第
18 回日本獣医皮膚科学会認定医講習会レポート
鈴木隼人
皮膚の病理組織学(写真が多いため、シラバスを参照してください)
表皮の病変 表皮のみに限局:境界部皮膚炎 表皮、真皮の病変が同時に起こる:血管周囲性炎症、毛包炎、アレルギー性皮膚炎など 皮下の病変により引き起こされる:虚血性変化 毛包あるいは皮脂腺をターゲットにした病変 細菌感染、真菌感染、毛包虫、自己免疫性疾患(脂腺炎など) 表皮内膿瘍 自己免疫性疾患(主に落葉状天疱瘡) 細菌性膿皮症 皮膚真菌症(トリコフィトン属) 肉球の病変(主にカサつきやひび割れ) 肝皮症、ジステンパー、 腫瘍随伴症候群(グルカゴノーマ、犬の脾臓肉腫、猫の膵臓癌および胸腺腫) 境界部皮膚炎(ほとんどの場合、びらんや潰瘍を形成する) SLE、多形紅斑、フォークト小柳原田症候群、家族性皮膚筋炎など *基底層細胞が破壊されるときにメラノサイトも同様に破壊される。それに伴い、メラニン が真皮内に落ち込んでくることでマクロファージに貪食され、黒色顆粒をもつメラノファ ージが認められるようになる。 脱毛性疾患 正常な毛周期 成長期:プードルでは9 割以上が成長期 ↓ 退行期 ↓ 休止期:毛がフワフワの犬種(ハスキーなど)は5~6 割が休止期毛包の病理組織像 成長期:先端に毛乳頭が認められる 退行期:毛包全体が真皮の上層に移動する 休止期:発育する細胞がなくなるため、毛包上皮が均一なピンク色になる 脱毛の鑑別診断 毛包の異常:ホルモン性 甲状腺機能低下 表皮の肥厚を伴う クッシング 表皮、真皮ともに薄くなる、皮膚石灰沈着を伴うことも 性ホルモン失調 パターン脱毛症 毛乳頭は存在するが、毛自体が細くなる アロペシアX 毛の異常 :淡色被毛脱毛症 黒色被毛形成異常症 感染症 その他 :自咬症、膿皮症、腫瘍性疾患、脂腺炎
皮膚の腫瘍
皮膚科領域で特に重要な腫瘍性疾患 有棘細胞癌:増殖型 疣贅性結節や腫瘤を形成 持続的刺激(物理刺激あるいは光刺激)による 潰瘍型 潰瘍周囲が堤防状に隆起する 悪性黒色腫:口、粘膜境界部、肢端および陰嚢に好発 皮膚リンパ腫:皮膚T 細胞性リンパ腫 表皮向性リンパ腫(皮膚リンパ腫の91%、中央生存期間は 3 か月) 菌状息肉腫、パジェット病様細網症、セザリー症候群 毛包向性リンパ腫 血管向性リンパ腫 皮膚リンパ球症 皮膚B 細胞性リンパ腫 肥満細胞腫皮膚腫瘍の良性と悪性 良性腫瘍は隆起性病変を形成し、悪性腫瘍はびらん、潰瘍など欠損病変を形成することが 多い 表皮の良性腫瘍と近縁疾患 疣贅性 口腔乳頭腫症、皮膚乳頭腫、皮膚反転性乳頭腫 犬色素性丘疹および局面 表皮母斑 *犬色素性局面 常染色体優性遺伝により、パピローマウイルスに感染しやすくなることが原因。通常数週 間で自然消退する。 毛包の良性腫瘍と近縁疾患 毛漏斗部 皮内角化上皮腫、脂漏性角化症 毛狭部 外毛根鞘腫 毛下部 毛母腫 毛包単位 腫瘍、嚢腫、過誤腫 毛漏斗部の腫瘍では、角のような角化物(皮角)が認められることがある。 脂腺の良性腫瘍と近縁疾患 脂腺 脂腺増生症、脂腺腺腫、脂腺上皮腫、脂腺母斑 眼瞼マイボーム腺 腺腫 肛門周囲腺 腺腫、肛門周囲腺増生症 汗腺の良性腫瘍と近縁疾患 皮膚アポクリン汗腺 嚢腫、腺腫、アポクリン母斑など 耳垢腺 耳垢腺増生症、嚢腫、腺腫 乳腺 乳腺腫、混合腫瘍 肉球エクリン腺 腺腫
