主義 の多 様性 論と 秩序 形態
⑴ 公式 制度 の改 革と 秩序 形態 本節 の課 題は
︑﹁ 過度 の事 前規 制・ 調整 型社 会か ら事 後監 視・ 救済 型社 会へ の転 換﹂ とい う政 策目 標が
︑一 連の 制度 改革 の結 果︑ 経済 社会 の秩 序形 態全 般と いう マク ロレ ベル で︑ どの 程度 実現 して いる のか
︑あ るい は︑ 戦後 日 本の 経済 ステ ムの 変容 はど の程 度︑ どの よう に進 んで いる のか を明 らか にす るた めの 理論 的手 がか りを 得る こと で ある 本 ︒ 稿で は︑ 公式 制度 レベ ルと 現実 の秩 序の あり 方の レベ ルを 区別 し︑ 後者 を秩 序形 態と 呼
( )
んだ
︒本 節の 課題 は︑
248
この 概念 を用 いれ ば︑ 日本 の経 済社 会の 秩序 形態 の変 動の 全般 的態 様を 明ら かに する 手が かり を得 るこ とに ある
︒ 現実 の秩 序を
︑公 的主 体︑ 私的 主体 の相 互行 為の 結果 形成 され るも の︵ ゲー ム論 の立 場に たて ば︑
﹁社 会ゲ ーム の均
衡要 約表 象﹂
﹇青 木
( )
昌彦
﹈︶ とと らえ るな らば
︑公 式制 度の あり 方は
︑こ の現 実の 秩序 に関 わる 公的 主体 や私 的主 体
249
の相 互行 為を 規定 する 諸条 件の 一つ であ ると 理解 する こと がで きる
︒こ こで いう 制度 は︑ 公式 制度
︵
l a w i n b o o k s
レベ ル︶ を指 し︑ 現実 レベ ルの 秩序 とは 次元 を異 にし てお り︑ 後に 述べ る青 木昌 彦ほ かの 比較 制度 分析 で用 いら れ る制 度概 念と は異 なる︒比 較制 度分 析に おけ る﹁ 制度
﹂概 念は
︑本 稿に おけ る﹁ 秩序
﹂に 相当 する 概念 であ る︒ これ まで の本 稿の 分析 から は︑
﹁過 度の 事前 規制
・調 整型 社会 から 事後 監視
・救 済型 社会 への 転換
﹂と いう 政策 は︑ 日本 の経 済社 会に おい て︑ 戦後 日本 の経 済シ ステ ムが 関係 志向 と行 政主 導に 特徴 づけ られ てい たと いう 認識 の もと で︑ アメ リカ の市 場経 済と 法シ ステ ムを モデ ルと して
︑ル ール 志向 と私 的主 体主 導へ の﹁ 転換
﹂を めざ した 制 度改 革を 進め よう とす るも のと とら え直 すこ とが でき る︒ そし て︑ 上記 の三 分野 にお ける 展開 と現 状が 示唆 して いる のは
︑そ れぞ れの 分野 にお ける 転換 政策 それ 自体 の妥 当性 につ いて
︑慎 重な 吟味 が必 要で あり
︑現 場で も軌 道修 正が 行わ れつ つあ ると いう こと であ る︒ この こと は︑ 関 係志 向と ルー ル志 向の 関係
︑お よび
︑行 政主 導と 私的 主体 主導 の関 係に つい て理 論的
・実 証的 に更 に吟 味す る必 要 があ ると いう 課題 を提 起す る︒ また
︑こ の﹁ 転換
﹂が 経済 社会 の秩 序形 態全 般の 転換 をめ ざし たと すれ ば︑ それ は実 現し てい ない し︑ 全般 的な 実現 をめ ざす こと が適 切な のか
︑あ るい はそ もそ も可 能な のか とい うと いう 疑問 につ なが って いく
︒ そこ で次 に︑ 経済 社会 の秩 序形 態全 般の 転換 可能 性に つい て︑ 既存 の理 論的 研究 に依 拠し て簡 単に 整理 して おこ う︒ 最後 に︑ 二軸 それ ぞれ の理 論的 な総 括と 研究 課題 の提 示を 行う
︒
⑵ 資本 主義 の多 様性 論 資本 主義 経済 のと らえ 方に は大 別し て収 斂論 と多 様性 論が
( )
ある
︒前 者は
︑経 済の グロ ーバ ル化 とと もに アン グ
250
ロ・ サク ソン 型の 経済 シス テム に収 斂す る︵ ある いは 収斂 すべ きで ある と︶ する
︒﹁ 過度 の事 前規 制・ 調整 型社 会か ら事 後監 視・ 救済 型社 会へ の転 換﹂ とい う政 策目 標は
︑そ れが 日本 の経 済社 会の 秩序 形態 全般 のア メリ カ型 への 転 換を めざ して いた とす るな らば
