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第1章 本研究の背景と目的

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第1章  本研究の背景と目的

1−1  ナノワイヤーへの興味の高まり

1-1-1 単一分子エレクトロニクス

シリコンテクノロジーにおける半導体の集積化は、

1965 年に提唱された「半導体チップに集積されるトラン ジスターの数は約2年毎に倍増する」というMooreの法則

1に従い今日まで目覚しい発展を遂げており、科学技術の 飛躍的な発展に多大なる貢献をし続けている。1(b),2 しかし その反面、高集積化が進めば進むほど新たな問題点も増 え、1990 年代後半にはMooreの法則通りの発展には翳り が見え始めていた。2,3筆者が本研究に着手したのは 2001

年3月であるが、2000年11月の時点でやっと各社0.13 µm(130 nm)プロセスの開発が完 了した段階であり、100 nmの壁を越えることはまだ困難視されていた。

Fig. 1-1 Moore’s Law 1(a)

目に見える大きさの材料を微細加工していくトップダウン方式においては、“100 nm”は 途方も無く小さいサイズである。これに対して、分子を相手にしている化学者にとって“100 nm”は非常に大きく、ボトムアップ方式で“100 nm”を目指すのはなかなか困難である。

後者のアプローチとして、高度な機能を持つ分子を合成しそれを機能単位としてデバイス を構築することで集積回路の飛躍的な高速化・高密度化を目指す単一分子エレクトロニク スに近年注目が集まっている。4この単一分子エレクトロニクスの概念そのものは 1974 年 にA. AviramとM. A. Ratnerにより”Molecular Rectifiers”5として提唱されたものであるが、

1990年代以降、上述の通り“ポストシリコンテクノロジー”が切望されたため急速に研究 が活発化した。

電気回路の最も基本となる要素は導線であり、単一分子エレクトロニクスに用いるため の分子ワイヤー(ナノワイヤー)も同様に重要であろうと考えられるが、その構造がF. L.

Carterにより具体的に提唱されたのは 1983年、単一分子エレクトロニクスの提唱から十年

近く経ってからのことである。6当初、Carterは「(電極等を繋ぐための)マクロ導線と単一 分子デバイスとを接続するための」分子ワイヤーとしてFig. 1-2のようなワイヤーを提唱し ている。その後、二分子膜ベシクルに膜を貫通させるような形で取り込まれたcaroviologen が二分子膜間の電子移動を加速させる、即ち分子ワイヤーとして機能することが見出され、

(2)

長鎖共役オリゴマーが実際に分子ワイヤーとなることがJ.-M. Lehnらによって確かめられ た(Fig. 1-3)。7 現在でも分子ワイヤーとして主に研究が行われているのは長鎖共役オリゴ マー類であり、その研究はオリゴエン、オリゴインからオリゴフェニレン、カーボンナノ チューブ(CNT)に至るまで極めて多岐に渡っている。7(c),8また、上述の単一分子エレクト ロニクス素子の研究の活発化に伴い、デバイス構築に不可欠な要素であるナノワイヤーの 研究も活発化している。

Fig. 1-3 The caroviologen Molecular Wire inducing electron conduction across

vesicular bilayer membranes7(a) Fig. 1-2 Proposed molecular wires6

1-1-2  錯体化学におけるナノ構造体へのアプローチ

化学分野では、1978年にJ.-M. Lehnが超分子化学を提唱して以来、“大きな分子”を形成 する技術が次々と生み出されている。9,10「従来の共有結合に基礎を置く分子化学とは異な り、非共有結合性の分子間結合と分子会合体(超分子)に着目する」という超分子化学の 概念は化学全般に通じるものだが、配位結合が主たる結合である錯体化学には特に適した 概念である。当時、高分子錯体に極めて高い関心が注がれていたことや、11構造解析手法の 発展と相まって、超分子錯体や配位高分子として著しい発展を遂げている。12–15その様な構 造解析手法の発展による恩恵は、かねてより注目を集めていた一次元系でさらに顕著であ

る。Wolffram’s redやReihlen’s greenとして20世紀初頭にはその存在を知られていながら詳細

な研究が困難であったMX系16や、Magnus塩17等の白金一次元鎖の研究は、1950 年代のS.

