• 検索結果がありません。

自転車競技(200mFTT,250mTT,500mTT,1kmTT,4kmTT)における記録とレース中の速度変化特性,クランク回転数変化特性およびギア比との関係

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "自転車競技(200mFTT,250mTT,500mTT,1kmTT,4kmTT)における記録とレース中の速度変化特性,クランク回転数変化特性およびギア比との関係"

Copied!
19
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)自転車競技の記録に与える要因. 177. 症例・事例報告. 自転車競技(200mFTT, 250mTT, 500mTT, 1kmTT, 4kmTT)における記録とレース中の速度変化特性, クランク回転数変化特性およびギア比との関係 太田 洋一 *,高嶋  渉 **,池田 祐介 **,貴嶋 孝太 **,村田 正洋 ***. Relationship between race performance and pacing strategy, gear ratio and pedaling rate in the 200m FTT, 250 and 500m TT, 1 and 4km TT track cyclists Yoichi Ohta*,Wataru Takashima**,Yusuke Ikeda**, Kota Kijima**,Masahiro Murata***. 要   約 本研究の目的は,自転車競技におけるレース分析から,速度変化,クランク回転数変化およびギア比と記録との関 係を明らかし,トレーニングおよびコーチングへの示唆を得ることである.分析対象者は第 10 回チャレジ・ザ・オリ ンピックの 200mFTT, 250mTT, 500mTT, 1kmTT, 4kmTT に参加した選手計 177 名である.レース中の自転車及び 選手の全景をパンニング撮影し,走行速度,クランク回転数およびギア比を撮影動画から算出した.200mFTT, 250mTT, 500mTT, 1kmTT においては,レース中の最高速度およびスタート区間速度が記録に強く影響する要因で あった.一方,4kmTT ではレース中の速度低下量の小さい選手ほど記録が良いことが示された.また,200mFTT, 500mTT, 1kmTT においては,ギア比と記録との間に有意な負の相関関係が認められた.以上のことから, 200mFTT, 250mTT, 500mTT, 1kmTT においては,スタート区間速度および最高速度を高めるトレーニングが重要 であり,4kmTT では高い速度を維持できる能力を高めることが重要であると示唆された. キーワード:自転車競技,速度分析,レース分析,レースパターン,コーチング. **. 愛知淑徳大学健康医療科学部スポーツ・健康医科学科 Department of Sports and Health Sciences, Faculty of Health and Medical Scienses, Aichi Shukutoku University 〒 480-1197 愛知県愛知郡長久手町長湫片平 9 9 Katahira, Nagakute, Nagakute-cho, Aichi-gun Aichi 480-1197, Japan E-mail: [email protected]; [email protected]. ***. 国立スポーツ科学センター Japan Institute of Sports Sciences. ***. 財団法人日本自転車競技連盟. Japan Cycling Federation 受付日: 2010 年 10 月 27 日 受諾日: 2011 年 2 月 28 日.

(2) トレーニング科学 Vol.23 No.2, 2011. 178. Abstract The present study investigates the relationship of the performance to the pacing strategy, the gear ratio and the pedaling rate, and makes some suggestions for coaching and training track cyclists in the 200m flying time trial (FTT), 250m, 500m,1km and 4km time trial (TT). During the period of Challenge the Olympics in 2010, the races of 117 cyclists were recorded, and pacing strategies, gear ratios and pedaling rates were calculated. The performance during the 200mFTT, 250m, 500m and 1km TT were considerably influenced by the maximal and starting velocity during the races, but not by decreasing velocity. We also found negative relationships between the gear ratio and the performance in the 200m, 500m and 1km TT, and between the decreasing velocity and the performance in the 4km TT. These results suggested that the cyclists should improve their starting and top speed in the 200m, 250m, 500m and 1km TT, whereas they should also improve their ability to maintain high speed in the 4km TT. Key words : Track cycling, Pacing strategy, Gear ratio, Pedaling rate, Coaching. 要因が異なる.200mFTT や 250mTT ではスタート局面. Ⅰ.緒言. での速度や最大速度が他の局面と比較して記録に強く関 自転車トラック競技におけるタイムトライアル種目に. 係する要因であると報告されている 6,. 7, 8). .1kmTT では. は,1)あらかじめ加速を行い,最高速度に近い状態で. スタートも重要な局面であるが 9),前半局面における平. スタートラインを横切り,200m 区間を全速力で通過し. 均速度や最高速度と記録との間に強い相関関係が認めら. てタイムを競う 200m フライングタイムトライアル競技. れている 1,. (200mFTT)(男女),2)静止状態(スタンディング). 2, 7). .一方,1kmTT の後半の速度低下は競技. レベルにかかわらず一定であり,記録との関係は小さい. からスタートし決められた距離(500m, 1km, 3km,. と報告されている 1,. 4km)を走りきるタイムトライアル競技(500mTT,. どレース中の速度のばらつきや後半の速度低下が小さ. 1kmTT, 3kmTT, 4kmTT)がある.500mTT, 3kmTT. く,後半局面(速度低下)の影響が強いと示唆されてい. は女子のみで,1kmTT, 4kmTT は男子のみの競技であ. る 2, 4) .これらのことから,200mFTT,250mTT,. る.また,選手発掘のためのタイムトライアル競技と. 1kmTT ではスタート後ペース配分を行わない“all-out. して,静止状態から 250m を走りきる 250m タイムトラ. strategy”が有効であり,一方 4kmTT では走行速度の. イアル(250mTT)も日本の競技会では行われている.. ばらつきを抑えたイーブンペースで完走することが好成. 自転車タイムトライアル競技におけるレースパターン. 2, 7). .4kmTT では記録の良い選手ほ. 績につながると考えられる.. の分析は古くから行われており,200mFTT, 1kmTT,. このように,レース中の速度変化パターンや各局面に. 4kmTT ではスタートからレース中盤まで速度が増加し. おける速度と記録との関係は明らかにされているもの. 最高速度に達した後,ゴールまで速度が低下していく. の,レース中のクランク回転数の変化や競技レベルとギ. レースパターンであることが明らかにされている. 1, 2, 3, 4, 6, 7). .. ア比との関係は不明な点が多い.自転車の走行速度は規. したがって,記録を縮めるためには,レース中に高い走. 則により車輪の大きさに制限があることから,ギア比と. 行速度を獲得することと,それを維持することあるいは. クランク回転数によって決定されると言える.したがっ. その低下を低く抑えることが求められる.記録に関係す. て,レース中の回転数の変化を競技レベル別に明らかに. る要因としては,速度が増加していくスタート・前半局. することや,競技レベルとギア比との関係を検討するこ. 面,最高速度が出現し高い走行速度が維持されるハイス. とは,記録を短縮するためのペース配分や,ギア比の選. ピード局面,速度が徐々に低下していく後半局面との関. 択のために重要な資料となる.. 係が検討されており,種目によって記録に強く関連する. 4kmTT では,イーブンペースを達成するために,監.

