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経 済 社 会 の 秩 序 形 態

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全文

(1)

︿論

説﹀

経 済 社 会 の 秩 序 形 態

︵ 二・ 完︶ 二軸 によ るマ ッピ ング と現 状診 断

濱 野 亮

一 は じ め に 二 ルー ル志 向と 関係 志向

︵以 上︑ 八三 号︶ 三 行政 主導 と私 的主 体主 導

は じ め に

司法 制度 改革 に至 る状 況

措定 され た秩 序モ デル

戦後 日本 の経 済シ ステ ムの 終焉 に向 かっ て 四 秩序 形態 の変 動

秩序 形態 の現 状を 示唆 する 具体 例

資本 主義 の多 様性 論と 秩序 形態

二軸 と研 究課 題 五 お わ り に︵ 以上

︑本 号︶

(2)

三 行政 主導 と私 的主 体主 導

は じ め に 本章 では

︑日 本の 経済 社会 の秩 序に おけ る行 政と 私的 主体 の関 係と いう 論点

︵第 二軸 に︶ つい て︑ 理論 的な 手が かり を得 る作 業を 行う

︒ この 第二 軸は

︑か つて 別稿 で検 討し たヴ ェー バー によ る秩 序の 合理 化過 程に 関す る分 析に 基づ いて

︑抽 出し たも ので ある

︒ヴ ェー バー の洞 察は

︑国 家官 僚制 と自 由な 市場 取引 が秩 序の 合理 化を 推進 する 主要 な二 大動 因で ある と いう もの だっ た︒ 筆者 は後 者に 即し て︑ 私的 主体 のイ ニシ アテ ィブ によ る秩 序形 成と いう 類型 を抽 出し

︑そ こに お ける 弁護 士の 重要 性を 官僚 と対 比さ せて 整理

( )

した

79

加え て︑ この 第二 軸は

︑司 法制 度改 革以 降の 我が 国の 経済 社会 の秩 序形 態を 研究 する 上で 直接 的な 関連 性を 持っ てい る︒ 本章 全体 で明 らか にす るよ うに

︑司 法制 度改 革に おけ る中 心的 な政 策目 標は

︑行 政主 導か ら私 的主 体主 導 への 秩序 形態 の転 換で あっ た︒ 司法 制度 改革 審議 会意 見書 は︑ 政策 目標 の一 つと して

﹁過 度の 事前 規制

・調 整型 社会 から 事後 監視

・救 済型 社会 への 転換

﹂を

( )

掲げ

︑何 らか の意 味で

︑企 業や 他の 私的 主体 の実 定法 使用

︑司 法利 用の 活性 化を 目指 して いた

︒司 法

80

試験 制度 改革

︑法 科大 学院 制度 の導 入に よる 法曹 の質 的・ 量的 拡充 の目 的の 一つ

︵他 の諸 目的 と比 較し た相 対的 重要 性は 議論 の余 地が ある が︶ は︑ この

﹁転 換﹂ の実 現だ った

︒ この 政策 目標 は︑ それ まで の経 済社 会で は行 政に よる

﹁過 度の 事前 規制

・調 整﹂ が行 われ てい たと いう 認識 を前 提に

︑司 法制 度改 革に よっ て目 指さ れる 経済 社会 では

︑そ れに 代わ って

︑行 政︑ 検察 によ る﹁ 事後 監視

﹂と 処分

(3)

およ び︑ それ らと 密接 に関 係す る裁 判所 によ る﹁ 事後 監視

﹂と

﹁救 済﹂ 消費 者や 企業 等私 人に よる 民事 訴訟 やA DR を含 む︶ が重 要な 役割 を果 たす

︑あ るい は︑ 中心 的な 秩序 形成 メカ ニズ ムと なる

︑と いっ た趣 旨に 理解 する こと が 可能 であ る︒ 簡潔 に表 現す れば

︑行 政主 導か ら私 的主 体主 導へ の秩 序形 態の 転換 と言 って 良い

︒し かし なが ら︑ 司 法制 度改 革審 議会 意見 書上 で明 確に 定義 され てい たわ けで はな く︑ その 内容 は今 日に おい ても 依然 とし て曖 昧で あ る︒

﹁過 度の 事前 規制

・調 整型 社会 から 事後 監視

・救 済型 社会 への 秩序 形態 の転 換﹂ とい う定 式を

︑単 なる 規制 緩 和を 意味 する 枕詞 と理 解す る立 場も あり うる が︑ 筆者 は︑ 以下 の分 析が 示す よう に︑ その よう な立 場は 取ら ない

︒ 一九 九〇 年代 半ば 以降

︑司 法制 度改 革審 議会 意見 書が 公表 され るま での 間︑ また

︑そ の後 にお いて も︑ 様々 な公 的文 書︵ 代表 的な もの は行 政改 革会 議の 最終 報告

︶に おい て︑ 表現 に微 妙な 差異 はあ れ︑ この 定式 が頻 繁に 援用 され てい た︒ した がっ て︑ 全く 空疎 なレ トリ ック とい うよ りは

︑政 治の 中枢 にい た一 定の 関係 者に 共有 され

︑実 際に 当 時の 制度 改革 やそ の後 の実 務の 変更 に一 定の 影響 を与 えて いた

︵少 なく とも ある 時期 まで

︶と 言う べき であ る︒ この 政策 目標 の内 容を 検討 し評 価す るに は︑ 司法 制度 改革 以前 の経 済社 会に おけ る﹁ 過度 の事 前規 制・ 調整 型社 会﹂ の内 実お よび 改革 論者 が共 有し てい たと 思わ れる 認識 を明 確に し︑ その うえ で︑

﹁事 後監 視・ 救済 型社 会﹂ と して 想定 され たも のは いか なる もの だっ たの かを 分析 し︑

﹁転 換﹂ の意 味内 容を 明ら かに する 必要 があ る︒ また

︑ 前者 から 後者 への

﹁転 換﹂ が司 法制 度改 革と どの よう な関 係に ある のか

︑あ るべ き﹁ 事後 監視

・救 済型 社会

﹂と は どの よう なも のか

︑あ るい は︑ そも そも

﹁事 後監 視・ 救済 型社 会﹂ をめ ざす べき なの か︑ とい った 論点 を検 討す る 必要 があ る︒ 舟田 正之 は最 近の 論文 で︑ この

﹁事 前規 制か ら事 後規 制﹂ 事後 監視

・救 済で はな く︑ 事後 規制 と表 現さ れて いる が︑ 文脈 から 同一 内容 と考 えて 良い と︶ いう 定式 につ いて

︑規 範論 の立 場か ら︑ この 主張 に一 定の 正当 性を 認め つつ も︑ めざ され るべ きと され る﹁ 事後 規制

﹂に つい ては

︑必 要な 検討 がほ とん ど行 われ てい ない 点に 注意 を喚 起し て

(4)

( )

いる

︒あ る規 制目 的に とっ て︑ 事前 規制 にど のよ うな 弊害 があ りそ れを 最小 限に 抑え るに はど うす べき か︑ また

︑ 事

81

後規 制に よる 場合

︑規 制目 的確 保の 実効 性と コス トは どの 程度 のも のに なる のか

︑と いっ た検 討を 踏ま え︑

﹁合 理的 な︑ かつ 明確 なル ール に則 った 規制 のあ り方 を検 討す るこ とが 重要 であ ろう

﹂と する

︒特 に︑ 事後 規制 に︑ 通 常の 議論 では

︑国 家法 機構 の公 式的 使用

︑す なわ ち行 政庁 によ る処 分︑ 刑事 制裁

︑民 事訴 訟に よる サン クシ ョン を 含め てい るが

︑そ れら は関 係者 に多 大な 影響 を及 ぼし

︑様 々な 点で コス ト︑ デメ リ

( )

