研究
藤 田 正 ・ 加 藤 理 絵*
奈良教育大学学校教育講座(心理学)
(平成20年5月7日受理)
A Study of the Spacing Effect in Memory of Pictorial and Word Lists
Tadashi FUJITA and Rie KATO*
(Department of Psychology, Nara University of Education, Nara 630-8528, Japan)
(Received May 7, 2008)
Abstract
Two experiments were carried out to examine the relationship between pictorial superiority effect and the effect of massed versus distributed repetition on free recall.
74students(Exp.1)and 39students(Exp.2)studied list items successively presented as a func- tion of type of presentation(distributed vs. massed repetition). In exp.1,the lists were composed 32items, 12pictorial and 12word items, 4buffer pictures and 4buffer words. Immediately after a study period, they were given free recall test followed by two word- identification tests during six minutes. The distributed presentation led to better recall than the massed presentation on both lists. But the spacing effects were not different from both list types. This results were attributed to the small numbers of intervening items on the basis of previous researches. So in the exp.2, I increased the number of intervening items from 2to 4items. The list were composed 38 items, 12pictorial and 12word items, 4buffer pictures and 4buffer words and new six filler items
(3pictures and 3words). Experimental procedure was almost same as the exp.1.
As expected the spacing effect in pictorial list was larger than the spacing effect in word lists.
These results were discussed with related theories, the pictorial superiority effect by the mech- anism of within item elaboration and encoding variability and retrieval cues hypothesis on spacing effect in memory.
*大和郡山市立郡山西幼稚園
Key Words: Memory of pictorial and word lists, Pictorial superiority effect, Spacing effect in memory, Encoding variability hypothesis,