(3) 自転車競技の記録に与える要因. 179. 3. 2. 4. 1. ホーム側 図1. ビデオ撮影の簡略図. 督やコーチが選手にラップタイムをフィードバックして. ク(トラック周長 333m の競技場:グリーンドーム前橋). ペースを調整することがある.選手への適切なフィード. であった.分析対象選手は 200mFTT に出場した男子選. バックは記録向上のために重要であると報告されてい. 手 51 名および女子選手 18 名,250m に出場した男子選手. る 12).また,ペース配分の目的は「一定距離内において自. 35 名,500mTT に出場した女子選手 19 名,1kmTT に. 己の持つ全能力を最大限に,かつ効果的に発揮する」1). 出場した男子選手 37 名,4kmTT に出場した男子選手 17. であることから,4kmTT ではイーブンペースを維持で. 名であった.. き,かつ出来るだけ速い速度をレース前に設定する必要 がある.しかし,ペース配分を決定するための指標は明 確にされているとは言えない. そこで,本研究では,200mFTT,250mTT,500mTT,. B.ビデオ撮影 競技場の観客席上段からデジタルビデオカメラ (Sony 社製,DCR-TRV900)を用いて,自転車及び選手の全景. 1kmTT および 4kmTT において,各局面(スタート,前. をパンニング撮影した(映像のサンプリング速度:60fps,. 半,中間,後半)の速度と記録との関係を再検討するだ. シャッタースピード 1/1000 秒) (図 1) (画像 1).. けでなく,レース中のクランク回転数の変化や,クラン ク回転数およびギア比と記録との関係を,競技レベル別 に明らかにすることにより,ペース配分を計画するため の指標を提案し,指導やペース配分の方向性およびト レーニング方法を検討するための手がかりを示すことを. 分析用目盛り. 目的とした.. Ⅱ.方法 A.対象競技会および競技者数 撮影対象の試合は第 10 回チャレンジ・ザ・オリンピッ. 画像 1. 分析に用いた画像.

(4) トレーニング科学 Vol.23 No.2, 2011. 180. C.分析方法および測定項目. (64m)におけるそれぞれの平均速度をゴールまで算出. 今回対象とした大会で用いられた競技場ではゴール位 置を合わせるために,スタート位置が種目によって異な. した.後半の速度低下量は,最高速度と最高速度が発揮 されてからの最低速度との差とした.. るものであった.したがって,種目に応じて以下のよう. 4kmTT は,スタートから 154.8m 区間,154.8m から. な分析区間とした.分析は 60fps のサンプリング速度で. 322.3m 区間,その後 1 周(333m)毎の平均速度をゴー. 行った.. ルまで算出した.また,最高速度の 90 %および 95 %維. 200mFTT は事前にトラックに貼り付けた 20m 毎の目. 持区間距離および,スタート区間を除く前半(154.8m. 盛りを利用して,スタートラインより 100m 前からゴー. から 2000m 区間)および後半(2000m からゴールまで). ルまでの各区間の平均走行速度を算出し,スタートライ. の平均速度を算出した.. ン約 49m 手前の速度,最高速度,後半の速度低下量を. 競技レベルはゴールタイムから 4 グループ(Top 群,. 算出した.後半の速度低下量は,最高速度と最高速度が. High 群, Moderate 群, Low 群)に分けた(表 1) .ギア比. 発揮されてからの最低速度との差とした.. (g)は直線 20m 区間のタイヤ回転数とクランク回転数. 250mTT は,スタートからコーナー入り口までの直線. を動画から導き出し,その比から算出した.各区間のク. 約 32m(スタート区間),コーナー入り口からコーナー. ランク回転数(rpm)はタイヤ周長を 2.086m として以. 中心(52m),コーナー中心からコーナー出口(52m),. 下の式から算出した.. rpm = % v # (g # 2.086) - 1 / # 60. コーナー出口から直線中心(32m),直線中心からコー ナー入り口(32m),コーナー入り口からゴールライン. g:ギア比, v:走行速度( m/s ). (52m)の各区間の平均速度を算出した.さらに,ス タートを除く前半(30m から 150m 区間)および後半. D.統計解析. (150m からゴールまで)の平均速度を算出した. 500mTT はスタートからコーナー入り口までの直線約. 記録と各測定項目間の関係を検討するために Peason. 30m 区間(スタート区間),曲線区間(103m),直線区. の積率相関係数を算出した.競技レベルによる群間の違. 間(64m)の各平均速度をゴールまで算出した.後半の. いは,対応の無い一元配置分散分析を行い,有意であっ. 速度低下量は,最高速度と最高速度が発揮されてからの. た項目は,Tukey の多重比較を行った.統計解析には. 最低速度との差とした.. SPSS ソフトウェアを用いた.すべての検定において有. 1kmTT ではスタートからコーナー入り口までの直線. 意水準は 5 %未満とした.. 28.7m(スタート区間)と曲線区間(103m) ,直線区間. 表1. 競技レベルにおける記録の範囲と人数. Top群. High群. Moderate群. Low群. 男子200mFTT. 10.042‐10.478s n=10. 10.512‐10.789s n=10. 10.811‐10.945s n=10. 11.009‐11.54s n=21. 女子200mFTT. 11.782‐12.078s n=4. 12.33‐12.657s n=5. 12.726‐13.374s n=5. 14.214‐14.741s n=4. 250mTT. 18.482‐18.705s n=5. 18.856‐18.989s n=9. 19.136‐19.444s n=12. 19.514‐20.498s n=9. 500mTT. 35.67‐38.173s n=3. 38.501‐39.37s n=4. 40.116‐40.966s n=7. 41.234‐45.6s n=5. 1kmTT. 64.863‐66.04s n=5. 66.41‐67.924s n=8. 68.443‐70.275s n=13. 70.75‐74.886s n=11. 4kmTT. 288.233‐293.311s 293.768‐299.147s 300.546‐305.425s 306.331‐309.592s n=4 n=4 n=5 n=4.