ット があ るが

︑そ れら につ いて

82

の﹁ 立ち 入っ た検 討﹂ が見 られ ない 点を 舟田 は危 惧し てい る︒ 本稿 はこ の問 題意 識を 共有 する とと もに

︑日 本の 経済 社会 にお ける 規制 と秩 序の あり 方・ ある べき 姿︑ より 根本 的に は国 家と 経済

・社 会と の関 係を 考え る基 礎的 作業 とし て︑ 当時

︑﹁ 過度 の事 前規 制・ 調整 型社 会﹂ と把 握さ れ た従 来の 日本 の経 済社 会の 特質 を理 論的 に整 理し

︑そ れを 踏ま えて

︑司 法制 度改 革が

︑他 の諸 改革 とあ わせ て︑ そ の変 容過 程に どの よう な影 響を 及ぼ して いる のか を︑ 主と して

︑規 範論 の次 元で はな く事 実論 の次 元で 分析 しよ う とす るも ので ある

︒経 済社 会の 秩序 の各 領域 は相 互に 補完 しあ いな がら 歴史 的に 展開 して いる ので

︑一 つの 制度 改 革が もた らす 帰結 は︑ 各領 域間 の相 互補 完性 にど のよ うな 影響 を与 える かに 左右 さ

( )

れる

︒事 実論 が重 要な 所以 であ

83

る︒

﹁過 度の 事前 規制

・調 整型 社会 から 事後 監視

・救 済型 社会 への 転換

﹂と いう 政策 目標 は︑ その 表現 が﹁ 社会

﹂の 転換 であ るこ とか ら明 らか なよ うに

︑単 なる 公式 制度 上の 改革 を意 味し てい たの では なく

︑公 式制 度の 改革 を通 じ て︑

﹁社 会﹂ のあ り方 その もの を変 える こと を意 味し てい たの であ り︑ 本稿 の表 現を 用い れば 秩序 形態 の転 換を 意 味し てい た︒ 明治 時代 以来 の﹁ この 国の かた ち﹂ を変 える 百年 に一 度の 改革 とい う行 政改 革会 議最 終報 告や 司法 制 度改 革審 議会 意見 書の

( )

表現 は︑ そう 解す べき こと を示 唆し てい る︒

84

しか しな がら

︑公 式制 度の 改革 は︑ 根本 的で あれ ばあ るほ ど︑ 現実 の秩 序と の葛 藤を 招き

︑慣 性に よっ て改 革が

(5)

妨げ られ るこ とは 言う まで もな い︒ 重要 なこ とは

︑公 式制 度上 の改 革が 現実 に何 をも たら して いる のか を︑ 理論 と 実証 によ り明 らか にす る作 業で ある

︒理 論的 な見 取り 図を 設定 する こと によ り︑ 現実 の変 化を 確定 する 経験 的研 究 を的 確に 行う こと が可 能に なる

司法 制度 改革 に至 る状 況

⑴ 行政 改革 委員 会と 行政 改革 会議 司法 制度 改革 審議 会意 見書 の﹁ 過度 の事 前規 制・ 調整 型社 会か ら事 後監 視・ 救済 型社 会へ の転 換﹂ とい う政 策命 題の 系譜 をた どる と︑ 少な くと も一 九九 六年 一二 月一 六日 に公 表さ れた 行政 改革 委員 会の

﹁行 政関 与の 在り 方に 関 する 基準

﹂と

︑一 九九 七年 一二 月に 発表 され た行 政改 革会 議の 最終 報告 に︑ この 政策 命題 とほ ぼ同 じ主 張を 明白 に 見出 すこ とが でき る︒ 行政 改革 員会 は一 九九 四年 一二 月一 九日 に総 理府 に設 置さ れ︑ 一九 九七 年一 二月 一八 日に 解散 した が︑ 一九 九五 年四 月に 規制 緩和 小委 員会 を設 置し

︑そ の報 告を 検討 して

﹁規 制緩 和の 推進 に関 する 意見

﹂を 総理 大臣 に提 出す る など

︑政 府の 規制 緩和

( )

政策 と行 政改 革の 推進 にあ たっ て重 要な 役割 を果 た

( )

した

︒一 九九 六年 一二 月一 六日 に発 表し

85

86

た﹁ 行政 関与 の在 り方 に関 する 基準

﹂は

︑同 年三 月に 設置 した 官民 活動 分担 小委 員会 の報 告書 に基 づい て︑ 次の よ うに 行政 のあ り方 の転 換を 求め て

( )

いる

︒ち なみ に︑ この 時期 は︑ 一九 九六 年一

〇月 の総 選挙 を経 て第 二次 橋本 内閣

87

が発 足し た直 後に あた り︑ 一一 月一 一日 に︑ 後に 触れ る橋 本首 相の いわ ゆる

﹁金 融ビ ッグ バン 総理 指示

﹂が 発出 さ れ︑ 一一 月二 八日 には 行政 改革 会議 の第 一回 会合 が開 催さ れて

( )

いる

88

行政 改革 委員 会の

﹁行 政関 与の 在り 方に 関す る

( )

基準

﹂は

︑ま ず︑ 行政 関与 のあ り方 を判 断す るた めの 全般 的基 準

89

とし て︑ 可能 な限 り市 場原 理に 任せ る︵ 民間 活動 の優 先︶ とし

︵﹁

﹃民 間で でき るも のは 民間 に委 ねる

﹄と いう 考え 方に

(6)

基づ き︑ 行政 の活 動を 必要 最小 限に とど める

﹂︶

︑続 いて

︑行 政が 関与 する 必要 があ るか どう かを 判断 する 基準 とし て︑

﹁行 政の 関与 は︑ 市場 原理 が有 効に 機能 しな い﹃ 市場 の失 敗﹄ があ る場 合に 限り

︑関 与も 必要 最小 限に とど める

﹂ と宣 言す る︒ その 上で

︑行 政関 与の 必要 があ ると 判断 され る場 合に

︑関 与の 手段

・形 態が 適切 であ るか どう かを 判断 する 基 準︑ すな わち

﹁行 政の 関与 の仕 方に 関す る基 準﹂ を示 して いる

︒ この 基準 は三 カテ ゴリ ーか ら成 るが

︑そ のう ちの 一つ が﹁ 行政 によ る利 害調 整の 活動

﹂に 関す る基 準で あり

︑こ こで

︑﹁ 過度 の事 前規 制・ 調整 型社 会か ら事 後監 視・ 救済 型社 会へ の転 換﹂ とい う定 式と ほぼ 同じ 方針 が提 示さ れ る︒ 第一 に︑

﹁行 政に よる 事前 的な 調整 政策 につ いて は︑ 事後 の紛 争解 決や 事後 的な チェ ック に転 換す る︒ 特に

︑行 政に よる 利害 調整 につ いて は︑ 不確 実性 の高 まり など を背 景に 行政 の情 報優 位が 低下 して いる こと を勘 案し て︑ 原 則と して 撤退 する

﹂と され る︒ 行政 の情 報優 位が 低下 して いる ので あれ ば︑ 一層

︑対 象業 界や 企業 との 間で の情 報共 有が 必要 にな るは ずで ある が︑ ここ では

︑高 度成 長期 に監 督官 庁が キャ ッチ アッ プ対 象の 欧米 の産 業情 報な どを もと に行 政指 導に より 調整 し た場 面等 が念 頭に 置か れて いた

︒戦 後日 本の 経済 シス テム にお いて は業 界の 仕切 りを 監督 官庁 が管 理し

︑参 入規 制 のも とで 固定 的な メン バー シッ プが 維持 され

︑し ばし ば業 界団 体を 媒介 に︑ ある いは

︑リ ーデ ィン グカ ンパ ニー の 担当 者と の間 で情 報交 換を しつ つ︑ 事前 に業 界内 の利 害調 整を 行い

︵し ばし ばマ ーケ ット

・シ ェア 等に 基づ く既 存の 秩序 を維 持し て︶

︑業 界の 成長

︵保 護育 成︶ と秩 序維 持︵ 限界 企業 の生 き残 りを 含む が︶ めざ さ

( )

れた

︒典 型は 金融 界の

90

護送 船団

( )

行政 であ るが

︑こ れが 否定 され たの であ る︒

91

この こと は次 の第 二︑ 第三 とし て明 示さ れて いる

︒す なわ ち︑

(7)

