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(56) たものである SGEの目標として 1ふれあい ( ホンネとホンネの交流 ) 2 自他発見 ( 自己 他者の固有性 独自性 ) が挙げられており ふれあい 自他発見は参加者の行動変容につながる SGEには 枠 が設けられており グループのルール グループサイズ グループの構成員 時間制限 エ

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構成的グループ・エンカウンターの応用

─就職活動に役に立つエクササイズ─



森 野 晃 介  

1.はじめに

 構成的グループ・エンカウンター(Structured Group Encounter 以下SGE)を大学で初めて 体験し、初対面の人とコミュニケーションをとることの難しさ、気恥かしさを感じた。その一 方で、初対面の人でも自分と共通する部分や話題を発見できた時には円滑にコミュニケーショ ンをとることができ、初対面の人と交流することへの楽しみ、面白みを感じた。SGEを体験し たことで、他者と積極的にコミュニケーションを取り、異なる価値観に触れることで自分自身 の成長にもつながることが多かった。  就職活動において、様々な企業の方や就職活動を行っている他の学生とコミュニケーション をとる機会が多く、実際に企業に就職してからも様々な人とコミュニケーションをとることが 求められる。初対面の人や様々な年代の人と交流する機会も多く、様々な出会いの中で異なる 価値観・考え方に触れることで自らの価値観・考え方に刺激を与え、成長を実感することがで きた。また、採用試験で企業の方と面接を行った際に、「自己理解」(自身の性格、学生時代頑 張ったことなど)、「他者理解」(企業の情報、お客さんの気持ち・ニーズ)を深めていく必要 性を感じ、SGEを通して体験したことが、実際の就職活動に活きる場合も多かった。以上のよ うな経緯から、コミュニケーション能力の向上、自己理解・他者理解の促進を目的としたSGE は、就職活動を行う上で必要な能力を養うことができる活動であると思われる。  本研究では、筆者が実際の就職活動の際に体験したことや採用試験の内容をアレンジし、 SGEのエクササイズとして構成した。エクササイズ実施前後でアンケートを取り「他者とのコ ミュニケーション」に関する意識の変化を調査した。 2.研究の目的と意義  SGEの実施を通じて、他者との積極的な交流や初対面の相手との円滑なコミュニケーショ ン、エクササイズを通して柔軟な発想・考え方を身につけることを目的に行う。上記の目的に 加え、就職活動の選考を疑似体験することで、採用試験の内容に慣れると同時に、参加者の今 後の就職活動や採用試験に対する意識の向上や準備の手助けとなれば幸いである。 3.先行研究 3.1 構成的グループ・エンカウンターとは  SGEとは國分康孝・國分久子らが1970年代後半に提唱、実践し始めたものであり、カルフォ ルニア州ビッグ・サーのエスリン研究所で盛んであったオープン・エンカウンターを発展させ