キ−ワ−ド: 絵と語の記憶、
画像優位性効果、
記憶の分散効果、
符号化変動性仮説
項目内精緻化とは、個々の項目を既有の知識や経験と結 びつけて項目特殊情報を付加し、それによって他の項目 とはっきりと区別する処理のことである。他方、記憶内 に あ る 項 目 同 士 を 関 連 付 け る 処 理 が 項 目 間 精 緻 化
(between-item elaboration)であり、2つの精緻化は 対立する概念として扱われている。
Ritchey(1980)は、項目内精緻化または項目間精緻
化が生じるような条件を設定し、画像優位性効果につい て検討している。実験では、単語で構成されたリストと、
それに対応する絵で構成されたリストを用い、記憶成績 の比較を行った。その際、リスト内の単語同士または絵 同士が関連のある場合(カテゴリーリスト)と関連のな い場合(ランダムリスト)に分けて分析を行っている。
その結果、カテゴリーリストでは、絵と単語の記憶成績 に差はなかったが、ランダムリストでは絵の方が単語よ りも記憶成績が良かった。この結果は、カテゴリーリス トのように絵同士や単語同士に関連のある場合には、項 目内精緻化よりも項目間精緻化が行われやすく、画像優 位性効果は生じないが、ランダムリストのように項目間 に関連のない場合には、項目内精緻化が行われやすく、
画像優位性効果が生じるということを示している。
この結果に関しては、絵が単語よりも項目内精緻化に おいて優れていること、つまり絵の場合、単語よりも各 項目に付加される項目特殊情報が豊富であり、各項目間 の差異性が高くなることから画像優位性効果が生じると 説明されている。
また、Ritchey & Beal(1980)は、記銘語に具体語を 用いた実験を行い、具体語のイメージが詳細であるほど、
再生成績は高くなるという結果を見出している。この効 果は刺激間の関連性がない場合にのみ生じ、詳細なイメ ージが項目内精緻化の程度を高めた結果として生じたと 解釈されている。
項目内精緻化説に基づく画像優位性効果に関する研究 は、Ritcheyらを中心とした研究以外に多くは実施され ていない。しかし、画像優位性効果は教育的にも重要な ものであり、さらに研究を重ねる必要がある。
ところで、学習や記憶の研究において安定した支持を 得てきた現象のひとつが、記憶の「分散効果(spacing
effect)」である。北尾(2002)は、分散効果に関する
これまでの研究を以下のように展望している。分散効果 は、同一の刺激項目が反復提示される場合、学習する総 時間が同じであっても、他の刺激項目が反復の間に介在 する分散提示の方が、項目の介在しない集中提示よりも 記憶成績が優れるという現象である。したがって、教育 的には、学習効果を導くための時間的条件の制御につな がる物として注目されてきた。分散効果は、数多くの研 究によって実証されてきたが、その発生メカニズムにつ いては様々な説が出されており、今なお一致した見解に
達していないことを指摘している(北尾, 2002 ; 北尾・
北村, 2001)。
分散効果を説明する説の1つに、Madigan(1969)と
Melton(1967, 1970)が提唱した「符号化変動性仮説
(encoding variability hypothesis)」がある。この説に よれば、記銘語を記憶する際に符号化が行われるが、同 じ項目を反復して記憶する際には、1回目の提示時とそ れ以降の提示時で符号化が同じ場合や異なる場合があ る。集中提示では連続して刺激項目が提示されるため、
同一の符号化が行われやすい。一方、分散提示では提示 間隔が開くことにより、2回目以降の提示時に初めの符 号化を忘れるために、初めとは異なる符号化を行いやす くなる。そのため、分散提示項目の方で符号化の変動が 起こりやすく、検索の際にはそれらすべてが手がかりと なるために、再生時により多くの検索手がかりが利用で きるので検索しやすくなり、集中提示よりも優れた記憶 成績を示すと説明されている。
1960年代から1980年代にかけてこの符号化変動性仮 説が広く支持されてきた(Madigan, 1969 ; Gartman &
