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体育学研究 , アルコール関連遺伝子多型を妥当基準としたエタノールパッチテストの信頼性 季節差や測定者間誤差の視点から 小宮秀明 1),2) 佐々木絵未 1) 黒川修行 3) Hideaki Komiya 1,2,EmiSasaki 1 and Naoyuki Kuro

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1) 宇都宮大学教育学部 〒3218505 栃木県宇都宮市峰町350 2) 獨協医科大学公衆衛生学講座 〒3210293 栃木県下都賀郡壬生町北小林880 3) 宮城教育大学教育学部 〒9800845 宮城県仙台市青葉区荒巻青葉149 連絡先 小宮秀明

1) Faculty of Education, Utsunomiya University. 350 Mine-machi, Utsunomiya, Tochigi 3218505 2) Department of Public Health, School of Medicine.

Dokkyo University.

880 Kitakobayashi, Mibu-machi, Shimotsuga-gun, Tochigi, 3210293

3) Faculty of Education, Miyagi University of Educa-tion.

149 Aramaki-aza-Aoba, Aoba-ku, Sendai, Miyagi, 9800845

Corresponding author komiya@cc.utsunomiya-u.ac.jp

アルコール関連遺伝子多型を妥当基準としたエタノールパッチテスト

の信頼性季節差や測定者間誤差の視点から

小宮 秀明1),2) 佐々木絵未1) 黒川 修行3)

Hideaki Komiya1,2, Emi Sasaki1and Naoyuki Kurokawa3: Reliability of ethanol patch tests for

assess-ment of alcohol tolerance based on alcohol-related genetic polymorphisms: The in‰uence of season and operator subjectivity. Japan J. Phys. Educ. Hlth. Sport Sci. 61: 2942, June, 2016

AbstractHigh/low alcohol tolerance is determined by genetic polymorphisms of ADH2 and ALDH2. Currently, operators conduct ethanol patch testing for assessment of alcohol tolerance in a subjective manner; therefore, the test results may vary among individuals. The present study was designed to veri-fy the reliability of ethanol patch testing, with a focus on changes in skin color due to seasons. Two opera-tors were assigned to perform ethanol patch tests, and alcohol-related genetic polymorphisms were eval-uated to verify the results.

The study included 129 healthy students from Utsunomiya University (age range: 2124 years). These students were selected because they met the eligibility criteria for the study(all necessary infor-mation had to be available, i.e. results for all questionnaire items and patch tests, as well as genetic analy-sis). Alcohol-related genes tested in this study were ADH2 and ALDH2. During the ethanol patch tests, two operators examined the subjects' cutaneous reactions immediately after lint pad had been removed from their skin, and at 10 min after removal.

Ethanol patch test to the subjects was performed twice: once in summer and once in winter. We also administered a questionnaire to assess the students' views on alcohol and drinking habits. According to the cutaneous reactions examined at 10 min, there was signiˆcant concordance between the results of ethanol patch tests and ALDH2 genetic polymorphisms. The results of the patch tests performed by the 2 operators (A and B) in summer showed that the concordance rate between the operators was 93.8 (k coe‹cient: 0.889; 95 conˆdence interval: 0.8150.962, p<0.001) for the cutaneous reactions at 10 min after lint pad removal. Moreover, the same operator's data showed that the concordance rate between the results of the summer and winter patch tests was 70 or higher. These ˆndings suggest that ethanol patch testing is a reliable assay of alcohol tolerance, although the results may be in‰uenced by seasons and individual operator subjectivity. Therefore, during ethanol patch tests, it is important to take into ac-count test conditions such as the time of year and skin color, and to evaluate the results comprehensively. Key wordsdrinking, alcohol dehydrogenese 2 (ADH2), aldehyde dehydrogenese 2 (ALDH2),

‰ush-ing reaction

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.緒

我が国の法律では20歳以上の飲酒が認められ ており,飲酒経験が少ない大学生にとっては,自 分がお酒に対して「強い体質」か「弱い体質」で あるかを判断しにくい年齢である.そのため,限 度を超えて飲酒していることも多く,急性アル コール中毒を引き起こす可能性も高い. 一般にお酒に対し「強い」,「弱い」は遺伝的に 決定されている(吉原・笹栗,2012).特に日本 人はアセトアルデヒドを分解する酵素が他の民族 と比べて少なく,お酒に対し弱い体質であること が知られている(Higuchi et al., 1994).近年, アルコールを代謝する 2 つの酵素「アルコール 脱水素酵素(ADH2)」と「アルデヒド脱水素酵 素(ALDH2)」の働きを遺伝子レベルで解析す ることで,アルコールに対する生体内での分解能 を知ることができ,自身の体質にあったお酒との 付き合い方がわかるようになってきた.しかし, 遺伝子解析は手間と費用がかかるため簡単に行う ことは出来ず,簡便な方法とは言えない. これまでアルコールに対する強さの目安として 簡易的で安価なエタノールパッチテスト(以下 「パッチテスト」と略す)が実施され,ADH2 や ALDH2 と パ ッ チ テ ス ト と の 関 連 性 に 関 す る 報告が知られている(石田ほか,2007Matsuse et al., 2001Takeshita et al., 2001Tsutaya et al., 1999Yokoyama et al., 1997).

このパッチテストは,皮膚のカタラーゼによ り,皮膚に貼付したエタノールが酸化され,アセ トアルデヒドが生成される.パッチテストで皮膚 が赤くなる現象は ALDH2 の活性が低い,ある いはその酵素が欠損しているためにアセトアルデ ヒドの蓄積により毛細血管が拡張するためである (樋口,1997). アルコールとアセトアルデヒドの代謝はほとん どが肝臓で行われており,パッチテストは皮膚 局所の代謝を見ているが,ほぼ肝臓でのアルコー ル 代 謝 と 一 致 す る と い う 報 告 も あ る ( 原 田 , 2001).ただしヒトによっては皮膚の色には濃淡 があり,さらにパッチテストの判定は主観的であ るため,測定者によって判定に相違が生じること も考えられる.しかし,測定者間の誤差や季節に 伴う皮膚の色の違いとパッチテストの検証は行わ れていない. そこで本研究では,アルコール関連遺伝子を妥 当基準として,お酒に「強い体質」か「弱い体質」 であるかを正確に測定するために,ADH2 及び ALDH2 の遺伝子多型を分析し,遺伝子多型と簡 易的なパッチテストとの一致性について 2 名の 測定者により日焼けによる皮膚の色の違いなどの 視点からパッチテストの信頼性を検証するもので ある.

