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雑誌名 同志社法學

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憲法一九条適合性の判断枠組み・違憲審査基準 :  国旗国歌起立斉唱事件を中心的検討素材として

著者 竹中 勲

雑誌名 同志社法學

巻 65

号 3

ページ 605‑638

発行年 2013‑09‑30

権利 同志社法學會

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000014583

(2)

(   )憲法九条適合性の判断枠組み・違憲審査基準同志社法学 六五巻三号

― ― 国 旗 国 歌 起 立 斉 唱 事 件 を 中 心 的 検 討 素 材 と し て ― ―

竹    中         

目次はじめに  ㈠ 憲法訴訟における審査項目  ㈡ 憲法九条により保障される自由の範囲第章 教師に対する起立斉唱職務命令の憲法九条適合性の判断枠組み・違憲審査基準  起立斉唱職務命令事件〇年小法廷判決多数意見の判断枠組み・違憲審査基準  ㈠ 起立斉唱職務命令事件〇年小法廷判決多数意見の位置づけ  ㈡ 起立斉唱職務命令事件〇年小法廷判決多数意見における﹁段の構造﹂  ㈢ 起立斉唱職務命令の﹁直ちに制約﹂・﹁間接的な制約﹂該当性第段(憲法九条の自由の﹁制約該当性﹂)   ⑴ 内心に反する外部的行為の﹁強制﹂の有無に関する判定方法

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(   )同志社法学 六五巻三号憲法九条適合性の判断枠組み・違憲審査基準    ⑵ 起立斉唱職務命令は憲法九条の自由を﹁直ちに制約﹂するものとはいえない   ⑶ 起立斉唱職務命令は憲法九条の自由の﹁間接的な制約となる面がある﹂  ㈣ 起立斉唱職務命令(=﹁間接的な制約﹂)の憲法九条適合性の判断枠組み・違憲審査基準第段(憲法九条の自由の﹁制約許容性﹂)  宮川光治裁判官反対意見(第小法廷)の判断枠組み・違憲審査基準﹁真摯性に関する審査﹂を経ての﹁厳格な基準﹂   ⑴ ﹁真摯性に関する審査﹂   ⑵ ﹁厳格な基準﹂の内容   ⑶ 宮川反対意見に対する若干のコメント 三 田原睦夫裁判官反対意見(第三小法廷)の判断枠組み・違憲審査基準起立職務命令と斉唱職務命令の区別論   ⑴ 起立職務命令は﹁間接的な制約﹂に該当し必要性・合理性基準のもとで合憲である   ⑵ 斉唱職務命令の違憲審査基準   ⑶ 田原反対意見に対する若干のコメント第章 児童生徒に対する起立斉唱指導行為の憲法九条適合性の判断枠組み・違憲審査基準  憲法事例問題(中学校生徒入学式起立斉唱指導事件)  児童生徒に対する公権力の教育・指導行為のいかなるものが起立斉唱の﹁強制﹂に該当するか  ㈠ 憲法学説  ㈡ 判例の立場起立斉唱職務命令事件〇年小法廷判決の示唆するもの 三 児童生徒に対する起立斉唱指導行為の憲法九条適合性の判断枠組み・違憲審査基準  ㈠ 児童生徒に対する起立斉唱指導行為の﹁直ちに制約﹂・﹁間接的な制約﹂該当性第段(制約該当性)  ㈡ 式典後の児童生徒に対する起立斉唱指導行為(=﹁間接的な制約﹂)の憲法九条適合性の判断枠組み・違憲審 六〇六

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(   )憲法九条適合性の判断枠組み・違憲審査基準同志社法学 六五巻三号三 査基準第段(制約許容性)  憲法事例問題に対する解答例  ㈠ 基本的な解答パターンの諸類型  ㈡ ﹁起立斉唱職務命令事件〇年小法廷判決多数意見内在的主張型﹂を前提とした場合の中学校生徒の訴訟代理人の憲法上の主張  ㈢ 中学校生徒入学式起立斉唱指導事件における判決の内容   ⑴ 中学校生徒の未成熟性に依拠した反論とこれに対する判決の内容   ⑵ 学習指導要領の法的拘束力等に依拠する反論とこれに対する判決の内容

は じ め に

  憲 法 九 条 は 、﹁ 思 想 及 び 良 心 の 自 由 は 、 こ れ を 侵 し て は な ら な い ﹂ と 定 め る 。   本 稿 は 、 国 旗 国 歌 起 立 斉 唱 事 件 を 中 心 的 検 討 素 材 と し て 、 憲 法 九 条 適 合 性 の 判 断 枠 組 み ・ 違 憲 審 査 基 準 に つ い て 検 討 し よ う と す る も の で あ る

)1

。 本 稿 は 、 憲 法 訴 訟

)2

に お け る 憲 法 適 合 性 の 判 断 枠 組 み ・ 違 憲 審 査 基 準

)3

の 検 討 の 環 を な す 。   憲 法 九 条 を め ぐ る 憲 法 訴 訟 は 、 類 型 的 に は 、 ⅰ 公 権 力 と 私 人 と の 間 の 訴 訟 と ⅱ 私 人 相 互 間 の 訴 訟 と に 大 別 さ れ る 。 ⅱ と し て は 、 私 的 団 体 ( と く に 強 制 加 入 団 体 ) に お け る 多 数 決 決 定 を 当 該 団 体 の 構 成 員 が 憲 法 九 条 等 を 援 用 し て 争 う 訴 訟 な ど が あ る

4

。   本 稿 で は 、 検 討 対 象 を 限 定 し 、 ⅰ の 類 型 の う ち 、( 憲 法 六 条 項 前 段 に い う )﹁ 普 通 教 育

5

﹂ に お け る 国 旗 国 歌 起 立 斉 唱 事 件 の 類 型

公 立 小 中 学 校 教 師 に 対 す る 起 立 斉 唱 職 務 命 令 事 件 と 公 立 小 中 学 校 児 童 生 徒 に 対 す る 起 立 斉 唱 指 導 事

六〇七

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(   )同志社法学 六五巻三号憲法九条適合性の判断枠組み・違憲審査基準

を 主 た る 検 討 素 材 と し 、 こ の 類 型 に 関 す る 最 高 裁 判 例 の 到 達 点 ・ 現 段 階 の 分 析 を 主 た る 検 討 対 象 と す る 。

㈠ 憲法訴訟における審査項目

  憲 法 訴 訟 に お け る 審 査 項 目 は 、 た と え ば 、 次 の 五 つ に 大 別 す る こ と が 可 能 で あ る 。 審 査 項 目 Ⅰ

① 訴 訟 当 事 者 が 援 用 す る 憲 法 条 文 に よ り 保 障 さ れ る 憲 法 上 の 権 利 利 益 の 内 容 の 審 査 ・ 確 定 、 お よ び 、 ② 争 わ れ る 当 該 公 権 力 の 行 為 ( 法 令 、 処 分 な ど ) は 当 該 憲 法 上 の 権 利 利 益 を 制 約 す る も の と と ら え ら れ う る か ( お よ び 、 当 該 制 約 は 当 該 憲 法 上 の 権 利 の 直 接 的 制 約 か 間 接 的 な 制 約 か な ど ) の 審 査 ・ 確 定 。 審 査 項 目 Ⅱ

当 該 憲 法 上 の 権 利 利 益 を 制 約 す る 当 該 公 権 力 の 行 為 の 法 令 上 の 根 拠 規 定 の 有 無 ・ 十 分 性 の 審 査 ( 行 政 活 動 に 対 す る 立 法 部 に よ る 授 権 の 原 則 ・ 憲 法 条 等 ) 、 当 該 処 分 等 の 直 接 の 根 拠 規 定 と な っ て い る 行 政 規 則 は 法 律 の 委 任 の 範 囲 内 に あ る か の 審 査 ( 憲 法 七 三 条 六 号 、 国 家 行 政 組 織 法 三 条 ) 、 当 該 根 拠 規 定 と な っ て い る 条 例 は 法 律 の 範 囲 内 に あ る か な ど の 審 査 ( 憲 法 九 条 、 地 方 自 治 法 条 ・ 五 条 ) 。 審 査 項 目 Ⅲ

目 的 審 査 ( 当 該 憲 法 上 の 権 利 利 益 の 制 約 の 目 的 の 確 定 と そ の 正 当 性 の 審 査 )。 審 査 項 目 Ⅳ

手 段 審 査 ( 当 該 制 約 目 的 を 達 成 す る た め の 手 段 の 確 定 と そ の 相 当 性 の 審 査 )。 審 査 項 目 Ⅴ

救 済 方 法 の 審 査 ( 当 該 憲 法 上 の 権 利 利 益 の 制 約 が 違 憲 と 判 断 さ れ た 場 合 に 付 与 さ れ る 救 済 方 法 の 審 査 )。   な お 、 論 者 に よ り 、 審 査 項 目 Ⅱ は ﹁ 形 式 的 正 当 化 ﹂ レ ベ ル 、 審 査 項 目 Ⅲ お よ び Ⅳ は ﹁ 実 質 的 正 当 化 ﹂ レ ベ ル と 称 さ れ て い る

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(   )憲法九条適合性の判断枠組み・違憲審査基準同志社法学 六五巻三号五 ㈡ 憲法一九条により保障される自由の範囲

  憲 法 九 条 に よ り 保 障 さ れ る 自 由 の 範 囲 ( 審 査 項 目 Ⅰ ) に つ い て は 、ⅰ 憲 法 九 条 の 保 障 対 象 と な る ﹁ 思 想 及 び 良 心 ﹂ の 範 囲 な い し 内 心 ( 活 動 ) の 範 囲 い か ん 、 お よ び 、 ⅱ 憲 法 九 条 の ﹁ 思 想 及 び 良 心 の 自 由 ﹂ に は ど の よ う な 自 由 が 含 ま れ る か 、 が 検 討 対 象 と な る 。   ⅰ に つ い て 、 判 例 ・ 学 説 は 、 内 心 活 動 般 説 と 限 定 説 と に 大 別 さ れ る ( 限 定 説 は ど の よ う な 限 定 が 加 え ら れ る か に よ り 、 さ ら に 類 型 化 さ れ る こ と に な る )

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。   最 大 判 昭 和 三 ・ 七 ・ ( 謝 罪 広 告 請 求 事 件 ) の 多 数 意 見 は 、 次 の よ う に 述 べ 、 憲 法 九 条 の 保 障 が 及 ぶ ﹁ 良 心 ﹂ の 内 容 ・ 範 囲 に つ い て は 明 言 し な か っ た

