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4. 初年次教育から学士課程教育へ : 学びを広げ、深める(I. <特集>大学での学びの礎を築く : 「大学での学びと経験」と「ブリッジ・カレッジ」)

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Academic year: 2021

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45 大学での学びの礎を築く ―「大学での学びと経験」と「ブリッジ・カレッジ」―

4.初年次教育から学士課程教育へ ― 学びを広げ、深める ―

井下 千以子 学びの転換 初年次教育はいま普及期の段階を過ぎて、検討すべき様々な課題も見えてきた。初年次 教育重点化から学士課程教育へと広い視野で捉えていこうとする移行の段階、すなわち、 一つの転換期に入ったと考えられる(山田・濱名,2007;井下 ,2008)。 「大学での学び」の礎を築き、学びを広げ、深めていくには、スキル学習だけでなく、 学生の知的自律を促し、アイデンティティの発達をも含めた、学士課程 4 年間に渡る幅広 い指導が求められている。初年次生を対象とした基礎科目のコースデザインから、学士課 程カリキュラム全体に渡って大学教育を俯瞰するカリキュラムデザインへと、いかに発想 の転換を図っていくか。大学教育を俯瞰し、学習観の転換を図っていく「学びの転換」が 必要とされている。 東北大学では、大学における「学びの転換」をテーマとし、長年の基礎ゼミでの成果を GP として結実させている。学部専門教育では果たすことのできなかった、学士課程の根 幹を貫く基盤教育として、大学における「学びの転換」を企図したものである。高校まで の知識中心の定型的学習から、多様な解のある学びへの転換である。研究大学における初 年次教育として、ディシプリンでの学習を重視しつつも、それによって狭隘化することな く、学部横断的なクラス編成によって幅の広い学びが取り入れられている。ブリッジ・カ レッジの「学問の世界へようこそ」は、この東北大学の基礎ゼミの実践をモデルとし、そ れを教養大学における入学前教育として再構成し開発したものであった(井下,2009d,2010)。 本稿では、アカデミックキャリアガイダンス科目「大学での学びと経験」と入学前教育 「ブリッジ・カレッジ」の事例を取り上げ、「大学の学び」の礎を築くことを目的としたプ ログラムのデザインについて検討してきた。こうしたプログラムのデザインの背景には、 多様な学びを保証する「重層的なカリキュラム」を重んずる思想が貫かれている。 ここでは、これまで開発してきたプログラムを、重層的な学士課程カリキュラムに位置 づけていくことの意味を述べて、本特集の結びとしたい。 重層的な学士課程カリキュラムへの転換 この重層的なカリキュラムとは、従来の教育課程的カリキュラム観に立つ、基礎から応 用へという定型的順次性を示す制度化されたカリキュラムとの対極にある(松下,2003)。

4.初年次教育から学士課程教育へ ― 学びを広げ、深める ―

井下 千以子

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46 2009 年度 Obirin TOday  ――教育の現場から 46 これまでの初年次教育ではスキル教育が重視されてきたが、こうした教育ではスキルを 知識として積み上げていけば、確実に短期間で学習できるよう周到にデザインされている。 学習目標は収束的で、基礎から応用へと単線的で一方向的なカリキュラムであることから、 基礎学習において効率的に効果を上げるのに適している。 それに対し、学生一人ひとりの主体的な学びを重んじ、多様な学びを保証するカリキュ ラムでは、はじめから学習目標が明確に設定されているというわけではなく、様々な学び 方を提供できる点において、拡散的であり、創造的である。そうした重層的なカリキュラ ムでは、学生は学んだ知識を自分にとって意味があるように再構造化することができるか ら、高いレベルでの学習が期待できる。すなわち、学生は教えられた以上に学びを発展さ せていくことが可能であり、学生を広く深い学びへと誘うことができる。 科目間の「つながり」を意識化 こうした深い学びへと誘うためには、教え込みではない、学生の主体性を引き出す支援 のあり方が鍵となる。そのためには、早い時期からわかりやすく、多様な学びがあること を示していく必要がある。学び方をガイダンスする必要がある。入学前教育はどこにつな がるものか。初年次での学びは 2 年次以降にどうつながっていくのか。学びは連続してい て、その「つながり」には意味があることを学生がしっかり認識できるよう、カリキュラ ム全体を俯瞰して見渡す力(メタ認知)を養うことが必要になる。学びの先を見通す力は、 学ぶことへの動機づけにもつながっていく。 たとえば「ブリッジ・カレッジ」の構想は 「 大学での学びと経験 」 で培ってきた授業経 験を活かし、そこを基点として発想された。「学問」の要素を取り入れ、「 学問の世界へ ようこそ 」 を企画したのは、入学前教育ではあっても専門教育とのつながりを意識するこ と、すなわちリベラルアーツ学群の必修科目である「学問基礎」や 「 リベラルアーツセミ ナー 」「専攻入門」への橋渡しとなるつながりが必要だと考えたからである。初年次教育 をスキル科目として位置づけるだけでなく、学生一人ひとりに応じた多様な学びがあるこ とを入学前から、さらには初年次の段階から示していくことが、専門教育における深い学 びへとつながる。「学問の世界へようこそ」を受講した高校生は「興味を持ったことを調 べることで、新しい世界の扉が次々と開いていくのですね。大学の授業が楽しみになりま した」と感想を述べていることからもそうした「つながり」が重要だとわかる。 また、「 大学での学びと経験 」 では、この広く深い学びを支援するため、自己の発達も 重視している。「自己実現とキャリアデザイン」「キャリアデザインⅠⅡ」などキャリア関 連科目とのつながりを視野に入れ、4 年間を通した広い意味でのキャリア発達として「自 分とは何者か、自分は何に関心があるのか」などアイデンティティの模索を支援している。 学生の学びを広げ深めていくには、こうした様々な科目との連続性を意識した重層的な

