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「魚の皮」を活用した教材の開発 ―中学校家庭科の授業実践を通して―

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Academic year: 2021

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「魚の皮」を活用した教材の開発 ―中学校家庭科の授業実践を通して一 教科・領域教育専攻 生活・健康系コース(家庭) 玉城 千裕 1 研究の背景と目的 平成25 年12 月,「和食;日本の伝統的な食 文化」がユネスコ無形文化遺産に登録された。 これは,日本人が育んできた和食が世界に認め られたのと同時に, 日本の食文化が廃れていく ことへα脆機感のようにも感じられる。学校教 育を通して,日本の伝統的な食文化である和食 を継承しようという意識を育てる必要がある。 和食を支えてきたのは魚食文化である。しか し,厚生労働省の「国民健康・栄養調査報告」 によると,近年はかつて見られなかったほどの 若者の「魚離れ」が顕在化している。この背景 として,「魚より肉」 という好みの変化や調理 のしづらさなどが考えられる。そこで,子ども たちが魚に親しみをもつことができるような指 導を行うことにした。 本研究は,魚に触れたり, 1 尾まるごとを感 じたりできるような教材の開発に取り組み,そ の教材を取り1伽た授業を考案して,実践・検 証を行うことを目的とする。 2 研究の方法 (1) 家庭科における「魚」に関する指導内 容を,学習指導要領と教科書を用いて整 理する。 (2) 高校生を対象として,魚食に関するア ンケート調査を実施し,魚食や魚に関す る知識の実態を把握する。 指導教員 速水 多佳子 (3) 魚を活用した教材開発を目指し,「魚の 皮」を用いたタンニンなめしとミョウバ ンなめしを行う。なめし剤としてタンニ ンを多く含む「緑茶」とミョウバン容夜 を使用し,魚の皮を用いた教材化の可能 性を検討する。 (4) 中学生を対象に,「魚」を題材とした授 業実践を行う。授業前後に実施する意識 調査から,授業の効果を検証する。 3 高校生の「魚」に関する意識の実態調査 県立A高等学校1年生8 クラス308 人(男子 173 人,女子135 人)を対象として,「魚」に関 する意識の実態調査を行い,その結果について 考察した。調査内容は,「魚食の実態」,「魚に関 する知識」,「魚に触れた経験」,「魚食文化の継 承」についてである。 高校生の実態として,「魚半Ls鵬はりも肉料理を 好む傾向」や「肉米;棚~をよく食べる傾向」があ ることがわかった。「魚を食べる頻度」は,週に 数回が全体の7割,ほぼ毎日食べると回答した 生徒は全体のわずか1割であった。また,魚を 見たり触ったりという経験は,ほとんどの生徒 が「ある」と回答していたが,調理を通して触 れるという経験は少ない傾向にあった。しかし, 「魚を料理したり, さばいたりできるようにな りたいか」について,全体の7割の生徒が肯定 的に回答しており,調理に対する意欲は高いこ - 305 -

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とがわかった。家庭科の学習を通して,子ども たちが魚に触れる機会を設けることで,魚に対 する興味・関心を引き出すことが期待できる。 魚を身近に感じるような教材開発,授業開発が 必要である。 4 魚の皮を活用した教材開発 「魚の皮」(たい,はまち,す~ずき,かれい, さけ)を用いて,タンニンなめしとミョウバン なめしを行った。羽順は以下の通りである。 (1) (2 ) (3 ) (4 ) 魚の洗浄 タンニンなめしとミョウバンなめしの 溶液の調製 各溶液に魚の皮を浸漬(1週間) 皮の水洗い,乾燥 約3 週間で完成し,簡単に手に入る材料でな めしを行うことができるとわかった。非常に手 軽になめしを行うことができることから,生徒 になめしの体験をさせたり,なめし革を使った 作品製作に取り組ませたりする活動も可能であ ると判断できた。 5 魚を題材とした授業実践 S中学校1年生2 クラス77 人(男子37 人, 女子40 人)と, 2年生2 クラス80 人(男子33 人、女子47 人)を対象に,なめした魚の皮を教 材として活用した授業を行った。授業前アンケ ートの結果から,「魚」のイメージとしては「さ しみ」や「すし」の回答が多く, 1 尾のイメー ジが薄れている傾向が見られた。そこで,魚の 大きさやうろこの形,質感などを実際に見たり 触ったりすることで興味をもち,栄養面や魚1 尾の活用方法を取り入れることで魚に対するイ メージが変化するような授業を考案し,令和元 年12 月に実践を行った。 (1 ) 1 年生(食生活領域) 題材:「魚博士になろう!~調理実習に向けて~」 魚の調理上の性質や栄養的樹敦を理解するこ とを目的とした。なめし革で作成した魚の切り 身のプレートを用いて,魚1尾から切り身がど のように取れるか考えさせた。わからない生徒 が,約3割おり,教材として用いた切り身のプ レートは,手に取り,目で見て確認することが できたことから,大変効果的であったと考える。 (2 ) 2年生(衣生活領域) 題材:「基礎縫いマスターになろう!~オリジナ ルの魚を作ろう~」 基櫛童いをマスターさせることを目的とし, ボタン付けやスナップ付けを行うことのできる 教材を設定し,なめし革をうろこに見立ててオ リジナルの魚を製作した。「世界に1つだけの魚 ができたと思う。」や「魚に愛着がわいた。」な ど,楽しんで作業を行った様子が伺えた。しか し,「少し臭かった。」や「革に臭いがあった。」 などの意見も数名からあった。魚の臭いの問題 を解決することで,さらに積極的に作業を行う ことができ,魚が嫌いと答えた生徒にも親しみ をもってもらえるのではないかと考える。 6 今後の課題 今回の授業実践で得られた子どもたちの興 味・関心の様子から,今後は,実際になめし体 験をさせたり,皮の染色をしたりして,それら を使った作品の製作を取り入れていきたいと考 える。魚を食べるだけでなく,このように様々 な活用方法を工夫しながら,魚に触れたり, 1 尾まるごとを感じたりできるような教材の開発 に取り組んでいきたい。 - 306 -

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