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。   ﹁ 時 に は こ れ を ︹ 判 決 で 謝 罪 広 告 を ︺ 強 制 す る こ と が 債 務 者 の 人 格 を 無 視 し 著 し く そ の 名 誉 を 毀 損 し 意 思 決 定 の 自 由 乃 至

良 心 の 自 由 を 不 当 に 制 限 す る こ と と な り 、 い わ ゆ る 強 制 執 行 に 適 さ な い 場 合 に 該 当 す る こ と も あ り う る で あ ろ う け れ ど 、 単 に 事 態 の 真 相 を 告 白 し 陳 謝 の 意 を 表 明 す る に 止 ま る 程 度 の も の に あ つ て は 、 こ れ が 強 制 執 行 も 代 替 作 為 と し て 民 訴 七 三 三 条

︹ 現 行 の 民 事 執 行 法 七 条 ︺ の 手 続 に よ る こ と を 得 る も の と い わ な け れ ば な ら な い ﹂。 本 件 謝 罪 広 告 請 求 は ﹁ 上 告 人 が 判 示 日 時 に 判 示 放 送 、 又 は 新 聞 紙 に お い て 公 表 し た 客 観 的 事 実 に つ き 上 告 人 名 義 を 以 て 被 上 告 人 に 宛 て ﹃ 右 放 送 及 記 事 は 真 相 に

相 違 し て お り 、 貴 下 の 名 誉 を 傷 け 御 迷 惑 を お か け い た し ま し た 。 こ こ に 陳 謝 の 意 を 表 し ま す ﹄ な る 内 容 の も の で 、 結 局 上 告 人 を し て 右 公 表 事 実 が 虚 偽 且 つ 不 当 で あ つ た こ と を 広 報 機 関 を 通 じ て 発 表 す べ き こ と を 求 め る に 帰 す る 。 さ れ ば 少 く と も こ

の 種 の 謝 罪 広 告 を 新 聞 紙 に 掲 載 す べ き こ と を 命 ず る 原 判 決 は 、 上 告 人 に 屈 辱 的 若 く は 苦 役 的 労 苦 を 科 し 、 又 は 上 告 人 の 有 す る 倫 理 的 な 意 思 、 良 心 の 自 由 を 侵 害 す る こ と を 要 求 す る も の と は 解 せ ら れ な い 。﹂ ( 傍 線 は 筆 者 が 追 加 。 以 下 、 同 じ )。   同 大 法 廷 判 決 に は 、 限 定 説 に 属 す る と 読 め る 田 中 耕 太 郎 長 官 の 補 足 意 見 ( 憲 法 九 条 の ﹁ 良 心 ﹂ は 、﹁ 宗 教 上 の 信 仰 に 限

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(   )同志社法学 六五巻三号六憲法九条適合性の判断枠組み・違憲審査基準

ら ず ひ ろ く 世 界 観 や 主 義 や 思 想 や 主 張 を も つ こ と に も 推 及 さ れ て い る ﹂ と し 、﹁ 謝 罪 の 意 思 表 示 の 基 礎 と し て の 道 徳 的 の 反 省 と か

誠 実 さ と い う も の を 含 ま な い と 解 す る ﹂ と し 、﹁ 本 件 は 憲 法 九 条 と は 無 関 係 ﹂ で あ る と し た ) 、 内 心 活 動 般 説 に 属 す る と 読 め る 意 見 お よ び 反 対 意 見 が あ る ( 入 江 俊 郎 裁 判 官 の 意 見 は 憲 法 九 条 の 良 心 の 自 由 を ﹁ 倫 理 的 判 断 ﹂ の 自 由 と 、 藤 田 八 郎 裁 判

官 の 反 対 意 見 は ﹁ 事 物 に 関 す る 是 非 弁 別 の 内 心 的 自 由 の み な ら ず 、 か か る 是 非 弁 別 の 判 断 に 関 す る 事 項 を 外 部 に 表 現 す る の 自 由 並 び に 表 現 せ ざ る の 自 由 ﹂ と 、 垂 水 克 己 裁 判 官 の 反 対 意 見 は ﹁ 内 心 の 善 悪 の 判 断 ﹂ の 自 由 と と ら え て い る ) 。   最 三 小 判 平 成 九 ・ ・ 七

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( ピ ア ノ 伴 奏 職 務 命 令 事 件 ) の 多 数 意 見 、 お よ び 、 後 述 す る 〇 ( 平 成 三 ) 年 の 起 立 斉 唱 職 務 命 令 事 件 小 法 廷 判 決 の 多 数 意 見 は 、 限 定 説 を 採 る 立 場 か ら 、 憲 法 九 条 の ﹁ 思 想 及 び 良 心 ﹂ を 基 本 的 に は ﹁ 世 界 観 、 歴 史 観 ﹂ に 限 定 し て と ら え る 趣 旨 の 判 示 を 行 な っ て い る と 読 む こ と が で き る ( な お 、 後 述 す る よ う に 、 こ の 点 に つ い て は 、 論 者 に よ り 読 み 方 は 致 し て い な い ) 。   ⅱ の 論 点 に つ い て は 、 た と え ば 、  佐 藤 幸 治 説 ( 〇 年 ) は 、 限 定 説 の 立 場 に 立 っ て 、 憲 法 九 条 は 、 ① ﹁﹃ 思 想 及 び 良 心 ﹄ を 告 白 す る よ う 強 制 さ れ ま た は 推 知 さ れ な い 自 由 ﹂、 す な わ ち 、﹁ 憲 法 九 条 に 根 拠 す る 沈 黙 の 自 由 ﹂、 お よ び 、 ② ﹁ 特 定 の ﹃ 思 想 及 び 良 心 ﹄ を 組 織 的 に 宣 伝 ・ 教 化 さ れ な い 自 由 ﹂ を 保 障 し て い る と し 、 ま た 、 ③ ﹁ 般 的 法 義 務 お よ び 外 部 的 行 為 の 強 制 ( 規 制 ) に か か わ る 問 題 ﹂ に つ い て 述 べ て い る

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。   ③ に 関 連 す る ﹁ 内 心 に 反 す る 外 部 的 行 為 を 強 制 さ れ な い 自 由 ﹂ に つ い て 、 最 三 小 判 平 成 九 ・ ・ 七 ( ピ ア ノ 伴 奏 職 務 命 令 事 件 ) の 調 査 官 解 説 は 、 同 判 決 で は ﹁ 内 心 に 反 す る 外 部 的 行 為 を 強 制 さ れ な い 自 由 ﹂( 内 心 に 反 す る 外 部 的 行 為 の 強 制 が 憲 法 九 条 に 違 反 す る か ) が 問 題 と さ れ て い る と し 、( 同 判 決 以 前 に は )﹁ 内 心 に 反 す る 外 部 的 行 為 の 強 制 が 憲 法 九 条 違 反 に な り 得 る か と い う こ と に つ い て 、 明 示 的 な 判 断 を し た 判 例 は 見 当 た ら な い ﹂ と し て い る

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。 ま た 、 後 述 す る 〇 年 の 起 立 斉 唱 職 務 命 令 事 件 第 ・ 第 ・ 第 三 小 法 廷 判 決 の 多 数 意 見 は 、 限 定 説 の 立 場 に 立 っ た 上 で 、﹁ 内

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(   )憲法九条適合性の判断枠組み・違憲審査基準同志社法学 六五巻三号

心 に 反 す る 外 部 的 行 為 を 強 制 さ れ な い 自 由 ﹂が 定 範 囲 に お い て 憲 法 九 条 に よ り 保 障 さ れ る と 明 示 的 に 判 示 し て い る 。

第 章  教 師 に 対 す る 起 立 斉 唱 職 務 命 令 の 憲 法 九 条 適 合 性 の 判 断 枠 組 み ・ 違 憲 審 査 基 準

  ﹁ 内 心 に 反 す る 外 部 的 行 為 を 強 制 さ れ な い 自 由 ﹂ が ど の 範 囲 に お い て 憲 法 九 条 に よ っ て 保 障 さ れ る か に 関 す る 最 高 裁 判 所 の 現 段 階 を 示 す 判 例 と し て は 、 教 師 に 対 す る 起 立 斉 唱 職 務 命 令 の 憲 法 九 条 適 合 性 の 判 断 枠 組 み に つ い て 判 示 し た 〇 年 の 次 の つ の 小 法 廷 判 決 を あ げ る こ と が で き よ う

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。   最 小 判 平 成 三 ・ 五 ・ 三 〇 民 集 六 五 巻 号 七 八 〇 頁 ( 都 立 高 等 学 校 教 師 が 不 起 立 不 斉 唱 を 理 由 と す る 再 雇 用 不 合 格 を 争 う 国 家 賠 償 請 求 事 件 。 多 数 意 見 ︹ 須 藤 正 彦 ・ 古 田 佑 紀 ・ 竹 内 行 夫 ・ 千 葉 勝 美 ︺、 竹 内 補 足 意 見 、 須 藤 補 足 意 見 、 千 葉 補 足 意 見 。

判 時 三 号 三 頁 ・ 判 タ 三 五 号 五 頁 ) 。   最 小 判 平 成 三 ・ 六 ・ 六 民 集 六 五 巻 号 八 五 五 頁 ( 都 立 高 等 学 校 教 師 が 不 起 立 不 斉 唱 を 理 由 と す る 再 雇 用 不 合 格 を 争

う 国 家 賠 償 請 求 事 件 。 多 数 意 見 ︹ 白 木 勇 ・ 宮 川 光 治 ・ 櫻 井 龍 子 ・ 金 築 誠 志 ・ 横 田 尤 孝 ︺、 金 築 補 足 意 見 、 宮 川 反 対 意 見 。 判 時 三 号 八 頁 ・ 判 タ 三 五 号 六 九 頁 ) 。   最 三 小 判 平 成 三 ・ 六 ・ 民 集 六 五 巻 号 八 頁 ( 東 京 都 八 王 子 市 立 中 学 校 教 師 お よ び 町 田 市 立 中 学 校 教 師 に よ る 不 起 立 不 斉 唱 を 理 由 と す る 戒 告 処 分 等 取 消 請 求 事 件 お よ び 国 家 賠 償 請 求 事 件 。 多 数 意 見 ︹ 田 原 睦 夫 ・ 那 須 弘 平 ・ 岡 部 喜 代 子 ・ 大

谷 剛 彦 ・ 寺 田 逸 郎 ︺、 那 須 補 足 意 見 、 岡 部 補 足 意 見 、 大 谷 補 足 意 見 、 田 原 反 対 意 見 。 判 時 三 号 三 頁 ・ 判 タ 三 五 号 七 五 頁 ) 。   最 三 小 判 平 成 三 ・ 六 ・ 裁 判 集 民 事 三 七 号 五 三 頁 ( 広 島 県 立 高 等 学 校 教 師 に よ る 不 起 立 不 斉 唱 を 理 由 と す る 戒 告 処

