Qui est responsable? 型コピュラ文 : 変項の存在
は前提されているか?
著者
藤田 康子
雑誌名
年報・フランス研究
号
42
ページ
83-96
発行年
2008-12-25
URL
http://hdl.handle.net/10236/10352
Qui eStresponsttle?型
コピュラ文
一一変項の存在は前提 されているか ?
藤 田
康子
0.は
じめに コピュラ文は,狭
義には主語 も属詞 も名詞句の ものを指すが,広
義には主語が名 詞句で,属
詞が形容詞または無限定詞名詞のものも含む.属
詞が形容詞または無限 定詞名詞 の コピュラ文の主語 を 「誰」であるかを問 う疑問詞 quiに 置 き換 えると Qui etre a街/ON?(ON=無
限定詞名詞)と
い う形式になる.(1)
⑫ J″raψθ “sαbルル“καz´彎θ2 ¢θ」‰κル2003) この形式のコピュラ文が存在す ることは藤 田 (2006)で 指摘 し,そ
の語用論的機能 について藤 田 (2007)で 分析 した。本稿では,このQui estresponsable?型コピュラ 文 をQui etre le N?型 コピュラ文 と比較 しなが ら変項の存在前提 とい う観′点か ら使 用条件 を考察す る。1.先
行研究 Qui eStresponsable?型コピュラ文については,何
らかの記述のある文法書は極 め て少な く,語
法を載せている辞書や この形式をテーマに した研究論文はわれわれの 知 る限 りではない。その中でGrevissc(1975)は い くつか例を載せているが 6540), 属詞が女性形になることは稀であると述べ るに止まっている((3),(4))(1)。 (2) Aptts tln tel,9ν J sθtt Cttα “θルr2(3) 2ガ
ω′j″θた2 Mas∝Щ ma mёre9 ma niёce?Qui est responsable?型 コピュラ文 Riegel et J。 (1994)も 属詞が女性形 になることがあると述べてい るだけである ぃ 394-395)。
(5)`ン
j″セ “Jrc w"が″ ′″Sα′ jψj′ ω ル ε3S彎
″ “あ浴7 また,NPI be NP2型コピュラ文について論 じた Declerck(1988)は,属
詞 を問 う Wh江 おhe?の
よ うな疑問文は分析 しているがo38),主
語 を問 うWhoおa tacher?,WhoおresponsibL?の よ うな疑問文の使用条件は分析 していない(2).
しか し
,談
話の中では主語が疑問詞のコピュラ文を用いる必要が生 じることがあ るはずである。Qui eSt responsabL?型 コピュラ文が研究論文でも辞書でも取 り上げ られてお らず,ご
く少数の文法書で用例が示 され るのみで,使
用条件が分析 されて いないのは疑間である。2.発
話例Qui eSt responsabL?型コピュラ文の発話例を 月υ
"と
んθM磁
ル で検索 し た結果 を見 よ う。調査 したのはetreヵヽ直説法または条件法で,属
詞が形容詞 また は無限定詞名詞の例であ り,過
去分詞,前
置詞句,形
容詞最上級は除いた。 月υ"1901年
-2007年
:39例 1801年-1900年1: 9例 ιθ施 ″夕し 97, 98, 99, 00, 03, 044「 :46 frll 計 94例 の中で も属詞が respOnsableの例が際立って多かった。以下はLθ M磁 ル で 収集 した発話例である.(6) La p“sidente du RPR,Michёle Alliot‐Marie,a amoncё,mercredi l∝mars,qu'elle
sait i'9夕J aSr cttdidar et qui ne l.est pas"a rinvestinre pour les municipales a
Paris au selrl du rnouvement gauniste。 (ιθ施 ″α♭2000)
(7) Enfm―
etjhi eu lbccasion de L dire a Lionel Jospin― ,se pose,au―dela de la l。1li■oral,le pЮblёme plus large du marchё foncier.Qui aChё te?Qui Vend?0夕Jω′
“ιdtatar aし ccsレ
arsαθ′Jθ閤7 Lc五sque de blanchilnent d'argent sale est connu
et avё
“
Qui est responsable?型 コピュラ文
3.Declerck(1988)と 変項の存在前提
3.1.分類
次に,Qui eSt responsable?型コピュラ文の使用条件 を明 らかにす るにはどのよ う な説明原理を使 えばよいかについて手がか りを得 るために,Declerck(1988)を 参照 しよ う。Declerckは NPlbe NP2型 コピュラ文 を主に5種類 に分類 している.
