博 士 論 文
不 妊 患 者 の 通 院 開 始 後 早 期 の 満 足 度 と そ の 要 因 分 析
- ケ ア 開 発 に 向 け て の 基 礎 的 研 究 -
實 﨑
美奈
2014 年 1 月
大 分 県 立 看 護 科 学 大 学 大 学 院
目 次
第 1 章 研 究 の 背 景 と 意 義 1.1 不 妊 治 療 の 進 展 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2 1.2 不 妊 カ ッ プ ル を と り ま く 現 状 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2 1.3 研 究 の 目 的 と 構 成 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 6 文 献 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 7 図 表 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 0 第 2 章 不 妊 治 療 を 長 期 継 続 し た 女 性 の 継 続 要 因 に 関 す る 面 接 調 査 2.1 研 究 目 的 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 3 2.2 研 究 方 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 3 2.3 結 果 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 4 2.4 考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 8 2.5 結 論 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2 1 2.6 研 究 の 限 界 と 今 後 の 課 題 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2 1 文 献 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2 2 図 表 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2 4 資 料 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2 9 第 3 章 不 妊 外 来 に お け る 初 回 受 診 患 者 の 満 足 度 と そ の 関 連 要 因 3.1 研 究 目 的 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 3 1 3.2 研 究 方 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 3 1 3.3 結 果 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 3 3 3.4 考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 3 6 3.5 結 論 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 4 0 3.6 研 究 の 限 界 と 今 後 の 課 題 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 4 1 文 献 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 4 1 図 表 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 4 4 資 料 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 5 7第 4 章 不 妊 患 者 の 外 来 通 院 開 始 か ら 6 ヶ 月 後 ま で の 満 足 度 の 経 時 変 化 と 関 連 要 因 4.1 研 究 目 的 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 6 3 4.2 研 究 方 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 6 3 4.3 結 果 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 6 4 4.4 考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 6 8 4.5 結 論 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 7 1 4.6 研 究 の 限 界 と 今 後 の 課 題 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 7 2 文 献 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 7 2 図 表 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 7 4 資 料 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 8 6 第 5 章 研 究 成 果 と 今 後 の 課 題 5.1 不 妊 患 者 の 通 院 開 始 早 期 の 患 者 満 足 度 と 関 連 要 因 ・ ・ ・ ・ ・ 9 0 5.2 研 究 の 限 界 と 今 後 の 課 題 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 9 2 図 表 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 9 3 要 旨 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 9 5 論 文 発 表 一 覧 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 9 9 謝 辞 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 0 0
第
1 章
研 究 の 背 景 と 意 義
1.1 不 妊 治 療 の 進 展 不 妊 症 と は 、1 年 間 の 不 妊 期 間 を も つ も の を い い(Zegers-Hochschild et.al 2009) 、 そ の 頻 度 は カ ッ プ ル 7~ 10 組 に 1 組 程 度 と い わ れ る 。 日 本 で は 約 3 割 の 夫 婦 が 不 妊 を 心 配 し た こ と が あ り 、そ の 半 数 が 実 際 に 不 妊 の 検 査 や 治 療 を 経 験 し て い る と 報 告 さ れ て い る( 国 立 社 会 保 障・人 口 問 題 研 究 所 2011)。 ま た そ の 割 合 は 、女 性 の 晩 婚 化 、晩 産 化 に 伴 い 増 加 傾 向 に あ る と い わ れ て い る ( 岩 澤 ・ 三 田 2007) 。 カ ッ プ ル が 不 妊 を 疑 っ て 不 妊 外 来 を 訪 れ る と 、ま ず 卵 巣 機 能 や 卵 管 の 通 過 性 、精 液 検 査 等 の 、 不 妊 原 因 の ス ク リ ー ニ ン グ 検 査 が 行 わ れ 、必 要 に 応 じ て 精 密 検 査 が 行 わ れ る 。 不 妊 の 原 因 は 、 男 性 側 の み に あ る も の が 20% 、 女 性 側 の み に あ る も の が 40% 、 男 女 双 方 に あ る も の が 20% 、 原 因 不 明 が 20% と い わ れ て い る (WHO 1987) 。 一 般 に は 検 査 で 判 明 し た 不 妊 原 因 に 応 じ て 治 療 が 行 わ れ る が 、原 因 不 明 の ま ま 不 妊 治 療 に 進 む こ と も 少 な く な い し 、原 因 や そ の 程 度 に よ っ て は 治 療 を 行 わ な い 場 合 も あ る 。 不 妊 治 療 は 原 則 と し て 、 侵 襲 の 少 な い も の か ら 順 に 実 施 す る ; た と え ば 、 タ イ ミ ン グ 療 法 、 排 卵 誘 発 法 、 人 工 授 精 、 体 外 受 精 ・ 胚 移 植 と い う よ う に ス テ ッ プ ア ッ プ す る 。1978 年 に イ ギ リ ス で 体 外 受 精 ・ 胚 移 植 に よ る 児 が 誕 生 し て 以 来 、不 妊 治 療 は 急 速 な 進 展 を 遂 げ て き た 。半 世 紀 前 に は 子 ど も を 持 つ こ と を あ き ら め ざ る を 得 な か っ た 、卵 管 閉 塞 や 乏 精 子 症 な ど の 診 断 を 受 け た 患 者 、早 発 閉 経 や タ ー ナ ー 症 候 群 な ど の 診 断 を 受 け た 患 者 も 治 療 を 受 け る こ と に よ り 子 ど も を 持 つ 可 能 性 が 広 が っ て き て い る 。 統 計 的 に 見 る と 、2010 年 の 日 本 に お け る 体 外 受 精・胚 移 植 の 治 療 周 期 1 回 あ た り の 妊 娠 率 は 約 20% で あ り 、 同 年 に 出 生 し た 新 生 児 は 1,071,304 人 、 そ の う ち 体 外 受 精 ・ 胚 移 植 で 出 生 し た 新 生 児 は 28,945 人 な の で ( 齊 藤 他 2012) 、 体 外 受 精 ・ 胚 移 植 に よ る 出 生 の 割 合 は 約 2.7% と な る 。 こ れ は 10 年 前 の 割 合 と 比 較 す る と 約 2.6 倍 で あ り 、 不 妊 治 療 は 目 覚 ま し い 進 展 を 遂 げ て い る こ と が わ か る 。 1.2 不 妊 カ ッ プ ル を と り ま く 現 状 不 妊 治 療 の ほ と ん ど は 産 婦 人 科 領 域 の 外 来 で 行 わ れ て お り 、検 査 ・ 治 療 の た め に 女 性 が 通 院 す る 機 会 が 多 い と い う 特 徴 が あ る 。た と え ば 、タ イ ミ ン グ 療 法 は 基 礎 体 温 測 定 や 経 腟 超 音 波 診 断 法 に よ り 女 性 の 排 卵 期 に 性 交 渉 の タ イ ミ ン グ を 、調 整 す る も の で あ り 、排 卵 誘 発 法 は 排 卵 誘 発 剤 を 経 口 的 に 、ま た は 皮 下 注 射 、筋 肉 注 射 に よ り 女 性 に 投 与 し て 排 卵 期 に 性 交 渉 の タ イ ミ ン グ を 調 整 す る も の で あ る 。人 工 授 精 は 、女 性 の 排 卵 期 に パ ー ト ナ ー の 精 液 を 子 宮 腔 内 に 注 入 す る 方 法 で あ り 、排 卵 誘 発 剤 は 使 用 す る 場 合 と し な い 場 合 が あ
