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次世代電子政府研究会

次世代電子政府研究会

次世代電子政府研究会

次世代電子政府研究会

‐報告書‐

‐報告書‐

‐報告書‐

‐報告書‐

平成

平成

平成

平成 14 年

年 3 月

月 22 日

㈱NTT データ

データ

データ

データ

システム科学研究所

システム科学研究所

システム科学研究所

システム科学研究所

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はじめに 我が国では、高度情報通信ネットワーク社会の形成を目的として IT 基本法が制定され、 それに基づく国家戦略として「e-Japan 戦略」が政府主導で策定されている。このような動 きは、近年のインターネットに代表される情報通信の高度化と普及に伴う、社会・経済の大 規模な構造変化に対応するものであるが、e-Japan 戦略によってもたらされる社会基盤の変 革は、民間事業基盤の革新・強化、行政プロセスの効率化・透明化等にとどまるものではな い。殊に、いわゆる電子政府との関わりから見たときには、市民が行政サービスの受け手と いう立場から、国、自治体等による公的プロセスへ積極的に参加する主体としての立場を獲 得する契機を生みだしている。このような動きは e-democracy、サイバー民主主義あるいは 電子民主主義といった言葉が表現しようとしているものである。 (株)NTT データは電子政府の行く末に、上記のような含意があることに鑑みて、情報 社会における民主主義実現のための電子政府について議論を進めるため、「次世代電子政府 研究会(座長:須藤修 東京大学社会情報研究所教授)」を設置した。また、併せて広く有 識者の意見を集めるべく、諸分野の専門家からなる「次世代電子政府研究会外部パネル」を 設けてコメントを募集した。本報告書は次世代の電子政府のあるべき姿について、研究会の 議論を通じて得られた成果をとりまとめたものである。 平成14年3月22日 (株)NTT データ システム科学研究所

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∼目次∼ 「次世代電子政府研究会」委員名簿...1 次世代電子政府外部パネルリスト...2 研究会開催スケジュール ...3

次世代電子政府研究会報告

...6 1. e-government から e-democracy へ...8 2. 何故 e-democracy か? ...9 (1) e-democracy を論ずる背景 ...9 1) 技術...9 2) 民主主義にかかわる制度的基盤の変革...10 ① 行政手続法(1993 年)...10 ② 地方分権一括法(1999 年) ...11 ③ 情報公開法(1999 年)...11 3) 統治文化と自治文化 ...12 (2) e-democracy 論の前提となる社会観と国家概念のゆらぎ...13 1) 市民社会への指向 ...13 2) 国家概念のゆらぎと国家の役割の変化...14 3) 公領域の再生と官・民の役割分担...15 3. 市民層の変革...16 (1) 民主主義モデルと e-citizenery ...16

1) Thin democracy/Strong democracy/Quick democracy ...16

2) 知らしめられた能動的な市民層の重要性...17 (2) 電子市民(e-citizenery) ...18 1) e-citizen ~ICT に媒介・強化された個としての市民意識の確立...18 2) e-citizenry ∼ ICT を活用した市民の組織的活動の活性化...18 (3) デジタルデバイド...19 1) リアルスペースにおける民主主義制度の補完、補強ツールとしての e-democacy ...19

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3) 非制度的な取り組みを通じた e-democracy の実現 ...22 (2) 民主主義の主体間の関わりと e-democracy...23 1) 市民対政治家 ...23 2) 市民対行政 ...24 3) 市民対マスメディア ...25 4) 市民相互間 ...25 5. 提言 ...27 (1) 市民層の革新・強化...28 1) 電子政府を通じた情報公開と説明責任の徹底...28 ① 自動開示等による高度の公開性の確保 ...28 ② 情報編集機能の強化...28 ③ 市民の情報理解と感得の誘発 ...29 2) 市民学習としての e-learning ∼ 市民の情報受容能力の強化・向上 ...29 ① 若年層の ICT 教育の充実と電子政府を通じた支援 ...29 ② ICT を活用した市民学習...30 3) 市民社会型組織の育成・強化 ∼ 市民による提案・問題解決能力の強化...31 (2) ICT による参加と合意形成の促進...31

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「次世代電子政府研究会」委員名簿 座長 須藤 修 東京大学社会情報研究所 教授 委員 磯部 哲 関東学園大学法学部 専任講師 委員 岩崎正洋 杏林大学社会科学部 助教授 委員 遠藤 薫 東京工業大学社会理工学研究科価値システム専攻 助教授 委員 木村忠正 早稲田大学理工学部 助教授 委員 佐藤哲也 東京工業大学大学院社会工学専攻 助手 委員 高橋 滋 一橋大学法学部 教授 委員 富山慶典 群馬大学社会情報学部社会情報学科 教授 委員 井上友二 ㈱NTT データ 開発本部長 委員 村松充雄 ㈱NTT データ 公共システム事業本部 社会情報システム事業部長 委員 川本正章 ㈱NTT データ 公共地域ビジネス事業本部 行政システム事業部長 委員 勝川高志 ㈱NTT データ 開発本部 システム科学研究所 副所長 計 12 名 (事務局)㈱NTT データ 開発本部システム科学研究所、㈱テクノリサーチ研究所

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次世代電子政府外部パネルリスト <研究者> 石黒一憲 東京大学法学部・教授 稲葉清毅 群馬大学社会情報学部社会情報学部 政策・行政情報講座・教授 河西宏之 東京工科大学工学部情報通信工学科・教授 木暮健太郎 山梨大学教育人間科学部・非常勤講師 佐川泰弘 茨城大学人文学部社会科学科法学・政治学科公共政策論・助教授 高瀬淳一 名古屋外国語大学国際経営学科・助教授 早稲田大学商学部・講師 出川 淳 小樽商科大学商学部社会情報学科 組織と情報講座・教授 立山紘毅 山口大学経済学部経済法学科・教授 長坂俊成 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科・助教授 干川剛史 大妻女子大学人間関係学部・助教授 <シンクタンク> 梅本嗣 ㈱博報堂第 3 広告カンパニー第 13 営業局ソーシャルマーケティング部・プランニングディレクター 佐藤佳弘 情報文化総合研究所・所長 土屋大洋 グローコム・主任研究員 本庄美佳 21世紀政策研究所・主任研究員 牟田昌平 財)日本国際交流センター・シニアプログラム・オフィサー <市民団体> 上原裕之 シックハウスを考える会・代表 <専門職(行政書士・弁護士など)> 岡村久道 岡村法律事務所 弁護士 近畿大学・関西大学兼任講師 牟田学 行政書士 <その他> 佐藤修 ㈱コンセプトワークショップ・代表取締役 杉原良孝 ザ・フェデラリスト主宰 高木寛 jTRUSTc,inc 代表取締役 ネットワークコンサルタント・ジャーナリスト <匿名> 行政関係者等 3名

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研究会開催スケジュール 第1回研究会 日時:平成 13 年 9 月 28 日(金)18:00 ∼19:30 場所:豊洲センタービル 10F プレゼンテーションルーム 内容:下記講演及びディスカッション ・ 木村委員基調講演「電子政府と民主主義に関する有識者調査および一般調査の結果報 告」 ・ 研究会でとりあげるべき論点に関するディスカッション 第2回研究会 日時:平成 13 年 11 月 2 日(金)18:00∼20:00 場所:豊洲センタービル 36F コンファレンスルーム A 内容:下記講演及びディスカッション ・ 岩崎委員講演「日本の e-democracy が目指す民主主義モデル」 ・ 遠藤委員講演「電子ネットワークを媒介とした社会構造変容とソーシャル・インタフェース」 第3回研究会 日時・場所:平成 13 年 12 月 10 日(月)18:00 ∼20:30 場所:霞ヶ関ビル 17F ((株)NTT データオフィス) 内容:下記報告及びディスカッション ・ 横江 VOTE ジャパン社長講演「目指せ!参加型民主主義」 ・ 富山委員講演「e- democracy における決定と討議について―意思決定科学の立場から の問題提起―」 第4回研究会 日時・場所:平成 14 年 1 月 23 日(水)18:00∼20:30 場所:霞ヶ関ビル 17F ((株)NTT データオフィス)