Yamadaの報告まで、その構造確認が殆どできていない状況であった。しかしその後の技術

革新に伴い、1970年頃には構造と物性の関連性もかなり解明できる状況になり、その研究 速度は飛躍的に増加し、18 さらに近年では、これらの系でも高機能性材料を目指した検討 が積極的に行われている。19

(3)

も、戦略的な合成を実現し得る環境が整ってきたのである。この気運は近年特に強まって いる。ちなみに最近では超分子・配位高分子のいずれも、単に大きな分子・骨格を構築す るだけではなく、これらの分子が作り出す空間に着目して精力的な検討を行っており、結 果、ナノサイズの空間に特異的な反応・現象を導き出すことに成功しており、高い注目を 集めている。15,20

1-1-3  導電性ナノワイヤーの条件

これらの単一分子エレクトロニクスと超分子化学という相異なる二つの流れを受けて、

錯体化学の分野でもナノワイヤーへの興味が非常に高まっている。上述の通り、現在の所 ナノワイヤーとして精力的に研究がなされているのはCNT等を含む長鎖共役オリゴマーで あるが、シリコンテクノロジーにおいて用いられている導線は現在も金属(Cu)である。

微小サイズにすることで種々の問題が起きても尚、高い導電性を示す金属の方が魅力的で あるということである。バルクの金属導線をそのまま究極的に小さくすると金属原子が一 次元方向に並んだ状態が考えられる。この“金属原子が一次元方向に並んだ状態”が導電 性を有さないと既存の長鎖共役オリゴマーに対する優位性はあまりないため、ここで金属 が導電性を有する理由に触れておくこととする。21

バルクの金属は多数の原子が規則正しく配列している状態である。ここで、N個の原子が 規則的に配列している系を考える。原子間距離が非常に長い場合には、原子間での原子軌 道の重なりが小さく見かけ上孤立した状態と変わらないため、これらN個の原子の原子軌道 はそれぞれ局在化し縮退している。これに対して、原子間距離が短くなり原子軌道間の重 なりが増大すれば、N個の原子の原子軌道の縮退が解けて固体の電子状態は全体に広がった 波動関数で記述できるようになる。Nが大きな場合、N個の原子軌道から出来る波動関数に 対して分布する電子は一定の範囲の接近したエネルギーを持ちうるので、このエネルギー 幅が許容帯(バンド)となる(Fig. 1-4)。またこれとは逆に、初めから原子間距離は短いも のとして原子の個数を増やすことでも、バンドの形成は可能であると考えられる。簡単な Hückel則に基づき隣り合う金属の同一軌道同士のMOダイヤグラムを考えると、スタックす る金属核の数が増えれば増える程隣り合うMO同士のエネルギー差Egが小さくなると考え られる(Fig. 1-5)。MOのエネルギー差Egnが室温におけるkT値(約0.023eV)と同程度にな れば、室温では見かけ上連続となるため、これらのMOの集まりはバンドと見なすことがで きると考えられる。

(4)

Fig. 1-5 Hückel則に基づく同一軌道 同士が形成するMOダイヤグラム

Fig. 1-4 エネルギーバンドの生成

Fig. 1-6 絶縁体,半導体,金属の許容帯

における電子の分布

次に、これらのバンドに電子が収容される状態を考える(Fig. 1-6)。一つのバンドが全て 電子で埋め尽くされる場合には、電子が充満した価電子帯BFと電子が存在しない伝導帯BE の間のエネルギーギャップが小さければ半導体、大きければ絶縁体となる。バンドが電子 で埋め尽くされない場合は、同一バンド内に価電子帯と伝導帯を持ちエネルギーギャップ の無い金属となる。金属が一般的に高い導電性を示すのはこのためである。以上より、“金 属原子が一次元方向へ並んだ状態”で導電性を持たせるための最低条件は、金属原子同士 が十分に近接していることである。