Johnson, 1972; Bellezza, Winkler & Andrasik, 1975) が、その後の多くの研究では必ずしも支持を得ていると はいえない(Schwartz, 1975; Dempster, 1987)。また、
符号化変動性仮説のみによって分散効果を完全に説明す る の は 困 難 で あ る と の 指 摘 も な さ れ て お り ( 北 尾,
1992)、刺激に単語ではなく文情報を記憶課題として用
いた実験により、深い処理を要請する課題では精緻化処 理が分散提示によって促進されるということが示唆され ている(北尾, 2002)。
これまでの分散効果に関する研究では、刺激項目とし て絵または単語リストが独立した条件で用いられてき た。いずれの場合においても分散効果は認められている が、絵と単語を混合したリスト条件での分散効果を実験 的に検討した研究は筆者の知る限り行われていない。
そこで本研究では、従来の分散効果に関する研究では 扱ってこられなかった絵と単語の両方を混合したリスト を用い、分散提示条件と集中提示条件のもとでの絵と単 語の記憶成績の比較により、画像優位性効果に及ぼす分 散提示の効果について検討することを目的とした。
実験では、分散提示条件の絵項目・分散提示条件の単 語項目・集中提示条件の絵項目・集中提示条件の単語項 目の4条件を設け、それらを混合した記銘リストを記憶 させ、自由再生テストの成績を比較することにより画像 優位性効果と分散効果について検討する。なお、提示条 件(分散提示又は集中提示)の違いによる画像優位性効 果の程度の差を検討するため、リストは項目内精緻化が 起こり、画像優位性効果が生じやすいランダムリストを 用いることにした。
予想として、絵と単語の比較では、項目内精緻化が起 藤 田 正 ・ 加 藤 理 絵
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こりやすい絵の方が単語よりもその記憶成績が優れると 予想される。また、分散提示条件と集中提示条件の比較 では、符号化変動が起こりやすい分散提示条件において 記憶成績が優れるであろう。これらを合わせて考えた場 合、単語よりも絵の記憶において項目内精緻化が優れて おり、分散提示することによって精緻的処理が多様化さ れ、項目内精緻化が促進されると考えられることから、
分散提示の絵項目の再生成績が他の条件よりも高くな り、集中提示条件よりも分散提示条件において絵と単語 の差(画像優位性効果)がより顕著に現れるのではない かと予想される。
2.実 験 Ⅰ
2.1.実験Ⅰの目的
分散提示条件と集中提示条件のもとでの絵と単語の記 憶成績の比較により、画像優位性効果に及ぼす分散提示 の効果について検討することを目的とした。
2.2.方 法
2.2.1.実験計画 実験計画は、2×2の要因計画で あった。第1の要因は提示条件で、反復項目を分散的に 提示する分散提示条件と連続して提示する集中提示条件 であった。第2の要因は項目の提示モードで、絵と単語 であった。また、第1要因、第2要因共に被験者内要因 であった。
2.2.2.被験者 大学生と専門学校生74名(男子3 名、女子71名)であり、平均年齢は19歳8ヶ月であっ た。被験者は4種類のリスト条件に、それぞれ18名〜20 名ずつ割り当てられた。
2.2.3.材料 a)記銘リスト―記銘リストは、
絵項目12項目と単語項目12項目の計24項目を記銘語と し、それぞれ分散提示または集中提示のいずれかで2回 ずつ反復提示され、リストの前部と後部にバッファー項 目4項目ずつが付け加えられ作成された。
記銘語24項目には、西本・林(1996)の記憶実験用 Picture刺激を用いた。ランダムリストにするために、
各カテゴリーの項目の中から1つずつ、比較的熟知度が 高く2〜5文字で表せるものを選び、各項目がすべて異 なるカテゴリーから成るようにした。表1は、本実験で 使用した記銘リスト項目である。
これら24項目を分散提示の絵項目6項目、分散提示の 単語項目6項目、集中提示の絵項目6項目、集中提示の単 語項目6項目に分け、それら4種類が規則的に繰り返され るように配列したリストを作成した。図1に示されるよ うに分散提示の際の介在項目数は2項目とし、分散提示 項目の間に集中提示項目が挟まれるような配列にした。