(5) 自転車競技の記録に与える要因. 181. 後,ゴールにかけて直線的に低下した.記録は全ての群. Ⅲ.結果. 間で有意な違いが認められた(図 3A).最高速度は. A.男子 200mFTT. High 群と Moderate 群間以外の群間で有意な違いが認. 図 2 には男子の 200mFTT におけるスタート 100m 手. められた(図 3B) .ギア比は Low 群と比較して Top 群,. 前からゴールまでの速度変化曲線(A)およびクランク. High 群および Moderate 群が有意に高値を示した(図. 回転数変化曲線(B)を競技レベル別に示した.全ての. 3C) .最大クランク回転数では Moderate 群と Low 群と. 競技レベルにおいて,スタートライン区間まで速度が増. の間に有意な違いが認められた(図 3D) .スタートライ. 加し,最高走速度に達し 50m 付近まで速度は低下し一. ン 49m 手前速度では Low 群と比較して Top 群,High 群. 定を維持した後,110m 付近で一旦速度が上昇し,その. および Moderate 群が有意に高値を示した(図 3E) .速. 図2. 男子 200mFTT の速度曲線およびクランク回転数曲線. 図3. 男子 200mFTT の競技レベルによる比較.

(6) トレーニング科学 Vol.23 No.2, 2011. 182. 図4. 男子 200mFTT の記録と各要因との関係. 度低下量においては群間に有意な違いは認められなかっ. 図 5 には女子の 200mFTT におけるスタート 100m 手. た(図 3F) .最高速度,スタートライン手前速度および. 前からゴールまでの速度変化曲線(A)およびクランク. ギア比と記録との間に有意な負の相関関係が認められた. 回転数変化曲線(B)を競技レベル別に示した.Low 群. (図 4A,B,E).一方,速度低下量および最大クランク. を除く 3 群では,スタートライン区間まで速度が増加し. 回転数と記録との間に有意な相関関係は認められなかっ. 最高速度に達した後,ゴールまで低下していく傾向を示. た(図 4C, D) .. した.Low 群はレース中の速度の増減が他の群と比べて 大きな傾向であった.記録は全ての群間で有意な違いが. B.女子 200mFTT. 認められた(図 6A) .最高速度は Top 群と High 群およ. 図5. 女子 200mFTT の速度曲線およびクランク回転数曲線.

(7) 自転車競技の記録に与える要因. 図6. 女子 200mFTT の競技レベルによる比較. 図7. 女子 200mFTT の記録と各要因との関係. 183.

(8) トレーニング科学 Vol.23 No.2, 2011. 184. び High 群と Moderate 群との間で有意な違いは認めら. Moderate 群および Low 群と比較して有意に高値を示. れなかったが,その他の群間には有意な違いが認められ. し,High 群が Low 群よりも有意に高値を示した(図 9E) .. た(図 6B) .ギア比は Low 群と比較して Top 群,High. 前半速度においては全ての群間に有意な違いが認められ. 群および Moderate 群が有意に高値を示した(図 6C).. た(図 9F) .最高速度,スタート区間速度,最大クラン. 最大クランク回転数では Top 群が Low 群と比較して有. ク回転数,および前半・後半速度と記録との間にそれぞ. 意に高値を示した(図 6D) .スタートライン 49m 手前速. れ有意な負の相関関係が認められた(図 10A,B,C,D) .. 度では Low 群と比較して Top 群,High 群および. 特に,前半速度と記録との間には強い相関関係が認めら. Moderate 群が有意に高値を示した(図 6E).速度低下. れた.一方,ギア比と記録との間に有意な関係は認めら. 量においては群間に有意な違いは認められなかった(図. れなかった(図 10E) .. 6F) .最高速度,スタートライン手前速度,最大クラン ク回転数およびギア比と記録との間にそれぞれ有意な負. D.500mTT. の相関関係が認められた(図 7A,B,D,E) .一方,速. 図 11 は女子の 500mTT におけるスタートからゴール. 度低下量と記録との間に有意な関係は認められなかった. までの速度変化曲線(A)およびクランク回転数変化曲 線(B)を競技レベル別に示したものである.全ての競. (図 7C) .. 技レベルにおいて,150m 区間まで速度は漸増し,その. C.250mTT. 後最高速度を発揮した後ゴールまで速度が低下する傾向. 図 8 には男子の 250mTT におけるスタートからゴール. を示した.後半の速度低下は,200mFTT と比較すると. までの速度変化曲線(A)及びクランク回転数変化曲線. 小さかった.記録は Top 群と High 群以外の群間で有意. (B) を競技レベル別に示した.全ての競技レベルにおい. な違いが認められた(図 12A).最高速度は Top 群と. て,150m 区間まで速度は漸増し,その後,若干の増加. High 群との間には有意な違いは認められず,また,. もしくは速度を維持したままゴールする傾向を示した.. High 群と Moderate 群との間にも有意な違いは認められ. 他の種目で見られるような後半局面の大きな速度低下は. なかった.一方,その他の群間には有意な違いが認めら. 認められなかった.記録は全ての群間で有意な違いが認. れた(図 12B) .ギア比は High 群と Moderate 群が Low. められた(図 9A) .最高速度は Top 群が Moderate 群お. 群と比較して有意に高値を示した(図 12C).最大クラ. よび Low 群と比較して有意に高値を示し,High 群が. ンク回転数では Top 群が Moderate 群および Low 群と. Low 群よりも有意に高値を示した(図 9B) .ギア比では. 比較して有意に高値を示した(図 12D).スタート区間. 群間に有意な違いは認められなかった(図 9C) .最大ク. 速度では Top 群が Moderate 群および Low 群と比較し. ランク回転数においても,群間に有意な違いは認められ. て有意に高値を示し,また High 群は Low 群と比較して. なかった(図 9D).スタート区間速度では Top 群が. 有意に高値を示した(図 12E).速度低下量においては. 図8. 250mTT の速度曲線およびクランク回転数曲線.

