Waldspurger
による
p進簡約群の
Plancherel公式の構成
∗今野 拓也 † 平成14 年7 月15 日
1
導入
このノートでは Waldspurgerによる p進簡約群に対するPlancherel公式の証明 [13]を 概説する。局所体上の簡約群に対する Plancherel 公式は非可換調和解析の一つのゴール として1970 年代初頭に Harish-Chandraによって考察された。やがて実Lie 群に対する Plancherel の公式の詳しい証明が Harish-Chandraの 1975 年から翌年にかけての一連の 論文 [5], [6], [7]として発表された。Harish-Chandraは同時期に p 進群の場合も考察し、
1973 年にはカスプ表現の wave packet に対する Plancherel公式を構成 [8]、77年には全
Plancherel 公式の構成を概説している([9] とその直後の訂正)。しかし不幸にしてその完
成を見ないままHarish-Chandraは1983年に死去してしまった。その後彼が、指標の局所 可積分性を証明した論文 [4]のうち概説にとどまっている第3部や、p進群の Plancherel 公式について多くのノートを遺していたことがわかり、L. Clozel と P.-J. Sally がそれを 整理し発表する努力を続けてきた。私の理解が正しければ、[13] はこのプロジェクトの 一環である。しかし、Waldspurger自身が導入の中で述べているように、ここでの証明は
Harish-Chandraの議論を再現するものではなく、その後の表現論の進歩を取り入れた新
しいものになっている。
最も重要な変更点は構成の順序の逆転である。Harish-Chandraの構成ではまずEisen-
stein 積分が導入され、その解析接続やMaaß-Selberg 等式を用いてその函数等式を得る。
そしてそこに現れたc函数を用いて絡作用素の基本性質を引き出すという道筋である。他 方で[14] では [12] の結果を用いた新たな構成が与えられている。[12] は絡作用素を直接 的に解析する方法を与えるもので、有限次元表現を用いてa∗M,C 上の微分作用素Dπ と「b 函数」bπ で絡作用素 JP|P(πλ) が函数等式
bπ(λ)JP|P(πλ)φ=JP|P(πλ+4ρP)IPG(πλ+4ρP, Dπ(λ))φ
∗数理研短期共同研究「p進群の調和解析」(2002年7 月1 〜5日)での講演録。
†九州大学大学院数理学研究院
電子メール: [email protected]
ホームページ: http://knmac.math.kyushu-u.ac.jp
を満たすものを構成する。この函数等式により、絡作用素 JP|P(πλ) をその 4ρP シフト に関係づけて順次 −ρP の方向に解析接続できるだけでなく、JP|P(πλ) の特異点も b 函 数を通じてとらえられる。[14] では絡作用素についてのこれらの情報から Plancherel 測
度や Eisenstein 積分、c 函数、ウェイブパケット変換の性質を引き出すことで、従来よ
り遙かにシンプルな Plancherel公式の証明を与えている。[13] は基本的にこの [14] の道 筋に沿った構成を採用している。p 進群の場合には Jacquet 函手の完全性から上の函数
等式が 10 頁 (5.1) に単純化し、Harish-Chandra が有理型函数であることを示した絡作
用素が実は不分岐指標のなすトーラス上の有理函数であることもわかる。この有理性は
Langlands 分類と併せて Plancherel 測度の構成に重要な役割を果たす。他方で p進群の
場合はLevi 部分群の離散系列表現のなす(実解析)多様体の各連結成分はコンパクトな ため、Plancherel 測度の評価に必要だった離散系列指標(函数)の詳しい解析は不要であ る。特に指標函数の存在を保証するために置かれていた基礎体の標数が 0 であるという 仮定は必要ない。最後に p 進群では K 有限ベクトルの中で表現が実現されているため、
K タイプに沿って平均した Eisenstein 積分の代わりに誘導表現の行列成分を用いればよ い。これをこのノートでは Eisenstein 函数と呼んでいる。対応して c 函数の定義も絡作 用素と Weyl群の元の合成になってしまう。