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(   )同志社法学 六五巻三号八憲法九条適合性の判断枠組み・違憲審査基準

分 取 消 請 求 事 件 。 多 数 意 見 ︹ 田 原 ・ 那 須 ・ 岡 部 ・ 大 谷 ・ 寺 田 ︺、 那 須 補 足 意 見 、 岡 部 補 足 意 見 、 大 谷 補 足 意 見 、 田 原 反 対 意 見 。 判

時 三 号 三 五 頁 ・ 判 タ 三 五 号 八 七 頁 ) 。

  起 立 斉 唱 職 務 命 令 事 件 〇 年 小 法 廷 判 決 多 数 意 見 の 判 断 枠 組 み ・ 違 憲 審 査 基 準

㈠ 起立斉唱職務命令事件二〇一一年小法廷判決多数意見の位置づけ

  前 記 の つ の 小 法 廷 判 決 に つ い て 、 匿 名 解 説 ( 最 高 裁 調 査 官 ) は 、﹁ 三 つ の 小 法 廷 に お い て そ れ ぞ れ 同 旨 の 判 断 が 示 さ れ 、思 想 及 び 良 心 の 自 由 に 係 る 憲 法 問 題 に つ い て 実 質 的 に 大 法 廷 に 準 ず る 判 断 が 示 さ れ た の と 同 様 の 意 味 を 持 つ ﹂ ( 判

時 三 号 七 頁 ) と 指 摘 し て い る

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㈡ 起立斉唱職務命令事件二〇一一年小法廷判決多数意見における「二段の構造」

  那 須 補 足 意 見 ( 最 三 小 判 平 成 三 ・ 六 ・ ) は 、 ( 最 三 小 判 平 成 九 ・ ・ 七 ︹ ピ ア ノ 伴 奏 職 務 命 令 事 件 ︺ に お い て も 本 判 決 に お い て も ) 多 数 意 見 は ﹁ 段 の 構 造 を 採 っ て い る ﹂ と 指 摘 す る ( 判 時 三 号 七 頁 ) 。 す な わ ち 、第 段 と し て 、 当 該 ﹁ 内 心 に 反 す る 外 部 的 行 為 の 強 制 ﹂ が 憲 法 九 条 の 自 由 の 制 約 ( 直 接 的 制 約 ・ 間 接 的 な 制 約 ) に 該 当 す る か 否 か の 審 査 が 行 わ れ 、 同 制 約 該 当 性 が 認 め ら れ た 場 合 に 、 第 段 と し て 、 当 該 制 約 の 許 容 性 に つ い て の 審 査 が 行 わ れ る 。

㈢ 起立斉唱職務命令の「直ちに制約」・「間接的な制約」該当性―第一段(憲法一九条の自由の「制約該当性」)

⑴  内 心 に 反 す る 外 部 的 行 為 の ﹁ 強 制 ﹂ の 有 無 に 関 す る 判 定 方 法   第 段 の 審 査 に お い て は 、 内 心 に 反 す る 外 部 的 行 為 の ﹁ 強 制 ﹂ の 有 無 を 判 定 す る 基 準 ・ 方 法

た と え ば 、( α ) 当 該

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(   )憲法九条適合性の判断枠組み・違憲審査基準同志社法学 六五巻三号

個 人 の 主 観 的 判 断 に よ り 決 定 す る の か 、 ま た は 、( β ) よ り 客 観 的 な 基 準 に よ り 決 定 さ れ る べ き か

が 問 題 と な る 。   起 立 斉 唱 職 務 命 令 事 件 〇 年 小 法 廷 判 決 多 数 意 見 は 、 後 者 ( β ) の 立 場 を 採 用 し 、﹁ 般 的 、 客 観 的 に み て ﹂ と い う 基 準 を 提 示 す る 。   こ れ に 対 し 、 宮 川 反 対 意 見 ( 第 小 法 廷 ) は 、 後 述 す る よ う に 、 多 数 意 見 の ﹁ 般 的 、 客 観 的 に 見 て ﹂ と い う 基 準 は ﹁ 多 数 者 の 視 点 ﹂ に 立 つ も の で あ る と と ら え た う え 、

る 数 問 の 権 人 の 者 少 で 、﹁ く ﹂ な で 当 題 あ は 考 あ で き べ る え ﹂ る ら か 点 視 う い と 相 と る え 考 み の ら か こ >お 権 す 関 に 精 由 自 的 神 問 そ る よ 題 を ﹁ 人 ( 多 数 者 ) の 視 点 般

ら 九 法 憲 、 は 六 ・ 六 ・ 三 成 の 平 判 小 最 ( 見 意 数 多   条 ) 自 歴 と と ﹂ 観 由 世 し い な 観 史 界 ﹁ 囲 に の 保 範 障 を 、 基 本 的 の 令 条 九 法 憲 は 立 命 務 職 唱 斉 起 ⑵  由 自 ち を も ﹁ い な え い と の は る ﹂ 約 制 に す 直 対 再 る 対 に 見 意 反 論 反 す に 当 す る も の で あ る 。 相 し も 解 決 と て い な い ﹂ 少 し う 、 を 点 題 問 い と う ま し て ね 摘 指 ( す こ る 川 、 は 見 意 足 補 築 金 の 宮 。 頁 号 三 時 判 ) い 心 に お な て 、﹃ 真 摯 の 内 べ 人 の 、﹁ し と き つ 立 に 場 立 関 ﹄ 本 連 は 性 委 に 断 判 的 観 主 人 本 ﹁ の 解 足 が 見 れ ば あ り る ﹂ と の 主 す と る ね 委 に 断 判 的 観 た の 者 有 保 の 等 想 思 該 当 、﹁ 後 ば れ も ﹂﹁ う ) β て( し と る あ で き 法 べ い を の 客 観 ﹂と 性 阻 害 す る の に し と る な 題 、 り 神 精 と こ る れ さ 制 強 あ 苦 が 性 連 関 の と 為 行 問 的 に 痛 り ず ま が 点 う い と を か る ﹂ 感 ば れ あ で 合 場 る じ 足 の れ る 行 為 け 強 制 で な 価 さ 本 評 と 害 侵 に 的 観 客 、 的 般 ば れ て な 主 と 心 良 ・ 想 思 、 ら お に 観 い の 、 な 人 の か い そ れ と も 補 は ) 廷 法 第 、﹁ 見 意 足 ( 築 、金 が る わ か か に 点 の こ   想 思 小 及 制 、 は に め た う い と た っ あ が 強 び 良 心 の 自 由 を 侵 害 す る い は 否 め な で ろ う 。 あ し こ 推 と の も る す か 企 を と と る す う よ し 保 確 を 性 観 客 の 測 図 う 近 る こ る あ が ろ こ と る す 接 と と が 準 、 こ れ が ( α ) の 基 定 提 て し と 案 対 を 法 方 示 査 判 う い と ﹂ 審 の 性 摯 真 ﹁ て し ( い ) に ら 何 く な は で の も の そ α る の 記 上 は 法 方 定 判 の こ 。 は <と 的 体 具 、 し

六三

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(   )同志社法学 六五巻三号〇憲法九条適合性の判断枠組み・違憲審査基準

え た 上 で ( 限 定 説 )、 ﹁ 般 的 、 客 観 的 に 見 て ﹂ と い う 基 準 に よ れ ば 、 起 立 斉 唱 職 務 命 令 は 当 該 教 育 公 務 員 の 憲 法 九 条 の 自 由 を ﹁ 直 ち に 制 約 ﹂ す る も の で は な い と し て 、 次 の よ う に 述 べ る 。 ﹁ 本 件 各 職 務 命 令 の 発 出 当 時 、 公 立 学 校 等 に お け る 卒 業 式 等 の 式 典 に お い て 、 国 旗 と し て の ﹃ 日 の 丸 ﹄ の 掲 揚 及 び 国 歌 と し

て の ﹃ 君 が 代 ﹄ の 斉 唱 が 広 く 行 わ れ て い た こ と は 周 知 の 事 実 で あ っ て 、 学 校 の 儀 式 的 行 事 で あ る 卒 業 式 等 の 式 典 に お け る 国 歌 斉 唱 の 際 の 起 立 斉 唱 行 為 は 、 般 的 、 客 観 的 に 見 て 、 こ れ ら の 式 典 に お け る 慣 例 上 の 儀 礼 的 な 所 作 と し て の 性 質 を 有 す る

も の で 、 か つ 、 そ の よ う な 所 作 と し て 外 部 か ら も 認 識 さ れ る も の と い う べ き で あ る 。 し た が っ て 、 上 記 国 歌 斉 唱 の 際 の 起 立 斉 唱 行 為 は 、 そ の 性 質 の 点 か ら 見 て 、 上 告 人 ら の 有 す る 歴 史 観 な い し 世 界 観 を 否 定 す る こ と と 不 可 分 に 結 び 付 く も の と は い

え ず 、 上 告 人 ら に 対 し て 上 記 国 歌 斉 唱 の 際 の 起 立 斉 唱 行 為 を 求 め る こ と を 内 容 と す る 本 件 各 職 務 命 令 は 、 上 記 の 歴 史 観 な い し 世 界 観 そ れ 自 体 を 否 定 す る も の と い う こ と は で き な い 。 ⋮ ⋮ 本 件 各 職 務 命 令 は 、 こ れ ら の 観 点 に お い て 、 個 人 の 思 想 及 び

良 心 の 自 由 を 直 ち に 制 約 す る も の と 認 め る こ と は で き な い と い う べ き で あ る 。﹂ ( 判 時 三 号 九 頁 )。 ⑶  起 立 斉 唱 職 務 命 令 は 憲 法 九 条 の 自 由 の ﹁ 間 接 的 な 制 約 と な る 面 が あ る ﹂   多 数 意 見 ( 最 小 判 平 成 三 ・ 六 ・ 六 ) は 、 続 い て 、 同 様 に ﹁ 歴 史 観 な い し 世 界 観 ﹂ 説 お よ び ﹁ 般 的 、 客 観 的 に 見 て ﹂ 基 準 に 基 づ き 、 起 立 斉 唱 職 務 命 令 は 当 該 教 育 公 務 員 の 憲 法 九 条 の 自 由 の ﹁ 間 接 的 な 制 約 と な る 面 が あ る ﹂ と し て 、 次 の よ う に 述 べ る 。 ﹁ 上 記 国 歌 斉 唱 の 際 の 起 立 斉 唱 行 為 は 、 般 的 、 客 観 的 に 見 て も 、 国 旗 及 び 国 歌 に 対 す る 敬 意 の 表 明 の 要 素 を 含 む 行 為 で あ る と い う こ と が で き る 。 そ う す る と 、自 ら の 歴 史 観 な い し 世 界 観 と の 関 係 で 否 定 的 な 評 価 の 対 象 と な る ﹃ 日 の 丸 ﹄ や ﹃ 君 が 代 ﹄