1)指
定文 (specincatimal sentence⇒2)措
定文 orediCatiOnal sentenceの3)記
述的同定文 (descriptionally―identtting Sentence⇒4)同
一性文 (identity Statement⇒5)定
義文 (deflnitiOns)Qui eSt responsable?型 コピュラ文はresponsあleと い う属性 を備 えてい る人が 「どの人」であるかを問 う疑問文であるが
, 1)∼ 5)の
うち関係 があると思われ るのは1)の
指定文 lNPlの記述す る人が 「どの人」であるかをNP2で
示す文)と
2)の
措定文 lNPlの記述す る人が備 えている属性 をNP2で
記述す る文)で
あ る。以下では指定文 と措定文の定義 を見 る。指 定文 :変 項 に値 を指定す る文
(8) (Who iSthe bank robber?)一―刀物b`ZたЮbbθrお妥効κ獅りθ “ぶ。 (変項
) (値
) ・WH疑
問文の答 えとして用い られ ることが多い。 ・ コロン・イン トネーシ ョンをつけて読む (beの後 に短いポーズを入れ る)こ とができる。X be:Yと 定式化できる。 措 定文 :主語NPの
属性 を述べ る文 (9) JOhn is a tachen(10) J01m is the cleverest stlldent ofthem all.
0単 に属性 を述べるのであって
,変
項に対す る値 として属性 を指定す るのでは ない点に最大の特徴がある。86 Qui est responsable?型 コ ピュ ラ文
Johnお協H。 は措定文であるが,(11)は JOhnがどんな人であるかの答 えを指定
しているので指定文 として分類 され る ぃ3).
(11)Whtt JOhn is is愴 11.
また
,指
定文 と措定文の違いは意味的なものであ り,必、ず しも統語的な違いがあ るわけではない とい う。John k a good student.は通常は措定文解釈 を受けるが,Wh江 惚JOhn?の答 えであると解釈 され るときは指定文 として分類 され る o7).(12) (WhatiS JOhn?)― 一カル おαg刀グs″ル″ム
(13)は 「起 こつた ことは悲惨だった」とい うよ うに措定文 として解釈す ることもで きるが,「何が起 こつたか とい うと惨事だ」 とい うよ うに指定文 として解釈す るこ ともできる。
(13) What happened was a cattttrophe.
指定文は統語特′性によ り, 2つのタイプに分けられ る。 タイ プ1
(14)(Who Opened the door?)一 カル
"“
θグルθあθハ
O WH疑
問文の答 えとして用い られ る。 コピュラ文以外の文 も含 まれ る。・ 変項は表出されず
,変
項 に対応す る値が指定 され る。(14)で は指定文はJohn opened the doo■ であ り
,値
Johnがキ旨定 され る。変 項 を含む問いの文Who opened the door?は 指定文ではない。・「変項の内容」(the contcnt of the variablc。 変項そのものではな く
,変
項につ いての情報が示 され る部分)は名詞句で記述 され るとは限 らない。(14)で は 動詞句 opened the doorによつて表 されている。変項はthe x who opened thedoorで ある。 タイ プ 2
(15) The murdereris John。
・ 変項 と値の両方が表出され
,beに
よつて結合 され る。(15)で は変項は The murderer,値 はJohnによつて表 されている。
(16) Jolm iS the murdere■
Qui est responsable?型 コ ピュ ラ文 87
Qui eSt responsable?型コピュラ文は Declerckの 分類項 目のいずれかに分類でき るのだろ うか。あるいは別の項 目を立てるべきなのだろ うか。Jean est responsable.は 通常措定文解釈 を受 けるが
,Jeanを
quiに 置き換 えたQui eStresponsable?はWH
疑問文である。Qui eStresponsable?型コピュラ文はタイプ 1の 指定文を答えとす るWH疑
問文であ り,「変項の内容」が表 されていると考 えられ る。3.2.変項の存在前提
Declerckは 指定文 の変項 を定名詞句 cthe x WhO...)で 表記 してい る。以下は Declerck(1988)に 見 られ る変項の表記である.〔 〕内はそれぞれの変項に対応す
る指定文である。 指定文タイプ1