︑収 斂説 の立 場だ った と言 えよ う︒ また
︑そ こま での 徹底 性は 前提 とし てい ない と して も︑ 経済 社会 の個 別の 領域 にお いて 事後 監視
・救 済型 へ転 換す べき であ ると して いた ので あれ ば︑ 多様 性説 を 前提 に︑ わが 国の 経済 シス テム に固 有の 合理 性と 価値 があ り︑ それ を吟 味し た上 で︑ 合理 的な もの は維 持し 続け る こと によ って 比較 優位 を実 現で きる とい う発 想を とっ てい ない こと は間 違い ない
︒ 本稿 で収 斂論 と多 様性 論の 優劣 を論 じる 余裕 はな いが
︑﹁ 過度 の事 前規 制・ 調整 型社 会か ら事 後監 視・ 救済 型社 会へ の転 換﹂ とい う政 策目 標の 経済 社会 の秩 序形 態へ のイ ンパ クト を分 析す る上 で有 効と 思わ れる 方法 は︑ 私見 で は︑ 資本 主義 の多 様性 論の 立場 に立 ちつ つ︑ ルー ル志 向と 関係 志向
︑行 政主 導と 私的 主体 主導 とい う二 軸に 即し て︑ 現状 とあ るべ き姿 を理 論的
・実 証的 に探 求す ると いう もの であ る︒ そこ で︑ 次に
︑資 本主 義の 多様 性論 の立 場か ら日 本の 経済 社会 の現 状を 概観 し︑
﹁過 度の 事前 規制
・調 整型 社会 から 事後 監視
・救 済型 社会 への 転換
﹂と いう 政策 目標 の秩 序形 態全 般へ のイ ンパ クト を分 析し
︑こ の政 策目 標の 当 否を 検討 する ため の視 点を 得る こと にし たい
︒﹁ 資本 主義 の多 様性 論﹂ とい う場 合︑ 狭義 では ホー ルと ソス キス の 編著
﹃資 本主 義の 多
( )
様性
﹄の 議論 を指 す場 合も ある が︑ ここ では
︑そ の他 の資 本主 義の アン グロ サク ソン
・モ デル
251
への 収斂 論を 採ら ない 立場 を含 めて
︑広 く資 本主 義の 多様 性論 と呼 ぶこ とに する
︒ホ ール とソ スキ スの 編著 の議 論 を指 す場 合は
﹁資 本主 義の 多様 性論
﹂と 括弧 書き で表 記す る︒
⒜ 調 整 様 式 企業 は他 の取 引先 企業
︑従 業員
︑株 主︑ 行政 機関 など 他の 主体 との 間で 様々 な調 整︵ コー ディ ネー シ
ョ
ン︶ 活動 を行 って いる︒﹁ 資本 主義 の多 様性 論﹂ や青 木昌 彦ら の比 較制 度分 析は
︑こ の調 整様 式の 態様
︑相 互関 係を 分析 に
おい て基 軸的 な要 因と して 重視 して
( )
いる
︒
252
論者 によ って
︑調 整の 理論 的位 置づ けや
︑内 容︵ 何を 調整 とと らえ るか は︶ 微妙 に異 なっ てい るが
︑こ こで は︑ 調整 とは
︑﹁ 企業 が内 部的
︑外 部的 に展 開し てい る関 係に おい て直 面す る様 々な 問題 に対 処す るた めの 相互 作用
﹂ と定 義し て
( )
おく
︒調 整様 式と は調 整問 題の 解決 の仕 方で ある
︒
253
本稿 の目 的に 即す と調 整様 式は 次の よう に分 類で きる
︒ まず
︑市 場に よら ない 調整
︵非 市場 型調 整︶ と市 場に よる 調整
︵市 場型 調整 に︶ 区別 で
( )
きる
︒
254
非市 場型 調整 は︑ 大き く二 つの 類型 に区 別で き︑ それ ぞれ は︑ 企業 レベ ルと 社会 レベ ルに 区別 で
( )
きる
︒
255
非市 場型 調整 の第 一の 類型 は︑ 官僚 制組 織︵ ヒエ ラル キー
︶と 行政 規制 であ り︑ 前者 は企 業レ ベル
︵私 的官 僚組 織︶
︑後 者は 社会 レベ ルの もの であ る︒ いず れも
︑公 式的 な権 力的 関係
︵命 令・ 服従 関係
︶で ある
︒ 第二 の類 型は
︑非 公式 の継 続的 相互 作用 で︑ 交渉
・協 議・ 妥協 に基 づく 関係 であ る︒ これ らは
︑さ らに 政府 が関 わる 場合 と関 わら ない 場合 に区 別で きる
︒前 者の 例は
︑村 上泰 亮の いう
﹁仕 切ら れた 共生
( )
関係
﹂︑ 青木 昌彦 の﹁ 官
256
僚制 多元 主義 ない し仕 切ら れた 多元 主義
