ヒツジインヒビン a サブユニットの
能動免疫が黒毛和種牛の卵巣機能に及ぼす影響と
その過排卵誘起処置および双子生産への適応性
竹之内直樹*ῌ大島一修**ῌ島田和宏***ῌ高橋政義***ῌ
百目鬼郁男****ῌ門司恭典****
῏平成 +/ 年 / 月 ,, 日受付ῌ平成 +/ 年 3 月 ,. 日受理ῐ 要約 : インヒビン免疫はウシで排卵率を高めることが知られているῌ 本研究では῍ 組換え体ヒツジインヒビ ン a サブユニットを抗原とした黒毛和種牛への免疫が卵巣反応に及ぼす影響を検討したῌ また῍ 過排卵誘起 処置ならびに双子生産へのインヒビン免疫の適応性を調べたῌ 免疫区として黒毛和種雌牛 2 頭に初回免疫時 にインヒビンワクチン , ml を投与し῍ ,2 日後に追加免疫として同量を投与したῌ 対照区の / 頭にはアジュ バントのみを投与したῌ 免疫後 ,ῌ/ ケ月の間῍ 卵巣の変化を直腸検査ならびに超音波画像により追跡したῌ 免疫区で観察した ,- 発情周期中 , および . 発情周期について῍ それぞれ過排卵誘起処置ならびに双子生産 を試みたῌ それぞれの試験に用いた供試牛は῍ 発情日に人工授精を行い῍ 過排卵誘起処置ではさらに人工授 精後 2 日目に胚回収を行ったῌ 免疫区 ῏,- 発情周期ῐ では῍ 発情卵胞 ῏+* mmῒῐ および黄体数は 1.*ῑ+.3῍ -.+ῑ+., であり῍ 対照区 ῏+0 発情周期ῐ の +.+ῑ,.,῍ +.+ῑ+.. より多かったῌ 免疫区では連続した発情周期で 複数の卵胞発育および排卵が観察されたῌ 過排卵誘起処置では῍ , 頭からそれぞれ . および 3 個の移植可能 胚が得られ῍ 胚移植の結果῍ - 頭の産子が得られたῌ 双子生産では . 頭中 + 頭で双子が生産されたῌ 以上のこ とから῍ 黒毛和種牛において組換え体ヒツジインヒビン a サブユニットの免疫は῍ 連続した発情周期で複数 の発情卵胞の発育ならびに複数排卵を誘発し῍ さらに過排卵誘起処置ならびに双子生産への応用が可能であ ることが明らかになったῌ なお῍ 本研究は῍ 性腺刺激ホルモンを併用しないインヒビン免疫のみによる過排 卵誘起処置の成功例として῍ 家畜における初の報告例であるῌ キῌワῌド : インヒビン免疫῍ 卵巣機能῍ 双子生産῍ 過排卵誘起処置῍ ウシ ῍῍῍῍῍῍῍῍῍῍῍῍῍῍῍῍῍῍῍῍῍῍῍緒
言
インヒビンは a サブユニットと b サブユニットからな る二量体の糖タンパクであり῍ 顆粒膜細胞およびセルトリ 細胞を分泌母地とし῍ 下垂体からの卵胞刺激ホルモン῏follicle stimulating hormone : FSHῐ の合成および放出
を特異的に抑制するホルモンであるῌ ウシにおいては῍ +31*年代に῍ FSH を抑制する因子として精漿中+ῐおよび 卵胞液中,ῐ でその存在が報告され῍ +320 年に卵胞液から単 離῍ 精製された-ῐ ῌ インヒビンを抗原としたホルモン免疫に関しては῍ 数多 くの報告があり῍ ウシ.ῌ+*ῐ ῍ ウマ++, +,ῐ ῍ ブタ+-, +.ῐ ῍ ヒツジ+/ῌ,.ῐ など各家畜で検討されているῌ その免疫抗原としては῍ ウ シ卵胞液からの部分的な精製物., +/ῌ+1, ,*ῐ ῍ 合成インヒビンペ プ チ ド/ῌ+*, +., +3, ,*, ,,ῌ,.ῐ ῍ 組 換 え 体 イ ン ヒ ビ ン サ ブ ユ ニ ッ ト++, +/, +2, ,+ῐ などさまざまなものが用いられ῍ 免疫方法も能 動免疫.ῌ++, +-, +/ῌ+2, ,+, ,,, ,.