ランゲルハンス細胞の増殖性疾患 クラスⅠ:犬皮膚組織球腫(急速に発育し、潰瘍をともなうこともある) クラスⅡ:反応性皮膚組織球症 クラスⅢ:組織球肉腫 これらの疾患はランゲルハンス細胞のアポトーシスを制御する機構の異常により、核分裂 が止まらないことが原因 →核分裂を抑制する効果のあるグリセオフルビン(30~40 mg/kg BID)により治療できる 可能性がある。
猫の皮膚疾患
猫の瘙痒性皮膚疾患でよくみる臨床病型 ・粟粒性皮膚炎 ・外傷性脱毛 ・頭頸部の掻爬痕 ・好酸球性肉芽腫群 -無痛性潰瘍 -好酸球性プラーク -好酸球性肉芽腫 ・粟粒性皮膚炎 表面に痂皮が付着した紅色丘疹 鼻鏡・耳介の丘疹や痂皮、稀に肉球の腫脹を伴うことがある 原因 外部寄生虫 -ノミ刺咬、ノミアレルギー:主に腰背部、会陰部、腹部 -猫疥癬、耳疥癬:頭部 -蚊刺咬過敏症:耳介、鼻梁、肉球 -ツメダニ症:主に体幹 感染症 -皮膚糸状菌症 皮膚炎群 -猫過敏性皮膚炎、皮膚食物有害反応など粟粒性皮膚炎との鑑別が必要な疾患 色素性蕁麻疹(痂皮を伴う丘疹、浮腫性紅斑を特徴とし、皮膚肥満細胞症ともいわれる) スフィンクス、デモンレックスに好発する ・外傷性脱毛 体幹から四肢にかけての脱毛や表皮剥離 他の疾患との鑑別 抜毛検査にて裂毛があり、成長期毛根が認められる場合 原因 外部寄生虫 -ノミ刺傷、ノミアレルギー -ニキビダニ症 皮膚炎群 ―猫過敏性皮膚炎、皮膚食物有害反応など 疼痛・違和感 -膀胱炎、巨大結腸症、骨関節異常、神経異常 皮膚心身症 ・頭頸部の掻爬痕 顔面、頸部の脱毛~潰瘍(頭部は強い痒みを認めることが多く、皮疹が悪化しやすい) 原因 外部寄生虫 -猫疥癬、耳疥癬 -ニキビダニ症 感染症 -FHV、FCV、FeLV、クリプトコッカスなど 皮膚炎群 -猫過敏性皮膚炎、皮膚食物有害反応など 細菌性毛包炎(下顎のざ瘡と一致する) 皮膚心身症 ・無痛性潰瘍 上口唇の潰瘍 初期は一部分であり、進行すると上口唇全体に拡大する
・好酸球性プラーク 舐め動作に起因するびらん~局面 びらん形成部位に好酸球が集簇し、組織浸潤が強まることで局面形成に移行する ・好酸球性肉芽腫 舌の増殖性病変、肉球の痂皮性病変 線状肉芽腫(硬い線状隆起性病変で通常、無症候) 猫好酸球性肉芽腫群の病因 外部寄生虫 -ノミ刺傷、ノミアレルギー -猫疥癬、耳疥癬 -蚊刺咬過敏症 -ツメダニ症 細菌感染(アレルギーに続発する) 皮膚炎群 -猫過敏性皮膚炎、皮膚食物有害反応など 好酸球性肉芽腫と鑑別を要する疾患 -黄色腫症(コレステリン結晶が真皮に沈着し、黄色の隆起性病変を形成する) -有棘細胞癌 猫の瘙痒性皮膚疾患に対するアプローチ 原則として除外診断 1、 感染症に対するアプローチ -外部寄生虫:疥癬、ツメダニ症、ノミの関与 -皮膚糸状菌症 2、 皮膚炎群に対するアプローチ ‐皮膚食物有害反応 -猫過敏性皮膚炎 3、 その他の皮膚疾患に対するアプローチ ‐自己免疫性皮膚疾患 ‐ウイルス性皮膚疾患 ‐深在性真菌症