.行 政が 利害 調整 等を 目的 に関 与す る場 合︑ 裁量 の余 地を 最小 化し つつ

︑機 会均 等の 原則 のも と︑ 市場 原理 に基 づく 手段 を活 用す る︒ . 行政 によ る利 害調 整等 のた めの 関与 のう ち︑ 産業 調整

︑あ るい は公 益法 人・ 業界 団 体等 に任 せて いる 行政 代行 につ いて は︑ 次の 基準 を満 たす 必要 があ る﹂

︒ 産業 調整 につ いて は︑

﹁産 業保 護的 な施 策か らは 原則 とし て撤 退す る﹂ とさ れ︑ 一定 の限 定さ れた 場合 を除 き︑ 衰退 産業 の保 護・ 延命 効果 のあ る施 策と 特定 産業 の保 護育 成政 策か ら撤 退す ると され た︒ 従来 の産 業

( )

政策 から の一 八〇 度の 転換 であ り︑ 二十 年後 の今 日振 り返 って みれ ば︑ この よう な政 策転 換が その 後

92

の長 期に 及ぶ 経済 停滞 の一 因で はな いか とも 思わ れ

( )

るが

︑当 時の 政治 状況 にお ける 規制 緩和 の大 合唱 は我 が国 の

93

﹁世 論﹂ 特有 の﹁ 空気 の

( )

支配

﹂あ るい は﹁ 時の 勢い

﹂と 表現 する べき 雪崩 現象 をも たら した

94

この うち

︑第 二の

﹁行 政裁 量の 最小 化﹂ は︑ 後に 触れ る経 済学 的モ デル で想 定さ れて いる よう に︑ 主流 派経 済学 の市 場像 を前 提に

︑客 観的 ルー ルの もと で機 会均 等と 公正 な市 場競 争を 実現

・維 持す るた めの 条件 とし て位 置づ け られ たと 解さ れる

︒ 第三 で述 べら れて いる

﹁公 益法 人・ 業界 団体 等に 任せ てい る行 政代 行﹂ につ いて は︑

﹁公 益法 人・ 業界 団体 等を 通じ て行 って いる 行政 の関 与に つい ては

︑事 後の 紛争 解決 や事 後的 なチ ェッ クに 転換 する

﹂と され

︑業 界団 体を 通 じた 事前 規制

・調 整に つい ても 撤廃 し︑ 市場 参加 者の 自由 な競 争︵ 経済 活動

︶に 委ね

︑紛 争や 問題 が発 生し た場 合 には

︑事 後の 解決 やチ ェッ クで 対応 する こと とさ れた

︒ この よう に︑ 一九 九六 年末 に行 政改 革委 員会 が公 表し た﹁ 行政 関与 の在 り方 に関 する 基準

﹂に おい て︑

﹁過 度の 事前 規制

・調 整型 社会 から 事後 監視

・救 済型 社会 への 転換

﹂と いう 政策 命題 が具 体的 に提 示さ れて おり

︑そ こに は︑ 市場 原理 の貫 徹︑ 市場 にお ける 事前 の客 観的 ルー ルに 基づ く自 由で 公正 な競 争を 最大 限活 用す ると いう 政策 原 理が 示さ れ︑ 政府

︵国 家︶ は原 則と して 市場 維持 機能

︵市 場の 自動 調整 機能 を維 持す るた めの 機能 と市 場の 失敗 への 対

(8)

処機 能︶ に役 割を 限定 する こと

︑市 場育 成機 能や 市場 指導

( )

機能 は原 則と して 禁止 する 方針 が掲 げら れた ので ある

95

翌一 九九 七年 一二 月に 公表 され た行 政改 革会 議の 最終

( )

報告 の﹁ 官民 の役 割分 担﹂ の箇 所で は︑ この 行政 改革 委員

96

会の

﹁行 政関 与の 在り 方に 関す る基 準﹂ を﹁ 基本 とし

︑民 間に でき るも のは 民間 にゆ だね る︑ 市場 原理 と自 己責 任 原則 にの っと り︑ 民間 活動 の補 完に 徹す るこ とを 基本 的な 考え 方に すべ きで ある

﹂と され

︑具 体的 には

︑﹁ 自立 的 精神 と自 己責 任の 原則 の下 での 過度 な行 政の 関与 の廃 止︑ 特定 産業 の保 護・ 育成 行政 から の撤 退︑ 所得 再配 分事 業 の限 定な どに 努め なけ れば なら ない

﹂と さ

( )

れた

︒こ のよ うに

︑行 政改 革会 議に おけ る官 民の 役割 分担

︵藤 田宙 靖の

97

言う 官の

﹁水 平的

( )

減量

﹂︶ の基 準は

︑行 政改 革委 員会 の基 本方 針を 前提 とし てい る︒ 後に 確認 する よう に司 法制 度改

98

革審 議会 も行 政改 革会 議と 連動 して おり

︑司 法制 度改 革に おけ る官 民の 役割 分担 の基 本原 則も この 行政 改革 委員 会 の基 本方 針を 所与 の前 提と して 踏襲 して いる

﹁過 度の 事前 規制

・調 整型 社会 から 事後 監視

・救 済型 社会 への 転換

﹂と いう 政策 命題 に直 接的 に関 わる 箇所 は︑

﹁Ⅳ

行政 機能 の減 量︵ アウ トソ ーシ ング

︶︑ 効率 化等

﹂の

規制 行政

︑補 助行 政等 の見 直し

﹂に あり

︑﹁

︶ 規制 行政

︑補 助行 政の 見直 し﹂ にお いて

︑﹁

① 規制 行政 の見 直し の方 向﹂ の小 見出 しの もと

︑﹁ ア 規制 緩和

・撤 廃の 推進

﹂と して 経済 的規 制に つき 原則 自由

︑社 会的 規制 につ き必 要最 小限 とし たう えで

︑﹁ イ 事後 チェ ック 型 行政 への 転換

﹂と して

︑﹁ いわ ゆる 事前 規制 型の 行政 から 事後 チェ ック 型の 行政 に転 換す る﹂ とう たわ れた

︒ また

︑行 政指 導・ 行政 裁量 の縮 減な らび に事 前ル ール の明 確化 につ いて

︑﹁ オ 規制 行政 の透 明化

︑説 明責 任﹂ とし て︑

﹁規 制の ルー ルを 明確 化す ると とも に︑ ルー ルの 公表 はも とよ り︑ その 適用 結果 につ いて も原 則と して 公 表し

︑説 明責 任を 明確 にす る︒ なお

︑設 置法 のみ を根 拠と する 行政 指導 など の民 間へ の関 与は

︑で きる 限り 廃止 す る﹂ と明 記さ れた

︒ そし て︑

﹁司 法と の関 係で は︑

﹃法 の支 配﹄ の拡 充発 展を 図る ため の積 極的 措置 を講 ずる 必要 があ る︒ そし てこ の

(9)

﹃法 の支 配﹄ こそ

︑わ が国 が︑ 規制 緩和 を推 進し

︑行 政の 不透 明な 事前 規制 を廃 して 事後 監視

・救 済型 社会 への 転 換を 図り

︑国 際社 会の 信頼 を得 て繁 栄を 追求 して いく 上で も︑ 欠か すこ との でき ない 基盤 をな すも ので ある

︒政 府 にお いて も︑ 司法 の人 的及 び制 度的 基盤 の整 備に 向け ての 本格 的検 討を 早急 に開 始す る必 要が ある

﹂と 述べ られ

︑ 司法 制度 改革 につ なが って いく

︒ 以上 の行 政改 革委 員会 と行 政改 革会 議の 文書 に示 され てい る﹁ 過度 の事 前規 制・ 調整 型社 会か ら事 後監 視・ 救済 型社 会へ の転 換﹂ とい う政 策命 題は

︑単 なる 規制 緩和 政策 の表 現に すぎ ない よう にも 見え るが

︑二 つの 会議 に関 わ った 法学 者が 当時 公表 した 論稿 や講 演を 検討 すれ ば︑ 経済 的視 点と は別 に︵ ある いは 経済 的視 点に 付加 して