この様な「金属原子が十分に近接した状態で一次元方向に並んだナノワイヤー」、即ち主 鎖に金属を含むオリゴマーやポリマーの合成指針を提唱しうる立場にあるのが、錯体化学 や高分子化学である。現在までに様々な研究者がそれぞれ独自の方法で、そのような「金属 が一次元方向へ並んだ鎖状錯体」へのアプローチを検討している。高分子化学の立場からは、

メタロセンの重合によって得られるポリメタロセン22や、配位サイトを持つ有機高分子を主

(5)

鎖としてそこに金属(錯体)を配位させるペンダント型高分子23が、金属原子が一次元方向 に並んだ高分子として今日までに合成されている。11 但し、これらの高分子ではいずれの 場合も金属−金属間の結合は無く、金属原子が十分に近接した状態にはなっていない。こ れに対して錯体化学では、一次元方向に並んだ金属が金属―金属間結合を有している錯体 が色々と報告されている。18 そのため、次節ではそれらのうち代表的なものについて紹介 する。

1−2  ナノワイヤーへのアプローチ

1-2-1  単核ユニット由来の主鎖積層型infinite chain

金属が一次元方向へ並んだ鎖状錯体のうち、19 世紀半 ばの錯体化学創成期よりその存在が知られており、また 現在物性について最も詳しく調べられているのは、単核 錯体が構成ユニットで金属が主鎖となって積層している 主鎖積層型infinite chainである。18

最 も 良 く 知ら れ て い る主 鎖 積 層 型infinite chainは 、 Krogmann塩、特にKCPと呼ばれているK2[Pt(CN)4]X0.3nH2O (X = Cl, Br) である(Fig. 1-7)。18(c),21(b),24 Pt(II)単核錯 体K2[Pt(CN)4]は、dZ

2軌道方向にスタックした白色結晶となるが、これらをBr2等の酸化剤で 部分酸化すると金属光沢を持ったbronze結晶であるKCPへと変化する。25 K2[Pt(CN)4]とKCP のPt鎖の構造上の最も大きな違いは両者のPt−Pt間距離で、部分酸化により 3.50Åから 2.90ÅまでPt−Pt間距離が短くなってい

ることが 1969 年にKrogmannにより示さ

れた。24(b) KCPは金属光沢を持つため、導

電性を示すことは古くから予想されてい たが、1971年にJ. H. PerlsteinによりKCP

が4 S cm-1という極めて高い導電率を示

すことが見出された。26 この測定におい て 、K2[Pt(CN)4]とKCPで は 導 電 率 が 5×10–7 S cm-1から4 S cm-1へと大幅に増加 している。Perlsteinは結晶構造で大きく変 Fig. 1-7 K2[Pt(CN)4]X0.3・nH2O

(X = Cl, Br)  (KCP)

Fig. 1-8 部分酸化による、dZ2軌道により形成 されたバンドからの電子の減少

(6)

化している点がdZ

2軌道方向の金属間結合距離のみであることに着目し、KCPのdZ

2軌道でも

1-1-3同様バンドが形成されており、部分酸化によりそのバンド内にホールが形成されてい

ることを提唱した(Fig. 1-8)。その後、実際に室温付近でKCPは金属性電導挙動を示すこと が報告され、現在も上述のPerlsteinの説は正しいものと考えられている。25(d),27 このような 高い導電率を示すdZ2軌道方向に主鎖が伸びた部分酸化型Pt一次元鎖としては、他に K1.64[Pt(ox)2]・nH2O (ox = oxalate)やその類縁体(102 S cm-1)、28固体状態でPt(II)としてdZ2軌 道方向にスタックするMagnus塩16 [Pt(RNH2)4][PtX4]の部分酸化体(10–1 S cm-1)、29 等が知ら れている。また、K0.6Ir(CO)2Cl2等のIrカルボニル錯体も部分酸化型一次元鎖として非常に良 く知られている。30

KCPの出発原料であるK2[Pt(CN)4]や[(RNC)4M]+ (M = Rh, Ir) 等のd8化合物は、溶液中でdZ 2

軌道方向にスタックし、錯体濃度が高い場合は金属間相互作用を示すことが知られている。

31 これに対して上述の部分酸化型一次元鎖はラジカル開裂を起こしやすいため、溶液中で は容易に分解してしまい、鎖状構造を維持することは極めて困難である。24(b),31(a) 数少ない 例外として(H3O)1.6[Pt(ox)2]・nH2Oが知られており、この化合物は0.4M溶液では平均鎖長が 46 単核ユニット分の鎖状構造をとる。但しこの場合にも、0.01Mでは完全に単核ユニット に解離した状態になることが報告されている。32