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第5回研究会 日時:平成 14 年 2 月 22 日(金) 18:00∼20:30 場所:霞ヶ関ビル 17F ((株)NTT データオフィス) 内容:下記講演及びディスカッション ・ 東京都総務局 IT 推進室長木谷氏講演「東京都の IT 戦略と地域情報化の課題」 第6回研究会 日時:平成 14 年 3 月 20 日(水) 18:00∼19:30 場所:豊洲センタービル 10F プレゼンテーションルーム 内容:下記テーマにつきディスカッション ・ 研究会最終とりまとめ案

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1.e-government から e-democracy へ 我が国では、高度情報通信ネットワーク社会の形成を目的として IT 基本法が制定され、 それにもとづく国家戦略として「e-Japan 戦略」が政府主導で策定されている。このような 動きは、近年のインターネットに代表される情報通信の高度化と普及に伴う、社会・経済の 大規模な構造変化に対応するものである。そして、e-Japan 戦略によってもたらされる社会 基盤の変革は、民間事業基盤の革新・強化、行政プロセスの効率化・透明化等にとどまるも のではない1。 e-Japan 戦略における電子政府は、主として IT を活用した行政事務の効率化、行政サービ スの向上に焦点があてられているが、行政サービスというアウトプットは、市民側からのイ ンプットの向上にもとづいてこそ真に市民にとって役立つものとなる。 即ち、市民ニーズを適切かつ効率的に行政に伝達できるしくみを強化していく必要がある。 また、現在の行政現場が抱える課題の多くは複合的であり、多分野の知識と経験を必要と する。限られた行政内部の人材だけで解決策を模索するよりは、市民の中に埋もれた各分野 のエキスパートからのアイデアを効率的に採り入れてゆく方が、はるかに目的にかなう。 このように、市民側からのニーズやアイデアに関する情報を ICT2を活用して効率的に行 政システムに組み込んでいく、インプットの充実という視点は、現在の電子政府に欠けてお り、かつ次の電子政府が包含すべき方向性であろう。 一方、我が国は 90 年代に入って、産業経済、社会文化、政治行政の社会システム全体が 構造的変革に迫られており、インターネットに代表される ICT はその触媒的役割を果たして いる。電子政府は、その社会構造変化の潮流の中で、意義づけられ、機能設計がなされなけ ればならない。殊に、近年、政治・行政分野での IT 革命を表現する言葉として e-democracy という言葉が使われるようになってきた。言葉の意味する内容については、未だ正確な輪郭 が描けているとは言い難いが、その含意は、ICT を活用して、より強く市民の声を公共的分 野に反映される社会システムを構築してゆこうという点にあると思われる。そうであるなら ば、市民側のインプットを強化した次世代の電子政府論は、まさにこの e-democracy という 言葉に込められた期待に応えるものとして位置づけられるべきであろう。 即ち、電子政府というツールは、市民が行政サービスの受け手という立場から、国、自治 体等による公的プロセスへ積極的に参加する主体としての立場を獲得する機会をも生みだ すものとして捉えるべきである。 1 現在の行政事務の BPR(業務革新)自体もその重要性はいうまでもなく、解決すべき課題も山積し ているが、その点は本研究会の任務ではない。 2 IT

が広く情報技術一般を指す言葉であるの対して、ICT(Information and Communication Technology) は Communication への情報技術の活用に焦点を当てた言葉として用いられる。本報告書では「IT 革

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ICTにより我が国の民主主義プロセスがどのようにバージョン・アップされうるのか、ま た、そのバージョン・アップされる民主主義プロセスの中で、電子政府の輪郭はどう描かれ るべきか。これが、本研究会の問題意識である。 2.何故 e-democracy か? (1)e-democracy を論ずる背景 情報通信技術の発展を基盤とした民主主義のバージョン・アップを、我が国において現実 に語るべき時期が到来しているとの認識は、技術、制度、文化の諸側面から正当化されるで あろう。 1)技術 情報通信技術の高度化による民主主義の変革については、古くは 1960 年代からその可能 性が指摘されてきたが、現在、e-democracy を論ずる必然性は、なにより市民生活のインフ ラ的なツールの一つとしてインターネットが定着しつつあるという事実にある。我が国で、 インターネットが社会的な普及曲線に乗ったのは平成 9 年頃からであるが、わずか 4 年ほど で、利用者数 4,708 万人、世帯普及率で 34.0%(平成 12 年度末推計値)に達し、平成 17 年 には利用者数で 8,720 万人と更に倍増すると予測されている。 図表 1 インターネットの普及状況 1,155 1,694 2,706 4,708 8,720 0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,000 8,000 9,000 10,000 8(1996) 9(1997) 10(1998) 11(1999) 12(2000) 17(2005) 万人 0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0 90.0 100.0 % 利用者数 企業普及率(300人以上) 事業所普及率 世帯普及率

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即ち、極めて近い将来、有権者の過半が何らかの形でインターネットを利用して、電子メ ールを送受信し、ホームページから情報を得ることが日常生活シーンの一つとなる。また、 平成 12 年はブロードバンド時代の幕開けの年と呼ばれるように、ADSL、CATV、FTTH 等 の高速大容量の通信回線の普及が始まり、定額料金制と相まって常時接続の環境で、音声・ 動画がインターネットのコンテンツの一つとして気軽に視聴できるようになりつつある。 2)民主主義にかかわる制度的基盤の変革 ICTにより民主主義プロセスをバージョン・アップするといっても、今後、日本が目指す べき民主主義の具体像については、価値観が多様化した現在、必ずしも合意があるとは言い 難い。しかし、政治・行政領域において、市民の意見をより反映すべしという声が強まって いることは否定できない。特に市民と関わりにおいて、90 年代に国レベルで次の一連の行 政改革にかかわる制度が用意されたことは、e-democracy の姿を考える上で、極めて重要で ある。 ①行政手続法(1993 年) 戦後、比較的早くからその必要性が認識されながら、永らく立法化されずいた行政手続法 がようやく 1993 年に制定された。行政手続法は、「処分、行政指導、届出に関する手続に関 し、共通する事項を定めることによって、行政運営における公正の確保と透明性の向上」を 図るものであり、行政の諸活動に関し、従来の行政訴訟等による事後的救済から、あらかじ め事前手続の段階で抑止を図るという意味で、その意義は極めて大きい。また、我が国の法 律において、初めて「透明性」という制度理念が掲げられ、明文化されたことは、その後の 情報公開法制定等への重要な布石となった。 一方、行政手続法が前提とするのは、行政対民間事業者の二面関係に止まり、第三者とし ての一般市民を含む三面関係への考慮は十分でなく、市民の行政への参加機能は担保されて いない。特に、行政活動の上流にあたる、行政立法、行政計画手続は行政手続法の対象外と され、行政プロセスへの制度的な市民の声の反映回路は未整備なまま残されている。 しかし、国レベルで、行政立法手続面でパブリック・コメント手続(中央省庁等改革基本 法、平成 10 年成立)、行政計画手続面では環境アセスメントにおける市民参加の手続(環境 影響評価法、平成 9 年成立)が整備され、また、一部の地方公共団体では、住民参加手続を 備えた条例制定の機運も高まりつつある。