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たものである。SGEの目標として、①ふれあい(ホンネとホンネの交流)、②自他発見(自己・ 他者の固有性・独自性)が挙げられており、ふれあい・自他発見は参加者の行動変容につながる。  SGEには「枠」が設けられており、「グループのルール」「グループサイズ」「グループの構 成員」「時間制限」「エクササイズをする際の条件」の5つである。また、SGEには「インスト ラクション(instruction、リーダーの手本)」「エクササイズ(exercise、課題)「シェアリング (sharing、共有)」「介入(リーダーによる軌道修正)」といった4原則がある。SGEは主に「エ クササイズ」と「シェアリング」で構成されている。リーダーが与えた課題をグループ内で実 施し(エクササイズ)、活動後にグループ内でエクササイズについて感じたことや考えたこと を話し合い、グループ内だけでなくSGE参加者全体と共有していく(シェアリング)。  林(2011)はSGEについて「リーダーとともにエクササイズ(課題)を行う集団的なカウン セリングの技法の1つである。エクササイズの時間・人数・内容を構成する点が特徴で、参加 体験型の学習方法の一つと位置づけられる」と述べている。 3.2 構成的グループ・エンカウンターの実践研究  太田(2008)は「人と話すことが苦手」「人前に出ると緊張してしまう」「人見知り」など人 とコミュニケーションをとる際に生じる悩みを解決する手段の一つとして、SGEが学校・企業 研修会などで幅広く取り入られていることに着目し、学校や企業のコミュニケーション活動や 人間関係作りに役立つSGEを実施した。エクササイズごとの振り返りシートの分析と、合宿を ともなうSGEの事前と事後の評価の差異を「私の社会人スキル」というアンケート調査で測定 し、その結果をまとめている。  向井(2008)は、性格に対する見方を変え、その表現をプラスに変えていくことで、短所に 対する意識や、自分や他人に対する評価の向上に繋がると考えるリフレーミング(reframing) を用いたSGEを実施している。各エクササイズ終了後のふりかえりシートと性格リフレーミン グ辞書の作成作業を通して得られた表現を用いることで、「自己肯定感が芽生える、他人を励 ますことができる」などの効果が実際に得られるか調査している。  深見(2010)は、時間制限内における発表力の向上を目的とするSGEの実践研究をし、SGE の実践前後において、参加者に事前・事後アンケートを行い、事前事後の比較により、参加者 の時間制限内における発表力に関する自己理解が高まったという結果を得ている。  松尾(2011)は、「自己開示」や「自己理解」に重点を置き、自己表現力の向上を目指す SGEの実践研究を行っている。5回のエクササイズを実施し、エクササイズ毎の振り返りシー トとSGE実施前・実施後における「自己評価アンケート」を集計・分析し、参加者の評価値の 推移を報告している。  坂本(2011)は、自己肯定感の向上と自己受容の関係性に着目し、自分の長所や短所を受け 入れることで、自己肯定感を向上させることを目的とするSGEの実践研究をしている。  黄潔(2012)は、日本語を用いた話す力を高めることを目的としたSGEの実践研究を行って いる。参加者の振り返りシートから得られた量的データと質的データに基づいて分析を行い、 SGEが取り入れられた授業の実像を明らかにしている。また、日本人中心の授業と留学生中心 の授業とに分けることで両者を比較し、分析している。

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 濱崎(2012)は、「自己アピールのためのグループワーク」をテーマに、実際の就職活動を 疑似体験できるようなエクササイズを構成し、アピール力や積極性、コミュニケーション能力 の向上を目的としたSGEを行っている。  山崎(2013)は、相互理解や自己開示、他者との協調という点に重点を置いたエクササイズ を構成し、相互理解の促進や自己の肯定的理解を目的としたSGEを実施している。 4.研究方法・分析方法  2014年度前期の日本語学特殊講義において、受講者を対象に自己理解・他者理解の促進やコ ミュニケーション能力の向上を目的としたエクササイズを実施し、調査結果を分析した。エク ササイズは筆者が就職活動の際に体験したものの中から自己理解の促進やコミュニケーション 能力向上の効果が期待されるものを選び、SGEのエクササイズ集や過去に行われた実践研究を 参考にしてアレンジし、実施した。 4.1 エクササイズと振り返りシート  参加者にエクササイズ終了ごとに「エクササイズ振り返りシート」(別添資料1)を記入し てもらった。振り返りシートでは各設問に「よくあてはまる(5点)」~「全くあてはまらない (1点)」の5段階で評価してもらうものに加え、エクササイズを通じて思ったことや気づいた ことを記入する自由記述欄を設けた。5段階評価の項目は以下の5項目である。 ①エクササイズを楽しむことができた    ②自分のためになるエクササイズだった ③自分なりに工夫して取り組むことができた ④適切に表現できた ⑤自己理解・他者理解が深まった  以上の5項目に対する参加者の評価をグレード・ポイント・アベレージ(Grade Point Average以下GPA)式に算出した。なお、その際に小数点第3位を四捨五入した。計算方式は、 5段階評価の各点数とその点数を選んだ参加者の人数を掛けたものを、参加人数で割って導く 方式を用いた。  また、参加者にはA~iのアルファベットを振り当てて記号化し、プライバシーを保護しな がらも実施者が個人を識別できるようにして分析を進めた。 4.2 エクササイズ実施前後のアンケート調査  参加者にはエクササイズ実施前に「エクササイズ事前アンケート」を、実施後に「エクササ イズ事後アンケート」を記入してもらった。アンケートの回答結果から、SGE実施前後でどの ような意識の変化が見られるかを調査した。(事前・事後アンケートの内容は同一。本稿では、 紙幅の都合上、呈示を省略)  事前・事後アンケートも振り返りシートと同様に各設問において「よくあてはまる(5点)」 ~「全くあてはまらない(1点)」の5段階で自己評価するものに加え、自由記述欄を設け意見 や感想を記述してもらった。評価も同様にGPA式に算出した。