1-2-2  自発的に鎖長が制御されたdiscrete chain

  主鎖積層型infinite chainと相対する「金属が一次元方向に並んだ鎖状錯体」として、自発 的に鎖長が決まるdiscrete chainが知られている。その代表格としては、白金ブルーが挙げら れる。一般式 [Pt(II)3Pt(III)(amine)8(amidato)4]5+ で表される混合原子価白金ブルーPt(+2.25)4 は、S. J. Lippardによりcis-platinのDNA切断作用のモデル化合物として1977年に初めてその 構造が明らかにされた鎖状錯体である(Fig. 1-9(a))。33–35 これらの錯体がcis-platinの制癌作 用の解明に大きな貢献を果たしたのは言うまでもないが、35 これらの錯体はdiscrete chainと して報告された初の例であり、また鎖長の制御されたPt鎖を作るのが可能であることを世 に知らしめた初の例である。Lippardによる発見後、様々な研究者により白金ブルー類縁体 の精力的な開発がなされた。33 得られた白金ブルー錯体群はいずれもPt(II)二核ユニットが 二量化しさらに部分酸化を受けることで鎖状化しており、他の金属錯体でも同様の合成戦 略が成り立つ可能性が示唆されていた。主鎖積層型infinite chainの場合と同様に、Pt(II)と同 じd8であるIr(I)やRh(I)でも白金ブルー類縁体の合成がL. A. Oroにより検討され、鎖状四核錯

(7)

体が合成されている(Fig. 1-9 (b))。36 より核数の増えた白金ブルー類縁体としては、

Pt(+2.25)八核錯体 [Pt2(NH3)4(CH3CONH)2]4(NO3)10やその類縁体が 1989 年にK. Sakaiにより 合成され(Fig. 1-9(c))、37 2003年にL. A. OroによりIr(+1.33)六核錯体 [Ir6(C5H4NO)6I2(CO)12] が合成されている(Fig. 1-9(d))。38

Fig. 1-9 自発的に鎖長が制御された部分酸化型discrete chain

白金ブルーはdZ

2軌道上の電子が一電子欠損しており、かつdZ

2軌道上の電子が非局在化し ていることがESR測定により明らかにされているため、35 この白金ブルーもナノワイヤーと しての可能性を有していると考えられる。しかし、一連の白金ブルー化合物の導電率に関 する報告はなされておらず、いずれの四核錯体も結晶状態での吸収端が800 nm程度である ことから、少なくとも金属ではなく、恐らく半導体であろうと考えられる。

1-2-1において、部分酸化型一次元鎖が溶液中では維持されにくいことについて述べたが、

この傾向はdiscrete chainでも同様であり、二核ユニット間の結合は錯体濃度が低くなると解 離することが知られている。例えば、水溶液中で13 mM Ptの[Pt2(NH3)4(C5H4NO)2]2(NO3)5は 5時間程度で完全に解離することが報告されている。35(b)

1-2-3  二核ユニット由来の主鎖積層型infinite chain

  近年、上述の白金ブルーが無限系に拡張された二核ユニット由来の主査積層型infinite chainがK. Sakaiにより報告された。39(a) このcarboxylato架橋Pt(2.2+)二核ユニットを繰り返し

(8)

単位に持つinfinite chain [Pt(2.2+)2(NH3)4(RCO2)2]2.4+ (R = CH3, C2H5)は、[Pt(II)2]39(b) を電極上 で酸化することで合成されている。得られたinfinite chainのPt−Pt間距離は、Pt−Pt(intra) が 2.8163(7)−2.8517(11) Å、Pt−Pt(inter)が2.9929(10)−3.0148(13) Åとなっている。これらの結 合距離はKCPと同程度であり、また得られた結晶の長さも5 mm以上と十分に大きいが、こ れらの二核ユニット由来の主鎖積層型infinite chainは0.01−0.001 S cm-1の半導体である。本 化合物がKCPの様な金属ではない原因としては、格子ひずみによりPeierls転移が各所で起こ りバンドを形成できていない可能性が考えられる。21(c),40 Peierls転移とは、「一次元電子系で