る 。体 外 受 精 ・ 胚 移 植 は 女 性 の 排 卵 期 に 合 わ せ て 採 取 し た 卵 子 を パ ー ト ナ ー の 精 子 と 受 精 さ せ 、数 日 間 の 培 養 後 に 分 割 し た 胚 を 子 宮 内 に 移 植 す る 方 法 で あ る 。体 外 受 精 ・ 胚 移 植 で は 多 く の 場 合 、女 性 に 排 卵 誘 発 剤 や 黄 体 ホ ル モ ン 等 の ホ ル モ ン 剤 が 皮 下 注 射 や 筋 肉 注 射 、経 口 に て 投 与 さ れ る こ と 、ま た 採 卵 の た め に 小 手 術 を 受 け る 必 要 が あ る こ と な ど か ら 、女 性 の 身 体 的 な 負 担 や 侵 襲 は 一 層 大 き い 。 ま た 不 妊 治 療 で は 、経 済 的 な 負 担 も 小 さ く な い 。不 妊 の ス ク リ ー ニ ン グ 検 査 や タ イ ミ ン グ 療 法 、排 卵 誘 発 法 は 保 険 適 用 の 範 囲 内 と な っ て い る が 、多 く の 精 密 検 査 や 人 工 授 精 、体 外 受 精・胚 移 植 は 保 険 適 用 の 範 囲 外 と な っ て お り 、 日 本 で は 体 外 受 精・胚 移 植 1 回 あ た り の 治 療 費 は 約 30 万 円 と い わ れ て い る 。 2013 年 現 在 、 そ の あ り 方 に つ い て の 見 直 し が 行 わ れ て い る が 、 2004 年 度 よ り 開 始 さ れ た 特 定 不 妊 治 療 費 助 成 事 業( 厚 生 労 働 省 )に は 、 助 成 の 対 象 と な る 夫 婦 の 所 得 制 限 が あ る こ と 、1 回 あ た り 15 万 円 、1 年 に 2 回 ま で( 助 成 開 始 初 年 度 は 3 回 ま で ) 、 5 年 間 と い う 制 限 が あ る 。 不 妊 治 療 を 断 念 す る 理 由 の 一 つ に は 経 済 的 な も の が 挙 が っ て い る こ と か ら も ( 白 井 2011) 、 不 妊 の 問 題 を 抱 え る カ ッ プ ル 、特 に 体 外 受 精 ・ 胚 移 植 を 受 け る カ ッ プ ル に は 、経 済 的 な 負 担 が か か っ て い る と 考 え ら れ る 。 し か し そ も そ も 、不 妊 治 療 を 受 け る 患 者 の 多 く は 、受 診 以 前 に 日 常 生 活 に 支 障 を き た す よ う な 身 体 的 な 症 状 を 抱 え て い る わ け で は な い 。た だ「 子 ど も が ほ し い 」と い う 思 い の 強 さ ゆ え に 、受 診 を 決 意 し 、治 療 を 続 け る の で あ る 。 こ の 思 い が 弱 く な れ ば 、あ る い は こ の 思 い を 上 回 る 困 難 が あ れ ば 、不 妊 治 療 を 受 け る 意 欲 は 低 下 す る 。 な お こ こ で 、 こ の 思 い の 背 後 に は し ば し ば 、「 彼 ら が 子 ど も を 持 つ こ と は 当 然 だ 」と 考 え る 親 や 社 会 か ら の 圧 力 、彼 ら の 自 責 感 、彼 ら が 自 ら に 出 産 を 強 い る 圧 力 、な ど の 心 理 社 会 的 な 苦 痛 や 負 担 が あ る と い う こ と も 見 逃 せ な い ( 赤 城 1998)。 以 上 の よ う な 、不 妊 治 療 に 伴 う 苦 痛 ・ 負 担 の 中 で も 心 理 社 会 的 健 康 の 影 響 は 、と り わ け 人 工 授 精 や 体 外 受 精 ・ 胚 移 植 な ど の 高 度 生 殖 補 助 医 療 を 受 け る 場 合 に 大 き い と い わ れ る ( 平 山 他 1998; Peters 2003; 小 泉 他 2005; 早 坂 2005; 羽 太 他 2011)。 ま た 、 治 療 に よ り 妊 娠 ・ 出 産 に 至 っ た 後 に も 、「 医 療 の 介 入 を 受 け な け れ ば 子 ど も を 持 つ こ と が で き な か っ た 」と い う こ と を 負 い 目 に 感 じ て 悩 み が 続 く と い わ れ ( 大 槻 2003; Hjelmstedt et al 2004; Verhaak et al 2005; 林 2009)、た と え 子 ど も を 持 つ よ う に な っ て も 悩 み が す べ て 解 消 す る と は 限 ら な い 。ま し て や 子 ど も を 持 つ に 至 ら な い ま ま 不 妊 治 療 を 長 期 継 続 し て い る カ ッ プ ル に と っ て 、い つ 治 療 終 結 の 意 思 決 定 を す る か は 大 き な 問 題 と な っ て の し か か る 。 そ し て 、 子 ど も を 得 な い ま ま 治 療 を 終 結 し た 後 に も 、
不 妊 に よ る 悩 み は 継 続 す る と い わ れ て い る (Peddie 2005; 安 田 2008; 中 込 2009)。 一 方 、研 究 者 は 不 妊 外 来 で の 臨 床 経 験 に お い て 、初 回 受 診 患 者 カ ッ プ ル と の 面 談 を 担 当 す る 機 会 を 多 く 持 っ て き た 。彼 ら が 受 診 に 至 る ま で の 経 緯 や 思 い を 語 る 中 、特 に 女 性 が 涙 す る こ と は 少 な く な か っ た こ と か ら 、初 回 受 診 時 に お け る 特 別 な 心 理 社 会 的 ケ ア の 必 要 性 を 感 じ て き た 。そ こ で 、研 究 者 は 修 士 課 程 に お い て 不 妊 外 来 を 初 回 受 診 し た 女 性 へ の イ ン タ ビ ュ ー を 行 い 、彼 ら に は 初 回 受 診 以 前 か ら ゆ る や か に 気 力 を 使 い 果 た す 消 耗 性 の 危 機 が 生 じ て い る こ と を 明 ら か に し た( 實 﨑 他 2007)。不 妊 患 者 カ ッ プ ル に は 不 妊 外 来 へ の 通 院 開 始 前 か ら す で に 心 理 社 会 的 な 苦 痛 が 生 じ て い る こ と は 、他 の 研 究 者 か ら も 指 摘 さ れ て い る (Chou et al 2004)。 以 上 の こ と を 考 え る と 、 子 ど も を 持 つ/ 持 た な い に か か わ ら ず 、 不 妊 の 問 題 を 抱 え る す べ て の カ ッ プ ル に 対 し 、 心 理 社 会 的 健 康 に 配 慮 し “ 心 の ケ ア ” を 行 う こ と は 重 要 で あ る と い え る 。し か し 、彼 ら の 心 理 社 会 的 側 面 へ の 支 援 は 、不 妊 治 療 技 術 の 急 速 な 進 展 の 中 で 置 き 去 り に さ れ が ち で あ り 、近 年 に お い て も な お 、 心 理 社 会 的 側 面 へ の 支 援 の 充 実 が 求 め ら れ て い る ( 新 野 2008; 中 島 2010)。 こ う し た 不 妊 カ ッ プ ル へ の 治 療 方 針 そ の も の は 医 学 的 な 判 断 に 基 づ き 提 案 さ れ る が 、こ れ に 関 す る 疑 問 、不 安 や 不 満 な ど は 、看 護 職 者 を は じ め と す る さ ま ざ ま な 職 種 の ス タ ッ フ が 受 け 止 め て 、解 消 や 軽 減 に 努 め る 必 要 が あ る 。 で は 実 際 の と こ ろ 、こ う し た 心 理 社 会 的 ケ ア は 、不 妊 治 療 に 関 わ る ど の 職 種 の 役 割 に な っ て い る で あ ろ う か 。欧 米 で は 各 国 の 法 規 に 基 づ い て 不 妊 治 療 の 質 に 関 す る 基 準 が 定 め ら れ て お り (Human Fertilisation and Embryology Act: HFEA( 英 国 ) ; Centers for Disease Control: CDC ( 米 国 ))、 医 師 、 体 外 受 精 コ ー デ ィ ネ ー タ ー 、 看 護 師 、胚 培 養 士 、 カ ウ ン セ ラ ー に よ る チ ー ム 医 療 が 提 供 さ れ て い る 。イ ギ リ ス で は 、心 理 社 会 的 な 側 面 を 含 め た 不 妊 治 療 の 提 供 に つ い て National Institute for Health and Clinical Excellence( NICE)の Clinical Guideline 11( 2004)お よ び 156( 2013)に よ り 不 妊 の 問 題 を 抱 え る 人 々 へ の 標 準 的 な 医 療 や ケ ア が 示 さ れ て お り 、こ れ に 基 づ い た ケ ア が 提 供 さ れ て い る 。 不 妊 カ ッ プ ル へ の 心 理 社 会 的 ケ ア は 、チ ー ム メ ン バ ー で あ る カ ウ ン セ ラ ー が そ の 役 割 を 担 っ て い る こ と が 多 い 。 こ れ に 対 し て 日 本 で は 、不 妊 治 療 に 関 す る 法 的 基 準 が な く 、日 本 産 科 婦 人 科 学 会 に よ る 会 告 を 各 施 設 が 順 守 す る こ と に よ り 自 主 規 制 さ れ て い る の み で あ る 。こ の 会 告 で は チ ー ム メ ン バ ー と し て カ ウ ン セ ラ ー の 存 在 は 必 須 と さ れ て お ら ず 、心 理 社 会 的 な ケ ア を 含 む 医 療 の 質 に 関 す る 基 準 も 定 め ら れ て い
な い 。 ま た 、2004 年 度 か ら は 厚 生 労 働 省 科 学 研 究 で 不 妊 治 療 施 設 の 設 備 ・ 人 的 資 源 ・ 消 耗 品 使 用 等 に 関 す る 調 査 ( 吉 村 他 2003) が 行 わ れ た が 、 そ の 中 で も 提 供 さ れ る 不 妊 治 療 の 質 に 関 す る 実 態 調 査 は 行 わ れ て い な い 。そ も そ も 日 本 に は 不 妊 治 療 領 域 を 専 門 と す る 心 理 職 者 が 少 な く 、そ の 存 在 は 患 者 カ ッ プ ル に 周 知 さ れ て い な い ( 中 田 2006)。 こ の よ う な 状 況 を 考 え る と 、日 本 に お い て た だ ち に 心 理 職 を 配 置 す る こ と は 容 易 で な く 、現 実 的 に は 看 護 職 者 が 患 者 カ ッ プ ル の 心 理 社 会 的 側 面 へ の 支 援 の 役 割 を 果 た す こ と が 適 切 で は な い か と 考 え ら れ る 。し か し な が ら 、看 護 職 者 に よ る こ う し た“ 心 の ケ ア ”の 役 割 が す べ て の 施 設 に お い て 果 た さ れ て い る と は 言 い 難 い 状 況 に あ る 。 必 要 な ケ ア の 内 容 に つ い て の 検 討 も 乏 し く 、 欧 米 文 献 の メ タ 分 析 に よ る ガ イ ド ラ イ ン (2001) が 示 さ れ て い る に と ど ま っ て い る 。つ ま り 、看 護 職 者 に よ る 経 験 知 に 基 づ い た ケ ア が 提 供 さ れ て い る の み と い っ て も 過 言 で は な い 。不 妊 や 不 妊 治 療 に 対 す る 考 え 方 は 社 会 文 化 的 背 景 の 影 響 を 受 け る の で 、日 本 に お け る エ ビ デ ン ス に 基 づ い た 不 妊 患 者 へ の ケ ア を 、 急 ぎ 開 発 す る 必 要 が あ る 。 こ こ で 、子 ど も を 持 つ こ と を 望 み 、不 妊 治 療 施 設 を 訪 れ た カ ッ プ ル が た ど る 経 過 を 図 1-1 に 示 す 。 不 妊 を 疑 い 、 不 妊 外 来 を 受 診 し た 患 者 カ ッ プ ル は 、 ま ず 不 妊 の ス ク リ ー ニ ン グ 検 査 を 受 け る 。