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図表 2 地方公共団体におけるパブリックコメント制度の取組状況(平成 12 年 3 月 31 日現在) 0% 10% 2 0% 30% 4 0% 50% 6 0% 70% 8 0% 90% 10 0% 都道府県 政令市 市区町村(政令市除く) 制定済 類似手続き の定め有り 制定 予定 制定に向 け検討中 是非につい て検討中 制定予 定無し その 他 出所)総務省、「地方公共団体における行政改革の取組状況」(平成 13 年8月1日) ②地方分権一括法(1999 年) 地方分権も、我が国の政治・行政分野における最も重要な課題の一つであり、その推進を 図るため、1999 年にいわゆる地方分権一括法が制定されている。我が国のガバナンスを分 権型のシステムに転換することを目的としており、明治以来の中央集権的な行政システムの 根幹にあった機関委任事務制度の撤廃が図られた。地方分権一括法自体は、我が国の行政に おける権限配分に関するものであり、いわゆる団体自治の確立を目指している。しかし、地 方公共団体毎に住民ニーズを反映した個性ある地方自治を創造できなければ、団体自治の意 義も薄れる。地方分権は「住民自治」、即ち、ローカルなレベルでの民主主義の活性化と表 裏一体であり、地方議会の変革、地方自治体と市民の関係の再構築を要請する。 ③情報公開法(1999 年) 2001 年より施行された情報公開法は、行政改革の切り札とされ、市民と行政の関係再構 築において、極めて重要な意義を持っている3。 一般的に情報公開には情報提供、権利・義務関係の開示請求権、義務的公表の3つがある が、情報公開法は権利・義務関係の開示請求権を中心に構成されている。しかし、実質的に その影響は、情報提供、義務的公表の全てに及ぶものである。特に、情報公開法の制度理念 として、公開性(Openness)が掲げられ、何人も、理由を問わず開示請求が可能とされる結

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果、情報提供面においても、行政は自己に都合の良い情報に留めるような態度では、後に市 民との摩擦を引き起こすことが当然に予想されるため、情報提供面でも質的転換が生じつつ あ る。 行政は 公開 性の充 実を 通じて 、情 報公開 法の もう一 つの 理念で ある 説明責 任 (accountability)を十分に果たしていく必要に迫られている。 また、情報公開法は「情報を共有した市民を参加させ、市民との討論を通じて、合意を形 成していく行政過程への転換を促すもの」であり、「行政にとっても情報収集の経路を多様 化することにつながり、合理的政策形成の可能性を高める契機」でもある。 電子政府は、このような情報公開法の意義を実質化するツールとしての役割があることは、 あらためて指摘する必要がある。 ※個人情報保護法案 IT政策との関係では、2002 年 3 月現在衆議院審議中となっている「個人情報の保護 に関する法律案」が重要である。個人情報保護は社会の情報化に伴い、個人のプライバ シー保護に関する社会的関心が高まったことことから、1980 年代よりその保護法制の 議論が始まり、行政機関の保有する個人情報については、1988 年に「行政機関の保有 する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律」が制定された。審議中の法案 は、個人情報保護に関する基本法であると同時に、民間部門の一般法として位置づけら れる。情報化社会の法的なインフラとも理解される。 3)統治文化と自治文化 1993 年のバブル経済の崩壊は、単に経済の停滞にとどまらず、それまで我が国に内在し ていた政治的・社会的問題点を次々と顕在化させ、様々な「ルール変更」を迫っている。殊 に「知らしむべからず、寄らしむべし」との古くからの統治者の心得は、新世紀を迎えて 2001 年から施行された情報公開法に象徴されるように、根本的な見直しが図られようとし ている。即ち新しいルールの一つは「寄らしむべからず、知らしむべし」、即ち自己責任原 則であろう。 新しいルールは、旧来型の一部の者が情報を独占した上で、実質的決定を密室で行い、人 的な根回しを経て、職能組織の拘束力によって実施するというスタイルに、見直しを求めて いる。このような動きは、90 年代後半に普及が始まったインターネットというツールを得 て、現状破壊的なパワーシフトを生み出している。 しかし、制度改革や技術の進歩に比べ、統治文化的な変化の歩みは遅い。競争にさらされ、 変革か市場からの退出かの二者択一を迫られている民間企業では、否応もなく企業文化の変 化を受け入れざるを得ず、終身雇用・年功序列制の放棄、中間層の圧縮とリストラ、ディス クロージャーを断行し、経営陣、社員の意識改革が進んでいる。一方、政治・行政セクター

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に目を向ければ、強制力を欠く故か、未だ情報隠蔽、責任回避の姿勢が見え隠れし、旧来型 の統治文化からの脱却はその兆しが見えているにすぎない。このような民間セクターと公的 セクターのギャップが創造無き破壊の社会的な原動力の一つとなっている。政治・行政不信 というネガティブな社会意識に根ざす改革の力はあるべき姿への展望を欠いている。 また、新たに用意された諸制度に対応する統治文化が未成熟なままに運用される結果、情 報公開、市民参加等が、市民を共犯者として巻き込むための形式的な手続きに終始し、行政 責任の回避の道具に堕しているとの批判もある。市民の側も単なる受益者としての意識が未 だに強く、自治の主体として責任を伴う自律的な存在としては、準備不足であることも指摘 されなければならない。 制度の改革、新しい技術を風通しの良い豊かな市民生活を実現させるためのツールとして 活用するためには、新しいルールを共有した政治文化、自治文化を育む必要がある。一面を 捉えれば単なる IT システムに過ぎない電子政府に、多分に抽象的で価値的な民主主義とい う議論を持ち込み意義づけて、その設計思想・設計哲学を問わざるを得ないのは、今日の我 が国がおかれている現状からの要請である。 (2)e-democracy 論の前提となる社会観と国家概念のゆらぎ 1)市民社会への指向

e-democracy論がよって立つ社会像として、市民社会(civil society)があることは疑いを

いれない。いわゆる市民社会への指向は、先進国共通の動きといって差し支えなく、来るべ き市民社会において、ICT が市民と政府との関係を発展・強化する主たるツールとして位置 づける動きが活発化している4。市民社会という言葉にどのような思いを込めるかは、立場 によって幅があるだろうが、「統治の対象、行政サービスの受益者としての市民から、公共 的な課題を共に発見、検討・討議し、解決に向けて協働する対等なパートナーとして位置づ ける」という見方が強まっている。 ここで「市民」とは、単なる「民衆」、「大衆」、「人民」と区別された自治への参加資格を 問う意味合いが含まれたものと理解すべきであろう。当然のことながら、「市民」と「市民 にあらざる大衆」といった区別は全く意味をなさないが、市民社会における民主主義論の中 には、市民が自治の担い手としてとしての自覚と見識を養うべく常に互いに学び合うプロセ