︶︑ 一定 の法 理論 に基 づく 国家 と社 会秩 序の 転換 が志 向さ れて いる こと がわ かる

︒そ こで は︑ 規制 緩和 に基 づく 市場 メカ ニ ズム の活 性化 ない し貫 徹論 が︑ 私的 な主 体の 自由 な創 意と 自律 性︵ 自己 責任

︶に 高い 価値 を置 くこ とに 通じ てお り︑ かつ

︑そ れに とど まら ず︑ より 普遍 的な 法的 価値 の実 現と 日本 の国 家と 社会 全体 のあ り方 の転 換が めざ され て いた そ ︒ こで

︑以 下で は︑ まず

︑二 つの 文書 の文 脈と して

︑そ れら が公 表さ れた 当時 の政 治情 勢と 言説 状況 を概 観し

︑ 次に

︑こ の二 つの 文書 の根 底に ある モデ ル︵ 社会

︑経 済︑ 国家

︑人 間に 関す るモ デル

︶を

︑こ の委 員会 や会 議に 関わ った 三名 の学 者︵ 奥野

﹇藤 原﹈ 正寛

︑佐 藤幸 治︑ 藤田 宙靖

︶の 所説 を検 討す るこ とに よっ て明 確に した い︒

⑵ 司法 制度 改革 に至 る言 説状 況と 政治 情勢 行政 改革 委員 会の

﹁行 政関 与の 在り 方に 関す る基 準﹂ と行 政改 革会 議の 最終 報告 は︑ とも に一 九九

〇年 代半 ばの 政治 情勢 と言 説状 況と いう 文脈 に置 いて 理解 する 必要 があ る︒ そこ では 多様 な要 素が 複雑 に絡 みあ って 行政 改革 と 司法 制度 改革 に至 る潮 流を 形成 して いた

︒そ の中 核に は︑ 後に 見る よう に︑

①規 制緩 和︵ 後に 規制 改革 とい う表 現が

(10)

多く 用い られ るよ うに

( )

なる を︶ 推進 する 政治 的意 志︑

②国 家官 僚機 構を 中枢 的構 成要 素と する 戦後 日本 の経 済シ ステ

99

ム︵ 大蔵 省と その 護送 船団 行政 によ って 保護 され た金 融業 界を 中枢 とす る︶ が機 能不 全に ある とい う認 識の 広が りと

︑ 戦後 日本 の経 済シ ステ ム自 体の 改革 を追 求す る政 治的 意志

︑③ 中央 官庁 と高 級官 僚︑ 特に 大蔵 省と 大蔵 官僚 に対 す る批 判・ 反発

︑な らび に大 蔵省 を解 体せ んと する 政治 的意 志が 存在 した

︒ この 潮流 に乗 って

︑司 法制 度改 革審 議会 の設 置に 至る 政治 路線 が︑ 一九 九〇 年代 半ば 当時 の政 府・ 与党 とり わけ 自民 党・ 法務 省の 各中 枢の 連携 を通 じて 進め ら

( )

れた

︒日 弁連 執行 部も

︑こ の政 府・ 与党

・法 務省 の司 法改 革推 進路

100

線に 合流 した が︑ 官僚 司法 批判 とい う点 で︑

③の 中央 官庁

・高 級官 僚批 判と 共鳴 し︑

﹁小 さな 司法

﹂批 判と いう 点 で︑

①と

②が 目指 す司 法拡 充と いう 目標 を共 有し て

( )

いた

101

以下 では

︑当 時の 代表 的な 論者 とア クタ ーを 取り 上げ て︑

﹁過 度の 事前 規制

・調 整型 社会 から 事後 監視

・救 済型 社会 への 転換

﹂と いう 政策 命題 の前 提と して 想定 され てい た社 会︵ とり わけ 経済 社会

︶モ デル と司 法な らび に秩 序 形態 との 関係 を明 らか にす る︒ なお

︑混 沌と した 政治 情勢 の中 で︑

﹁過 度の 事前 規制

・調 整型 社会 から 事後 監視

・救 済型 社会 への 転換

﹂と いう 政策 命題 を主 導ス ロー ガン と

( )

して 制度 改革 を実 現し てい くに あた って は︑ 上記 言説 状況 を背 景に した 政権 党の 政治

102

的意 志に 加え て︑ 現場 の中 枢的 官僚 群の 政治 的意 志と 戦略 的・ 戦術 的行 動が あっ た︒ その 点に つい ては 本章 第四 節 で検 討す る︒

⑶ 経済 学的 モデ ル 上記 の① 規制 緩和 の推 進政 策と

︑② 戦後 日本 の経 済シ ステ ムの 改革 につ いて は︑ 当時

︑経 済学 者に よっ て活 発な 議論 が展 開し てい た︒ その 中で

︑﹁ 過度 の事 前規 制・ 調整 型社 会か ら事 後監 視・ 救済 型社 会へ の転 換﹂ とい う政 策

(11)

命題 と密 接な 関係 を有 する

︑単 純で ある がゆ えに 強力 な理 論的 モデ ルを 提示 して いた 奥野

︵藤 原︶ 正寛 の所 説を 取 り上 げよ う︒ 奥野

︵藤 原︶ は︑ 一九 九四 年に 刊行 され た書 物に 収め られ た邦 語論 稿﹁ 日本 の行 政シ ステ ム﹂ と一 九九 六年 に刊 行さ れた 書物

︵英 語︶ に収 めら れた 論稿

﹁政 府・ 企業 関係 の比 較制 度分 析に 向け て﹂

翻訳 は一 九九 七年 に公 表︶ に おい て︑ 政府

・企 業関 係な いし 行政 スタ イル の二 項対 立的 モデ ルを 提示 し︑ 戦後 日本 の経 済社 会の 法制 度と 秩序 の あり 方に つい て批 判的 検討 を加

( )

えた

103

奥野

︵藤 原︶ は︑ 裁量

︵関 係依 存︶ 型行 政ス タイ ルと 非裁 量︵ 司法 依存

︶型 行政 スタ イル を対 置さ せ︑ 両者 を経 済 学の 視点 から 比較

( )

する

︒そ して

︑戦 後日 本の 行政 スタ イル を前 者と し︑ 戦後 初期 には 有効 であ った が︑ 有効 性を も

104

たら した 要因 が変 質し たと し︑ 後者 への 転換 が望 まし いと

( )

する

︒後 者は アメ リカ のシ ステ ムか ら抽 出し たモ デル で

105

ある が︑ そこ では

︑ル ール への 拘束 性の 高い 行政 が︑ 私人

︑行 政と もに 司法 を活 発に 利用 する スタ イル とワ ンセ ッ トに なっ てい るこ とが 示さ れた

︒裁 量︵ 関係 依存

︶型 行政 は競 争を 管理 する 上で 力を 発揮 した が︑ それ が過 当競 争 を招 き︑ 適切 な資 源配 分を 乱し てい るこ と︑ 多様 な価 値観 を活 かし

︑自 由な 競争 を活 発化 させ るに は︑ 非裁 量型 行 政へ の転 換が 求め られ るこ とを 明晰 に論 じて いる

︒民 間の 事前 の経 済活 動の イン セン ティ ブを 高め るに は﹁ 官僚 が 事後 的な 調整

︑介 入を 簡単 には でき ない 仕組 み﹂ にす る必 要が ある と

( )

する

︒﹁ 過度 の事 前規 制・ 調整 型社 会か ら事

106

後監 視・ 救済 型社 会へ の転 換﹂ とい う定 式が その まま 用い られ てい るわ けで はな いが

︑論 稿全 体の 論旨 は︑ この 定 式を 政策 とし て推 進す べき であ ると いう もの であ る︒ 奥野

︵藤 原︶ は︑ 行政 改革 委員 会に よる 前記 の﹁ 行政 関与 の在 り方 に関 する 基準

﹂の 基礎 とな る報 告書 をま とめ た官 民活 動分 担小 委員 会の 構成 員︵ 参与 で︶ あ

( )

った

︒宗 野隆 俊は

︑二

〇〇 二年 の論 文に おい て︑ 奥野

︵藤 原︶ の論

107

稿﹁ 日本 の行 政シ ステ ム﹂ を取 り上 げて 分析 し︑ この 理論 的視 角が 一九 九〇 年代 の行 政改 革の

﹁政 治動 向﹂ に﹁ 大

(12)

きな 影響

﹂を 与え たと 評し

︑奥 野︵ 藤原 の︶ 分析 モデ ルは

﹁現 今の 行政 官僚 制批 判の 底流 を成 す政 府観 をよ く反 映 した もの とな って いる

﹂と して

( )

