音楽科鑑賞授業における音楽的思考にみられる反省の機能
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(2) 学校音楽教育研究第2 4巻 2 0 2 0 年. その反省的な経験において働くのが反省的思考であ. 討することにする。そこでは、リフレクションの機. るといえる。反省 ( r e f l e c t i o n ) そのものについて. 能として①主体にイメージと実際の音とのズレを認. はまた後で詳述するが、反省は、試行と結果の関連. 識させる、②主体にズレの原因の手がかりを与え、. を認識するためになされる。上述したように、試行. ズレ解消の方法の予想を立てさせる、③主体がもっ. と結果との関連の認識の量が増すことで、経験およ. イメージを詳細にして広げる、④主体が表したいイ. びそこで働く思考が反省的になるのであるから、言. メージを明確化する、の 4点を挙げている。これ. い換えれば、反省の積み重ねによって反省的思考が. らの機能は、音楽づくりの授業分析によって導き出. 成立するといえる。これを音楽科の視点からいうと、. されている。つまり、ここで論じられているのは、. 反省は音楽的思考を成立させるために不可欠な要素. 学習者である主体が音や音楽と相互作用することを. だということになる。この点から筆者は反省に着目. 通して作品としての音や音楽をっくりだす際に、リ フレクションを行うことによってどのような効果が. した。 そこで、「音楽科Jr 反省」をキーワードにこれま. あるのかということである。音楽づくりの授業にお. でになされた研究をみてみると、演田(19 8 9 )6 ) 、 野. いて、相互作用の対象となる音や音楽は、主体のも. 浪 ( 1 9 9 8 ) η、藤本 ( 2 0 1 8 )町、藤本 ( 2 0 1 9 )めがあった。. つイメージにもとづいて生み出された個別性のある. 演田 ( 1 9 8 9 ) は、学習活動における反省が学習者. ものである。また、一連の音楽活動の中でその音や. にどのような効果をもたらすかという視点をもった. 音楽はどんどんっくり変えられていくため、相互作. 研究である。しかし、演田は反省を学習活動を段階. 用の対象がどんどん変化していくことになる。藤本. 化した中の 1つの段階として位置付けている。後. ( 2 0 1 9 ) で導出されたリフレクションの機能は、以. で詳述するが、筆者は反省を主体と対象との連続的. 上のような音楽づくり活動の特性のもとに述べられ. な相互作用の中でなされるものと捉える立場である. ている。これらの機能は、音楽づくりと同じ表現領. ため、演田のいう反省とは捉え方が異なる。. 域である歌唱や器楽の活動の場合はある程度共通す. 野浪(19 9 8 ) は、デューイの論じる科学の反省的. る部分があると推測できる。しかし、鑑賞領域の場. 思考と比較することによって音楽の反省的思考の特. 合は表現領域と異なり、相互作用の対象となる音楽. 性を見出そうとした理論研究であり、反省そのもの. 自体が変化せず、学習の成果としてっくりだすもの. については扱われていない。. が批評文(言葉や文章)である。そこで筆者は、鑑. 藤本 ( 2 0 1 8 )( 2 0 1 9 ) は、反省と子どもの思考を関わ らせた実践研究であり、反省について本研究と同様 の立場をとっている。しかし、藤本 ( 2 0 1 8 ) は反. 賞授業におけるリフレクション(反省)には異なっ た機能があるのではなし、かと考えた。 したがって、本研究のテーマを「音楽科鑑賞授業. 省の方法を意識的に取り入れた実践分析がなされて. における音楽的思考にみられる反省の機能」として. いるものの、研究の主題は反省ではなく、問題解決. 研究を進めることにした。本研究では、鑑賞授業に. 過程における子どもの問題意識の変容である。以上. おける反省の機能を明らかにし、藤本 ( 2 0 1 9 )で. のように、「音楽科 J r 反省J をキーワードにみてき. 導出されているリフレクション(反省)の機能との. た研究のうち、演田(19 8 9 )、野浪 ( 1 9 9 8 )、藤本. 共通点や相違点を検討する。それにより、表現領域、. ( 2 0 1 8 ) の 3つは、反省の捉え方が本研究と異なる、. 銀賞領域に関わらず、反省を生かした音楽的思考を. 反省そのものを主題とした研究ではないという点で、. 軸とする音楽科授業を構成するための視点を得る一. 本研究の先行研究としては適当でないと判断できる。. 助となると考える。. 一方、藤本 ( 2 0 1 9 ) は、問題解決としての音楽 的思考におけるリフレクション(この研究では、本. 2 . 研究の目的と方法. 研究でいう「反省」を「リフレクション」といって. 本研究の目的は、音楽科鑑賞授業における音楽的. いる) 10)の機能を主題とした研究である。リフレク. 思考にみられる反省 ( r e f l e c t i o n ) の機能を明らか. ション(反省)について本研究と同様の立場である. にすることである。ここでの「反省の機能」とは、. こと、リフレクシヨン(反省)を主題とした研究で. 「反省をすることが音楽的思考においてどういった. あることから、藤本 ( 2 0 1 9 ) を先行研究として検. 効果をもたらすのか」ということとする。. -14-.