絵刺激は、西本・林(1996)の記憶実験用Picture刺 激の標準化リストの中から該当する絵刺激(線画)を選 択した。なお、リストは、各項目について絵と単語を入 れ替えたリストや、提示順序を組み替えた4種類のリス トを作成した。
刺激項目を1ページにつき1項目ずつ印刷し、表1に示 した24項目を各項目2回ずつ反復し、リストの前部と後 部にバッファー項目4項目ずつを加えたものに表紙をつ けて、合計57ページの小冊子(B6版)を作成した。
b)挿入課題用紙―挿入課題は、ひらがな文字列の 中から3文字以上で構成されている名詞に○をつけるこ とが課題として求められる語識別検査用紙であり、有意 味なひらがな文字列(例:ぎらぎらとてりつけるたいよ うが・・・)が配列されているB5版の用紙と、無意味 なひらがな文字列(例:れくよとせのゆしだうちゅう ら・・・)が配列されているB5版の用紙がそれぞれ1 枚ずつであった。
c)自由再生テスト用紙―自由再生テスト用紙は、
B5版の用紙1枚で、項目名を再生順に記入するための罫 線が設けられていた。
d)再認テスト用紙―再認テスト用紙は、B5版の 用紙3枚で、記銘リストに提示されていた24項目がすべ てカタカナ文字で記入されていた。また、被験者の思い つきで回答されることを防ぐために、リストには出てこ なかったNew項目6項目を用意した。以上の合計30項目 がランダムに印刷されており、各項目の右横には、「絵 で提示されていた」「単語で提示されていた」「でてこな かった」の3つが印刷されていた。
2.2.4.手続き 実験は意図記憶手続きを用い、授 業時間を利用して集団で実施された。
表1 本実験の記銘リストで使用した項目名
分 散 提 示 ( 絵 ) カ サ
カ ニ カ ニ
カ サ 集 中 提 示 ( 単 語 )
分 散 提 示 ( 単 語 ) 集 中 提 示 ( 絵 )
図1 リスト項目の配置例(実験Ⅰ)
1)記銘試行―被験者に記銘リストの小冊子と挿入 課題テスト用紙、自由再生テスト用紙が一緒になったテ スト用冊子を配布した。その後、小冊子は机の上に置い ておき、テスト用紙は机の中にしまうよう指示し、それ を確認した後、以下のような教示を与えた。
「それでは、今から実験を行います。この小冊子には 1ページにつき1つの絵か単語が書かれています。『はじ め』という合図で1ページ目を開き、その項目を覚えて ください。その後、『はい』という合図で次のページを めくり、よく見てそれらの項目を覚えていってください。
同じ項目が2回出てくることもあります。」
上記の教示に関して被験者が理解したことを確認した 後、被験者には実験者の合図に従って1ページにつき5 秒の速さでページをめくり、各項目を記銘させた。
2)挿入課題試行―記銘試行終了後、記銘リストの 小冊子を机の中にしまってテスト用紙を出し、挿入課題 テストのページを開いてもらい、挿入課題を行った。被 験者は、有意味なひらがな文字列の中から3文字以上で 構成されている名詞に○をつけるテストと、無意味なひ らがな文字列から同じように3文字以上で構成されてい る名詞に○をつけるテストをそれぞれ3分間ずつ行っ た。
3)自由再生テスト―挿入課題終了後、1枚ページ をめくって自由再生テスト用紙を出してもらい5分間の 書記自由再生テストを行った。被験者には、記銘試行で 記憶した項目名を再生した順に文字単語で記入すること を求めた。
4)再認テスト――自由再生テスト終了後、1枚ペー ジをめくって再認テスト用紙を出してもらい、以下のよ うな教示を与えた。
「1枚めくり、半分に折ってある紙を広げてくださ い。次は、最初に覚えた項目について、絵で提示されて いたと思う場合は1、単語で提示されていたと思う場合 は2、でてこなかったと思う場合は3を選び、数字に○
をつけてください。3枚あるので、2枚目、3枚目も記入 してください。また、正確なデータを必要としますので、
前のテストにはもどらないようにしてください。」 上記の教示に関して被験者が理解したことを確認した 後、3分間の再認テストを行い、テスト終了後記銘リス トの小冊子とテスト用紙を併せて回収した。
2.3.結果と考察