いる

108

奥野

︵藤 原︶ のモ デル は︑ 単純 化さ れた 二項 対立 図式 であ るが ゆえ に︑ 日本 型の 否定 とア メリ カ型 への 転換 とい う発 想に 直結 しや すく

︑改 革を 導く 強力 な表 象と して 威力 を発 揮し たと 言え よう

︒﹁ 過度 の事 前規 制・ 調整 型社 会 から 事後 監視

・救 済型 社会 への 転換

﹂と いう 定式 の正 確な 起源 は不 明で ある が︑ 奥野

︵藤 原︶ が示 した モデ ルが

︑ 関係 者に とっ て有 力な 理論 的支 柱と なっ た可 能性 が

( )

ある

︒奥 野︵ 藤原 自︶ 身は 比較 制度

( )

分析 の立 場に たち

︑歴 史的

109

110

経路 依

( )

存性 と制 度的 補完 性を 前提 とし てお り︑ 改革 によ り︑ 経済 社会 全体 が日 本型 から アメ リカ 型に 転換 しう ると

111

する 立場 では なか

( )

った

︒事 実︑ 英文 論稿

﹁政 府・ 企業 関係 の比 較制 度分 析に 向け て﹂ では

︑他 のア ジア 諸国 を含 め

112

た議 論で ある ため もあ って

︑慎 重に

﹁ル ール 依存 型政 府は ひと つの 候補 では ある が︑ もち ろん 唯一 の候 補と いう わ けで はな い﹂ とし て

( )

いる

︒し かし なが ら︑ 邦語 論稿

﹁日 本の 行政 シス テム

﹂に おい ては

︑﹁ 行政 シス テム も非 裁量

113

型行 政に 転換 して 行く こと こそ が求 めら れて いる

﹂と して

( )

おり

︑少 なく とも 行政 スタ イル はア メリ カ型 に﹁ 転換

114

すべ きこ とを 主張 して いた

︒ 行政 スタ イル の転 換は 司法 の拡 充と ワン セッ トで なけ れば なら ない とす る理 論モ デル は︑ 行政 改革 に続 く司 法制 度改 革を 理論 的に 補強 した と言 えよ う︒

⑷ 法学 的モ デル 法学 者と して

︑行 政改 革と 司法 制度 改革 を通 じて 中心 的な 役割 を担 った のが 佐藤 幸治 であ る︒ 行政 改革 会議 の最 終報 告の 冒頭 は︑ メン バー

︵企 画・ 制度 問題 小委 員会 の主 査︶ の佐 藤幸 治が 執筆 した もの を基 礎と して おり

︑そ の思 想を 色濃 く反 映し てい

( )

る点 で︑ 彼が 会長 とし て中 心的 な役 割を 果た した 司法 制度 改革 審議 会の 意見 書と の連 関性 を

115

(13)

見て 取る べき 文書 であ る︒ 司法 制度 改革 審議 会意 見書 の冒 頭で 明記 され てい るよ うに

︑司 法制 度改 革は

︑政 治改 革︑ 行政 改革

︑地 方分 権推 進︑ 規制 緩和 等の 経済 構造 改革 等︑ 主に 橋本 内閣 で進 めら れ小 渕内 閣︵ さら に小 泉内 閣︶ に引 き継 がれ た一 連の 諸 改革 の﹁ 最後 のか なめ

﹂と して 位置 づけ ら

( )

れた

︒こ れら の改 革は

﹁こ の国 のか たち

﹂の 再構 築に 関わ ると され た︒

116

それ は︑ 審議 会意 見書 の表 現に よれ ば︑ 第一 に︑ 法の 精神

︑法 の支 配を

﹁こ の国 の血 肉と 化し

﹂︑

﹁こ の国 のか た ち﹂ とす るこ と︑ 第二 に︑ 国民 が統 治客 体意 識か ら脱 却し

︑﹁ 自律 的で かつ 社会 的責 任を 負っ た統 治主 体と して

︑ 互い に協 力し なが ら自 由で 公正 な社 会の 構築 に参 画し

︑こ の国 に豊 かな 創造 性と エネ ルギ ーを 取り 戻﹂ すこ とを 意 味す ると され た︒ これ は︑ 行政 改革 会議 最終 報告 の冒 頭で 述べ られ てい る行 政改 革の 理念 の要 点の 繰り 返し であ る︒

﹁過 度の 事前 規制

・調 整型 社会 から 事後 監視

・救 済型 社会 への 転換

﹂と いう 定式 は︑ 直接 的に は行 政改 革と 規制 緩和

︵規 制改 革︶ に関 わる 政策 目標 であ るが

︑﹁ この 国の かた ちの 再構 築﹂

︑法 の支 配を

﹁こ の国 の血 肉と 化す

﹂︑

﹁国 民の 統治 客体 意識 から 統治 主体 意識

﹂へ の転 換と いう

︑よ り一 般的 で憲 法的 な価 値の 言説 の中 に定 位さ れる こ とに よっ て︑ 大日 本帝 国か ら引 き続 く国 家体 制︵ 行政 官僚 主導 シス テム

︶か らの 脱却 と日 本国 憲法 理念 の定 着と い う壮 大な プロ ジェ クト の中 に位 置づ けら れる こと にな った

︒ この こと を︑ 行政 改革 会議 最終 報告 の公 表直 後に 行っ た講 演を もと に執 筆し た佐 藤の 論稿

﹁行 政改 革と

﹃こ の国 のか

( )

たち

﹄﹂ に即 して 見て みよ う︒

117

佐藤 の問 題意 識は

︑日 本国 憲法 が立 脚す る国 家像 と国 家の 現状 との 間に はギ ャッ プが あり

︑そ れを 埋め なけ れば なら ない とい うも ので

( )

ある

︒ギ ャッ プの 存在 は︑ 敗戦 後の

﹁﹃ この 国の かた ちの 再構 築﹄ が相 当程 度に 表層 的な も

118

のに とど まっ てい た﹂ ため であ ると さ

( )

れる

︒日 本国 憲法 がめ ざし たも のは

︑天 皇主 権か ら国 民主 権へ の転 換︑ 臣民

119

(14)

の権 利か ら個 人の 基本 的人 権へ の転 換︑ 形式 的法 治国 家か ら法 の支 配へ の転 換と 要約 され

︑﹁ 敗戦 によ って 取り 組 んだ はず の﹃ 国の かた ち﹄ の再 構築 の仕 事を

︑出 発点 に立 ち返 って 再点 検し

︑今 度こ そ本 格的 に取 り組 むべ き時 機 に直 面し てい るよ うに 思わ れる

﹂と

( )

する

︒こ こに は︑ 一九 九〇 年代 半ば を﹁ 第二 の敗 戦﹂ と位 置づ ける 感覚

︵当

120

時︑ 日本 社会 に広 がっ て

( )

いた が︶ 横溢 して いる

121

以上 を前 提に

︑佐 藤は

﹁徹 底的 な規 制の 撤廃 と緩 和の 断行

﹂が 必要 であ ると し︑ それ は国 民が

﹁統 治客 体意 識﹂ から 脱却 し︑

﹁行 政へ の依 存体 質﹂ を克 服し

︑主 権者 とし て自 律的 な個 人が 自由 かつ 公正 な社 会を 形成 する ため に 必要 なこ とと 位置 づ

( )

けた

︒﹁ 過度 の事 前規 制・ 調整 型社 会﹂ は︑ 戦前 的体 質を 引き ずっ た行 政︵ お上

︶依 存体 質と

122

して 捉え られ

︑そ こか ら脱 却し て︑ 自律 的な 個人 とし て自 由で 公正 な活 動を 展開 する こと が主 権者

︵統 治主 体︶ と して の国 民の ある べき 姿で あり

︑憲 法が 予定 して いる 人間 像で ある とい うの であ る︒ 日本 国憲 法は アメ リカ 型の

﹁法 の支 配﹂ を想 定し てい ると いう 立場 から

︑戦 後も 持続 して いる

﹁先 験的 な実 体的 行政 観念

﹂と

﹁行 政各 部中 心の 行政 シス テム

・官 僚シ ス

( )