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2)国家概念のゆらぎと国家の役割の変化 市民がより具体的な統治の主体としての役割を強めてゆくことが期待される一方で、国家 像も見直しを迫られつつある。我が国の民主主義は、法原理としては「国民主権」として採 り入れられているが、そこに言う「国民」とは、「国民国家(nation-state)」の観念を背景に もつ、民族の単位にまとめられた抽象的統一体としての「国民」であって、いわゆる「市民」 とは等号で結ばれない。議員、官僚は限られた市民との接点から、見えざる「国民」の声を 推し量って、国としての意思決定を行ってきた。これはある意味では効率的ではあるが、議 員、官僚とチャネルを持った特定の層への利益誘導のカモフラージュとして「国民」が使わ れてきたという側面も見逃せない。e-democracy にはこのような社会構造を修正し、抽象的 な「国民」という観念を、現実の具体的な「市民」に引き寄せようとする期待が込められて いる。 また、経済的な国際システムの一体化等を背景として、国際的な人口移動も飛躍的に増加 している。その結果、一国の中にその国の国民としてのアイデンティティーを持つことなく、 一方で、その居住地域の住民、市民意識は強く持つ層のボリュームが増しており、民族的な 統一体としての「国民国家」概念も基盤がゆらぎつつある。この意味で、経済的な国際競争 の文脈から、国民国家概念を超克し、新しい統治体制を築こうとしている EU は象徴的であ り、かつ、その EU が統治基盤の強化の一策として ICT により強化された市民社会の構築に 注力していることも、その含意は深いといわざるを得ない5。 もちろん、EU の統合は主権統合という究極的な意味での国民国家の動揺であるが、この ような意味での国民国家概念のゆらぎが直ちに我が国に当てはまるわけではない。しかし、 国際的な人口移動の加速は我が国ももちろん例外ではなく、今後も加速されることが予想さ れる。のみならず、優秀な人材がその能力を十分発揮し、最も恵まれた生活環境を得るため に、国にとらわれず、居住地を定める例が多々見られるようになっていることを考え併せる と、積極的に他国の優秀な人材を市民として受け入れ、我が国の政治・経済的なアクティビ ティを高める方向での選択が得策となろう。従って、e-democracy によって強化されるべき 我が国の自治文化は、国を超えた多様な価値観を受容し、生かせるものを目指さなければな らない。 更に、国家の役割という面では、国家の問題解決能力の側面からも課題が浮き彫りとなり つつある。一つは、地方分権の流れに象徴されるように、地域の課題はその地域の具体的な 市民意思に根ざした地域の自主的な解決に委ね、国は地域間にまたがる広域的な問題、ある いは、地域的特性を排除して考慮すべき一般的な課題解決に専念することが期待されている。 従来のように全国一律の行政サービスを達成すべく、国が各地域の行政事務にこと細かに介 5 EU ホームページ:http://europa.eu.int/comm/governance/areas/group1/index_en.htm

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入するような役割は一歩退くことが求められよう。このような国と地方公共団体の役割分担 がより明確となることを前提として、地域レベルの e-democracy と国レベルの e-democracy のあり方に関する考え方の整理が必要となる。 もう一つは、地球環境問題に象徴されるように、国家単位での問題解決能力に疑問が投げ かけられる課題の存在である。もちろん、最終的には国家を構成単位とする国連を含む国際 的な枠組みで取り組むことが前提となるが、国家単位の取り組みをリード、あるいは補完す るものとして、NGO の国際連携が大きな役割を果たしつつある。NGO の活動を支え、国家 をバイパスした国際的な連携を促進するツールとして ICT の重要性は指摘されよう。 3)公領域の再生と官・民の役割分担 戦後、日本社会は欧米先進国へのキャッチアップを目標として、社会経済の諸側面におい て、官が中心的な役割を果たし、戦後の地縁型コミュニティーの減退と相まって、「公」は 官が独占的に担うものとして、「官=公」と「私」の二分的社会構造が暗黙の内に想定され てきた。そこでは、官が社会の方向性に関する意思決定のみならず、執行も含めて広範な権 限を持っていた。その結果、「公」の建前の下で、時に「政」「官」による利益誘導型政治が 誘引されることもあった。しかし、そのことは経済成長により国民全体がパイの拡大を享受 する社会状況では、必ずしも批判されるべき社会悪としてではなく、むしろ産業の秩序ある 発展のための必要悪として認識されてきた。一方、「民」は「官」によって与えられた枠組 みの中で個別私益の追求に没頭することが許された。この意味で、「公」領域は形骸化して きたとも言えよう。 しかし、現在では民間部門の成長とグローバル化による人・モノ・資本・情報の流れの拡 大が、旧来型の「官」による社会統治能力を越えるようになり、その手法はかえって弊害を もたらしているとの認識が広まっている。また、日本経済が低成長期に入り、経済的なパイ の奪い合いが生ずる中で、「官」の利益誘導は大きな批判にさらされている。 ここに、「官」と「民」の新しい役割分担と新しい方法論をもって、私の個別私益とは異 なる社会的集合価値の産出・消費の場としての公領域を再生する、という現代的課題が生ま れる理由がある。 NPO 活動に対する期待やコミュニティに対する期待は、このような「公領域の再生」と いう現代的社会の要請の現れであり、情報ネットワークを使った e-democracy に対する期待

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3.市民層の変革

(1)民主主義モデルと e-citizenery

e-democracyは ICT による民主主義プロセスのバージョン・アップするものといっても、

今後、日本が目指すべき民主主義の具体像については、合意があるとは言い難い。ここでは、 現在の我々の社会が直面する諸課題、e-democracy 論との関わり等の面から見て示唆的な

Thin democracy 、Quick democracy 及び Strong democracy というフレームを借用して整理をす

る6。

1)Thin democracy/Strong democracy/Quick democracy

Thin democracyは、市民参加の促進を重要とは考えない。普通の市民は政治に興味がなく、 かつ、参加することに適格ではないものとして認識される。その代わりに、その基本的なア イデアは市民の投票を競って争うエリートをもつということにある。選挙は、エリートの政 策プログラムの一般的な説明にもとづいてリーダーを選択するものである。正統性の基盤は、 エリートの説明責任(accountability)である。ここでの ICT の主たる活用場面は、電子政府、 ICTを活用した議員・政党からの情報提供である。 Strong democracy は、正統性の源としてあらかじめ決定された人々の意思が既にあるので はなく、正しい情報にもとづいた討議(deliberation)を通じて市民の意思が形成されると考 える。従って、市民の真意は単なる直接投票(レファレンダム)によっては捉えることがで きず、討議プロセスを重視する。また、参加は市民に権力を与える手段というより、社会に ついての理解を深めるための教育・学習の機会と捉えることが可能となる。ここでの ICT の主たる活用場面は、オンラインディスカッション等の討議である。 Quick democracy は多数派の意思が社会の全ての領域における意思決定に直接の影響を与 えることを重視する民主主義観である。例えば、極端な主張としては、ICT によって投票が 効率的、かつ、コストレスになるのでレファレンダムや諮問的な意見投票を多用し、直接民 主制を構想する。この民主主義観で措定される「市民像」は全市民がエリートと同じ知識や 判断力を持って、賢明な意思決定をする存在である。意思決定の正当性はマジョリティ・ル ールにより保障され、代表者も権限は制約される。ここでの ICT の主たる適用場面は電子投 票等の決定である。

6 Astrom, J. 2001. Should Democracy Online be Quick, Strong or Thin? COMMUNICATION OF

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3つの民主主義観は説明概念であり、現在の我が国の諸相を前提とするれば、いずれを取 るかというような選択の問題ではなく、どの民主主義観の要請も混在している。また、それ ぞれの民主主義観が想定する市民の姿は、全く異なるものの、いずれの市民層も現実に我が 国の中に混在する。 図表 3 3つの民主主義モデル Thin Democracy(情報提供/説明責任重視) Thin Democracy(情報提供/説明責任重視) Thin Democracy(情報提供/説明責任重視) Thin Democracy(情報提供/説明責任重視) Strong Strong Strong Strong Democracy Democracy Democracy Democracy (討議重視) (討議重視) (討議重視) (討議重視) Quick Quick Quick Quick Democracy Democracy Democracy Democracy (決定重視) (決定重視) (決定重視) (決定重視) このうち、Thin democracy 的な見方は、現在の電子政府論の射程であるが、情報提供と代 表者、行政の説明責任の徹底は、Strong、Quick いずれの見方においても、前提とされるべ きであろう。 代表者の選出に止まらない公的意思決定への関与者して市民像を想定するのが、Strong、