the X who conllnltted the rnurder
〔(WhO COmmitted the murder?)― 力乃ηω″ “
J′たノ滋θ
“夕Иルκ=(22)〕 指 定文 タイ プ2
the X who was here 〔It was John who was here.〕
the X that Mrs Prendergastis tting tO sh00t〔 Isthe Abominable Snowman that Mrs
Prendergastis tting to sh00t?〕
the X who isthe king ofFrance 〔Is de Gaulle the king ofFrance?〕 the one who murdered Smith 〔It was J01m who committed the murd∝〕
指定文の 「変項」 とは どのよ うな概念なのか。Declerckに よると
,指
定文の 「変 項」は旧情報であるだけでな く,論
理的に前提 された何 らかの ものを指す とい う意 味において前提であ り,その前提は一般 にpresupposition ofexistenceであるとい う。 た とえばIt was Jolm who commited the murde■ とい う指定文には there is some X who committed the murde■ とい う前提があ り,It was John who was here.の 変項 the xwho was hereは 話 し手 と聞き手の念頭 に存在す ると述べているo14…15)(3)。 また,
タイプ 1の 指定文 (Who cO側面tted the murder?)一 It Was Johnのよ うに変項が表出 されない ときで も変項に前提があることに変わ りはない とい う し14).
Qui est responsable?型 コピュラ文
否定の notで キャンセルできない と主張す るo16)。(17)で は定名詞句 と指定文の 変項の存在が前提 されているが,(18)が示す よ うに定名詞句 John Jonesの 方は存 在前提がキャンセルできるのに対 し,(19)が 示す よ うに指定文の変項 (スミスを殺
した何者か
)の
方は存在前提がキャンセルできない とい う(4). (17)It waS JOhn Jones who murdeК d Smlh.(18) It waS nOtJohn Jones who mllrdered Smith:John Jones doesn'te対 st.
(19) !It Was notJohn Jones who mllrdered Smith:Smith was not murdered at all.
3.3.問題点
3.2.で見た Declerckの 主張をめ ぐってはい くつか問題がある.
1)「 定名詞句の存在前提はキャンセルできる」 とい う主張
(18) It waS nOtJohn Jones who murdered Smith:John Jones doesn'te対 st.
Dederckは (18)を あげて 「定名詞句の存在前提はキャンセルできる」 と主張 して いるが,John JOnes doesn'te対 stは John Jonesの現実の世界における存在が否定 され ているだけで
,論
理的に前提 された1分
裂文の John Jonesの存在がキャンセル さ れているのではない。2)「 指定文の変項の存在前提はキャンセルできない」 とい う主張
3.1.で見たよ うに,Qui eSt responsable?型コピュラ文はタイプ 1の 指定文を答 えと す る
WH疑
問文なので,Declerckを 援用す るとQui eSt responsable?型 コピュラ文の答 えの文の変項 に も 「存在 前提」があることにな る。 ところが,3.2.で見た Declerckの 主張に反 して,このタイプのコピュラ文の変項の 「存在前提」は 「キャ
ンセル で きる」 と反論す る こ とがで きる。
(20) の ブ″ κψθ″Sabた2 Persome。 (S011ers) (20)で は変項 「責任 を負 うべき何者か」は問いの文によつて話 し手 と聞き手の脳裏 に導入 され
,答
えの文においては存在前提がある。3.2.で見た Declerckの 主張に よれば,この存在前提はキャンセルできないはずである。ところが,(20)では答 え の文で 「責任 を取 るべ き誰か」力ヽ`ない ことが明示 されている。「責任 を取 るべ き 誰か」の存在前提が 「誰で もない」 とい う答 えでキャンセル されているのだ と主張Qui est responsable?型 コピュ ラ文 89 す ることができる。
3.4.Qui eStresponsable?型コピュラ文の変項 と存在前提