そ の 結 果 に 応 じ て 治 療 方 針 が 決 定 さ れ 、医 師 に よ り 提 示 さ れ た 治 療 方 針 に 沿 っ て( 原 則 と し て 身 体 的 侵 襲 の 少 な い も の か ら )治 療 を 受 け 始 め る こ と に な る 。こ れ ら の ス ク リ ー ニ ン グ 検 査 は 女 性 の 月 経 周 期 に 合 わ せ て 行 わ れ る が 、ス ク リ ー ニ ン グ 検 査 お よ び 二 次 検 査 の 数 ( 医 療 情 報 科 学 研 究 所 2009) か ら 考 え る と 、 そ の 期 間 は 概 ね 半 年 以 内 で あ る 。し た が っ て 本 研 究 で は 、初 回 受 診 か ら 6 ヶ 月 以 内 を 通 院 開 始 後 早 期 と 考 え る こ と に す る 。検 査 の ほ と ん ど に は 健 康 保 険 が 適 用 さ れ る た め 、経 済 的 な 負 担 は 比 較 的 軽 い 。か つ 、カ ッ プ ル の ほ と ん ど は 受 診 前 に 、日 常 生 活 に 支 障 を き た す よ う な 身 体 的 問 題 を 抱 え て い な い 。し た が っ て 通 院 開 始 後 早 期 の カ ッ プ ル へ の ケ ア で は 、検 査 の 説 明 や 、検 査 に 伴 う 身 体 的 な 苦 痛 に 対 す る ケ ア が 中 心 と な る 。 こ う し て 通 院 を 継 続 し て い く 中 で 、受 診 目 的 を 達 成 し 妊 娠 ・ 出 産 に 至 る カ ッ プ ル も い れ ば 、妊 娠 ・ 出 産 に 至 ら ず に 通 院 を 長 期 継 続 し て い く カ ッ プ ル も い る 。し か し そ の 一 方 で 、妊 娠 ・ 出 産 に 至 ら な い ま ま 通 院 の 早 期 中 断 ま た は ド ク タ ー シ ョ ッ ピ ン グ に 至 る カ ッ プ ル も 少 な く な い こ と が 問 題 と さ れ て い る (Strauss 1996)。 た だ し 、 通 院 の 早 期 中 断 や ド ク タ ー シ ョ ッ ピ ン グ に 至 る 理 由 に つ い て は 明 ら か に さ れ て い な い 。彼 ら が 主 体 的 な 意 思 決 定 に よ り 納 得 し て 治 療 を 中 止 し た の で あ れ ば よ い が 、提 供 さ れ る 医 療 お よ び ケ ア に 不 満 を
感 じ て 通 院 開 始 後 早 期 に 通 院 を 中 断 し て い る ケ ー ス も 考 え ら れ る (Strauss の 報 告 を 考 え る と 、 日 本 で も そ う し た ケ ー ル は 少 な く な い 可 能 性 が あ る )。 し た が っ て 、初 回 受 診 前 か ら 心 理 社 会 的 な 苦 痛 を 抱 え た カ ッ プ ル に 対 し て は 、 治 療 に よ る 苦 痛 や 負 担 が 増 え る 前 に( つ ま り 検 査 期 間 中 に あ る 通 院 開 始 後 早 期 に )、 彼 ら の 心 理 社 会 的 な 苦 痛 や 負 担 を 軽 減 し つ つ 、 自 ら が 受 け る 検 査 や 治 療 に 納 得 し 、 主 体 的 に 意 思 決 定 で き る た め の 支 援 が 必 要 だ と 思 わ れ る 。 こ の 通 院 開 始 後 早 期 に 彼 ら が 提 供 さ れ る 医 療 お よ び ケ ア に 不 満 を 感 じ な い こ と 、す な わ ち 患 者 の 満 足 度 を 高 め る こ と は 、治 療 の 早 期 中 断 を 防 ぐ こ と に つ な が る 可 能 性 が あ る と 同 時 に 、彼 ら の 心 理 社 会 的 健 康 の 保 持 増 進 に も つ な が る 可 能 性 が あ る 。し か し な が ら 、こ う し た 患 者 の 治 療 へ の 満 足 度 に つ い て 、 不 妊 治 療 以 外 の 医 療 福 祉 現 場 で は 近 年 研 究 が 進 み ( 石 岡 他 2001; 坂 口 他 2009)、た と え ば 外 来 サ ー ビ ス へ の 満 足 度 に 関 し て は 看 護 師 の 対 応 の 質 が 大 切 で あ る と 報 告 さ れ て い る も の の( 岩 越 他 2004)、不 妊 治 療 を 受 け て い る 患 者 の 満 足 度 調 査 は 、日 本 で は ほ と ん ど 行 わ れ て い な い 。不 妊 治 療 開 始 後 早 期 の カ ッ プ ル が 、検 査 ・ 治 療 に ど の 程 度 満 足 し て い る の か 、 そ し て こ の 満 足 度 に 関 連 す る 要 因 が 何 か を 明 ら か に す る こ と が で き れ ば 、こ れ ら の 患 者 に 対 し て 必 要 な 心 理 社 会 的 ケ ア を 開 発 す る 手 が か り と な る こ と が 期 待 さ れ る 。 1.3 研 究 の 目 的 と 構 成 以 上 を 踏 ま え 、本 研 究 で は 不 妊 患 者 カ ッ プ ル の 通 院 開 始 後 早 期 の 心 理 社 会 的 ケ ア 開 発 の た め の 基 礎 的 検 討 を 行 う こ と と し た 。不 妊 患 者 カ ッ プ ル が 通 院 開 始 後 早 期 に お い て 、 通 院 の 中 断/継 続 を 主 体 的 に 意 思 決 定 す る た め の 心 理 社 会 的 な ケ ア の あ り 方 を 考 え る た め に 、こ の 期 間 の 不 妊 治 療 に 対 す る 患 者 満 足 度 と こ れ に 関 連 す る 要 因 を 検 討 す る こ と が 、 本 研 究 の 目 的 で あ る 。 上 記 の 目 的 を 達 成 す る た め に 、本 研 究 は 3 つ の パ ー ト で 構 成 す る こ と と し た( 図 1-2)。本 来 は 、不 妊 外 来 へ の 通 院 を 早 期 に 中 断 し た 患 者 に 対 す る 調 査 に よ り 、そ の 中 断 理 由 に つ い て の 知 見 を 得 た い と こ ろ で あ る 。し か し 彼 ら を 調 査 対 象 者 と し て リ ク ル ー ト す る こ と は 容 易 で な い 。 一 方 、 治 療 に よ り 妊 娠・出 産 に 至 っ た 患 者 は 不 妊 治 療 に 対 す る 満 足 度 が 比 較 的 高 い と 考 え ら れ る が 、 妊 娠 後 に は 妊 娠 ・ 出 産 ・ 育 児 に よ る 負 担 が 大 き く 、 研 究 に 協 力 す る 時 間 が 少 な い と 考 え ら れ る 。そ こ で 当 面 は 、不 妊 治 療 を 継 続 中 の 患 者 を 調 査 対 象 と す る こ と に し た 。 こ の う ち 、不 妊 治 療 を 5 年 以 上 の 長 期 に わ た り 継 続 し て い る 患 者 は 、他 の 時 期 に あ る 患 者 に 比 べ て 比 較 的 情 緒 が 安 定 し て い る と い わ れ て い る (Craig 1990)。 そ こ で 研 究 1 で は 、 不 妊 外 来 へ の 通 院 を 長 期 継 続 し た 患 者 ( 女 性 )
を 対 象 と し て 、通 院 を 長 期 に わ た り 継 続 し た 要 因 に つ い て の 調 査 を 行 う こ と と し た 。こ こ で 明 ら か に さ れ た 要 因 は 患 者 の 満 足 度 に 関 連 し て い る 、と い う 仮 説 が 考 え ら れ る 。 そ の 上 で 研 究 2 で は 、不 妊 外 来 の 初 回 受 診 患 者 を 対 象 と し 、研 究 1 に お い て 明 ら か に さ れ た 要 因( 通 院 を 長 期 に わ た り 継 続 し た 要 因 )を 参 考 に し た 質 問 項 目 、患 者 満 足 度 尺 度 を 主 な 内 容 と す る 調 査 票 を 用 い た 横 断 調 査 を 行 う こ と と し た 。こ の 調 査 に よ り 、初 回 受 診 時 点 で の 患 者 満 足 度 と そ れ に 関 連 す る 要 因 を 検 討 す る こ と が で き る 。 研 究 3 で は 、研 究 2 と 同 じ 対 象 者 お よ び そ の パ ー ト ナ ー に 対 し 、初 回 受 診 後 3 ヶ 月 お よ び 6 ヶ 月 の 時 点 ま で の 追 跡 調 査 を 行 っ た 。調 査 内 容 は 研 究 2 と ほ ぼ 同 じ 内 容 で 構 成 し た 。こ の 調 査 で は 、初 回 受 診 時 か ら 6 ヶ 月 後 ま で の 患 者 満 足 度 の 変 化 や 、そ れ ぞ れ の 時 点 で の 満 足 度 に 関 連 す る 要 因 を 検 討 す る こ と が で き る 。 本 稿 で は 、 第 2 章 で 研 究 1、 第 3 章 で 研 究 2、 第 4 章 で 研 究 3 に つ い て 述 べ た 後 に 、第 5 章 で こ れ ら を 総 括 し 、不 妊 外 来 へ の 通 院 開 始 後 早 期 に 患 者 カ ッ プ ル が 納 得 し て 通 院 の 中 断/継 続 の 意 思 決 定 を 行 う た め に 必 要 な 心 理 社 会 的 ケ ア へ の 示 唆 を 述 べ る こ と と す る 。 文 献 赤 城 惠 子 (1998). 不 妊 状 態 の 女 性 の 心 理 . ペ リ ネ イ タ ル ケ ア . 7. 294-298. Chou KL and Chi I (2004). Childlessness and psychological well -being in
Chinese older adults. International Journal of Geriatric Psychiatry. 19(5), 449-457.
Craig S (1990). A medical model for infertility counseling. Australian Family Physician. 19, 491-500. 不 妊 患 者 支 援 の た め の 看 護 ガ イ ド ラ イ ン 作 成 グ ル ー プ 編 (2001). 不 妊 患 者 支 援 の た め の 看 護 ガ イ ド ラ イ ン ― 不 妊 の 検 査 と 治 療 の プ ロ セ ス ―, 13-18. 岩 澤 美 帆, 三 田 房 美 (2007). 晩 産 化 と 挙 児 希 望 女 性 人 口 の 高 齢 化 . 人 口 問 題 研 究. 63(3), 24-41. 羽 太 千 春, 和 泉 美 枝 , 我 部 山 キ ヨ 子 (2011). 高 度 生 殖 補 助 医 療 に よ り 妊 娠 し た 妊 婦 に お け る 不 妊 治 療 経 験 の 受 け と め. 母 性 衛 生 . 52(2), 256-262. 早 坂 祥 子 (2005). 不 妊 女 性 の 心 理 に 関 す る 研 究 体 外 受 精・胚 移 植 を 受 け る 女 性 の 不 安 と 対 処 行 動 に つ い て. 母 性 衛 生 . 46(2), 292-299. 林 は る み, 佐 山 光 子 (2009). 生 殖 補 助 医 療 に よ っ て 妊 娠 し た 女 性 が 出 産 す る ま で の 感 情 の プ ロ セ ス. 日 本 助 産 学 会 誌 . 23(1), 83-92.
平 山 史 朗, 吉 岡 千 代 美 , 出 口 美 寿 恵 他 (1998). ART に 対 す る 患 者 の 心 理 調 査 . 日 本 受 精 着 床 学 会 雑 誌. 15(1), 145-149.