は波数Q = 2kF(KF:フェルミ波数)の電子密度波が発生する」というものである。まず、

「均等に原子・電子が配列してバンドを形成している状態」と「電子が電子対を形成して

(その結果)原子間距離にも長短が生まれた状態(バンドは断裂された状態)」とを考える と、後者の方が電子系のエネルギーは低下しているが格子系のエネルギーが増大している 状態である。Q = 2kFの時、電子対を形成した場合の方がエネルギーの総和が小さくなるた め、状態転移(Peierls転移)が起こることが観測されている。上述の[Pt(2.2+)2]では二核ユ ニット内外のPt−Pt間距離に差が出ており、二核ユニットを構成単位としたために一層

Peierls転移が起こりやすくなった可能性が高い。これはナノワイヤー合成において考慮す

べき点を新たに示唆した非常に重要な結果であると考えられる。

  二核ユニット由来の主鎖積層型infinite chainとしては、F. P. Pruchnikにより 2001 年に Rh(+1.5)二核ユニット[Rh2(bpy)2(CH3CO2)2]+ の繰り返し構造からなるinfinite chainも報告さ れている。41 これについては0.6及び35 S cm-1とPt(2.2+)よりも非常に高い導電性を有する 半導体であることが報告されているが、41(c) 金属鎖が極めて長いにも関わらずやはり金属的 挙動は示していない。この場合にもRh二核ユニット内外の金属間距離に差があることから、

やはり格子ひずみによるPeierls転移が各所で起こりバンドを形成できていないのではない と考えられる。

1-2-4  配位子により鎖長を制御されたdiscrete chain

これまで見てきた通り、錯体化学から導電性高分子へのアプローチは色々となされており、

実際に金属的挙動を示す部分酸化型一次元鎖も多数得られているが、ナノワイヤーとして使用 可能な錯体は現在のところ得られていない。勿論、これまでに示してきた部分酸化型一次元鎖 は元々ナノワイヤーを目指して研究されてきたものばかりではなく、学術的な興味によるもの も含まれている。ここでは、実用可能なナノワイヤー錯体がこれまでに得られていない理由を

(9)

考えてみることにする。

最も大きな理由は、既存の部分酸化型一次元鎖が基本的に結晶状態でしか取り扱えないため であると考えられる。「金属導線の代替品としてのナノワイヤー錯体」を目指す場合には、バル クの金属では成し得ない細さを実現する必要がある。上述の部分酸化型一次元鎖はいずれも金 属鎖一本一本は十分に細いが、結晶状態で取り扱うとすると、結晶とバルクの金属導線のサイ ズにはあまり差異がない。つまり、ナノワイヤー錯体としての機能は果たさないと考えられる。

それに対して、もしこれらの金属鎖が結晶状態でなくても維持されるとすれば、その金属鎖は 目的の機能を果たしていると考えられる。例えば、これらの部分酸化型一次元鎖を金属鎖一本 一本に分けて使うことが出来れば、その金属鎖は目的のナノワイヤーと言えるであろう。その ように金属鎖を一本一本分けた状態にする最も簡単な手法は、それらを溶液状態にすることで あると考えられる。つまり、金属鎖が溶液状態でも維持出来れば、ナノワイヤー錯体への道が 開かれると考えられる。しかしながら、これまでに見てきた既知の部分酸化型一次元鎖はいず れも、溶液状態では容易に単核または二核ユニットに解離してしまい、ナノワイヤー錯体とす ることは出来ない。この問題点を解消すべく生み出された新たな系が、金属核数が配位子によ り制御されているdiscrete chainである。これらは1-1-3で述べたペンダント型高分子のように 配位子が鎖状構造を形成しており、そこに金属が配列することで単分子鎖を形成しているため、