Quickの両民主主義観である。Quick Democracy 的な見方は端的には、近年特に注目を集め

ている住民投票に対して、どのような社会的評価がなされるかが一つの試金石となる。一方、 Strong Democracy的な見方は、現法制度の中で部分的に実施されている行政立法手続、行政 計画手続における各種住民参画手続、ことに環境アセスメント制度やまちづくり条例等の評 価を見きわめる必要があるだろう。 2)知らしめられた能動的な市民層の重要性 しかしながら、両民主主義観に双方に欠くことのできない重要な課題がある。それは自治 を担う市民層の強化である。この意味での市民層には、informed and engaged(知らしめられ、 能動的な)という形容詞が冠せられなければならない。

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んで考慮しなければならない要素である。 しかし、知らしめれられた市民層が、直ちに自治の主体としての能動的な市民層(engaged citizenery)たりうるとするのは、理想論にすぎよう。「知らしめる」ことが直ちに「寄らし むべからず」、即ち自己責任という言葉の下に、市民に犠牲を強いることになってはならな い。また、市民の側もオープンにされた情報を単に現状破壊の材料として活用するのではな く、もう数段の情報加工を行って、積極的な創造へと向かう知恵に転化させなければならな い。 ここでは、ICT により知らしめられ、かつ ICT を活用して能動的に政治・行政過程に参画 していく市民層という意味で、e-citizenery という言葉を用いれば、いずれの民主主義観によ っても e-citizenery の育成、強化が e-democracy の充実の最も重要な鍵となる概念である。 (2)電子市民(e-citizenery) 1)e-citizen ~ICT に媒介・強化された個としての市民意識の確立 ICTがコミュニケーションの「ツール」である以上、まず、ツールを使う前提となる自治 文化がなければ使い途はない。しかし、ここでも、ICT という道具が持つソリューション・ ツールとしての側面に加えて、ICT 自身が変化を促進するという側面に着目しなければなら ない。即ち、ICT による時間的・空間的な制約を超えたコミニケーション・スペースは、新 たな自治文化を育むドライブ・フォースとして期待されるのである。時間的・空間的な制約 の解消は、同時に会社員・公務員といった職の場を中心とした生活空間とは異なるコミュニ ティーでの自己に目を開かせる格好のチャンスとなる。自己のアイデンティティーは他人と のコミュニケーションを通じて確立されるが、メーリング・リストやオンライン・フォーラ ムでのコミュニケーションが職業人、家庭人というアイデンティティーに加えて、「市民」 というアイデンティティーの形成を促進するために役立つ性質を備えている。当然のことな がら、市民としての真の自覚は、現実の face to face のコミュニケーションを通じて確固たる ものとなるが、ICT によるコミュニケーションはこのようなリアルなコミュニケーション関 係を生み出す機会や補強ツールとしてその役割が期待される。 ICT を通じて醸成が促進されることが期待される個々人の市民意識は、e-democracy の土 壌となり、地方自治文化の深化に寄与し、これ自身が e-democracy の究極的な目的とも言え る重要性を持っている。 2)e-citizenry ∼ ICT を活用した市民の組織的活動の活性化 個々人の市民意識の醸成を通じた、個人単位のアクティビティの増強と同時に、層として の e-citizenery の形成も課題となる。

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個としての市民が別個独立に存在するわけではなく、市民同士が結びつく市民層形成過程 の中に、個としての市民の成熟もあるが、更に層としての集団的、団体的な活動に結びつい てこそ、「パートナーとしての」市民の具体的な姿が描けるのである。 この意味での役割が期待されるのは、各種の市民活動団体7である。今後、市民の組織的 活動として、ボランティア的なサービス提供活動に加えて、行政の枠にとらわれず、シンク タンク的に調査分析を行い提言する、あるいは利害関係にとらわれず行政、企業、各種の専 門家をコーディネートして社会的な問題解決に寄与する、などの働きをする新しい市民社会 型組織の成長が期待される。このような諸活動は情報集約的であり、ICT は強力なツールと なることは言うまでもない。 (3)デジタルデバイド 情報ネットワークへのアクセスの有無は、社会層によって大きく異なり、現状の社会層間 の格差を固定し、更に拡大する方向に働く虞がある、というデジタルデバイドの問題は、ICT が社会に与える影響のネガティブな側面に関する問題提起として、電子政府、そして e-democracyを構想するにあたって、特別な関心を持って扱われるべきテーマである。 1)リアルスペースにおける民主主義制度の補完、補強ツールとしての e-democacy まず、e-democracy の本質にかかわる問題がある。民主主義そのものは、我が国の国民、 市民であれば、等しくその過程に参加が保障されるべきものである。一方、e-democracy は そのような意味においてのユニバーサルな性質を持って設計されるべきものか、という問い かけは、e-democracy の本質にかかわる。情報ネットワークへのアクセス環境が社会的イン フラの性格を強めていることは事実にしても、少なくともアクセスの有無が現実に存在し、 電話、電気、ガス、水道といったライフラインとしてのインフラとは性格を異にする。また、 e-democracy の基盤となる情報ネットワークが本質的に社会の不平等を拡大する要素を内在 しているのであれば、e-democracy から生み出される市民の意思そのものが社会的不平等を 反映し、固定化する役割を演じないかという、疑念を払拭できなくなくなる。従って、 e-democracy はデジタルデバイドの問題が根本的に解消されるまでは、さしあたりリアルス 7

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ペースにおける民主主義制度の補完、補強ツールであるという認識が重要となる。例えば、 ネットワークアクセスを持たない市民を排除しない従来型の投票、広報、意見募集などのチ ャネルをおろそかにしてはならない。また、e-democracy に積極的に関わる人々が年齢、収 入、学歴などの一定の社会層的な偏りを持っている可能性が非常に大きいことを踏まえてお く必要がある。 このように認識に立った上で、ICT によって開かれる新しいサイバー・チャネルを、従来 型のリアルスペースにおけるポリティカル・チャネルに加え、市民側の情報伝達、意思表明 の選択肢を増すものとして、積極的な位置づけを与えるべきである。 また、過度にデジタルデバイドを問題視する態度も、長期的な利益を損なう可能性がある。 悪しき平等主義が社会の停滞を生むという面を思い起こす必要があるだろう。良いものはよ り伸ばし、その利益を社会全体が享受する、その上で、社会的に放置できない不平等は、 e-democracy を通じて補強された民主主義プロセスを持って問題解決にあたるという姿勢が、 望ましいのではなかろうか。 2)潜在的なデジタルデバイドの懸念 問題とすべきはデジタルデバイドを生む社会構造そのものの是正であり、その意味で、高 齢者、低所得者等に対するリテラシー教育の充実、公共施設における無料 IT 端末の設置な どの社会福祉政策の中で、対応策を図るべき問題と位置づけることもできる。 図表 4 性・年齢・学歴別の情報ネットワークへのアクセス状況 注)縦軸は、1:移動体ネットのみ利用者、2:PCネットのみ利用者、3:PCネット+移動体ネッ ト、0:どちらも利用していない 性年齢軸は、1:20 代男、2:30 代男、3:40 代男、4:50 代男、5:60 代男、6:70 代前半男、7: 20代女、8:30 代女、9:40 代女、10:50 代女、11:60 代女、12:70 代前半女 学歴軸は、1:中学、2:高校、3:専修・専門学校、4:短大、高専、5:大学、6:大学院 出所)2001 年 12 月 RISS調査