ῐ や受動免疫+,, +., +3, ,-ῐ などの手法が用 いられているῌ これらの報告では῍ 免疫後の血中 FSH の 増加により῍ 卵胞数の増加が誘発されること῍ かつインヒ ビンは黄体形成ホルモン分泌には影響を及ぼさないことか ら῍ 複数排卵動物では排卵数の増加῍ 単排卵動物では複数 排卵が誘発されることが共通した結論であるῌ また῍ 免疫 後の血中 FSH の増加は῍ 生体内で産生されるインヒビン 抗体が内因性のインヒビンと結合し῍ インヒビンの生物学 的活性が弱まる結果῍ 生体内でのインヒビンの作用である FSH分泌抑制が解除されることに起因するῌ ウシは単排卵動物であることから῍ 効率的生産のために 過排卵誘起処置が重要な技術であり῍ 複数排卵の誘起を特 徴とするインヒビン免疫は極めて興味深く῍ 臨床繁殖領域 への適用が期待できるῌ しかし῍ これまでのインヒビン免 疫に関する研究は῍ 内分泌学的背景の解明や卵巣反応に関 するものが多数を占めており῍ その卵巣反応を利用して家 * ** *** **** 農林水産省中国農業試験場 ῏農業ῌ生物系特定産業技術研究機構東北農業研究センタ῎ῐ 農業ῌ生物系特定産業技術研究機構近畿中国四国農業研究センタ῎ 農林水産省中国農業試験場 ῏農業ῌ生物系特定産業技術研究機構畜産草地研究所ῐ 東京農業大学農学部畜産学科 論 文 Articles 東京農大農学集報῍ .2 ῏-ῐ῍ 1+ῌ13 ῏,**-ῐ
畜の生産性への影響を検討した報告は少なく῍ 双子生産0ῐ や体外受精胚作出のための生体内卵子吸引の前処置として の適応性,/, ,0ῐ などについて῍ いくつかの検討が行われてい るのみであるῌ 本研究では組換え体ヒツジインヒビン a サブユニット を抗原とした能動免疫が῍ 黒毛和種牛の卵巣機能῍ 特に発 情卵胞の発育と排卵に及ぼす影響を明らかにするととも に῍ 過排卵誘起処置および双子生産へのインヒビン免疫の 適応性を明らかにすることを目的としたῌ
材料および方法
+ῌ 供試家畜および試験方法 農林水産省中国農業試験場畜産部 ῏現 独立行政法人農 業ῌ生物系特定産業技術研究機構近畿中国四国農業研究セ ンタ῎畜産草地部ῐ で῎養されていた῍ 正常な発情周期を 営む黒毛和種牛 +- 頭を用いたῌ 供試牛のうち 2 頭 ῏免疫 区ῐ にはワクチンを῍ 残りの / 頭 ῏対照区ῐ にはアジュバ ントのみを投与し῍ 薬物投与が卵巣機能に及ぼす影響を調 べたῌ なお῍ 原則として初回免疫は発情日に῍ 追加免疫は 初回免疫後 ,2 日目に行い῍ 免疫区ではワクチン , ml を῍ 対照区ではアジュバント , ml を῍ それぞれ頚部皮下に投 与したῌ 初回免疫後 ,ῌ/ ケ月の間῍ 全頭について卵巣の変 化を直腸検査ならびに / MHz 探触子῏UST-/22U-/, aloka, Japanῐ を装着した超音波画像診断装置 ῏SSD-0,*, aloka, Japanῐ により追跡したῌ 発情観察は適宜行ったῌ また῍ 試 験期間中῍ 定期的に血液を採取し῍ 卵巣所見と血漿中pro-gesterone ῏Pῐ ならびに estradiol-+1b ῏E,bῐ 所見とを比
較検討したῌ 免疫区で観察した発情周期中῍ 0 発情周期に ついては発情日に人工授精を行い῍ うち , 発情周期では過 排卵誘起処置を῍ 他の . 発情周期では双子生産を試みたῌ 過排卵誘起処置では人工授精後 2 日目に胚回収を行い῍ 得 られた胚の品質を調べるとともに῍ 一部の胚を移植し῍ 胚 の受胎性を調べたῌ 双子生産では῍ 人工授精後 -* 日目以降 に超音波画像診断装置を用い妊娠診断を行い῍ 妊娠個体に ついては分῍の状況を調べたῌ ,ῌ インヒビンワクチン ワクチンの作成は BROWNら+-ῐの方法に準じたῌ 免疫薬 物として῍ 大腸菌由来の組み換え体ヒツジインヒビン a サ
ブユニット῏Biotech Australia, Pty Ltd, Sydneyῐ ,/* mg をアジュバント + ml と混和しワクチン化したものを用い
たῌ アジュバントは῍ 鉱物オイルである Marcol /, ῏Esso,
Sydney, Australiaῐ 3 容と界面活性剤である Montanide
222 ῏SEPPIC, Paris, Franceῐ + 容を混和したものであるῌ
-ῌ ホルモン測定 外頸静脈よりヘパリン加容器に血液を採取後῍ 直ちに遠 心分離を開始し῍ -,*** rpm, +./ hr, .ῒ の条件下で血漿を 分離したῌ 得られた血漿はホルモン測定までῑ,*ῒ で凍結 保存したῌ ウシ血漿中 P ならびに E,b の測定は既報,1, ,2ῐ に 従って抗体固相法酵素免疫測定法により行ったῌ .ῌ 統計処理 供試牛については῍ 発情卵胞数と排卵後の黄体数に関す るデ῎タを蓄積したῌ なお῍ 発情日に直径 +* mm 以上に達 したものを発情卵胞としたῌ 得られたデ῎タについて統計 解析を行い῍ 免疫が卵巣機能に及ぼす影響を調べたῌ 統計 処理は HARVEY,3ῐの最小自乗分散分析法により行ったῌ