2.3.1.自由再生成績 自由再生テストにおける各 被験者の自由再生項目をチェックし、記銘リストでの提 示条件と提示モードを組み合わせた4条件(分散提示・
絵項目、分散提示・単語項目、集中提示・絵項目、集中 提示・単語項目)それぞれについて自由再生数をカウン
トした。この際、命名の仕方が実験者の意図したものと 異なっていた場合(例えば「シャベル」を「スコップ」
と命名するなど)でも意味的に正しく命名されているも のについては正再生数としてカウントした。
図2は、自由再生テストにおける平均自由再生率を示 したものである。個人の自由再生率(4条件それぞれに ついて6項目を分母として算出)を角変換し、その平均 値を用いて2(提示条件)×2(提示モード)の分散分 析 を 行 っ た 。 そ の 結 果 、 提 示 条 件 (F(1,7 3)
=1 3.7 2,p< .0 0 1) 及 び 提 示 モ ー ド (F(1,7 3)
=110.89,p<.001)の主効果がそれぞれ有意であったが、
提示条件と提示モードの交互作用は見られなかった。
2.3.2.再認成績
再認テストにおけるヒット率を算出した。記銘リスト での提示モードと一致する選択肢を選んでいた場合のみ 正答とし、自由再生テストと同様に記銘リストでの提示 条件と提示モードを組み合わせた4条件(分散提示・絵 項目、分散提示・単語項目、集中提示・絵項目、集中提 示・単語項目)それぞれについて正再認数をカウントし た。
図3は再認テストにおける平均ヒット率を示したもの である。各被験者のヒット率(自由再生テストと同様、
4条件それぞれについて6項目を分母として算出)を角 変換し、その平均値を用いて2(提示条件)×2(提示 モード)の分散分析を行った。その結果、提示条件(F
(1,73)=19.47,p<.001)及び提示モード(F(1,73)
=50.72,p<.001)の主効果がそれぞれ有意であったが、
提示条件と提示モードの交互作用は見られなかった。
藤 田 正 ・ 加 藤 理 絵 68
図2 平均自由再生率(実験Ⅰ)
図3 平均ヒット率
自由再生テストにおける全体の再生率では、画像優位 性効果と分散効果が独立して見られ、予想していた交互 作用は見られなかった。
再認テストの結果から、項目内精緻化の働きが確認さ れた。自由再生テストよりも個々の項目を他の項目とは っきりと弁別する必要性がある再認テストにおいても画 像優位性効果が見られたことから、ある項目を他の項目 と区別する処理である項目内精緻化が行われたといえる だろう。
ところで、自由再生テストの全体成績において、提示 条件と提示モードの交互作用が見られなかったことに は、分散提示条件において分散間隔が2項目と狭かった ことが影響している可能性があると考えられる。これま での研究により、自由再生テストにおける分散効果につ いては、同一項目を反復する際の分散間隔が増すにつれ て分散効果が大きくなるという「lag効果(lag effect)」 が明らかになっている(北尾, 2002)。
Melton(1967)は、単語の自由再生において介在項 目数を変えて2回反復したところ、再生率は介在項目数 0項目から2項目にかけて急上昇し、その後は緩やかな 上昇を示すという結果を得た(北尾, 2002)。また、水 野(1998)も分散間隔を操作した実験により、同様の 結果を得ている。符号化変動性仮説において、分散提示 される項目は分散間隔が大きい程より一層異なった符号 化が行われやすく、集中提示の項目よりも多くの検索手 がかりが生成されるため、分散効果が大きくなると予想 される(北尾1983)。
実験Ⅰでの介在項目数2項目という条件は、反復条件 として分散間隔が比較的狭い。そこで、実験Ⅱにおいて は分散提示の際の介在項目数を2項目から4項目に増や し、分散効果がより大きくなると考えられる条件での画 像優位性効果について検討することにした。
実験Ⅱでは、分散効果の増大により項目内精緻化処理 も多様化されやすくなると考えられ、分散提示条件にお ける画像優位性効果がより顕著に現れると予想される。
3.実 験 Ⅱ
3.1.実験Ⅱの目的