(9) 自転車競技の記録に与える要因. 図9. 250mTT の競技レベルによる比較. 図 10. 250mTT の記録と各要因との関係. 185.

(10) トレーニング科学 Vol.23 No.2, 2011. 186. 図 11. 500mTT の速度曲線およびクランク回転数曲線. 図 12. 500mTT の競技レベルによる比較. 群間に有意な違いは認められなかった(図 12F).最高. E.1kmTT. 速度,スタート区間速度,最大クランク回転数,スター. 図 14 は男子の 1kmTT における速度変化曲線(A)お. ト区間クランク回転数,およびギア比と記録との間にそ. よびクランク回転数変化曲線(B)を競技レベル別に示. れぞれ有意な負の相関関係が認められた(図 13A,B,. したものである.全ての競技レベルにおいて,300m 区. D,E,F) .一方,速度低下量と記録との間に有意な関. 間まで速度は漸増し,その後,ゴールまで速度は低下す. 係は認められなかった(図 13C) .. る傾向を示した.記録は全ての群間で有意な違いが認め られた(図 15A) .最高速度は Top 群と High 群との間で 有意な違いは認められなかったが,その他の群間には有.

(11) 自転車競技の記録に与える要因. 図 13. 図 14. 187. 500mTT の記録と各要因との関係. 1kmTT の速度曲線およびクランク回転数曲線. 意な違いが認められた(図 15B).ギア比は High 群が. ランク回転数においては Top 群が High 群よりも有意に. Top 群,Moderate 群,および Low 群よりも有意に高値. 高値を示した(図 15F) .最高速度,スタート区間速度,. を示した(図 15C) .最大クランク回転数では Top 群が. およびギア比と記録との間にそれぞれ有意な負の相関関. High 群および Moderate 群よりも有意に高値を示した. 係が認められた(図 16A,B,E) .一方,最大クランク. (図 15D).スタート区間速度では Top 群が Low 群と比. 回転数および速度低下量と記録との間に有意な関係は認. 較して有意に高値を示した(図 15E).スタート区間ク. められなかった(図 16C,D) ..

(12) 188. トレーニング科学 Vol.23 No.2, 2011. 図 15. 1kmTT の競技レベルによる比較. 図 16. 1kmTT の記録と各要因との関係.

(13) 自転車競技の記録に与える要因. F.4kmTT. 189. 間で有意な違いは認められなかったが,その他の群間に. 図 17 には男子の 4kmTT における速度変化曲線(A). は有意な違いが認められた(図 18A).最高速度,ギア. およびクランク回転数変化曲線(B)を競技レベル別に. 比,最大クランク回転数,スタート区間速度はそれぞれ. 示した.全ての競技レベルにおいて,300m 区間まで速. 群間で有意な違いは認められなかった(図 18B,C,D,. 度は漸増し,その後,ゴールまで速度は低下する傾向を. E).速度低下量は,Top 群と Low 群および High 群と. 示した.競技レベルが高いほど,最高速度と最低速度の. Low 群との間にそれぞれ有意な違いが認められた(図. 差が小さい傾向であった.記録は Top 群と High 群との. 18F).スタート区間を除くレース前半の平均速度(図. 図 17. 4kmTT の速度曲線およびクランク回転数曲線. 図 18. 4kmTT の競技レベルによる比較.

(14) 190. トレーニング科学 Vol.23 No.2, 2011. 図 19. 4kmTT の競技レベルによる比較. 図 20. 4kmTT の記録と各要因との関係.