︵
( )
b u r e a u p l u r a l i s m
︶﹂な いし 寺西 重郎 のい う﹁ 原局
・業 界団 体シ ス
( )
テム
﹂
257
258
であ る︒ いず れも 企業 レベ ルか ら社 会レ ベル に及 ぶ︒ 後者 の例 は︑ 系列
︵下 請系 列︑ 金融 系列
︶︑ 企業 集団
︑春 闘な どで ある
︒系 列や 企業 集団 は企 業レ ベル であ るが
︵た だし
︑業 界横 断的 で社 会の 相当 広い 範囲 に及 ぶ︶
︑春 闘は 社会 レ ベル であ る︒ ヴェ ーバ ー以 来︑ 官僚 制組 織と 市場 を二 つの 主要 類型 とし て対 比さ せる 発想 が
( )
あり
︑ウ ィリ アム ソン ほか の取 引
259
費用 の経 済学 にお いて も︑ 限定 合理 性と 取引 費用 節約 とい う視 点か ら︑ 市場 と官 僚制 組織
︵
M a r k e t s a n d H i e r a r -c h i e s
︶ を主 要な カテ ゴリ ーと して 分析 して い( )
るが
︑﹁ 資本 主義 の多 様性 論﹂ や青 木ほ かの 比較 制度 分析 は︑ より 多
260
様な 調整 様式 にま で視 野を 拡大 して いる
︒
もう 一つ の調 整様 式が 市場 型調 整で ある
︒﹁ 市場
﹂の 理念 型は
︑参 入・ 退出 の自 由な 主体 によ る競 争状 況に おい て︑ 両当 事者 の自 由な 意思 決定 によ って 成立 する 取引 の集 合体 であ る︒ 国家 の実 定法 規範 と裁 判所
︑弁 護士 等の 実 定法 機構 は︑ 市場 が成 立・ 維持
・発 展す る上 で重 要な 役割
︵市 場維 持機 能︶ を果
( )
たす
︒市 場の 理念 型に おけ る取 引
261
当事 者間 の関 係は
︑a rm ʼs le ng th と表 現さ
( )
れる
︒
262
但し
︑次 の二 点に つき 注意 を要 する
︒ 第一 に︑ この よう な市 場の 理念 型に 基づ いて
︑新 古典 派経
( )
済学 の合 理的 経済 人と 完全 競争 の理 論的 枠組 みが 構築
263
され
︑そ れと の並 行的 関係 にお いて
︑現 代法 的変 容以 前の 近代 私法 の契 約概 念が 構築 され た︒ しか しな がら
︑グ ラ ノヴ ェッ タが 主張 した よう に︑ 現実 の市 場に おけ る主 体は
︑何 らか の程 度に おい て諸 関係 に埋 め込 まれ てい るの で あり
︑そ のよ うな 社会 構造 に内 在す る秩 序メ カニ ズム も︑ 何ら かの 程度 にお いて 市場 取引 に影 響を 与え て
( )
いる
︒市
264
場取 引の 主体 は︑ 完全 に独 立し て自 由な 意思 決定 を行 い︑ 国家 法の 枠組 みの みを 利用 して
︵国 家法 の影 のも とで
︶ 相手 方と 取引 を結 ぶの では なく
︑国 家法 以外 の︑ 当該 市場 に存 在す る社 会的 秩序 メカ ニズ ムの 枠組 みを も利 用す る こと がで きる し︑ その 影の もと にあ る︒ 第二 に関 連し て︑ 市場 と言 って も︑ その 組織 化の 程度 と態 様は 様々 であ り︑ 国家 法秩 序以 外の 秩序 メカ ニズ ムの 存在 が希 薄な ケー スも あれ ば︑ 継続 的な 取引 関係 が高 度に 展開 して いる ケー スも ある
︒後 者は
︑今 井賢 一と 伊丹 敬 之が かつ て提 示し た市 場と ヒエ ラル キー
︵官 僚制 的組 織︶ の中 間組 織と も表 現で き
( )
るし
︑非 市場 型調 整メ カニ ズム
265
が︑ 何ら かの 程度 と態 様で 市場 に浸 透し てい ると 表現 する こと もで きる
︒ これ に対 して
︑非 市場 型調 整に おい ては
︑当 事者 ない し関 係者 間の 関係 は︑ 何ら かの 程度 で継 続的 であ り︑ メン バー シッ プ︵ 参入
・退 出︶ は固 定的 であ る︒ 但し
︑非 市場 型調 整の うち
︑行 政規 制に つい ては
︑被 規制 者が 固定 的 でな い場 合も 少な くな いが
︑被 規制 者が 固定 的な 場合 もあ る︵ 例え ば︑ 新規 参入 が制 限さ れて いる 業界
︒︶ また
︑規 制