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しかし、より危機感をもって検討すべきは、若年層の ICT 教育の問題である。若年層のイ ンターネット利用率は欧米諸国と比較して劣後するのみならず、利用実態が携帯電話等の移 動体ネットに偏重している現状は、次世代の社会を担う若年層の情報リテラシー、メディア リテラシーについて懸念を抱かせるに十分である。グローバリゼーションの潮流の中で、我 が国が情報化の人的な基盤の面で脆弱さを抱えていることに他ならず、同時に、我が国の社 会内の問題としても、情報リテラシー、メディアリテラシーの格差という実質的デバイドの 固定・拡大が不可避となるおそれは払拭できない。 4.e-democracy の役割

e-democracyは民主主義過程の ICT によるバージョン・アップ、あるいは ICT による強化

と捉えることができるが、ここで、ICT はあくまで民主主義に関わる情報を載せて運ぶ乗物 であり、一つの道具にすぎないというある種のわきまえが必要ではある。即ち、近年の大き な社会的構造変革を全て ICT の文脈に引きつけて理解しようと試みても無理がある。 しかし、情報公開が行政改革の切り札と期待されるのは、まさに国や社会のあり方が公共 に関わる情報の流れに規定されると同時に、民主主義との関わりから表現の自由に強固な保 障が与えられるのは、その情報の流れがともすれば意図的にかき消され易いという脆弱さを 持っているからに他ならない。とすれば、公共に関わる情報流通を強固、かつ活発なものと する ICT の役割は、あらゆる公的な社会構造変革の場面で考慮されなければならない。その 意味で、e-democracy 論の射程は極めて広い。 特に、ICT による民主主義の変革に関しては、直接主制の実現が語られることも多い。こ こでは、直接民主制と間接民主制という原理的な問題よりは、今ある制度を前提として、ICT がいかに我が国の間接民主制を実質化し、また、現行制度が本来的に備えている直接民主制 的な要素を持った制度を活性化させるか、といった問題意識を前提とする。 しかし、既存制度の ICT による補強・実質化と絞ったとしても、e-democracy の具体像を 描くことは難しい。ここでは、e-democracy の輪郭を描くため、幾つかの視点を提示してみ ることにしたい。 (1)制度との関わり 民主主義は国や社会のあり方に関する一つの無形の価値の体系であると同時に、比喩的に

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1)情報提供重視の e-democracy 情報公開法制による制度的担保とその実質化ツールとしての電子政府を通じ、知らしめら れた市民層が成長・拡大して、実現される姿としての e-democracy である。このフェーズに おいては、市民自身の直接的な公的決定への参加よりは、議員・議会、行政における政策決 定プロセスの徹底した透明化を前提にした市民による監視・監督が中心となる。市民の決定 への影響力の行使は、知らしめられた市民層による選挙、及び任意の取り組みを通じた世論 形成による事実上の拘束力の発揮ということになろう。また、議会、行政府は情報公開法の 理念にのっとり、徹底した情報公開を通じて説明責任を尽くし、市民からの信頼確保に努め る必要がある。 また、終局的には代表者選出が市民の具体的なコントロール権行使の場面であるから、選 挙プロセス、議会の活性化が特に課題となる。また、市民オンブズマンや行政自身が設置す る第三者機関への市民参画の場面で、ICT によって情報収集、意見集約等を効率化してゆく 必要がある。 2)直接参加重視の e-democracy 情報流通重視の e-democracy の充実を前提とし、各種の市民参加法制を通じて、市民が個 別具体的な政策決定過程において、一定の共同決定権を行使してゆく e-democracy の姿であ る。我が国では、行政立法、行政計画手続における市民参加手続が未整備といって良く、こ のような意味での e-democracy を想定できる場面は極めて限られている。

但し、このような決定権重視の e-democracy においても、先に記述した Quick Democracy 観、Strong Democracy 観に応じて、想定される ICT の主たる活用場面は異なる。Quick

Democracy観にたてば、情報流通重視の e-democracy を前提として、例えば住民投票の効率 化や ICT によって可能となる投票方式の検討などが重要となるだろう。一方、Strong Democracy観にたてば、討議を通じた合意形成が重視されるため、討議プロセスへの ICT 活 用が e-democracy の重要な場面となる。 3)非制度的な取り組みを通じた e-democracy の実現 特に、行政プロセスにおいては、ICT により意見収集や市民による討議が活性化したとし ても、それら市民の声をどう扱うかについて、制度が用意されていない現状では、その扱い は(黙殺することも含めて)行政の裁量に任される。また、現行の各種市民参加制度におい ても、利害関係人の意見書は形式的に処理され、十分考慮されず、最も重要な参加形式とし ての聴聞・公聴会は形骸化しているとの批判が多い。その意味では、終局的には、市民、行 政が対話し学び合いながら、政策を共同で作り上げてゆく、実質的な自治文化を創り上げて ゆくことが必要とされる。

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そして、このような自治文化を創り上げてゆくためには、行政、市民が準備不十分なまま 性急な結果を求めるのではなく、共通の認識にもとづいた議論が可能となるような土台の形 成が必要である。その際、単に生の情報を共有するだけでは足りず、行政スタッフと市民、 また市民相互で互いに学び合うという場と機会を増し、結果を求める議論よりも、むしろ相 互教育の手段としての討議を通じて、情報を知識あるいは知恵に転換するプロセスを充実さ せる必要がある。そのような相互教育支援機能が ICT に求められる。 (2)民主主義の主体間の関わりと e-democracy 近年の情報公開、電子政府の推進などは、新しい公的情報の流れを生みだし、その情報流

通に支えられ、議会(Politician, Parliament)、行政(Government)、マスメディア(Mass Media)、

更に市民(Citizen)などの相互チェックを可能ならしめ、各主体間の新たな関係が形成され つつある。ここでは、市民を中心に各主体間の関わりから見た e-democracy の場面設定と課 題を述べる。 1)市民対政治家 我が国が議会制民主主義を採用している以上、第一義的には、代表者たる議員、議会に対 する市民の声の反映の強化が重要である。また、近年の行政改革の哲学の一つは、官僚機構 に対する政治家のコントロール強化にあることをふまえれば、代表者たる政治家の選出及び 活動の諸場面において、ICT を活用して市民と政治家の距離を縮める試みは積極的に進める べきである。 まず、選挙における ICT の活用としては、電子投票の導入が試行されようとしている。現 状では、選挙事務の効率化の視点にとどまっているが、今後、オンラインでの在宅投票等へ 進むことも一つのシナリオである。この場合、投票率の向上、それに伴う投票層の分布変化 といった影響が期待され、実質的に我が国の民主主義の諸相にインパクトを与える可能性を 秘めている。 また、政治・行政のコントロールに関して、まず、議員や首長といった代表者に対する期 待が大きい一方で、代表者の具体的な活動に関する情報を求める意識も強い。従って、議会 等における代表者の具体的活動状況を、今後普及が急速に進むと思われるブロードバンドイ ンフラを前提として、リアルに市民に伝えるべく web 配信、ビデオアーカイブの整備など

