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要約 過去の五輪開催では 開催国のクルマ社会の発展を持続的に支えるインフラ 環境の整備や次世代モビリティ社会像のデモンストレーションが行われてきた TOKYO2020においては 今後のマクロトレンドである クルマと社会インフラ システムの融合 クルマの知能化 を見据えて クルマを軸にした東京の時空間

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Academic year: 2021

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A.T. Kearney Agenda Vol.1

TOKYO

2020

で変わる

クルマ社会

2020

年の東京五輪に向けて、クルマ社会も様々な議論が沸い

ている。過去の五輪開催が新しいモビリティ社会像のデモンスト

レーションや持続発展性あるインフラ・環境整備に寄与したよう

に、

TOKYO2020

」を次世代クルマ社会発展の契機としたい。

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要約

過去の五輪開催では、開催国のクルマ社会の発展を持続的に支えるインフラ・環境の整備や次世代モビリテ ィ社会像のデモンストレーションが行われてきた。TOKYO2020においては、今後のマクロトレンドである「ク ルマと社会インフラ・システムの融合」「クルマの知能化」を見据えて「クルマを軸にした東京の時空間情報イン フラの構築」をハード面およびソフト面から目指すべきと考える。また、将来的に都市化・高齢化が進む世界 市場を見据えた上で、東京の特徴である公共交通機関・緊急車両網の強みを軸に「21世紀の都市ライフラ インの実現」を行い、五輪を訪れる延べ数百万人の人に先進的ソリューションを提示するべきと考える。

はじめに

2020年に東京で夏季五輪が開催されることが決まった。多くの業界でTOKYO2020をマイルストーン として定め、そこに向けたプロジェクトを推進している。自動車産業でも、日本自動車工業会の豊田会 長が、2013年12月の同会定例記者会見で「2020年オリンピック・パラリンピックの東京開催が決ま り、世界に向けて、日本や東京の素晴らしさを発信していく絶 好の 機 会を与えてもらった。7年後の『納 期』に向けて、何をどのように準備していけばよいのか。自分たちの『ぶれない軸』は何かを常に意識し ながら、未来のモビリティ社会を作っていきたい」と発言した。自動車メーカー各社も、燃料電池車、電 気/PHVバス、自動走行車、次世代交通システムなどをキーワードとしたプロジェクトの立ち上げを発表 するなど、様々な動きが出てきた。こうした背景を踏まえ、本稿では「TOKYO2020で変わるクルマ社 会」というテーマで、2020年に向けて社会や企業は何を目指し、どのように準備すべきかを検討する。

五輪がクルマ社会に与える影響

まず 過去の五輪開催において、当時のクルマ社会がどのようなインパクトを受けたのかを振り返って みると、大きく二つあることがわかった。 ひとつは、開催国のクルマ社会の持続的発展を支える、インフラ・環境の整備が一気に進むことであ る。1964年に開催された東京五輪では、首都高速道路、青山通り、環状7号線などが整備・開通し、戦後 東京の人口増大やモータリゼーションへの対応がなされ、その後の高度経済成長時代を支える交通シ ステムができた。特に、首都高速道路はその後も保全と拡張を繰り返し、現在までに総延長約300 キロの都市内高速道路として、大都市東京の発展に大きく寄与してきた。また、記憶に新しい2008年 の北京五輪に際しては、北京市交通情報センターが、北京市内の長期的な交通渋滞対策のための 環境整備として、「フローティングカーシステム」を試験導入した。これは、市内を走るタクシーに備え付 けたGPSで、道路の混雑状況や天候などの交通データをリアルタイムで収集・分析し、目的地までの 最短ルートを運転手に知らせるシステムである。VICS(Vehicle Information and Communication System)のように多額のインフラ投資が伴わないことから、新興国都市部など、成長スピードの早さ にインフラ整備が追いつかない地域でのソリューションとして期待される。 もうひとつの五輪インパクトは、次世代モビリティ社会や技術のデモンストレーションが、その後の新市 場形成のきっかけになることである。2010年のバンクーバー五輪では、自動車メーカーの支援により、 大会関係者の移動用に燃料電池車が提供された。また2012年のロンドン五輪では、オリンピック公式 車両の進行管理や信号制御のための交通マネジメントシステムが試験導入されるなど、成熟した先進 国都市における交通システムの実証が行われた。いずれの技術も、現時点では普及段階には至ってい ないものの、その時代の最先端技術を導入し、一歩先を見据えた次世代モビリティ社会のビジョンを提 示することが、五輪開催のもたらすメリットといえるだろう。