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5.構成的グループ・エンカウンターの実施  以下の5つのエクササイズを実施したが、紙幅の都合上、ここでは⑤「グループディスカッ ションをしよう」のみを紹介する。(  )内は、各エクササイズの所要時間を示す。 5.1 エクササイズ①「時間に合わせた自己紹介」(40分) 5.2 エクササイズ②「リフレーミングをしよう~短所から長所へ」(40分) 5.3 エクササイズ③「スピーチをしよう」(50分) 5.4 エクササイズ④「ディベートをしよう」(40分) 5.5 エクササイズ⑤「グループディスカッションをしよう」(50分) 5.5.1 エクササイズ⑤「グループディスカッションをしよう」の実施内容 実施対象  2014年7月8日(火)5・6時限 日本語学特殊講義(前期) 実施対象  日本語学特殊講義(前期) 参加者32名 <表1> エクササイズ⑤「グループディスカッションをしよう」参加者内訳   2年 3年 4年 留学生 その他 合計 男性 2 5 2 0 2 11 女性 4 11 1 4 1 21 合計 6 16 3 4 3 32 (その他の参加者は、開放授業としての社会人参加者であった。)       ねらい ①自分の意見を簡潔に述べる ②グループで協力し意見をまとめる ③相手の意見を尊重する ④自分の役割をきちんとこなす 実施手順 ①エクササイズの手順やねらいを説明する(2分) ②4人1組のグループを作る(1分) ③司会・発表者・書記・タイムキーパーを決める(2分) ④グループで話し合うテーマについて決める(1分) ⑤下記のテーマから一つ選んでグループで話し合い、用紙(別添資料2)にまとめる(25分) ⑥グループごとに全体で発表する(2分) ⑦グループでシェアリングを行う(3分) ⑧振り返りシートに記入する(3分) テーマ一覧 ①就職活動における成功とは?