このノートは2001 年度に筆者が[13] について九州大学で行ったセミナーがもとになっ ている。セミナーノートそのものは筆者のウェッブページからダウンロードできる。この 機会を生かすため、詳しい証明の解説はそちらに譲りここでは証明の概説に終始するこ とにした。特に証明にはほとんど触れず、触れたとしても概略にとどめた。また解説の順 序を登場人物を中心に次のように変更している。第1話では p 進簡約群の基本的な構造 を復習した後、扱う表現の圏を指定しそれらの間の放物型誘導および Jacquet 函手を思 い出す。さらに上でも触れた絡作用素の基本性質を用意する。第2話では Plancherel 公 式を構成する緩増加表現を導入し、緩増加表現の圏で Jacquet 函手の代わりをつとめる
弱Jacquet 函手を用意する。続いて放物型誘導表現の可約性を絡作用素の挙動に結びつけ
る Langlands分類を思い出し、それを用いて誘導表現の可約点がZariski 閉部分集合に含
まれることを見る。これからPlancherel測度の存在が従う。第3話でようやく Schwartz- Harish-Chandra空間が登場し、そのPlancherel展開が与えられる。まずEisenstein 函数 を導入し、その弱定数項が絡作用素で記述されたc函数であることを示す。これにより離 散系列表現からの誘導表現のなすベクトル束の切断の空間からSchwartz-Harish-Chandra 空間へのウェイブパケット変換が定義可能になる。最後にウェイブパケット変換の全射性 を示して、Plancherel 公式が得られる。
最後になったが忙しい中で今回の研究集会の企画、運営に尽力してくださった京都大学 人間環境学研究科の齋藤裕氏、ウェッブページの維持および報告集の作成をしてくださる 大阪府立大学総合科学部の高橋哲也氏に深く感謝する。
第
1話 基礎事項
ここでは以下の構成の基盤となる基礎事実を復習する。
2
記号
F を非アルキメデス局所体とし、そのモヂュラスを | |F と書く。Plancherel 公式の証 明には指標函数の解析は必要ないので F が正標数を持ってもよい。
2.1 簡約群
GをF 上定義された連結簡約群とする。その中心Z(G)内の極大F 分裂トーラスをAG
と書く。GのF 有理指標の群X∗(G)F を使ってAGの「実Lie環」aG := Hom(X∗(G)F,R) を定める。Log 写像に当たるHG:G(F)→aG を
exphχ, HG(g)i=|χ(g)|F, ∀χ∈X∗(G)F
と定義する。F の付値が離散的であることから、この像 aG,F :=HG(G(F))は aG 内のZ 格子になることに注意する。G(F)1 := kerHGとおけば、G(F)1 上自明な G(F)の(連続) 指標の群AbG := Hom(G(F)/G(F)1,C×)は aG,F を指標群とするCトーラスになる。([15]
では X(G(F))と書いたが、ここでは Arthurの最近の慣例にならって AbG と書く。これ
は G の Langlands 双対群の中のトーラスと同一視されるためこのように書かれる。) そ
のユニタリ指標からなる部分群を Ab1G:= Hom(G(F),C1)と書く。また χ∈AbG に対して exphλ, HG(g)i=|χ(g)|, g ∈G(F)
となる λ∈a∗G を <χ と書く。
2.2 放物型部分群
以下特に断らなければ、G の F 上定義された放物型部分群やその Levi 成分を単に放 物型部分群、Levi 部分群などと呼ぶ。G の極小 Levi 部分群 M0 を固定し、それを含む 放物型部分群の集合、Levi 部分群の集合をそれぞれF,L と書く。P ∈ F は L に属する Levi 成分をただ一つ持ち、逆にM ∈ L を Levi 成分に持つ F の元の集合 P(M) は有限 集合である。P =MU ∈ F に相対する放物型部分群を P¯ =MU¯ と書く。
2.3 制限ルート
a0 :=aM0, A0 :=AM0 などと略記する。a∗G =X∗(G)F ⊗R を制限写像 X∗(G)F 3χ7→
χ|M0 ∈ X∗(M0)F から定まる線型埋め込み a∗G ,→ a∗0 の像と同一視する。A0 の G での
ルートの集合 Σ0 はそれの張る a∗0 の部分空間 aG,∗0 内のルート系になる (相対ルート系)。
P0 ∈ P(M0) を選べば対応する正系 ΣP0 ⊂Σ0、その中の単純ルートの集合 ∆P0 などが定 まる。またa0 でのa∗G の零化域aG0 は aG,∗0 の双対なので、その中に ∆P0 の元に対するコ ルートの集合∆∨P0 も定まる。相対 Weyl 群 W =WG := Norm(A0, G)/M0 はこのルート 系の Weyl群に一致する。以下 W をその Norm(A0, G(F))での完全代表型と同一視し、