(3) 音楽科鑑賞授業における音楽的思考にみられる反省の機能(藤本佳子). 研究の方法は、実践的方法をとる。まず、本研究. うに、音楽的思考は、音楽活動において主体自らが. のキーワードである「音楽的思考J r 反省」につい. 自身の内部にもった問題を、主体自らが解決方法を. て文献や先行研究より整理する。そして、小学校 4. 見出し、解決していく問題解決で働く思考であり、. 年生を対象に鑑賞授業を構想し、実践する。授業を. 問題解決をこのように捉えるのは、. 構想し、実践する際には、子どもが音楽的思考を働. 育理論における反省的思考と同様であるためである。. かせ反省を行うことができるようにすることを意識. では、デ、ューイは反省についてどのように述べて. J .デューイの教. する。そして、その授業のビデオ記録から発言やそ. いるのだろうか。デ、ューイは「困難もしくは困惑を. れに伴う表情や身体の動き等を可能な限り文字化し. 含む一つの事態が生起するとき、その事態のなかに. た逐語記録を作成する。それらの実践記録を、反省. 捲きこまれた人物は多数の手続きの一つを取るであ. が子どもの思考にどのような影響をもたらすのかと. らう。…その事態に直面するかも知れない。この場. いう視点から分析し鑑賞授業における音楽的思考. 反省が始まるのは我々 合に彼は反省しはじめる J12) r. にみられる反省の機能について考察する。. が或る特定の根拠もしくは価値を探究しはじめる時 である。或る特定の指示事項の真実性を我々が検証 しようと試みる時である J13)と述べている。つまり、. E 用語の規定 ここでは、本研究のキーワードである「音楽的思. 反省とは、主体自身が置かれている状況において、. 考」と「反省」について文献や先行研究より整理す. 困難や困惑が生じて不確定状況 14)I こ直面したときに、. る。筆者は、学習活動における子どもの存在を、自. そのような状況になった理由やその状況のもつ価値. らが主体となって環境に働きかけ働き返される相 E. 等を見出すために行うことである。. 作用を通して学ぶ存在であると捉える立場をとって いる。したがって、「音楽的思考」と「反省」とい. そして、主体がし、かに反省、するのかについてデ、ュー イは「反省は観察を含んでいる. 彼が反省しはじめ. う用語について整理するにあたっては、同様の立場. るや否や必然的に彼は、多数の条件を得るために、. に立つ理論に拠る先行研究や文献より用語を整理す. 観察することを始める。この観察の或るものは五官. る 。. の直接的使用によってなされる J同と述べている。 主体がおかれている状況は、主体と環境との相互作. 1 . 音楽的思考. 用によってっくりだされる。それを観察をするとい. 『音楽教育実践学事典』によると、音楽的思考と. うことは、主体の環境に対する試行とその結果とし. は「音を媒体とした問題解決過程を強調した、音楽. て主体が環境から受けるものの結びつきを分析的に. 科に特有の思考を表した用語である。具体的には音. みきわめようとするということになろう。. や音楽について知覚・感受したことを基盤として自. したがって、デ、ューイのいう反省とは次のように. 分の表したいイメージに合うように根拠をもって音. まとめることができる。反省とは試行とその結果と. や言葉等を選択したり、組み合わせたりして演奏表. の関係を認識するために、眼前の事実を観察し分析. 現や作品をつくる際の一連のプロセスで働く思考を. することである。反省は、主体が不確定状況に直面. 指すJ11)とされている。これは、子どもの存在を自. し、問題となっていることについて根拠や価値、真. らが主体となって環境と相互作用することを通して. 実性を確かめようとするときに始められる。. 学ぶ存在と捉える筆者と同様の立場から述べられて いる。したがってこの定義を引用することとする。. E 研究授業の実践と分析 ここでは、音楽科鑑賞授業における音楽的思考に. 2 デューイの反省 ( r e fI e c ti o n ) 反省について取り上げるにあたり、本研究ではデ、ュー. みられる反省が、実際の授業における子どもの姿と してどのような様相をみせるのか、そして実際にど. イの理論に拠る。その理由は、デューイが人聞が学. のような機能を果たすのかを研究授業を実施し分析. ぶということについて、人間(主体)と対象との相. することによってみてし、く。. 互作用を基盤として述べている点で、筆者も同様の 立場であるためである。また、. 11.で既に述べたよ. 1 音楽科鑑賞授業における反省 ( r e fI e c ti o n ) とは. 15-.
(4) 学 校 青 楽 教 育 研 究 第2 4巻. 2 0 2 0年. 研究授業を実践、分析するにあたって、まず、上. 定するのではなく、子どもが不確定状況となった部. 述した反省が音楽科鑑賞授業の場合はどうなるのか. 分に特徴的な音楽の構成要素に着目しながら進める. について考える。. という方法をとることにした。. 音楽科鑑賞授業における不確定状況とは、主体が それまで何も気に留めることなく音・音楽を聴いて いて安定した状況で、あったのに、その状況が変わり、. 3 . 研究捜業の概要 授業実践の概要は以下のとおりで、授業者は筆者. 安定が崩れた状況である。例えば、「音楽を聴いて. である。なお、本実践の逐語記録等のデータの使用・. いて、初めはゆったりと散歩している感じだと思っ. 公表については、実践分析の対象となった児童とそ. ていたのに、途中で、激しい嵐がやってきた感じにな. の保護者の承諾を得ている。. り、どうしてイメージが変わったのだ、ろうと思う」、. 0実践日:2019 年 3月 1 9、2 0日(全 2時間) O実践対象 :A市B小 学 校 第 4学年 0教材:サン=サーンス作曲. 「音楽を聴いて自分自身は夜空で星がキラキラ輝い ている感じだと思っていたのに、他の人は小さい動. 組曲《動物の謝肉祭》より(水族館). 物が走っている感じだと思っていると知り、どうし てイメージが違うのだろうと思う」ということが考. O指導計画:. えられる。あるいは、「音楽を聴いていたら、聴い. 表. 1 指導計画. たことのないような音色が聴こえてきて、あれは一 体何の音だろうと思う」ということも考えられる。 このようにして不確定状況が生じると、主体は 「途中で激しい嵐のような感じに変わったのはなぜ だろう J I自分には星が輝いている感じに聴こえた. 最初に書いた紹介文と、再度書いた紹介 文を比べ、自分の曲の聴き方がどのよう に変わったのかを考える。. のはなぜだろう J I あの聴いたことのない音は一体 何だろう」と問題をもち、試行(聴くこと)と結果 (知覚・感受したこと)との関係を知ろうと反省を 始める。その問題となっていることの解決に向けて. 4 . 分析. 眼前の事実を注意深く観察するのである。音楽科鑑. ( 1 ) 分析方法と対象. 賞授業において眼前の事実を注意深く観察するとは、. まず、授業のビデオ記録から発言やそれに伴う表. 対象としている音・音楽を注意深く聴くということ. 情や身体の動き等を可能な限り文字化した逐語記録. になろう。そして、その結果として知覚・感受した. を作成する。表中のTは授業者、 Cは子ども(名前. ことをもとに、試行(聴くこと)と結果(知覚・感. は全て仮名)、 C mは多くの子ども、 Csは数人の子. 受したこと)との関幌を認識し、問題の解決に向かっ. ども、. ていくのである。. 語記録の通し番号である。. J ちは音楽が流れていることを指し、数字は逐. 本研究では反省が個の思考にどのように機能する. 2 . 研究授業の構想. のかをみるため、分析対象として抽出児を設定する. 本研究授業の目的は、鑑賞授業での音楽的思考に. 方法をとる。本来ならば、抽出児を設定した上で授. おいて子どもがどのように反省を行い、反省するこ. 業を実施し抽出児の姿を追うのであるが、本研究で. とによって音・音楽に対する知覚・感受をどのよう. は反省の機能を明らかにするため、授業の中で反省. に広げていくのかをみることである。先に述べたよ. をしていると判断できる子どもを抽出児として設定. うに、主体が不確定状況に直面したときに、反省が. し、分析する必要があった。そのため、授業のビデ. 始められる。したがって、子どもが反省する姿をみ. オ記録から、不確定状況が生じた際、問題解決に向. るためには、音楽を聴く中で子どもが疑問をもっ等. けて注意深く観察をしているということが発言や表. の不確定状況となった部分に焦点を当てて進めてい. 情、身体の動き等から読み取れることを抽出児の設. く授業にすることが有効であると考えた。したがっ. 定基準とし、抽出児を設定することにした。そして、. て、本研究授業においては、指導内容を前もって設. この抽出児の設定に伴って、分析場面も設定された。. -16-.
