九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
細円管および狭い長方形管内垂直上昇気液二相流の 流動現象に関する研究
井手, 英夫
https://doi.org/10.11501/3147903
出版情報:Kyushu University, 1998, 博士(工学), 論文博士 バージョン:
権利関係:
5.5 新提案式の検討
198
前節において, 従来の整理式では特に長方形細管内の平均ホールドアップを十 分に 整理で きない ことを示した. そこで本節では, 新たに精度のよい整理式を導 入することを試みた. その際断面が大きい長方形管に対して も適用可能な統一的 な 整理式となることを考慮した.
5.5.1 すべり比を用いたホールドア ッ プの整理
長方形細管内のすべり比Sは, その値が 100 '""'"' 200 に達するほど大きい 値となる こともある(図5.4参照). これは第5.3節で 指摘した平均ホールドアップの大なる ことに起因する. 本節では このすべり比 を用いた平均ホールドアップの整理式を 検討した. す なわち狭い長方形管では 表面張力および粘性の影響が大であると考
えられるので, すべり比はレイノルズ数Re , フルード数Fr, エトパス数Eö, キャ ピラリー数Cα およびアスペクト比 T等の関数で与えられると仮定し, すべり比S の実測値をこれらの無次元数で 整理することを検討した.
S = f(Re,Fr,Eö,Cα,T, なと.. ) (5.8)
上式の無次元数の代表長さとしては長辺A, 短辺B, 相当直径Dhあるいは等 価直径Deを採用 することを検討した. その結果同じ代表長さがど の無次元数につ いて も一貫して使用され れば, 後出の式(13) の無次元数の指数はあ まり変わらな いが, Deを用いるとデータのまとまり が若干よかったので, 本報ではこれ を採用 しTこ
図5.4に本実験で得られたすべり比S とフルー ド数 Fr {三(jc + jL)/、rg万:}の関 係 を示した. 図A(a
)
'""'"' (d)は長方形細管の場合, 図B(e) '""'"' (n)は断面が大きい長方 形管の場合 である. 図中の実線は, JL一定とした時のSとFr の関係が両対数軸上 で直線 となると仮定して引いたも ので, 全実験範囲で得られた 勾配の平均値を表 す. 断面が比較的大きい管〈図(i), 図(j) など)では短辺が大きい場合およびJLが 大きい場合勾配が小さくなる傾向が認められるが, ここでは全平均勾配を採用し,フルード数のべき数として0.9 5 を用いた.
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図5.4すべり比Sと フルー ド数Frの関係
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断面の大きい長方形管, つづき 図5.4すべり比Sと フルー ド数Frの関係202
図5.5は5.FTー0.95とレイノルズ数Re(三GDe/μm )の関係を示す. ここに, G は 気液の全質量速度である. μmとしてはHughma.rkら(32)がftow pa.rameter{式(5.2 )の
1/Co}の整理に用い, 一般的にもよく用いられる次式で定義される二相流粘性係 数を用いた.
μm -μGα+μL今 (5.9)
図5.5からレイノルズ数のべき数として図A(a) -- (d)の長方形細管の場合ー1.03,
図B(e) --(n)の断面が大きい長方形管の場合ー1.10を得た.
図5.6は長方形細管について, 5. Fr・-0.95.Re1.03とキャピラリー数 Cα{三μm(jG+
jL)/σL}との関係を示したものである. 図中の実線の勾配の平均値として 0.17を得 た. すなわち, すべり比はキャピラリー数のほぼ0.17乗に比例することがわかる.
一方, 断面が比較的大きい管路に対しては, このキャピラリー数を考慮しない方 が 今の整理式の精度は幾らか良くなる( 5.5.3節, 図5.12(b)と図5.13参照, 図5.12(b) は考慮しない場合, 図5.13は考慮した場合).
以上の整理から, 長方形細管に対する関数11 三S・Frー0.95.Re1.03. Cα一0.17および 断面が比較的大きい長方形管に対する関数12三5 .Frー0・95.Re1.10は, 断面の異な る管路に対して値は異なるが, 同じ管路であ れば気体および液体の流量が異なっ てもほぼ一定の値となることがわかった.
図 5.7にこれらの関数の値とDeを代表長さとするエトパス数Eö {三(PL-PG)g De2/σL }との関係を示した. 図中の実線は, 次式(5.10)の関係を表す.