Hjelmstedt A, Widstrom AM, Wramsby H et al (2004). Emotional adaptation following successful in vitro fertilization. Fertility and Sterility. 81(5), 1254-1264.
Human Fertilisation and Embryology Act: HFEAct (1990). http://www.hfea.gov.uk/2070.html 医 療 情 報 科 学 研 究 所 編 集 (2009). 不 妊 症 . 病 気 が 見 え る vol.9 婦 人 科・乳 腺 外 科. 76-87. メ デ ィ ッ ク メ デ ィ ア . 東 京 . 石 岡 み さ き, 深 川 和 己 , 榛 村 重 人 他 (2001). 日 帰 り 角 膜 移 植 の 患 者 満 足 度 . 臨 床 眼 科. 55(3), 293-296. 岩 越 浩 子, 今 井 七 重 , 近 藤 紫 津 子 他 (2004). 外 来 を 受 診 す る 児 の 保 護 者 の 満 足 度 に 関 す る ア ン ケ ー ト 調 査. 外 来 小 児 科 . 7(2), 128-134. 實 﨑 美 奈, 宮 﨑 文 子 , 林 猪 都 子 (2007). 挙 児 希 望 女 性 に お け る 不 妊 治 療 専 門 医 受 診 前 の 心 理. 母 性 衛 生 . 47(4), 518-528. 小 泉 智 恵, 中 山 美 由 紀 , 上 澤 悦 子 他 (2005). 不 妊 検 査 ・ 治 療 に お け る 女 性 の ス ト レ ス. 周 産 期 医 学 . 35(10), 1377-1383. 国 立 社 会 保 障 ・ 人 口 問 題 研 究 所 (2011). 第 14 回 出 生 動 向 基 本 調 査 「 結 婚 と 出 産 に 関 す る 全 国 調 査 」 夫 婦 調 査 の 結 果 概 要. http://www.ipss.go.jp/ps -doukou/j/doukou14/doukou14.asp 厚 生 労 働 省 (2004). 不 妊 に 悩 む 方 へ の 特 定 治 療 支 援 事 業 の 概 要 . http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/funin -chiryou.html 中 込 さ と 子, 横 尾 京 子 , 田 口 智 子 (2009). 体 外 受 精 - 胚 移 植 に よ っ て 子 ど も が 得 ら れ な か っ た 女 性 の ラ イ フ ヒ ス ト リ ー 研 究. 日 本 生 殖 看 護 学 会 誌 . 6(1), 4-16. 中 島 通 子, 林 谷 啓 美 , 鈴 井 江 三 子 (2010). 不 妊 症 治 療 を 受 け る 夫 婦 の 心 理 と 看 護 職 へ の 期 待 役 割. 日 本 不 妊 カ ウ ン セ リ ン グ 学 会 誌 . 9(2), 111-118. 中 田 文 子, 平 山 史 朗 , 岡 親 弘 他 (2006). カ ウ ン セ リ ン グ サ ー ビ ス の 利 用 に 関 す る 実 態 調 査. 日 本 受 精 着 床 学 会 雑 誌 . 23(1), 253-258.
National Institute for Health and Clinical Excellence Clinical Guideline(: NICE CG) 11, 156. http://guidance.nice.org.uk/CG11 ,
http://guidance.nice.org.uk/CG1 56
日 本 産 科 婦 人 科 学 会 (2010). 生 殖 補 助 医 療 実 施 医 療 機 関 の 登 録 と 報 告 に 関 す る 見 解.
新 野 由 子, 岡 井 崇 (2008). 不 妊 治 療 を 受 け る 患 者 に 対 す る 支 援 の あ り 方 に 関 す る 研 究( 第 2 報 )意 識 調 査 と 自 由 記 載 か ら う か が え る 不 妊 患 者 の 特 性 と 望 む 支 援. 母 性 衛 生 . 49(1), 145-151.
大 槻 優 子 (2003). 不 妊 治 療 後 に 妊 娠 ・ 出 産 し た 女 性 の 心 理 8 事 例 の 面 接 調 査 の 分 析 結 果 か ら. 母 性 衛 生 . 44(1), 110-120.
Peddie VL, van Teijlingen E, Bhattacharya S (2005). A qualitative study of women's decision -making at the end of IVF treatment. Human Reproduction. 20(7), 1944-1951.
Peters K (2003). In pursuit of motherhood: the IVF experience. Contemporary Nurse. 14(3), 258-270. 齊 藤 英 和, 石 原 理 , 久 具 宏 司 他 (2012). 平 成 23 年 度 倫 理 委 員 会 登 録・調 査 小 委 員 会 報 告. 日 本 産 科 婦 人 科 学 会 雑 誌 . 64(9), 2110-2140. 坂 口 肇, 中 村 伸 一 , 福 田 耕 嗣 他 (2009). 急 性 期 治 療 病 棟 に お け る 多 職 種 参 加 型 患 者 心 理 教 育 の 効 果 抗 精 神 病 薬 治 療 下 主 観 的 ウ ェ ル ビ ー イ ン グ 評 価 尺 度 短 縮 版 日 本 語 版 を 活 用 し て. 日 本 精 神 科 看 護 学 会 誌 . 52(2), 396-400. 白 井 千 晶 (2011).「 不 妊 当 事 者 の 経 験 と 意 識 に 関 す る 調 査 2010」 報 告 書 . http://homepage2.nifty.com/~shirai/survey03/index_survey03.html
Strauss B (1996). “Doctor Shopping” in Infertility Medicine. Archives of Gynecology and Obstetrics. 259(1), S24-32.
Verhaak CM, Smeenk JM, van Minnen A et al (2005). A longitudinal, prospective study on emotional adjustment before, during and after consecutive fertility treatment cycles. Human Reproduction. 20(8), 2253-2260.
WHO (1987). World Health Organization Task Force on the Management and Prevention of Infertility Towards an objective evaluation of signs and symptoms in male infertility. Int ernational Journal of Andrology. (S7), 3–9. 安 田 裕 子, や ま だ よ う こ (2008). 不 妊 治 療 を や め る 選 択 プ ロ セ ス の 語 り . パ ー ソ ナ リ テ ィ 研 究. 16(3), 279-294. 吉 村 泰 典, 久 保 晴 海 , 鈴 森 薫 他 (2003). 配 偶 子 ・ 胚 提 供 を 含 む 統 合 的 生 殖 補 助 技 術 の シ ス テ ム 構 築 に 関 す る 研 究 . 厚 生 労 働 科 学 研 究 成 果 . http://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/NIDD00.do?resrchNum=200200338 A
Zegers-Hochschild F, Adamson GD, de Mouzon J et al (2009). The International Committee for Monitoring Assisted Reproductive Technology (ICMART) and the World Health Organization (WHO) Revised Glossary on ART Terminology, 2009. Human Reproduction. 24(11), 2683 -2687.
図 1-1 不 妊 患 者 の 外 来 受 診 と 受 診 後 の 経 過 受 診 し な い 妊 娠 ・ 出 産 通 院 の 中 断 ・ ド ク タ ー シ ョ ッ ピ ン グ 早 期 ( 初 回 受 診 ~6 か 月 後 ) 不 妊 ? 受 診 す る 検 査 を 受 け る 治 療 を 受 け る 治 療 を 終 結 す る 治 療 を 継 続 す る
図 1-2 本 研 究 の 構 成 不 妊 ? 受 診 す る ( 初 回 受 診 ) 治 療 を 終 結 す る 通 院 を 継 続 す る 通 院 の 長 期 継 続 ( 通 院 開 始 か ら 5 年 以 上 ) 治 療 を 受 け る ( 通 院 開 始 か ら 6 か 月 後 ご ろ ) 検 査 を 受 け る ( 通 院 開 始 か ら 3 か 月 後 ご ろ ) 研 究 1 5 年 以 上 の 通 院 継 続 患 者 研 究 2 初 回 受 診 患 者 研 究 3 初 回 受 診 ~6 か 月 後 ま で の 通 院 継 続 患 者
第
2 章