(5) 音楽科鑑賞授業における音楽的思考にみられる反省の機能(藤本佳子). (男子)である。場面 1の千品と場面 3の大輔は、発. 4 3 7C宗介 438T. 面 2の陽介は、発言自体は多くないため、衰情や即志. ( 2 ) 分析の視点と手順. イt 4 4 1C和. 先述したように、音楽科鑑賞授業における反省と. 442C千晶. は、試行(聴くこと)とその結果(知覚・感受した. 443. 4C千品 445T 446C千晶 447T. 象となる音楽)を観察し分析する(注意深く聴いて 知覚・感受する)ことである。その反省は、主体が て根拠や価値、真実性を確かめようとするときに始 められる。 以上より、鑑賞授業における音楽的思考にみられ る反省の機能をみる分析の視点を以下 3点設定する。 視点 a:不確定状況となったきっかけは何か。. まず、反省が始められる不確定状況となったきっ かけは何だったのかを読み取り(視点 a)、反省す る際に何が問題とされていたのかを読み取る(視点. 465C和代 466C千晶 467T. b)。そして、抽出児がその問題をもとに音楽を注 意深く観察する(聴く)ことで、知覚・感受がどの ように変化したのかを読み取る(視点 c)。その上. 468C千品 469T. で、抽出児の思考内容にどのような変化や発展等が 楽的思考にみられる反省の機能を導出することがで. ( 3 ) 分析. 表 2場面. 1の逐語記録. 議返品究発議除機縁:. 1 7. I. 最初の方のところで、なんか うち的 にはなんかゆっくりしてる感じだった けど、もつかい確かめたらなんかチー ズが伸びてるような感じがした。. 04. 4 7 7C隼 人 478C千晶 479T 4 8 0C奈 央 4 8 1T 482C千晶 483T 484C千晶 485T 486C千晶. る場面(抽出児目千品). チる劃タワわ. ①場面 1 途中で曲の感じが変わることに着目す. o. 473C航 平 474T 475C和代 476T. きると考える。. パ山仇。一九。山一千叫. 470T 4 7 1T 472Cs. 汽 甲みみ o. あったのかを整理することで、鑑賞授業における音. W. 460C隼 人 4 6 1C奈 央 462C千晶 463C和代 464T. り、抽出児の知覚・感受はどのように変化したか。. o. 458C千品 459T. 視点 c:問題をもとに注意深く音楽を聴くことによ. da. 視点 b:当該場面での問題は何か。. た二︾か る一ト絵ぐも変チ板とラし引 ︿ね とも(た がン一勺 一九惣)臥す前 -h. 448C草 人 ・ 晴 樹 449C隼人 450C千晶 4 5 1T 452T 453C大輔 454T 455T. 不確定状況に直面し、問題となっていることについ. るの感んら. “T. こと)との関係を認識するために、眼前の事実(対. M. 439C千品 440T. )mZ. 等の様子から読み取れることを中心に分析を行う。. J U M omZM 一勺北川訪問肝つレい既日時間町内札 。 両。い伸で吋が札ャる。。チヮ. 言が多いことから発言内容を中心に分析を行う。場. たく v。もをんらっズ九里、リうわヤ書こ いてふタトなズねば 7. 4 3 3T 434T 435C千晶 436T. 千晶(女子)、場面 2 陽介(男子)、場面 3 :大輔. 一)る引いか)かチ一、い M。 聴 み門ふ材 一-勺ぺ んd J Y山 内 応 。 吋 設 け れ わ 吋. する場面)である。各場面の抽出児は、場面 1. UJ. 4 3 1C千晶 432T. 川引時. に着目する場面、場面 3 :チェレスタの音色に着目. がとて。凶的問タ哨じ刺広. 場面、場面 2 静かな水色の場所というイメージ. M伽 抗 誠 一 立 法 代打いいけ 引臨み込山一切ーす村山か一河合ω一打点 戸 弘なの hが み せ っ 仏 。 。 船 感 引 時 一 棚 ι尚 山ι小山娘 。 て 川 町 内 感 し あ わ ゆ か ラ ラ て る 。 つ 両 不 れ ろ ぎ と わ 巾 夕 げ 祐 助 れ ? ハ マ し 。 か コ チM旋 の あ わ イ ま を み きつ、チつるてちてい音 組問仰い o 脇 市中伊川町印刷 ぃ!ぽ部品供出。摂取向山冊子品目以能的品川町民。 M 令官認訴持品川コ一日イイお説。融制計官三時品九時ぽ鴻生、認 h川 h 行樹齢時代日給停三万灯。町以後詰℃ j f. 奈由千. 央佳品. CCCT. 400 自 円 vnu ndndndqa S9a生a-a佳. 抽出児を設定することができたのは、 3つの場面 (場面 1 途中で曲の感じが変わることに着目する.