.研 究 方 法

. 被験者 被験者は,宇都宮大学及び大学院に在籍する 21―24歳の学生・院生のうち,2 回のパッチテス ト,アルコール摂取に対するアンケート,ADH2 及び ALDH2 遺伝子解析の全てのデータが揃っ ている129人(男性74人,女性55人)を対象とし た.本研究は,宇都宮大学の「ヒトを対象とした 研究に関する倫理委員会」に研究計画書を提出 し,許可を得て実施した.測定は被験者全員に本 研究の目的と測定方法を説明し,研究同意書に署 名を得て実施した. . 遺伝子解析 ADH2 及び ALDH2 遺伝子解析はスワブを用 いて被験者本人が自分の口腔粘膜を採取した.そ の検体を冷凍保存した後,アルコール関連遺伝子 の解析を湧永製薬株式会社に依頼した.また, 遺伝子変異の解析にあたっては,米国 Luminex 社の蛍光標識マイクロビーズによる x Map Tech-nology を利用した PCRSSO (sequence speciˆc oligonucleotide)法を用いて行った.ADH2 遺伝 子多型(rs1229984)の解析にあたって,フォワー ドプライマーは 5′TTTCTGAATCTGAACAG CTTCTC3′,リバースプライマーは 5′GGTC ACCAGGTTGCCACTAAC3′を使用した.ま

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た,ALDH2 遺伝子変異(rs671)については, フォワードプライマーは 5′CTACAAGATGTC GGGGAGTGG3′,リバースプライマーは 5′C CAGCAGGTCCCACACTCAC3′を使用した. ADH2 遺 伝 子 に は , ADH2 が 高 活 性 を 示 す ADH22/2,ヘテロ接合体の ADH21/2 及び 活性が低い ADH21/1 の 3 多型が存在している. ADH22 アレルは47番目のアミノ酸にアルギニ ン(ADH21)とヒスチジン(ADH22)の違い が あ り , ADH22 /2 は ADH21 /1 に 比 べ ADH2 の酵素活性が約100倍高いことが知られて いる(Suzuki et al., 2004). ALDH2 の染色体は第12番(12q24.2),多型の ID は rs671, Exon は12である.ADH2 遺伝子多 型の標記と分類は A/A型(高活性型),G/A 型 (中活性型),G/G 型(低活性型)の 3 タイプと した.ALDH2 には活性を示す ALDH21/1, ヘテロ接合体の ALDH21/2 及びほとんど欠損 する ALDH22/2 多型が存在し,ALDH22 ア レルは504番目のアミノ酸がグルタミン酸からリ ジンへ変異したものである(吉原・笹栗,2012). ALDH2 遺伝子多型の標記と分類は G/G 型(高 活性型),G/A 型(低活性型),A/A 型(不活性 型)の 3 タイプとした.遺伝子解析の結果は個 人ごとに遺伝子多型とお酒に「強い体質」か「弱 い体質」であるかを説明し,アルコール摂取に関 する健康教育を実施した. . エタノールによる皮膚感受性テスト エタノールの皮膚感受性テストは,パッチテス トを使用した.76.9~81.4エタノール溶液 0.25 ml を粘着テープの付いた丸いリントパッド(鳥 居株式会社,東京)に滴下し,テープは上腕の内 側に 7 分間貼付した.被験者の皮膚反応を 2 人 の測定者(測定者 A,測定者 B)がリントパッド を除去した直後及び10分後に判定した.パッチ テストの結果は,濃い紅斑を「赤色」,薄い紅斑 を「ピンク色」,紅斑なしを「白色」の 3 種類に 分類した.このパッチテストは,日焼けによる上 腕内側の皮膚の色の変化を考慮し,夏季(9~10 月)と冬季(1~3 月)の 2 回実施した.あらか じ め 皮 膚 の 色 は 判 定 前 に 2 人 の 測 定 者 に よ っ て,「白色」,「ピンク色」,「黄色」,「薄い褐色」, 「濃い褐色」の 5 つに分類した. . アンケート調査 被験者には,アルコールに対する意識や飲酒に 関する調査アンケートを実施した.アンケート は,アルコールの摂取状況,アルコールに対する 体質の自覚,フラッシング反応(顔面紅潮,全身 紅潮,頭痛,吐き気など)などの 5 設問とした. アンケートは,1 回目のパッチテスト時に実施し た. . 統計的解析 遺伝子多型とパッチテスト,測定者間のパッチ テストの判定及び同一の測定者における異なる季 節でのパッチテストの一致率に関してはカッパ ( k ) 係 数 を 用 い て 検 定 を 行 い , そ の 信 頼 度 を 95信頼区間(95conˆdence interval,以下 95CI と略す)で表記した.また,アンケート と遺伝子多型との関連性についてはx2検定を行 い,効果の大きさの判定には効果量を用いた.な お,統計的な有意水準はいずれの検定も 5未満 とした.

.結

. ADH2 遺伝子多型と ALDH2 遺伝子多型 の出現頻度 本研究の被験者129人における ADH2 遺伝子多 型の頻度は,A/A 型83人(64.3),G/A 型41 人(31.8),G/G 型 5 人(3.9)であった. また,ALDH2 遺伝子多型の頻度は,G/G 型75 人(58.1),G/A 型43人(33.3),A/A 型11 人(8.5)であった. . パッチテストの成績と ALDH2 遺伝子多 型との関連性 今回の ADH2 遺伝子多型とパッチテストとの 関連性において,夏季と冬季,A・B 両測定者, 直後と10分後の判定とも ADH2 との間に関連性

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表 夏季のパッチテストとALDH2 遺伝子型との一致率 測定者 A 直 後 (不活性)A/A (低活性)G/A (高活性)G/G 合 計 赤 色 2 3 0 5 ピンク色 8 19 6 33 白 色 1 21 69 91 合 計 11 43 75 129 10分後 (不活性)A/A (低活性)G/A (高活性)G/G 合 計 赤 色 6 9 0 15 ピンク色 5 27 8 40 白 色 0 7 67 74 合 計 11 43 75 129 【直 後】一致率69.8,k 係数0.400, 95CI0.2610.533, p<0.001 【10分後】一致率77.5,k 係数0.594, 95CI0.4740.714, p<0.001 CI: conˆdence interval