結
果
+ῌ 能動免疫が発情卵胞の発育と排卵に及ぼす影響 図 + に῍ 免疫牛におけるステロイドホルモンならびに卵 巣所見の推移について代表的な + 例῏JB.2-ῐ を示したῌ 本 牛では初回および追加免疫は῍ 観察期間中の + 回目の発情 周期の発情翌日および , 回目の発情周期の発情後 / 日目 ῏初回免疫後 ,2 日目ῐ に行ったῌ 初回免疫および追加免疫 を行った発情周期 ῏初回および , 回目の発情周期ῐ では῍ 単一の発情卵胞の発育とそれに続いて単排卵が観察され῍ インヒビン免疫による明瞭な変化は認められなかったῌ -回目の発情周期では῍ 初回免疫後 ., 日目に発情が観察さ れ῍ -3 個の発情卵胞の発育を認めたῌ 発情卵胞のうち , 個 が排卵し῍ 正常な形態を有する黄体とῌ腫様黄体がそれ ぞれ + 個ずつ形成されたῌ なお῍ 直腸検査で波動感をとも なわず十分な容積と柔軟性を有し῍ かつ超音波画像では内 腔が観察されず῍ エコ῎レベルが十分に低く῍ 実質との境 界がエコ῎レベルにより明瞭に区別できるものを正常な形 態を有する黄体としたῌ . 回目の発情周期では῍ 発情は初 回免疫後 01 日目に鈍性に経過したが῍ 発情卵胞 3 個のう ち . 個が排卵したῌ 形成された黄体は全て正常な形態を有 していたῌ その後῍ 初回免疫後 31 日目に発情が発現し῍ こ の / 回目の発情周期では , 個の発情卵胞の発育῍ 排卵なら びに正常な形態を有する , 個の黄体形成が観察されたῌ 0 および 1 回目の発情周期では῍ 免疫による卵巣反応は消失 し῍ 単排卵性に経過したῌ なお῍ 0 および 1 回目の発情周期 における発情は῍ 初回発情後 ++3῍ +.* 日目にそれぞれ観察 され῍ 1 回目の発情周期では῍ 人工授精の結果῍ 単胎妊娠が 成立したῌ ウシ血漿中 P および E,b は発情卵胞ならびに 黄体数をそれぞれ反映して推移したῌ すなわち῍ 複数の排 卵が観察された -ῌ/ 回目の発情周期における発情期の E,b ピ῎ク値ならびに黄体開花期の P 値はそれぞれ +0.+ῌ--.. pgῌml, -.1/ῌ,1.* ngῌml であり῍ 単排卵性に経過した他の 発情周期での値 ῏E,b : 2.*ῌ++.* pgῌml, P : -.+ῌ1.+ ngῌmlῐ と比較して高く推移したῌ なお῍ 本牛における複数の発情 卵胞の発育および複数排卵は῍ 追加免疫後の最初の発情周 期 ῏観察期間中 - 回目の発情周期ῐ 以降に観察され῍ 連続 した - 発情周期の間῍ 複数の発情卵胞の発育および複数排 卵が誘発されたῌ また῍ 他の免疫牛においても῍ 免疫によ る卵巣反応は追加免疫後の発情周期以降で認められたῌ 免 疫牛 + 例 ῏JB,*/ῐ における排卵前後の超音波画像所見を 図 , に示したῌ 発情日にエコ῎フリ῎の構造物として描出 される卵胞が複数発育しており῍ 排卵日にはそれらの多く が消失したῌ 発情後 2 日目の画像では῍ 排卵日と比較して 卵巣断面積は増大しており῍ 低エコ῎レベルの構造物とし て描出される黄体が複数形成されていたῌ 竹之内ῌ大島ῌ島田ῌ高橋ῌ百目鬼ῌ門司 72供試牛における薬物処置後の卵巣所見῍ 臨床所見を表 + に示したῌ 免疫区では῍ 免疫処置後観察した ,- 発情周期中 ++発情周期で複数の排卵が観察され῍ 発情卵胞の複数の発 育ならびにそれに続く複数排卵が誘起されたῌ 一方῍ 対照 区で複数排卵が観察された周期は῍ +0 周期中 + 発情周期の みであったῌ 免疫後の発情卵胞῍ 黄体数は免疫区 ῐnΐ,-ῑ で 1.*ῒ+.3 個 ῐ最小自乗平均値ῒ標準誤差ῑ῍ -.1ῒ+., 個で あり῍ 対照区 ῐnΐ+0ῑ の +.+ῒ,., 個῍ +.+ῒ+.. 