(6) 学校音楽教育研究. 千千. 晶品. a生 a a z a a τ a a τ. TCTC U ∞∞卸鈎. 4 9 1T. 4 9 2C和 代 493T 494C 495C千 晶 496T 4 9 7Cf 日 イ 勺 498T 4 9 9T 500C千 晶 5 0 1T. かえってくる感じ。 かえってきて、はじいてちぎれる 。 戻ってくる。 なんかその音の変わるところのはじめの 方まで、はじめの方ではじいて(手はは ね返ってくる動きをする)、なんか急に 音が変わったらパチンってちぎれた。 タラタラタラタラ-。 タ ラ タ ラ 。なんて変わったって言っ たらいいん やろう 。どんな風に変わったっていうつ みんなやったら 。 タ ラ タ ラ って いうのとタ タタタタ。 1つの音の長さ。 1つの音の長 さ。 切れた。 回ってる 。 なるほど。こっ ちの方が 長い。 長いのか。1つの音が長い。 t(音楽). (手を広げながら)タラタラタラで…。こ こで戻ってきて(手を戻していく)パチン。 なるほど、ひと つの音が短くなって、戻っ てくる感じがする。. 【視点 a 不確定状況となったきっかけは何か。 】 困)について、 千晶は、音楽の最初の部分(図 1. 第2 4巻. 2 0 2 0年. 律や。音の旋律や。 タラタラ J ( 466C) と旋律が変 わることは認めつつも、「チーズが切れたところっ てどう変わった?J ( 467f )と問われると、「忘れ たJ ( 468C ) と答える。この後、千晶はチーズがち ぎれる感じがする部分に注目して音楽を聴くように なる。したがって、 46 7fでチーズがちぎれる感じ がするところは音楽がどうなっているのかと問われ たことで、それまでは特に何も気に留めることなく 音楽を聴いていた安定した状況が変わり、不確定状 況となったといえる。 【視点 b :当該場面での問題は何か。】 千晶が、チーズがちぎれる感じがする部分はどこ なのか、その部分は音楽がどうなっているのかに注 目して音楽を聴き始めたことから、この場面での問 題は「伸びていたチーズがちぎれると感じた原因は イ可かJであるといえる。. 「チーズが伸びてるような感じ J ( 4 26C ) というイ. 【視点 c 問題をもとに注意深く音楽を聴くことに. メージをもったことを発言する。そして、千晶の発. より、抽出児の知覚・感受はどのように変化したか。 】. 言を確認・共有するために音楽を流していると、千. 「伸ばしすぎて、ぐぉ ~J ( 4 7 8 C )、「ひっぱりす. 品はそのチーズが「最終的にちぎれる J ( 4 4 4 C )と. 4 8 2 C ) のように、 ぎて、たまにパッチーンって J (. 発言する。 この時点では、千晶は特に何も気に留め. チーズが伸びている様子やちぎれるときの様子につ. ることもなく自分なりのイメージをもって音楽を聴. いて、イメージを広げていることがわかる。つまり、. いており、安定した状況であるといえる。. 感受の内容が広がっているということである。. すると、教師が「ちぎれるところがあるのつ J. さらに、「のびて、音が変わったときにはねかえっ. ( 4 4 5 T )、「ちぎれたら 言つてな J ( 4 47f)と伸びて. てJ ( 4 86C )、「かえってきて、はじいてちぎれる J. いたチーズがちぎれるとイメージが変化した部分が. ( 4 8 8 C ) とチーズがどのように伸びてどのようにち. どこなのか聞い、その部分を確認、 ・共有することに. ぎれるのかというイメージが 478C や482Cよ りも分. なる。そこで、で千品が 「 パチンJ ( 4 6 2 C ) とチー. 節化され、千晶の中で整理されてきていることがわ. ズがちぎれるイメー ジの部分(図 1回 ) を 示 す。. かる。486Cでは「音が変わったとき(図 1 図→困). そこで、教師が「ちょ っとなんか旋律がね、ちょっ. にはねかえって J と言っていることから、旋律の変. と変わるのかな?J ( 4 6 4 T ) と言 うと、千晶は「旋. 化とイメージの変化を関連づけ始めている。つまり、. 図1. 《動物の謝肉祭》より〈水族館〉 の楽譜 (綾粋) 16) ( 丸印・矢印・ア ウの記号は筆者挿入). -1 8-.
(7) 音楽科鑑賞授業における音楽的思考にみられる反省の機能(藤本佳子). た時にな、チャララリンってとこ、チー ズがびよよよ ん みんなも一緒に穂いといてな。じゃあ o. 感受した内容の分節化とともに、知覚と感受の関連 づけがなされているということである。. 404T. ~. いく)パチン J (500C) と発言していることから、 音楽の変化とイメージの変化をさらに詳しく関連づ. 412C和代 413T 4 1 4C和代. けていることがわかる。つまり、感受した内容の分 節化と、知覚と感受の関連づけがより進んでいると いえる。. ~. < ; >. I(領いたり首をかしげたりしてはっきり しない様子) でもなんかちょっと違う? (領主. A E t Lあ 附 足 し 。 チェレスタの音色が水とか水色な感じ. を出してるのかなあ。和代さん。 │聞いてください。 はい聞いてください │私の所もチェレスタの所の音色を、健 司くんのやつなんだけど、健司くんが 星を見ながら眠っている感じ、(不明瞭ヨ って言っていたけど、車奇麗な感じの吋 メージがあった。. 【視点 a 不確定状況となったきっかけは何か。】. 2:静かな水色の場所というイメージに着 覇介) 目する場面(抽出児:I. ②場面. 陽介は、〔経験〕ステップで(水族館)の紹介文 を書いた際、「ふしぎな場所で静かな水色の場所で す」と曲から受けたイメージを書いていた。〔分析〕. 時轍議 t 3 6 8C晴 香. 介史晶 陽武千. タラタラタラで…。ここで戻ってきて(手を戻して. ・. パチンってちぎれた J (490C)、 I(手を広げていく). aaτA74a44 4 生 44a. くる動きをしている)、なんか急に音が変わったら. con'oonFAり唱i nリAUAリAUti--. の方まで、はじめの方ではじいて(手ははね返って. 405C陽介. TCCTCT. その後、「なんかその音の変わるところのはじめ. ステップでその紹介文をグループで交流したところ、. 真由さんので、裏で鳴っているのが水 のようなイメージがするって書いてあった 裏で鳴っている。真由さん、裏で、鳴っ ているってとーんな音が鳴ってたのかな? なんか水で優しい感じの音が。 それは晴香さんわかった?その音。 ( 領 く) 1分 4 9 秒くらい。 1 分4 9 秒ぐらい。. 同じグループの千晶と奈央から、どこから静かな水. O. 369T 3 7 0C晴香 3 7 1T 3 7 2C晴香 373T 374Cm 3 7 5T 376T 377C和也 378T 379T 3 8 0C拓郎 3 8 1C雅美 382T 383C晴香 お4C千品・ 奈央. 385T. 386C千晶 387T 388C千晶 389C大輔 3 9 0C千品 3 9 1C奈 央 392C千品・ 奈央. 393T. 394C陽介 395C和代 3 9 6T 397T 398C千晶 399T 4 0 0C千品 401C陽介 402T 403C千晶. (笑う). t(音楽) 今1 分4 5 秒 。. 色の場所の感じがするのかと質問されたが、陽介は 全体的にそのような感じがすると答えたということ が 、 390C、羽1C、 392Cの千晶と奈央の発言からわ かる。このことから、紹介文を書いた時点では、陽 介はそのイメージがどこから生まれているのかにつ. チャラリラリン。 チャラリラリンつ チャラリラリンつ チェレスタ。 チェレスタの音。 ということはあれだね。裏で鳴ってるっ てことは、他の音も鳴ってるけど、重 なって鳴ってるってことかな。 領く。) 2人で何か思いついたように顔を見合 わせて手を挙げる。) なるほど。青の重なり、か。付け足し ですかっ千晶さんどうぞ。 先生、二人で言っていいですか。 どうぞ。 陽介くんの。ちょっと見せて陽ちゃん。 陽ちゃん、陽ちゃん。 静かな水色の場所で、すって書いてあっ て 。 それが何か聞いてみたら。 全体的にそれがなんか水色って感じが するって。 なんでやろ。なんで、静かな水色の場所。 陽介くんな、その静かな水色の場所、 全体的にとは言ってくれたんやけど、 どの辺が水色な感じゃった?何が水色 の感じを出してたんやろう。 (蓄をかしげる等はっきりしない様子) 水っていうところじゃないんつ t(音楽) この辺?何の音つ 違うやろ?最後やろ。最後のあの。 最後の。 あの水。真由さんの。(陽介の反応を待 つ。)こっちゃったらびよ ん。 (首をかしげる等はっきりしない様子) やっぱり 1分 4 9 秒? うち今新しく発見してん。さっき聴い. j. -19. いて詳細に捉えているわけではないが、陽介自身は 特に何も気に留めることもなく自分なりのイメージ をもって音楽を聴いており、安定した状況であると いえる。 しかし、グループ交流で千品と奈央にどこから静 かな水色の感じがするのかと問われ、さらに全体交 流の場で千晶と奈央がそれについて発言したことに よって教師にも「陽介くんな、その静かな水色の場 所、全体的にとは言ってくれたんやけど、どの辺が 水色な感じゃった?何が水色の感じを出してたんや ろう J (却訂)と問われて、明確に答えられないと いう状況が起こる。この後、静かな水色の場所と感 じる原因は何かについて注目して音楽を聴くことに なる。したがって、グループ交流や全体交流の場で、 音楽のどの部分から静かな水色の場所と感じたのか と問われたことによって、それまでは特に何も気に 留めることなく音楽を聴いていた安定した状況が変 わり、不確定状況となったといえる。 【視点 b :当該場面での問題は何か。 1 陽介が、静かな水色の場所の感じがする部分はど こなのか、その部分は音楽がどうなっているのかに.