に 対 し て 敬 意 を 表 明 す る こ と に は 応 じ 難 い と 考 え る 者 が 、 こ れ ら に 対 す る 敬 意 の 表 明 の 要 素 を 含 む 行 為 を 求 め ら れ る こ と は 、 そ の 行 為 が 個 人 の 歴 史 観 な い し 世 界 観 に 反 す る 特 定 の 思 想 の 表 明 に 係 る 行 為 そ の も の で は な い と は い え 、 個 人 の 歴 史 観 な い

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(   )憲法九条適合性の判断枠組み・違憲審査基準同志社法学 六五巻三号

し 世 界 観 に 由 来 す る 行 動 ( 敬 意 の 表 明 の 拒 否 ) と 異 な る 外 部 的 行 動 ( 敬 意 の 表 明 の 要 素 を 含 む 行 為 ) を 求 め ら れ る こ と と な

る 限 り に お い て 、 そ の 者 の 思 想 及 び 良 心 の 自 由 に つ い て の 間 接 的 な 制 約 と な る 面 が あ る こ と は 否 定 し 難 い 。﹂ ( 判 時 三 号 九 頁 )。

㈣ 起立斉唱職務命令(=「間接的な制約」)の憲法一九条適合性の判断枠組み・違憲審査基準―第二段(憲法一九条 の自由の「制約許容性」)

  多 数 意 見 は 、 憲 法 九 条 の 自 由 の 直 接 的 制 約 (﹁ 直 ち に 制 約 ﹂) に 該 当 す る 公 権 力 の 行 為 = ﹁ 歴 史 観 な い し 世 界 観 を 否 定 す る こ と と 不 可 分 に 結 び 付 く ﹂ 公 権 力 の 行 為 の 憲 法 九 条 適 合 性 の 判 断 枠 組 み ・ 違 憲 審 査 基 準 に つ い て は 、 と く に 明 言 し て い な い

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。   多 数 意 見 は 、( 憲 法 九 条 の 自 由 の ﹁ 間 接 的 な 制 約 と な る 面 が あ る ﹂) 外 部 的 行 動 の 制 限 に つ い て は 総 合 的 較 量 に よ り 、 当 該 ﹁ 制 限 ﹂ が 必 要 か つ 合 理 的 で あ れ ば 当 該 ﹁ 間 接 的 な 制 約 ﹂ は 憲 法 九 条 に 違 反 し な い と の 違 憲 審 査 基 準 を 提 示 し 、 次 の よ う に 述 べ て い る 。 ﹁ 個 人 の 歴 史 観 な い し 世 界 観 に は 多 種 多 様 な も の が あ り 得 る の で あ り 、 そ れ が 内 心 に と ど ま ら ず 、 そ れ に 由 来 す る 行 動 の 実

行 又 は 拒 否 と い う 外 部 的 行 動 と し て 現 れ 、 社 会 般 の 規 範 等 と 抵 触 す る 場 面 に お い て 、 当 該 外 部 的 行 動 に 対 す る 制 限 が 必 要 か つ 合 理 的 な も の で あ る 場 合 に は 、 そ の 制 限 に よ っ て も た ら さ れ る 上 記 の 間 接 的 な 制 約 も 許 容 さ れ 得 る も の と い う べ き で あ

る 。 そ し て 、 職 務 命 令 に お い て あ る 行 為 を 求 め ら れ る こ と が 、 個 人 の 歴 史 観 な い し 世 界 観 に 由 来 す る 行 動 と 異 な る 外 部 的 行 動 を 求 め ら れ る こ と に な る 限 り に お い て 、 当 該 職 務 命 令 が 個 人 の 思 想 及 び 良 心 の 自 由 に つ い て の 間 接 的 な 制 約 と な る 面 が あ

る と 判 断 さ れ る 場 合 に も 、 職 務 命 令 の 目 的 及 び 内 容 に は 種 々 の も の が 想 定 さ れ 、 ま た 、 こ れ に よ っ て も た ら さ れ る 上 記 の ︹ 間

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(   )同志社法学 六五巻三号憲法九条適合性の判断枠組み・違憲審査基準

接 的 な ︺ 制 約 の 態 様 等 も 、 職 務 命 令 の 対 象 と な る 行 為 の 内 容 及 び 性 質 並 び に こ れ が 個 人 の 内 心 に 及 ぼ す 影 響 そ の 他 の 諸 事 情

に 応 じ て 様 々 で あ る と い え る 。 し た が っ て 、 こ の よ う な 間 接 的 な 制 約 が 許 容 さ れ る か 否 か は 、 職 務 命 令 の 目 的 及 び 内 容 並 び に こ れ に よ っ て も た ら さ れ る 上 記 の 制 約 の 態 様 等 を 総 合 的 に 較 量 し て 、 当 該 職 務 命 令 に 上 記 の 制 約 を 許 容 し 得 る 程 度 の 必 要

性 及 び 合 理 性 が 認 め ら れ る か 否 か と い う 観 点 か ら 判 断 す る の が 相 当 で あ る 。﹂ ( 判 時 三 号 九

〇 頁 )。

>教

の す れ ば 、 1 学 校 教 育 法 定 判 め る 高 等 学 校 教 育 の 目 標 定 て 師 務 の 場 合 の 本 件 起 立 斉 唱 職 命 い 令 の 必 要 性 ・ 合 理 性 に つ と

し て ﹁ 国 家 の 現 状 と 伝 統 に つ い て の 正 し い 理 解 と 国 際 協 調 の 精 神 の 涵 養 ﹂ を 掲 げ ( 同 法 条 号 、三 六 条 号 、 八 条 号 )、 2 高 等 学 校 学 習 指 導 要 領 ( 同 法 三 条 お よ び 同 法 施 行 規 則 五 七 条 の に 基 づ く 全 国 的 な 大 綱 的 基 準 ) も ﹁ 学 校 の 儀 式 的 行 事

の 意 義 を 踏 ま え て 国 旗 国 歌 条 項 を 定 め て い る ﹂ と こ ろ で あ り 、 ま た 、 3 国 旗 及 び 国 歌 に 関 す る 法 律 は 、 従 来 の 慣 習 を 法 文 化 し て 、 国 旗 は 日 章 旗 (﹁ 日 の 丸 ﹂) と し 、 国 家 は ﹁ 君 が 代 ﹂ と す る 旨 を 定 め て い る 。 そ し て 、 4 住 民 全 体 の 奉 仕 者 と し て 法 令

等 及 び 上 司 の 職 務 上 の 命 令 に 従 っ て 職 務 を 遂 行 す べ き こ と と さ れ る 地 方 公 務 員 の 地 位 の 性 質 及 び そ の 職 務 の 公 共 性 ( 憲 法

五 条 項 、 地 方 公 務 員 法 三 〇 条 、 三 条 ) に 鑑 み る と 、 ⋮ 高 等 学 校 学 習 指 導 要 領 に 沿 っ た 式 典 の 実 施 の 指 針 を 示 し た 本 件 通 達 を 踏 ま え て 校 長 に よ り 発 出 さ れ た ︹ 当 該 教 職 員 ら に 対 す る ﹁ 式 典 に お け る 慣 例 上 の 儀 礼 的 な 所 作 と し て の 国 歌 斉 唱 の 際 の

起 立 斉 唱 行 為 を 求 め る こ と を 内 容 と す る ﹂︺ 本 件 職 務 命 令 の 目 的 は ﹁ 高 等 学 校 教 育 の 目 標 や 卒 業 式 等 の 儀 式 的 行 事 の 意 義 、 在 り 方 等 を 定 め た 関 係 法 令 等 の 諸 規 定 の 趣 旨 に 沿 っ て 、 地 方 公 務 員 の 地 位 の 性 質 及 び そ の 職 務 の 公 共 性 を 踏 ま え 、 生 徒 等 へ

の 配 慮 を 含 め 、 教 育 上 の 行 事 に ふ さ わ し い 秩 序 の 確 保 と と も に 当 該 式 典 の 円 滑 な 進 行 を 図 る ﹂ こ と に あ る 。   以 上 の 諸 事 情 を 踏 ま え る と 、 本 件 職 務 命 令 は 上 告 人 の 憲 法 九 条 の 自 由 に 対 す る ﹁ 間 接 的 な 制 約 と な る 面 が あ る ﹂ が 、﹁ 職

務 命 令 の 目 的 及 び 内 容 並 び に こ れ に よ っ て も た ら さ れ る 上 記 の 制 約 の 態 様 等 を 総 合 的 に 較 量 す れ ば 、 上 記 の 制 約 を 許 容 し 得 る 程 度 の 必 要 性 及 び 合 理 性 が 認 め ら れ る ﹂ の で 、 本 件 各 職 務 命 令 は 憲 法 九 条 に 違 反 す る と は い え な い

<(

判 時 三 号

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(   )憲法九条適合性の判断枠組み・違憲審査基準同志社法学 六五巻三号

〇 頁 )。   多 数 意 見 が ﹁ 以 上 は 、 当 最 高 裁 大 法 廷 判 決 の 趣 旨 に 徴 し て 明 ら か と い う べ き で あ る ﹂ と し て 引 用 す る 大 法 廷 判 決 は 、 最 大 判 昭 和 三

民 集 〇 巻 七 号 七 八 五 頁 ( 謝 罪 広 告 請 求 事 件 ) 、最 大 判 昭 和 九 ・ ・ 六 刑 集 八 巻 九 号 三 九 三 ( 猿 払 事 件 ) 、 最 大 判 昭 和 五 ・ 五 ・ 刑 集 三 〇 巻 五 号 六 五 頁 ( 旭 川 学 力 テ ス ト 事 件 ) で あ る

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  宮 川 光 治 裁 判 官 反 対 意 見 ( 第 小 法 廷 ) の 判 断 枠 組 み ・ 違 憲 審 査 基 準