溶液内で各ユニットに解離するという問題点は解消されている。以下、金属核数が配位子によ り制御されているdiscrete chainについて紹介する。

最も代表的な例として、F. A. CottonやS.–M. Pengら によって合成がなされているoligo-α-pyridylamineを配 位 子 に 持 つ 錯 体 群 (Extended Metal Atom Chain

(EMAC))が挙げられる(Fig. 1-10)。42これらEMAC

はoligo-α-pyridylamine配位子の配位サイトの数、即ち

Nの数に応じて金属核の核数が確実に制御された鋳型 合成により合成されている。

EMACは極めて精力的に合成がなされており、その 報告例は金属核の種類、核数ともに非常に多く、様々

な知見が得られている。例えばNi(II)多核錯体(Ni(II)n)では、金属核間に結合が無く電子 が詰まった状態であると考えられるため、金属鎖上に導電性が現れることは一般的にはあ まり期待できない。そのため一電子酸化により金属鎖上の電子をドープする試みがなされ Fig. 1-10 Extended Metal Atom

Chains (EMAC)42(d)

(10)

ており、金属鎖全体の結合長の減少や軸配位子の配位等の構造変化を伴った、目的通りの 合成がなされている。しかし、これらのEMACでは両末端のNi(II)がhigh spin状態を取るた め、Ni(II)多核錯体において磁化率測定等で不対電子が観測されており、42(d) 却って一電子 酸化体の方が不対電子の数が少ない分、速やかにスピンがquenchされることが確認されて

いる。42(e) また、Ni以外の金属でも、1-2-3でも見られたPeierls転移と同様に多重結合部分と

非結合部分が生じる等の諸問題があり、“単純な”電子状態を取っている錯体は得られてい

ない。42(f) これらの多核錯体の単分子抵抗率も求められており、Ni(II)3では3.4 MΩ、Ni(II)5

では24.0 MΩとなっている。42(b) 4,4’-bipyridineが1.3 ± 0.1 MΩ、hexanedithiolが10.5 ± 0.5 M Ωであることを考えると、43 やはりNi(II)多核錯体では導電性は出ていないと思われる。

この様に金属鎖に導電性が現れなかった理由はいくつか考えられるが、金属核の核数が 少ない為にバンドを形成していない可能性が高いと考えられる。また、EMACを形成しう る金属核は原子半径の小さいものが多いため、oligo-α-pyridylamineを配位子に用いた場合、

自由度が高すぎて結合距離にばらつきが出やすくなっている可能性がある。例えば、Niの 原子半径は1.35 Å、結晶内でのNi−Ni間距離は2.492 Åであるが、44 このEMAC中のNi–Ni

間距離は2.240(3)–2.443(1) Åである。これらの可能性を検討するためにはさらに核数の多い

EMACが切望されるが、EMACは「金属核が全て配位子に結合し、かつ 4 つの配位子で挟 み込まれなければ生成しない」ため、金属の核数が増えれば増える程その収率が下がるの は明らかである。より原子半径の大きな金属核を扱う場合も同様に結合しにくくなること が懸念される。さらに、有機物のポリマー同様、核数の増加に伴い錯体の溶解度が減少し てしまう現象が見られており、近年は合成・同定が難航しているものと思われる。42(b)   同様の配位子により核数が制御されたオリゴマーとして、H. Kurosawaらによるポリエン

−Pd鎖サンドイッチ錯体45やT. Tanaseらによる三座ホスフィン架橋Pt六核錯体46が挙げられ る。これらはいずれもM(I) (M = Pd, Pt)の部分還元により得られた直鎖状錯体である。現在 の所、導電性測定やナノワイヤーとしての利用はなされていないようであるが、非常に興 味が持たれる。

  さらに近年では、鋳型になる配位子として人工DNAを用いた系もM. Shionoyaらにより検 討されている。47 しかし、DNAの繰り返し単位距離が約3.4Åと非常に長いため導電性が現 れない可能性も考えられる。

1−3  本研究の目的

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1-3-1 ナノワイヤーとなり得る錯体を設計する為の必要条件