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②グループに50万円与えられたらグループでどのように使うか? ③パンを日本の食文化にするためにどうしたらいいか? 5.5.2 参加者による評価  エクササイズ⑤「グループディスカッションをしよう」による参加者の評価を次の<表2> に示す。参加者の評価をGPA式に算出した点数が各項目の平均点である。 <表2> エクササイズ⑤「グループディスカッションをしよう」に対する参加者の評価 評価項目 5 4 3 2 1 合計 平均 ①楽しかった 19 9 3 0 0 140 4.52 ②ためになった 17 11 2 1 0 137 4.42 ③工夫した 13 11 7 0 0 130 4.19 ④適切に表現できた 4 18 7 2 0 117 3.77 ⑤自己理解・他者理解が深まった 15 9 6 1 0 131 4.23 4.52 4.42 4.19 3.77 4.23 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0 評価項目① 評価項目② 評価項目③ 評価項目④ 評価項目⑤ 図1 エクササイズ⑤「グループディスカッションをしよう」の評価値  本エクササイズでは評価項目④「適切に表現できた」を除いて、4ポイント以上の高評価を 得ることができた。また、エクササイズ④「ディベートをしよう」と比較すると全体的に評価 値が上昇している。エクササイズ④の時に比べ、考える時間や話し合いの時間を十分に設けた ことが充実した話し合いにつながり、エクササイズとして高評価を得られたのではないかと考 えられる。また、自由記述欄にも以下に示すように前向きな意見が多く見られた。 5.5.3 参加者の自由記述 項目①「楽しかった」に関する自由記述 <表3> 楽しかった・面白かった B: 食文化にする=主食にいかに入り込むか、という意見が多い中、主食ではなく“パン”と いう軽食、おやつに近いジャンルで文化としていきていくという意見を出すことができ たのは、グループディスカッションならではのことだったと思う。(3年・女性) J: 同じテーマで話していても、全く違う切り口で話を進めている班があったので、別の視 点から物事を見ることができて面白かった。(3年・女性)

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W: 「パンを日本の食文化にするためにどのようにしたらいいか」というテーマで普段あま り考えたことのないテーマだったので、面白い発想が多くとても楽しくディスカッショ ンをできました。(4年・女性) d: これまではそれぞれの意見を主張するだけだったり、討論が多かったけれども今回は4 人で1つのことを考えていくということで、様々な意見が出ておもしろかった。(2年・ 女性)  BとJはテーマが同じでもグループごとで異なった意見が出ていたことに面白みを感じてい る。与えられたテーマのどこに着目するか、どのような定義づけをするかによってグループ内 で生まれる意見も異なってくると思われる。また、他のグループと意見を共有し、異なる意見 にも触れることで多角的な視点を持つことや他者理解の促進にもつながっていくのではないか と考える。  Wは日常会話で話さないことをテーマにしたことで想像力を働かすことができ、楽しかった と述べている。SGEは非日常的なテーマを設定することがある。エクササイズ②「リフレーミ ング」、④「ディベート」において、様々な角度から物事を捉えることをねらいとして行った ことが、本エクササイズにおいても活かされている。また、ディスカッションを楽しく行うこ とができたことで、柔軟に頭を使うことができたのではないかと考える。  グループで活動することによって、自分では思い浮かばなかったような意見も出ることがあ る。また、グループで各個人が出した意見を組み合わせることによって、より良い意見も生ま れてくるのではないかと考える。 項目②「ためになった」に関する自由記述 <表4> ためになった E: 一人で考えてことを発表するエクササイズでは2分という発表時間がとても長く感じて 時間が余ってしまったりしたのですが、今回のように大勢の知恵を集めて話し合うとい ろんな意見がポンポン出て、むしろ話を簡潔にまとめることに苦労しました。様々に 違った苦労があり、身につく力も違うのだろうなと思いました。(3年・女性) Y: グループ内で「パン」という、日常にあふれているものについて、日頃の友人との会話 にもない深い話をできたように思う。何か1つの議題について深めていく過程がとても 良いものであったように思う。(3年・女性)  Eはこれまでのエクササイズに比べて意見をまとめることに苦労したようである。エクササ イズ①~④では考える時間が数分程度であったが、今回のエクササイズでは25分間、考える時 間や話し合いの時間を設けた。考える量や話す量も多くなったのに対し、発表時間はこれまで のエクササイズと変わらなかったため難しく感じたのではないかと考える。グループ内の司会 が円滑に話を進め、書記がわかりやすくまとめることができれば、発表者もより良い発表がで きる。グループディスカッションにおいて役割分担は非常に重要であるように思われる。  Yは結論を出すまでの過程が有意義だったと述べている。日常会話では話さないことをテー