Ad(w)X がその代表元の取り方によらないときにはそれを w(X)と書く。
aG を {H ∈a0|α(H) = 0, ∀α∈Σ0} と同一視する。互いに双対な直和分解 a∗0 =aG,∗0 ⊕a∗G, a0 =aG0 ⊕aG
が得られた。
M ∈ LのときAM のGでのルートの集合をΣM と書く。これは一般にルート系にはな らない。P ∈ P(M)に対して正系ΣP、その中の被約ルートの集合ΣredP が定まる。P に含 まれるP0 ∈ P(M0)を取り、ΣP 内の単純ルートの集合を∆P :={(α|aM)|α∈∆P0\∆P0M} と定義する。同様に対応するコルートの集合 ∆∨P :={(α∨|a∗M)|α∨ ∈ ∆∨P0 \∆∨PM
0 } が定ま
る。これらはP0 ⊂P の取り方によらない。P に対する正の部屋 a∗,+P :={λ ∈a∗M|α∨(λ)>0, ∀α∨ ∈∆∨P} は ∆P の張る aG,∗M 内の開錘と a∗G の直和+a∗P に含まれている。
不分岐擬指標の群 AbG は C トーラスだったので、実 Lie 群の場合の直和分解 a∗M,C = aG,∗M,C⊕a∗G,C の代わりに完全列
1−→AbG −→AbM −→AbGM −→1
が用いられる。ここで AbGM := Hom(M(F)∩G(F)1/M(F)1,C×)と書いた。射はすべて制 限射である。
2.4 極大コンパクト群、測度
KをG(F)のA0に関してよい位置にある極大コンパクト部分群とする。P =MU ∈ F に対して岩澤分解 G(F) = P(F)K が成り立つ。g ∈G(F)の岩澤分解を
g =uP(g)mP(g)kP(g), uP(g)∈U(F), mP(g)∈M(F), kP(g)∈K
と書く。これらの各成分は一意には定まらないことに注意する。また H0 = HM0 による a+P0 の閉包a¯+P0 ⊂a0 の逆像を M¯+P0 として Cartan 分解
G(F) = a
m∈M¯+P
0/M0(F)1
KmK
が成り立つ。
以下で用いる不変測度を指定しておく。実 Lie 群の場合には Lie 環の Cartan 分解 g=p⊕k から種々の分解や測度の正規化が得られていたが、p 進群の場合には極大コン パクト部分群は同時に開部分群でもある。そこでGの任意の閉部分群 H に対して開部分 群 H(F)∩K⊂H(F) の全測度が 1 となるよう H(F) 上の左不変測度を選ぶ。G(F) 上 の局所定数コンパクト台付き函数たちのなす畳み込み代数 H(G(F)) を G(F) の Hecke 環と呼ぶのだった。Z(G)(F)は AG(F)を法としてコンパクトであるから、中心を法とし た(二乗)可積分性などを論じるときにはG(F)/AG(F)上でのそれを考えることにする。
対応して aG,F の部分 Z格子eaG,F :=HG(AG(F)) を取り、Ab1AG 'ia∗G/2πiea∗G,F 上に全測 度が 1となる不変測度を取る。これによりAb1G 'ia∗G/2πia∗G,F にも不変測度が定まる。こ こで ea∗G,F, a∗G,F はそれぞれeaG,F,aG,F の双対格子である。G(F) 自身やその簡約部分群、
べき零部分群は両側不変測度を持つユニモヂュラ群であるが、放物型部分群 P(F) はそ の限りでない。すなわち先に止めたP(F)上の左不変測度dp に対してδP(p)dp が右不変 測度となるような擬指標 δP :P(F)→R×+ は自明ではない。この δP を P(F)のモジュラ スと呼ぶのだった。
γ(G/M) :=
Z
U(F)
δP(mP(¯u))du¯
とおく。我々の測度の選び方に対してはこれは P ∈ P(M) によらず、f ∈ H(G(F))に対 して次の積分公式が成り立つ。
Z
G(F)
f(g)dg = Z
U(F)
Z
M(F)
Z
K
f(umk)δP(m)−1dk dm du, (2.1)
=γ(G/M)−1 Z
U(F)
Z
M(F)
Z
U(F)
f(umu)δ¯ P(m)−1d¯u dm du (2.2)
3
表現
3.1 代数表現
G(F)のC ベクトル空間V 上の抽象群としての表現 π :G(F)→GL(V)が代数表現で あるとは、任意の v ∈ V の固定化群 Stab(v, G(F))が G(F) の開部分群であることだっ た。代数表現(π, V) に対してV の双対空間 V∗ 上に