(15) 自転車競技の記録に与える要因. 191. 19A)においては群間で有意な違いは認められなかった. 7B) .以上のことから,男女ともに記録を高めるために. ものの,レース後半の平均速度は全ての群間において有. は,助走の早い段階から速度を高めることが必須である. 意な違いが認められた(図 19B).レース前半および後. と示唆された.. 半のクランク回転数では,群間に有意な違いは認められ. ギア比は,男女ともに,Top 群,High 群,Moderate. なかった(図 19C,D).最高速度の 90 %持続距離は. 群の間に有意な違いは認められなかったものの(図 3C,. Top 群が Moderate 群および Low 群より有意に高値を示. 6C) ,記録が高い選手ほど大きい傾向を示した(図 4E,. し,High 群は Low 群よりも有意に高値を示した(図. 7E) .したがって,男女ともに,記録の良い選手は高い. 19E).最高速度の 95 %維持距離は群間で有意な違いは. ギア比を用いて高い最高速度を獲得していると推察され. 認められなかった(図 19F).最高速度,スタート区間. る.最大クランク回転数は,男子では群間に有意な違い. 速度,ギア比と記録との間に有意な関係は認められな. は認められなかったものの,Low 群を除くと最大クラン. かった(図 20A, B, F) .最高速度の 95 %維持距離と記. ク回転数の大きな選手ほど記録が良い傾向を示した(図. 録との間には有意な関係は認められなかったが,90 %維. 3D) .女子では,男子の Low 群のような特徴は認められ. 持距離との間には有意な負の相関関係が認められた(図. ず,記録の良い選手ほど最大クランク回転数は大きい傾. 20C) .レース前半および後半の平均速度と記録との間に. 向を示した(図 6D) .これらのことから,記録の良い選. はそれぞれ有意な負の相関関係が認められた(図 20D) .. 手は大きなギア比を用いており,さらに,高いクランク. 速度低下量と記録との間には有意な正の相関関係が認め. 回転数で走行していることが示された.したがって,女. られた(図 20E). 子の群間の最高速度差および男子の Low 群を除く群間 の最高速度差は,どちらかの影響が強いわけではなく,. Ⅳ.考察. ギア比およびクランク回転数の両方に起因すると推察さ れる.. A.200mFTT. 男子の Low 群の最大クランク回転数は High 群および. 200mFTT における,レース中の速度変化はスタート. Moderate 群よりも高い傾向を示し,Top 群と同様の値. ライン付近で最高速度に達し,後半局面では一旦速度. であった(図 3D) .このような群間の違いは,最大クラ. が増加した後,ゴールにかけて低下するという先行研. ンク回転数だけでなく,レース中のクランク回転数の変. 究の結果と同様の傾向を示した(図 2A)6).男子では競. 化(図 2B)を見ても同様であることから,Low 群は. 技レベル別にみても同様の傾向を示したことから,. レース中に高いクランク回転数で走行しているものの,. 200mFTT のレースパターンは記録に関係なく本質的に. 速度の増大につながっていないことが推察される.これ. 変わらないものであると示唆された.また,女子におい. は,ギア比が他の群と比較して著しく小さい(図 3C). ては男子と異なり,Low 群を除く 3 群でスタート直後か. ことに起因すると考えられる.また,このことはギア比. らゴールまでほぼ直線的に速度が低下したことから(図. を落として最大回転数を高めても,記録の向上に寄与し. 5A) ,レースパターンには性差が存在すると考えられた.. ないことを示唆している.したがって,200mFTT にお. 淵本ら 7) は,国際大会において記録の良い外国人選手. いてパフォーマンスを向上させるためには,クランク回. も,記録の悪い日本人選手とおよそ同じようにゴールま. 転数が極端に小さく,高いギア比を用いていない限り,. で速度が低下することを報告している.本研究の結果か. ギア比を上げるか,高いギア比で回転数を増加させ,最. らも(図 3F,4C,6F,7C),後半の速度低下の大きさ. 高速度を高める必要があると推察される.よって,本研. が記録の善し悪しを決定する要因では無いと示された.. 究で明確にされた競技レベルとギア比およびクランク回. 一方,200mFTT の記録と関係が強い要因としては最高. 転数との関係は,200mFTT において軽い負荷でクラン. 速度があげられており 7),本研究の結果(図 4A,7A). ク回転数を高めるトレーニングよりも,高いギア比を. は先行研究を支持するものであった.さらに本研究では,. “踏める”ようにするためのトレーニングが記録向上に. 競技レベルが高いほどスタート手前の助走の段階から高 い速度で走行していることが明らかとなった(図 4B,. 寄与することを裏付けするものである..