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47 カリキュラムを具現化することによって、初年次教育を意味あるものとして、学士課程教 育に位置づけていくことが必要とされている。 「 大学での学びと経験 」 も「ブリッジ・カレッジ」も、ここ数年で、ある一定の成果を 出すことができ、一通りプログラムの枠組みが出来上がったかのように見える。しかし、 その開発の理念が理解され、今後も実態に即して恒常的に改革をおこなっていかなければ、 教育の質を維持していくことはそう簡単ではないだろう。 おわりに 今回、『ObirinTOday』が基盤教育院の紀要として再編され、第 1 回目の特集企画が 本稿となった。基盤教育院におけるアカデミックキャリアガイダンスの取り組みを紹介するに あたり、教員だけではなく、職員にも、学生スタッフにも、原稿を寄せてもらった。こうし た原稿を読むと、大学での学びの礎を築いていこうとする取り組みは、学生の学びを支援す るにとどまらず、Fd や Sd ともなって、学びが展開されていることがわかる(井下,2009e)。 学生の成長を心から願う教職員の姿に、深い学びには認知的側面だけでなく、情意的側 面での支援がいかに大切であるか、素朴な日常の在りようの大切さをあらためて認識した。 ■ 引用文献 井下千以子(2008)『大学における書く力考える力-認知心理学の知見をもとに』東信堂. inoshita, C. & Matsukubo, a. (2009a) Establishing an academic Cornerstone through Self-Exploration:

an attempt at academic and Career advising, Poster presented at 22nd international Conference on the First

year Experience (Montreal).

井下千以子(2009b)「図書館で調べることの意味―ウィキペディアを越えるもの―」  三到図書館ニュース. 井下千以子(2009c)「“学問の世界” へ誘うブリッジ・カレッジ―入学前教育の質保証をどうするか―」 朝日新聞社特別企画シンポジウム「大学教育への問いとその将来を考える」事例集. 井下千以子(2009d)「研究大学における書く力考える力の育成と実践型 Fd」―学習観の転換・発達観 の転換・デザイン観の転換―」東北大学高等教育開発推進センター編『「学びの転換」と言語・思考・ 表現』東北大学出版会 ,85-97. 井下千以子(2009e)「大学職員のキャリア発達と学生支援業務」『桜美林シナジー』nO.8,1-13. 井下千以子(2010)「学士課程カリキュラム・マップに見る「学びの転換」と「学びの展開」  ―WritingacrosstheCurriculum と Fd―」東北大学高等教育開発推進センター編『大学における 「学びの転換」と学士課程教育の将来』東北大学出版会. 金子元久(2007)『大学の教育力-何を教え、学ぶのか-』ちくま書房. 松下佳代(2003)「大学カリキュラム論」京都大学高等教育開発推進センター編『大学教育学』培風館 . 佐藤東洋士(2007)分野機能別学士課程教育再編―リベラルアーツ教育の再構築を中心として―」  『大学教育学会 2007 年度課題研究集会要旨集』,14-15. 山田礼子・濱名篤(2007)「学士課程に初年次をどう組み込むか」『大学教育学会誌』29(1),16-54. 大学での学びの礎を築く ―「大学での学びと経験」と「ブリッジ・カレッジ」―

参照

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