11 = ん = 1.86 X 103• EöO.75 (5.10)
これらの関係から, 長方形細管および断面が比較的大きい長方形管内のすべり 比Sに対して, それぞれ式(5.11)および式(5.12)が求められる.
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断面の大きい長方形管, つづき図5.5 レ イ ノ ルズ数Reの影 響
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図5.6 キャ ピラリー数Cαの影響
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図5.7 関数
従って,これらのすべり比を式(5.7)に代入して得られる今の整理式は, Deを代 表長さとするエトパス数が10より小さい長方形細管に対しては式(5.13),エトパ ス 数が10以上の断面が比較的大きい長方形管に対しては式(5.14)によって与 え ら れる.
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図5.8は式(5.13)と式(5.14)により求めた今の計算値f)CALと実験値f)EXPの比較を 行ったものである. この図から式(5.13)および式(5.14)によって,今をほぼ::t 15 %以 内の精度で推定できることがわかる.
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図5.8 式
(
5.9)
のμmを用いた平均ホールド ア y プの整理式(
5.13)
および(
5.14)
の計算値と実験値の比較
208
5.5.2 二相流粘性係数の整理式
上述した警理において式(5.9)の二相流粘性係数μmを使用しているが,これには んとのを含んでいる. つまり,0'もしくは今を求めるのに予めこれらを知っておく必要 があり,式(5.9)を用いることは今の整理式としては好ましくない. そこでμmの代わ りにμLまたはμGを用いた場合やMcAdams(33) , Cicchitti(34)およびDukler(35)等が定 義した粘性係数 {式(5. 15)}と置き換えて,整理式を再検討したが, いずれも十分 な整理が得られなかった.
このことは, 式(5.9)のμmで定義された粘度が狭い管路内の気液混合体の粘度 として適切であり,今を精度良く与えるものと思われる. 従って以下では式(5.9)の 今および&に本実験値を代入して求めたμmを実験値として,その整理式を得ること を試みる. その際μmをμLで除した無次元の粘性係数(μm/μL)が,前節の式(5. 8)と 同様に無次元 数の積で与えられると考えた. さらにRe数やCα数は命を用いない以 下の式で定義した. すなわち, まず二相流粘性係数μcならびに二相流平均密度 PC としてそれぞれ&の代わりに容積流量比ß{式(5.2)参照}を用いた次式を定義した.
μc=ßμG + (1- ß)μL Pc = ßpG + (1 - ß)PL
(5. 15)
(5.16)
また前節で用いたフルード数Frのほか新たにレイノルズ数ReL(三PC • jL . De / μc ), Rem {三PC・(jG + jL) . De/μc }とキャピラリー数CαG (三μC' jG /σL ) などもFを用いて定義し,これらと( μm / μL )との相関を検討した.
図5.9は, これらの検討結果を示したものである.
図(a.) --図(d)は長方形細管の場合,図(e) --図(n)は断面が大きい長方形管の場 合である.
図(a.)および図(b)の長方形細管 1x1mmおよび2x1mmの場合,すなわちDeを 代表長さとするエトパス数が 0.5以下の場合は,式(5.17)に示すf(μ)に加え,さ らに気相で定義したウェパー数WeG(三PGDejG2/σL )の影響を考慮すると,f(μ) . M匂Gー0.07 の値は,気体および液体の流量が異なっても士20%以内でほぼ一定となる ことがわかる. 図(c )および図(d)の 5x1mmおよび9.9x1 .1mmの場合,f(μ)の値 が,::t 20%以内となることがわかった.
f(μ) = (μm/μL).Frー1.01.ReLO.71.CαG0 13.Remo25・(1- ß)-1.15 (5.17)
一方, 図(e) --図(n)の断面が大きい長方形管の場合, f(μ)の値は, それぞれの 管路についてその平均値から::t 20%以内の値であることを示しているが, 幾分Jc の影響が残る場合もみられる. この場合同1eCを考慮し整理するとその指数は小さ く, 後出の図.5.10で示すエトパス数との関係が良好でないため, 図(c)および図(d) の場合 も考慮して縦軸はf(μ)で表した. すなわち, f(μ)の値が士20%以内でほぼ
一定であることから, それぞれの管路についてf(μ)の平均値を算出した.
なお, これらの図ではとくに長方形細管 9.9x1.1mmの場合の JLがO.lm/ SでJcが
0.5および 0.77ì7,/sの実験結果は平均より小さく, 以下の図でも幾らかぱらつきが大
きいことがわかった.