測定者 B 直 後 (不活性)A/A (低活性)G/A (高活性)G/G 合 計 赤 色 2 2 0 4 ピンク色 6 20 8 34 白 色 3 21 67 91 合 計 11 43 75 129 10分後 (不活性)A/A (低活性)G/A (高活性)G/G 合 計 赤 色 7 8 0 15 ピンク色 4 26 8 38 白 色 0 9 67 76 合 計 11 43 75 129 【直 後】一致率69.0,k 係数0.379, 95CI0.2370.521, p<0.001 【10分後】一致率77.5,k 係数0.591, 95CI0.4680.714, p<0.001 は全く見られなかった.夏季のパッチテストの測 定者 A 及び測定者 B の判定と ALDH2 遺伝子多 型との一致率,k 係数及び95CI を表 1 に示し た.夏季のパッチテストにおける測定者 A の判 定と ALDH2 遺伝子多型との一致率はリントパ ッ ド を 除 去 し た 直 後 で 69.8 (k 係 数  0.400, 95  CI  0.261 0.533, p < 0.001 ), 10 分 後 で 77.5(k 係数0.594, 95CI0.4740.714, p <0.001)であった.測定者 B の一致率はリント パッドを除去した直後で69.0(k 係数0.379, 95  CI  0.237 0.521, p < 0.001 ), 10 分 後 で 77.5(k 係数0.591, 95CI0.4680.714, p <0.001)であった.また,紅斑有りと判定され た被験者の割合について測定者 A の判定は,リ ントパッドを除去した直後で29.5,10分後で 42.6であり,測定者 B の判定では,リントパ ッドを除去した直後で29.5,10分後で41.1で あった. 同様に冬季のパッチテストにおける測定者 A の判定と ALDH2 遺伝子多型との一致率は,リ ントパッドを除去した直後で71.3(k 係数 0.423, 95CI0.2890.558, p<0.001),10分後 で79.8(k 係数0.634, 95CI0.5180.751, p<0.001),測定者 B では,リントパッドを除去 し た 直 後 で 69.0 (k 係 数  0.372, 95 CI 0.2670.507, p<0.001),10分後で76.7(k 係 数0.563, 95CI0.4410.685, p<0.001)で あった(表 2).紅斑有りと判定された被験者の 割合について測定者 A の判定は,リントパッド を除去した直後で29.5,10分後で42.6であ り,測定者 B の判定では,リントパッドを除去 した直後で25.6,10分後で35.7であった. さらに,夏,冬に係わらず両測定者ともパッチ テストの白色と遺伝子多型の高活性との一致は高 く,赤色やピンク色では不活性,低活性との一致 性が低くなる傾向が見られた. 次に夏季のパッチテストにおける測定者 A と 測定者 B の判定の一致率は,リントパッドを除 去した直後で89.9(k 係数0.768, 95CI 0.6520.884, p<0.001),10分後で93.8(k 係 数0.889, 95CI0.8150.962, p<0.001)で あった.冬季のパッチテストにおける測定者 A

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表 冬季のパッチテストとALDH2 遺伝子型との一致率 測定者A 直 後 (不活性)A/A (低活性)G/A (高活性)G/G 合 計 赤 色 1 2 0 3 ピンク色 9 21 5 35 白 色 1 20 70 91 合 計 11 43 75 129 10分後 (不活性)A/A (低活性)G/A (高活性)G/G 合 計 赤 色 6 8 0 14 ピンク色 5 29 7 41 白 色 0 6 68 74 合 計 11 43 75 129 【直 後】一致率71.3,k 係数0.423, 95CI0.2890.558, p<0.001 【10分後】一致率79.8,k 係数0.634, 95CI0.5180.751, p<0.001 CI: conˆdence interval

測定者B 直 後 (不活性)A/A (低活性)G/A (高活性)G/G 合 計 赤 色 2 2 2 6 ピンク色 7 17 3 27 白 色 2 24 70 96 合 計 11 43 75 129 10分後 (不活性)A/A (低活性)G/A (高活性)G/G 合 計 赤 色 5 8 0 13 ピンク色 6 23 4 33 白 色 0 12 71 83 合 計 11 43 75 129 【直 後】一致率69.0,k 係数0.372, 95CI0.2670.507, p<0.001 【10分後】一致率76.7,k 係数0.563, 95CI0.4410.685, p<0.001 と測定者 B の判定の一致率は,リントパッドを 除去した直後で85.3(k 係数0.647, 95CI 0.5150.779, p<0.001),10分後で85.3(k 係 数0.727, 95CI0.6170.836, p<0.001)で あった(表 3). 表 4 はパッチテストでリントパッドを除去し た直後及び10分後の夏季と冬季における一致率 を示している.測定者 A における夏季と冬季の パッチテストの判定の一致率は,リントパッドを 除去した直後で77.5(k 係数0.480, 95CI 0.3330.627, p<0.001),10分後で74.4(k 係 数0.543, 95CI0.4150.671, p<0.001)で あった.測定者 B における夏季と冬季のパッチ テストの判定の一致率は,リントパッドを除去し た直後で73.6(k 係数0.370, 95CI0.215 0.526, p<0.001),10分後で76.7(k 係数 0.564, 95CI0.4350.694, p<0.001)であっ た. さらに被験者の ALDH2 遺伝子多型とパッチ テストの結果の一致性に皮膚の色が影響するか否 かを見るために,夏季と冬季に同一方法でパッチ テストを行い,判定の一致率について夏季の結果 に関しては表 5 に,冬季に関しては表 6 に示し た. 夏季のパッチテストにおいて,2 人の測定者に よって被験者の上腕内側の皮膚の色を白色,ピン ク色,黄色,薄い褐色,濃い褐色の 5 色に分類 し,その内訳は白色67人(51.9),ピンク色15 人(11.9),黄色18人(14.0),薄い褐色23人 (17.8),濃い褐色 6 人(4.7)であった. 最初に測定者 A におけるリントパッドを除去 した直後の判定と上腕内側の皮膚の色との関連性 は,白い皮膚では遺伝子多型とパッチテストの一 致率は65.7であり,効果量0.679 (p<0.001) であった.黄色の皮膚においては83.3,効果量 0.730 (p<0.01)であった.リントパッドを除去 してから10分後の判定では,白い皮膚において 74.6,効果量0.405 (p<0.01)であり,黄色の 皮膚においても83.3,効果量0.730 (p<0.01) であった.また,いずれの肌の色であってもパッ チテストの判定が白色の場合には高い一致が見ら れたが,白色肌でピンク色の判定は一致が 8 に