(8) 学校青楽教育研究 第 2 4 巻 2 0 2 0年. 注目して音楽を聴き始めたことから、この場面での. 目はふしぎ、な場所で水色の場所だ、けだ、ったけれど明. 問題は「静かな水色の場所と感じた原因は何か」で. るし、かんじでしかも人がいてるかんじにおもえてき. あるといえる。. たのでそうかきました。そして曲がくらくなる時は. 【視点 c 問題をもとに注意深く音楽を聴くことに. より、抽出児の知覚・感受はどのように変化したか。】 陽介が「静かな水色の場所」とし、うイメージをもっ. けんかをしているじようたい J (原文ママ)これら から、陽介は、 6種類の楽器の音が鳴っているとい うことに着目してイメージを広げていることがわか. た部分について、和代が「水っていうところじゃな. る。最初は「ふしぎな場所で静かで水色の場所」と. い ん ?J( 3 9 5 C ) と言う。この「水っていうところ」. いうイメージをもっていたが、楽器の音色に着目す. というのは、 3 6 8 C " ' 3 8 3 Cで話題になっていたチェ. ることで、人がたくさんいる明るい所というイメー. レスタの音色が鳴る部分(図 1EJ)のことを指して. ジが新たに生まれている。また、曲の雰囲気の明暗. 3 9 8 C )と いる。千晶が「最後やろ。最後のあの J (. の変化を知覚し、それを人のけんかと仲直りのイメー. 言っているのも、直後に「あの水。真由さんの」. ジとして感受しており、その知覚と感受の関連を認. ( 4 0 0 C ) と言っていることから、同じくチェレスタの. 識している。したがって、陽介は、「静かな水色の. 音色のことを指していることがわかる。このように. 場所と感じた原因は何か」としづ問題をもって反省. して、和代や千晶が、陽介自身が「どこから静かな. する中で、その問題に対する解決とし、う道すじをた. 水色の場所の感じがしたのか」について明確に答え. どるのではなく、新たな知覚・感受が生まれ、それ. られない様子を見て、真由の言っていたチェレスタ. をもとに自分なりの楽曲の味わいを広げていくとい. の音色が原因ではないかと意見を出す。その意見に. う道すじをたどっていったといえる。. 即して教師は音楽を流し、陽介に「ここ?J( 4 0 4 T ). ③場面 3 目チェレスタの音色に着目する場面(抽. と問う。すると、陽介は405Cで古品、たり首をかしげた. 出児:大輔). りして、はっきりわからないとしづ反応を示す。そ. 表. れを見て教師は「でもなんかちょっと違う?J ( 4 06T) と問し、かけると陽介は領いて ( 4 0 7 C )、チェレスタ の音から「静かな水色の場所の感じ」を受けたわけ ではないという意思を表示している。このことから、. 73T 74C大輔. それまで陽介は音楽のどこから静かな水色の場所の 感じがするのかわかったわけではないが、チェレス タの音色が原因ではないということがわかったとい. 75T 76Cm 77T. うことがいえる。つまり、陽介はチェレスタの音色 を知覚し、それが自分にとっては静かな水色の感じ. 子は見られなかった。 しかし、この全体交流の後 〔再経験〕ステップで陽介は次のような紹介文を書 いている。「この曲は 6こもの楽器をつかって作っ ています。それできくとふしぎな場所にきてるみた いになって、そこはいろいろな人がいて明るい所で す。そしてたまにけんかをしたりしてしまうけれど ちゃんと明るくなおるかんじ J (原文ママ)そして、 〔評価〕ステップにおいて自分自身で 1度目と 2度 目の紹介文を比べて、音楽の聴き方がどのように変 わったかについては次のように書いている。 11回. 品輔 千大. 水色の場所と感じた原因について明確に認識する様. リ司iqr A “作品 。白 060600. この全体交流の場面において、陽介自身が静かな. PCTC. がするものではないと認識したということである。. 78Cm 79T. 84T 85C千晶 86T 87C大輔 88C茂雄 89C千品 90C大輔 91Cm 92T 93C良太 94C将人. 95C弘貴 96Cm 97C朔太 98T 99C将人. -20-. 4 場面 3の逐語記録. 川 糊;叩刊と戸川機物 なんか、黒白、あ、キラキラした感じ で、チャリーンっていう音。 チャリーン。 っていう音が、途中で流れてたような 気がして、で、なんかそれが、黒白反 対のピアノみたいな楽器が頭に思い浮 かんだ。 あ、ピアノと黒白が反対のやっ?あ 。 (口々につぶやく。) じゃあ、そのチャリーンってやっ探し ながらさ、そのチャリーンが鳴ったら どんな感じがするかみんなで考えてみ よ う 。 (口々につぶやく J じゃあ耳を澄ませて。チャリーンを探 すの。 ,P(音楽) あ、鳴った。 大輔くん、まだ?もっと先? もうちょっと先っぽい。(しばらく青楽 を聴き続ける) あったつもっと先ワもっと先? わかれへん。 量送りするつ 送り。 チャリーンつでもしかしてピアノの音 ちゃうんつ 行き過ぎちゃうん? 昆ざってた。 ここちょっと j. あ. 1. ほんまや、チャリーンや。 お金の音や。 トライアングノレ。 スマホの着信音みたい。 (口々につぶやく。) 先生、もう l回 。 ちょっと行き過ぎたんかなワ いや、違う。今のは全然違う。.