個と比較し て多く῍ 発情卵胞数は免疫区で有意に増加した ῐ表 ,ῑῌ 追加免疫後の連続した発情周期における各区の発情卵胞 数および黄体数の推移を図 - に示したῌ 免疫区では῍ 追加 免疫後の初回発情周期において発情卵胞数῍ 排卵数は +2.3 ῒ-.+ 個 ῐ最小自乗平均値ῒ標準誤差῍ nΐ2ῑ῍ 1.0ῒ,.* 個で あり῍ それ以降の発情周期と比較して有意に多かったῌ 免 疫区では各構造物数は発情周期の反復にともない低下する ものの῍ 免疫による卵巣反応は連続した . 発情周期の間持 続したῌ 複数の発情卵胞の発育ならびに複数排卵が認めら れなくなった最終発情日は῍ 追加免疫後 0.ῌ+,+ 日目以降 であったῌ なお῍ 免疫区の JB-11 では追加免疫後の , 発情 周期目から複数排卵が観察されており῍ JB,*/ では追加免 疫後の初回発情周期では良好な複数排卵が誘発されたが῍ それに続く , 発情周期では単一の卵胞発育ならびに単排卵 で経過し῍ 再度 . 回目の発情周期に複数排卵が観察された ῐ表 +ῑῌ このように῍ 一部の個体では῍ 免疫処置による平均 的な反応性とは異なる卵巣反応を示したῌ 対照区では連続 した . 発情周期の間῍ ほぼ単排卵で経過したῌ ,ῌ 能動免疫の過排卵誘起処置への適応性 免疫区の JB-11 の追加免疫後 - 回目の発情周期ならび に JB,*/ の初回発情周期では῍ 3῍ +. 個の発情卵胞の発育 と 0῍ +. 個の排卵がそれぞれ観察され῍ この発情周期の卵 巣反応を過排卵誘起処置として適用したῐ表 +ῑῌ なお῍ 継 続して卵巣機能を追跡するため῍ 子宮潅流終了後῍ 黄体退 行薬の投与または子宮内へのヨ῏ド剤の投与等の黄体退行 処置は行わなかったῌ 結果として῍ , 頭からそれぞれ .῍ 3 個の移植可能胚が回収されたῐ表 -ῑῌ また῍ これら一部の 胚を移植した結果῍ 受胚牛 - 頭で各῎単胎妊娠が成立し῍ 図 + 免疫牛におけるステロイドホルモンならびに卵巣所見の推移 ῐJB.2-ῑ ST. :スタンディング発情῍ F.E. : 鈍性発情῍ A.I. : 人工授精 図 , 免疫牛における排卵前後の超音波画像 ῐJB,*/ : 追加免疫後初回発情周期ῑ F :卵胞῍ CL : 黄体῍ CCL :ῌ腫様黄体
その後 - 頭の産子を得たῌ なお῍ JB,*/ では῍ 胚回収後に 子宮内に残存していた胚の着床により単胎妊娠が成立した が῍ 胎子死滅の発生により妊娠は継続しなかった ῐ表 +ῑῌ 過排卵誘起処置の + 例 ῐJB-11ῑ におけるステロイドホ ルモンならびに卵巣所見の推移を図 . に示したῌ 本牛で は῍ 追加免疫後 ,῍ - 回目の発情周期で複数の排卵が誘発さ れたῌ , 回目の発情周期では発情は鈍性に経過したため῍ 明瞭な発情行動が観察された - 回目の発情周期で過排卵誘 起処置を試みたῌ 追加免疫後 - 回目の発情周期では῍ 発情 卵胞の複数の発育ならびに複数の黄体形成を反映して P および E,b は単排卵性に経過した発情周期と比較し高い 値で推移したが῍ 推移パタ῏ンに大きな違いは認められな かったῌ 過排卵誘起処置を適応した - 回目の発情周期の長 さは -. 日であり῍ 単排卵性に経過した発情周期および双 排卵が誘発された追加免疫後 , 回目の発情周期の長さ ῐ,,ῌ,- 日ῑ と比較して長かったῌ -ῌ 能動免疫の双子生産への適応性 免疫区の . 頭 ῐJB,0* および JB/-1 : 追加免疫後 + 回目 の発情周期῍ JB,*/ および JB.2- : 追加免疫後 . 回目の発 情周期ῑ に双胎妊娠の誘起を試みたῌ それぞれの発情日に 人工授精を行い῍ その後の経過を観察した結果῍ JB,0* で -個῍ JB,*/ で , 個の発情卵胞の排卵が認められたῌ その うち JB,0* では双胎妊娠が誘起され῍ 人工授精後 ,2, 日目 に双子を分ῌした ῐ図 /ῑῌ ῌ出された双子は異性であり῍ 第 + 子の雌子牛はフリ῏マ῏チンであったῌ JB,*/ は双排 卵であったが῍ 単胎妊娠となったῌ JB/-1 と JB.2- は複数 の発情卵胞が発育したが῍ 単排卵となり῍ いずれも単胎妊 娠であったῌ 対照区では῍ - 頭人工授精を行った結果῍ + 頭 で単胎妊娠が成立したῌ なお῍ 全ての妊娠牛で産子は正常 表 , 追加免疫後の発情周期における発情卵胞数῍ 黄体数の 最小自乗平均値と標準誤差 表 + 試験供試牛における薬物処置後の卵巣所見῍ 臨床所見 図 - 追加免疫後の連続した発情周期における各区の発情卵胞 数および黄体数の推移 ῐ最小自乗平均値ῒ標準誤差ῑ 同一カラムにおいて異符号間に有意差ありῐa-b : Pΐ *.*/ῑ῎ 竹之内ῌ大島ῌ島田ῌ高橋ῌ百目鬼ῌ門司 74