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表 夏季及び冬季のパッチテストにおけるそれぞれの判定者の判定の一致率 夏 季 測定者B 直後 測 定 者 A 直 後 赤 色 ピンク色 白 色 合 計 赤 色 3 2 0 5 ピンク色 1 27 5 33 白 色 0 5 86 91 合 計 4 34 91 129 測定者B 10分後 測 定 者 A 10分後 赤 色 ピンク色 白 色 合 計 赤 色 13 2 0 15 ピンク色 2 35 3 40 白 色 0 1 73 74 合 計 15 38 76 129 【直 後】一致率89.9,k 係数0.768, 95CI0.6520.884, p<0.001 【10分後】一致率93.8,k 係数0.889, 95CI0.8150.962, p<0.001 CI: conˆdence interval

冬 季 測定者B 直後 測 定 者 A 直 後 赤 色 ピンク色 白 色 合 計 赤 色 1 1 1 3 ピンク色 5 22 8 35 白 色 0 4 87 91 合 計 6 27 96 129 測定者B 10分後 測 定 者 A 10分後 赤 色 ピンク色 白 色 合 計 赤 色 10 3 1 14 ピンク色 3 28 10 41 白 色 0 2 72 74 合 計 13 33 83 129 【直 後】一致率85.3,k 係数0.647, 95CI0.5150.779, p<0.001 【10分後】一致率85.3,k 係数0.727, 95CI0.6170.836, p<0.001 対し,不一致が17であった.同じく測定者 B の 直後の結果では,白い皮膚での一致率は68.7で あり,効果量0.571(p<0.001)であった.黄色 の皮膚においては83.3,効果量0.730(p<0.01) であった. リントパッドを除去してから10分後の判定で は,白い皮膚において71.6,効果量0.437 (p< 0.01)であった. 冬季のパッチテストにおいて,被験者は 2 人 の測定者によって,上腕内側の皮膚の色とその割 合は白色73人(56.6),ピンク色38人(29.5), 黄色17人(13.2),薄い褐色 1 人(0.8),濃 い褐色 0 人(0.0)であった.測定者 A では, リントパッドを除去した直後の判定と上腕内側の 皮膚の色との関連性は,白い皮膚において一致率 72.6,効果量0.702(p<0.001)であった.ま た,ピンク色の肌においても一致率68.4,効果 量0.424(p<0.05)であった.リントパッドを除 去してから10分後の判定では,白い皮膚におい て一致率80.8,効果量0.415(p<0.001)であ っ た . ま た , ピ ン ク 色 の 肌 に お い て も 一 致 率 71.1,効果量0.482(p<0.05)であった.測定 者 B では,ピンク色の肌においてもリントパッ ドを除去した直後の判定は,白い皮膚において一 致率69.9,効果量0.638(p<0.001)であった. ピンク色の肌においても一致率63.2,効果量 0.630, (p<0.001)であった.リントパッドを除 去してから10分後の判定では,白い皮膚におい て一致率76.7,効果量0.484(p<0.001)であ っ た . ま た , ピ ン ク 色 の 肌 に お い て も 一 致 率 68.4,効果量0.674(p<0.001)であった. . アンケート結果と ALDH2 遺伝子多型と の関連性 アンケートの集計結果を表 7 に示した.「飲酒 頻度」の項目において,「飲まない(月 1―2 回 以下)」と回答した者は129人中58人(45.0) であった.次いで「週 1―2 回」と回答した者は 65人(50.4)であり,「週 3―4 回」,「週 5―6 回」と「毎日飲む」と回答した者は僅かであった.

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表 パッチテストの時期の違いにおける各測定者の直後,10分後の判定と一致率 測定者A 冬 季 直後 夏 季 直 後 赤 色 ピンク色 白 色 合 計 赤 色 0 4 1 5 ピンク色 3 20 10 33 白 色 0 11 80 91 合 計 3 35 91 129 測定者 A 冬 季 10分後 夏 季 10分後 赤 色 ピンク色 白 色 合 計 赤 色 8 6 1 15 ピンク色 5 25 10 40 白 色 1 10 63 74 合 計 14 41 74 129 【著 後】一致率77.5,k 係数0.480, 95CI0.3330.627, p<0.001 【10分後】一致率74.4,k 係数0.543, 95CI0.4150.671, p<0.001 CI: conˆdence interval

測定者B 冬 季 直後 夏 季 直 後 赤 色 ピンク色 白 色 合 計 赤 色 0 3 1 4 ピンク色 2 16 16 34 白 色 4 8 79 91 合 計 6 27 96 129 測定者 B 冬 季 10分後 夏 季 10分後 赤 色 ピンク色 白 色 合 計 赤 色 9 6 0 15 ピンク色 3 21 14 38 白 色 1 6 69 76 合 計 13 33 83 129 【直 後】一致率73.6,k 係数0.370, 95CI0.2150.526, p<0.001 【10分後】一致率76.7,k 係数0.564, 95CI0.4350.694, p<0.001 「お酒の好き嫌い」の項目においては,「普通」と 回答した者は59人(45.7)が最も多く,次に 「好き」と回答した者は41人(31.8),「嫌い」 と回答した者は16人(12.4)の順であった. 「アルコールに対する体質の自覚」の項目におい て は ,「 普 通 だ と 思 う 」 と 回 答 し た 者 は 69 人 (53.5),「弱いと思う」と回答した者は55人 (42.6)であった.「飲酒した際の症状」の項目 に お い て 頻 度 の 高 い 症 状 は 「 顔 面 紅 潮 」 71 人 (55.0),「吐き気」46人(35.7),「頭痛」38 人(29.5)の順であった. 表 8 は,アンケートの質問項目ごとのカテゴ リと ADH2, ALDH2 の遺伝子多型との関連性を 調べたものである.ADH2 遺伝子多型では,ア ンケートの全項目との間に関連は全く見られなか った.一方,ALDH2 遺伝子多型では,「お酒の 好き嫌い」,「アルコールに対する体質の自覚」に おいて,効果量はそれぞれ0.641と0.738であり, 0.1水準で有意な関連性が得られた.また,「飲 酒した際の症状」のうち,「顔面紅潮」,「全身紅 潮」,「頭痛」及び「吐き気」の項目においていず れも0.1水準で有意な関連性が見られた.「顔面 紅潮」と「全身紅潮」では0.6以上の効果量が確 認され,ALDH2 の遺伝子多型と飲酒の際の嗜好 や自覚症状との間に強い関連性が見られた.