2.1 研 究 目 的 不 妊 治 療 を 受 け る 外 来 患 者 の 転 帰 は 、A) 妊 娠 ・ 出 産 に 至 る 群 、B) 長 期 に わ た り 治 療 を 継 続 す る 群 、C) 妊 娠 ・ 出 産 し な い う ち に 治 療 の 中 断 ま た は 終 結 に 至 る 群 、の 三 つ に 分 け ら れ 、こ れ ら 3 群 を 同 時 に 調 査 す る こ と は 困 難 で あ る 。本 章 で は こ の う ち の B 群 に 焦 点 を 当 て 、彼 ら が 長 期 に わ た り 不 妊 治 療 を 継 続 し た 理 由 や 、 治 療 の 中 断 を 考 え た と き の 気 持 ち に つ い て 知 る た め に 、 面 接 調 査 を 実 施 す る こ と を 考 え た 。た だ し 一 般 に 、女 性 は 男 性 に 比 べ て 通 院 の 機 会 が 多 く 、よ り 負 担 感 が 大 き い と 考 え ら れ て い る こ と か ら 、さ し あ た り 調 査 対 象 者 は 女 性 と す る こ と と し た 。こ れ ら の 観 点 か ら 彼 女 ら の 特 徴 を 描 き 出 す こ と が で き れ ば 、そ の 情 報 は 、初 診 患 者 の 満 足 度 を 高 め る た め の 支 援 に 資 す る こ と が 期 待 で き る 。 本 章 で は 、不 妊 外 来 へ の 通 院 開 始 後 早 期 の 患 者 の 満 足 度 に 関 連 す る 要 因 へ の 示 唆 を 得 る た め に 、不 妊 治 療 を 長 期 継 続 し た 要 因 を 明 ら か に す る こ と を 目 的 と す る 。 2.2 研 究 方 法 2.2.1 参 加 者 Craig( 1990) は 、 不 妊 治 療 中 カ ッ プ ル の カ ウ ン セ リ ン グ の ス テ ー ジ を 、 治 療 期 間 が 半 年 か ら 2 年 の 第 1 段 階 、 2 年 か ら 5 年 の 第 2 段 階 、 5 年 以 上 の 第 3 段 階 に 分 け て い る 。第 3 段 階 の ス テ ー ジ に あ る 患 者 は 、し だ い に 治 療 を あ き ら め 、子 ど も が い な い 生 活 に 適 応 し て い く 時 期 で あ り 、他 の 時 期 の 患 者 に 比 べ て 比 較 的 情 緒 が 安 定 し て い る 、と 述 べ て い る 。そ こ で 本 研 究 で は 、不 妊 治 療 を 5 年 以 上 継 続 し て い る 女 性 に 焦 点 を 当 て る こ と と し た 。研 究 対 象 者 は 、日 本 産 科 婦 人 科 学 会 に 生 殖 補 助 医 療 実 施 施 設 と し て 登 録 さ れ て い る 施 設 の う ち 、 本 研 究 へ の 協 力 の 同 意 が 得 ら れ た 2 施 設 を 2007 年 2 月 ~ 4 月 の 間 に 受 診 し た 女 性 患 者 で 、不 妊 治 療 を 5 年 以 上 続 け て き た 31 名 す べ て で あ る 。 こ れ ら の 対 象 者 に 、担 当 医 師 ま た は こ れ に 代 わ る 医 療 ス タ ッ フ が 本 研 究 へ の 協 力 を 依 頼 し た 。そ の 結 果 、こ の 研 究 に 協 力 す る こ と に 書 面 で 同 意 し た 9 名 (29%) が 、 本 研 究 の 参 加 者 と な っ た 。 2.2.2 デ ー タ 収 集 方 法 上 記 の 参 加 者 に は 、研 究 者 か ら 改 め て 本 研 究 の 趣 旨 お よ び 倫 理 的 配 慮 に つ い て 説 明 を 行 い 、前 述 の 書 面 に 加 え て 口 頭 で も 同 意 の 確 認 を 行 っ た 。書 面 お よ び 口 頭 で の 同 意 が 得 ら れ た 参 加 者 に 対 し 、通 院 中 の 施 設 内 の プ ラ イ バ シ ー が 保 た れ る 部 屋 で 、 研 究 者 (1 名 ) が 個 別 に 約 1 時 間 の 半 構 成 的 面 接 を 1 回
ず つ 行 っ た 。 イ ン タ ビ ュ ー ガ イ ド を 資 料 2-1 に 示 す 。 主 な 調 査 内 容 は 、 参 加 者 の 属 性 、治 療 お よ び 医 療 機 関 に つ い て の 感 想 、治 療 を い つ ま で 続 け る つ も り か ( 治 療 期 間 ま た は 治 療 段 階 の め や す )、 治 療 の 断 念 を 考 え た 経 験 に つ い て 、長 く 治 療 を 続 け た 理 由 に つ い て の 5 項 目 で あ る 。治 療 を 長 く 続 け た 理 由 に つ い て は 様 々 あ る と 思 わ れ る の で 、そ の 理 由 に つ い て 詳 し く 質 問 し た 。面 接 は 、不 妊 治 療 中 で あ る 参 加 者 の 心 身 の 負 担 を 考 慮 し 、参 加 者 が 希 望 さ れ る 日 時 に 行 っ た 。 ま た 、 面 接 内 容 は 参 加 者 の 了 承 を 得 て メ モ を 取 り 、IC レ コ ー ダ ー に 録 音 し た 。 2.2.3 分 析 方 法 面 接 中 の メ モ お よ び 録 音 デ ー タ に 基 づ い て 逐 語 録 を 作 成 し 、一 文 ご と に 不 妊 治 療 を 長 期 継 続 し た 理 由 に 着 目 し て 内 容 を 要 約 し た 。類 似 し た 項 目( コ ー ド )を 分 類 し て カ テ ゴ リ 化 し 命 名 す る 、 と い う 作 業 を 繰 り 返 し 、質 的 帰 納 的 な 分 析 を 行 っ た 。ま た 、治 療 の 継 続 理 由 に 影 響 を 与 え る と 考 え ら れ る 、妊 娠 ・ 出 産 経 験 や 子 ど も の 有 無 、具 体 的 な 断 念 時 期 を 考 え た 経 験 や 実 際 に 治 療 を 休 止 し た 経 験 の 有 無 、不 妊 外 来 受 診 前 に 妊 孕 性 に 影 響 を 与 え る 婦 人 科 系 疾 患 な ど の 身 体 的 な 問 題 や 経 済 的 な 問 題 の 有 無 と カ テ ゴ リ 出 現 と の 関 連 に つ い て も 確 認 し た 。分 析 の 信 頼 性 お よ び 妥 当 性 の 確 保 の た め 、分 析 の 過 程 に お い て は 看 護 学 研 究 者 お よ び 質 的 研 究 の 専 門 家 に よ る ス ー パ ー バ イ ズ を 受 け な が ら 進 め た 。 2.2.4 倫 理 的 配 慮 参 加 者 は 、研 究 の 目 的 と 、協 力 は 参 加 者 の 自 由 意 思 に よ る も の で あ り 拒 否 し て も 不 利 益 を 生 じ な い こ と 、引 き 受 け た 後 で も 取 り 消 し た り 面 接 を 中 断 し た り で き る こ と 、話 し た く な い こ と を 話 す 必 要 が な い こ と 、話 の 内 容 を 病 院 ス タ ッ フ は じ め 他 者 に 漏 ら さ な い こ と 、参 加 者 の 許 可 を 得 て 作 成 し た 記 録 は 研 究 者 以 外 が 閲 覧 で き な い 場 所 に 保 管 し 、研 究 終 了 後 は 廃 棄 す る こ と 、お よ び 研 究 結 果 の 公 表 に 際 し て は 参 加 者 や 病 院 の 名 が 特 定 で き な い よ う に 配 慮 す る こ と に つ い て 、 口 頭 と 文 書 で 説 明 を 受 け た 上 で 、 参 加 に 同 意 し た 。 以 上 の 手 続 き は 、著 者 の 所 属 機 関 の 研 究 倫 理 安 全 委 員 会 に よ る 承 認 を 得 た 。 2.3 結 果 2.3.1 参 加 者 の 背 景 参 加 者 9 名 の 平 均 年 齢 は 39.0 歳 ( 32-42, SD= 3.6)、 夫 の 平 均 年 齢 は 40.6 歳 (32-45, SD= 4.7) で あ っ た 。 通 院 期 間 は 平 均 8.0 年 ( 5 年 10 ヶ 月 -12 年 1
ヶ 月, SD= 2 年 3 ヶ 月 ) で あ っ た 。 結 婚 か ら 当 該 施 設 の 受 診 ま で に 要 し た 期 間 は 、す で に 不 妊 治 療 に よ っ て 1 人 の 子 ど も を 出 産 し 第 2 子 の 妊 娠 を 希 望 し て 通 院 し て い る 1 名 を 除 け ば 、 平 均 2.0 年 ( 6 ヶ 月 -4 年 7 ヶ 月 , SD= 1 年 5 ヶ 月 )で あ っ た 。こ の 参 加 者 は 第 1 子 を 出 産 し て い る 点 で 他 の 参 加 者 と 回 答 結 果 が 異 な る 可 能 性 も 予 想 し た が 、実 際 に は 第 1 子 を 出 産 し て い る こ と に 起 因 す る“ 明 ら か に 異 質 の 回 答 ”は 認 め ら れ な か っ た の で 、他 の 参 加 者 と 合 わ せ て 分 析 し た 。 参 加 者 全 員 が 、 面 接 時 に は 体 外 受 精 を 受 け て い た 。6 名 が 職 業 を 持 っ て い た(2 名 は 自 営 業 、2 名 は パ ー ト 勤 務 、2 名 は フ ル タ イ ム 勤 務 )。 5 名 は 不 妊 治 療 に よ っ て 妊 娠 し た 経 験 を 1~ 3 回 持 っ て い た が 、1 名 を 除 き 出 産 に は 至 っ て い な か っ た 。出 産 に 至 っ た 1 名 は 、第 2 子 を 希 望 し て 治 療 を 継 続 し て い た 。過 去 に 半 年 か ら 1 年 程 度 、他 の 施 設 に お い て 不 妊 の 検 査 ま た は 治 療 を 受 け た 経 験 を 持 つ 者 は 5 名 で あ っ た 。初 診 時 に お い て 治 療 期 間 の め や す を も っ て い た 者 は 1 名 の み で あ り 、具 体 的 に 治 療 の 断 念 時 期 を 考 え た 経 験 を 持 つ 者 が 5 名 、ホ ル モ ン 療 法 等 の た め に 通 院 は 継 続 し て い る が 、意 図 的 に 体 外 受 精 の 治 療 周 期 に 入 ら な か っ た 経 験( 治 療 休 止 の 経 験 )を 持 つ 者 は 5 名 で あ っ た 。受 診 前 に 婦 人 科 系 疾 患 の 既 往 を 持 つ 者 が 1 名 い た が 、体 外 受 精 ・ 胚 移 植 の 治 療 周 期 に 入 る 以 前 か ら 経 済 的 な 問 題 を 持 っ て い た 者 は い な か っ た 。 2.3.2 参 加 者 の 語 り か ら 得 ら れ た 治 療 の 継 続 要 因 分 析 結 果 を 表 2-1 に 示 す 。参 加 者 の 語 り か ら 得 ら れ た 、不 妊 治 療 を 長 期 継 続 で き た 要 因 は 、1) 夫 の 支 え 、2) 治 療 環 境 へ の 好 感 、3) 治 療 計 画 の 自 己 管 理 、4) 時 間 的 め や す の な い 通 院 継 続 、 の 4 つ の カ テ ゴ リ に 集 約 す る こ と が で き た 。ま た 、女 性 の 不 妊 治 療 の 経 過 と 4 つ の カ テ ゴ リ の 時 間 的 関 係 に つ い て 、 各 カ テ ゴ リ の 出 現 時 期 を 考 慮 に 入 れ て 図 2-1 に 示 す 。 以 下 に 、 カ テ ゴ リ ご と の サ ブ カ テ ゴ リ ( < > で 表 示 )、 お よ び 参 加 者 の 語 り の 例 (「 斜 字 」で 表 示 ) を 示 す 。 1) 夫 の 支 え こ の カ テ ゴ リ は 、3 つ の サ ブ カ テ ゴ リ ; < 夫 の い た わ り や な ぐ さ め > < 夫 の 治 療 へ の 参 加 や 協 力 > < 夫 と の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン > で 構 成 さ れ る 。参 加 者 9 名 全 員 が 、不 妊 治 療 を 受 け る た め の 、夫 の 精 神 的 な 支 え の 重 要 性 を 強 調 し て い た 。 例 え ば 、 体 外 受 精 の た め に 必 要 な 、 採 卵 前 の 過 排 卵 刺 激 や 、 胚 移 植 後 の 黄 体 補 充 の た め の ホ ル モ ン 剤 投 与 の 結 果 、ほ と ん ど の 対 象 者 が 頭 痛 や 嘔 気 な ど の 副 作 用 に 悩 ま さ れ て い た り 、治 療 が 失 敗 す る た び に 傷 つ き 落 胆 し