Qui eStКSponsable?型 コピュラ文の変項には存在前提があるのだろ うか。このフ点 について考 えるため,「変項の内容」に定名詞句 を含む Qui etre le N?型 コピュラ文
とルヒ較 しよ う。
Qui etre leN?型 コピュラ文は 「変項の内容」が定名詞句である。定名詞句には定 名詞句の指示す る対象が話 し手 と聞き手の念頭 に存在す るとい う存在前提がある。 このよ うな存在前提があると
,一
般 に値 の存在が保証 され る.こ
れは (21)で 確認 できる。 (21) 2"Jω′ルκΨθttαわた2-Persome. (21)は 問い と答 えが食い違 っている。「変項の内容」が定名詞句で表 され ると,「責 任 のある人」が誰かいるとい う存在前提があるので,誰
もいない とい う答 えは矛盾 して しま う。Persomeと い う答 えも不可能ではないが,答えている人は責任のある 人が誰かい るはずだ とい う問いの前提その ものが間違 ってい る とい う指摘 を して いることになる。 また,Declerckは 指定文の変項は一般 に定名詞句で表 され ると述べているが,定
名詞句 については「話 し手 と聞き手が共有す る文脈知識 において唯一のもの として 同定 され るはずの何 らかの指示対象があると話 し手が考えていることを示す」とい う Leech(1983)の 主張を引用 し,そのまま踏襲 しているo31).この定義を援用す ると,Qui etre leN?型 コピュラ文の le Nは 話 し手 と聞き手が共有す る文脈知識 に おいて唯一の もの として同定 され るはず だ と話 し手が推測 してい る とい うことに なる. 以上の考察か ら,Qui etre le N?型 コピュラ文 を次のよ うに定義す る。 Qui etre le N?型コピュラ文 話 し手 と聞き手が共有す る文脈知識 において唯一の もの として同定 され るはず だ と話 し手が推測す る対象が誰であるかを問 う。一般 に値が存在す ることが保証 され る。 一方,Qui cttresponsable?型 コピュラ文は属詞 に定名詞句 を含まず,話
し手 と聞Qui est responsable?型 コピュラ文 き手が共有す る文脈知識 において唯一の もの として同定 され るはず だ と話 し手が 推測す るよ うな対象はない。(20)(ンブ″ κψοおαわた2-Pesome。 が示 しているのは, 変項の存在前提がキャンセル可能であるとい うことではな く,こ の形式の変項には 「責任 を負 うべき何者か」が話 し手 と聞き手の念頭にあるとい う存在前提がないた め
,値
がな くて も矛盾が生 じない とい うことではないか。この点について4節で発 話例 を分析 し,検
証 しよ う。4.発
話例分析 と仮説 久 しぶ りに再会 した二人の男性が話 している場面である。(22) 〈〈S'il y a llne notion qucje n'ai plus,attourd'hui,aptts tout 9a,― c'est bien celle
de la responsabili“ .〉〉("。)〈〈Au fond,9夕Jω′κ平
'θ
″Sαわた7 Responsable de ses
actes,de soi―meme?cOllnais―tu quelqui ln de resporlsable?Moi,je nt en ai
jamais rencontだ。〉〉 (Martin du Gard) 「一体誰が責任感のある人だ とい うのか」とい う問いは,特定の「責任感のある人」 についての問いではな く
,責
任感のある人な ら何人で もかまわないが誰か とい う問 いである。すなわち 「責任感のある人」 とい う変項xは何人で もよい.この ことは す ぐあ とにquelqu!lln de responsableと 表 されていることにも示 されている。 この quelqピllnは特定の誰かではな く,誰
であってもよい誰かである。 ここでは後続文 脈で 「そんな人に出会ったため しがない」 と値の存在が否定 されているので,値
は ない。このよ うに,変
項 「責任感 のある人」の数 (人数)が
決まっていない (いく つで もよい,ゼ
ロでもよい)とい うことは,変
項に存在前提がない とい うことであ る。答 えで存在 を否定 しているので,変
項に存在前提があれば矛盾 して しま う。 (23) Le Sec“taire Gёnёral:〈〈Vous avez dit qucj'ё tais beau.Je l'd entndu chire―ment etje dois dire qucj'en фЮuVe quelquesurpHse.