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こうした観点から、①日本のクルマ社会の持続的発展を支えるインフラ・環境整備の観点、および②世 界に先駆けた先進的クルマ市場のデモンストレーションおよび市場形成という観点、の双方から社会と 企業は何を目指していくべきかを考えていきたい。 クルマ社会の持続的発展を支えるインフラ・環境整備:   【提言1:クルマを軸にした東京の時空間情報インフラの構築】 TOKYO2020に向けて、都市部の道路インフラの保全や更新の議論がなされているが、今後数十年の クルマ社会の発展を考えるのであれば、「クルマと社会インフラ・システムとの融合」をいかに進めていく かが最大課題である。従来、クルマ社会の発展には、人々の所得水準・生活様式や道路・交通インフラ の整備が大きな影響を与えてきたが、今後はこうした要素に加えIT・通信・エネルギーなどの社会インフ ラ・システムとの連携も加わり、都市や街といった単位で総合的な生態系として進化していく(図1)。 特に、 ITを活用したクルマと社会システムの融合は、当初のインフォテイメント分野(クルマに「情報(infor-mation)」と「娯楽(Entertainment)」を提供する機能)から、より広範囲なConnected carへと昇華さ れた。欧州では2015年から車両緊急通報システムのe-callが搭載義務化され、米国ではNHTSA(国家道 路交通安全局)の下、V2V通信機能(Vehicle-to-Vehicle:車両間通信機能)の搭載義務化の議論が行 われるなど、“繋がる”ためのインフラ整備が急ピッチで進んできている。また“繋がる”環境は、 M2M(Machine-to-Machine)や IoT(Internet of Things)といったトレンドと共に、自動車以外の様々な機械・機器で 同時進展しつつある。更に近年は、地上すら飛び越え、宇宙空間に打ち上げた複数の超小型衛星コン ステレーション(複数の衛星が群として連携するシステム)で地上の高精度な画像を提供できるようにな り、これをクルマ社会に活用する議論も行われるなど、社会システムとの連携は多層的に進みつつある。 ビッグデータ V1G/V2G (グリッド連携) 燃料電池車 (水素社会) モビリティサービス 自動走行システム 次世代HMI ドライバー状況検知 インフォテイメント V2H/V2V 運転支援システム 電子制御 環境対応車 内燃機関自動車 社会インフラ・ システムとの 融合 周辺施設・機器 との連携 自動車単体 内燃機関・機械 電気・電子化 知能化(機械情報・学習) 自動車としての機能価値追求 イ ン フ ラ ・シ ス テ ム と の 連 携

2020年頃までに市場投入がなされて、 2030年以降に本格的に展開 図1 自動車産業のマクロトレンド 出所:A.T.カーニー分析

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そして“繋がる”環境の整備と共に、論点は「データ活用・統合による付加価値創造」へとシフトしてきて いる。これまでは過去分析が中心であったが、リアルタイム処理や、統計に基づく未来予測など時間軸を 超えた検討がされており、例えば、地図情報、渋滞情報、事故情報の提供や、それを活用して渋滞予測、事 故防止、緊急通報の高度化を目指すなどの取り組みがある。 こうした環境変化と共に、「クルマの知能化」も今後のマクロトレンドである。過去20年の間にクルマの電動 化・電子化が急激に進み、各種電子制御や運転支援システムなどが実用化されることで、安全面と環境 面で大きく進化してきた。今後は社会インフラ・システムとの融合も見越して、クルマの知能化(外部環境認 知・判断・制御の更なる高度化)が期待される。このためには、既存のエレクトロニクスやITに加えて、高度 なソフトウェア技術や機械学習分野での技術進化と自動車産業への適用が重要になるが、昨今話題の 自動運転システムは正にこの分野であり、自動車メーカー以外にも、ContinentalやBoschなどのサプラ イヤー、GoogleやNVIDIAなどのIT企業が取り組んでいる。 このように、20〜30年先を見据えた社会インフラ・システムとの融合やクルマの知能化にむけて、TOKYO 2020を契機として包括的に取り組んでいくことは、社会的便益が高いと考えられる。そこで、世界に先 駆けて「クルマを軸にした東京の時空間情報インフラの構築」を提言したい。 具体的には、第一段として標準化された車載モジュールなどでクルマのセンシング機能や通信機能を高 度化。第二段で、個々のクルマを自律協調型のネットワークとして統合し、更に補完する形で周辺施設・ 機器と連携。第三段で、例えば衛星のような都市空間をマクロに俯瞰し得るシステムを構築。最終的に この三つを時空間情報地図のような形に統合し、東京のクルマ社会を支えるプラットフォームを構築すべ きである。クルマは重厚長大なインフラと異なり買い替えや保守・点検サイクル毎の技術アップデートが可 能で、将来的にクルマの知能化と車両制御の高度化への発展可能性も描ける。併せて、セキュリティも 重要なテーマで、ネットワークプロトコル、車載ネットワークへのアクセス、高度情報処理を行うECUやサ ーバー、ハッキング防止など、総合的なセキュリティアーキテクチャ整備が肝要である。 世界に先駆けた先進的クルマ市場形成:   【提言2 :21世紀都市のライフラインとしての公共交通の実現】 2020年、日本のクルマ市場の位置づけはどうなっているだろうか。世界の自動車販売台数に占める日 本市場のシェアは、1995年の14%から2012年には6%台まで低下している(A.T. カーニー分析)ことを 踏まえると、成り行きで考えれば、長期的な人口減少の影響もあり、更に縮小する懸念がある(P.5、図 2)。よって、日本市場でしか受け入れられないような先進的クルマ市場のデモンストレーションを行った としても、インパクトは限定的だろう。2020年以降の世界のクルマ社会の在り方や課題を見据えた上 で、TOKYO2020で次世代ソリューションを提示していくべきである。 では、2020年の世界のクルマ社会はどう発展しているのか。まず、新興国を中心に可処分所得とミド ルクラスが増大して力強く市場が拡大し、環境対応のためのパワートレインが多様化するといった 当面のトレンドの延長に加えて、都市化・過疎化・高齢化といったメガトレンドがより顕著に現れて くるだろう。こうしたメガトレンドの多くは2020年以降も続くと考えられ、高齢化であれば事故の増加 や保有台数の減少、都市化であれば渋滞や大気汚染の増加、過疎化であれば公共交通機関の衰退と いった負の側面をいかに解消するか、課題解決策が求められている。 こうした社会的課題に関して、東京圏は先進都市といえる。特に都市化について、東京圏は3,000万人 以上が既に住む過密度都市という特徴を持つ。世界に500万人以上のメガシティは多数あるが、人口密 度では世界トップクラスである。そして統計学的に、人口密度と交通システムには相関が高く、人口密度の 高い都市は自家用車よりも公共交通機関による移動分担率が高いことが証明されている。実際、東京に は50,000台を超えるタクシーを始め、都市バスや電車など多種多様な公共交通網が存在している。