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2
y = 4.72x103
103L 1O-�
2jG m/s (h) 36.4
x9.3
mm図5.9
f ( μ ) の値 (
B, 断面の大きい長方形管 )
211
6 4
",-.、
とえ +20%
」〆
� 2
103 8 6 1...;
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(1)
40.0 x 4.0 mm212
図5.9
f(μ)の値(
B, 断面の大きい長方形管, つづき)
4
--、、
とえ 2
\、J
外吋
104 8 6
4
10-1 2 4 2
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x4.0 mm
8 (ミ)同 6
2
-20%
104 8 L-..:
10-" 2 4 6 8 100 2 4 6 8 101
jG m/s (n) 160.0
x4.0 mm
213
図5.9
f(μ)の値(
B, 断面の大きい長方形管, つづき)
214
図5.10はこれら定数の平均値とDeを代表長さとするエトパス数との関係を示し たものである. この図から式(5.18)が求められるが,命の推定精度を良好にするた めにEö三2.0の範囲では式(5.19)を採用した. なお, 式(5.18)と式(5.19)のyは,
Eö > 0.5では式(5.17)のf(μ)を,Eö�0.5ではf(μ). W eG -0.07を示す.
y = 151.5 ・EÖO.706 (5.18) y = 141.8・EÖO.596 (5.19)
以上のこと から μmの整理式として,Eöど2.0では式(5.20)を, 0.5三Eö < 2.0では 式(5.21)を, エトパス数が0.5より小さい範囲では式(5.22)が提案される.
Eö-;三2.0の場合,
μm=151.S・EÖO.706•μL.Fr1.01.ReL-O.71.CαGーO 13.Rem-O 25・(1- ß)1.15 (5.20)
0.5<Eöく2.0の場合,
μm = 141.8・EるO別・μL.Fr1.01.ReLーO.71.CαG-0.13. Rem -0.25・(1- ß)1.15 (5.21)
Eö < 0.5の場合,
μm = 141.8・Eる0.596.μL.Frl.01.ReL-O.71.CαG -0.13. Rem -0.25・(1ーの1.15. WeGO.07
(5.22) 図5.11は μmの全実験値と式(5.20)--式(5.22)による計算値 μcalとの比較を示した ものである. μmは約::t 20%で、推定されることがわかる.
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1.0x 1.0 0.22 2.0x 1.0 0.49 5.0x 1.0 1.96 9.9x 1.1 6.63 14.0x 6.9 23.8 14.6x14.6 46.4
21.8x10.8 57.8 29.0x 9.7 81.5 32.3x16.0 126.9 36.4x 9.3 113.6 40.0x 4.0 105.3 80.0x 4.0 383.9 80.0x 7.9 420.6
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rms= 1.1 %10-4 2 4 6 8 103
μcal
Pa . s図5.11 μmの整理式(5.20) -- (5.22)による μmの計算値と実験値の比較
AxB
ロ1町1 I
。 1.0x 1.0 I
① 2.0x 1.0 I
• 5.0x 1.0 の 9.9x 1.1 E込 14.6x14.6 θ 21.8x10.8
a‘ 29.0x 9.7 口 36.4x 9.3 () 14.0x 6.9 ー 32.3x16.0
@ 80.0x 7.9
• 40.0x 4.0
⑨ 80.0x 4.0
‘〉 160.0x 4.0
216
5.5.3 ホールドア ッ プの推定手順
本論文の鉛直長方形管における平均ホールドアップの推定手順を以下に述べる.
(1)次の因子,すなわち管寸法A,B,気体および液体のみかけ速度Jc,JLまた は質量流量G,GC• GLおよび物性値ρC. PL. μc. μL. σLは通常あらかじめ既知で あると考えてよい. これらより. DeとEö数を定める.
(2) 式(.5.20) ---式(5.22)で用いる無次元数Fr. ReL . Rem • Cαc. Wec およ び(1ーのを定める.
(3)二本日流粘性係数 μmを Eö数の条件によって式(5.20) ---式(5.22) によって決定 する.
(4) 式(5.13)と式(5.14)に含まれる無次元数Re数(三G. De/μm )およびCα数(
三μm ( jc + jL ) /σL )を定める.
(5)平均ホールドアップのをEö数の値によって式(5.13)もしくは式(5.14)によって 決定する.