(16) トレーニング科学 Vol.23 No.2, 2011. 192. B.250mTT. 決定する要因であることから(図 9E,F,10B,C),高. 男子のみの競技である 250mTT は 200mFTT とは異. いギア比で高い最高速度を狙うよりも,前半局面で高い. なり,スタンディングからスタートする競技である.. 速度を獲得するために,自身が持つ最高速度が発揮され. レース中の速度変化は,150m 付近まで著しく速度が増. るギア比よりも低いギア比を選択していると推察され. 加し,その後緩やかな増加を示した後ゴールするパター. る.これらのことから,250mTT で記録を向上させるた. ンを示した(図 8A) .他の短距離種目で認められるよう. めには,最高速度を高めるだけでなく,スタートからの. な,レース後半での速度低下はほとんど認められなかっ. 加速能力の増大が重要であると考えられ,それに合わせ. た.競技レベル別に見ても,同様の速度変化パターンで. たギア比の選択が必要と示唆される.. あることから,前述の 200mFTT と同様に,250mTT の レースパターンは競技力に関係なく本質的に同様である. C.500mTT. といえる.記録に関係する要因としては,スタート. 女子のみの競技である 500mTT も 250mTT と同様に. 14.5m 地点のスプリットタイムが 250m のタイムの 85 %. スタンディングからのスタートであり,レース中の速度. を決定することや,約 10m までのタイムと記録との間. 変化はスタートから徐々に速度が増加していき 200m 付. に強い相関関係が認められている. 6, 7). .本研究において. 近で最高速度に達し,その後ゴールまで速度は低下する. も,記録の良い選手ほどスタートからコーナー入り口ま. パターンを示した(図 11A).競技レベル別に見ても,. での直線区間(約 30m)の平均速度が高く(図 9E,10B) ,. 同様の速度変化パターンであることから,前述の. スタート区間の加速能力が重要であると示唆する先行研. 200mFTT ・ 250mTT と同様に,500mTT のレースパ. 6, 7). を支持するものであった.また,30m から 150m. ターンは競技力に関係なく本質的に同様であろう.ス. 区間の平均速度(前半速度)は,スタート区間や,高い. タートからコーナー入り口までの直線区間(約 30m)の. 速度を維持する後半区間,さらに,最高速度よりも記録. 平均速度やレース中の最高速度は,記録の良い選手ほど. との間に強い関係を示したことや(図 10C),競技レベ. 高い傾向が認められた(図 12B,E,13A,B).一方,. ルにおいて有意な違いが認められたことから(図 9F),. 後半の速度低下と記録との間には有意な関係は認められ. スタート局面での速度をその後の前半局面でいかに増大. ず(図 13C),さらに,記録の良い選手の速度低下量が. させられるかが,250mTT の記録向上において最も重要. 大きい傾向を示したことは(図 12F),後半の速度低下. な要因であると示唆された.. の大きさがパフォーマンスを決定する要因ではないこと. 究. ギア比と記録との関係は 200mFTT とは異なり,競技. を示唆している.これらのことから,500mTT ではス. レベル間での有意な違いは認められなかった(図 9C,. タートから最高速度までの速度が記録を強く決定する要. 10E) .一方,最大クランク回転数は記録との間に有意な. 因であると言える.したがって,後半の速度低下を抑え. 関係が認められたことから(図 10D),記録の良い選手. ようとするよりも,スタート速度や最高速度を高めるこ. は高いクランク回転数を発揮していると考えられるが,. とが,記録の向上につながると考えられる.. 競技レベル間で最大クランク回転数に有意な違いが認め. ギア比は,記録の良い選手ほど大きい傾向を示した. られないことや(図 9D) ,レース中のクランク回転数の. (図 13F)ものの,Low 群を除くグループ間で有意な違. 差が小さい(図 8B)ことから,競技レベルの差をクラ. いは認められなかった(図 12C).一方,最大クランク. ンク回転数によって評価することは困難であると考えら. 回転数およびスタート区間のクランク回転数は,記録の. れる.このような,記録とギア比および記録とクランク. 良い選手ほど大きな傾向を示した(図 12D,13D,E).. 回転数の結果は,本研究で対象とした選手のギア比のば. これらのことから,スタート区間での高いクランク回転. らつきが小さいことや最高速度がゴール付近で出現する. 数の獲得が,スタート区間速度を高めるのにつながり,. といった他の種目とは特性が異なるためと推察される.. その差が記録の違いに強く反映されると推察される.し. また,200mFTT と比較すると,250mTT に出場した選. たがって,高いギア比を用いてスタート区間で高いクラ. 手は低いギア比を使用していた.これは,スタート局面. ンク回転数を獲得することが,スタート区間速度を高め. の速度および,その後の前半局面での速度が記録を強く. ることにつながり,記録向上に寄与すると考えられる..

(17) 自転車競技の記録に与える要因. D.1kmTT. 193. 高いクランク回転数を発揮して速度を高めているのに対. スタンディングからのスタートである 1kmTT(男子. して,High 群ではクランク回転数は低いものの高いギ. のみの競技)における,レース中の速度変化はスタート. ア比を用いていることから,同じような最高速度(図. から徐々に速度が増加していき 300m 付近で最高速度. 15B)であっても,ギア比と最大クランク回転数との関. に達し,その後ゴールまで速度は低下するパターンを. 係が Top 群と High 群との間で異なることが示された.. 示した(図 14A).この速度変化パターンは,1km より. 一方,スタート区間でのクランク回転数は Top 群が. 短い短距離種目と同様のであり,また,速度変化パ. High 群よりも有意に高値を示し(図 15F),さらにス. ターンに,競技レベルの違いは認められないことから. タート区間速度では Top 群が他の群より高い傾向を示し. 1kmTT も序盤から全力で行く“all out strategy”5) を. たことから(図 15E) ,Top 群と High 群における記録の. どの競技レベルにおいても採用していたと言えよう.. 有意な違いは(図 15A),スタート区間における走行速. この結果から各個人における効果的なペース配分につ. 度の違いに起因すると推察される.こられのことから,. いて議論することは困難であるものの,1kmTT では. 1kmTT では,スタート区間で高いクランク回転数を獲. “all out strategy”が最適なパフォーマンスをもたらす. 得できるギア比の選択も記録向上に寄与すると示唆され. 5, 13). ,日本一流選手(Top 群)および. た.また,有意な違いは認められないものの,レース中. 世界一流選手 11) が“all out strategy”を採用している. の速度低下量は High 群よりも Top 群が小さい傾向で. ことを考慮すると,1kmTT においてより高いレベルで. あった(Top 群: 3.13 ± 0.61m/s,High 群: 3.40 ±. 競技を行うためには“all out strategy”が必須であると. 0.48m/s) .Top 群は High 群よりも有意に小さいギア比. 考えられる.. を用いていることから(図 15C),低いギア比の使用が. とする先行研究や. 記録と速度要因との関係を見ると,記録の良い選手ほ. 後半の速度低下量を抑えている可能性が考えられる.し. ど最高速度が高く(図 15B,16A),また,スタート区. かし,低いギア比が後半の速度低下量(疲労)を低減さ. 間速度も高い傾向を示した(図 15E,16B) .この結果は,. せるか否かについてはさらなる検証が必要である.さら. 1kmTT のパフォーマンスにおいて,スタート区間の速. に,200mFTT で示されたように,低いギア比でクラン. 度と最高速度が重要であると示唆する先行研究を支持す. ク回転数の増加を目的にすると,最高速度の増大につな. 7, 10). .一方,後半の速度低下と記録との間. がらない可能性が考えられることから,Top 群および. に有意な関係は認められなかったことは(図 16C),競. Moderate 群がさらなる記録向上を目指すためには,高. 技レベルの高い選手も低い選手も同様の速度低下があっ. いギア比でのスタート速度の向上および,高いギア比で. たことを示すものであり,後半の速度低下がパフォーマ. クランク回転数を増加させることによる最高速度の増大. ンスを決定する要因では無いことを示唆している.これ. が必要であると考えられる.. るものである. らのことは,レース後半の速度低下を意識して,スター ト区間の速度や最高速度を抑えることが記録の向上には. E.4kmTT. つながらないことを示唆している.したがって,極端に. 男子のみの競技である 4kmTT におけるレース中の速. 後半の速度低下量が大きい場合を除いては,後半の速度. 度は,1 週目(250m ∼ 300m)辺りで最高速度に達した. 低下を抑えるトレーニングよりも,最高速度やスタート. 後,ゴールまで低下した(図 17A,B).他の短距離種. 区間速度を高めるためのトレーニングが,記録を向上さ. 目とは異なり,競技レベルによってレースパターンに違. せる上で重要であると考えられる.. いが認められた.競技レベルが高いほど,最高速度発揮. ギア比と記録との間には有意な関係が認められたが. 以降の速度低下量が小さく(図 17A,18F,20E) ,レー. (図 16E),グループ別で見ると,Top 群のギア比は. ス中の走行速度の変化が小さい選手ほど記録が良いこと. High 群よりも有意に小さかった(図 15C) .一方,最大. が示された.また,記録に与える影響はスタート区間を. クランク回転数は Top 群が High 群より有意に高値を示. 除くレース前半速度よりも後半速度の方が強く(図 19B,. し,その他の群よりも高い傾向を示した(図 15D).こ. 20D),レース後半に高い走行速度を維持することが重. れらの結果から,Top 群は High 群よりも低いギア比で. 要であると示唆された.一方で,短距離種目で認められ.