sije r ёtais,on me r allraitdqa dit.〉〉 〈〈Quelles idiotes!〉〉
Qui eSt responsable?型 コピュラ文 (Giraudoux) アニェスが事務長 に会いに行 く場面である
.先
行文脈では,事
務長 に会 ってみた ら ハ ンサムな人だつたのでアニェスが驚いたことが述べ られている。idiotesと いわれ る女性たちはアニェスの 《Quelles idiots!〉〉とい う発言では じめて談話 に導入 され る。二人は初対面で会 ったばか りなので,事
務長 はそれが誰 を指すかがわか らず, 「馬鹿?誰がですか?」 とたずね る。アニェスが複数の女`性を念頭 に浮かべていることは彼女の発言 QuelleS idiots!から明 らかであ り,これ を定名詞句 les idiotesで 受 けることはできる。 しか し
,事
務長は複数形ではな くQui eSt idioに?とたずねて いる。その理 由は,定
名言司句 を用いてQui SOnt les idiotes?ま たは Quelles sont les idiots?と して しま うと,話
し手 と聞き手の間で馬鹿 な女が複数存在す るとい うことが共通の認識 になって しま う。 しか し
,事
務長 はそのよ うな人物の存在が思い当 た らず,馬
鹿 な女が複数存在す るとい う認識 を共有 していないため,存
在前提のな いQui eSt idiote?を用いているのだ と説明できる.限定詞 のない形式 を用いるとidioteは単数形 になるが,この単数形は誰であるか が問われている人が一人であるとも複数であるとも示 していない
,す
なわち数 につ いてニュー トラルなので,「
そんな女性 がいるのか」 と半信半疑で対象の存在 をま だ認 めていない事務長の姿勢 を示すのに適 している。Qui eStresponsable?型コピュ ラ文は変項の対象の存在 を認 め られず,脳
裏に描 くことができない状態に合致 した 形式 とい うことができる. また,事
務長 は馬鹿 な女たちの存在 を前提 していないが,存
在 を前提 しない とい うことは存在 を否定 しているのではな く,存
在す るともしない とも判断を下 してい ない とい うことである。このため,値
が存在す ると推測 していた り(事務長はアニ ェスの脳裏には複数の値があると推測 している),答
えで値が付与 された りして も 矛盾 しない。 以上 よ り,(23)で は話 し手が変項の対象が存在す るともしない とも判断を下 して いないので変項に存在前提がない.(24) ―Voulez_vous me suivre?proposa Colin.
92 Qui est responsable?型 コピュラ文
IIse dёcida tout de meme.
…(ンjω′″αJαル7
‐Chloё ,dit Colin. (Vian)
往診 に呼ばれた医師が誰が病気なのかを尋ね る場面である。往診 に呼ばれているの で
,病
人がいて医師にもそのことが伝 えられているはずであ り,存
在前提のある定 名詞句が用い られて も問題 ない.た
とえ病人の性別がわか らないよ うな ときでも,病人がいると分かつていれば Qui eStle malade?のよ うに男性形が用い られ るはず で
,性
別がわか らない ことは定名詞句 を用いない理 由にはな らない.で
はなぜ Qui est malade?とい う限定詞 のない形式が用い られているのか。定名詞句の方は病人 の数が 1人 とわかつているとき,あるいは 1人 と想定す るときに しか用い られない が,限
定詞 のない方は病人が 1人 ない し複数,あ
るいはいない ときも用いることが できる。フランス語話者の中には,た
とえば元気な人たちの中で誰が病気なのかを 知 ろ うとす るときに用い られ る,あるいは必ず しも病人がいるわけではない ときに も用い られ ると指摘 したイ ンフォーマ ン トもいた。これ らの指摘か ら,限
定詞 がな い方は変項の対象の数が決っていない ときに用いることができる。このことか ら限 定詞がない方は存在前提がない ときに用い られ ることがわかる。(25) A:Avez―vous Ю9u llne infomation p“cise sllrcejollr‐la ce lieu―la,ce■e minute―
1こCe plan… la?