.考

. ADH2 遺伝子多型と ALDH2 遺伝子多型 の出現頻度 既 に ア ル コ ー ル 関 連 遺 伝 子 で あ る ADH2 や ALDH2 の遺伝子解析は,日本国内でも実施され ている.それらを詳細に観察すると,医科大学の 日本人男子学生357人を調査した Takeshita et al. (2001)の報告では,ADH2 の低活性型は4.8, 中活性型は36.7,高活性型は58.5であった. 本 研 究 で は , ADH2 の 低 活 性 型 ( G / G 型 ) は 3.9,中活性型(G/A 型)は31.8,高活性型

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表 ALDH2 遺伝子型とそれぞれの判定者における夏季のパッチテストの判定との一致率及び被験者の上腕内側 の肌の色との関係 測定者A (直 後) 皮膚 の色 遺伝子と パッチテ ストとの 一致性 パッチテスト 判定結果 計 一致率 x2 P 値 効果量 赤色 ピンク色 白色 白色 一致 1 8 35 4465.7 30.929 0.000 0.679 不一致 4 17 2 23 ピンク 色 一致 3 9 12 80.0 4.688 0.096 0.559 不一致 1 1 1 3 黄色 一致 1 1 13 1583.3 9.600 0.008 0.730 不一致 2 1 3 薄い 褐色 一致 7 9 16 69.6 5.026 0.081 0.467 不一致 2 2 3 7 濃い 褐色 一致 3 3 50.0 ― ― ― 不一致 3 3 一致の合計 2 19 69 90 69.8 ― ― ― 不一致の合計 9 24 6 39 測定者A (10分後) 皮膚 の色 遺伝子と パッチテ ストとの 一致性 パッチテスト 判定結果 計 一致率 x2 P 値 効果量 赤色 ピンク色 白色 白色 一致 4 13 33 5074.6 10.980 0.004 0.405 不一致 1 12 4 17 ピンク 色 一致 1 3 9 13 86.7 0.721 0.693 0.219 不一致 1 1 2 黄色 一致 1 1 13 1583.3 9.600 0.008 0.730 不一致 2 1 3 薄い 褐色 一致 7 9 16 69.6 5.026 0.081 0.467 不一致 2 2 3 7 濃い 褐色 一致 3 3 6 100 ― ― ― 不一致 0 一致の合計 6 27 67 100 77.5 ― ― ― 不一致の合計 5 16 8 29 測定者B (直 後) 皮膚 の色 遺伝子と パッチテ ストとの 一致性 パッチテスト 判定結果 計 一致率 x2 P 値 効果量 赤色 ピンク色 白色 白色 一致 1 11 34 4668.7 21.846 0.000 0.571 不一致 4 14 3 21 ピンク 色 一致 2 8 10 66.7 3.300 0.192 0.469 不一致 1 2 2 5 黄色 一致 1 1 13 1583.3 9.600 0.008 0.730 不一致 2 1 3 薄い 褐色 一致 6 9 15 65.2 4.265 0.119 0.431 不一致 2 3 3 8 濃い 褐色 一致 3 3 50.0 ― ― ― 不一致 3 3 一致の合計 2 20 67 89 69.0 ― ― ― 不一致の合計 9 23 8 40 測定者B (10分後) 皮膚 の色 遺伝子と パッチテ ストとの 一致性 パッチテスト 判定結果 計 一致率 x2 P 値 効果量 赤色 ピンク色 白色 白色 一致 3 12 33 4871.6 12.819 0.002 0.437 不一致 2 13 4 19 ピンク 色 一致 1 3 9 13 86.7 0.721 0.697 0.219 不一致 1 1 2 黄色 一致 2 2 13 1794.4 5.294 0.071 0.542 不一致 1 1 薄い 褐色 一致 1 7 9 17 73.9 0.670 0.715 0.171 不一致 1 2 3 6 濃い 褐色 一致 2 3 5 83.3 ― ― ― 不一致 1 1 一致の合計 7 26 67 100 77.5 ― ― ― 不一致の合計 4 17 8 29 p<0.05 p<0.01 p<0.001 (A/A 型)は64.3であり,先行研究とほぼ同じ ような結果となった.Harada and Zhang (1993) 及び Higuchi et al. (1995)によると,日本人に おける ALDH2 の不活性型はそれぞれ,7.3と 7.0,低活性型は34.1と35.0,高活性型は 58.6と58.0と報告している.本研究において も,ALDH2 の不活性型(A/A 型)は8.5,低 活性型(G/A 型)は33.3,高活性型(G/G 型) は58.2であり,先行研究の結果とほぼ一致する ものであった. Chan (1986)は,東洋人と西洋人の集団間で のアルコール感受性の人種差は,東洋人の85― 90で存在する非定型 ADH2 がフラッシングの ある被験者における血中アセトアルデヒド濃度の 増加に寄与している可能性があるという報告して いる.フラッシング反応は,生体に現れる飲酒抑 制反応であり(Chan, 1986WolŠ, 1972),それ は 不 活 性 ALDH2 遺 伝 子 多 型 を 持 つ 人 に お い て,高い血中アセトアルデヒド濃度によって引き 起こされる(Harada et al., 1981).日本人の約半 数が不活性 ALDH2 遺伝子多型を持っているの に 対 し て , 西 洋 人 で の 発 見 は 極 め て 少 な い