分散提示の際の介在項目数を2項目から4項目に増や し、分散効果がより大きくなることが予想される条件で の絵と単語の記憶成績の比較により、画像優位性効果に 及ぼす分散提示の効果について検討することを目的とし た。
3.2.方法
3.2.1.実験計画 実験計画は、2×2の要因計画で あった。第1の要因は提示条件で、反復項目を分散的に
提示する分散提示条件と連続して提示する集中提示条件 であった。第2の要因は項目の提示モードで、絵と単語 であった。また、第1要因、第2要因共に被験者内要因 であった。
3.2.2.被験者 専門学校生39名(男子7名、女子 32名)であり、平均年齢は19歳6ヶ月であった。被験者 は4種類のリスト条件に、それぞれ9名〜10名ずつ割り 当てられた。
3.2.3.材料 a)記銘リスト―記銘リストは、
絵項目12項目と単語項目12項目の計24項目を記銘語と し、それぞれ分散提示または集中提示のいずれかで2回 ずつ反復提示された。リストの前部と後部にはバッファ ー項目4項目ずつが付け加えられた。
実験Ⅱでは分散提示の際の介在項目数を操作するため に、新たに6項目(絵項目3項目、単語項目3項目)のフ ィラー項目がリスト内に組み込まれた。記銘語は実験Ⅰ の表1に示したものと同様のものを用いた。
記銘語24項目を分散提示の絵項目6項目、分散提示の 単語項目6項目、集中提示の絵項目6項目、集中提示の 単語項目6項目に分け、それら4種類が規則的に繰り返 されるように配列したリストを作成した。分散提示の際 の介在項目数は実験Ⅰの2項目から4項目に増やした 。
絵刺激は実験Ⅰと同様のものを使用した。また、追加 したフィラー項目も実験Ⅰと同様の基準で選んだ。
刺激項目を1ページにつき1項目ずつ印刷し、配列で は間にフィラー項目を挟みながら各項目2回ずつ反復 し、リストの前部と後部にバッファー項目4項目ずつを 付け加えたものに表紙をつけて、合計63ページの小冊 子(B6版)を作成した。b)挿入課題用紙、c)自由 再生テスト用紙、d)再認テスト用紙は実験Ⅰと同様の ものを用いた。
3.2.4.手続き 実験は意図記憶手続きを用い、授 業時間を利用して集団で実施された。1)記銘試行、2)
挿入課題試行、3)自由再生テスト、4)再認テストの 順に行い、テストの実施方法及び教示内容は実験Ⅰと同 じであった。
3.3.結果と考察 3.3.1.自由再生成績
実験Ⅰと同様、自由再生テストにおける各被験者の自 由再生項目をチェックし、記銘リストでの提示条件と提 示モードを組み合わせた4条件(分散提示・絵項目、分 散提示・単語項目、集中提示・絵項目、集中提示・単語 項目)それぞれについて自由再生数をカウントした。
図4は、自由再生テストにおける平均自由再生率を示 したものである。個人の自由再生率(4条件それぞれに ついて6項目を分母として算出)を角変換し、その平均 値を用いて2(提示条件)×2(提示モード)の分散分
析 を 行 っ た 。 そ の 結 果 、 提 示 条 件 (F(1,3 8)
=6.27,p<.05)と提示モード(F(1,38)=57.47,p<.001)
の主効果、及び実験Ⅰでは見られなかった提示条件×提 示モードの交互作用(F(1,38)=6.47,p<.05)が有意で あった。交互作用が見られたので単純主効果検定を行っ た結果、分散提示(F(1,76)=56.10,p<.001)でも集中 提示(F(1,76)=18.37,p<.001)でも絵項目の方が単語 項目よりも再生成績が良く、特に分散提示において絵と 単語の差が顕著であった。また、絵項目では分散提示の 方が集中提示よりも再生成績が良かった(F(1,76)
=12.72,p<.001)が、単語項目では分散提示と集中提示
の間に差は見られなかった
3.3.2.再認成績
実験Ⅰと同様、再認テストにおけるヒット率を算出し た。図5は、再認テストにおける平均ヒット率を示した ものである。各被験者のヒット率(自由再生テストと同 様、4条件それぞれについて6項目を分母として算出)
を角変換し、その平均値を用いて2(提示条件)×2
(提示モード)の分散分析を行った。その結果、提示条 件 (F(1,38)=10.68,p<.005) 及 び 提 示 モ ー ド (F
(1,38)=16.82,p<.001)の主効果がそれぞれ有意であっ たが、提示条件と提示モードの交互作用は見られなかっ た。