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の情報、ビデオや音声といった多種のメディア情報が蓄積され、公開されることによって、 議員の政治姿勢の現実の姿を追跡することが可能となる。 一方、政党における ICT 活用も重要な課題である。議員一人一人が選挙によって信託され た存在であるとはいえ、政党による利害集約、争点整理が行われて、初めて雑多かつ個別具 体的な市民の声が議会審議にかかる政策案として結実する。この集約プロセスにこそ議員そ して政党の責任の主要部分がある。このプロセスを透明、効率的かつオープンにするしくみ として、ICT の活用が検討されてしかるべきであろう。 2)市民対行政 現代行政においては行政需要の多様化・専門技術化にともない、行政の裁量の範囲が広が らざる得ないといえる。そこで市民のニーズに対応し適切な行政サービスを提供するため、 行政が一定程度の裁量の幅をもって公的な決定を行うことは不可避的といえよう。しかし、 裁量権の行使のプロセスが不透明であったり、その不透明なプロセスから多数の市民にとっ て納得できない決定が導かれることは少なくない。特に、生活水準の向上が約束され、経済 的成功は行政の適切な舵取りにより導かれてきたとさえ評価されていた高度経済成長の時 代と、現在とでは、市民と行政の関係は大きく様変わりしている。情報公開の進展は、行政 に対する市民のチェック能力を高め、不適切な行政活動は暴かれ、正されることが多くなっ たという意味では、大きな進歩である。 しかし、その反面、行政に対する信頼は大きく損なわれている。単に一般市民にはそのま まではわかりにくい情報を公開しただけは、本来的に行政に対して懐疑的であったカウンタ ーパワーとしての市民団体による不正の追及が厳しくなるに留まり、行政の信頼回復への途 は遠い。現在、行政に求められるものは、一般の市民に対して、わかりやすく情報を提供し、 説明責任を果たすことによって、一般市民の信頼を回復することである。電子政府はそのよ うな意図の下に設計・運営されるべきである。 また、情報提供の方法や質をいくら工夫しようとも、その情報を受け取る市民の側の前提 知識、能力が不十分であれば、労多く益は少ない。従って、公の問題に対する市民の理解を 高めるべく積極的に啓発・教育を行うことによって、行政に対する理解を深め、パートナー として市民層を育成していくことこそが、遠回りではあるが、最も確実かつ長期的な利益あ る投資であることを行政は認識すべきであろう。この市民教育の場面において、ICT が寄与 できることは何かを検討すべきである。 同様に市民の側も、まず、問題となっている諸課題に関する知識や行政自体に関して常に 学ぶ姿勢を持ち、建設的な主張となるよう努めることが、決定過程への参加の条件であろう。

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3)市民対マスメディア ICTの社会浸透は、マスメディアと市民の関係性についても波及する。マスメディアは政 治・行政に対するチェック機能を果たし、市民が生活の中で得る社会的情報の大半が、マス メディアを経由しているという意味で、民主主義プロセスの根幹をなす情報流通の主要な担 い手として、その役割は極めて重い。 しかし、同時にその抱える問題点も大きい。記者クラブ制度に象徴されるように、情報源 の独占という既得権益と引き替えに官の情報提供に甘え客観的な事実探索と分析能力が低 下しているとの批判や、営利主義を背景に大衆受けしたテーマ設定と報道に偏向していると の批判などが古くからなされている。情報流通経路の独占集中がマスメディアの自浄能力を 弱め、自らへの批判を許さない独善的な傾向も指摘されることが多い。また、昨今、市民を 主体とする民主主義プロセスに奉仕するために与えられているはずの「報道の自由」をもっ て、逆に市民の人権を回復不可能に踏みにじるという主客転倒の例も度々生じている。 民主主義プロセスにおける ICT の活用の意義は、市民がマスメディアを経ることなくパラ レルに情報を受け取り、発信することを現実的に可能とし、また、マスメディアの論調等を チェックする能力を市民に与えることにもある。 4)市民相互間 ICTを活用したネットワーク・コミュニティーは、新しい公共的議論のスペースを提供す る可能性を秘めている。 第一に、このような場は市民同士の議論・啓蒙・連携を促進し、少数の見解が個人的見解 に止まることなく、一つの社会的意見の芽として成長させるきっかけを与えることも少なく ない。このような少数者の連携が次段階の市民の活動へつながり、社会的評価を経て一つの 世論を形成してゆくプロセスは尊重されなければばらない。 但し、ICT によって媒介されるこのようなグラスルーツの連携は、硬直した社会構造の下 で黙殺されがちな声を顕在化し、多元的な視点を提供するというメリットと同時に、「市民」 の名の下に極端な主張を繰り返す原理主義的なグループをも生み出す土壌となり、社会を不 安定化させる要素ともなる可能性も否定しきれない。また、同じく「市民」の名の下に、本 当のスポンサーは背後に隠れ、特定の主義・主張を増幅して発信する「ステルス・キャンペ ーン」の隠蓑とされるケースすら米国では生じている。

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見ても、匿名を前提にしたマナーの欠如など種々の課題が指摘される。オンラインによるコ ミュニケーションとディスカッションのルールは、まさに人と人とのコミュニケーションの 在り方の問題であるから、多くの失敗から経験則的に成熟させてゆく必要があり、また、現 実のコミュニティーの性格毎に適したマナー、ルールがあってよい。但し、各種の試行の中 から成功例、失敗例を共有し、互いに学び会えるようなしくみは必要があるだろう。また、 オンライン・フォーラムを活性化する鍵となるメディエーター、リストマネージャーには固 有のスキル・ノウハウが求められ、これら人材の育成も重要な課題として指摘される。

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5.提言 本研究会は、電子政府を e-democracy への一つの契機と捉えた上で、「ICT によりバージョ ン・アップされる民主主義プロセスの中で、電子政府の輪郭はどう描かれるべきか」を出発 点としている。そこで、市民と行政の関係を中心に据えた以下の諸提言により、研究会のま とめに代えたい。 提言 1:電子政府を通じて情報公開を加速し、市民に向けた説明責任を徹底すること →自動開示的な情報公開、情報編集機能の強化、市民の情報理解と感得の誘発 提言2:市民と行政の相互学習(e-learning)を通じて、市民の情報受容能力を強化すること →若年層の ICT 教育の充実、公的問題に関する市民と行政の能動的な学習の機会の拡大 提言3:市民社会型組織の育成と強化を図り、市民サイドからの提案・問題解決能力を高めること →市民社会型組織のパフォーマンス向上と社会的信頼確保に対する ICT の役割の検討 提言4:ICT による参加と合意形成の促進を図ること →ICT による参加と合意形成に関する多様なトライアルのサポートと評価

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(1)市民層の革新・強化 本研究会では「ICT による市民層の強化・革新、殊に、ICT による市民と行政の相互学習 プロセスの促進(市民と行政の e-learning)」という視点を提示したい。なぜならば、 "e-democracy"という言葉に込められた期待に応えるためには、まさに「市民」がその中心に 位置づけられるべきであり、また、主役として民主主義のプロセスに参加したいと願う市民 を助力するためには、情報を与え、意思表明する機会を提供するのみでは足りず、その市民 が主体的に学び理解するというプロセスを強化することが、最も本質的なソリューションと 考えるからである。 1)電子政府を通じた情報公開と説明責任の徹底 政 治 ・ 行 政 諸 機 関 情 報 編 集 市 民 情   報   公   開   ( 一   次   情   報   開   示 ) 情 報 提 供 チェック チェック ①自動開示等による高度の公開性の確保 行政の情報公開、説明責任の徹底は、市民層の強化の必須不可欠な前提となる。しかし、 現在の BPR に中心をおいた電子政府の機能設計は、公開性と説明責任を担保すべく設計す る視点が弱い。行政の有する一次情報は個人情報保護等とのバランスを図りながら、原則的 に自動開示的な扱いとなるような電子政府の機能設計がなされることが望まれる。また、そ のような高度の公開性の担保は、説明責任を果たすための基礎的な条件である。 ②情報編集機能の強化 高い公開性の達成は同時に、多量な一次情報あるいは半加工情報の氾濫でもある。恣意的 かつ裁量的な編集を排した情報は、問題が生じた場合の市民の行政に対するチェックを可能 とするためには必須のものであるが、それが直ちに市民の行政に対する理解を高めるとは限