図5.12は上記の(1) -- (5)の手順に従って算定した今の計算値77CALと本実験値77EXP の比較を行ったものであり,(a)は長方形細管の場合,(b)は断面が比較的大きい長
方形管の場合である.
図5.12から命はほぼ::t 20 %以内の精度で推定 されることがわかる.
図5.13は手順(5)で,断面の大きい長方形管の今を長方形細管で得た式(5.13)から 推定した結果である. 図5.13では. 40x4 mlllおよび80x4 mmの一部の結果は精度 が良くない. これらは,それぞれJLが 2.7m/sおよび 2.1m/sのJLが大きい範囲に該 当する〈第5.2節表5.2参照) . 図5.12(b)との比較から,幾分推定精度は低くなる が,上述の結果を除くと式(5.13)は断面の大きい長方形管の今を比較的良好に推定 できると判断される.
なお,これらの整理式から得られるホールドアップは,液体の粘性の増加によっ て増加し,表面張力の増加によっては逆に減少する.
表5.3中には本論文で提案した命の整理式について,平均誤差とrms 値も下 3段 にまとめている.
これらの表から,今の統一的整理式としての式(5.13). エトパス数の範囲により 区分した場合式(5.13)と式(5.14)は,従来公表されているいずれのものよりよい精 度でホールドアップを予測することができ,有用であることがわかる.
1.0 0.9 0.8 司0.7υ
〈含0.6 0.5
0.2 0.1 0
0
沼 nu Qo AU
6 E
O 〈 η,
A且T nu
うん nu
(
a)
長方形細管の場合{式(5.13)}1.0 0.9 0.8 7
6 5 4 3 2 1 0
臥 仏 仕 臥 a 仏 仏 O
J〈υPJ‘、
mm I ム 14.6x14.61
θ 21.8xl0.81
... 29.0x 9.7
口 36.4x 9.31 () 14.0x 6.91 ー 32.3x16.0
@ 80.0x 7.9
• 40.0x 4.0
ー 80.0x 4.0
‘〉 160.0x 4.0
217
rms=
ハU oδ AU WM
fo E
O 〈 η,
A斗 nu
今L nu
(
b)
比較的断面が大きい管路の場合 {式(5.14)}図5.12 μmの整理式を用いた平均ホールドア ッ プ の整理式
(
5.13)
および(
5.14)
の計算値と実験値の比較 1.0
0.9 0.8 107 υ
〈乞ー0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0
。
rms=
11
ム 14.6x14.6 A� I
θ 21.8xl0.8
』‘ 29.0x 9.7
口 36.4x 9.3
() 14.0x 6.9
ー 32.3x16.0
@ 80.0x 7.9
• 40.0x 4.0
ぞち 80.0x斗.0
‘〉 160.0x 4.0
0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 ηEXP
図5.13 比較的断面が大きい管路の平均ホールド ア y プを長方形細管iこ対する整理式
(
5.13)
により推定した場合
5.6 第5章のまとめ
218
4種類の長方形細管と 10種類の断面が比較的大きい長方形管における平均ホー ルドアップの空気-水系の実験結果を用いて, 平均ホールドアップの特徴とその整 理式を検討し , 以下の結論を得た.
(1)長方形細管内のフロ ス流および環状流領域において, アスペクト比が小さい 場合の平均ホールドアップは, 液体が片隅に停滞し易く , アスペクト比が大きい場
合や相当直径が同程度の円管の場合に比べ大きくなることがわかった.
(2) 本実験で得られた長方形細管を含む狭い長方形管内の平均ホールドアップ は, 従来の整理式では満足な精度で整理できないことを明らかにした
(3)本章で新たに提案した長方形細管に対する平均ホールドアップの整理式と推 定手法は, 精度のよい予測値を与え, これはまた断面が比較的大きい長方形管に 対する整理式としても有効であることを示した.
文 献
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222 第6章 総 括
本研究において, 管径が6n1lTI ----0.5n1mの6種類の鉛直細円管と短辺がln1m, 長 辺が1111lU ---- 10 11llTI (アスペクト比が1 "v 10 )の4種類の鉛直長方形細管に, 断面 が比較的大きく, 短辺が4lum---- 16lTIm , 長辺が14 mm"v 160mm (アスペクト比が1
"v 40 )の10種類の水平, 傾斜および鉛直の長方形管を加えた管路系における非加
熱空気-水二相流の実験を基に細円管および狭い長方形管内気液二相流の流動現 象について, 以下のことが明らかになった
第2 章において, 細円管および長方形細管内の液体塊速度の特徴を詳細に調査 し以下のことを明らかにした
(
1)
細円管内の環状流における液体塊速度に管径の影響がみられ, 管径が6 mm から小さくなるに従って液体塊速度は増加傾向を示すが, 管径が約2 .0 mmよりさ らに小さくなると急激に減少する. これは表面張力に加え粘性も速度に影響を与えていることを示唆する.