にῌ出されたῌ ῏表 +ῐ 双胎妊娠例 ῏JB,0*ῐ におけるステロイドホルモンなら びに卵巣所見の推移を図 0 に示したῌ 本牛では῍ 双胎妊娠 の誘起を試みた追加免疫後の初回発情周期において῍ 正常 な形態を有する - 個の黄体が形成されたῌ 排卵後῍ P 値は 発情後 ,, 日目 ῏初回免疫後 0, 日目ῐ まで上昇し῍ その後 1.*ῌ2.2 ngῌml で推移したῌ この値は黄体数を反映して単 排卵で経過した前の , 発情周期での値῏-.*ῌ0./ ngῌmlῐ よ り高かったῌ E,b は追加免疫後の初回発情時῍ +,.+ pgῌml のピ῎ク値を示したῌ この値は発情卵胞の複数の発育を反 映し῍ 単排卵で経過した発情周期での値 ῏2.3ῌ3.. pgῌmlῐ より高く῍ 発情後 .ῌ/ 日目に῍ 一次主席卵胞の発育時期に 一致すると考えられる一過性の上昇が認められ῍ その後は -.2 pgῌml 以下の値で推移したῌ
考
察
本研究では῍ 組換え体ヒツジインヒビン a サブユニット を抗原とした能動免疫により῍ 黒毛和種牛において連続し た発情周期で複数排卵が誘起されることを示し῍ その卵巣 反応が過排卵誘起処置ならびに双子生産に応用できること を明らかにしたῌ なお῍ 本研究は῍ 性腺刺激ホルモンを併 用しないインヒビン免疫のみによる過排卵誘起処置の成功 例として῍ 家畜における初の報告例であるῌ 黒毛和種牛にヒツジインヒビン a サブユニットを抗原 とした能動免疫を行った結果῍ これまでに報告されている ように複数の発情卵胞の発育ならびに複数排卵が誘起され たῌ 複数排卵は῍ 免疫区で観察を行った発情周期中 .1.2ῌ ῏++ῌ,-ῐ で観察されたῌ インヒビン a サブユニットを免疫 抗原として用いた従来の報告/ῌ1, 3ῐ では +2ῌ0/ῌ の発生῍度 が報告されているῌ これらの報告では῍ 免疫抗原としてさ まざまな合成ペプチド断片が用いられており῍ インヒビン 図 . 過排卵誘起例におけるステロイドホルモンならびに卵巣所見の推移 ῏JB-11ῐ ST. :スタンディング発情῍ F.E. : 鈍性発情῍ A.I. : 人工授精 表 - インヒビン免疫牛における胚回収成績 図 / インヒビン免疫により生産された双子 ῏JB,0*ῐ 左 : 第 , 子῍ 中 : 第 + 子῍ 右 : 母牛aサブユニットの免疫による卵巣反応は῍ 抗原として用い る合成ペプチド断片の種類3, -*ῐ や担体と抗原との結合比 率+*ῐ によって῍ 卵巣反応は大きく異なるとされているῌ そ れらのことから今回の成績と従来の報告とを単純に比較す ることは困難であるῌ しかし῍ 追加免疫後の初回発情周期 での発情卵胞数῍ 排卵数はそれぞれ +2.3 個῍ 1.0 個であり῍ ウシが単排卵動物であることを考えれば῍ これらは極めて 大きな反応であるといえるῌ 免疫牛での排卵数は +ῌ-. 個 と大きな変動が認められたῌ BLEACHら3ῐ や BROWNら+-ῐ は インヒビンの抗体価と卵巣反応との間に密接な関係がある としており῍ さらに BLEACHら3ῐは抗体価の上昇には個体 差があることを報告しているῌ しかし῍ 今回῍ 免疫後の血 中インヒビン抗体価については検討していないため῍ 個体 差の理由については解明には至らなかったῌ なお῍ 対照区 の + 発情周期῏JB../῍ + 回目の発情周期ῐ では῍ 卵巣機能 に影響を及ぼさないと考えられる薬物が投与されているに もかかわらず῍ 双排卵が観察されたῌ 同試験場で 3 年間に わたって行った黒毛和種雌牛延べ 2** 頭以上に関する直腸 検査結果では῍ 性腺刺激ホルモン等の非投与下で複数の排 卵が観察された牛は῍ 本牛以外では + 頭のみであるῌ この ことを考慮すれば῍ 対照区での双排卵は極めてまれな現象 であると考えられるῌ インヒビン a サブユニットを抗原とした未経産牛への 免疫では῍ /ῌ0 発情周期の間῍ 反復して複数排卵が誘起さ れ2, 3ῐ ῍ 部分精製したウシ卵胞液を抗原としたヒツジへの免 疫でも . 