﹁ 真 摯 性 に 関 す る 審 査 ﹂ を 経 て の ﹁ 厳 格 な 基 準 ﹂ ⑴  ﹁ 真 摯 性 に 関 す る 審 査 ﹂   宮 川 反 対 意 見 は 、﹁ 多 数 意 見 は 、 式 典 に お け る 起 立 斉 唱 行 為 を 般 的 、 客 観 的 な 視 点 で 、 い わ ば 多 数 者 の 視 点 で そ の よ う な も の ︹ = ﹁ 慣 例 上 の 儀 礼 的 な 所 作 と し て の 性 質 を 有 す る も の で あ り 、 そ の 性 質 の 点 か ら 見 て 、 上 告 人 の 有 す る 歴 史 観 な い し 世 界 観 そ れ 自 体 を 否 定 す る も の で は な い ﹂︺ と 評 価 し て い る と み る こ と が で き る と し た 後 、 こ の ﹁ 般 的 、 客 観 的 に み て ﹂ と い う 基 準 を 批 判 し 、﹁ お よ そ 精 神 的 自 由 権 に 関 す る 問 題 を 般 人 ( 多 数 者 ) の 視 点 か ら の み 考 え る こ と は 相 当 で な ﹂ く ﹁ 少 数 者 の 人 権 の 問 題 で あ る と い う 視 点 か ら ﹂ 考 え る べ き と す る 。 そ し て 多 数 意 見 に 対 す る 対 案 と し て ﹁ 真 摯 性 に 関 す る 審 査 ﹂ の 方 法 を 、 次 の よ う に 提 示 す る 。   ﹁ 本 件 で は 、 上 告 人 ら が 抱 い て い る 歴 史 観 な い し 世 界 観 及 び 教 育 上 の 信 念 が 真 摯 な も の で あ り 、 思 想 及 び 良 心 と し て 昇 華

し て い る と 評 価 し 得 る も の で あ る か に つ い て 、 ま た 、 上 告 人 ら の 不 起 立 不 斉 唱 行 為 が 上 告 人 ら の 思 想 及 び 良 心 の 核 心 と 少 な く と も 密 接 に 関 連 す る 真 摯 な も の で あ る か に つ い て ( 不 利 益 処 分 を 受 容 す る 覚 悟 で の 行 動 で あ る こ と を 考 え る と お お む ね 疑

問 は な い と 思 わ れ る が )、 本 件 各 職 務 命 令 に よ っ て 上 告 人 ら の 内 面 に お い て 現 実 に 生 じ た 矛 盾 、 葛 藤 、 精 神 的 苦 痛 等 を 踏 ま え 、

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(   )同志社法学 六五巻三号憲法九条適合性の判断枠組み・違憲審査基準

ま ず 、 審 査 が 行 わ れ る 必 要 が あ る 。﹂ ( 判 時 三 号 頁 )。

⑵  ﹁ 厳 格 な 基 準 ﹂ の 内 容   宮 川 反 対 意 見 は 、﹁ 真 摯 性 に 関 す る 審 査 ﹂ に お け る 真 摯 性 が 肯 定 さ れ れ ば ﹁ こ れ を 制 約 す る 本 件 各 職 務 命 令 ﹂ に つ い て は ﹁ い わ ゆ る 厳 格 な 基 準 に よ っ て 本 件 事 案 の 内 容 に 即 し て 具 体 的 に 合 憲 性 審 査 を 行 う こ と に な る ﹂ と す る ( 判 時

三 号 頁 ) 。   宮 川 反 対 意 見 の い う ﹁ 厳 格 な 基 準 ﹂ の 具 体 的 内 容 は 、﹁ 目 的 は 真 に や む を 得 な い 利 益 で あ る か 、 手 段 は 必 要 最 小 限 度 の 制 限 で あ る か 、︹ 手 段 と 目 的 と の ︺ 関 係 は 必 要 不 可 欠 で あ る か と い う こ と を み て い く ﹂ と す る 基 準 で あ り 、 こ れ を 起 立 斉 唱 職 務 命 令 事 件 に 適 用 し た 場 合 、﹁ 具 体 的 目 的 で あ る ﹃ 教 育 上 の 特 に 重 要 な 節 目 と な る 儀 式 的 行 事 ﹄ に お け る ﹃ 生 徒 等 へ の 配 慮 を 含 め 、 教 育 上 の 行 事 に ふ さ わ し い 秩 序 を 確 保 し て 式 典 の 円 滑 な 進 行 を 図 る こ と ﹄ が 真 に や む を 得 な い 利 益 と い い 得 る か 、 不 起 立 不 斉 唱 行 為 が そ の 目 的 に と っ て 実 質 的 害 悪 を 引 き 起 こ す 蓋 然 性 が 明 白 で 、 害 悪 が 極 め て 重 大 で あ る か ( 式 典 が 妨 害 さ れ 、 運 営 上 重 大 な 支 障 を も た ら す か ) を 検 討 ﹂ し 、﹁ そ の 上 で 、 本 件 各 職 務 命 令 が そ れ を 避 け る た め に 必 要 不 可 欠 で あ る か 、 よ り 制 限 的 で な い 他 の 選 び 得 る 手 段 が 存 在 す る か ( 受 付 を 担 当 さ せ る 等 、 会 場 の 外 に お け る 役 割 を 与 え 、 不 起 立 不 斉 唱 行 為 を 回 避 さ せ る こ と が で き な い か ) を 検 討 す る ﹂ と い う 基 準 で あ る 。 そ し て 、 こ の

>真

摯 性 の 審 査 を 経 て の 厳 格 な 基 準

法 決 に 第 、 し 棄 破 を 判 記 原 (﹁ る す と る あ で き 前 三 す の 憲 の 令 命 務 職 各 件 本 五 の 記 前 に 第 、 性 摯 真 べ と 戻 差 棄 破 決 判 原 し <と 、 数 多 ( は 件 本 組 で 下 の み 見 枠 断 判 う 意 い の 主 ) く な は で ︺ 文 ︹ い 論 結 の 却 棄 請 う 求

九 条 適 合 性 に 関 し 、 改 め て 検 討 さ せ る た め 、 本 件 を 原 審 に 差 し 戻 す こ と を 相 当 と す る ﹂) 。

六八

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(   )憲法九条適合性の判断枠組み・違憲審査基準同志社法学 六五巻三号

⑶  宮 川 反 対 意 見 に 対 す る 若 干 の コ メ ン ト   宮 川 反 対 意 見 に つ い て は 、 第 に 、 そ の ﹁ 真 摯 性 に 関 す る 審 査 ﹂ と い う 方 法 は 、 前 述 の ( α ) 当 該 個 人 の 主 観 的 判 断 に よ り 決 定 す る 方 法 そ の も の で は な い が 、( α ) に 近 接 し た と こ ろ が あ る こ と は 否 め な い よ う に 思 わ れ る 。 こ う し た 真 摯 性 の 審 査 の 方 法 の 適 否 に つ い て 明 示 的 に 述 べ る 大 法 廷 判 決 は み あ た ら な い 。 小 法 廷 判 決 レ ベ ル で は 、最 小 判 平 成 八 ・ 三 ・ 八

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( エ ホ バ の 証 人 剣 道 実 技 拒 否 事 件 ︹ 退 学 処 分 取 消 請 求 事 件 ︺) は 、﹁ 被 上 告 人 が 剣 道 実 技 へ の 参 加 を 拒 否 す る 理 由 は 、 被 上 告 人 の 信 仰 の 核 心 部 分 と 密 接 に 関 連 す る 真 し な も の で あ っ た ﹂、 ﹁ 信 仰 上 の 真 し な 理 由 か ら 剣 道 実 技 に 参 加 す る こ と が で き な い 学 生 ﹂、 ﹁ 学 生 が 信 仰 を 理 由 に 剣 道 実 技 の 履 修 を 拒 否 す る 場 合 に 、 学 校 が 、 そ の 理 由 の 当 否 を 判 断 す る た め 、 単 な る 怠 学 の た め の 口 実 で あ る か 、 当 事 者 の 説 明 す る 宗 教 上 の 信 条 と 履 修 拒 否 と の 合 理 的 関 連 性 が 認 め ら れ る か ど う か を 確 認 す る 程 度 の 調 査 を す る こ と が 公 教 育 の 宗 教 的 中 立 性 に 反 す る と は い え な い も の と 解 さ れ る ﹂ と 述 べ て い る 。   第 に 、 宮 川 反 対 意 見 に よ る 多 数 意 見 の と ら え 方 に は 、 疑 問 が な い で は な い 。 同 反 対 意 見 は 次 の よ う に 述 べ る 。  

>上

確 つ い て は 原 審 の 適 法 に 定 え し た 事 実 関 係 の 概 要 中 に に 考 告 拒 人 ら が 起 立 斉 唱 行 為 を 否 る す る 前 提 と し て 有 し て い お い て 六 点 ︹ ① か ら ⑥

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︺ に 要 約 さ れ て い る 。 多 数 意 見 も 、 こ の 考 え は 、﹁ ﹃ 日 の 丸 ﹄ や ﹃ 君 が 代 ﹄ が 過 去 の 我 が 国 に お い て 果 た し た 役 割 に 関 わ る 上 告 人 ら 自 身 の 歴 史 観 な い し 世 界 観 及 び こ れ に 由 来 す る 社 会 生 活 上 な い し 教 育 上 の 信 念 等 と い う こ と が で

き る ﹂ と し て お り 、 多 数 意 見 は 上 告 人 ら が 有 し て い る 考 え が 思 想 及 び 良 心 の 内 容 と な っ て い る こ と 、 な い し こ れ ら と 関 連 す る も の で あ る こ と は 承 認 し て い る も の と 思 わ れ る 。

本 な 限 に ﹂ 観 界 世 し い 観 さ 史 歴 ﹁ に 的 障 基 は 定 れ 範 え 保 う ろ あ で き べ る ら る と と の も る い て し と 囲

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は 及 が 障 保 の 条 九 法 憲 も に 分 部 の ぶ と し 、 の 条 九 法 憲 く て な は で の る い こ 見 が た 意 数 意 見 説 明 し 部 分 で あ り 、 多 数 い 生 活 上 な ﹂ し 教 育 上 社 会 及 る す 来 由 に れ こ び 信 ⋮ ﹁ の の 告 念 こ 多 と る い て れ ま 含 が れ は 等 に 張 主 の 人   上 は 分 部 の 右

<(

)。 頁 号 三 時 判

六九

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(   )同志社法学 六五巻三号六憲法九条適合性の判断枠組み・違憲審査基準

三  田 原 睦 夫 裁 判 官 反 対 意 見 ( 第 三 小 法 廷 ) の 判 断 枠 組 み ・ 違 憲 審 査 基 準

起 立 職 務 命 令 と 斉 唱 職 務 命 令 の 区 別 論   田 原 反 対 意 見 ( 最 三 小 判 平 成 三 ・ 六 ・ ) は 、 起 立 斉 唱 職 務 命 令 の 憲 法 九 条 適 合 性 の 判 断 枠 組 み に お い て 多 数 意 見 が ﹁ 起 立 斉 唱 行 為 ﹂ と し て 起 立 行 為 と 斉 唱 行 為 と を 括 り に し て い る 点 に 反 対 し 、﹁ 起 立 行 為 ﹂ と ﹁ 斉 唱 行 為 ﹂ と を 分 け て そ れ ぞ れ に つ き 検 討 す べ き と す る ( 起 立 職 務 命 令 と 斉 唱 職 務 命 令 の 区 別 論 ) 。 そ し て 、 斉 唱 職 務 命 令 の 違 憲 審 査 基 準 に つ い て は 、 多 数 意 見 と 異 な る 基 準 を 提 示 し 、 以 下 の よ う に 述 べ て い る 。

