「渋谷駅構内の歩行者密度の評価」
学籍番号 13D8104031L 福澤 克希
中央大学理工学部情報工学科 田口研究室
2017 年 3 月
概要
本研究では渋谷駅の構内をグラフ化し、利用者の乗り換えデータを利用して各通路の混雑状況を調べる。
そして、各通路の利用の仕方を変えてみることにより、より快適な駅構造を考える。
目次
第1章 初めに 第2章 使用データ 第3章 グラフ化
3.1 グラフ理論とは 3.2 データ構造 3.3 データ測定・記録
第4章 最短経路問題4.1 Dijkstra
法4.2 本研究での Dijkstra
法の利用
4.2.1 本研究での Dijkstra
法の利用方針4.2.2 リンクのコスト
4.2.3 通路の密度と所要時間
4.3 乗り換え時の最短経路
4.3.1 乗り換えを行う歩行者が 0
人のとき(初期状態)4.3.2 半蔵門線から東横線へ 1
名乗り換えをした場合4.3.3 1000
人分の乗り換えを行った場合第5章 評価
5.1 乗り換えに掛かる所要時間の推移 5.2 各通路の利用状況
第6章 まとめ
6.1 まとめ
6.2 今後の課題
第1章 研究の主旨
昨今の日本では都心部での人口の密集化が顕著であり、渋滞・混雑現象が問題化している。
本研究では、特に問題化しているターミナル駅構内での通路の混雑現象に対して、渋谷駅を例 にとり、各通路の歩行者の密度を考える。
本研究では作成した駅構内グラフについてダイクストラ法を用いて乗り換え経路を算出し、
各通路での歩行者密度について考える。
第2章 使用データ
現実の駅を対象としてネットワークを作るため、駅構内の構造や正確な位置情報が必要となる。
今回は、構内マップ [1] を用いて必要な点を把握したのち、拡大コピーした駅地図 [2] を用い て詳細な座標を測りデータを取った。
(駅構内参考画像)
第3章 グラフ化
3.1 グラフ理論とは
「つながり方」に着目して抽象化された「点とそれらを結ぶ線」の概念がグラフであり、グラフがも つ様々な性質を探求するのがグラフ理論である。一般には点を「ノード」、線を「リンク」と称する。本 研究では駅の構内構造における頂点を「ノード」、頂点と頂点を繋ぐ通路を「リンク」と定義し、リンク に矢印をつける有向グラフを採用する。
3.2 データ構造
座標情報を記録したノードを両端に持つようにリンクを定義する。
まずノード(頂点)の構造を考える。
与えられた地図の中で頂点として考えられる構造物として、
・改札口
・階段(始点・終点)
・エスカレーター
・エレベーター
・出入口
・交差点 などが挙げられる。
本研究ではこれらの内、改札口・階段(始点・終点)・出入口・交差点をノード(頂点)として考え、
各ノードには、識別番号、x軸の座標、y軸の座標、z軸の座標の4つの属性を記録することにする。
図(1)
また、リンクについては各頂点間を結ぶ通路をリンクとし、それぞれのリンクには、識別番号、始点 の識別番号、終点の識別番号、各点を通過するときの所要時間(秒)の
4
つの属性を記録する。3.3 データ測定・記録
上記のデータ構造を用意したうえで、各データを測定・記録していく。
各ノードの
x,z
座標については、用意した地図の拡大コピーを使って手作業で座標を測り、倍率を調 整して実際の縮尺(m)に戻して記録する。y座標については、B1Fは-10、B2Fは-20と設定する。リン クに関しては、ノード間を繋ぐ通路・階段などに識別番号を対応させて、始点、終点の点番号を記録す る。各点を通過するときの所要時間はT(s)とおいて、
T(s) =
(始点と終点の2点間の距離(𝑚))𝑉(𝑚 𝑠⁄ )
※V=1.356(𝑚 𝑠
⁄ ) = 80(m/分)
と計算を行い、記録する。第4章 最短経路問題
4.1 Dijkstra 法
有向グラフ
G
のノードの集合N(G) = { 1,2,3,…,n }とリンクの集合 E(G) = { e=(u,v,) | u,v ∈
N(G) }、そして各 e=(u,v)に非負のコスト𝑤
𝑢𝑣が与えられているとする。この時、点1
から他の全点へのコスト最小となる経路は以下の手順によって求めることができる。
以下に具体例を載せる。( →図(2) )
ノード1から各ノードまでの最短距離の初期値を
𝒅
𝟏= 𝟎, 𝒅
𝟐= 𝒅
𝟑=
・・・= 𝒅
𝒏= 𝟎
とする。i=1
とする。ノードi
を始点とするリンクの終点の最短距離の値を𝐝
𝒋← 𝒎𝒊𝒏(𝒅
𝒊+ 𝒘
𝒊𝒋, 𝒅
𝒋)
と更新していく。未探訪のノードの中で最短距離が最小となるノードを次の
i