hπ∗(g)v∗, vi=hv∗, π(g−1)vi, g ∈G(F), v∗ ∈V∗, v ∈V で定まる双対表現 (π∗, V∗)は必ずしも代数的でない。代わりにその代数部分
V∨ :={v∨ ∈V∗|Stab(v∨, G(F))は開部分群} への制限 (π∨, V∨)を取り、(π, V) の反傾表現と呼ぶ。
例 3.1. K ⊂ G(F) を開コンパクト部分群として G(F) 上の両側 K 不変函数の空間を C(K\G(F)/K) と書く。
Calg(G(F)) := [
K⊂G(F) 開コンパクト部分群
C(K\G(F)/K)
上の G(F) の右正則表現 Ralg
[Ralg(g)f](x) := f(xg), g ∈G(F), f ∈Calg(G(F))
は G(F) の代数表現である。その反傾表現は G(F) 上のコンパクト台付き分布の空間 Dc(G(F)) 上の右正則表現である。
3.2 許容表現
G(F) の代数表現 (π, V) が許容表現であるとは、任意の開部分群 K ⊂ G(F) に対し て VK := {v ∈ V |π(k)v = v, ∀k ∈ K} が有限次元なことだった。このとき反傾表現 (π∨, V∨) は双対表現に一致し、(π∨, V∨)∨ '(π, V) が成り立つ。v ∈ V, v∨ ∈ V∨ はある 開コンパクト部分群 K ⊂G(F)で不変であるから、対応する行列成分
fv,v∨(g) := hπ(g)v, v∨i, g ∈G(F)
は C(K\G(F)/K) の元である。(π, V) の行列成分たちの張る Calg(G(F))の部分空間を A(π)と書き、
A(G(F)) := X
π許容表現
A(π)
とおく。和は G(F) の許容表現の同型類の集合を走る。AG の有限次元表現 (ρ, V) は広 義等型分解
V = M
χ∈Exp(ρ)
Vχ, Vχ :={v ∈V |(ρ(a)−χ(a))nv = 0,∃n ∈N}
を持つ。G(F) の許容表現 (π, V) に対しても、開コンパクト部分群 K ⊂G(F)に対する AG(F) 加群VK の上の分解の帰納極限として、広義等型分解
V = M
χ∈Exp(π)
Vχ, Vχ:={v ∈V |(π(a)−χ(a))nv = 0, ∃n∈N} (3.1)
が成り立つ。この Exp(π) の元をπ の(中心) 指数と呼ぶ。
3.3 B 許容表現
許容表現の定義の有限性はしばしば強すぎ、特にこのノートで扱う表現の連続族を含ま ない。そこで [2] から B 許容表現を用意しておく。B を可換 C 代数とする。B 加群 V 上のG(F) の表現π :G(F)→AutB(V) がB 許容表現であるとは、
(i) V を C ベクトル空間とみたとき、(π, V) は G(F)の代数表現。
(ii) V は B 加群として平坦。
(iii) 任意の開部分群 K ⊂G(F) に対して VK は B 上有限生成。
なることとする。
例 3.2. BG を C トーラス AbG 上の多項式函数環とする。g ∈G(F) は BG× の元 bg :AbG3χ7−→χ(g)∈C×
を与える。特に BG× 値の指標(Bernstein-Deligne の意味の普遍指標)
µBG :G(F)3g 7−→bg ∈BG×
が定まる。G(F) の許容表現 (π, V) に対して VB :=V ⊗BG 上の G(F) の表現を πB(g) :VB 3v⊗b 7−→π(g)v⊗µBG(g)b∈VB, g ∈G(F)
と定めれば、これはBG許容表現である。さらにExp(πB) :={χ:=χ1⊗µBG|χ1 ∈ Exp(π)}
とし各 χ∈ Exp(πB) に対してVB,χ :=Vχ1⊗BG とおけば、広義等型部分 BG 加群による 分解
VB:= M
χ∈Exp(πB)
VB,χ, VB,χ:={v ∈VB|(πB(v)−χ(v))nv = 0, ∃n∈N} (3.2) が成り立つ。
4
放物型誘導と
Jacquet函手
4.1 放物型誘導表現
P =MU ∈ F とし(π, V)を M(F) の代数表現とする。
IPG(V) :=
φ :G(F)→V
¯¯
¯¯
¯¯
¯
(i) φ はある開部分群 K ⊂G(F) で右不変 (ii) φ(umg) = δP(m)1/2π(m)φ(g),
u∈U(F), m∈M(F), g ∈G(F)
上のG(F) の右移動表現
[IPG(π, g)φ](x) = φ(xg), g ∈G(F), φ ∈IPG(V)
を(π, V)からのP に沿った放物型誘導表現と呼ぶ。IPGはM(F)の代数表現の圏Alg(M(F)) から G(F)のそれAlg(G(F))への、あるいはB 許容表現からなる部分圏 AdmB(M(F)) からAdmB(G(F)) への完全函手である。また IPG(V) と IPG(V∨) の間の双対性