⑴  起 立 職 務 命 令 は ﹁ 間 接 的 な 制 約 ﹂ に 該 当 し 必 要 性 ・ 合 理 性 基 準 の も と で 合 憲 で あ る   田 原 反 対 意 見 は 、 起 立 職 務 命 令 は ﹁ 間 接 的 な 制 約 ﹂ に 該 当 す る と し て 、 多 数 意 見 と 同 様 の 必 要 性 ・ 合 理 性 基 準 に 基 づ き 審 査 が 行 わ れ る と し 、 起 立 職 務 命 令 は 合 憲 で あ る と す る ( 判 時 三 号 三 頁 ) 。

⑵  斉 唱 職 務 命 令 の 違 憲 審 査 基 準   田 原 反 対 意 見 は 、 ① ﹁ 斉 唱 ﹂ は 斉 唱 者 が 積 極 的 に 声 に 出 し て ﹁ 唱 う ﹂ も の で あ る か ら 、 国 歌 に 対 し て 否 定 的 な 歴 史 観 や 世 界 観 を 有 す る 者 に と っ て は 、 そ の 歴 史 観 な い し 世 界 観 と 真 っ 向 か ら 対 立 す る 行 為 を な す こ と に 他 な ら ず 、 同 人 ら に と っ て は 各 種 の 公 的 式 典 へ の 参 加 に 伴 う 儀 礼 的 行 為 と 評 価 す る こ と は で き な い も の で あ る こ と 、 ② 音 楽 専 科 以 外 の 教 諭 が 式 典 に お け る 国 歌 斉 唱 時 に ﹁ 斉 唱 ﹂ す る こ と は 、 そ の 職 務 上 当 然 に 期 待 さ れ て い る 行 為 で あ る と 解 す る こ と が で き な い も の で あ る こ と 、 ③ 学 習 指 導 要 領 が ﹁ ⋮ 指 導 す る も の す る ﹂ と 定 め て い る が 、 そ の 故 を も っ て 音 楽 専 科 以 外 の 教 諭 が 式 典 に お い て 自 ら 国 歌 を ﹁ 唱 う ﹂ こ と 迄 が 職 務 上 求 め ら れ て い る と い う こ と は で き な い こ と 、 の 諸 点 よ り す れ ば 、 国 歌 に 対 し て 否 定 的 な 世 界 観 や 歴 史 観 を 有 す る 者 に 対 し 、 国 歌 を ﹁ 唱 う ﹂ こ と を 職 務 命 令 を も っ て 強 制 す る こ と は 、 そ れ ら

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(   )憲法九条適合性の判断枠組み・違憲審査基準同志社法学 六五巻三号

の 者 の ﹁ 思 想 、 信 条 に 係 る 内 心 の 核 心 的 部 分 ﹂ を 侵 害 す る も の で あ る と 評 価 さ れ 得 る と い う こ と が で き る 、 と す る 。   ま た 、 田 原 反 対 意 見 は 、( ア ) 憲 法 九 条 の 保 障 が 及 ぶ ﹁ 内 心 の 核 心 的 部 分 を 形 成 す る 思 想 や 信 条 に 反 す る 行 為 を 強 制 さ れ な い 自 由 ﹂ に は ( イ )﹁ 自 ら の 思 想 、信 条 に 反 す る 行 為 を 他 者 に 求 め る こ と を 強 制 さ れ な い 自 由 ﹂ も 含 ま れ る と し 、 そ し て 、 そ の 延 長 と し て ( ウ )﹁ 第 三 者 ︹ 公 権 力 等 ︺ が 他 者 に 対 し て そ の 者 の 思 想 信 条 に 反 す る 行 為 を 強 制 的 に 求 め る 行 為 に ( そ の 強 制 的 行 為 が 自 己 の 思 想 信 条 と 致 す る か 否 か に か か わ ら ず ) 加 担 す る 行 為 ( 加 担 す る と 外 部 か ら 捉 え ら れ る 行 為 を 含 む 。) は し な い と の 自 己 の 考 え ・ 信 条 に 反 す る 行 為 を 強 制 さ れ な い 自 由 ﹂ も 含 ま れ る 可 能 性 が あ る と す る 。 同 反 対 意 見 は 、( ウ ) の よ う な ﹁ 強 い 考 え 、 あ る い は 信 条 は 、 憲 法 九 条 が 保 障 す る 、 思 想 、 信 条 に 係 る 内 心 の 核 心 的 部 分 そ の も の を 形 成 す る も の で は な い が 、 そ の 外 縁 を 形 成 す る も の と 位 置 付 け る こ と が で き る の で あ り 、 か か る 強 い 考 え 、 あ る い は 信 条 を 抱 く 者 に お け る 、 そ の 確 信 の 内 容 を 含 む 、 上 記 外 縁 に お け る そ の 位 置 付 け の 如 何 に よ っ て は 、 憲 法 九 条 の 保 障 の 範 囲 に 含 ま れ る こ と も あ り 得 る と い う こ と が で き る と 考 え る ( 最 高 裁 平 成 ⋮ 九 年 月 七 日 第 三 小 法 廷 判 決 ・ 民 集 六 巻 号 九 頁 ( 以 下 、﹃ ピ ア ノ 伴 奏 事 件 判 決 ﹄ と い う 。) に お け る 藤 田 宙 靖 裁 判 官 の 反 対 意 見

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参 照 ) 。﹂ 、 と す る 。 そ し て 、 本 件 各 職 務 命 令 は ﹁ 起 立 し て 斉 唱 す る こ と ﹂ を 体 不 可 分 の も の と し て 発 せ ら れ た と 解 さ れ る が 、 起 立 職 務 命 令 は ﹁ 合 理 性 ﹂ を 有 す る が 、 斉 唱 職 務 命 令 は ﹁ 上 告 人 ら の 信 条 に 係 る 内 心 の 核 心 的 部 分 に 近 接 す る 外 縁 部 分 を 侵 害 す る 可 能 性 が 存 す る ﹂ の で 、 本 件 不 起 立 ( 不 作 為 ) が 上 告 人 ら の 内 心 の 核 心 的 部 分 ま た は そ の 外 縁 に 対 す る 侵 害 を 回 避 す る 趣 旨 で な さ れ た の な ら 、 不 起 立 ( 不 作 為 ) に つ い て ﹁ 憲 法 九 条 に よ り 保 障 さ れ る 思 想 及 び 良 心 の 自 由 を 守 る た め の 行 為 と し て の 相 当 性 の 有 無 ﹂ が 問 わ れ る こ と に な る が 、 こ の 点 は 原 審 で 審 理 が な さ れ て い な い の で 、 原 審 に 差 し 戻 す べ き で あ る と し て い る 。

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(   )同志社法学 六五巻三号八憲法九条適合性の判断枠組み・違憲審査基準

⑶  田 原 反 対 意 見 に 対 す る 若 干 の コ メ ン ト   田 原 反 対 意 見 に つ い て は 、 ピ ア ノ 伴 奏 職 務 命 令 事 件 判 決 に お け る 藤 田 反 対 意 見 と 同 様 、 憲 法 九 条 の 保 障 範 囲 を 拡 大 す る ﹁ 可 能 性 ﹂ を 指 摘 し た 点 で 注 目 し う る も の で あ る が 、 同 ﹁ 可 能 性 ﹂ 部 分 を 最 終 的 に 憲 法 九 条 の 保 障 範 囲 に 含 め る 憲 法 解 釈 論 を 提 示 し て は い な い 点 で 、 差 戻 し 審 で の 明 確 な 指 針 を 示 し て い な い と い う 難 点 が な い で は な い 。   田 原 反 対 意 見 の 区 別 論 の 射 程 範 囲 に つ い て は 、 教 師 に 対 す る 起 立 斉 唱 職 務 命 令 事 件 の み な ら ず 、 児 童 生 徒 に 対 す る 起 立 斉 唱 指 導 事 件 に お い て も 、﹁ 起 立 ﹂・ ﹁ 斉 唱 ﹂ 区 別 論 と し て 援 用 す る こ と が 可 能 か 否 か の 論 点 が あ る

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第 章  児 童 生 徒 に 対 す る 起 立 斉 唱 指 導 行 為 の 憲 法 九 条 適 合 性 の 判 断 枠 組 み ・ 違 憲 審 査 基 準

  普 通 教 育 課 程 に お け る 国 旗 国 歌 起 立 斉 唱 事 件 の 類 型 と し て 取 り 上 げ た 、 教 師 に 対 す る 起 立 斉 唱 職 務 命 令 事 件 と 児 童 生 徒 に 対 す る 起 立 斉 唱 指 導 事 件 と は ﹁ 事 案 が 異 な る ﹂ も の で あ る た め 、 憲 法 九 条 適 合 性 の 判 断 枠 組 み 等 も 同 で は な い 。   起 立 斉 唱 職 務 命 令 事 件 〇 年 小 法 廷 判 決 に お け る 金 築 補 足 意 見 ( 最 小 判 平 成 三 ・ 六 ・ 六 ) も こ の 点 を 確 認 し 、 次 の よ う に 述 べ て い る 。

  ﹁ こ こ で 私 が 念 の た め 強 調 し て お き た い の は 、 上 告 人 ら は 、 教 職 員 で あ っ て 、 法 令 や そ れ に 基 づ く 職 務 命 令 に 従 っ て 学 校 行 事 を 含 む 教 育 活 動 に 従 事 す る 義 務 を 負 っ て い る 者 で あ る こ と が 、 こ う し た ︹ 間 接 的 な ︺ 制 約 を 正 当 化 し う る 重 要 な 要 素 と

な っ て い る と い う 点 で あ る 。 こ の 点 で 、 児 童 ・ 生 徒 に 対 し 、 不 利 益 処 分 の 制 裁 を も っ て 起 立 斉 唱 行 為 を 強 制 す る 場 合 と は 、 憲 法 上 の 評 価 に お い て 基 本 的 に 異 な る と 考 え ら れ る ﹂( 判 時 三 号 頁 )。

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(   )憲法九条適合性の判断枠組み・違憲審査基準同志社法学 六五巻三号