自由再生テストにおける全体の再生率において、実験
Ⅰでは見られなかった、提示条件と提示モードの交互作 用が見られた。これは、実験Ⅰよりも反復の際の介在項
目数を増やしたことによると考えられる。つまり、反復 される項目の分散間隔を大きくすることで分散効果が大 きくなり(lag効果)、絵項目の記憶促進により効果的に 働いたといえる。それにより、分散提示条件における画 像優位性効果が顕著に現れたのであろう。
さらに、再認テストの結果から、実験Ⅰと同様に項目 内精緻化が行われていることが確認された。
3.3.3.実験Ⅰと実験Ⅱの比較
これまでの分散効果に関する研究において、分散間隔 が大きくなると分散効果が顕著になっていることから、
今回の実験における絵と単語の再生率の差も、実験Ⅰよ りも実験Ⅱの方が大きくなると予想した。この点を明ら かにするために、実験Ⅰと実験Ⅱの分散提示条件と集中 提示条件における絵と単語の再生率の差についての分析 を行った。
図6は、実験Ⅰと実験Ⅱの絵と単語の再生率の差を示 したものである。個人の絵の自由再生率から単語の自由 再生率を引いた値の平均値を用いて、2(介在項目数:
2項目・4項目)×2(提示条件:分散提示・集中提示)
の分散分析を行った。その結果、介在項目数×提示条件 の交互作用が有意(F(1,111)=4.81,p<.05)であった。
交互作用についての単純主効果検定を行った結果、介在 項目数2項目では、分散提示と集中提示の間に差はなか ったが、介在項目数4項目では、分散提示の方が集中提 示 よ り も 絵 と 単 語 の 差 が 大 き か っ た (F(1,1 1 1)
=6.73,p<.05)。このことから、分散間隔を広げると分散
効果が大きくなること(lag効果)が明らかになった。
4.全体的考察
本研究では、実験Ⅰ、実験Ⅱのいずれにおいても画像 優位性効果と分散効果が認められた。また今回新しく、
(1)分散提示により絵項目の記憶が促進され画像優位 性効果が高まること、(2)分散提示の間隔を大きくす ると分散提示条件における画像優位性効果がより顕著に なることが明らかになった。
画像優位性効果が見られた結果は、これまでの研究結 果(Ritchey,1980)と一致している。Ritchey(1980) 藤 田 正 ・ 加 藤 理 絵
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図4 平均自由再生率(実験Ⅱ)
図5 平均ヒット率(実験Ⅱ)
図6 実験Ⅰと実験Ⅱの絵と単語の再生率の差
は絵のリストと単語のリストを分けて記憶成績を比較し たが、絵と単語を混合した今回のリスト条件でも同様の 結果を得ることが出来た。そのため、Ritcheyのいう項 目内精緻化が単語よりも絵において優れており、各項目 間の差異性が高かったことが、記憶成績を促進したと考 えられる。この点については、項目間の弁別性が必要と される再認テストにおいても、絵の方が単語よりも記憶 成績が優れていたという結果により裏付けられた。
分散効果については、従来の研究では用いられてこな かった絵と単語を混合したリストによる実験であった が、これまでの研究と同様に分散効果が認められた。分 散 効 果 を 説 明 す る 説 の1つ で あ る 符 号 化 変 動 性 仮 説
(Madigan, 1969; Melton, 1967, 1970)では、分散提示の 際の記銘語に対する多様な符号化が記憶を促進すると説 明されている。そのため、絵と単語の両方が含まれた今 回のリストにおいても、分散提示では記銘語が反復提示 された際に初めの符号化とは異なる符号化が生じ、記銘 語に対する情報が多様に付加されたと考えられる。その 結果、検索する際の手がかりが豊富になり、顕著な記憶 の促進が見られた。一方、集中提示では反復されても同 一の符号化が行われやすく、検索の際の手がかり数が分 散提示項目よりも少ないため、記憶成績が劣ったと考え られる。