た り し て い た 。し か し 、そ の 苦 痛 に 対 処 し 、立 ち 直 っ て 次 の 治 療 へ と 向 か う に あ た り 、 通 院 期 間 全 体 を 通 し て 夫 た ち の な ぐ さ め や 励 ま し が 有 益 だ っ た 、 と 語 っ て い た 。 「 ホ ル モ ン の バ ラ ン ス が か な り 崩 れ る ん で 、頭 痛 が し た り 、い ろ い ろ あ っ た ん で す ・ ・ ・ 。 夫 は 私 に 、 無 理 を し な い よ う に っ て 言 っ て く れ ま し た 。」 「 何 度 も 治 療 が 失 敗 し て 、落 ち 込 ん だ け ど 、夫 が『 も う あ き ら め て も い い ん だ よ 』 っ て 言 っ て く れ た の で 、 な ぐ さ め ら れ ま し た 。」 2) 治 療 環 境 へ の 好 感 こ の カ テ ゴ リ は 、3 つ の サ ブ カ テ ゴ リ ; < ス タ ッ フ へ の 信 頼 や 慣 れ > < 利 用 し や す い 施 設 の シ ス テ ム > < 通 院 仲 間 の 存 在 > で 構 成 さ れ る 。主 治 医 が 多 忙 の た め 、参 加 者 と は 必 要 最 低 限 の 接 触 時 間 し か も つ こ と が で き な か っ た こ と に つ い て 、9 名 全 員 が 、 受 診 当 初 に は 驚 き や 悲 し み を 覚 え て い た 。 し か し 彼 女 ら に と っ て 、 そ の 後 の 長 い 治 療 期 間 中 、 通 院 期 間 の 延 長 に 伴 い 徐 々 に 、 看 護 師 、外 来 職 員 、 胚 培 養 士 、心 理 士 な ど の コ メ デ ィ カ ル ス タ ッ フ か ら 心 理 的 サ ポ ー ト を 受 け た こ と が 、医 師 と の 面 接 時 間 の 短 さ を 補 っ て き た よ う で あ っ た 。そ し て 、こ れ ら の 施 設 が 不 妊 治 療 を 専 門 に し て い る こ と 、心 理 士 に よ る カ ウ ン セ リ ン グ を 受 け ら れ る こ と 、施 設 が 開 催 す る ピ ア グ ル ー プ 等 の 会 に 参 加 で き る こ と 、な ど の 理 由 か ら 、た と え 周 囲 か ら の 勧 め が あ っ て も 、他 施 設 へ の 転 院 を 考 え た こ と は な か っ た と 述 べ て い た 。 「 看 護 師 長 さ ん で も 、ス タ ッ フ ナ ー ス さ ん で も 、臨 床 心 理 士 さ ん で も 、外 来 で ち ょ っ と つ か ま え て 話 を 聞 く こ と が で き て 、皆 さ ん 丁 寧 に 答 え て く だ さ る の が 、 よ か っ た で す 。」 「 こ こ に は お 腹 の 目 立 つ 人 は い な い で す か ら ね 。」 「 ○ ○( サ ポ ー ト グ ル ー プ の 名 称 )に 参 加 し た 時 に 通 院 仲 間 が で き て 、そ の 人 と は 治 療 の サ イ ク ル が よ く 合 う か ら 待 合 室 で 話 し た り 、メ ー ル 交 換 し た り ・ ・ 。」 3) 治 療 計 画 の 自 己 管 理 こ の カ テ ゴ リ は 、3 つ の サ ブ カ テ ゴ リ ; < 通 院 ス ケ ジ ュ ー ル の 体 得 > < 日 常 生 活 の 維 持 > < 治 療 に よ る 妊 娠 の 経 験 > で 構 成 さ れ る 。参 加 者 は 皆 、各 自 の 身 体 的 ・ 経 済 的 ・ 精 神 的 な 状 況 と 、子 ど も が ほ し い 気 持 ち と を 比 較 し な が ら 、繰 り 返 し 体 外 受 精 ・ 胚 移 植 を 受 け る こ と に よ り 治 療 周 期 の ス ケ ジ ュ ー ル を 体 得 し 、 治 療 を 受 け る ペ ー ス を 自 己 管 理 し て い た 。 参 加 者 9 名 中 5 名 は 、体 外 受 精・胚 移 植 を 数 回 繰 り 返 し た 後 に 治 療 継 続 中
に 治 療 の 断 念 時 期 を 具 体 的 に 検 討 し た こ と が あ っ た 。ま た 6 名 は 実 際 、体 外 受 精 ・ 胚 移 植 の 合 間 に 、積 極 的 な 治 療 休 止 ま た は 中 断 を 経 験 し て い た 。治 療 継 続 の 障 害 と し て は 、 身 体 的 ・ 経 済 的 ・ 精 神 的 な 困 難 が あ っ た 。 身 体 的 な 困 難 に つ い て は 特 に 、9 名 中 7 名 が 調 節 卵 巣 刺 激 を 行 っ て も 卵 胞 が 形 成 さ れ な い 、ま た は 卵 胞 の 中 に 卵 子 が 確 認 さ れ な い な ど の 理 由 で 採 卵 で き な い な ど の 身 体 的 な 問 題 に よ り 、 治 療 継 続 上 の 困 難 を 感 じ て い た 。良 好 な 卵 子 ・ 受 精 卵 が で き る よ う 、治 療 周 期 の 間 隔 を 長 め に と る こ と で 対 処 し て い る 事 例 も あ っ た 。 一 方 、知 人 の 妊 娠 ・ 出 産 や 、自 分 自 身 の 妊 娠 後 の 流 産 に よ る 落 胆 な ど の 精 神 的 な ダ メ ー ジ は 、一 時 的 な 治 療 休 止 の 要 因 と は な っ て い た が 、治 療 断 念 の 要 因 に は な っ て い な か っ た 。自 分 が 妊 娠 ・ 流 産 し た 経 験 は 、 む し ろ そ の 後 の 治 療 継 続 意 欲 を 高 め た と い う 。 「 最 近 は も う 、そ ん な に ガ ツ ガ ツ 、年 に 何 回 も 治 療 し な く な っ て 、年 に 2 ~ 3 回 ぐ ら い か な 。」 「 自 然 の 流 れ で 40 超 え て も ( 治 療 を ) や っ て て … で も そ ろ そ ろ や め よ う か な ぁ っ て 思 っ て た ら 、妊 娠 し た ん で 、も う ち ょ っ と や っ て み よ う か な っ て … 」 4) 時 間 的 め や す の な い 通 院 継 続 こ の カ テ ゴ リ は 、4 つ の サ ブ カ テ ゴ リ ; < 初 回 受 診 を ゴ ー ル の よ う に 感 じ る > < 通 院 開 始 後 早 期 の 妊 娠・出 産 へ の 不 十 分 な 知 識 > < 治 療 期 間 が 長 期 化 し て も 見 え て こ な い ゴ ー ル > < 自 分 と 夫 の 挙 児 へ の 思 い と 通 院 継 続 の 葛 藤 > で 構 成 さ れ る 。参 加 者 は 皆 、受 診 前 に は 、不 妊 治 療 施 設 を 受 診 す る こ と 自 体 を 1 つ の ゴ ー ル の よ う に 感 じ て い た と い う 。つ ま り 、不 妊 治 療 を 受 け る こ と と 、子 ど も が で き る こ と を 、等 し く 捉 え て い た と い う こ と で あ る 。こ の た め 、初 診 時 に 検 査 結 果 ・ 治 療 方 法 ・ 妊 娠 の 確 率 な ど に 関 す る 情 報 を 提 供 さ れ た に も か か わ ら ず 、 参 加 者 9 名 中 8 名 が 、初 診 当 時 に は「 す ぐ に 子 ど も が で き る 」 と 考 え て い た 。 そ の た め 、「 治 療 を 何 年 続 け よ う 」 と い っ た 治 療 期 間 の 明 確 な め や す は 、 考 え て い な か っ た 。 し か し 実 際 に は 治 療 は 長 期 化 し た 。 自 分 の 年 齢 が 30 歳 に 達 す る と 「 35 歳 ま で 続 け よ う 」、35 歳 に 達 す る と「 40 歳 ま で 続 け よ う 」と 、少 し ず つ 治 療 の 断 念 時 期 を 具 体 的 に 考 え 始 め る よ う に な っ た と い う 。さ ら に 、調 査 時 点 で 既 に 40 歳 に 達 し て い た 6 名 は 、 自 分 の 年 齢 よ り も 、 卵 子 や 受 精 卵 の 質 の 低 下 を 、治 療 の た び に 気 に す る よ う に な っ て い た 。そ し て 、卵 の 質 の 低 下 が 著 明 で な い 場 合 に は 、 閉 経 前 の 45 歳 前 後 を 「 治 療 を 断 念 す る べ き 時 期 」 と 考 え