テム

﹂か ら訣 別し

︑憲 法が 予定 して いる 国民 主権

︑国 会の

123

最高 機関 性︑ 裁判 所を 主要 な担 い手 とす る﹁ 法の 支配

﹂を

︑現 実レ ベル で実 現す る︵

﹁国 の血 肉と 化す

﹂︶ とい う主 張で ある

︒﹁ 事後 監視

・救 済型 社会 への 転換

﹂は

︑佐 藤に よっ て憲 法的 な価 値を 付与 され たと 言え る︒ この 点に つい て︑ 佐藤 は︑ 日本 の公 法学 と法 実務 に大 きな 影響 を与 えた ドイ ツ的

﹁法 治国 家﹂ 観念 と︑ 日本 国憲 法が 立脚 して いる と彼 が主 張す るア ング ロ・ サク ソン 的な

﹁法 の支 配﹂ 観念 とは

︑﹁ 法秩 序形 成観

﹂に 差異 があ る とす る理 論に 依拠 して いる

︒彼 は︑ 前者 では 事前 規制

・調 整が 重視 され

︑後 者で は︑ 裁判 所に おけ る具 体的 争訟 の 解決 を通 じて 形成 され る法 が重 視さ れ︑ そこ には 国民 の主 体的 な法 形成 への 参加 があ り︑

﹁具 体的 事実 に即 した 対 話的 討論 を通 じて の法 形成

﹂を 法秩 序の 重要 な要 素と して いる と見 てい るの であ り︑ ここ から

﹁事 後規 制中 心の 法 秩序

﹂が 帰結 する と

( )

する

124

(15)

この よう に︑ 佐藤 にお いて は︑ 日本 国憲 法が アメ リカ 型の 法シ ステ ムに 立脚 して いる とい う解 釈論 的立 場を 前提 に︑ 戦前 日本 の大 陸法 的秩 序観 の残 存が 一九 九〇 年代 に発 生し た諸 問題 の背 景に あり

︑そ こか ら脱 却し て︑ 日本 国 憲法 の予 定し てい る秩 序を 現実 に実 現す る必 要が ある

︑そ のた めに 必要 な改 革が 行政 改革

︑規 制緩 和︑ 司法 制度 改 革で ある とい う論 理が 展開 され る︒

﹁過 度の 事前 規制

・調 整型 社会 から 事後 監視

・救 済型 社会 への 転換

﹂と は︑ 以 上の よう な意 義を 持つ 法秩 序類 型の 転換

︵ア メリ カ型 への 転換 を︶ 意味 して いる とい う位 置づ けが 与え られ てい る ので ある

︒ この 点で

︑同 じく 行政 改革 会議 のメ ンバ ーで あり 機構 問題 小委 員会 の主 査を 務め た藤 田宙 靖も

︑ニ ュア ンス の違 いは ある が︑ 同様 の思 想と 論理 を展 開し てい る︒ 藤田 も行 政改 革会 議に 関連 して

︑会 議に 並行 して ある いは 直後 に論 稿や 講演 記録 を公 表し て

( )

いる

︒藤 田は

︑行 政

125

改革 は︑

﹁我 が国 の国 家と 社会 の全 般に わた る﹃ 体質

﹄の 改善 とい う︑ 大き な動 きの 中の 一環 とし て︑ 位置 づけ ら れる もの とな って きて いる

﹂と いう 認識 を

( )

示し

︑そ の体 質の 改善 とは

︑﹁ 伝統 的な

﹃集 団主 義・ 団体 主義

﹄的 国

126

家・ 社会 から

︑西 欧流 の﹃ 自由 主義

・個 人主 義﹄ 的な 国家

・社 会へ

﹂の 改善 と説 明

( )

する

︒前 者は 近代 ドイ ツの 国家

127

学上 の﹁ 国家 と社 会の 分離

﹂と いう 観念 に由 来す る国 家観 と結 びつ いて おり

︑目 指さ れる べき 国家

・社 会は

︑ア メ リカ の﹁ 自由 な社 会の

﹃g ov er nm en t﹄

﹂で あっ て︑ そこ では 国家 は﹁ 社会 が必 要と する 限り にお いて のみ 存在 意義 が認 めら れる

﹂と さ

( )

れる

128

アメ リカ 主導 でグ ロー バリ ゼー ショ ン︑ ボー ダー レス 社会 の進 展が 進ん でい る中 で︑

﹁﹃ 世界 クラ ブ﹄ 参加 のた め の資 格要 件﹂ をク リア する ため には

︑国 家観 の﹁ 転換

﹂が 要請 され ると 言う

︒す なわ ち︑

﹁﹃ 社会 に超 越し

︑そ の存 在自 体を 自己 目的 とす る国 家﹇ St aa t﹈ の抽 象的 な観 念﹄ から

﹃自 由か つ自 立的 な社 会の ため

︑そ の必 要に 応じ て 形成 され る政 府機 構﹇ go ve rn me nt

﹈の 具体 像﹄

H o r s t E h m k e

へ︶ の転 換の 要請 であ る﹂ と

( )

する

︒後 者の 国家

・社

129

(16)

会観

︵ア メリ カが それ に近 いと

( )

する の︶ もと では

︑国 家の 機能 は﹁ 原理 的に

︑社 会の 補完 機能 に制 限さ れる べき こと

130

にな る︒ その 出発 点は 社会 への 信頼 であ り︑ その 創造 性・ 活力 を積 極的 に評 価す るこ とで ある

﹂と

( )

いう

︒藤 田に お

131

いて は︑ この 意味 での 国家 観の 転換 の定 式化 とし て︑

﹁過 度の 事前 規制

・調 整型 社会 から 事後 監視

・救 済型 社会 へ の転 換﹂ が位 置づ けら れ︑ 日本 社会 は︑ この よう な意 味で の﹁ 自己 責任 社会

﹂に 変わ って いか なけ れば なら ない と いう 認識 を前 提に して

( )

いる

132

藤田 はこ の国 家観 転換 図式 の提 唱に つい て︑ ある 研究 会︵ 北大 立法 過程 研究 会︶ にお いて 次の よう に背 景説 明を して

( )

いる

︒ド イツ 流の 国家

・社 会二 分論 に基 づく 集団 主義

・団 体主 義的 国家

・社 会観 は︑ わが 国の 法学 教育

︑と り

133

わけ 公法 系教 育で 長年 前提 とし て教 えら れて きた もの で︑ わが 国の 行政

・司 法の 官僚 の間 で﹁ 隠然 とし て存 在

( )

する

﹂︒ 従来 の藤 田の 立場 は︑ この よう な国 家像 は︑ 日本 社会 の﹁ ムラ 的構 造﹂ が持 って いる 問題 点︵ 個人 の自 由の 抑

134

圧な ど︶ に対 処す る上 で一 定の 役割 を果 たす とい うも のだ

( )

った

︒そ の点 で︑ 官僚 と問 題意 識を 共有 して いた とす

135

る︒ した がっ て︑ 社会 一元 論に 基づ くg ov er nm en t︵ 政府

︶へ の国 家像 の転 換に は彼 は学 説上

︑慎 重で あっ たと 言 う︒ しか しな がら

︑前 者の 国家 観は

︑過 剰な 国家 介入 をも たら す場 合に は︑ かえ って

︑﹁ 個人 の自 由と 発展 性の 抑 圧﹂ をも たら す可 能性 が

( )

ある

︒こ の両 面を 指摘 した 上で

︑藤 田は

︑行 政改 革会 議に おい ては

︑行 政改 革委 員会 の基

136

本方 針す なわ ち﹁ 民で でき るも のは 民へ

﹂と いう 規制 緩和 の基 本的 方針 を踏 襲す るこ とが 所与 の前 提な ので

︑行 政 改革 のた めに は︑ 官界 や司 法界 に存 在す る前 者の 国家

・社 会観

﹁パ ラダ イム を根 本的 に改 変す る必 要が ある

﹂と す る︒ 藤田 にお いて は︑ この よう な国 家像 転換 の持 つマ イナ ス面 も認 識し つつ

︑自 覚的

・意 図的 に︑ 改革 のた めの

﹁ポ レミ ーク

﹂と して

︑こ の転 換図 式が 提示 され て

( )