発情周期の間῍ ほぼ連続して複数排卵が誘起され ることが報告されている+/ῐ ῌ 今回῍ 免疫牛の卵巣反応を追 跡した結果でもこれらの報告とほぼ同様に῍ 追加免疫後連 続した . 発情周期の間῍ 複数の発情卵胞の発育および複数 排卵が誘起されたῌ 免疫後のインヒビン抗体価の推移を調 べた報告., 3ῐ では῍ 未経産牛で免疫後 +, 週以上もしくは ,ῌ .ケ月間῍ 血中抗体が検出されたとあるῌ また῍ BLEACH ら3ῐ は卵巣反応量と抗体価とは直接的な関連性があること を明らかにしており῍ 合成インヒビンを未経産牛に免疫し た GLENCROSSら1ῐ は῍ FSH の推移パタ῎ンは対照区と変 わらないが῍ 発情周期を通じて FSH 濃度は高く維持され ていたことを報告しているῌ これらのことから῍ インヒビ ン免疫による卵巣反応の反復性は῍ 本処置が免疫手法であ ることに起因し῍ 生体内での持続的なインヒビン抗体の産 生あるいは存在により῍ 数ケ月の間 FSH の分泌抑制が解 除され῍ その結果῍ 持続的に FSH 分泌が誘発されること によるものと考えられるῌ また῍ 本試験で῍ 卵巣反応が認 められなくなった最終発情日は῍ 追加免疫後 ,ῌ. ケ月以降 であったことから῍ 今回試験で用いた免疫牛においても῍ 従来の報告., 3ῐ と同様に数ケ月間῍ 血中抗体は維持されて いたものと推測されるῌ 過排卵誘起処置への適応性については῍ ヒツジでの報 告,,, ,.ῐ があるが῍ それらは胚回収成績の向上のために῍ 過 排卵誘起処置の前処置としてインヒビン免疫を利用したも のであるῌ 今回の成績は性腺刺激ホルモンを併用しないイ ンヒビン免疫のみによる過排卵誘起処置としては家畜で初 めての報告であるῌ ウシは単排卵動物であることから῍ 優 良子畜の増産および改良のためには過排卵誘起処置および 胚移植が不可欠となっているῌ 過排卵誘起処置の方法とし ては῍ 性腺刺激ホルモンを用いた過排卵誘起処置が一般的 であるが῍ 処置後の down-regulation に関連して連続し た処置では卵巣反応が低下することが知られている-+, -,ῐ ῌ また῍ 妊馬血清性性腺刺激ホルモンによる過排卵誘起処置 では῍ 抗ホルモンの産生による卵巣反応の低下も問題とし て残されており--, -.ῐ ῍ 従来の過排卵誘起処置は短期間内で 図 0 双子生産例におけるステロイドホルモンならびに卵巣所見の推移 ῏JB,0*ῐ ST. :スタンディング発情῍ A.I. : 人工授精 竹之内ῌ大島ῌ島田ῌ高橋ῌ百目鬼ῌ門司 76
の反復性に欠けることが大きな短所の一つである῎ 一方῍ インヒビン免疫による過排卵誘起処置は῍ 免疫手法を用い ていることから῍ 複数排卵に関して反復性に優れ῍ 従来の 過排卵誘起処置と比較して簡便な薬物処置のみで῍ 短期間 内で反復して胚採取を可能にする技術として期待できる῎ 免疫反応を利用し双子生産を行った結果では῍ . 頭中 + 頭について双胎妊娠が誘起され῍ 正常に双子を生産するこ とができたῌ 本試験での双胎誘起率は῍ ヘレフォῐドの交 雑種を供試した MORRISら0ῒの報告 ῑ*ῌ0*῍ῒ と比較すれ ばやや劣るものの῍ 黒毛和種牛においてもインヒビン免疫 による誘起多胎が可能であることを示したῌ ただし῍ 誘起 多胎では῍ 妊娠期に発生する胎子死滅の点で多くの問題が 残されているῌ このことについて῍ IZAIKEら-/ῒは妊娠 ,2ῌ 01日の間に胎子の死滅がῌ発し῍ その発生ῌ度は双胎と比 較して品胎で多いことを報告しているῌ その主な原因とし ては῍ 複数の胚または胎子の発育にともなう子宮内での競 合などが考えられている-0ῒ ῌ そのことから῍ インヒビン免 疫を利用した双子生産では῍ 排卵数の調節が重要となるῌ ウシインヒビン a サブユニットの合成ペプチドのうち῍ MORRISら0ῒ の方法では῍ やや卵巣反応の弱いとされるペ プチド断片 ῑ0-ῌ1, ペプチド断片῍ +*1ῌ+,, ペプチド断片ῒ を免疫抗原とすることで῍ 排卵数が ,ῌ- 個に制御されてい るῌ ペプチド断片の種類と卵巣の反応性が検討された報告 では῍ +ῌ,3 ペプチド断片と 0-ῌ1, ペプチド断片を比較した 場合῍ いずれも複数排卵を誘起し῍ 有意差はないものの後 者で排卵数が少ないとされている3ῒ ῌ 一方῍ 今回の双子生 産では῍ 人工授精後 0 日目に黄体数を確認し῍ 黄体数が -個以下の場合を誘起多胎に適用したῌ また῍ 多胎誘起に関 連したその他の問題としては῍ SHIMADAら-1ῒの報告にある ように῍ 産子の発育性について単子と比較した場合῍ 双子 では発育が劣ることや῍ 今回の双子のようにフリῐマῐチ ンの発生が避けられないことなどがあげられ῍ これらの問 題への対応も考慮する必要があるῌ なお῍ 双子生産ならび に過排卵誘起処置の成績から῍ インヒビン免疫により誘起 された発情卵胞由来の卵子は正常な受精能および発生能を 持つものと考えられたῌ 謝辞 : 本研究を遂行するにあたり῍ ワクチンを御提供いた
だいた Biotech Australia, Pty Ltd の C.G. TSONIS博士に
深く感謝の意を表するῌ また῍ 供試牛の適切な管理をして いただいた農林水産省中国農業試験場畜産部 ῑ現 独立行 政法人農業ῌ生物系特定産業技術研究機構近畿中国四国農 業研究センタῐ畜産草地部ῒ 業務科職員の方῏に感謝す るῌ 引用文献
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竹之内ῌ大島ῌ島田ῌ高橋ῌ百目鬼ῌ門司
E#ect of active immunization against ovine inhibin
a subunit on ovarian activity, and application
of inhibin immunization to superovulation
and twinning in Japanese Black cows
By
Naoki T
AKENOUCHI*, Kazunaga O
SHIMA**, Kazuhiro S
HIMADA***,
Masayoshi T
AKAHASHI***, Ikuo D
OMEKI**** and Yasunori M
ONJI****
(Received May ,,, ,**-/Accepted September ,., ,**-)Summary : Inhibin immunization increases the ovulation rate in cows. In this study we investigated the e#ect of active immunization of Japanese Black cows against the recombinant ovine inhibin a subunit on ovarian activity. In addition we examined whether inhibin immunization could be applied
to superovulation and twinning in Japanese Black cows. Cows (n῍2) were injected with , ml of