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表 ALDH2 遺伝子型とそれぞれの判定者における冬季のパッチテストの判定との一致率及び被験者の上腕内側 の肌の色との関係 測定者A (直 後) 皮膚 の色 遺伝子と パッチテ ストとの 一致性 パッチテスト 判定結果 計 一致率 x2 P 値 効果量 赤 ピンク 白 白 一致 12 41 5372.6 35.99 0.000 0.702 不一致 8 10 2 20 ピンク 一致 1 7 18 2668.4 6.815 0.033 0.424 不一致 2 7 3 12 黄 一致 2 11 1376.5 ― ― ― 不一致 4 4 薄い 褐色 一致 0 0.0 ― ― ― 不一致 1 1 濃い 褐色 一致 0 0.0 ― ― ― 不一致 0 一致の合計 1 21 70 92 71.3 ― ― ― 不一致の合計 10 22 5 37 測定者A (10分後) 皮膚 の色 遺伝子と パッチテ ストとの 一致性 パッチテスト 判定結果 計 一致率 x2 P 値 効果量 赤 ピンク 白 白 一致 3 17 39 5980.8 12.571 0.002 0.415 不一致 5 5 4 14 ピンク 一致 3 6 18 2771.1 8.828 0.012 0.482 不一致 8 3 11 黄 一致 5 11 1694.1 ― ― ― 不一致 1 1 薄い 褐色 一致 1 1 100 ― ― ― 不一致 0 濃い 褐色 一致 0 0.0 ― ― ― 不一致 0 一致の合計 6 29 68 103 79.8 ― ― ― 不一致の合計 5 14 7 26 測定者B (直 後) 皮膚 の色 遺伝子と パッチテ ストとの 一致性 パッチテスト 判定結果 計 一致率 x2 P 値 効果量 赤 ピンク 白 白 一致 1 10 40 5169.9 29.683 0.000 0.638 不一致 7 12 3 22 ピンク 一致 1 4 19 2463.2 15.079 0.000 0.630 不一致 2 10 2 14 黄 一致 3 11 1482.4 ― ― ― 不一致 3 3 薄い 褐色 一致 0 0.0 ― ― ― 不一致 1 1 濃い 褐色 一致 0 0.0 ― ― ― 不一致 0 一致の合計 2 17 70 89 69.0 ― ― ― 不一致の合計 9 26 5 40 測定者B (10分後) 皮膚 の色 遺伝子と パッチテ ストとの 一致性 パッチテスト 判定結果 計 一致率 x2 P 値 効果量 赤 ピンク 白 白 一致 3 13 40 5676.7 17.113 0.000 0.484 不一致 5 9 3 17 ピンク 一致 2 4 20 2668.4 17.283 0.000 0.674 不一致 1 10 1 12 黄 一致 5 11 1694.1 ― 不一致 1 1 薄い 褐色 一致 1 1 100 ― 不一致 0 濃い 褐色 一致 0 0.0 ― ― ― 不一致 0 一致の合計 5 23 71 99 76.7 ― ― 不一致の合計 6 20 4 30 p<0.05 p<0.01 p<0.001 (Higuchi et al., 1994).この様に,他の民族と比 較して日本人はお酒が弱い体質であると言われて おり,本学の学生を対象とした本研究でも同様な 傾向が見られた. . パッチテストの成績と ALDH2 遺伝子多 型との関連性 Muramatsu et al. (1989)は,311人の健康な日 本人(大人237人,子供74人)にパッチテストを 実施し,紅斑が検出された日本人の割合は40.5 であったと報告している.このパッチテストは簡 便であり,危険性がないため多くの学校現場で汎 用されており,市販のパッチテストのキットにお いても 7 分間貼付し,それを除去した直後と10 分後の判定が推奨されている.ただし,このリン トパッドを除去した後の皮膚の紅斑反応について Takeshita et al. (2001)は判定時期を直後,5 分 後,15分後,20分後と 4 つに分け反応の違いを 観察している.直後で22.4,5 分後で33.9, 15分後で42.3,20分後では44.3の結果を得て おり,直後と20分後では約 2 倍の紅斑の出現を 検出し,リントパッドを除去してからの時間が経

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表 アンケートの集計結果 質問項目 カテゴリ 件数  飲酒頻度 ◯ 飲まない 58 45.0 ◯  週1~2 回 65 50.4 ◯  週3~4 回 4 3.1 ◯  週5~6 回 1 0.8 ◯  毎日飲む 1 0.8 お酒の好き嫌い ◯ 大好き 9 7.0 ◯  好き 41 31.8 ◯  普通 59 45.7 ◯  嫌い 16 12.4 ◯  大嫌い 4 3.1 アルコールに対す る体質の自覚 ◯  強いと思う 5 3.9 ◯  普通だと思う 69 53.5 ◯  弱いと思う 55 42.6 飲酒した際の症状 (複数回答可) ◯  顔面紅潮 71 55.0 ◯  全身紅潮 37 28.7 ◯  頭痛 38 29.5 ◯  吐き気 46 35.7 ◯  腹痛 5 3.9 ◯  下痢 8 6.2 ◯  意識消失 6 4.7 ◯  その他 17 13.2 過するにつれ陽性反応が多くなることを報告して いる.これより長い経過時間での成績は示されて いないが,さらに時間が経過した場合にはアセト アルデヒドの分解が進み,紅斑は徐々に治まるこ とが予想される.どの時点で判定するかによっ て,陰性と陽性がかなり異なり,客観的な基準が ないため他の先行研究を参考に今回の判定時期は リントパッドを除去してから10分を用い判定す ることとした. 本研究では,夏季のパッチテストにおいて,リ ントパッドを除去した直後に紅斑有り(赤色,ピ ンク色)と判定された被験者は,測定者 A,測 定者 B とも29.5であった.リントパッドを除 去してから10分後の判定において,測定者 A で 42.6,測定者 B では41.1であった.冬季の パッチテストにおいて,リントパッドを除去した 直後に紅斑有り(赤色,ピンク色)と判定された 被 験 者 は , 測 定 者 A で 29.5  , 測 定 者 B で は 25.6であった.リントパッドを除去してから10 分後の判定においては,測定者 A で42.6,測 定者 B では35.7であった.いずれの季節のパ ッチテストにおいても,リントパッドを除去して から10分後の判定が先行研究の結果とほぼ一致 している.このことから,簡易的なパッチテスト においては,リントパッドを除去してからある程 度の時間をおいた10分後の判定の信頼性が高く なるものと考える.しかし,ALDH2 遺伝子多型 とパッチテストの判定との一致率を見ると,一致 率が良好とされるk 係数が0.6以上を示したもの は,冬季の測定者 A における10分後の判定で一 致率79.8,k 係数0.634(p<0.001)のみであ った.その他のk 係数は0.372から0.594の範囲で あり,リントパッドを除去した直後の値よりも 10分後の値の方が一致率は高いものの,季節や 判定までの時間に係わらず高いものではなかっ た.直後の判定結果と10分後の判定結果を比較 すると,直後のパッチテストの一致率が低い傾向 にあり,この原因としてリントパッドを除去した 直後ではアルコールの代謝産物であるアセトアル デヒドの産生量が少なく,皮下の血管拡張が十分 に起きていないことが予想される.また,今回の 判定の一致性に関して,遺伝子多型は A/A, G/ A, G/G の 3 タイプとパッチテストの赤色,ピン ク色,白色の 3 タイプで判定を行ったが,G/A はピンク色に対応するものとして判定を行った. しかし,アセトアルデヒドによって発赤が起こる か起こらないかを二者択一とし,ALDH2 遺伝子 多型の分類を不活性と低活性+高活性,あるいは 不活性+低活性と高活性の 2 群に分けた場合に は k 係数に大きな異なりが出てくることが予想 される. そこで,ALDH2 遺伝子多型とパッチテストと の関連性を検討した報告を見ると,Yokoyama et al. (1997)はパッチテストと遺伝子多型をそれぞ れ(陰性,陽性)と(高活性,低活性)の 2 群 に分け,感度(72.4)と特異度(71.4)を算 出 し て い る . 同 様 の 分 類 方 法 で 塚 田 ・ 畠 山 (2007)は感度(79.2),特異度(93.2)を報 告しパッチテストの有用性を指摘している.しか し Tsutaya et al. (1999)は同様な分析法で 2 群