hφ, φ∨i:=
Z
K
hφ(k), φ∨(k)idk, φ ∈IPG(V), φ∨ ∈IPG(V∨) は同型 IPG(π)∨ 'IPG(π∨) を与える。
4.2 Jacquet 加群
G の代数表現 (π, V)と P =MU ∈ F に対して、
VP :=V /V(U), V(U) := Span{π(u)v−v|u∈U(F), v ∈V} とおき、jP :V ³VP を自然な射影とする。
πP(m)jP(v) =δP(m)−1/2jP(π(m)v), m∈M(F), v ∈V
によって定まるM(F)の表現(πP, VP) を (π, V) のP に沿ってのJacquet 加群と呼ぶ。
π にπP を対応させる函手rPGは Alg(G(F))からAlg(M(F))への、そしてAdmB(G(F)) から AdmB(M(F)) への完全函手である。ここで[3,§ 4]から次を引用しよう。t∈R×+ に 対して
A+P(t) :={a∈AM(F)| |α(a)|F > t,∀α ∈∆P} と書く。
定理 4.1. (i) 双線型形式 h, iP : VP ×(V∨)P → C であって、v ∈V, v∨ ∈ V∨ に対して t >1 を十分大きく取れば、
hπP(a−1)jP(v), jP(v∨)iP =δP(a)1/2hπ(a−1)v, v∨i, ∀a ∈A+P(t) が成り立つものがただ一つある。
(ii) h, iP は非退化かつ M(F) 不変。すなわち (πP)∨ ∼→(π∨)P である。
特に v ∈V, v∨ ∈V∨ の行列成分 fv,v∨ ∈ A(π) に
(fv,v∨)P(m) := hπP(m)jP(v), jP(v∨)iP, m ∈M(F) を対応させる写像は
δP(ma)1/2f(ma) =fP(ma), a∈AM(F), α(HM(a))<<0,∀α ∈∆P (4.1) を満たす線型写像 A(G(F))3 f 7→fP ∈ A(M(F)) に延びる。この fP を f ∈ A(G(F)) の P に沿っての定数項と呼ぶ。
4.3 基本性質
P = MU ∈ F とし、(π, V) を G(F) の (τ, E) を M(F) の代数表現とするとき、
Frobenius 相互律(の変形)
HomG(F)(π, IPG(τ))'HomM(F)(πP, τ) が成り立つ。すなわちrPG は IPG の左随伴函手である。
P, P0 ∈ F に対して WM0\W/WM の完全代表系 P0WP を取れば、Bruhat 分解 G= a
w∈P0WP
P w−1P0
が成り立つ。P0WP に p 進位相での閉包の関係 P(F)w−1P0(F)⊂ a
w0∈P0WP
w0>w
P(F)w0−1P0(F)
が成り立つような全順序 w0 > w を一つ固定する。(π, V) を M(F) の代数表現とすると き、IPG(V) の P0WP を添字集合とする減少フィルタ{Fw}w∈P0WP (Bruhat フィルタ)を
Fw :=
n
φ∈IPG(V)
¯¯
¯suppφ⊂ a
w0∈P0WP
w0≥w
P(F)w0−1P0(F) o
と定める。
pw(φ)(m0) := δP0(m0)−1/2 Z
(U0∩w(P))(F)\U0(F)
jw−1(P0)M(φ(w−1u0m0))du0 (4.2) とおけば、これは定義可能な M0(F) 準同型
¯
pw : (GrwF•)P0 −→∼ Iw(P)M0 M0(w(Vw−1(P0)M))
を与える。ここで GrwF• :=Fw/F>w と書いている。特に (π, V) が長さ有限許容表現の 時には、M0(F)の長さ有限許容表現の圏の Grothendieck 群での等式
[IPG(π)P0] = X
w∈P0WP
[Iw(PM0 )M0(w(πw−1(P0)M))] (4.3)
が成り立っている。
5
絡作用素
M ∈ L とし(π, V)をM(F)の長さ有限許容表現とする。χ∈AbM はそのような (π, V) の集合に (π, V)7→(πχ, Vχ) := (π⊗χ, V) と作用する。(π, V)の同型類 π の AbM 軌道を
P:={πχ|χ∈AbM} 'AbM/Stab(π,AbM)
と書く。ここで Stab(π,AbM) := {χ∈AbM|πχ 'π} は有限群であるから、Pには C トー ラス AbM/Stab(π,AbM)の主等質空間としてのC 多様体の構造が入る。特にその上の多項 式函数や有理函数が考えられる。