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マを選んだことで、かえってそのテーマについて深く考えることができたようだ。また、グ ループ内で協力しながら結論を導き出したことで、達成感もより感じることができたのであろ う。 項目③「工夫した」に関する記述 <表5> 工夫した U: ディスカッションは一人一人が意見をいうよりも出た意見をみんなで広げて新しい意見 につなげていくという形がいいと思った。(3年・男性) V: 質問や相づちなどを通して他者の意見の尊重を図ることができたと思います。(2年・ 女性) a: はじめに「日本の食文化」や「就職活動における成功」は何かを明確に定義することで 円滑に議論が進められるし、話し合いが横道にそれることも少なくなると思った。(3 年・女性)  Uは相手の意見を尊重し、展開していくことで良いディスカッションになると述べている。 相手の意見を尊重することは他者理解や他者肯定にもつながる。また、意見を広げて行くこと で視野も広がっていくだろう。  Vは相手が述べたことに反応することで、相手を理解しようと努めている。他者理解を促進 するためには、聞き手の態度も重要であるように思える。  平木(1993)は「話す人は聴いてくれる相手がいるので話せるのであり、また、相手がきち んと聴いてくれないと次に話すことは難しい」と述べている。聞き手が相槌を打つ、質問を返 すといった反応を見せれば、会話も弾み相互理解も深まっていくのではないかと考える。話し 手が話をしたくなるような雰囲気を作り出すことも聞き手の重要な役割である。  aは定義を明確にすることで円滑に話し合いができるということを述べている。エクササイ ズ④「ディベートをしよう」では、テーマに「幸せ」という抽象的な言葉が含まれており、そ の言葉の定義を話し合う時間も短かったため、円滑に議論を進めることができなかったという 意見が多く見られた。今回のエクササイズでは時間に余裕もあったため、与えられたテーマを どういう定義で捉えるか、進めていくかを話し合えたと思う。定義を決めることで、aが述べ ているように話が脱線することもなく円滑に議論を進めることができるだろう。 項目④「適切に表現できた」に関する自由記述 <表6> 適切に表現できた・適切に表現できなかった D: 説得力のあるスピーチをするためには、話の構成や話す時の態度が重要なのではないか と思った。構成はやはり動機を一番初めに述べ、それを達成するにはどうしたらいいの かという具体的な方法、その方法を行うためにはどうすれば良いのか、考えるべきだと 思った。(3年・男性) O: 私は発表者として参加したが、前に出た時、頭の中が真っ白になり、上手く発表できて いなかったと思う。以前と比較して多少はマシになったとは思うが、まだまだ訓練が足 りない。説得力のある話し方を練習したいと考えている。(4年・男性)