(9) 音楽科鑑賞授業における音楽的思考にみられる反省の機能(藤本佳子). ことを認識しているといえる。また、茂雄が「チャ. t(青楽). (口々に)あ f これやこれやこれや。 あ なるほど。 お金。 チャイムの音した。 チャリラリン。. リーンつでもしかしてピアノの音ちゃうん ?J ( 8 8 C ) と発言する。しかしこれについても大輔は賛同 せず、音楽に耳を傾け続ける。このことから大輔は 自分が探している音はピアノの音ではないというこ とを認識しているといえる。すると、大輔が「ここ. 【視点 a 不確定状況となったきっかけは何か。】 〔経験〕ステップで、初めてく水族館)を聴き、感. ちょっと混ざってた J ( 9 0 C ) と発言する。これは、. じたことや気づいたことを交流する場面で、大輔は. 7 2 C 、7 4 C で指摘していた部分ではないが、チャリー. 7 2 「キラキラした感じで、チャリーンっていう音 J(. ンという音が鳴っている部分を新たに見つけたとい. C )、「っていう音が、途中で流れてたような気がし. うことである。つまり、それまで、気づかなかった部. てJ (74C) と発言する。これは29/j、節目(図 1~). 分で新たにチャリーンという音を知覚したのである。. から現れるチェレスタの音色を指している。「流れ. その後もしばらく音楽を聴き続け「あ!J ( 1 0 1. てたような気がして」とは言っているものの、「黒. Cm) と多くの子どもたちが声をあげたところで大. 白反対のピアノみたいな楽器が思い浮かんだ」. 2 C 、7 4 Cで指摘していた音を見つけることが 輔は7. ( 7 4 C ) としづ発言や、発言時の様子や表情から、. でき、一緒に声をあげている。そして「チャイムの. この時点において大輔はそのチャリーンという珍し. 音した J ( 1 0 5 C ) とチャリーンという音からイメー. い音が鳴っていると確信をもっていると読み取るこ. ジしたことを発言している。つまり、感受したこと. とができる。つまり安定した状況であるといえる。. を発言したということである。. しかし、教師が大輔の発言を確認、・共有しようと 言って ( 77 f 、 791')音楽を流すが ( 8 0. T )、しばら く聴いていても大輔はチャリーンという音を見つけ ることができない。そこで教師が「大輔くん、まだ?. ( 4 ) 分析結果と考察 以上 3つの場面の分析を、分析の視点ごとにまと. める。 【視点 a 不確定状況となったきっかけは何か。】. 8 2T)と尋ねると、大輔は「もうちょっ もっと先?J(. どの場面においても、抽出児は最初安定した状況. と先っぽしリ ( 8 3 C ) と答え、またしばらく音楽を. にあった。場面 1の千品や場面 2の陽介は、何も. 聴き続けるがなかなか音が見つからない。そしてこ. 気に留めることなく、自分なりのイメージをもって. 7 2 C や7 4 Cの時とは異なり、不. 音楽を聴いていた。場面 3の大輔は、音楽の途中で. 安そうな表情になる。このことから大輔は、見つけ. 珍しい音が聴こえることに確信をもって音楽を聴い. たはずの音が聴こえてこないことによって、それま. ていた。そして、どの場面においてもその安定した. ではチャリーンという音が鳴っているという確信の. 状況が変わるということが起こった。場面 1の千. ある安定した状況が変わり、不確定状況になったと. 晶や場面 2の陽介は、思い浮かべているイメージ. いえる。. は音楽のどういったところが根拠となっているのか. の時大輔の表情は、. 【視点 b :当該場面での問題は何か。】. と、それまで意識していなかったこと問われたこと. 大輔がチャリーンという音がどこで鳴っているの. がきっかけで状況が変わった。場面 3の大輔は、必. かについて注目して音楽を聴き始めたことから、こ. ず聴こえると思っていた音が聴こえないということ. の場面での問題は「チャリーンという音はどこで鳴っ. が起こり、状況が変わった。どの抽出児も安定した. ているか」であるといえる。. 状況にあったのに、このような抵抗にあったことで. 【視点 c 問題をもとに注意深く音楽を聴くことに より、抽出児の知覚・感受はどのように変化したか。】 大輔がチャリーンという音をなかなか見つけられ. 状況が変わり、不確定状況になったといえる。 【視点 b :当該場面での問題は何か。】 どの場面においても、不確定状況となるきっかけ. ない中、千品が「あ、鳴った J ( 8 1 C ) と発言する。. となった抵抗が問題設定に関わっていた。場面 1. しかし、大輔はその千晶の発言に賛同することなく、. の千晶や場面 2の陽介の場合、不確定状況となる. 音楽に耳を傾け続ける。このことから、大輔は自分. きっかけとなる抵抗は、思い浮かべているイメージ. が探している音は千晶が指摘した音ではないという. は音楽のどういったところが根拠となっているのか. -21-.