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そしてもう一つの特徴が、高齢化・多様化の進む大規模人口社会を支えるための緊急車両網である。東 京だけでも数千台の警察車両、救急車、消防車が日夜社会を支えている。こうした公共交通網や緊急 車両網の強さを活かし、21世紀の世界的社会課題を解決するソリューションを作り上げ、TOKYO2020 で示すことは意義あるデモンストレーションとなるだろう。過去の五輪開催では大会関係者に対象を絞 ったデモンストレーションが多かったが、公共交通網を軸にした取り組みは、五輪に訪れる延べ数百万 人の人々に次世代モビリティ社会を提示できるという大きなメリットもある。 具体的には、全てのタクシーを環境対応車に替え、前述の時空間情報インフラを活用して様々な予測 精度を高めれば、社会的便益が飛躍的に向上する。需要予測に基づいて流しタクシーの台数を調整 すれば渋滞を緩和でき、渋滞予測に応じたルートの最適化は環境負荷を低減、事故予測と運転支援 技術は事故を低減できるなど、都市部を支えるライフラインとしての更なる進化が実現できる。また緊 急車両については、緊急車両同士あるいは周辺一般車両や病院などの施設とオンデマンドにシステ ム連携ができることで、緊急時の即応対応率が高まる可能性がある。特に救急車は、近年現場到着時 間や病院収容時間が増加傾向にある。救命率を高めるには搬送時間短縮が極めて重要なので、こうし た取り組みは有益だろう。何より、こうした21世紀の都市ライフラインとしての公共交通の高度化は、将 来的に都市化・高齢化が進む世界市場においても先進的なソリューションになり得ると考える。

TOKYO2020

に向けて

以上のように、TOKYO2020に向けて社会や企業は何を目指していくべきかを議論してきたが、実現する には、企業個別の努力と共に、自動車産業としての努力、更には周辺産業や公的機関も含めて社会全体 が一丸となり、ひとつの生態系を作っていくための取り組みが求められる。そのためにもTOKYO2020を 目指した次世代クルマ社会のあり方を検討し、陣頭指揮をとっていくための機関や場を設けると共に、個 別具体的なイニシアチブを立ち上げていくことが重要ではないかと考える。 図2 世界自動車販売台数に占める日本市場の割合 自動車販売割合推移   (万台) 出所:FOURIN“世界自動車メーカー年鑑”、各社IR資料よりA.T.カーニー作成 1995 14.0% 86.0% 4,914 2000 10.5% 89.5% 5,667 2004 9.3% 90.7% 6,271 2008 7.5% 92.5% 6,809 2012 6.6% 93.4% 8,148 その他 日本

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Author Profile

Masayasu Ishida 石田 真康 (A.T. カーニー マネージャー) Masayasu.Ishida@atkearney.com ハイテク、自動車、通信業界を中心に、事業戦略、R&D戦略、グローバル戦略、 中計経営計画策定などを支援。共著に『電気自動車が革新する企業戦略』(日 経BP社 、2009年)。

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