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 Dは話の構成を意識することで説得力のあるスピーチができると述べている。まず、自分の 主張から述べることでこれから話す内容を明確にし、具体例を述べることでその主張に説得力 を持たせることができる。  話の構成を意識することで聞き手により理解しやすいスピーチ、発表を行うことができると 考える。  Oは発表をうまくできなかったと述べているが、少しずつ発表が上達していることやさらに 上手くなりたいという前向きな姿勢が窺える。繰り返しリハーサルを行うことでスムーズな発 表につながるだろう。また、普段大勢の前で発表する機会が少ないことが緊張の原因であるよ うにも思える。積極的に発表者の役割につき、大勢の前での発表に慣れることで、緊張するこ となく堂々と発表することができるのではないかと考える。 項目⑤「自己理解・他者理解が深まった」に関する自由記述 <表7> 他者理解が深まった G: グループで意見を出し合い、全体で発表することで、「こんな意見もあるんだな」とい うのを認識できてよかったです。(3年・女性) H: 発表のあと、ちょっとした質問コーナーなどがあったらよかったかもという意見もあり ました。(3年・男性) P: テーマは③を選んだが「日本の食文化」についてそれぞれの意識や考えを共有してから 話を進めることは大事だと思った。(3年・女性) Q: 私たちが話し合った「パンを日本の食文化にするためにどうしたらいいか」というテー マは、チーム内でも意見が分かれることがなかったので、話しやすかったです。「50万 円をグループでどうやって使うか」というテーマなどは、意見が分かれやすく、相手の 意見を尊重することがネックになるのではないかと思いました。(3年・女性) R: 自分たちの選んだテーマと同じだったグループが多くて、似通った意見ばかり出るかと 思ったが、それぞれ独自の観点から意見を出していたので、他者の考えを聞くというの は改めて大事だと思った。(3年・男性) X: 一人一人が多くの意見を出し合うことで、よりお互いの理解も深まり、発表内容も濃く なると思う。(2年・男性)  本エクササイズでは「自己理解が深まった」という記述はあまり見ることができなかったが、 対照的に他者理解に関する記述が多く見られた。  G、P、Rはグループ内・外で意見を共有することに重要性を感じている。今回のエクササ イズでは3つのテーマから1つを選んでディスカッションを行ってもらったが、テーマ③「パ ンを日本の食文化にするためにはどうしたらいいか」を選択したグループが多かった。しか し、各グループで様々な意見が見られ、グループごとに独創的な意見を見ることができた。ま た、発表を通して意見を共有することで視野が広がったと感じた参加者が多かったように思え る。  Hは質問タイムを設けることを提案している。ただ違うグループの発表を聞いて終わりにす

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るのではなく、質問をすることで相手への理解も深まり、より他者理解を促進させる効果があ るのではないかと考えられる。Hのように他者理解を深めるための提案がこれまでの自由記述 より多く見ることができた。エクササイズを通して参加者の他者理解に対する意欲が向上して きたことが窺える。  Qは相手の意見を尊重しながらディスカッションを行うことが大切であると述べている。グ ループディスカッションにおいて、意見が分かれてしまうことは少なくない。頭ごなしに相手 の意見を否定するのではなく、相手の意見を組み込みながら意見を出し合うことで、お互いが 納得した意見を出すことができるだろう。  Xは意見を積極的に述べることで良いディスカッションが行えると述べている。積極的に意 見を出し、周りと共有することでより良い意見に変わっていくこともあろう。否定されること を恐れず、積極的に意見を述べることがグループディスカッションでは重要である。 5.5.4 エクササイズ⑤のまとめと考察  本エクササイズでは、筆者が就職活動中に行ったグループディスカッションのテーマから複 数を選び、グループで選択する形でエクササイズを行った。テーマを選択式にしたことで一部 テーマに偏りが見られたが、各グループで想像力を働かせて積極的で独創的な意見を出すこと ができており、有意義なエクササイズになったのではないかと考える。  本エクササイズを通して、参加者の「相手の意見を尊重する」「相手の意見に耳を傾ける」 といった意識が向上していることが自由記述から窺うことができた。山崎(2013)は「他者理 解をする上で大切なことは、相手を理解した上で自分も理解してもらおうとするための意見を 述べることではないだろうか。そのために相手の話を尊重しよく聞く『傾聴』の姿勢が必要で あり、『傾聴』と『他者理解』は強く結びついている」と述べている。『傾聴』に対する意識を 高く持つことで、お互いに話をする際により深い相互理解が可能になるのではないかと考え る。また、西原(2001)は「聴くことは、他者を受け入れることである。他者の見え方や考え 方を知り、それに触発、啓発されて、自らが考えを拡充、深化させる。そのことによって自己 理解、他者理解、相互理解の関係等に高まりと深まりが生じ、よい自己、よい人間関係の確率 につながっている」と述べている。様々な意見に耳を傾け、お互いに深め合っていくことでよ り良い人間関係作りに役立てることができるだろう。  今回のエクササイズではディスカッションを行うにあたり、司会、書記、タイムキーパー、 発表者という4つの役割を設けたが、「司会をしなくても順調に話し合いが進んだ」「タイム キーパーの役割がはっきりしなかった」という意見が見られた。実際の就職活動のグループ ディスカッションでは、ほとんどの場合今回設けた役割を設定して行う場合が多い。司会の場 合、グループ内で出た意見をまとめることや話が逸れてしまっている場合に修正するといった 役割が求められる。また、設定された時間内に意見をまとめ、発表も行う場合、タイムキー パーの役割も重要になる。先行研究で示した深見(2010)の実践研究も、「時間制限内におけ る発表力の向上」を重視している。時間配分や経過時間の報告を行うことで制限時間内に議論 をまとめることができるだろう。グループディスカッションで大切なことはとにかく役割につ くことではなく、与えられた役割をしっかりとこなすことである。たとえ役割につかなくても