いる

137

佐藤

︑藤 田の 論稿

・講 演か ら明 らか なこ とは

︑﹁ 過度 の事 前規 制・ 調整 型社 会か ら事 後監 視・ 救済 型社 会へ の転 換﹂ とい う政 策目 標は

︑行 政改 革会 議と 司法 制度 改革 審議 会の 中核 にい たメ ンバ ーに とっ て︑ 戦後 日本 の行 政シ ス

(17)

テム と法 シス テム のア メリ カ型 法シ ステ ムを モデ ルに した 転換 であ り︑ 一般 人を 含む 人々 の法 秩序 形成 観︵ 佐藤

︶ およ び国 家・ 社会 観︵ 藤田 レ︶ ベル の変 革と して 位置 づけ られ てい たと いう こと であ る︒ 安定 した 戦後 日本 の経 済 シス テム の崩 壊感 覚を 背景 に︑ 規制 緩和

︑行 政改 革等 が不 可避 とい う政 治情 勢の 渦中 で︑ 日本 国憲 法の 理念 が実 現 して いな いと いう 認識 を踏 まえ

︑そ の理 念を 実現 する 根源 的な 改革

︵敗 戦時 に匹 敵す る︶ の好 機と とら えて 政治 に コミ ット した 学者 の政 治的 判断 と実 践で ある

﹁過 度の 事前 規制

・調 整型 社会 から 事後 監視

・救 済型 社会 への 転換

﹂と いう 政策 は︑ 改革 の政 治過 程の 中枢 にい た佐 藤と 藤田 にと って は︑ 単な る規 制緩 和の 定式 化に とど まら ず︑ 国家 構造 と秩 序形 態レ ベル の全 般的 改革

︑そ の 意味 で憲 法︵ 国制

︶レ ベル の変 革を 意図 して いた

﹁こ の国 のか たち

﹂と は言 うま でも なく 司馬 遼太 郎の 晩年 のエ ッセ イ集 のタ イト ルで あり

︑一 九八 六年 から 急逝 する 九六 年ま で︑ バブ ル経 済形 成期 から 崩壊 後に 至る 混迷 状況 下で 書き 継が れて いた もの であ る︒ 佐藤 はこ の語 を コン ステ ィテ ュー ショ ンの 意味 で用 いて

( )

いる

︒現 時点 で振 り返 れば

︑戦 後日 本の 政治

・経 済シ ステ ムの 終焉 が意 識

138

され

︑﹁ 第二 の敗 戦﹂ 論も あり

︑終 末感 がた だよ う中 で︑ 規制 緩和 を所 与の 前提 と

( )

して

︑日 本国 憲法 の理 念を 実現

139

する 最後 の機 会と の認 識の もと で政 治過 程に 深く コミ ット した もの と推 察さ れる

︒ 彼ら の理 論的 主張 は︑ その 公法 学的 妥当 性は 別と して

︑法 社会 学的 に見 れば

︑ア メリ カ型 法シ ステ ムへ の﹁ 転 換﹂ を憲 法・ 公法 学的 言説 によ り正 当化 し︑ 国家

・社 会観 の転 換を 伴わ なけ れば なら ない と主 張し てい る点 で︑ 奥 野︵ 藤原

︶に よる 経済 学的 モデ ルを 補完 し︑ 規制 緩和 論を 越え た社 会的 広が りと 憲法 的価 値を 行政 改革 と司 法制 度 改革 に付 与し た︒ 国民 主権 を現 実レ ベル で実 現す る明 治憲 法改 正の 完成 とし て位 置づ けら れた ので あり

︑行 政主 導 では なく 私的 主体 主導 の社 会秩 序形 成が

︑憲 法に 内在 する 理念 たる

﹁法 の支 配﹂ が要 請す るも ので あり

︑そ こで は︑ 裁判 所が 法形 成の 中心 に位 置し

︑弁 護士 が社 会の 隅々 にま で浸 透す る必 要が ある とい う結 論が 導か れる

︒そ の

(18)

意味 で佐 藤と 藤田 は行 政改 革︑ 司法 制度 改革 の強 力な イデ オロ ーグ であ った と言 えよ う︒ 田中 成明 が当 時示 唆し たよ うに

︑政 府と 経済 界か らの 規制 緩和 の視 点に よる 司法 制度 改革 論が 展開 する 中で

﹁司 法制 度の 強化 充実 とい う観 点か らよ り高 次の 次元 で評 価し 取捨 選択 する ため の統 合的 理念

﹂で ある

﹁法 の支 配﹂ とい う観 念を 援用 して

︑規 制緩 和批 判論 をは じめ 司法 制度 改革 をめ ぐっ て基 本的 に対 立す る様 々な

﹁利 害要 求を

( )

糾合

﹂す る役 割︵﹁ 歴史 の転

( )

轍役

﹂︶ を彼 等が 担っ たと 言え る︒

140

141

⑸ 共有 表象 とし ての

﹁事 後監 視・ 救済 型社 会へ の転 換﹂

﹁事 後監 視・ 救済 型社 会へ の転 換﹂ とい う政 策目 標は

︑少 数の 理論 家に よっ ての み主 張さ れて いた もの では なく

︑ 少な くと も︑ ある 時期 まで

︑政 治の 中枢 にい た行 政官 僚や 法律 家︑ 経済 人に よっ て︑ 理解 の程 度と コミ ット メン ト の程 度に は差 異は あれ 共有 され てい たも のと 推測 され る︒ その 意味 で共 有表 象と いう こと がで きよ う︒ もち ろん 表象 が共 有さ れる だけ では 全般 的な 制度 改革 が現 実に 達成 され るこ とは ない

︒推 進主 体が 官僚 機構 の中 枢と その 周辺 に存 在し

︑実 際に 制度 改革 を担 う必 要が ある

︒そ の際

︑﹁ 過度 の事 前規 制・ 調整 型社 会か ら事 後監 視・ 救済 型社 会へ の転 換﹂ とい う政 策目 標が 前提 とし てい る秩 序像

︵国 家・ 市場

・経 済の 観念

︶︑ それ によ って 実現 がめ ざさ れる 価値

︑お よび 価値 の実 現に 必要 な仕 組み が︑ 程度 の差 はあ れ共 有さ れて いた

︒具 体的 な場 面で は見 解 と主 張の 相違 があ った にせ よ︑ 制度 改革 と制 度運 用の ため の標 準的 な道 具と 概念 が援 用さ れた

︒そ れを 提供 した の が主 流派 経済 学理 論と 英米 法理 論・ 実務 であ った

︒ アメ リカ 留学 者を 筆頭 に︑ これ ら英 米と りわ けア メリ カの 経済 と法 の研 究者 や実 務経 験者 の存 在は

︑司 法制 度改 革を 含め

︑一 九九

〇年 代以 降の 日本 の経 済社 会に 関わ る一 連の 制度 改革 を促 進し た重 要な 要因 であ る︒

(19)

措定 され た秩 序モ デル 以上 のよ うな 流れ を背 景に 共有 表象 化さ れた

﹁過 度の 事前 規制

・調 整型 社会 から 事後 監視

・救 済型 社会 への 転 換﹂ とい う政 策目 標が 前提 とし

︑一 九九

〇年 代以 降の

︑経 済社 会に 関わ る諸 制度 の改 革に おい てめ ざさ れた 秩序 観 念は

︑自 由市 場経 済シ ステ ムと アメ リカ 法シ ステ ムの 諸要 素に よっ て構 成さ れて いた

︒ しか も︑ 両者 はと もに 非常 に単 純化 され たモ デル によ って 把握 され てい た︒ 具体 的に は次 のと おり であ る︒ まず

︑改 革さ れる べき 戦後 日本 の経 済シ ステ ムは 図式 的に 次の よう に措 定さ

( )

