58 (5) 氏名(生年月日) 本 籍
学位の種類
学位授与の番号 学位授与の日付 学位授与の要件学位論文題目
論文審査委員
ナヵ ガミ トモ コ子(昭和
医学博士 甲第191号平成3年3月15日
学位規則第5条第1項該当(医学研究科専攻,博士課程終了者)
糖尿病性網膜症の発生因子に関する検討 一生命表分析を用いて一 (主査:)教授 平田 幸正 (副査)教授 内田 幸男,福山 幸夫論文内容の要旨
目的 本研究は,東京女子医大糖尿病センターに登録され た時点で糖尿病の重要な合併症の一つである網膜症の、 なかった多数の糖尿病患者について長期間のpro・ spective follow-upを施行し,網膜症の発生に対する risk factorを検討することを目的とした. 対象及び方法 1979年から10年間に糖尿病センターを受診し登録さ れた糖尿病患老は,12,489名であり,この全員に眼底 検査を施行したところ,糖尿病性網膜症の合併を認め なかった者が,3,177名(男1,864名,女1,313名)であっ た.この3,177名を研究の対象とした.これらについて は網膜症のないことを確認するとともに,登録時年齢, 登録時までの糖尿病罹病年数,糖尿病の病型分類,登 録時に空腹時血糖,HbA、c肥満度,血圧,尿蛋白,心 電図,血清脂質,登録時までの体重の変化などの諸検 査を施行した.登録後は1年毎に眼底所見に関する prospective studyを施行し,網膜症発生率を生命表分 析を用いて計算し,糖尿病型,発症時年齢,罹病期間, 登録時の空腹時血糖,肥満度,血圧,登録時までの体 重の変化に対する影響を検討した. 結果及び考察 登録時に網膜症を認めなかった3,177名のうち,イン スリン依存型糖尿病(IDDM)は169名,インスリン非 依存型糖尿病(NIDDM)は2,932名,糖尿病型別判定不能は76名であった.このうちIDDM 169名では
NIDDM 2,932名に比べprospective follow-up開始後
の網膜症の発生率が高かった.30歳未満発症のIDDM およびNIDDMでみると,登録前糖尿病罹病期間の長 いほど,follow・up開始後の網膜症発生率が高く,また 30歳未満発症のIDDMにおいて,登録前の糖尿病罹病 期間が3年未満群に限ってみると糖尿病発症15歳以上 群では15歳未満発症群に比べfollow-up開始後の網膜 症発生は高率であった.IDDMの網膜症の発生スピー ドはIDDMの発症年齢に関係が深いことは国の内外 での報告と一致するものであった.これに較べ30歳未
満発症のNIDDMで罹病期間3年未満で登録された
212名のfollow・up studyでは発症年齢の影響を受けることが少なかった.このような30歳未満発症
NIDDMの網膜症発症に関するfollow-up studyは, 現在まで国の内外で施行されていない.恐らくIDDMに比べNIDDMの発症が思春期以降に多いために発
症年齢の影響を受けなかったと思われる.次いで30歳以降発症のNIDDMで登録時網膜症を認めなかった
2,574名についてみると,登録時空腹時血糖,収縮期血 圧,過去の肥満度の高いほど,さらに過去と登録時の 体重差の大きい者ほどfollow-up中の網膜症の発生率 が有意に(p〈0.01)高いことが示された.しかしNIDDM全例としてはIDDMの全例に比べ,網膜症の
新しい発生率は低率であった. 結語 糖尿病性網膜症を起こしていない3,177名について 長期間のprospective follow・upを施行したところ,IDDMではNIDDMよりも網膜症の発生率が高く,し
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かも,IDDMの発症年齢の影響を受けやすいこと, NIDDMでは特に血糖,血圧,肥満による影響を受け
やすいことが示された.
論文審査の要旨
本研究は,prospective follow-up stりdyを施行し,糖尿病患者における網膜症の発生率を生命表分析により
計算したものであり,インスリン依存型糖尿病では網膜症の発生は糖尿病の発生年齢に影響され,インスリン 非依存型糖尿病では血糖,血圧,肥満に影響されやすいことを証明したものであり,臨床的,学術的に価値あ るものと認める. 主論文公表誌 糖尿病性網膜症の発生因子に関する検討一生命表分 析を用いて一 東京女子医科大学雑誌 第61巻 第4号 324-331頁(平成3年4月25日発行). 一669一