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東アジア地域の持続的発展のための空間情報インフラ整備について

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Academic year: 2021

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東アジア地域の持続的発展のための空間情報インフラ整備について

芮 京禄・阪田 知彦

East Asian Spatial Data Infrastructure Development for the Sustainable and Balanced Regional Growth

Kyungrock YE and Tomohiko SAKATA

Abstract: In recent years, the countries of East Asia Region have strengthened their interdependent relation. For the sustainable and balanced development in this region, it is necessary to coordinate with related countries, which can lead strengthening international competitiveness and correcting regional disparities. As the one example, this paper suggests establishing East Asia Spatial Data Infrastructure and experimentally produced several map on our own data set.

Keywords: 東アジア空間情報インフラ(East Asia Spatial Data Infrastructure : EASDI)

1. はじめに

近年、東アジア圏では経済的な相互依存関係が深 まり、東アジア共同体・連携という地域協力の構想 が議論されるようになっている。東アジアでの交 通・輸送ネットワーク、エネルギー・環境協力、情 報 技 術 の 協 力 な ど を 通 し て 国 際 イ ン フ ラ を 総 合 的・一体的に改善・整備するヴィジョンなども議論 され始めている。国際協力・連携の好例となるヨー ロッパでは欧州の持続的発展のために統合した空 間発展政策を策定しており、その政策を支援するた め標準化された統計データとマップデータをベー スにした「欧州空間情報インフラ(ESDI: European Spatial Data Infrastructure)」をすでに構築・

活用している。

本研究では、東アジアの持続的発展のために空間 発展政策分野において相互協力・連携するシステム の可能性に着目し、(1)先例となるヨーロッパでの 同分野での取組-ESDI構築-についてレビューする とともに、(2)東アジアの日中韓3ヶ国の統計データ、

マップデータを用いて試験的に空間情報マップを 作成することで、今後、東アジア空間情報インフラ

(EASDI: East Asia Spatial Data Infrastructure)

構築・活用のための課題、可能性について考察した。

2.ヨーロッパにおける空間発展政策と空間情報イ ンフラ(ESDI)整備の現状

EUでは、領域の均衡ある持続的発展のために域内 の空間発展の方向性(ESDP;欧州空間発展展望)を 空間計画関連大臣会議の合意にて策定している。こ のESDPの理念を達成し、地域間の発展の不均衡・格 差を是正すること、過度なインフラ整備競争を阻止 することが圏域の国際競争力を高めることであっ て、そのためには圏域の空間的発展バランスやヴィ ジョンを示す作業の重要性を認識するようになっ 京禄・阪田知彦:〒305-0804 茨城県つくば市旭1

国土技術政策総合研究所総合技術政策研究センター 建設経済研究室

Construction Economics Division, Research Center for Land and Construction Management, National Institute for Land and Infrastructure Management

1 Asahi Tsukuba, Ibaraki pref. 305-0804 Japan Tel. 029-864-7446 E-mail:[email protected]

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た。つまり、汎ヨーロッパレベルで国以下のより小 さな単位の地域情報を空間情報として示すことで、

地域発展の不均衡・格差状況を把握し、効果的な政 策を展開することができると判断した。この役割を 果たすため、地域空間情報マップを多用した政策研 究を行う多国間共同研究組織(ESPON)を設立してい る。ESPONはいままで国家単位で行っていた空間発 展政策に関連して、マップの統合、用語の統一、空 間指標の開発、地域区分のための方法論、長期的発 展のシナリオの開発、空間政策評価等を行っている。

つまり、ESPONの政策研究はESDI上に存在し、ESDI は欧州統計局のユーロスタット(Eurostat)と連携 したユーロジオグラフィックス(EuroGeographics)

にて構築されている。

1)統計情報

ユーロスタットは、EU 政府の公式統計局としてヨ ーロッパの各地域を比較可能な単位とするため、既 存の行政区域とは別に統計的な地域単位(基本的に 人口規模基準 NUTS;Nomenclature of territorial units for statistics)を段階別に設定し、この単 位に基づいた統計データの整備を行っている。2004 年時点での NUTS1 は 29 カ国、NUTS2 は 282 地域、

NUT3 は 1329 地域になっている。NUTS2 単位は主に

経済社会的分析のための単位として使われており、

NUTS3 は NUTS2 では読み切れない特色をつかむため に、地域分析のメイン単位として設定し、可能な限 りこの単位での統計データを整備している。NUT3 はさらに LAU1, LAU2(LAU;Local Administrative Units)という地方行政市区単位で細分され、各国、