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積極的に発言する、相手の意見をしっかりと聞くことで面接官にアピールすることもできる。 練習をする際にいろいろな役割についてみることで自分にあった役割を見つけることができれ ば、実際の就職活動におけるグループディスカッションでも存分に自分の持ち味を発揮するこ とができるだろう。 6.3 考察  本稿では実際の就職活動における採用試験を体験しながら、コミュニケーション能力の向上 や他者との積極的な交流を目的としたエクササイズを5回行った。エクササイズ実施前、実施 後に行ったアンケートの比較から、参加者にとって大変有効で有意義であったと考えられる。  事前アンケートでは「年上の人との会話が苦手である」「初対面の人との会話が難しい」と いった記述が多く見られていたが、エクササイズ実施後のアンケートでは「様々な人との会話 がためになった」「他者との会話が刺激的であった」といったように他者とのコミュニケーショ ンについて前向きな意見を見ることができた。また、エクササイズ事前アンケートでは評価値 が低かった項目⑤「積極性」や項目④「初対面」の項目が大幅に上昇している。自由記述と合 わせて、参加者の「初対面に対する苦手意識の克服」や「他者との積極的交流」という面で大 きな効果が得られたのではないかと考える。 6.4 リフレーミングとディベート・ディスカッションの関連性  エクササイズを行う中でリフレーミングはディベート・ディスカッションに関連性があるよ うに感じられた。リフレーミングを繰り返し行い、練習することでディベートやディスカッ ションに活かすことができるのではないかと考える。  リフレーミングについて向井(2008)は「リフレーミングは、物に対してだけでなく、人の 性格や行動、出来事など、様々な事柄に対して用いることができ、特に問題や障害になってい ることの捉え方を変え、良い面を見出すために用いられている」と述べている。ディベートや ディスカッションにおいて、議論が行き詰まった際に違った角度から物事を捉えてみること (リフレーミング)で行き詰まりを解消することができるのではないかと考える。  また、ディベートについて茂木(2005)は「ディベートでは、相反する両面からの分析を通 じて360度の視点で問題を見渡します。(中略)自分と異なる意見のなかにも、良い部分を認め て活かしていく寛容さや柔軟性(オープンマインド)を養うことができます」と述べている。 「360度の視点で問題を見渡す」ことはリフレーミングにおける「枠組みを外して考えてみる」 ということに類似している。リフレーミングよって得られた力がディベートやグループディス カッションにおいてもそのまま活かされると考える。  リフレーミングとディベート・ディスカッションの関係を図に表わすと次頁の図2のように なる。また、ディベートとディスカッションの区別がつかない場面もありえるが、ディベート は図2に示したように、賛成と反対にあらかじめ分かれて意見を述べ合うのに対して、ディス カッションは自由に意見を述べ合い、テーマについて反対者が賛成者に回ることもあり、合意 形成につながる場合もある。

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賛成 反対 ディベート 異なる立場 様 々 な 角 度 で 考 え る ディスカッション テーマ