B:Oui.Elle n!a pas ё “
retenuc. A:Pourquoi?
BI:1l semble qu'eHe venait d'un agenttrop penphё五quc.Ii n'y a pas eu derecou―
peⅡlents.
A:⑫
ガJω′κψθttαわた2B:Personne.La probabilitё n'anait pas dans ce sens,ciest tout. (S01lers) 白鯨モ ビー・デ ィックのテ ロ暗殺計画についての情報が取 り上げ られなかったのは 誰のせいかをたずねている場面である。事態 (暗殺計画について正確な情報があっ たにもかかわ らず
,取
り上げず,情
報の検証 もしなかった こと)の
責任 を問われ る べ き人が存在 してもおか しくなく,定
名詞句 b responsableを用いて もよい文脈でQui est responsable?型 コピュラ文 93
ある。 しか し,3.4.で 見たよ うに,Qui eSt le responsable?と す ると
,問
いかけてい るAは
責任 を問われ るべき人または負 うべき人が存在す るとい う前提 をAと
Bが
共有 しているとい う姿勢で話 を しているが,答 えているBは
そんな人はいない と存 在 を否定 してい るので,問
い と答 えの存在前提が1歯み合わない ことになる。一方,限定詞 のないQui eStresponsable?の方は,Bが存在 を否定 して も問い と答 えが矛盾 しない。
フランス語話者の指摘の中にはle responsableの方は celui qui a llne responsabil“ ou llne auto五tё,llne personne en chargeと 解釈でき
,限
定詞 のない方はた とえばres_ponsable d'llne fauに のよ うなネガティブな意味になるとい うものがあった。定名詞 句 を用いると
,諜
報部には当然責任者がいて,そ
の責任者 を指すが,限
定詞がなけ れば責任者の意味はな くなるとい うことである。また,定
冠詞 の方は特定の人がい ると思つているが,限
定詞 のない方は 1人 ではない とか,人
のせいではな く,複
合 的な要因のせいである可育旨性があるため と角牢釈す る人 もいた。また,leを用いると agTessifな感 じがす るが,限
定詞 がない方はIlllanc6だと感 じるとい う指摘 もあつ た。定名詞句 を用いた方は責任者 を出せ と迫 ることになるが,限
定詞のない方は責 任者 を追求す るとい うニュアンスがない とい うことであろ う。 以上の考察か ら,定
名詞句の方は話 し手 と聞き手が責任者 の存在前提 を共有す る ことになるが,限 定詞 のない方は話 し手Aが
そのよ うな特定の1人の人物の存在 を 前提 していない と考 えることができる。答 えのpesomeで
存在 しないことが明 ら かにされても矛盾 しない ことか らも,存
在前提がないのは明 らかである.(26)A:〈くVous etes bien dёtect市e pnvё ,non?.¨ Vous aviez mis llne annonce publici…
tatte dans Dびたθ″ゎ″。〉〉
(…)
B:〈〈Qu'cst―ce qui vous amё ne?〉〉
(…)
A:〈〈J'ai mon“Шle bdt avec des copains,dans le XVarrOndissement,llne sorte
de petit club。 ("。)C℃Stllne ancieme 6picerie avec llne cave.En fait,je rai quc
Qui est responsable?型 コ ピュラ文
rai hOchё la rte.