とし て設定し、上記のことを未探訪のノードが無くなるまで繰り返す。距離最小のノードを訪れる際に直前のノードを記憶しておけば、それを逆に辿ると 最短経路が分かる。
図(2)
Dijkstra
法による最短経路の求め方例4.2 本研究での Dijkstra 法の利用
4.2.1
本研究でのDijkstra
法の利用方針上記に示した
Dijkstra
法の考え方を用いて、ある地点(ノード)からある目的地(ノード)まで一名の歩行者が移動する際の最短経路を求めることができる。
本研究では、歩行者の乗り換え経路の推定のため、Dijkstra法で求めた最短経路を一名の歩 行者の通過経路と考える。さらに、Dijkstra法による最短経路を繰り返し求めることで、複数 人の歩行者が乗り換え移動を行うモデルを考えることができる。
さて、最短経路を繰り返し求めると述べたが、単純に
Dijkstra
法を繰り返し行っても得られ るスタート地点から各点までの最短経路は同一経路のまま変わらない。つまり、1万人が1
万 人同じ経路を通る現象が起きることになる。本研究では、一度
Dijkstra
法による最短経路を求めたのち通った通路のコストを増加させる ことによって、再度Dijkstra
法によって最短経路を求める際に一度目の最短経路より総コスト の小さい経路が解として得られるように設定する。以下に具体例を載せる。( 図(3)具体例 )
図(3) 具体例
4.2.2 リンクのコスト
Dijkstra
法はコストの総和が最小となる経路を逐次確定させていく手法である。そのため、各枝のコストは以下の条件を満たすものである。
(条件
1)非負の数値である。
※負の数値があるとそのリンクを通ればコストを無限に小さくできる。
(条件
2)小さいほど望ましいような数値である。
※コストの総和が最小になるように計算を行うため。
以上の条件を満たす数値データとして、長さ、所要時間などが挙げられる。
本研究では所要時間を各リンクのコストとして定める。
4.2.3 通路の密度と所要時間
本研究では多数の歩行者を同じネットワーク内で移動させるため、各通路(リンク)に通 る歩行者の数に比例して所要時間を増やしていく。
歩行者は混雑していない時には平均速度で歩けるが、他に歩行者がいる場合にはその数に
の通路の歩行者密度と歩行速度の関係式が得られているが、本研究では
John F Fruin
氏が導 き出した以下の関係式を用いる。[3]V = 1.356 − 0.341K ※K(
人⁄ 𝑚
2)
この関係式中のK(人/𝑚
2) =
(通路の歩行者人数num)(通路の長さ𝑑𝑖𝑠𝑡)×(通路の幅𝑤𝑖𝑑𝑡ℎ) である。
上記の
V
による通路の密度と通るのにかかる所要時間との関係を図(4)に示す。本研究では通路の幅を一律
5.0(m)、通路の長さはその通路の始点と終点の 2
点間の距離を計 算して用いる。歩行者人数はDijkstra
法で最短経路を求めた際に各通路(リンク)の歩行者人数num
を増やしてカウントしている。関係式の計算にて
V
を計算し、T=(通路の長さdist)/V
として所要時間T
を求める。この所 要時間T
をリンクのコストとして再設定することでコストの更新を行う。以上の操作を、最短経路を求める毎に行い、利用したリンクのコストを更新して
Dijkstra
法 による最短経路探索を繰り返す。(図(4)) 密度と通過時間の関係
00.01 0.02 0.03 0.04 0.05 0.06
0 0.3 0.6 0.9 1.2 1.5 1.8 2.1 2.4 2.7 3
1m当たりの通過時間(分)
密度(人
⁄ 𝑚
2)4.3 乗り換え時の最短経路
4.3.1 乗り換えを行う歩行者が 0 人のとき(初期状態)
MicroAVS
という描画ソフトを用いて、用意した渋谷駅の構内図を可視化した。本研究にて用意したデータは東急電鉄渋谷駅の
B1F,B2F
の2
フロアであり、(図(5))は各通路の歩 行者の流量0
のときの画像であるまた、駅内の構造理解のために参考にした駅内構造は以下のとおりである。(図(6))
今回用意したデータでは、半蔵門線のホームへ至る階段が2ヶ所、東横線・副都心線へ至る階段が 3ヶ所存在する。(図(7))
図(5) 渋谷駅
B1F,B2F
図(6) 参考にした駅内構造
図(7) ホーム行階段の地点
4.3.2 半蔵門線から東急東横線へ一名乗り換えをした場合
まず、歩行者
0
人の状態から、Dijkstra法による最短経路を求めた結果が(図(8))である。東横線 により近い方の半蔵門線ホーム階段をスタート地点とし、半蔵門線に最も近い東横線ホーム階段をゴ ール地点に設定している。B2F