る よ う に な っ て き た と い う 。 参 加 者 ら は 通 院 開 始 か ら 現 在 に 至 る ま で 、葛 藤 や 知 識 不 足 な ど の 様 々 な 要 因 か ら 通 院 期 間 の 時 間 的 な め や す を も つ こ と が で き な い 状 況 に あ っ た 。 「 夫 と 話 し て い た ん で す 。― ど う し て も 子 ど も が で き な か っ た ら 病 院 に 行 け ば い い よ ね 、 最 終 手 段 と し て 病 院 に 行 け ば い い よ ね 、 と 。」 「 な ん か す ぐ に 、1 年 も 2 年 も し な い う ち に 、 子 ど も が で き る と 思 っ て た か ら 。 本 当 に 簡 単 に で き る と 思 っ て て 。」 「 最 初 は 、 治 療 期 間 の め や す は 考 え て い な か っ た で す ね 。 続 け て い く 中 で 、 40 歳 く ら い ま で 続 け よ う と か 、 い よ い よ 40 歳 近 く に な っ た か ら “ ま だ 卵 が 採 れ る う ち は 続 け よ う ”と か 、ち ょ っ と ず つ 延 び て い き ま し た ・・・ 。」 「 今 の 夫 婦 2 人 だ け の 生 活 で も 、十 分 い い か な っ て 思 う 気 持 ち も あ る ん で す よ 。 で も 、 私 が ま だ 39 歳 だ か ら 、 治 療 を や め る こ と が で き な い 。」 2.4 考 察 2.4.1 女 性 が 不 妊 治 療 を 長 期 継 続 し た 要 因 本 研 究 の 参 加 者 は 、全 員 が 通 院 開 始 か ら 体 外 受 精 ・ 胚 移 植 の 治 療 周 期 を 数 回 繰 り 返 す 前 ま で は 積 極 的 に 通 院 を 継 続 し て い た が 、そ の 後 、結 果 3)に 示 さ れ た よ う に 、5~ 6 名 が 具 体 的 な 治 療 断 念 の 時 期 を 検 討 や 治 療 の 休 止 を 経 験 し て い た 。 参 加 者 た ち の 平 均 年 齢 は 本 調 査 時 に は 39.0 歳 で あ り 、 結 婚 か ら 受 診 ま で が 平 均 2 年 、通 院 期 間 が 平 均 8 年 で あ っ た こ と か ら 、通 院 を 開 始 し た 年 齢 は 31 歳 前 後 で あ っ た こ と に な る 。女 性 の 妊 孕 力 は 30 歳 を 過 ぎ る と 毎 年 3.5% 低 下 し て ゆ く ( Rosenthal 2002; 荒 木 2003) と い わ れ て い る こ と か ら 、参 加 者 た ち は 妊 孕 力 が 低 下 し 始 め て か ら 不 妊 治 療 を 開 始 し た こ と に な る 。 こ の た め や が て 、結 果 4)に 示 さ れ た よ う に 、胚 の 質 が 良 く な い な ど の 身 体 的 な 問 題 が 、 治 療 の 断 念 に つ い て 考 え さ せ る 要 因 と な っ て き て い た 。 ま た 、 参 加 者 た ち は 一 致 し て 、 結 果 1) に 示 さ れ た よ う に 「 治 療 を 長 期 継 続 で き た 最 大 の 要 因 は 夫 の 支 え で あ る 」と 述 べ て い た 。こ こ で 言 う 夫 の 支 え や 協 力 と は 、採 精 な ど の 身 体 面 の こ と や 治 療 費 な ど の 経 済 面 の こ と な ど で は な く 、彼 女 ら へ の 気 づ か い 、な ぐ さ め や 励 ま し な ど の 、精 神 的 な 支 え を 意 味 し て い る 。 不 妊 治 療 で は カ ッ プ ル が 協 力 し て 治 療 に 臨 む こ と が 望 ま し い (Beaurepaire et al 1994; 平 山 他 2001; 白 井 2002; 朝 澤 2012) と は い え 、 実 際 、 特 に 体 外 受 精 で は 、 女 性 の 受 診 機 会 が 多 い た め 、 身 体 的 ・ 精 神 的 な 負 担 が 女 性 側 に 偏 り や す い 。不 妊 治 療 を 長 く 続 け る 過 程 に お い て 、女 性 は 治 療 の 不 成 功 に よ る 落 胆 や 傷 つ き を 何 度 も 経 験 す る( 平 山 他 1998)。そ の た び に 夫 た ち が 、妻 で あ る 本 研 究 の 参 加 者 を 精 神 的 に 支 え た こ と こ そ 、参 加 者 が 長
期 に わ た り 治 療 を 継 続 す る た め に 最 も 必 要 で あ っ た 条 件 と 言 え そ う で あ る 。 し か し 、 結 果 2) で 示 さ れ た よ う に 、 参 加 者 は 必 ず し も 常 に 、 治 療 に 高 い 満 足 感 を 味 わ っ て い た わ け で は な か っ た 。特 に 治 療 の 初 期 で は 、診 療 時 間 の 短 さ が 最 大 の 不 満 で あ っ た 。日 本 に お け る 不 妊 治 療 実 施 施 設 で の 平 均 診 療 時 間 は 10 分 前 後 と 報 告 さ れ て お り ( 福 田 他 2001)、 医 師 が 必 要 最 小 限 の 情 報 を 一 方 的 に 提 供 す る だ け で 診 察 を 終 え て し ま う 可 能 性 も あ る 。こ う し た 状 況 下 で 、医 師 が 個 々 の 患 者 と 信 頼 関 係 を 築 い て い く こ と は 難 し い だ ろ う 。こ れ を 補 っ て き た の が 看 護 師 な ど の コ メ デ ィ カ ル ス タ ッ フ で あ る と い う こ と も 、 結 果 2)で 示 さ れ た 。コ メ デ ィ カ ル ス タ ッ フ の 努 力 に よ っ て 、参 加 者 は 比 較 的 良 好 な 患 者 - 治 療 者 関 係 を 経 験 す る こ と が で き 、長 期 通 院 の 間 に 診 療 時 間 の 短 さ に も 少 し ず つ 「 慣 れ る 」 こ と が で き て い た 。 先 行 研 究 に お い て は 、不 妊 症 の 女 性 が「 自 分 の 人 生 の 計 画 が 思 う よ う に な ら な い 」、「 自 分 の 体 も 思 う よ う に 機 能 し な い 感 じ が す る 」、「 治 療 の ス ケ ジ ュ ー ル に 縛 ら れ た 生 活 に な る 」と 感 じ る こ と が 、低 い 自 己 効 力 感 、低 い 自 尊 心 、 コ ン ト ロ ー ル 感 覚 の 喪 失 な ど の 深 刻 な 影 響 を も た ら す と 報 告 さ れ て い る( 平 山 2001)。 し か し 本 研 究 の 参 加 者 の 場 合 は 、 結 果 3) に 示 さ れ た よ う に 、 治 療 継 続 過 程 に お い て 徐 々 に 身 体 的 ・ 経 済 的 ・ 精 神 的 な コ ン ト ロ ー ル を 身 に つ け 、自 分 に 合 っ た ペ ー ス で 治 療 を 受 け る よ う に な っ て い っ た 。彼 女 ら が こ の よ う な 適 応 力 、対 処 能 力 を 豊 富 に 有 し て い た こ と が 、不 妊 治 療 を 長 期 継 続 し た 要 因 の 一 つ で あ る と 推 測 さ れ る 。 同 時 に 興 味 深 い の は 、 結 果 3) に 示 さ れ た よ う に 、 通 院 仲 間 の 妊 娠 ・ 出 産 に よ る 落 胆 や 、参 加 者 自 身 の 不 妊 治 療 後 の 流 産 に よ る 悲 嘆 な ど が 、必 ず し も 治 療 断 念 を 考 え る こ と に つ な が ら な か っ た 、と い う 事 実 で あ る 。む し ろ 参 加 者 は 、一 度 で も 妊 娠 し た 経 験 を「 子 ど も を 持 つ こ と に 一 歩 近 づ い た 証 」と 捉 え 、 流 産 の 後 に 治 療 を 一 時 休 止 と し て も 、“ 今 回 は 出 産 に 至 ら な か っ た け れ ど も こ の ま ま 治 療 を 継 続 し て い れ ば 出 産 に こ ぎ つ け る か も し れ な い ”と 考 え 、 か え っ て 治 療 意 欲 を 高 め て 治 療 を 再 開 し て い た 。ま た 、と も に 通 院 し て き た 仲 間 の 妊 娠 を 知 っ た 時 に は 、 い っ た ん 劣 等 感 や 孤 立 感 を 覚 え て 落 胆 し て も 、 や が て そ の 感 情 が“ 次 は 自 分 に チ ャ ン ス が 巡 っ て く る か も し れ な い ”と い う 期 待 に 変 わ っ て い っ た と い う 。こ れ ま で の 研 究 で は 、不 妊 治 療 後 の 流 産 経 験 は 身 体 的 ・ 精 神 的 な 負 担 の 双 方 を も た ら す の で 、心 理 相 談 等 を 活 用 す る 必 要 が あ る (Sills et al 2004)、 と 言 わ れ て き た 。 し か し な が ら 、 不 妊 治 療 を 長 期 継 続 し て き た 本 研 究 の 参 加 者 た ち は 、 落 胆 や 悲 嘆 に 遭 遇 す る た び に 、“ 価 値 の 切 り 上 げ ” な ど の 認 知 的 対 処 ・ 情 動 焦 点 型 対 処 を 駆 使 す る こ と に よ り (Lasarus et al 1991)、そ の 経 験 を か え っ て 前 向 き に 捉 え 、不 妊 治 療 を 継 続 す
る 動 機 づ け に 変 え て い た 。 た だ し 、こ れ を も っ て 、望 ま し い 不 妊 治 療 が 実 現 さ れ て い た 、と 結 論 す る こ と は で き な い 。 結 果 4) に 示 さ れ た よ う に 、 参 加 者 た ち は 治 療 開 始 時 に は 治 療 期 間 の め や す を も っ て い な か っ た 。こ の 結 果 に つ い て は 、何 通 り か の 解 釈 が 可 能 で あ る 。 例 え ば 、 初 め か ら 治 療 期 間 の め や す を も っ て い た 患 者 は 5 年 以 内 に 治 療 を 断 念 し た の で 、本 研 究 に 参 加 し な か っ た と い う 可 能 性 も あ る 。 た だ し 、 最 初 か ら 治 療 期 間 の め や す を も っ て い る 患 者 が ど れ ほ ど い る の か 、 と い う デ ー タ は 得 ら れ て い な い 。 い ず れ に し て も 今 回 の 結 果 4) は 、 先 行 研 究 ( 實 﨑 他 2007) に お い て 「 不 妊 当 事 者 は 、 受 診 以 前 か ら 悩 み 始 め て い る の で 、受 診 す る こ と が 最 初 の ゴ ー ル の よ う に 思 え る 場 合 が あ る 」と 報 告 さ れ て い る こ と と 一 致 す る 。ま た 、不 妊 治 療 を 受 け る 女 性 の 一 部 は 、初 診 時 に は 自 分 が 不 妊 だ と い う 認 識 を も た ず 、不 妊 原 因 の 検 索 と 治 療 を 同 時 に 進 め る 中 で 初 め て 、 少 し ず つ 自 ら の 不 妊 を 認 識 し 始 め る ( 阿 部 2007) と い う 。 初 診 時 に 自 分 が 不 妊 だ と 思 っ て い な い 患 者 は 、そ の 時 点 で 不 妊 に 関 す る 検 査 ・ 治 療 ・ 妊 娠 率 等 の 説 明 を 受 け て も 、 こ れ を 自 分 に 関 わ る 事 と し て 認 識 で き ず 、 不 妊 治 療 さ え 受 け れ ば す ぐ に 子 ど も が で き る と 考 え て し ま う 可 能 性 が あ る だ ろ う 。