(10) 学校音楽教育研究第2 4巻 2 0 2 0年. と、それまで意識していなかったこと問われたこと. ( 3 ) 反省することによって、主体は音楽の特質を. であった。それにより、場面 1の千晶にとっての. 新たに感受し、新たなイメージをもっ。あるい. 問題は「伸びていたチーズがちぎれると感じた原因 は何か」、場面 2の陽介にとっての問題は「静かな. は、もっているイメージを分節化する。 ( 4 ) 反省することによって、主体は知覚と感受の. 水色の場所と感じた原因は何かj となった。場面 3. 結びつきを認識する。. の大輔の場合は、不確定状況となるきっかけとなる 抵抗は、必ず聴こえると,思っていた音が聴こえない. 2 考察. ということが起こったことであった。それにより、. ( 1 )について. 場面 3の大輔にとっての問題は「チャリーンという 音はどこで鳴っているか」となった。. 不確定状況に直面し、問題が設定されると、主体 はその問題の解決に関わるものを探そうと、反省し. このように問題をもち反省し始めると、その問題. 始めることにより視点をもって音楽を聴くようにな. を解決しようと視点をもって音楽を聴き始める。つ. る。これが(1)でいう「音楽を聴く新たな視点」で. まり、問題が設定され反省が始められるということ. ある。ここで重要なのが、主体が初めは安定してい. は、音楽を聴く視点が与えられるということになる。. た状況から抵抗にあい、不確定状況に直面するとい. 【視点 c 問題をもとに注意深〈音楽を聴くことに. う主体を取り巻く状況の変化によって反省が始めら. より、抽出児の知覚・感受はどのように変化したか。】 上述したように、不確定状況に直面し、問題が設. れるということである。これはつまり、音楽を聴く 新たな視点が何の脈絡もなく外部から与えられたの. 定され、反省が始められることは、音楽を聴くとき. ではなく、問題意識をもった主体自身から生じたも. の新たな視点が与えられるということであるので、. のだということである。このように自分の中から生. 「問題をもとに注意深く音楽を聴く」というのは、. じた視点をもって音楽を聴くことで、主体にとって. 「新たな視点をもって音楽を注意深く聴く」ことに. 音楽から受け取るものが変化する。それが ( 2 ) ( 3 )の. なる。新たな視点をもって音楽を注意深く聴くこと. 4 )の機能につながっていくといえる。 機能であり、 (. によって、抽出児の知覚・感受にどのような変化が あったのかを以下にまとめる。. また、場面 2の陽介のように、音楽を聴く新た な視点をもつことで当初の問題に対する解決だけに. 表 5 抽出児の知覚・感受の変化 .感受したイメージの .知覚と感受の関連づ ・感受したイメージの分節化と、知覚と感受 の関連づけのさらな :喜楽の重要素の新たな知覚 たな感受 ・知覚と感受の関連づけ :喜楽の諸要素の新たな知覚 たな感受. 向かうわけではない場合もあるということがみえた。 陽介は、新たな視点で音楽を聴いたことによって受 け取ったものをもとに、当初問題としていたことと は違った視点、をもって楽曲の味わいを広げていた。 今回はこの部分についての詳細な分析はできなかっ たが、陽介の場合は反省することによって当初の問 題がっくりかえられたということが推測できる。. N 結論と考察. 1 結論. ( 2 )と( 3 )について. 本研究の目的は、音楽科鑑賞授業における音楽的. ( 1 )で述べたように、反省することによって新た. 思考にみられる反省の機能を明らかにすることであっ. な視点をもって音楽を聴くようになることで、主体. た。ここでは、結論として、抽出児にとって反省が. は、それまで気がつかなかった音楽の諸要素を知覚. どのように働いたかをもとに音楽科鑑賞授業におけ. したり、今までイメージしなかったようなことを感. る音楽的思考にみられる反省の機能を以下の4点に. 受したりする。また、それまで感受していたイメー. まとめる。. ジを広げたり分節化したりする。. ( 1 ) 反省することによって、主体は設定された問 題にもとづいて音楽を聴く新たな視点をもっ。. これは、どのような場合も同様に新たな知覚や感 受や感受したイメージの分節化がなされるというわ. ( 2 ) 反省することによって、主体はそれまでに知. けではない。実践分析からわかるように、子どもそ. 覚していなかった音楽の諸要素を新たに知覚する。. れぞれにより、あるいはその状況により異なる。場. -22-.
(11) 音楽科鑑賞授業における音楽的思考にみられる反省の機能(藤本佳子). の千品のように、感受したイメージの分節化が 面1. についての知覚・感受を広げたり、知覚と感受を結. 中心になされる場合もあれば、場面 2の陽介や場. びつけたりするきっかけを与えることで、大輔のそ. 面 3の大輔のように新たな知覚・感受が中心になさ. の音への関わり方が変わる可能性も大いにあったと. れる場合もある。. いえる。. 今回の実践分析において千晶の姿からはイメージ の分節化をどんどん進めていく様子が見られたが、 これも別の子どもの場合は千晶とは異なった分節化. 3 全体考察と今後の課題 鑑賞における反省の機能を以上のように導出した. を進めていく様子がみられるだろう。また、同様に. ところで、表現領域と鑑賞領域における反省の機能. 千晶であっても、場面が異なればイメージを分節化. の共通点や相違点について検討してみたい。表現領. していく様子は異なるであろうし、イメージを分節. 域に関しては、藤本. 化するのではなく、新たな知覚・感受をするかもし. 共通点は、反省を行うことで知覚・感受が促され、. れない。新たな知覚・感受についても、子どもそれ. それらの結びつきに意識が向けられていくとしづ点. ぞれにより、あるいはその状況によりその程度が異. である。これは表現・鑑賞領域のどちらの学習も知. なると考えられる。. 覚・感受が基盤となっているからだといえる。相違. ( 2 0 1 9 ) を参照する。まず、. 点は、表現領域では反省することによってイメージ ( 4 )について. と音楽とのズレを認識し、そのズレを解消するため. ( 1 )のように新たな視点をもって音楽を聴き、 ( 2 )・. の方法を見出していたのに対し、鑑賞領域ではイメー. ( 3 )のように新たな知覚・感受をしたりイメージを. ジと音楽との聞のズレを認識するのではなく、その. 分節化したりすることを繰り返していくことで、主. イメージが音楽のどこから生じたのかを見出してい. 体は自身が知覚したことと感受したこととの関係性. たという点である。これはまさに「曲想と音楽の構. を認識してし、く。それまでは、音楽の諸要素を知覚. 造との関わりなどについて理解しながら、曲や演奏. しているた、けであったり、直感的に 100な感じ」. のよさを見いだし、曲を全体にわたって味わって聴. と感受しているだけで、あったりしたものが、「音楽. くJ17)ということである。したがって鑑賞授業に反. J 100 のムム(諸要素)が 0 0な感じ(イメージ ). 省を位置付けることは、大変意義あることだといえ. な感じ(イメージ)がするのは音楽がムム(諸要素). る 。. だから」のように結びつけられてし、く。これが ( 4 ). しかし、研究授業において場面 1や場面 2のよ うに反省によって知覚と感受の結びつきを認識し、. の機能である。. 4 )の機能は、音楽を新たな視点をもって聴 この (. 鑑賞活動に広がりや深まりが見られた場面があった. き ( ( 1 )の機能)、それによって新たに知覚・感受を. 一方で、場面 3のように鑑賞活動に特に広がりや深. したり感受したイメージを分節化したりすること. まりが見られない場面もあった。場面 3では、授業. ( ( 2 )・( 3 )の機能)をもとになされるといえる。した. 者がきっかけを提供することで鑑賞活動が広がり深. ( 2 ) ( 3 )の機能が がって、反省をし始めていても、(1). まる可能性があったかもしれない。したがって、反. 十分に機能しなかったり、反省の途中で主体の問題. 省が豊かな鑑賞活動へと方向づけるものとなるよう. に対する意識が散漫になったりした場合は ( 4 )の機. に、授業の中で授業者が視点をもつことが重要であ. 能に至らないことも考えられる。今回の実践分析に. る。そのためには、授業者が今回挙げた反省の機能. おいても、場面 3の大輔は新たな知覚・感受はした. を念頭に置き、子どもの様子に応じて、子どもの発. ものの、知覚と感受を結びつけるまでには至らなかっ. 言等を整理したり子どもの知覚・感受が広がり深ま. た。この場面での大輔は、探していた音を見つけた. るような問し、かけをしたりする等の関わり方を考え. ことで満足した様子が見られ、それ以上その音に対. ていく必要がある。. して注意深く観察する様子は見られなかった。大輔. また、今回実施した研究授業では子どもたちだけ. にとってその音が重要でなくなったという見方もで. で、グ、ループ交流をする場面もあった。筆者はここで. きるが、例えば大輔がそこでどういったイメージを. も反省が行われる可能性を考え、子どもたちにグルー. もっているのかを問う等、この場面で教師がその音. プ交流の視点を与えた。しかし実際は、「意見を話. -23-.