ところで、本研究における主な関心は、分散提示条件 と集中提示条件において画像優位性効果に違いが見られ るかどうかという点にあった。結果は、実験Ⅱで明らか になったように、分散提示の絵項目において最も記憶成 績が優れ、分散提示条件における画像優位性効果が集中 提示条件よりも顕著であり、予想を支持するものであっ た。
分散提示の絵項目における再生率が最も高くなったの は、分散提示により精緻的処理が多様化され、記銘語に 対する項目特殊情報が増えるなど、絵項目の項目内精緻 化が促進されことによると考えられる。特に、分散効果 は項目内精緻化において優れている絵項目に強く影響 し、絵の記憶促進に効果的に働いたため、分散提示条件 における絵と単語の記憶成績の差(画像優位性効果)が 顕著になったといえる。
このような結果は、実験Ⅱの全体自由再生結果で見ら れた。しかし、実験Ⅰの全体成績で見られなかったこと には、実験Ⅰと実験Ⅱにおける分散間隔の違いにより分 散効果の大きさの違いに影響したと考えられる。実験Ⅰ、
実験Ⅱのいずれにおいても分散効果は認められたが、介 在項目数2項目(実験Ⅰ)では分散効果が絵項目の精緻 化の促進に効果的に機能するのに十分な大きさではな く、分散間隔の大きい介在項目数4項目(実験Ⅱ)にお いて、絵項目の多様な精緻化が促進されるのに十分な符 号化変動が生じ、分散効果を大きくした結果と言うこと
ができる。
このように、分散間隔が増すと分散効果が大きくなる ということは、lag効果としてこれまでの研究において 実証されている(北尾, 2002)。本研究でも、実験Ⅰと 実験Ⅱの比較において、分散提示の際の介在項目数が2 項目から4項目になると、分散提示条件における画像優 位性効果が大きくなり、それがより大きな分散効果の違 いとして現れたという結果から、このことが確認され た。
5.要 約
本研究の目的は、分散提示条件と集中提示条件におけ る絵と単語の記憶成績の比較により、画像優位性効果に 及ぼす分散提示の効果について検討することであった。
実験Ⅰと実験Ⅱでは分散提示の際の介在項目数を変化さ せ、分散間隔が大きい場合の画像優位性効果への影響に ついても検討した。
実験計画は、2(提示条件:分散提示・集中提示)×
2(提示モード:絵・単語)の2要因計画であり、第1、 第2要因共に被験者内要因であった。被験者は実験Ⅰが 大学生と専門学校生74名、実験Ⅱが専門学校生39名で あった。実験は意図記憶手続きによる集団実験であり、
被験者は1項目につき5秒の速さで記銘リストに書かれ た項目を記銘した。記銘リストは、項目間にカテゴリー による関連性のないランダムリストであった。実験Ⅰの リストは、バッファー項目を含め計32項目から成って おり、分散提示の際の介在項目数が2項目であった。実 験Ⅱのリストは、実験Ⅰのリストにバッファー項目6項 目が追加され計38項目となり、分散提示の際の介在項 目数は4項目であった。記銘試行の後、6分間の語識別 検査を行い、5分間の書記自由再生テスト、3分間の再 認テストを行った。
結果については、全体の自由再生率、及び再認テスト におけるヒット率を分析した。また、実験Ⅰと実験Ⅱを 比較し分散効果の違いを明らかにするために、絵と単語 の再生率の差を用いた分析も行った。主な結果は、以下 の通りであった。
実験Ⅰでは、全体の自由再生率において画像優位性効 果と分散効果が認められたが、提示条件と提示モードの 交互作用は見られなかった。
実験Ⅱでは、全体の自由再生率において交互作用がみ られ、絵の分散効果が単語での分散効果よりも大きくな ると言う結果であった。
実験Ⅰと実験Ⅱの比較からは、介在項目数が2項目か ら4項目になると分散提示条件における画像優位性効果 が顕著になるという結果が得られたことから、分散間隔 を増すと分散効果が大きくなるというlag効果が確認さ
れた。
以上の結果より、(1)分散提示により項目を記憶す る際の符号化変動による精緻的処理が多様化され、絵項 目の項目内精緻化が促進されることにより絵項目の再生 成績が高まるということ、(2)分散効果は分散間隔を 増すと大きくなり、その効果は特に、項目内精緻化にお いて優れている絵項目に大きく作用し、分散提示条件に おける画像優位性効果を高めるということが明らかにな った。
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