(
2)
細円管内の環状流における液体塊は, 管径が6.0 mmから約 2 .0 mn1までの管 内に出現する速い速度を有するいわゆる, じよう乱波で構成された波群と, 管径が 2.0 mm付近から0.5 mmまでの管内にみられる遅い速度を有する基底波で構成さ れた波群の二種類に分けられる. じよう乱波は波長が長く波高も高いが, 管径が約 2.0 mmより 小さくなると波長が短く波高も低い波がしだいに支配的となり, 管径が2.0 mmおよび1.45 mmでは両方の特性を示す波群が混在する. 本研究では, こ れら二種類の波速度に対する整理式を提案した. これらの式により, ±30%程度 の精度で細円管の場合の平均波速度を予測することができる.
(
3
)
一つの液体塊の質量を重みとした加重平均速度から定義する新しい平均速度 決定法を提案した. さらに, この速度の特徴に基づいて, スラグ流, フ ロ ス流およ び環状流の流動様式を定量的に区分する方法についても提案した.第3章において, 流動様式の特徴を検討した. その結果は以下のように要約さ れる.
(
1)
断面が比較的大きい長方形管の傾斜管内で観察されるこ相流の流動様式は,気ほう流, 気ほうスラグ流, スラグ流, フロ ス流および環状流(傾斜角が小さい場
合, 分離流)の5形式に大別されること, またアスペクト比が大きい管路に特有な 流れについて鉛直の場合および管路を横長および縦長に設置した場合の流れの特 徴を明らかにした.
(
2)
細円管内およびアスペクト比が小さい場合の長方形細管内で, 表面張力と 粘性の影響が大きいと思われる流れの特徴, すなわち連鎖気体スラグの存在およ び気体スラグ後端部の曲率が特有の形状を示すなどの特徴を明らかにした. また,アスペクト比が大きい場合, 気相が左右に激しく揺動しながら上昇することから,
液相も乱れ気相内に液塊を複雑に巻き込み, いわゆる狭い管路に特有な流れが出 現することを明らかにした.
(
3)
液体塊の加重平均速度特性を基にした新しい流動様式の定量的判別法を用 い, 細円管および 狭い長方形管に対する流動様式線図を得た. 本実験の垂直細円 管の結果は, 水平細円管の仮屋崎らの結果と良く一致した. しかし, 狭い長方形 管の場合アスペクト比の影響がその流動様式線図上に残ることが判明した.第4章におけるこ相流の摩擦圧力損失の検討結果から以下の ことがわかった.
(
1)
Lockha.rt-
Martinelliおよび赤川らの整理法によって, 断面が比較的大きい長方形管内でのゆLの本実験結果 を精度良く整理できなかった. 特に傾斜角が大きく 液体のみかけ速度が低い場合管壁近傍の液体の一部が逆流現象を引き起こすよう
な流動様相のとき, ぱらつきが大きかった. 傾斜角が小さく なると, アスペクト比 や管路の設置方法の違い(横長と縦長)が, 二相流の摩擦圧力損失の差異を生じ させた. 特に大きいアスペクト比をもっ横長の管路におけるこ相流の摩擦圧力損 失は, 全実験範囲において他の管路よりも大きかった.
(
2)
長方形管内の水平分離流モデルに基づいた式に, 管路断面の幾何学的形状と 管路の傾斜角および液体レイノルズ数の影響を考慮に入れた二相流の摩擦圧力損 失の整理式を提案した. この整理式は断面が比較的大きい長方形管の 相当直径が 約10mmより大きい管路とそれより小さい管路について二通りの式に分けられ,実験値は約i: 30 %の 精度で整理された.
