e-democracy
の実現の観点から、ブロードバンド時代の到来を前提として、情報提供の在り方自体も見直してゆくことが望まれる。TV世代も含めた現代の市民の政治・行政に関す る理解を深めるためには、平板なテキスト情報のみでなく、音声・画像・ビデオ等の多種の メディアの特性を踏まえたライブ観のある情報提供や、政策決定過程の追体験を可能とする コンテンツの設計を通じて、市民の情報理解と感得を誘発する工夫がなされることが望まし い。
2
)市民学習としてのe-learning
〜 市民の情報受容能力の強化・向上民主主義が常に自己点検、革新しながら循環を繰り返すプロセスにその生命があるとすれ ば、その循環の諸過程で市民、行政スタッフ、議員などが互いに学び合う相互作用が強化さ れなければならない。
e-democracy
が民主主義の補強ツールであるならば、市民の啓発、学習をICT
によって支援する
e-learning
の機能が包含されるべきであり、e-learning
を通じて、市民の情報受容能力を強化・向上することが求められる。
学校における
ICT
教育の問題は狭い意味の電子政府論とは距離があるが、e-democracyの主 体を初等・中等教育の段階から、意図的かつ計画的に育成することの重要性は強調を重ねる 必要がある。また、電子政府自体に若年層の社会教育のための素材・場を組み込むことは、既に欧米諸国において、よく見られるようになっている。
②
ICT
を活用した市民学習一般的な教育は十分に受け、公的な問題に関心はあっても現状では選挙以外に政治・行政 プロセスへのアクセスがないため、参加の準備が不十分な市民層に、ICT を活用した
e-learning
によって学習と教育の機会を提供することも重要である。学習素材や人材に関する情報案内所としての電子政府
学習に必要な素材の多様性、アクセスの容易さを
ICT
により実現できることは、指摘する までもない。しかし、公的な問題を理解するためは、行政情報以外の種々の外延情報へのア クセスの容易さも重要である。例えば、当該の地域の生態系、歴史、文化等々の理解がまち づくりにとって重要であることはいうまでもない。また、ネット空間上の情報のみならず、ICT
を媒介として種々の専門知識を持った人材とリアルなネットワークを結ぶことも重要 であろう。電子政府がそのような素材・人材へのアクセスの情報案内所としての機能を果た すことも検討されてよい。市民学習ツールの開発
市民が受動的、情緒的な意思決定から、能働的、客観的かつ意思決定を行い、更に建設的 な提案等をなし得るためには、社会、特に政治・行政等について基本的な仕組みを十分に理 解し、さらにシステムとしての相互連関に関する総合的・全体的な認識を持つことが求めら れる。例えば、行政システムに関するシミュレーションツールなどを用意し、公的な意思決 定が身近な生活へどのような影響を与えるか(税金や行政サービスはどう影響を受けるか 等)、また、その影響はどのような連関を通じて、想定されるのかなどを、自分が議員や首 長となったと仮定して簡単なロールプレイングが行えるようにするなども一つのアイデア である。
このような試みを通じ、市民が情報をいかに使うかを疑似体験することによって、真の意 味の情報や認識の共有、あるいは、公的意思決定に関わるポートフォリオ、トレード・オフ 的な見方を養うことが可能となり、さらには、準備に乏しい単純な二者択一の意思決定によ る弊害を緩和することができるようになるのではないか。
啓発、学習の場としてのオンライン・フォーラム
オンライン・フォーラムは新しい公的議論の場として、世論形成、社会的な意見集約機能 が期待される。しかし、いわゆる参加型民主主義の考え方が参加を意思決定の場面と捉える のみならず、参加を通じて市民が学習し、またその学習プロセスを通じて自己実現を図ると いう側面を強調することを考えれば、オンライン・フォーラムも教育的機能が強調されるべ きである。
運営ポリシー等に教育的目的が明示的に組み込まれ、参加者が議論を構造的に把握し、オ ンライン・フォーラムに参加することによって、当該の問題に関する情報の認識フレームを 得ることができるような機能が実装されることが望ましい。
3
)市民社会型組織の育成・強化 〜 市民による提案・問題解決能力の強化個別市民の行政に対する理解が深まったとしても、具体的な課題に対して、現実的かつ建 設的な寄与をなし得る市民社会型組織の活動に結びついてこそ、「パートナーとしての」市 民の具体的な姿が描ける。e-democracy の実現という観点において、市民型組織の育成・強 化に
ICT
が果たしうる役割を検討する必要がある。具体的には、各種の
NPO
が上記の趣旨に沿う市民社会型組織たる役割を果たしてゆくこ とが期待される。NPOが社会において果たす機能は多様であるが、e-democracyの発展とい う観点からは、市民側に立ち、専門性をもった建設的な組織的コーディネーターとしてのNPO
の役割に期待がかかる。このようなNPO
が社会的役割を全うし、より高いパフォーマ ンスを発揮できるよう電子政府の中にNPO
を支援する機能を取り込むことが検討されても 良いのではないか。例えば、電子政府内に各種NPO
が自由に活用できるスペースを確保す る、あるいはNPO
紹介、活動内容の告知・開示を行う。また、ICTのスキルに乏しいNPO
に技術的支援を行うなど、種々の方策が考えられよう。一方、NPOの社会的信頼を強化してゆくために、NPOに関するディスクロージャーを電 子政府を通じて行う、あるいは、電子政府をプラットフォームとした市民による
NPO
の評 価システムの可能性を検討することも考えられる。(2)