inhibin vaccine as primary injection at estrous day, followed by a booster injection (, ml) . weeks later. The control cows (n῍/) received adjuvant only. Ovaries were examined by rectal palpation and using ultrasonography during , to / months after primary. Superovulation and twinning were attempted on , and . of ,- estrous cycles in immunized cows, respectively. The cows were run with artificial insemination at the day of estrus for both trials, and embryos were recovered for superovulation at 2 days after artificial insemination. The number of estrous follicles (+* mm῎) and corpora lutea (1.*ῌ
+.3, -.+ῌ+.,, ,- cycles) of the immunized cows were higher than those of control cows (+.+ῌ,.,, +.+ῌ+..,
+0 cycles). Multiple follicular development and ovulation were observed during successive estrous
cycles in the immunized cows. In the superovulation trial, nine and . transferable embryos were recovered from each cow. The transferred embryos resulted in the birth of three calves. One of . cows
of the twinning trial gave birth to twin calves. In conclusion, active immunization against the
recombinant ovine inhibin a subunit induces successive multiple development of estrous follicles and multiple ovulation in Japanese Black cows. These experiments also show that inhibin immunization can be applied for superovulation in Japanese Black cows. In addition one twinning was induced in
immunized cows. The present study is the first reported application of inhibin immunization
resulting in successful superovulation in domestic animals.
Key Words : inhibin immunization, ovarian response, twinning, superovulation, cow
* ** *** ****
National Agricultural Research Center for Tohoku Region, National Agricultural Research Organization National Agricultural Research Center for Western Region, National Agricultural Research Organization National Institute of Livestock and Grassland Science, National Agricultural Research Organization Department of Zootechnical Science, Faculty of Agriculture, Tokyo University of Agriculture