1−2に示した通り、ナノワイヤーとして実用可能な錯体は現在の所まだ合成されてい ないが、これまでに合成された様々な化合物から得られた「ナノワイヤーとして用いるこ とが可能な金属的導電性を有する錯体を合成する為の必要条件」をまとめると、以下の通 りである。

(1) 一次元方向に並んだ金属原子の数が多く、また金属原子同士が十分に近接してバン ドを形成している必要がある。

(2) 有機電導体に対するadvantageを考えると、金属原子鎖の作り出すバンド内に電子の 存在しない伝導帯が存在する、“金属”的性質をもつ部分酸化型錯体または不対電子 を持つ常磁性錯体であることが望ましい。

(3) 溶液内で単分子鎖として扱える必要がある。

1-3-2  ナノワイヤー設計におけるPt(II,III)混合原子価錯体の利点

実際にナノワイヤー錯体を設計するにあたり、まず初めに金属原子を一次元方向に並べ ることを考える。配位子により金属原子の配列を一次元方向に制御する鋳型合成は、既に 検討されているので、ここでは他のアプローチを考える。1-2-1でも述べた通り、Pt(II)、Rh(I)、

Ir(I)のd8化合物の一部は溶液中でもdZ

2軌道方向にスタックしやすい、即ち一次元方向に並びや すいことが知られている。31 これらのd8化合物は本質的にdZ

2軌道方向にバンドを形成しやすい ため、ナノワイヤー設計において大きな利点となると考えられる。

次に、部分酸化型錯体を作り出すことを考える。1-2-2 で述べた通り、Pt(II) d8錯体は金属核 数が少ないdiscrete chainでも、部分酸化により一電子が欠損した白金ブルーと呼ばれる混合原子 価状態をとることが古くから知られている。33–35,37 一般的な混合原子価錯体では、一電子が奪 われるフロンティア軌道は配位子により大きく変化してくるのに対し、これらのPt錯体では一 電子が奪われるのはほぼ必ずdZ

2軌道により作られるMOであると考えられる。Pt(II)がPt(III)に 酸化される場合、square planarであるPt(II)からoctahedralであるPt(III)へと変化するため、Pt に配位する配位子によってエネルギー準位はある程度変化するものの、dZ2軌道の軌道エネ ルギーは必ず大幅に上昇することになる(Fig. 1-11)。その結果、必ずdZ2軌道から一電子奪 われることになると考えても大方間違いは無いと考えられる。実際、白金ブルーにおける

(12)

不対電子はdZ

2軌道方向に非局在化している。35 以上

より、Pt(II)の部分酸化により得られる混合原子価錯

体では、元々バンドを形成しやすいdZ

2軌道から電子 が奪われることが分かる。つまり、Pt(II)をdZ2軌道方向 に配列させバンドを形成し、さらに部分酸化を行えば、

そのバンド内に電子の存在しない伝導体を作り出すこ とが出来ると考えられる。

最後に、溶液内でも単分子鎖として扱えるような構 造について考える。1-2-1及び2で述べた通り、既知の 部分酸化型一次元鎖は、溶液内では容易に単核または 二核ユニットに解離してしまうことが知られている。

そこで着目したのが二核ユニットに解離する白金ブル ーである。白金ブルー錯体では不対電子はdZ2軌道方向 に非局在化していると考えられているが、溶液内で解 離する際は必ず二核ユニットに解離する。つまり、例 え部分酸化型一次元鎖がラジカル開裂を起こしても、

各種アミドにより架橋された二核ユニットが壊れるこ とは考えられない(Fig. 1-12)。従って、金属鎖中の金 属核全てを架橋配位子で架橋した、非架橋部位を有さ ない部分酸化型錯体を構築できれば、溶液内で単分

子鎖として扱えるナノワイヤーが得られると考えられる。

Fig. 1-11 一電子酸化に伴うdZ2軌道 上の電子数の変化

Fig. 1-12 溶液状態での二核ユニ ットへの解離

1-3-3  本研究の目的

以上の必要条件を踏まえ、本研究では非架橋部位を有さない部分酸化型直鎖状白金多核錯体

(白金ナノワイヤー)を合成目標とした(Fig. 1-13)。架橋配位子としては、実際に白金ブルー 錯体で架橋部分が溶液内でも開裂しないことが確認されており、また、合成法や諸性質に関す る知見が比較的多いアミドを用いることとした。この様な部分酸化型直鎖状白金多核錯体でも、