地域の分析単位になっている。

2)地図情報

ユーロジオグラフィックス(EG)は、ヨーロッパ 46 ヶ国の 50 の機関、特に各国の「国家地図及び地 籍 局 (NMCAs; National Mapping and Cadastral Agencies)」を束ねた代表機関である。ヨーロッパ レベルの地図・サービスの提供、メンバー国間の共 有・協力促進、ヨーロッパ NMCAs の意見統合グルー プとして役割し、EU 政府(ESPON)の空間分析・政 策立案・評価等を助けることを目的としている。欧 州空間情報インフラ(ESDI)構築には、メンバー国間 での情報共有のために関連技術の統合・調整だけで なく、事務的な協力・連携作業が伴うのである。

表‐1 は、EG の主要事業を整理したものである。

ERMは、汎欧州ベクトル地形データをシームレスに 整備する作業であり、各国の地図及び地籍局のデー タと一致する。さらに EG はユーロスタットとの契 約により、2010 年までにユー ロスタットの統計データと完 全結合・継続管理することに なり、毎年のアップデートが 要求されている。すでにユー ロ ス タ ッ ト と 結 合 し て い る EBM とともに安定したデータ セットとしての地位を確立す ることになる。

EGM は、当初各国の地図デ ータが各国外・ヨーロッパ外 とシームレス(つなぎ目のな い)に繋がっていなかった状 況を改善するために最も初期 に取り組んだプロジェクトで ある。行政区域、水路、交通、

居住地、高度、地名という 6 表‐1 Eurogeographics の事業内容

Eurogeographics の事業内容 EuroRegionalMap

(ERM) 1:250 000

・31ヶ国のデータセット(ベクトル地形データベース)

・各国の地図及び地籍局の既存データと一致

・2010年にユーロスタットと結合 EuroGlobalMap

(EGM) 1:1 Million

32ヶ国のデータセット(2年に1度のアップデート)

・シームレスであり、ヨーロッパ各国の「国家地図及び地籍局」

や正式な統計データベースと結合しているデータ

・6のテーマ;行政区域、水路、交通、居住地、高度、地名 EuroBoundaryMap

(EBM) 1:100 000 1:1 000 000

36ヶ国のデータセット

・EU27ヶ国の統計ユニットNUTS-LAU2の統計データとリン ク す る 地 方 自 治 体 単 位 の デ ー タ セ ッ ト(ユ ニ ッ ト の 数 は 、 125,286に上る)

NUTS2単位は、このEBMから作成されている。

EuroRoadS

(ERS) ・シームレスな道路情報インフラの整備(ITS整備、輸送管理、

交通管理、道路メンテナンス、交通安全、周辺地域の環境計画)

・20043月開始、20068月完成

10の公共・民間セクター連合体が実施 EuroGeoNames

(EGN)

・多言語地域名データ(マイノリティ言語を含めたヨーロッパ で公認された言語での検索を可能にする)

その他、EuroSpec, RISE, Pricing & Licensing, EuroMapFinder-Metadata等のプ ロジェクトがある。

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つのテーマの 12 のレイヤーで構成される ISO19115 標準のメタデータであり、各国地図局が提供する公 式データと結合している利点がある。EGMは、百万 分の1スケールで 40 ヶ国まで範囲を広げており、

欧州レベルの地理情報への簡単なアクセスを可能 にしている。現在は地名についてヨーロッパの公式 言語で表示できるよう多言語対応環境整備が進め られている。このプロジェクトは、EU 加盟候補国 又は欧州以外の地域に対しては公共セクター間の 協力・連携の良いモデルとなると共に、技術的ノウ ハウを提供できるといえる。

EBM は、百万分の1と十万分の1のレベルで整 備・管理されていて、加盟国間で統一した規格や基 準で提供されるだけでなく、EU 内の行政区域単位 である SHN コードとのリンク、ユーロスタットが設 定した統計単位の NUTS コードともリンクしている。

EBMは、2001 年に合意された国家地図及び地籍局に よる「EBMプロジェクト協定」をベースに構築され ており、共同精神を基に全てのパートナーが積極的 に関与し、市場の要求に合わせた適切な製品を適切 な時期に適切なコストで完成し、提供し続けること を狙いとしている。

以上のプロジェクトの他、EG では表‐1 で示すよ うな ERS、EGN などのプロジェクトが実施されてお り、各国・分野別地図情報・空間情報が統合された 欧州空間情報インフラ(ESDI)の整備が進んでいる ことが把握できる。この欧州空間情報インフラをベ ースに作成したマップ、空間分析、政策研究の例は、

ESPON のホームページ内(http://www.espon.eu/)で 確認していただきたい。

3.東アジア空間情報インフラ整備の意義・課題 東アジアの日本、中国、韓国は隣接した地理的状 況もあり、互いに影響し経済的にも依存関係が深化 しているものの、公共部門において実質的な共同・