(18) トレーニング科学 Vol.23 No.2, 2011. 194. た記録と最高速度およびスタート区間速度との間に有意. 究の結果からは以下のことが示された.. な関係は認められず(図 18B,E,20A,B) ,さらに序. 1 .200mFTT は,男女ともに最高速度が記録に強く影. 盤に速度を高めた Low 群(図 17A)の記録は著しく低. 響する要因であり,競技レベルの高い選手は,高いギ. かった.これらの結果から,イーブンペースでの走行が. ア比を用いて最高速度を高めていると示された.また,. 4km で好記録を残すために効果的であると示唆された.. スタートライン手前から速度を高めることも,記録向. 記録とギア比との間には有意な関係は認められず,競. 上に寄与すると示された.一方,後半の速度低下が記. 技レベルによってギア比に有意な違いは認められなかっ. 録に与える影響は小さく,低いギア比で高いクランク. た(図 18C,20F) .一方,最大クランク回転数は競技レ. 回転数を獲得することは,記録向上にはつながらない. ベルの低い群 Low 群で高い傾向を示したものの(図. と示唆された.. 18D),レース後半のクランク回転数は競技レベルが高. 2 .250mFTT は最高速度だけでなく,スタート区間速. いほど大きな傾向を示した(図 19D) .これらの結果は,. 度やその後の前半局面における速度が重要な要因であ. 競技レベルの高い群ほど後半のクランク回転数の低下を. ると示された.したがって,スタート区間で速度を高. 抑えてイーブンペースを保っているのに比べて,競技レ. められるようなギア比の選択が重要と推察された.. ベルの低い群は,序盤でクランク回転数を高めすぎ,後. 3 .500mTT の記録はスタート区間速度および最高速度. 半の維持が困難であったことを示唆している.競技レベ. に強く影響され,スタート区間及び最高速度の増大が. ルの低い群は,レース前に適切なペース配分を設定でき. パフォーマンス向上につながると示された.. ていないためにこのような結果となったと推察される.. 4 .1kmTT は最高速度およびスタート区間速度と記録. 4kmTT では記録を最短にするために,出来るだけ高. との間に強い関係が認められたものの,後半の速度低. い速度でかつ,イーブンペースで走行できる速度をレー. 下と記録との間に有意な関係は認められなかった.. ス前に設定する必要がある.本研究では,最高速度の. 1kmTT における記録向上のためには,レース後半の. 90 %維持区間と記録との間に有意な関係が認められ(図. 走速度低下を抑えようとすることよりも,最高速度お. 20C) ,Top 群は最高速度の 90 %をレース中ほぼ維持し. よびスタート区間の速度を高めることが最も重要であ. ており(図 19E) ,95 %は最高速度発揮から約 2000m を. ると示された.. 維持していた(図 19F).また,競技レベルの高い群ほ. 5 .4kmTT では,他の種目で認められたような最高速. ど 90 %・ 95 %維持距離は長い傾向を示した(図 19E,. 度およびスタート区間速度と記録との間に有意な関係. F).これらのことから,レース中の最高速度の 90 %を. は認められなかったが,記録の良い選手ほど後半の速. レース後半で下回る場合は,Low 群や Moderate 群のよ. 度低下量が小さく,レース中の走行速度のばらつきが. うに序盤がオーバーペースであると予想される.一方,. 小さかった.したがって,記録向上のためには走行速. 最高速度の 95 %付近で走行できた場合は,理想的な. 度のばらつきを出来るだけ抑えることが重要であり,. イーブンペースを達成できていると考えられるものの,. トレーニングの中で一定ペースを維持できる速度の上. 最高速度が低い場合は 95 %を維持できたとしても好成. 限を探る試みが重要であると示唆された.. 績にはつながらないことから,トレーニングの中で最高 速度の 90 %∼ 95 %を維持できる速度の上限を探る試み. 引用文献. が不可欠であると考えられる.また,その上限を上げる ためのトレーニングが 4kmTT の記録向上のために重要 であろう.. 1 ) 青木純一郎,形本静夫,村岡功, 堀田昇,矢野成敏,高岡 邦夫,吉野貴順,富田寿人,横関利子,西野美智子,清水 達雄,前嶋孝,沢木啓祐,米田継武,藤原英興,田村吉広, 永江競:自転車競技選手の体力(9)および 1,000m タイムト ライアル・ 4,000m 団体追抜競技に関する研究(3),昭和. Ⅴ.まとめ. 62 年度日本体育協会スポーツ科学研究報告 No.Ⅱ 競技種目 別競技力向上に関する研究−第 11 報−自転車競技 No.9:. 本研究は,自転車トラック競技において,レース分析 を行い記録に関係する要因について検討を行った.本研. 311-327, 1987 2 ) 青木純一郎,形本静夫,村岡功, 堀田昇,矢野成敏,西野 美智子,吉野貴順,玉木啓一,富田寿人,藤原英興:自転.