れた

︒参 入障 壁が 業界 ごと に仕 切ら

142

れ︑ メン バー シッ プが 固定 され た業 界を 監督 する 官庁 の原 局は

︑業 界団 体を も媒 介さ せな がら

︑業 界全 体の 成長

・ 拡大 を促 進す る役 割と 業界 内の 秩序 維持

・利 益調 整と いう 役割

︵産 業政 策︶ を担 った

︒そ の行 政手 法は

︑事 実上 法 案作 成を 掌握 して いる こと を基 礎に

︑裁 量の 余地 の大 きい 規定 から なる 法令 を根 拠に

︵場 合に よっ ては 官庁 設置 法な どの 包括 的な 権限 規定 を根 拠に

︶︑ 業界

︵特 にそ の主 導的 企業

︑お よび

︑そ の幹 部社 員な らび に業 界団 体︶ との 継続 的関 係を 背景 とし て行 われ る日 常的 な情 報交 換︑ 情報 共有 を基 礎に して いる

︒そ のチ ャネ ルは 公式 的な もの と非 公式 の もの があ り︑ 前者 は審 議会 など であ り︑ 後者 はい わゆ るM OF 担︵ 大蔵 省担 当社 員︶ など 有力 社員 との 非公 式会 合・ ネッ トワ ーク であ る︒ ある 政策 を実 施す るに あた って は︑ 原局 と業 界︵ 業界 団体 やリ ーデ ィン グカ ンパ ニー

︶の 間の 事前 の公 式・ 非公 式 の協 議・ 情報 交換 が最 も重 要で あり

︑そ こで の利 害調 整を 経て 実現 した 政策 は︑ 事前 調整 を経 た結 果︵

﹁コ ンセ ンサ ス﹂

︶で ある とい う要 因も 働い て︑ 事後 的に 紛争 が発 生す るこ とは 比較 的少 ない

︒ま た︑ 事後 的に 行政 訴訟 など 法 的に 争う 手が かり にな るよ うな 明確 なル ール の形 式を 与え るこ とを 行政 官僚 は巧 妙に 回避 し︑ 官僚 の広 範な 裁量 に よる 調整 が可 能な 形に なっ てい る︒ 行政 によ る強 制的 な法 執行

︵業 務改 善命 令な ど︶ は少 ない

︵執 行の ため の法 規定 が存 在し ない ケー スも 多か

( )

った

︒︶ 業界 のメ ンバ ーシ ップ の固 定性 と関 係の 継続 性の ため

︑行 政処 分や 行政 指導 を企

143

(20)

業が 訴訟 で争 うこ とは 不利 益を 招く と通 常は 予期 され る︒

﹁再 会の

( )

法則

﹂が 働い て秩 序が 維持 され るの であ る︒ そ

144

れと 表裏 一体 をな して

︑行 政訴 訟件 数は 少な く︑ 提起 され た行 政訴 訟に おい て原 告が 勝訴 する こと は稀 であ る︒ 行 政訴 訟の 専門 弁護 士も 少な い︒ この 結果

︑行 政が 法的 ルー ルに 拘束 され る程 度は 低く

︑法 律に よる 行政 の原 理︵ ある いは 法治 主義 の︶ 名の もと で︑ 裁量 の余 地の 非常 に大 きな 行政 が維 持さ れ︑ 経済 社会 にお ける 司法 の役 割は

︑解 雇

( )

規制 など 一部 の問 題を 除き

145

小さ かっ た︒ これ が﹁ 過度 の事 前規 制・ 調整 型社 会﹂ とし て措 定さ れた モデ ルで ある

︒ これ と訣 別し

︑め ざす とさ れた

﹁事 後監 視・ 救済 型社 会﹂ とは 次の よう なモ デル であ

( )

った

146

基本 的に 参入

・退 出の 自由 は最 大限 保障 され る︒ 業界 の仕 切り を越 えた 自由 な競 争が 促進 され る︒ メン バー シッ プの 流動 性が 高ま る結 果︑ 業界 と監 督官 庁︵ 原局

︶の 継続 的関 係は 従来 より 弱ま る︒ それ にも かか わら ず継 続し て 存在 する 企業 があ ると

︑監 督官 庁と の関 係は 継続 的に なる が︑ その 場合 も最 大限 公式 化︑ 透明 化さ せる

︒非 公式 的 な会 合や ネッ トワ ーク は極 力排 除す る︒ 事前 の公 式・ 非公 式調 整へ の依 存を 止め

︑透 明性 を確 保し た協 議を 経て

︑事 前に 明示 的な ルー ルの 整備 を行 う︒ 行政 によ る裁 量行 使の 幅を 最小 にす るよ う規 定ぶ りを 工夫 する

︒ 行政 の役 割は

︑そ のよ うな 明確 で詳 細な ルー ルの もと での

﹁自 由で 公正 な市 場競 争﹂ が展 開す る条 件を 整備 する にと どめ る︒ 行政 自身 も事 前に 明確 に定 めら れた ルー ルに 厳格 に拘 束さ れ︑ 裁量 を最 小化 した 行政 によ る執 行活 動 に限 定さ れる

︒行 政と 企業 の関 係は ar ms ʼl en gt hで ある

︒ 事前 調整 がな され ず︑ 自由 な参 入・ 退出 のも とで 市場 競争 が活 性化 する と︑ 紛争 が増 加す る︒ 発生 した 紛争 や法 令違 反に 対す る行 政に よる 法執 行︵ 行政 によ る事 後監 視・ 事後

( )

救済 も︶

︑原 理的 に対 等な 当事 者間 の関 係に おい て生

147

(21)

じて いる と観 念さ れる

︒市 場の 私的 な主 体と 行政 とは 原理 的な 対等 の関 係に おい て共 通の 法的 ルー ルに 支配 され る︒ 市場 にお ける 私的 な主 体間 の紛 争︑ 私的 な主 体と 行政 機関 間の 事後 的な 紛争 の解 決は

︑予 め明 確に 規定 され たル ール の司 法︵ AD Rを 含む に︶ よる 適用 に委 ねる

︵検 察︑ 裁判 所︑ 弁護 士の 役割 が中 心︶

︒サ クシ ョン

︵民 事・ 刑事

・行 政︶ はル ール に形 式的 に則 り厳 格に 行使 する

︒事 前︑ 事後 とも に行 政の 裁量 は極 小化 され る︒ この よう な市 場・ 政府

・法 シス テム の観 念は

︑教 科書 的な 主流 派経 済学 の市 場競 争モ デル とア メリ カ法 モデ ルそ のも のと 言え

( )

よう

148

この モデ ルに おけ る市 場の 観念 にお いて は︑ 現実 に存 在す る様 々な 中間

( )

組織 や調 整︵ コー ディ ネー シ

ン︶ のメ

149

カニ

( )

ズム は捨 象さ れて いる

︒市 場の 私的 主体 間の 取引 関係 も︑ 市場 の私 的主 体と 行政 機関 との 関係 も︑ とも に︑

150

ar ms ʼl en gt hの 交換 関係 とい うイ メー ジで ある

︒例 えば グラ ノヴ ェッ タの

﹁社 会的 埋め 込み so ci al em be dd ed ne ss

( )

概念 や︑ 村上 とロ ーレ ンの 社会 的交

( )

換論 が主 流派 経済 学の 市場 取引 モデ ルの 限界 を指 摘し てい たに もか かわ らず

151

152

その よう な現 実の 市場 取引 の特 性は 捨象 され た︒ 法と 官僚 制の イメ ージ も︑ ヴェ ーバ ーの 形式 的合 理性 モデ ルそ のも ので あっ て︑ 法・ 行政

・裁 判の 機能 の計 算可 能性

︵形 式的 合理 性︶ と︑ 自由 な市 場取 引に 志向 する 資本 主義 的経 営の 資本 計算 の計 算可 能性

︵形 式的 合理 性︶ を照 応さ せる モデ ルで

( )

ある

153

しか しな がら

︑現 実の 官僚 制が 有効 に機 能す るに は︑ 官僚 制の 自律 性だ けで なく

︑﹁ 社会 に埋 め込 まれ た自 律性 em be dd ed au to no my

﹂︑ ない し︑

﹁国 家と 社会 のシ ナジ ー st at es oc ie ty sy ne rg y﹂ が不 可欠 で

( )

ある

︒ヴ ェー バー で

154

すら 形式 的合 理的 法の もと でも 行政 裁量 が不 可避 であ るこ と︑ 二〇 世紀 初頭 のド イツ にお いて 既に 益々 不確 定概 念 が多 用さ れざ るを えな い状 況で ある こと

︵反 形式 的諸 傾向 を︶ 指摘 して い

( )

たが

︑こ のモ デル では

︑行 政裁 量の 重要

155

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