理論上は1-2-1で述べたように、金属核が増えてdZ

2軌道から作られるMO同士のエネルギー差が 室温におけるkT値(約0.023eV)と同程度になれば、バンドを形成すると考えられる。

(13)

これまで KCP の様に金属的挙動をとる既知化合物において、実際 にどの程度の核数の金属がスタックしているのか、またどの程度の核 数で半導体から金属へと変化するのか、といった問題については、全 く検討されていない。これは、既知の部分酸化型一次元鎖が結晶状態 でしか取り扱えなかったためである。これに対して、溶液内での取り 扱いが可能な部分酸化型直鎖状白金多核錯体を合成することで、核数 ごとにその性質の観察が可能となれば、バンドギャップ幅と核数との 相関関係を見出すことが可能になると考えられる。本研究では以上の 背景を考慮し、新規多核白金錯体の合成研究を行った。

Fig. 1-13 Pt Nanowire

1−4  本論文の概要  

本論文は6章から構成されており、以下にその概要を示す。

第2 章では白金ナノワイヤーへのアプローチの1つとして、逐次合成による合成法を検 討した結果について述べる。部分酸化状態では白金に配位する配位子が置換不活性になる ことが分かったため、より置換活性なPt(II)の状態を維持したままでの多核化を試みた。し かし、dZ

2軌道方向に白金同士がスタックしアミドで架橋された白金二核骨格は、架橋配位 子により近接を余儀なくされているdZ

2軌道同士が反発し合うため、極めて不安定である。

本論文では配位子と合成ルートを精密に設計し反応条件を温和にすることで、白金二核骨 格を維持したままで配位平面の配位子を置換させる新たな手法を確立した。48,49 三核以上の 多核錯体では更に白金骨格の不安定度が増すため検討は困難を極めたが、目的の白金ナノ ワイヤー合成への足掛かりは掴めたものと考えられる。

第3章では自己組織化による白金錯体のポリマー化を検討した結果について述べる。48 得 られた生成物の分光光度測定から、既知の部分酸化型白金多核錯体ではほぼ完全に各構成 ユニットに解離してしまうような高希釈条件下(0.15 mg/g)でも、生成物はIVCTと考えら れる強い吸収を示しており、目的の構造を有しているものと考えられる。さらにこの自己 組織化で得られた生成物の分光光度測定では、対応する白金ブルー錯体よりも大幅に吸収 帯が広がっている様子、即ちバンドギャップが狭まっている様子も観察された。この生成 物を核数ごとに分離し性質を詳細に観察することを狙い、分子量分布ごとのフラクション 分取を試みたが、化学的性質に殆ど差が無く鎖長による分離は困難であった。そのため、

(14)

バンドギャップの縮まり方と核数との相関関係は残念ながら見出せなかった。

第4 章では、第2章での検討中にその存在が見出され、その後詳細に合成・検討を行っ た直鎖状白金五核錯体及び白金パラジウム五核錯体の合成と性質について述べる。51 この 五核錯体は非架橋部位を有しているにも拘らず、強いMmonomer−Ptdimer結合により、希薄溶液 中でもその構造を維持していることが分かった。また、分光光度法による吸収スペクトル の経時変化の測定により、溶液中でのMmonomer−Ptdimer結合の生成反応の観察も行った。金属

−金属間結合開裂の様子を観察した例は過去にも多数見受けられるが、金属−金属間結合 生成の様子を観察した例は非常に珍しい。また、dZ

2軌道方向にPd−Pt結合が形成される例 はこれまで2例しか報告が無く、この点からも本五核錯体は非常に興味深い。

第5章では、第4章で白金五核錯体の構成ユニットとして登場した配位平面にhalideが配 位し高い電子受容性を持つPt(III)二核アルキル錯体が、既知のPt(III)二核錯体には見られな い配位平面の置換活性を示すことが見出されたため、それについて述べる。49

  第6章では本研究を総括する。

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