にある半蔵門線のホームへ至る階段前から連絡通路を通り、東横線ホーム行の階段前へ向かう 経路が赤色で示されている。図(8)
Dijkstra
法を一度用いて求めた最短距離4.3.2 1000 人分の乗り換えを行った場合
次に、半蔵門線から東横線へ
500
人、東横線から半蔵門線へ500
人の乗り換えを行ってみる。ホームへ至る階段が複数あるため、スタート地点とゴール地点の組み合わせが
6
通り存在する。今 回は目的地に近いスタート地点と出発地に近いゴール地点の人数を増やして乗り換えのシミュレーシ ョンを行う。両方向あわせて
1000
人の乗り換えを行ったシミュレーション結果を図(9)に示す。半蔵門線の階段 地点を赤点、東横線の階段地点を緑点で表示している。通路においては、歩行者0
人の通路は青色、数が増えるに従い色が変わっていき、最も多い通路は赤色で示されている。
表(1) スタート・ゴール地点と人数
図(9) シミュレーション結果
東横線(スタート) 半蔵門線(ゴール) 人数
48 88 25
57 88 25
70 88 50
48 80 100
57 80 100
70 80 200
半蔵門線(スタート) 東横線(ゴール) 人数
88 48 25
88 57 25
88 70 100
80 48 50
80 57 50
80 70 200
第5章 評価
5.1 乗り換えに掛かる所要時間の推移
同じ時間に、同じスタート・ゴール地点間で乗り換えを行った際の人数と所要時間の関係を図(10) に示す。最初の一人目は
150
秒で乗り換えを完了できたが、100人目の時点では約192
秒と40
秒以上 余計に必要になることが分かる。仮に500
人が同時に乗り換えを行うと実に390
秒かかることにな り、人数に比例して所要時間が増大していくことが明らかである。図(10) 0 100 200 300 400 500
1 25 49 73 97 121 145 169 193 217 241 265 289 313 337 361 385 409 433 457 481
人数と所要時間の推移
5.2 各通路の利用状況
4.3.2
のシミュレーションでの、各通路の歩行者数をリンク(通路)毎にまとめてグラフ化したものが図(11)である。
図(11) 各通路の歩行者数
両方向あわせて
1000
人の乗り換えを行った結果、600人以上が利用するような乗り換え客が密集し ている、図(9)では緑・黄・赤色で示されている通路が5
本存在した。特に図では赤色で示されている
73
番通路は東横線改札と半蔵門線改札を繋ぐ連絡通路であるため、1000
人全てが利用するという結果が得られた。よってこの2
路線間の乗り換えにおいての混雑状況を 解消するためには、別の連絡通路の設置・73番通路の通路幅の拡張などを行う必要があると考えられ る。また、73番以外の
4
つの通路は、開始地点・目的地点により必ず利用しなければならない通路であ った。これらの通路も混雑の原因となる可能性が高いため、同様に別の通路を設置や通路の拡張を行 う必要があると考えられる。0 200 400 600 800 1000 1200
1 11 21 31 41 51 61 71 81 91 101
通路利用者数一覧
第6章 おわりに
6.1 まとめ
駅地図を元に駅構内の改札・交差点・階段をノードデータとし、2点間を結ぶリンクとして通路を定 義することにより駅構内のネットワークを作成した。
また、Dijkstra法によってノード間の最短経路を求めることができるが、単純なノード間の距離だけ でなく通路の歩行者数も加味することで、混雑状況に応じて複数の経路が利用されるプログラムを作成 した。
これらを用いて多くの乗り換え客が引き起こす混雑現象と所要時間の増大を評価し、課題点と改善策 の考察をした。
6.2 今後の課題
・今回は渋谷駅の中でも半蔵門線と東横線・副都心線に限定してネットワークを構築したため
JR
各 路線との乗り換えを想定せず、実際とは結果が異なる可能性がある。JR 各路線の駅構内も合わせたネ ットワークを構築すればより現実に即した結果が得られるだろう。・今回の研究では同一時間にて複数歩行者の乗り換えを行ったが、実際には発着時間に合わせて一斉 に乗り換えが始まり時刻によって歩行者数の疎密は変化する。よって、それらの要素を加味してシミュ レーションを行うとこが、必要になると考えられる。
謝辞
本研究を進めるにあたり、多くのご指導、ご助言を頂きました中央大学理工学部情報工学科の田口 東教授、並びに山形浩一助教に心から深く感謝いたします。また、多くのご助言、ご協力を頂いた田 口研究室の皆様に心から深く感謝いたします。
参考文献