リフレーミング

様 々 な 角 度 で 考 え る 7.今後の課題  シミュレーションやリハーサルなどの準備を入念に行うことで、エクササイズ序盤からわか りやすい説明をすることができたのではないかと考える。時間に関しては参加者に指摘され ることも少なく、ほぼ適切な時間配分を設定することができたのではないかと考える。「ディ ベートをしよう」においては全体的に時間が足りないといった指摘を多く受けた。過去の実践 研究においても、ディベートを行う上で時間に関する指摘を多く受けている。エクササイズを 2回に分けて十分に時間をとってディベートを行うことでより高い効果が期待できるのではな いかと考える。  就職活動に役立てるエクササイズを実施して、改めてSGEは就職活動の際に必要な能力を向 上させる効果があると感じた。就職試験のみならず、今後働いていく中でも必要な力を養うこ とができたのではないかと思う。  今後は就職後の社会に出て役に立つという点に焦点をあててエクササイズを構成し、本研究 を活かしていきたい。

 また、近年注目をあびるようになってきたPBL(Problem Based Learning/Project Based Learning)やActive LearningとSEGの共通点と相違点についても検討していきたい。 【参考文献】 庵谷知代(2009)「『伝え合う力』の育成─構成的グループ・エンカウンターを通して─」山口 大学人文学部林伸一研究室編集『エンカウンター研究』第3号 都留春夫(1987)『「出会い」の心理学』講談社現代新書 黄潔(2012)「話すことに関する構成的グループ・エンカウンターの実践研究」山口県教育カ ウンセラー協会発行『エンカウンター研究』第5号 図2 リフレーミングとディベート・ディスカッションの関連図

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國分康孝(1981)『エンカウンター 心とこころのふれあい』誠信書房 西原裕(2001)「対話のある授業」國分康孝『構成的グループエンカウンター』誠信書房 林伸一(2010)「エンカウンターによる授業の活性化─『対話のある授業』実現のために─」 山口エンカウンター研究会発行『エンカウンター研究』第4号 濱崎南美(2012)「自己アピールのためのグループワーク─就職活動に活かせるSGE─」山口 県教育カウンセラー協会発行『エンカウンター研究』第5号 松尾加奈子(2011)「構成的グループ・エンカウンターの実施による自己表現力の向上について」 山口大学人文学部林研究室編『大学における日本語授業の活性化─構成的グループ・エン カウンターの実践研究─』 向井沙綾(2008)「性格表現の言い換えによる効果─リフレーミング辞書の作成に向けて─」 山口大学人文学部林伸一研究室発行『エンカウンター研究』第1号 迎珠実(2008)「キャリア形成のための構成的グループエンカウンターの実践」山口大学人文 学部林伸一研究室発行『エンカウンター研究』第1号 山崎晃(2013)「相互理解の肯定的理解の促進について─構成的グループ・エンカウンターに よる実践研究─」山口県教育カウンセラー協会発行『エンカウンター研究』第6号 (もりの・こうすけ)

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(別添資料1)

エクササイズ振り返りシート

(   )年(  )月(  )日 (    )学部 (        )学科 (      )コース (  )年 性別(男・女) 国籍(    ) 氏名(        ) ●次の項目に関して当てはまる番号を5~1の中から選んで○を付けて下さい 5(よくあてはまる) 4(あてはまる) 3(どちらともいえない) 2(あてはまらない) 1(全くあてはまらない) エクササイズを楽しむことができた    【  5  4  3  2  1  】 自分のためになるエクササイズだった   【  5  4  3  2  1  】 自分なりに工夫して取り組むことができた 【  5  4  3  2  1  】 適切に表現できた      【  5  4  3  2  1  】 自己理解・他者理解が深まった      【  5  4  3  2  1  】 ●気づいたこと・感じたこと

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(別添資料2)

ディスカッション

テーマ一覧 ①就職活動における成功とは? ②グループに50万円与えられたらグループでどのように使うか? ③パンを日本の食文化にするためにどうしたらいいか? テーマ 他のメンバーの意見 グループの意見 発表用メモ

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