そ の よ う な 場 合 に は 、治 療 期 間 の め や す に つ い て 考 え な い ま ま 治 療 を 開 始 し た こ と に よ り 、漫 然 と 治 療 を 長 期 化 す る こ と に も つ な が っ て い く 可 能 性 が 考 え ら れ る 。 こ こ で 問 題 な の は 、日 本 の 多 く の 不 妊 治 療 施 設 で は 、初 診 時 や 治 療 の ス テ ッ プ ア ッ プ 時 お よ び 胚 移 植 時 に は 妊 娠 率 に つ い て 医 学 的 な 情 報 を 提 供 す る も の の 、そ れ 以 外 の 時 期 で は 患 者 の 希 望 が な け れ ば 説 明 や カ ウ ン セ リ ン グ を 行 わ な い こ と が 多 い ( 實 﨑 他 2003)、と 報 告 さ れ て い る こ と で あ る 。本 研 究 の 参 加 者 た ち は 、治 療 を 続 け る 上 で 加 齢 と い う 身 体 的 な 問 題 に 直 面 し 、自 ず か ら 治 療 の 断 念 時 期 に つ い て 具 体 的 に 検 討 す る よ う に な っ て い た 。し か し な が ら 、も し も 通 院 を 開 始 し た 年 齢 が 若 く 、数 年 以 上 に わ た り 治 療 段 階 の 変 更 が な け れ ば 、こ の 間 は 医 学 的 情 報 を 提 供 さ れ る 機 会 が き わ め て 乏 し く な る 可 能 性 が あ る 。不 妊 治 療 を 長 期 継 続 し て い る 女 性 へ の 看 護 を 行 う 上 で は 、仮 に 、 「 子 ど も が ほ し い 」 と い う 熱 意 を 低 下 さ せ る 理 由 や 、「 子 ど も を 得 る 可 能 性 は 低 い 」と い う 治 療 者 か ら の 説 明 が な け れ ば 、彼 女 ら は 治 療 断 念 の 機 会 を 見 失 っ て し ま う 可 能 性 も あ る と い う こ と に 留 意 す べ き で あ る 。 2.4.2 不 妊 外 来 へ の 通 院 開 始 後 早 期 の 患 者 満 足 度 に 関 連 す る 要 因 へ の 示 唆 最 後 に 、 本 研 究 に よ り 明 ら か に な っ た 、 女 性 が 不 妊 治 療 を 長 期 継 続 し た 4 つ の 要 因 を 通 院 開 始 後 早 期 の 患 者 満 足 度 と の 関 連 要 因 の 分 析 に 活 用 す る こ
と の 可 能 性 に つ い て 考 察 す る 。 前 述 の よ う に 、 不 妊 治 療 は カ ッ プ ル が 協 力 し て 取 り 組 む こ と が 望 ま し く (Beaurepaire et al 1994)、「 夫 の 支 え 」 は 主 要 な 関 連 要 因 で あ る と 考 え ら れ る 。治 療 施 設 の 環 境 に 順 応 で き る か 否 か は 患 者 満 足 度 に 影 響 を 与 え る と 考 え ら れ る こ と か ら 、「 治 療 環 境 へ の 好 感 」 に つ い て も 有 用 で あ ろ う 。「 治 療 計 画 の 自 己 管 理 」 に つ い て は 、 不 妊 の 検 査 、 治 療 の 特 徴 で あ る 、 女 性 の 月 経 周 期 に 合 わ せ て 受 診 日 が 決 定 す る こ と を 考 え る と 、通 院 開 始 後 早 期 か ら 持 ち 合 わ せ て お く こ と が 望 ま し い 要 因 で あ る こ と か ら 、患 者 満 足 度 と の 関 連 を 分 析 す る 上 で 有 用 で あ る と 考 え る 。 一 方 、「 時 間 的 め や す の な い 通 院 継 続 」 に つ い て は 、め や す を も た ず に 主 体 的 に 治 療 を 継 続 し て き た と い う 面 と め や す を も た な か っ た た め に 通 院 を 断 念 す る き っ か け を 失 い 長 期 化 す る に 至 っ た と い う 面 が 考 え ら れ る 。患 者 満 足 度 の 関 連 要 因 と な り 得 る か ど う か は 未 知 数 で あ る が 、通 院 期 間 の め や す の 有 無 と 通 院 開 始 後 早 期 の 患 者 満 足 度 と の 関 連 が 明 ら か に な れ ば 、初 回 受 診 時 に 必 要 な 情 報 提 供 内 容 の 新 た な 項 目 と し て 提 案 す る こ と に つ な が る 可 能 性 が あ る 。ま た 、 現 在 は 明 ら か に さ れ て い な い 、初 回 受 診 患 者 が 通 院 期 間 の め や す を も っ て い る か 否 か に つ い て 把 握 す る こ と は 、 通 院 開 始 後 初 期 の 心 理 社 会 的 ケ ア の あ り 方 を 検 討 し て い く う え で 見 逃 せ な い ポ イ ン ト で あ る と 考 え ら れ る 。 以 上 か ら 、「 夫 の 支 え 」「 治 療 環 境 へ の 好 感 」「 治 療 計 画 の 自 己 管 理 」「 時 間 的 め や す の な い 通 院 継 続 」の 4 つ の 要 因 は 、通 院 開 始 後 早 期 の 患 者 満 足 度 と の 関 連 要 因 を 検 討 す る 際 に 重 要 と 考 え ら れ る 。 2.5 結 論 不 妊 治 療 を 長 期 に わ た り 継 続 し て い る 女 性 9 名 に 面 接 調 査 を 行 っ た 結 果 、 治 療 を 継 続 し た 要 因 は 、1) 夫 の 支 え 、2) 治 療 環 境 へ の 好 感 、3) 治 療 計 画 の 自 己 管 理 、4) 時 間 的 め や す の な い 通 院 継 続 、 の 4 つ の カ テ ゴ リ に 集 約 さ れ た 。こ れ ら 4 つ の 要 因 は 、不 妊 患 者 カ ッ プ ル の 通 院 開 始 後 早 期 の 満 足 度 と の 関 連 要 因 を 検 討 す る 際 に 重 要 と 考 え ら れ る 。 2.6 研 究 の 限 界 と 今 後 の 課 題 本 研 究 の 調 査 対 象 施 設 で は 、3 ヶ 月 の 調 査 期 間 中 、 外 来 患 者 ( 延 べ 5,400 人 ) の う ち 5 年 以 上 の 不 妊 治 療 継 続 者 は 31 名 の み で あ っ た 。 し か も 、 そ の う ち 9 名 か ら し か 本 研 究 へ の 協 力 同 意 が 得 ら れ な か っ た 。し た が っ て 、こ の 参 加 者 か ら 得 ら れ た デ ー タ を 、不 妊 治 療 を 長 期 継 続 し て い る 女 性 す べ て に 一 般 化 す る こ と は で き な い 。し か し 、こ の デ ー タ か ら 示 唆 さ れ た こ と は 、今 後
の 生 殖 医 療 の あ り 方 に つ い て 考 察 し た り 、不 妊 治 療 を 短 期 で 終 結 し た 患 者 の 満 足 度 や 負 担 感 に つ い て 研 究 を 進 め た り す る 上 で 、有 用 な 手 が か り に な る と 考 え ら れ る 。 今 後 の 研 究 課 題 と し て 、第 一 に 、通 院 開 始 後 早 期 に は 治 療 期 間 の め や す を 考 え る こ と が 少 な い と い う 傾 向 が 、不 妊 治 療 を 受 け 始 め る 患 者 一 般 に 当 て は ま る の か 、治 療 を 長 く 続 け て き た 人 だ け の 特 徴 な の か を 明 ら か に す る 必 要 が あ る 。同 時 に 、こ の こ と に つ い て 通 院 開 始 後 早 期 の 患 者 が ど の よ う な 説 明 を 受 け て い る か 、と い う 実 態 を 確 認 す る こ と も 必 要 で あ る 。第 二 に 、こ う し た 治 療 の 見 通 し に 関 す る 患 者 の 認 識 、お よ び 患 者 た ち が 有 す る 対 処 能 力 や 社 会 資 源 と 、 不 妊 治 療 へ の 満 足 度 や そ の 後 の 受 療 行 動 ( 治 療 初 期 の 中 断 や 終 結 、 ド ク タ ー シ ョ ッ ピ ン グ な ど )と の 関 連 を 検 討 す る こ と が 、重 要 な 検 討 課 題 で あ る 。 本 章 で の 成 果 に 基 づ き 、次 の 段 階 と し て 、不 妊 外 来 へ の 通 院 開 始 後 早 期 の 患 者 の 満 足 度 と こ れ に 関 連 す る 要 因 に つ い て の 質 問 紙 調 査 を 行 っ た 。そ の 結 果 に つ い て は 、 次 章 以 下 で 述 べ る 。 文 献 阿 部 正 子 (2007). 体 外 受 精 を 受 療 し て い る 不 妊 女 性 の 治 療 継 続 の 経 験 的 プ ロ セ ス. 日 本 生 殖 看 護 学 会 誌 . 4, 34-41. 赤 城 惠 子 (1998). 不 妊 状 態 の 女 性 の 心 理 . ペ リ ネ イ タ ル ケ ア . 17, 294-298. 荒 木 重 雄 (2003). 不 妊 治 療 ガ イ ダ ン ス . 第 3 版 , 10. 医 学 書 院 , 東 京 . 朝 澤 恭 子 (2012). 夫 婦 で 不 妊 治 療 を 受 け る 男 性 の 体 験 . 日 本 生 殖 看 護 学 会 誌. 9(1), 5-14.
Beaurepaire J, Jones M, Thieing P, et al (1994). Psychosocial adjustment to infertility and its treatment; Male and female responses at different stages of IVF/ET treatment. Journal of Psychosomatic Research. 38, 229 -240.
Blenner JL (1992). Stress and Mediators: patients ’ perceptions of infertility treatment. Nursing Research. 41, 92 -97.
Craig S (1990). A medical model for infertility counseling. Australian Family Physician. 19, 491-500.
福 田 貴 美 子, 井 上 尚 美 , 松 本 典 子 他 (2001). ART 診 療 と コ ン サ ル テ ー シ ョ ン に お け る IVF コ ー デ ィ ネ ー タ ー の 必 要 性 と 役 割 に 関 す る 研 究 . 日 本 不 妊 学 会 雑 誌. 46, 11-18.