(
3)
管径0.9mmおよび2.0mn1の細円管におけるこ相流の摩擦圧力損失の本実験 結果は, 深野らの 提案式にか なり良く一致した. さらに, 深野らの提案式にアス ペクト比の影響を考慮し長方形細管内の二相流の摩擦圧力損失の整理式として良224
好な式を得た. この式を用いると長方形細管内におけるこ相流の摩擦圧力損失は 土15%以内の精度で推定される.
第5章において, 4種類の長方形細管と10種類の断面が比較的大きい長方形管 における平均ホールドアップの特徴とその整理式について検討し, 以下の結論を 得た.
(1)長方形細管内のフ ロ ス流および環状流領域においては液体が四隅に停滞し易 く, アスペクト比が小さい場合の平均ホールドアップは, アスペクト比が大きい場 合や相当直径が同程度の円管の場合に比べ大きくなることがわかった.
(2) 本実験で得られた長方形細管を含む狭い長方形管内の平均ホールドアップ は, 従来の整理式では満足な精度で整理できないことが明らかとなった.
(3)本研究で新たに提案した長方形細管内気液二相流に対する平均ホールドアッ プの整理式と推定手法は, 精度のよい予測値を与え, これに修正を加えれば断面 の比較的大きい長方形管に対する整理式としても有効であることを示した.
謝 辞
九州大学大学院工学研究科機械工学専攻 深野徹教授には, 本研究を始める契 機を与えて頂きますとともに, 研究の遂行と論文のとりまとめに際して常に懇切 丁寧な御指導と御鞭縫を賜りました. 深野徹教授の御指導御鞭援に心より感謝申 し上げます.
九州大学大学院工学研究科機械エネルギー工学専攻 井上雅弘教授および吉田 駿教授ならびに知能機械工学専攻 古川明徳教授には, 本論文の執筆とまとめる に際して有益な御討論ならびに御指導を賜りました. ここに深く感謝の意を表し ます.
九州大学工学部機械工学科 渡部正夫助教授および松下大介助手ならびに原義 則技官を始め流動工学研究室の方々には, 国内留学時における研究を含めて本研 究の遂行に際し貴重な御助言と御激励を賜りました. ここに深く感謝の意を表し ます.
鹿児島大学工学部機械工学科 松村博久教授および門久義教授ならびに野崎勉 教授を始め機械工学科の諸先生には, 研究の遂行と公私にわたり御指導と御鞭縫 を賜りここに深く感謝の意を表します.
実験装置等の製作にあたっては, 鹿児島大学工学部中央実験工場高橋肇主任, 有 馬武城技官および吉永謙二技官を始め多くの力強い御協力を戴きました. ここに 深く謝意を表します. また, 実験結果の収得にこれまで御協力いただいた現在お よび当時の鹿児島大学工学部機械工学科(流体工学研究室)の学部4年および大 学院修士課程の諸氏に感謝致します.
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付録A 実験条件(気体および液体のみかけ速度,
系内圧力〉の設定プロ グラ ム
本実験では, 気体のみかけ速度Jcと液体のみかけ速度JLの組み合わせにより気 液二相流を形成し実験を行った. 各実験点(第2章, 図2.4参照)における系内圧 は本実験範囲でその最大値が約0.2MPaであり, 本実験では各実験点、の系内圧がほ
ぼ一定となるように系内圧を制御した.
これらの系内圧の制御とJcおよびJLの設定は, 次頁以降に示すマクロアセンブ ラとフォートラン言語を用いた実験条件の設定プログラムによって行った. これら のプログラムの実行手順は以下のとおりである.
始めに, 管路の種類(管寸法), 計測j器の初期値および実験点のおとJLを設定条 件として入力した後, 系内圧が約 0.2 =t 2 % MPaになるようにセバレータ上部に 設置したレリーフバルブを調節する. これと同時に気体および液体流量
(
jcとJLの値
)
を二一ドルバルブによって調節し, 系内圧, JcおよびJLの値が所定の条件にな るように繰り返す( DAボードを介して制御弁の駆動も可能である). この間, 系 内圧, JcおよびJLの値は, 時々刻々CRT画面に図式的に表示される.これらが全て設定値の=t2%以内となる条件を満たした場合(FORTRANプログ ラムのSUBROUTINE JUDGEで判断), ブザー音が鳴動し二相流の実験が開始され る. この間, 液膜波形, ボイド率, 圧力損失および流動様式などのデータサンプリ ングは他の計算機によって行われ, 実験終了時に牛一入力により実験中の温度, 圧 力, 気体および液体流量などの結果も計算機内に記録される.