ノミとり櫛検査で検出される猫の外部寄生虫 ネコノミ、ツメダニ、ネコハジラミ *虫卵が毛に巻き付いてみえる場合は、ツメダニor シラミ ・猫ノミアレルギー性皮膚炎 臨床症状 ‐外傷性脱毛、粟粒性皮膚炎:腰背部に顕著 ‐好酸球性プラーク、線状肉芽腫、頭頸部の掻爬痕:これらは稀 診断 ノミ虫体・糞の検出 -検出されなくても感染を否定できない 皮内反応・血清IgE 検査 -即時型過敏症の検出には有効だが、遅延型過敏症は検出できない -ノミの暴露歴があれば陽性になりえる ノミ駆虫薬を用いた診断的治療がゴールドスタンダード ・D.gatoi によるニキビダニ症(治療についてはシラバス参照) 毛包間表皮の角層に寄生している 猫から猫へ伝播する 一般的に強い瘙痒を呈する ・皮膚糸状菌症(治療についてはシラバス参照) 円形の脱毛、紅斑および鱗屑 診断 ウッド灯検査 ‐スクリーニング、治療モニターに適している ‐偽陽性、偽陰性が多い ‐M.canis の約 50%で発光が認められる 被毛、皮膚掻把物の直接鏡検 ‐感染を直接証明できる ‐経験が必要 真菌培養 ‐菌種の同定が可能 ‐キャリア動物との鑑別が必要 *一般的な真菌と異なり、M.canis は感染初期からアミノ酸を使い始める。そのため、培 地のアミノ酸が使用されることでコロニー形成と同時に培地が赤変する。特徴的な大分
生子を形成する。栄養がなくなるとお大分生子を作るため、培養開始後 2~3 週間経過し てからのほうが、よく見える。 ・猫過敏性皮膚炎 原則として除外診断 治療 ‐プレドニゾロン:1-2mg/kg, p.o, SID ‐酢酸メチルプレドニゾロン:20mg/cat, s.c or i.m、2~3 ヶ月ごと プレドニゾロンの副反応 肥満猫における糖尿病 皮膚萎縮・脆弱化(皮膚が容易に裂ける) 耳介の屈曲
‐シクロスポリンA:7mg/kg, SID, 4week ・猫マラセチア皮膚炎 犬ほど多くない 外耳炎、下顎のざ瘡、爪周囲炎(茶色に変色する) 基礎疾患の存在を考慮 ・猫ヘルペスウイルス関連性潰瘍性皮膚炎 初期は上部気道炎の症状 診断:組織学的検査(核内封入体)+PCR 治療‐インターフェロン-ω ‐ファムシクロビル 125mg/cat/day ・ペルシャ、ヒマラヤンの特発性顔面皮膚炎 鄒壁の部分に好発し、進行すると滲出液を伴う 二次感染による瘙痒の増悪 治療:感染コントロール+プレドニゾロン 2.2mg/kg or CyA 7mg/kg ・胸腺腫関連性剥脱性皮膚炎 皮膚症状:全身性の紅斑、鱗屑、脂漏 鑑別 :リンパ球性毛包上皮炎、脂腺炎、皮膚リンパ腫 治療 :胸腔内腫瘤の摘出(摘出後の中央生存期間は2 年) 浸潤度が高いと周術期に死亡する可能性が極めて高い