  本 章 で は 、 両 事 案 の 差 異 に 留 意 し つ つ 、 ま た 、 起 立 斉 唱 職 務 命 令 事 件 〇 年 小 法 廷 判 決 多 数 意 見 の 判 断 枠 組 み も 念 頭 に 置 き つ つ 、 児 童 生 徒 に 対 す る 起 立 斉 唱 指 導 行 為 の 憲 法 九 条 適 合 性 の 判 断 枠 組 み 等 に つ い て 、 若 干 の 検 討 を 行 う 。   憲 法 事 例 問 題 ( 中 学 校 生 徒 入 学 式 起 立 斉 唱 指 導 事 件 )   以 下 、 考 察 の 便 宜 の た め に 、 次 の 憲 法 事 例 問 題 ( 架 空 事 例

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) を 念 頭 に 置 く こ と と す る 。 ︻ 事 実 の 概 要 ︼ 〇 三 ( 平 成 五 ) 年 月 、 X ( 中 学 校 年 生 ) が 在 籍 す る 公 立 中 学 校 で 、 入 学 式 が 挙 行 さ れ た 。 入 学 式 で は 、 壇 上 に 日 章 旗 ( 日 の 丸 ) が 掲 揚 さ れ 、 音 楽 を 担 当 す る 教 員 の ピ ア ノ 伴 奏 で 、 君 が 代 が 斉 唱 さ れ た 。 君 が 代 の 斉 唱 時 に は 、 司 会 の

教 頭 か ら 、﹁ 国 歌 斉 唱 。 同 ご 起 立 願 い ま す 。﹂ と の ア ナ ウ ン ス が な さ れ た 。 X は 、 君 が 代 の 斉 唱 時 に 、 起 立 せ ず 、 斉 唱 も し な か っ た 。 入 学 式 に 参 列 し た X の 両 親 も 、 起 立 ・ 斉 唱 し な か っ た 。 校 長 は 、 X の 担 任 教 員 に 、 X を 式 後 に 校 長 室 に 来 さ せ る よ う に 指

示 し た 。 校 長 室 で 、 校 長 は 、 X に 対 し 、﹁ な ぜ 、 君 が 代 斉 唱 の 時 に 、 起 立 ・ 斉 唱 し な か っ た の で す か ﹂ と 質 問 し た と こ ろ 、 X は 次 の よ う に 述 べ た 。

>私

し と 何 度 も 話 し て き ま た 両 。 今 回 の 入 学 式 に 際 親 て は 、 小 学 校 六 年 生 頃 よ り 日 い の 丸 ・ 君 が 代 問 題 に つ し

て は 、﹁ 日 の 丸 ﹂・ ﹁ 君 が 代 ﹂ が 戦 前 の 日 本 ・ 世 界 の 歴 史 に お い て 果 た し て き た マ イ ナ ス の 側 面 を 考 慮 し て 、 こ れ に 対 す る 否 定 的 評 価 に 基 づ き 、﹁ 日 の 丸 ﹂・ ﹁ 君 が 代 ﹂ へ の 不 起 立 ・ 不 斉 唱 と い う 行 為 を と り ま し た 。 私 と 両 親 と の 間 で 意 見 は 致 し て お り ま す が 、

今 回 の 不 起 立 不 斉 唱 は 、 と く に 両 親 か ら の 指 示 を 受 け て の も の で は あ り ま せ ん 。

こ れ に 対 し 、 校 長 は 、 X に 対 し て 、﹁ 儀 式 に お い て 作 法 を 守 る こ と も 重 要 で 、 次 回 か ら こ の よ う な 場 合 に は 、 き ち ん と 起 立 ・ 斉 唱 す る よ う に ﹂ と 説 諭 し 、 さ ら に 訓 告 し た 。

  X は 、 校 長 に よ る 本 件 説 諭 お よ び 訓 告 は 憲 法 九 条 に 違 反 す る と 考 え 、﹁ 今 後 の 本 校 で の 卒 業 式 ・ 入 学 式 等 の 学 校 儀 式 に お い て 、 国 旗 ( 日 章 旗 ) に 対 し て 起 立 す る 義 務 の な い こ と 、 お よ び 、 国 歌 ( 君 が 代 ) を 斉 唱 す る 義 務 の な い こ と の 確 認 を 求 め る 訴 え ﹂( 行

政 事 件 訴 訟 法 条 ) を 提 起 し た 。

六三

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(   )同志社法学 六五巻三号〇憲法九条適合性の判断枠組み・違憲審査基準

︻ 設 問 1 ︼ X の 訴 訟 代 理 人 は ど の よ う な 憲 法 上 の 主 張 を 行 う べ き か 、 に つ い て 述 べ な さ い 。 な お 、 本 件 訴 訟 形 式 に 関 す る 論 点 や

国 家 賠 償 請 求 訴 訟 を め ぐ る 論 点 に つ い て は 言 及 す る 必 要 は な い 。 ︻ 設 問 2 ︼ 設 問 1 の 憲 法 上 の 主 張 に 対 す る 被 告 の 反 論 を 想 定 し つ つ 、 裁 判 所 が 下 す べ き 憲 法 判 断 に つ い て 述 べ な さ い 。

  児 童 生 徒 に 対 す る 公 権 力 の 教 育 ・ 指 導 行 為 の い か な る も の が 起 立 斉 唱 の ﹁ 強 制 ﹂ に 該 当 す る か

㈠ 憲法学説

  児 童 生 徒 に 対 す る 国 旗 国 歌 起 立 斉 唱 指 導 事 件 に お い て は 、ま ず 、ど の 公 権 力 の 行 為 を 児 童 生 徒 に 対 す る 起 立 斉 唱 の ﹁ 強 制 ﹂ と と ら え る か が 問 題 と な る 。 こ の 点 に 関 す る 学 説 と し て は 、 た と え ば 、 A 説 = 国 旗 国 歌 起 立 斉 唱 を 式 次 第 の 内 容 と し て 含 む 入 学 式 等 の 挙 行 自 体 を 児 童 生 徒 に 対 す る 起 立 斉 唱 の ﹁ 強 制 ﹂ と と ら え る 説 、 B 説 = 同 式 典 ・ 儀 式 の 挙 行 そ れ 自 体 が 直 ち に 当 該 ﹁ 強 制 ﹂ と は な る わ け で は な い が 、 児 童 生 徒 が 起 立 斉 唱 を 拒 否 し う る 環 境 ・ 条 件 整 備 が な さ れ て い な い 状 態 で 行 わ れ る 当 該 式 典 の 挙 行 は 当 該 ﹁ 強 制 ﹂ に 該 当 す る と す る 説 、 C 説 = 当 該 式 典 の 挙 行 自 体 は 当 該 ﹁ 強 制 ﹂ と は な ら ず 、 式 典 後 に 不 起 立 不 斉 唱 の 児 童 生 徒 に 対 し て 行 わ れ る 指 導 行 為 の 段 階 で 当 該 ﹁ 強 制 ﹂ が 認 め ら れ る と す る 説 、 を 想 定 し う る 。   諸 学 説 の 説 く と こ ろ に は 微 妙 な 差 異 が あ り 、 ま た 必 ず し も 明 ら か で な い と こ ろ が あ る が 、 あ え て 分 類 す れ ば 、 A 説 に 属 す る も の と し て は 、 た と え ば 、 渋 谷 秀 樹 説 ( 〇 〇 九 年 )、 青 野 篤 説 ( 〇 〇 年 ) が あ ろ う

₂₂

。 な お 、 市 川 正 人 説 ( 〇 〇 年 ) に つ い て は 、 こ れ を A 説 と し て 紹 介 す る と 読 め る 論 稿 が あ る が 、 必 ず し も 明 ら か で は な い

₂₃

。   B 説 に 属 す る も の と し て は 、 西 原 博 史 説 ( 〇 〇 〇 年 ) や 佐 々 木 弘 通 説 ( 〇 〇 年 ) を あ げ る こ と が で き よ う

₂₄

。   な お 、 佐 藤 幸 治 説 ( 〇 年 ) は 、 教 師 と は 異 な り ﹁ 子 ど も ( そ の 親 ) の 場 合 は 別 で 、﹃ 思 想 ・ 良 心 ﹄ に 基 づ く 拒

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(   )憲法九条適合性の判断枠組み・違憲審査基準同志社法学 六五巻三号

否 行 為 は 九 条 に 照 ら し 尊 重 さ れ な け れ ば な ら な い ﹂ と し

₂₅

、 中 村 睦 男 説 ( 〇 年 ) は 、﹁ 生 徒 に 対 し て 国 旗 掲 揚 ・ 国 歌 斉 唱 を 強 制 す る こ と は 、 生 徒 の 思 想 ・ 良 心 の 自 由 を 侵 害 す る も の と 解 さ れ る ﹂ と す る

₂₆

が 、 当 該 式 典 の 挙 行 そ れ 自 体 と 式 典 後 の 不 起 立 不 斉 唱 の 児 童 生 徒 に 対 す る 指 導 行 為 の い ず れ を 当 該 ﹁ 強 制 ﹂ と と ら え る べ き か に つ い て 明 示 的 に 言 及 す る 部 分 は み あ た ら な い 。

㈡ 判例の立場―起立斉唱職務命令事件二〇一一年小法廷判決の示唆するもの

  こ の 論 点 に つ い て 明 示 す る 判 例 は 見 当 た ら な い が 、 起 立 斉 唱 職 務 命 令 事 件 〇 年 小 法 廷 判 決 に お け る 那 須 補 足 意 見 ( 最 三 小 判 平 三 ・ 六 ・ ) は 、﹁ 入 学 式 及 び 卒 業 式 等 の 式 典 に お い て 生 徒 ら に 律 の 起 立 斉 唱 を 求 め て も 、 こ れ に 応 じ な い 生 徒 ら に 対 す る 懲 戒 等 の 不 利 益 を 伴 う 場 合 は 別 と し て ﹂ 児 童 生 徒 に 対 す る ﹁ 強 制 ﹂ を 意 味 す る も の で は な い と 述 べ て い る

₂₇

。 こ の 理 解 を 前 提 と す る と 、 児 童 生 徒 に 対 す る 起 立 斉 唱 指 導 事 件 に お い て 憲 法 九 条 適 合 性 が 争 わ れ る 公 権 力 の 行 為 は 、 基 本 的 に は 、 起 立 斉 唱 を 含 む 入 学 式 等 の 式 典 の 挙 行 自 体 ( 式 典 で の ﹁ 国 歌 斉 唱 ・ 同 起 立 ﹂ の 発 声 な ど ) で は な く 、 式 典 に お い て 不 起 立 不 斉 唱 で あ っ た 児 童 生 徒 に 対 す る 式 典 後 の 指 導 行 為 と い う こ と に な ろ う 。