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らない。従って、情報を適切な目的意識に沿って編集・加工した上、情報提供していくこと が不可欠である。即ち、次世代の電子政府に課せられるであろう任務(公開性と説明責任) を全うするために、電子政府というプラットフォームに載せられる情報はその目的に沿って 明確に性格づけられ、また、プラットフォームたる電子政府の構造自体も異なる性格の情報 を効果的かつ効率的にハンドリングできる設計が要請される。 また、情報提供の質は情報編集のプロセスの質に依存することは言うまでもないから、電 子政府というシステムは、情報編集(エディティング)という重要なヒューマン・スキルの 介在を不可避的にその内に含むものとして捉えることになる。また、エディティング自体を 行政スタッフが全面的に独占あるいは負担すべき理由も乏しい。この意味で、次世代の電子 政府には、掲示板や情報のショーウィンドウ、倉庫でもなく、行政と市民が情報を提供しあ って共有し、さらに協働作業のためのワークスペースとして捉える設計思想が必要とされる のではないか。 ③市民の情報理解と感得の誘発 e-democracy の実現の観点から、ブロードバンド時代の到来を前提として、情報提供の在 り方自体も見直してゆくことが望まれる。TV 世代も含めた現代の市民の政治・行政に関す る理解を深めるためには、平板なテキスト情報のみでなく、音声・画像・ビデオ等の多種の メディアの特性を踏まえたライブ観のある情報提供や、政策決定過程の追体験を可能とする コンテンツの設計を通じて、市民の情報理解と感得を誘発する工夫がなされることが望まし い。 2)市民学習としての e-learning ∼ 市民の情報受容能力の強化・向上 民主主義が常に自己点検、革新しながら循環を繰り返すプロセスにその生命があるとすれ ば、その循環の諸過程で市民、行政スタッフ、議員などが互いに学び合う相互作用が強化さ れなければならない。 e-democracyが民主主義の補強ツールであるならば、市民の啓発、学習を ICT によって支 援する e-learning の機能が包含されるべきであり、e-learning を通じて、市民の情報受容能力 を強化・向上することが求められる。

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学校における ICT 教育の問題は狭い意味の電子政府論とは距離があるが、e-democracy の主 体を初等・中等教育の段階から、意図的かつ計画的に育成することの重要性は強調を重ねる 必要がある。また、電子政府自体に若年層の社会教育のための素材・場を組み込むことは、 既に欧米諸国において、よく見られるようになっている。 ②ICT を活用した市民学習 一般的な教育は十分に受け、公的な問題に関心はあっても現状では選挙以外に政治・行政 プロセスへのアクセスがないため、参加の準備が不十分な市民層に、ICT を活用した e-learningによって学習と教育の機会を提供することも重要である。 学習素材や人材に関する情報案内所としての電子政府 学習に必要な素材の多様性、アクセスの容易さを ICT により実現できることは、指摘する までもない。しかし、公的な問題を理解するためは、行政情報以外の種々の外延情報へのア クセスの容易さも重要である。例えば、当該の地域の生態系、歴史、文化等々の理解がまち づくりにとって重要であることはいうまでもない。また、ネット空間上の情報のみならず、 ICT を媒介として種々の専門知識を持った人材とリアルなネットワークを結ぶことも重要 であろう。電子政府がそのような素材・人材へのアクセスの情報案内所としての機能を果た すことも検討されてよい。 市民学習ツールの開発 市民が受動的、情緒的な意思決定から、能働的、客観的かつ意思決定を行い、更に建設的 な提案等をなし得るためには、社会、特に政治・行政等について基本的な仕組みを十分に理 解し、さらにシステムとしての相互連関に関する総合的・全体的な認識を持つことが求めら れる。例えば、行政システムに関するシミュレーションツールなどを用意し、公的な意思決 定が身近な生活へどのような影響を与えるか(税金や行政サービスはどう影響を受けるか 等)、また、その影響はどのような連関を通じて、想定されるのかなどを、自分が議員や首 長となったと仮定して簡単なロールプレイングが行えるようにするなども一つのアイデア である。 このような試みを通じ、市民が情報をいかに使うかを疑似体験することによって、真の意 味の情報や認識の共有、あるいは、公的意思決定に関わるポートフォリオ、トレード・オフ 的な見方を養うことが可能となり、さらには、準備に乏しい単純な二者択一の意思決定によ る弊害を緩和することができるようになるのではないか。

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啓発、学習の場としてのオンライン・フォーラム オンライン・フォーラムは新しい公的議論の場として、世論形成、社会的な意見集約機能 が期待される。しかし、いわゆる参加型民主主義の考え方が参加を意思決定の場面と捉える のみならず、参加を通じて市民が学習し、またその学習プロセスを通じて自己実現を図ると いう側面を強調することを考えれば、オンライン・フォーラムも教育的機能が強調されるべ きである。 運営ポリシー等に教育的目的が明示的に組み込まれ、参加者が議論を構造的に把握し、オ ンライン・フォーラムに参加することによって、当該の問題に関する情報の認識フレームを 得ることができるような機能が実装されることが望ましい。 3)市民社会型組織の育成・強化 ∼ 市民による提案・問題解決能力の強化 個別市民の行政に対する理解が深まったとしても、具体的な課題に対して、現実的かつ建 設的な寄与をなし得る市民社会型組織の活動に結びついてこそ、「パートナーとしての」市 民の具体的な姿が描ける。e-democracy の実現という観点において、市民型組織の育成・強 化に ICT が果たしうる役割を検討する必要がある。 具体的には、各種の NPO が上記の趣旨に沿う市民社会型組織たる役割を果たしてゆくこ とが期待される。NPO が社会において果たす機能は多様であるが、e-democracy の発展とい う観点からは、市民側に立ち、専門性をもった建設的な組織的コーディネーターとしての NPOの役割に期待がかかる。このような NPO が社会的役割を全うし、より高いパフォーマ ンスを発揮できるよう電子政府の中に NPO を支援する機能を取り込むことが検討されても 良いのではないか。例えば、電子政府内に各種 NPO が自由に活用できるスペースを確保す る、あるいは NPO 紹介、活動内容の告知・開示を行う。また、ICT のスキルに乏しい NPO に技術的支援を行うなど、種々の方策が考えられよう。 一方、NPO の社会的信頼を強化してゆくために、NPO に関するディスクロージャーを電 子政府を通じて行う、あるいは、電子政府をプラットフォームとした市民による NPO の評 価システムの可能性を検討することも考えられる。 (2)ICT による参加と合意形成の促進 e-democracy のプロセスをリアルスペースの民主主義の補完・補強プロセスと捉える観点

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好に、より近い社会的な意思決定へと導くために ICT を活用する試みは、積極的にサポート されるべきである。その際、市民の社会的な決定権を強化するという視点だけでなく、その トライアルがもつ多様な効果を積極的に評価することが重要である。例えば、公的問題に関 して市民同士、市民と行政の相互理解が深まる、新たなアジェンダが浮かび上がる、市民と 行政の新しい役割分担に関する認識が生まれる等々はそれ自体が重要な成果である。 お問い合わせ先 (株)NTT データ システム科学研究所 新開 伊知郎 [email protected]

図表  2  地方公共団体におけるパブリックコメント制度の取組状況(平成 12 年 3 月 31 日現在)  0% 10% 2 0% 30% 4 0% 50% 6 0% 70% 8 0% 90% 10 0%都道府県政令市市区町村(政令市除く)制定済類似手続きの定め有り制定予定制定に向け検討中是非について検討中制定予定無し その他 出所)総務省、 「地方公共団体における行政改革の取組状況」 (平成 13 年8月1日)  ②地方分権一括法(1999 年)  地方分権も、我が国の政治・行政分野における最も重要な課

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