(19) 自転車競技の記録に与える要因. 195. 車競技選手の体力(10)および 1,000m タイムトライア. 7 ) 淵本隆文,田内健二,花井淑晃,高橋英幸:自転車競技に. ル・ 4,000m 個人追抜および 4,000m 団体追抜競に関する研. おけるバイオメカニクス的サポート−トラック短距離種目. 究(4),昭和 63 年度日本体育協会スポーツ科学研究報告. について−,バイオメカニクス研究,20 8(4):231-235,. No.Ⅰ 競技種目別競技力向上に関する研究−第 12 報−自転 車競技 No.20: 325-338, 1988 3 ) 青木純一郎,形本静夫,村岡功, 高岡邦夫,堀田昇,矢野 成敏,西野美智子,清水達雄,前嶋孝,沢木啓祐,米田継 武,永江競,福原広次,佐藤栄:女子自転車競技選手の体 力特性および長距離練習時の心拍数および直腸温,昭和 58 年日本体育協会スポーツ医・科学研究報告−第 7 報−自 転車競技 No.24:377-393, 1983 4 ) 青木純一郎,形本静夫,村岡功, 前嶋孝,佐藤佑,矢野成. 2004. 8 ) 淵本隆文:バイオメカニクスサポート.第 27 回オリン ピック競技大会(2001 /シドニー)医・科学サポート事 業報告書: 70-72,2001 9 ) 淵本隆文:自転車競技における短距離選手の走行速度とパ ワー,バイオメカニクス研究,8(1): 52-55, 2004. 10) 池田祐介,高嶋渉,谷所慶,前川剛輝,西山哲成:トラッ ク種目を専門とする一流自転車競技選手と大学自転車競技 選手の体力要素の比較および大学自転車競技選手の 1km. 敏,高岡邦夫,米田継武,清水達雄,永江競,福原広次,. タイムトライアルにおけるパフォーマンスと体力要素の関. 佐藤栄,沢木啓祐:自転車競技−自転車競技選手の体力お. 係,トレーニング科学,21(4): 399-416, 2009. よびアイソキネティック・トレーニングによるパワーアッ. 11) Corbett, J. An analysis of the pacing strategies adopted. プに関する研究,昭和 54 年度日本体育協会スポーツ医・. by elite athletes during track cycling. Int. J. Sports.. 科学研究報告 No.Ⅱ競技種目別競技力向上に関する研究− 第 3 報−自転車競技 No.15:297-317, 1979. Physiol. Perform., 4(2):195-205. 2009 12) Mauger, A R, Jones, M, and Williams, C A. The effect of. 5 ) de Koning JJ, Bobbert MF, and Foster C. Determination. non-contingent and accurate performance feedback on. of optimal pacing strategy in track cycling with an. pacing and time trial performance in 4-km track cycling.. energy flow model. J. Sci. Med. Sport., 2(3):266-77. 1993.. Br J Sports Med. 45:225-229. 2011. 6 ) 淵本隆文,形本静夫,小林裕幸: 250m トラックにおける. 13) Van Ingen Schenau GJ, de Koning JJ, de Groot G. The. 自転車走行中のパワーと速度変化,平成 11 年度日本体育. distribution of anaerobic energy in 1000 and 4000 meter. 協会スポーツ医・科学研究報告集,No.Ⅱ競技種目別競技. cycling bouts. Int J Sports Med. 13:447-451. 1992. 力向上に関する研究報告 23 報: 143-151, 2000..

(20)

図 3 男子 200mFTT の競技レベルによる比較図 2 男子 200mFTT の速度曲線およびクランク回転数曲線
図 5 女子 200mFTT の速度曲線およびクランク回転数曲線
図 7 女子 200mFTT の記録と各要因との関係
図 8 250mTT の速度曲線およびクランク回転数曲線
+6

参照

関連したドキュメント

Short-term topographic changes of the Nakatajima dune, which is located on an eroded beach on the Enshu-Nada coast, have been investigated with continuous field surveys over two

ンクリートと鉄筋の応力照査分布のグラフを図-1 および図-2 に示す.コンクリートの最大応力度の変動係数

BAFF およびその受容体の遺伝子改変マウスを用 いた実験により BAFF と自己免疫性疾患との関連.. 図 3 末梢トレランス破綻における BAFF の役割 A)

しかし、近年は遊び環境の変化や少子化、幼 児の特性の変化に伴い、体力低下、主体的な遊

Although primary hand values and total hand value also changed remarkably by the singeing stage, they became moderate and high rank respectively by the next crabbing-scouring

Approach to the fabric handle of silk Dechine zone in regard to the primary hands KOSHI and FUKURAMI... Approach to the fabric handle of silk Dechine zone in the case of

および皮膚性状の変化がみられる患者においては,コ.. 動性クリーゼ補助診断に利用できると述べている。本 症 例 に お け る ChE/Alb 比 は 入 院 時 に 2.4 と 低 値

 我が国における肝硬変の原因としては,C型 やB型といった肝炎ウイルスによるものが最も 多い(図