連携の取り組みはあまり見られない。ただ、この圏 域内で急激に増加している人、もの、情報の移動に 深く関わる空港、港湾などのインフラにおいては、

互いにハブとなるため過激な整備競争が行われて おり、域内の地域間競争激化は東アジア全体の競争

力を弱める可能性も高い。ヨーロッパ、北米に並ぶ 第 3 局としての東アジア圏域の持続的発展のため には、EU における ESDP のような統合した空間発展 政策が必要となり、将来には空間計画関連当局間の 協力・連携の可能性も高まっている。この協力・連 携の具体作業として、「東アジア空間情報インフラ

(EASDI)」の整備が考えられる。

本章では、この EASDI を構築する際に考えられる 手順を、入手可能な統計データ・マップデータによ り試験的に実施し、数枚の空間構造図を作成してい る。その課程で明らかになった課題や想定される効 果等について分析した。

1) 統計情報

日中韓各国の統計局で得られる地域情報を基に、

同レベルで比較できるデータベースを作成してみ た結果、以下のような課題があった。①国際的な基 準で収集される国レベルの基本的データは比較的 容易に得られるが、国以下の行政区域レベルになる と整備状況が大きく異なったり、データ収集の基 準・単位が異なったり、共通するデータが減るなど の問題、②国以下の行政区域レベル(県市区町村等)

の面積・人口規模が国によりかなり異質なものであ って、単純比較することが困難な問題、③空港、港 湾など国際的な移動量を調査したデータは標準化 の問題や公開度などに違いがあり、民間部門のデー タは高額で入手するしかないなどデータ入手環境 が異なる問題等があった。つまり、東アジア 3 ヶ国 では地域の人口や面積などの共通基準で比較可能 な‐ヨーロッパでの NUTS のような‐統計的ユニッ トの設定がないこと、さらに各国が国内の事情によ り必要なデータを整備しているため、これらを寄せ 集めるだけではデータベース統合の意味がなく、地 域別・分野別視点でデータベースの種類、収集基準、

表示単位、更新時期など詳細な内容を標準化する必 要がある。

2)地図情報

東アジアの日中韓 3 ヶ国を対象に試験的な空間 情報マップを作成するため、ベースとなるデータは 以降 2 つのデータ元を利用した。一つは、国連と連 携して地球規模のシームレス地図データ提供を推

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図-1一人当たり GDP 成長率

図-2 地域 GDP の平均指標でみた地域発展度合い 進中の国土地理院の「地球地図」であり、もう一つ は市販されている「ADC ワールドマップ」である。

地球地図は、各国の公的セクターが作成したデータ を共用する精神であり EG の取組と類似しているが、

まだ関係国の了解が得られず公開されていない例 も多数ある。このため基本的に ADC ワールドマップ

(百万分の1)を使用したが、このデータセットに はヨーロッパでの EGM と類似した行政区域、水路、

交通、居住地などのデータが含まれている。ただ、

使用に当たっての課題としては、①各国の市町村合 併などによる行政区域の変化が最新情報としてア ップデートされていない、②道路・鉄道などの情報 においては、路線のヒエラルキーや規格などの情報 が不在または標準化されていないため、同レベルで 比較できない、③地名などの表記においてはローマ

字の表記方法の微妙な違い、同一地名の存在などが あった。つまり、構成されるレイヤー情報が多国間 で標準化されたものではなく、時間軸の変化に沿っ た更新性が保障されてなく、他のコンテンツ(統計 データ)との対応性が考慮されていない等の問題が あった。

先述したような統計・地図データの整合性に関わ る課題はあったが、各国で得られた共通の地域デー タをいくつか収集し、任意により比較可能な統計的 地域設定をしたうえで、日中韓 3 ヶ国の空間構造図 を試験的に作成した結果が、図-1、図-2 である。

国以下の地域単位を比較可能な範囲に調整するこ とで、東アジア圏域で見た地域の発展構造を概観で きる効果があると言える。このようなマップを総合 政策的・部門別政策的視点で段階的に作成すること は汎アジア空間政策、各国の地域政策、分 野別政策の立案・決定に相当な役割をする 可能性がある。

5.まとめ

東アジアレベルでの空間構造分析は、① 東アジアの空間発展のバランスを示す視覚 的指標となり、②後進地域への選択的投 資・支援などを可能にする重要な評価指標 になり、③アジア人としての一体感を生成 する教育材料にもなると考えられる。

本研究ではその可能性を数枚のマップを 作成する過程で探ってみたが、以下のよう な課題を指摘することができた。①EASDI 構 築の基礎条件として国レベルから地域政府 レベルに至る共通のシームレスなマップを 共有・統合すること(標準化、更新性、対 応性確保)、②人口、面積等を勘案した比較 可能な統計的地域ユニットの設定、統計デ ータの収集・定期的なアップダート、④グ ローバル地図・統計情報としての公開、マ ップとの結合があげられる。これらの実現 のためにはヨーロッパの事例を参考に各国 関係機関・研究者間の連携・協力、情報の 共有などが必要不可欠であろう。

参照

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