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ブリッジ・カレッジ「学問の世界へようこそ」を担当して(2) : "日本語教育"と"学問の世界"(3. 入学前教育「ブリッジ・カレッジ」(I. <特集>大学での学びの礎を築く : 「大学での学びと経験」と「ブリッジ・カレッジ」)

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Academic year: 2021

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36 2009 年度 Obirin TOday  ――教育の現場から 36 ブリッジ・カレッジ

「学問の世界へようこそ」を担当して(2)

― “日本語教育” と “学問の世界” ―

基盤教育院  齋藤 伸子 日本語教育を含めた言語教育の分野は「学問」というよりは「実技」と位置づけられる ことが多く、特に入門期の段階においては、ことばを覚えることとそれをどう使うかとい うことに教育の重点がおかれている。その結果、「社会」へのかけはしであることは意識 されても、「学問」の世界へのかけはしとなることは意識されない傾向がある。しかし、 ブリッジ・カレッジにおいて「学問の世界へようこそ」を担当したことをとおし、言語教 育を「学問」の世界へとつなぐ多くの気づきと示唆を得ることができた。本論では、日本 語非母語話者を対象とした日本語教育を専門としている筆者の行った授業の内容を簡単に 紹介し、この実践から学生が得たものと筆者自身が得たものを振り返り、考察する。 <授業の概要> タイトル:「日本語を外国語として教える ⊘ 学ぶ」 授業のねらい: (1) 普段なにげなく使っている日本語を、人に教えるという視点で見なおすことから、 日本語についての新たな発見をすること。 (2) 日本語をひとつの言語として客観的に分析することから、言語の研究とはどういう ものかを垣間見ること。 <授業の流れ> 1.「日本語授業」とは ― 留学生の日本語授業の様子を紹介 2.グループワーク 4,5人のグループで、以下の2つの課題を行い、それぞれ結果を発表した。 ①「は」と「が」について考えよう  ○考えてみよう。 ( )に、「は」か「が」をいれてください。 昔、昔、あるところにおじいさんとおばあさん( )いました。毎日、おじいさん( ) 山へしば刈りに、おばあさん( )川へ洗濯にいきました。ある日、 おばあさん( ) 川で洗濯をしていると、大きな桃( )どんぶらこ…(以下省略) Q. どんなときに「は」を使いますか。 どんなときに「が」を使いますか。 ○下の文は どんな感じ? 昔、昔、あるところにおじいさんとおばあさん(が)いました。毎日、おじいさん(が) 山へしば刈りに、おばあさん(が)川へ洗濯にいきました。 ○・・・ということは? もう一度考えてみよう。 ブリッジ・カレッジ

「学問の世界へようこそ」を担当して(2)

― “日本語教育” と “学問の世界” ―

基盤教育院  齋藤 伸子

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37 大学での学びの礎を築く ―「大学での学びと経験」と「ブリッジ・カレッジ」― Q. どんなときに「は」を使いますか。 どんなときに「が」を使いますか。 ○「は」と「が」の使い分けを桜美林の留学生に教えるための例文を書いてください。 ②「~ています」について考えよう  ○下の絵の表わしている内容の文を、それぞれ書いてください。       ○ 「~ています」には、複数の使い方があります。上に書いた「~ています」を、 2つのタイプに分けてください。 ○2つのグループの違いは何ですか。違いを考えてみてください。 ○それぞれのグループに合う「~ています」の文を、考えてみましょう。 ○「例外」は? A にも B にも当てはまらない「~ています」を考えてみましょう。 参加者からは、①も②も文を作るのは簡単だが、そのことばを使う理由を説明したり、 作った文の違いを見つけて分類したりすることは難しいという、予想どおりの反応があっ た。しかし、その難しさがやる気を起こさせたようで、はじめは多少つまらなそうに作業 をしていた参加者も、グループワークでは活発なやり取りをしていた。 グループ発表に、「『昔々あるところにおじいさん「は」いました』とすると、この村に は子どももお姉さんもいなくておじいさんだけがいて、そのおじいさんは何か特別な人で ドラマが始まりそう」というようなものがあった。かなり考えた末の説明であり、「は」 の自分なりの語感をユニークな表現で語っていて感心させられた。 この分析ではまだ「学問」とはいえない。しかし、「特別なおじいさん」という感じを さらに突き詰めて考えていけば、いつか「は」の文法分析につながっていくかもしれない。 そのようにして文法研究が始まれば、おそらくはじめから文法の研究書を読むよりも楽し いであろう。たとえこのアプローチで「正解」が得られなかったとしても、考える楽しさ を味わうことはできる。考える楽しさをはじめて経験することが、まさに「学問の世界へ ようこそ」という瞬間なのではないだろうか。 この授業をとおして、筆者自身も学問というテーマの重要性を再認識した。授業を計画 した段階では、「普段何気なく見たり聞いたりしているものも別な角度から分析すれば学 問になっていく」と考えてはいたが、実際に何がどのように学問になっていくのか、具体 的なプロセスを想像できていたわけではなかった。しかし、課題に取り組む参加者の様子 や発表内容に、言語の教室から「学問」へとつながる道筋を見ることができた。ブリッジ・ カレッジは、教師にとっても授業を新たな視点から見るきっかけとなったのである。

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