(12) 学 校 音 楽 教 育 研 究 第2 4 巻. 2 0 2 0年. したら音楽を聴く」ということを人数分繰り返す形. Vo . l9 ,p .1 5 2 . 松野安男訳 ( 1 9 7 5 ) ~民主主義と教育. 式的な活動となり、反省がなされることはなかった。. (上)Jl岩波文庫, p p .2 3 1 2 3 2. 6 ) 賓田真由美 ( 1 9 8 9 )r 音楽学習における問題解決活動の. その要因としては、子どもたちに反省の態度がまだ. 組織化. 育まれていなかったことが考えられる。したがって、. 『反省J],~課題設定J],~情報処理』活動の影. J~日本教科教育学会誌』日本教科教育学会,第 13. 授業者が、子どもが知覚したことに対してそこから. 響. どんな感じがする(イメージをもっ)かを問う、子. 巻第 3・ 4号 , p p .1 0 7 1 1 4 7 ) 野浪俊子 ( 1 9 9 8 )r 音楽科カリキュラムの理論的基礎と. どもが感受したことに対してそれは音楽のどのよう なところから感じたのかを問う等、反省を促すフア. なる感情の問題解決過程に関する考察 -J デューイの. シリテーターとして存在することで、反省の態度を. 『美的経験』による反省的思考をもとにーJ~芸術教育 実践学(1)Jl芸術教育実践学会, p p .3 643. 促す環境を整え、それを継続していくことが必要で. 8 ) 藤本佳子 ( 2 0 1 8 )r 音楽科の問題解決学習における子ど. あると考えられる。. もの問題意識の変容ー録音再生による反省に着目して 」. 今後は、上記のような課題についての改善点をふ. 『学校音楽教育実践論集』日本学校音楽教育実践学会,. まえた授業実践を重ねながら、音楽科授業における. 第2 号 , p p .5 4 5 5. 反省の具体的方法や授業内での位置づけ等をさらに. 2 0 1 9 )r 問題解決としての音楽的思考におけ 9 ) 藤本佳子 (. 明確にし、反省を生かした音楽授業のモデ、ル構築に. るリフレクションの機能ー思考の連続性に着目して. ついて検討していきたい。. 」. 3 『学校音楽教育研究』日本学校音楽教育実践学会,第2 巻 , p p .1 1 2. 注. 1 ) 2 0 0 0年代から、音楽科の学力に関して「知識と技能. r e f l e c t i o n )は、「反省」の他、 1 0 ) 本研究での「反省 J( 「リフレクション J r 省察 J r 熟慮」等と訳されることが. の向上」とし、う学力観から、「知覚・感受を基盤として の音楽的思考」という学力観への転換が始まり、音楽. ある。. 的思考そのものについての研究や、音楽的思考が音楽. 1 1 ) 兼平佳枝 ( 2 0 1 7 )r 音楽的思考」前掲書, p .4 0. 科の学力であるという考え方に基づいた授業や評価に. i t .,p .1 9 6 .訳 p .1 0 4 1 2 ) JohnDewey(1933)op. c. ついての研究がなされてきた。そして、学習指導要領. b i d . ,p .1 2 0 .訳 p .1 2 1 3 ) i. (平成2 9 年告示)にも学力観の転換が明示された。. 1 4 ) デ、ューイは困難や困惑が生じた状況のことを「不確. 2 0 0 9 )r 日本の学校音楽教育における『音楽 兼平イ圭枝 (. t h ei n d e t e n n i n a t es i t u a t i o n ) J と呼んでいる。 定状況 (. 的思考』の展開過程j 北海道教育大学紀要(教育科学編). John Dewey( 19 3 8 ) L o g i c :T h eT h e o r yo l I n q u i r y,LW ,. 第伺巻第 1号 , p p .4 7 ・ 5 4. Vo . l1 2,p .1 0 9 .魚津郁夫訳 ( 1 9 8 0 )r 論理学一探究の理. 高橋澄代・小島律子 ( 2 0 0 9 )r 音楽科における思考力を. 論 J~世界の名著 59 パースジェイムズデューイ』上 山春平編,中央公論社, p .4 9 2. 育成する単元の構成原理」大阪教育大学紀要第 V部門. 1 5 ) JohnDewey(1933)op. c i t .,p .1 9 6 .訳p .1 0 4. 7巻第 2号 , p p .8 E ト1 0 2 教科教育第5 横山真理・小島律子 ( 2 0 1 2 )r パフォーマンス課題にお. 1 6 ) 出典:塚谷晃弘解説『サン=サーンス動物の謝肉祭』 全音楽譜出版社, p p .3 3 4 0. ける音楽的思考過程の質的評価」大阪教育大学紀要第. 2 0 1 8 ) 前掲書, p .2 4 1 η 文部科学省 (. V部門教科教育第6 1巻第 1号 , p p .5 9 7 2 文部科学省 ( 2 0 1 8 ) ~小学校学習指導要領(平成29年 告示)解説音楽編』東洋館出版社, p p .7 1 3. 付記 ・本研究は、日本学校音楽教育実践学会第2 4回全国大会. 2 0 0 9 )向上論文, p .5 2 2 ) 兼平佳枝 ( 兼平佳枝 ( 2 0 1 7 )r 音楽的思考J 日本学校音楽教育実践. 自由研究での口頭発表をもとにしている。. 学会編『音楽教育実践学事典』音楽之友:ti. p .4 0. -本研究における実践の逐語記録等のデータの使用、公. h i n k ,LW ,Vo . l8 ,p .1 1 3 3 ) JohnDewey(1933)HowWeT 植田清次訳 ( 1 9 5 5 )~思考の方法』春秋社, p .4. 表については、実践分析の対象となった児童とその保護 者の承諾を得ている。. 4 ) i b i d .,p .1 1 5 訳p .6. ・逐語記録に記載している子どもの名前は全て仮名であ. 5 ) John Dewey(1916)Democracy and E d u c a t i o n, M W ,. る 。. -24.
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