B:く〈②イJω′ρ
'16ち
r,rブび″J″洗s″タバ7〉)
A:《Un宙ellx,je vellx diК vmimentvたllx,lln Кmi“. (ManChette)
雑誌 に探偵の広告 を出 した主人公
Bの
ところに青年Aが
依頼 にや つて来て話 を切 り出す場面である。青年が開業 したクラブの不動産 としての店舗の所有者が誰であ るかをたずねている。 「自分は経営 しか していない」 とい う先行文脈か ら,青
年が 店舗の所有者ではな く他 に所有者がいることが読み取れ る.不動産には必ず所有者 がいるはずなので,le prop五ёtaire des mllrsと定名詞句が用い られていてもおか しく ない文脈である。ではなぜ定冠詞がないのか。あるフランス語話者 によると,所
有 者がllne pesorlne“ ■面eの
ときは た を用い,sociёtё や 宙He de Parisなどの可能`性があるときは限定詞 のない方 を使 うとのことであった。定名詞句 を用いていない理 由は,L pЮpHёttire des mllrsと定名詞句にす ると 1人 の個人が所有者であることが わかっていなければな らないが,この場面ではわかつていない
,所
有者は複数の人 か もしれない し,個
人ではな く,会
社や公共団体の よ うな組織 か もしれないか らだ と説明す ることができる。 以上の考察か ら定名詞句の方 は変項 に対応す る1人の人物が存在す るとい う前 提があるときに用い られ,限 定詞 のない方は変項Xが
1人 または複数存在す るとい う前提がない ときに用い られ るとい うことができる。変項Xの
数が確定 していない とい うことは変項Xに
対応す る対象が存在す るとい う判断を下せていない とい う ことである。 以上の考察 よ り次の仮説 を提案す る。 Qui eSt responsable?型 コ ピュ ラ文 :変項に存在前提がない (話し手 と聞き手が共有す る文脈知識 において唯一の もの として同定 され るはずの対象が存在す ると話 し手が推測 していない)と きに変項 に対応す る値 を問 う形式
.変
項の対象が存在す るとい う前提がないので,対
象の 数 についての表示はない。値の存在が保証 されない。Qui est responsable?型 コピュラ文 95 5。 お わ りに 定名 詞 句 につ いて は研 究が重ね られ て きてお り
,話
し手 と聞 き手が存在前提 を共 有す る こ とが指摘 され てい るが,話
し手 と聞 き手 が対象 が存在す る とい う前提 を共 有 して い ない ときは どの よ うな言 語形 式 が用 い られ るのか とい う問題 につ い て は あま り論 じられ てい ない。 しか し,談
話 の 中で この よ うな場合 に用 い る形式 が あ る はず で,Qui estresponsable?型コ ピュラ文 は この点 について考 える手がか りにな る と思 う.本
稿 で は,Qui estresponsable?型コ ピュ ラ文 は話 し手 と聞 き手が存在前提 を共 有 してい る対 象 が ない と話 し手 が推 測 して い る ときに属詞 の表 す 属性 を備 え てい るのは誰 か を問 う形式 で あ り,Qui eStle N?型 コ ピュラ文 は話 し手 と聞 き手が 存 在 前 提 を共 有 して い る対象 につ い て誰 で あ るか を問 う形 式 で あ る とい うこ とを 示 した。 注(1)本
稿では過去分詞の例は取 り上げない。 (2)Who iS a nitOr?と い う属詞が不定名詞句の例が取 り上げられている箇所があるが,論じ られているのはNPlと NP2が入れ替えられるかどうかとい う問題であ り,このタイプ の疑問文がどのような場合に用いられるのかとい う使用条件・語法についての議論はじ ていないo.41).(One OfyOllr men is a traito■――;物θおα施 わr2二)
Blllis a mib■ /*A ttaitor is Bill
(3)Declerckは it分裂文をタイプ2の指定文の典型 とみな している。 (4) 「!」 は不適切な発話であることを示す。
参考文献
朝倉 季雄 (1981)『フランス文法ノー ト』,自水社
Blanche―Benveniste,C。(1988),《 E16ments pollr llne analyse du mot g″ θ′》,Ao CheⅣ el et Mo Gross
(edS),肋
““
qra3蝋
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