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表 アンケートとADH2, ALDH2 との関連性 質問項目 ADH2 ALDH2 x2値 サンプル数 自由度 P 値 効果量 x2値 サンプル数 自由度 P 値 効果量 飲酒頻度 1.700 129 8 0.989 0.115 9.648 129 8 0.291 0.273 お酒の好き嫌い 6.487 129 8 0.593 0.224 52.994 129 8 0.000 0.641 アルコールに対する体質の自覚 3.551 129 4 0.470 0.166 70.289 129 4 0.000 0.738 飲酒した際の症状(顔面紅潮) 1.839 129 2 0.399 0.119 58.454 129 2 0.000 0.673 (全身紅潮) 0.384 129 2 0.825 0.055 53.363 129 2 0.000 0.643 (頭痛) 0.327 129 2 0.849 0.050 30.451 129 2 0.000 0.486 (吐き気) 0.424 129 2 0.809 0.057 17.801 129 2 0.000 0.371 (腹痛) 2.883 129 2 0.237 0.149 2.964 129 2 0.227 0.152 (下痢) 4.727 129 2 0.094 0.191 0.3 129 2 0.861 0.048 (意識消失) 0.254 129 2 0.881 0.044 0.615 129 2 0.735 0.069 (その他) 2.550 129 2 0.279 0.141 0.613 129 2 0.736 0.069 p<0.001 間に有意な関連性を見いだせず,パッチテストの 限界を指摘している.また,他の報告においても 非常にわずかであるが,高活性を示す G/G 型で あっても紅斑が現れ,不活性を示す A/A 型で皮 膚に変化が見られないなどの結果が出ており,必 ずしも遺伝子多型との完全な一致は見られていな い. この様に ALDH2 遺伝子多型とパッチテスト との関連性を検討した結果にはばらつきが見られ たが,その要因の 1 つとしては,研究者によっ てリントパッドを剥がしてからの判定時間帯が直 後,20秒,5 分後,7 分後,10分後,15分後,20 分後と異なっていることや分析結果の分類法,統 計解析の違いが見られることが挙げられる.さら に,測定者誤差,季節による皮膚の色調の違いな どが関与する事も予想される. また,判定に際して Yokoyama et al. (1997) 及び塚田・畠山(2007)のように ALDH2 遺伝 子多型の分類とパッチテストを各 2 分類にする ことにより一致率を上げられることも予想される が,実際のパッチテストでは白色と赤色の中間型 がでていることから,今回の解析ではパッチテス トでのピンク色を G/A(低活性)に一致させ, パッチテスト 3 群,遺伝子多型に関しても 3 群 の計 9 分類で判定を行ったため一致率が低く算 出されたものと考える. しかし,2 人の測定者間におけるパッチテスト の一致率,k 係数では,夏季のパッチテストでリ ントパッドを除去してから10分後の測定者 A と 測定者 B の判定において一致率93.8(k 係 数0.889, 95CI0.8150.962, p<0.001)と 非常に高い値が得られ,季節による多少の違いは 見られたが,測定者が異なった場合でも判定の精 度に影響は見られず測定者間の誤差も極めて少な いことが明らかとなった.また,同一の測定者に おける各季節のパッチテストの判定では,測定者 A における夏季と冬季のパッチテストのリント パッドを除去した直後で一致率77.5(k 係 数0.480, 95CI0.3330.627, p<0.001)と 最も高い結果となり,他の測定でも一致率70 以上の値を得ることができたが判定結果に完全な 一致を見ることはなかった.このことは測定者が 同じであっても季節の違いによる皮膚の色で判定 結果が異なることを示唆するものである.すなわ ち皮膚の色別に見たパッチテストの判定結果で は,両測定者とも季節に係わらず皮膚の色が白色