三  児 童 生 徒 に 対 す る 起 立 斉 唱 指 導 行 為 の 憲 法 九 条 適 合 性 の 判 断 枠 組 み ・ 違 憲 審 査 基 準   児 童 生 徒 に 対 す る 起 立 斉 唱 指 導 行 為 の 憲 法 九 条 適 合 性 の 判 断 枠 組 み に つ い て も 、 ( 起 立 斉 唱 職 務 命 令 事 件 〇 年

小 法 廷 判 決 多 数 意 見 と 同 様 に ) ﹁ 段 の 構 造 ﹂ が 採 用 さ れ る も の と 推 測 し う る 。

六五

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(   )同志社法学 六五巻三号憲法九条適合性の判断枠組み・違憲審査基準

㈠ 児童生徒に対する起立斉唱指導行為の「直ちに制約」・「間接的な制約」該当性― 第一段(制約該当性)

  校 長 ・ 教 師 が 起 立 斉 唱 し な か っ た 児 童 生 徒 に 対 し て 行 う 起 立 斉 唱 指 導 行 為 は 、( ア ) 不 起 立 不 斉 唱 の 理 由 に つ い て 質 問 す る 行 為 と 、( イ ) 質 問 に 対 す る 児 童 生 徒 の 応 答 を 経 て 、 次 回 か ら 起 立 斉 唱 す る よ う に と す る 指 導 行 為 、 と に 大 別 さ れ る 。 不 起 立 不 斉 唱 の 理 由 と し て は 多 様 な も の が あ り う る の で 、( ア ) の 質 問 行 為 自 体 が 直 ち に ﹁ 憲 法 九 条 を 根 拠 と す る 沈 黙 の 自 由 ﹂ を 侵 害 し て 違 憲 で あ る と い う こ と に は な ら な い で あ ろ う 。   し か し 、( イ ) こ の 質 問 に 対 し て 児 童 生 徒 と し て そ れ な り に 熟 慮 し た 判 断 に 基 づ く も の で あ る こ と が 分 か っ た 後 に 、 た と え ば 礼 儀 作 法 ・ マ ナ ー と し て 次 回 か ら は 起 立 斉 唱 す る よ う に と い う 指 導 を 行 う こ と は 、 少 な く と も 、 児 童 生 徒 の 憲 法 九 条 の 自 由 の ﹁ 間 接 的 な 制 約 ﹂ に 該 当 す る こ と に な る 。

㈡ 式典後の児童生徒に対する起立斉唱指導行為(=「間接的な制約」)の憲法一九条適合性の判断枠組み・違憲審査

基準―第二段(制約許容性)

  式 典 後 の 児 童 生 徒 に 対 す る 起 立 斉 唱 指 導 行 為 ( = ﹁ 間 接 的 な 制 約 ﹂) の 憲 法 九 条 適 合 性 の 判 断 枠 組 み ・ 違 憲 審 査 基 準 は 、﹁ 当 該 指 導 行 為 の 目 的 及 び 内 容 並 び に こ れ に よ っ て も た ら さ れ る 間 接 的 な 制 約 の 態 様 な ど を 総 合 的 に 較 量 し て 、 当 該 指 導 行 為 に 同 制 約 を 許 容 し 得 る 程 度 の 必 要 性 及 び 合 理 性 が 認 め ら れ る か 否 か と い う 観 点 か ら 判 断 す る の が 相 当 で あ る ﹂ と い う こ と に な り 、 児 童 生 徒 に つ い て は 教 師 の 場 合 と 異 な り 、 当 該 ﹁ 間 接 的 な 制 約 ﹂ を 正 当 化 す る 事 由 ( 当 該 外 部 的 行 為 の 制 限 の 必 要 性 と 合 理 性 ) は 存 在 し な い の で 、当 該 ﹁ 間 接 的 な 制 約 ﹂ は 憲 法 九 条 に 違 反 す る と の 結 論 と な ろ う 。

六六

(24)

(   )憲法九条適合性の判断枠組み・違憲審査基準同志社法学 六五巻三号

  憲 法 事 例 問 題 に 対 す る 解 答 例   以 下 で は 、以 上 の 考 察 に 基 づ き 、前 記 の 憲 法 事 例 問 題 の 設 問 1 お よ び 2 に 対 す る 解 答 例( サ ン プ ル ・ ア ン サ ー︹

sampleanswer

︺) に つ い て コ メ ン ト す る 。

㈠ 基本的な解答パターンの諸類型

  本 件 中 学 校 生 徒 の 訴 訟 代 理 人 が 行 う べ き 憲 法 上 の 主 張 と し て は 、 い く つ か の も の が あ り う る 。 起 立 斉 唱 職 務 命 令 事 件 〇 年 小 法 廷 判 決 多 数 意 見 を 念 頭 に 置 い て 分 類 す れ ば 、 基 本 的 な 解 答 パ タ ー ン は 、 い わ ば A ﹁ 同 多 数 意 見 内 在 的 主 張 型 ﹂ ( 同 多 数 意 見 の 判 断 枠 組 み ・ 違 憲 審 査 基 準 を ﹁ 共 通 の 土 俵 ﹂ と し た 上 で 立 論 し 、 同 基 準 等 の も と で も 本 件 校 長 の 対 応 ・ 指 導 行 為 は 憲 法 九 条 違 反 と な る と 立 論 す る 手 法 ) と 、 B ﹁ 同 多 数 意 見 外 在 的 主 張 型 ﹂ と に 大 別 さ れ る 。   B は 、

B

て 法 方 る す 張 主 ・ 論 立 し 拠 依 に 見 意 対 反 川 宮 = 、

1

B=

て 法 方 る す 張 主 ・ 論 立 し 拠 依 に 見 意 対 反 原 田 、

2

。 る う し 定 に て し 拠 依 法 説 学 論 憲 る 立 張 ・ 主 開 す る 方 法 な ど 、 を 想 す 展 見 以 意 見 お よ び 同 反 対 意 を 外 多 の ) 厳 格 な 違 憲 審 査 基 準 数

B

同 ( =

3

。 よ 克 を ) 判 批 る に し 見 意 足 補 築 金 服 う 述 と る れ さ 求 要 が こ る う な 行 を 明 説 の

B

の に に 見 意 対 反 川 宮 、 は 合 け 場 る す 用 採 を 法 手 の お る 方 ﹁ 法 に つ い の 問 題 点 ( 前 ﹂ 査 審 る す 関 に 性 摯 真 て

1

。 数 ﹂ 型 張 主 的 在 見 意 多 念 同 ﹁ A 、 は で 下 以   を 内 頭 に る に ト ン メ コ て い つ す 例 場 答 置 い た 合 の 解 分 ど う か な ど の 求 析 が 要 さ れ る 。 能 か の も な 可 に 教 令 命 務 職 る す 対 用 師 は み 論 別 区 唱 斉 ・ 立 起 の の な 意 導 援 も で ル ベ レ の 為 行 指 ら る す 対 に 徒 生 童 児 ず 見

B

対 す の 手 法 を 採 用 る 反 場 合 に は 、 田 原

2

六七

(25)

(   )同志社法学 六五巻三号憲法九条適合性の判断枠組み・違憲審査基準

㈡  「起立斉唱職務命令事件二〇一一年小法廷判決多数意見内在的主張型」を前提とした場合の中学校生徒の訴訟代理

人の憲法上の主張

  A ﹁ 同 多 数 意 見 内 在 的 主 張 型 ﹂ を 念 頭 に 置 い た 場 合 の 解 答 例 と し て は 、 入 学 式 後 の 本 件 校 長 に よ る 説 諭 ・ 訓 告 は 憲 法 九 条 に 違 反 す る と の ﹁ 処 分 違 憲 の 主 張 ﹂ と な る 。   す な わ ち 、 本 件 説 諭 ・ 訓 告 は 少 な く と も 児 童 生 徒 の 憲 法 九 条 の 自 由 の ﹁ 間 接 的 な 制 約 ﹂ に 該 当 し 、 児 童 生 徒 に 対 す る 当 該 ﹁ 間 接 的 な 制 約 ﹂ を 正 当 化 す る 事 由 と し て 、 教 師 の 場 合 の よ う な 憲 法 五 条 項 や 地 方 公 務 員 法 上 の 公 務 員 の 地 位 ・ 職 務 上 の 義 務 な ど の 正 当 化 事 由 は 見 当 た ら な い で 、 そ の ﹁ 間 接 的 な 制 約 ﹂ の 必 要 性 ・ 合 理 性 は 認 め ら れ ず 、 憲 法 九 条 に 違 反 す る と す る も の で あ る 。

㈢ 中学校生徒入学式起立斉唱指導事件における判決の内容

⑴  中 学 校 生 徒 の 未 成 熟 性 に 依 拠 し た 反 論 と こ れ に 対 す る 判 決 の 内 容   前 述 の 憲 法 上 の 主 張 に 対 す る 被 告 の 反 論 1 と し て は 、 中 学 校 生 徒 般 の 未 成 熟 性 を 根 拠 と し て 本 件 校 長 に よ る 説 諭 ・ 訓 告 は パ タ ー ナ リ ス テ ィ ッ ク な 介 入 と し て 正 当 化 さ れ 合 憲 で あ る と す る も の を 想 定 し う る 。   こ の 反 論 1 を 想 定 し て の 判 決 と し て は 、 本 件 中 学 校 生 徒 は 校 長 の 質 問 に 対 す る 回 答 に お い て 、 熟 慮 の 上 で 不 起 立 不 斉 唱 行 為 ( 自 己 の 内 心 の 歴 史 観 に 反 す る 外 部 的 行 為 の 拒 否 行 為 ) を 行 っ た こ と が 事 案 に お い て 示 さ れ て い る 本 件 に お い て は (︹ 問 題 文 の ﹁﹃ 日 の 丸 ﹄・ ﹃ 君 が 代 ﹄ が 戦 前 の 日 本 ・ 世 界 の 歴 史 に お い て 果 た し て き た マ イ ナ ス の 側 面 を 考 慮 し て 、 こ れ に 対 す

る 否 定 的 評 価 に 基 づ き 、﹃ 日 の 丸 ﹄・ ﹃ 君 が 代 ﹄ へ の 不 起 立 不 斉 唱 と い う 行 為 を と り ま し た 。﹂ と い う 司 法 事 実 の 部 分 参 照 ︺) 、﹁ パ タ ー ナ リ ス テ ィ ッ ク な 介 入 が 正 当 化 さ れ る た め の 要 件 ﹂ が 充 足 さ れ 合 憲 と さ れ る と 解 す る こ と は 困 難 で あ る 、 と の 判 決

六八

参照

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