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や黄色の場合に高い一致率が得られた.一方,パ ッチテストで赤色やピンク色を示した者ではリン トパッドを除去した直後,10分後とも不一致率 が一致率を上回り,特に夏季において不一致の出 現が多く,赤色とピンク色及びピンク色と白色を 見誤っている可能性が考えられ,アルコールに対 して弱い体質の学生を正確に判定していないこと が明らかとなった.従って,パッチテストを判定 する際には被験者の皮膚の色によって結果が左右 されることもあることを考慮する必要があると思 われる.さらに夏季と冬季では外気温,相対湿 度,測定室の温度などの測定条件が異なるため, 冬季では皮下の血管は収縮傾向にあり,夏季では 暑さにより体温を調節する生理機能として発汗作 用を目的とした皮下の血管は拡張状態にあること も予想され,季節に伴う被験者側の生理的な変化 も判定の不一致の要因の 1 つに繋がったものと 考える. . アンケート結果と ALDH2 遺伝子多型と の関連性 本研究においては,アルコールに対する意識や 飲酒に関する調査項目と ALDH2 遺伝子多型と の関連性を検証した.石田ほか(2007)は,大 学生の約 9 割に飲酒経験があり,そのうち約半 数が高校生から飲酒をしていたと報告している. このことから,大学生にとって飲酒とは未成年の ときから身近なものであると言える.それが近年 の大学生の部活動やサークルでのアルコールハラ スメントによる急性アルコール中毒の多発の原因 の 1 つになっていると考えられる.今回のアン ケート調査からも飲酒習慣が「週 1―2 回」と回 答した者が50.4と全体の半分を占めており,こ れ以上の頻度で飲酒している学生を併せると55 に達し,大学生の飲酒に対する機会は少なくな いことが明らかとなった.一方,アルコールに対 する自覚では「普通だと思う」で53.5,「弱い と思う」では42.6であり,飲酒傾向とは対照的 に自分はお酒に対して普通・弱いと自覚している ようである.飲酒した際に見られる自覚症状につ い て も 「 顔 面 紅 潮 」 の 55.0  や 「 吐 き 気 」 の 35.7のように高頻度に症状が現れることを認識 しているようである. 加藤(2004)は北海道 A 大学の学生152人を 対象にアンケート調査を行い,アルコールハラス メントは部活動やサークル内で多いということを 報告している.これらのことから,大学における アルコールハラスメントは運動系の部活動やサー クルに多いことが予想されるが,大学生において は部活動やサークルへの所属の有無及び運動系ま たは文化系への所属に関わらず,アルコールハラ スメントが行われていることが予想されるため, 大学全体としての問題であると受け止めなくては ならない. Suzuki et al. (1997)の研究では,フラッシン グのある人(お酒が弱い人)はフラッシングのな い人(お酒が強い人)よりも飲酒量が少ないこと を報告している.また,お酒が強いと自覚してい ても遺伝子多型やパッチテストの結果では「弱い 体質」も僅かにいることから,自覚に頼って飲酒 することは非常に危険であると言える. お酒に「強い体質」か「弱い体質」であるかを 決める主観的方法においては,アルコールに対す る自覚と飲酒の際に表れる症状のうち,「顔面紅 潮」,「全身紅潮」,「頭痛」,「吐き気」などのフラ ッシング反応と ALDH2 の遺伝子多型との間に 高い関連性が見られたことから,自分の体質を判 定 す る た め の 良 い 指 標 に な る も の と 考 え る . ALDH2 の遺伝子多型は遺伝によって決定される ため,アルコールに対する体質が親から子へ遺伝 することは十分に考えられる.そのため,両親の 飲酒する姿を見て,自分がお酒に「強い体質」か 「弱い体質」であるかを判断してしまうかもしれ ないが,両親が飲酒する人のうち約 3 割は不活 性型 ALDH2 遺伝子多型であったという報告も あるため,両親の飲酒行動を基に判断することは 危険である(石田ほか,2007).従って,両親の 飲酒行動によってアルコールに対する自分の体質 を主観的に判断するのではなく,簡便で精度の高 いパッチテストにフラッシング反応を加えた結果 を基に自分の体質を理解し,体質に合った飲酒行 動を行うことが必要と考える.

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以上より,パッチテストの判定とアルコール関 連遺伝子多型との間には統計的に有意な結果が得 られ,測定者間の一致率も高いことから,簡便な パッチテストの使用は有用であると考える.また, ALDH2 遺伝子多型とアルコール摂取後の身体症 状との間に高い関連性が見られたが,パッチテス トの判定とアルコール関連遺伝子の遺伝子多型が 完全に一致することはなく,相違が生じるという ことも明らかとなった.パッチテストの判定精度 を上げるためには遺伝子多型を妥当基準として, 判定を行う時間帯を考慮する必要があり,併せて 皮膚の色や季節などを考慮に入れことも必要であ ると考える.

.ま

本研究では,アルコールに対して「強い体質」 か「弱い体質」かの判断を「アルコール脱水素酵 素 ( ADH2 )」 と 「 ア ル デ ヒ ド 脱 水 素 酵 素 (ALDH2)」の遺伝子多型を妥当基準に置き,こ れまで汎用されているパッチテストを実施し,2 名の測定者により季節に伴う皮膚の色の違いなど の視点からパッチテストの信頼性を検証した. 測定は21―24歳の健康な学生と院生を対象と し,夏季と冬季に 2 回のパッチテスト実施した. 2 人の測定者はアルコールの皮膚反応をリントパ ッドの除去直後と10分後に判定した.さらにア ルコールに対する意識や飲酒に関するアンケート 調査を行った. その結果,リントパッドを除去した直後と10 分後の判定結果を比較すると,10分後の判定に おいて ALDH2 遺伝子多型とパッチテストとの 間でより高い一致性が見られた. 測定者間の一致率は全て80以上の一致を示 し,特に夏季に実施したパッチテストでリントパ ッドを除去してから10分後の測定者 A と測定者 B の判定の一致率は93.8(k 係数0.889, 95 CI0.8150.962, p<0.001)と非常に高い結果が 得られ,測定者間の誤差は少ないことが明らかと なった.また,同一の測定者における異なるパッ チテスト時期の判定の一致率はいずれも70以 上であったが,完全には一致しなかった.この原 因として季節差による皮膚の色が関与し,パッチ テストの結果で赤色やピンク色と判定された者に 不一致が多かった. 以上より,パッチテストの有効性を支持する結 果が得られたが,測定者間の誤差及びパッチテス トを行う季節に伴う影響が少なからず生じること も明らかとなった.パッチテストの使用に際して は,判定を過信することなく,判定を行う時間 帯,皮膚の色調などを考慮に入れ,総合的に判断 することがより正確な判定に繋がるものと考える. 文 献

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2014年10月 3 日受付 2015年10月29日受理

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Advance Publication by J-STAGE Published online 2015/12/28

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