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令 和 元 年 度 修 士 論 文
超音波ドプラ計測を用いた
気泡キャビテーションダイナミクスの観測
指導教員
江田 廉 助教
群馬大学大学院理工学府 理工学専攻
電子情報・数理教育プログラム
堀内 弘喜
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目次
第1章 序論 1. 超音波支援の DDS 2. これまでの研究 2-1 キャビテーション観測の関連研究 2-2 その場可視化法 3. 研究課題 第2章 超音波場中での気泡挙動と超音波信号に含まれる情報 1. 気泡膜の振動(Rayleigh-Plesset 方程式) 2. Bjerknes Force2-1 Primary Bjerknes Force 2-2 Secondary Bjerknes Force
3. 気泡膜の振動により放射される二次超音波 3-1 気泡膜の振動による発生 3-2 二次超音波に含まれる情報 第3章 ドプラ法を用いた微小移動距離測定法 1. 原理 2. 観測手法により得られる画像の解析法 第4章 実験に使用する機器・装置 1. 超音波造影剤 2. 超音波映像装置 2-1 研究開発用装置 2-2 汎用装置 3. 高速度カメラ 4. 収束超音波プローブ 5. ピエゾフィルムセンサ 6. 生体模擬ファントム 6-1 寒天ファントム 6-2 NIPA ゲル 7. 電気機器 7-1 アンプ 7-2 発信器 7-3 電圧源
3 7-4 自動ステージ 第5章 ドプラ法を用いた微小移動距離測定法 1. 実験概要 2. 移動距離測定精度 2-1 測定方法 2-2 結果 第6章 各ドプラ法を用いた微小気泡実験 1. 実験概要 2. その場可視化法による観測 2-1 パワードプラ法による解析 2-2 カラードプラ法による解析 3. 微小移動距離測定法による観測 3-1 クラウド化による影響 4. 気泡ダイナミクス考察 第7章 まとめ 1. 結論 2. 今後の課題 参考文献 謝辞
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第1章 序論
1.1 超音波支援の DDS 近年、様々な薬剤を患部に伝達し作用させるドラッグデリバリシステム(Drug Delivery System ; DDS)の研究が盛んにおこなわれている。薬剤は、通常体内に導入されたのち血管 を通じて全身に拡散されるために、目標とする部位に到達するのはごく微量のみとなる。ま た、抗がん剤など効果の強い薬剤は副作用が大きな問題になっており、DDS の実現により患 部のみに薬剤を伝達、作用させることが可能となれば、薬剤の治療効果の増大と副作用の低 減が期待できる。現在一般的に用いられる DDS の例として、経口摂取の胃では吸収されずに 腸でのみ吸収されるようコーティングされた錠剤などが挙げられる。 現在盛んに研究されている DDS の中でも有力な手法の 1 つとして微小気泡を用いた超音 波支援の DDS がある。超音波支援の DDS とは患部付近で微小気泡に対し外部から超音波を 照射する事により微小気泡を破壊し、壁面に一時的に微小孔を形成させることで、薬液をピ ンポイントに患部に導入することが可能になる。これによって薬液導入の高効率化を促し、 患部以外の体組織に薬液が導入することによる副作用のリスクを抑えることができる。ま た、超音波支援の DDS では気泡を超音波により制御して患部付近の気泡密度を高める技術 (ターゲティング技術)、薬液を患部に対して放出する技術(コントロールドリリース技術)、 薬液を効率よく吸収させる(吸収改善技術)の 3 つが必要とされる。ターゲッティング技術 は超音波照射下の気泡が周囲のインピーダンスが異なるものに引き寄せられる力(Primary Bjerknes force)を利用したトラッピング現象の解明、コントロールが必要となる。コント ロールドリリース技術、吸収改善技術は気泡の圧壊や超音波照射下の気泡同士が引き合う 力(Secondary Bjerknes force)によって発生するクラウド形成などを含む複雑なキャビテ ーション現象の解明、コントロールが必要となる。5 1.2 これまでの研究 1.2-1 キャビテーション観測の関連研究 現在気泡キャビテーション現象の観測法として Fig.1.2-1 に示すように様々な手法が用 いられている。しかし、キャビテーション現象はサブ µ 秒オーダーの現象であり、それを観 測するほどの高時間分解能を有し、リアルタイムかつ非侵襲的な観測が可能な手法はない。 Fig.1.2-1 キャビテーションプロセス観測法 リアルタイムで観測できない場合、患部に適切に薬剤が導入されているかの判断ができ ないことや、薬剤が患部に導入された場合でも必要以上の薬剤を投入する恐れがあり、薬剤 導入の有無を確認できるフィードバックシステムの実現が求められている。 1.2-2 その場可視化法 生体内を流れる血流の大きさを非侵襲的に画像上で確認できる検査手法に、超音波の ドプラ信号を利用したものがあり、超音波映像装置などの基本設備として臨床で利用され ている。この超音波ドプラを利用した信号検出技術のうち、ドプラ信号の振幅情報の時間変 化を利用したものをパワードプラ法、流速情報を利用したものをカラードプラ法と呼ぶ。こ れまでに、山越研究室ではリアルタイムかつ非侵襲的なキャビテーションプロセスの観測 手法であるその場可視化法を実施してきた。その場可視化法は汎用的な超音波診断装置を 改造することなく気泡キャビテーション信号を観測することができ、パワードプラ法を活 用し信号の振幅情報を観測する技術[1]と、カラードプラ法を活用し信号の周波数情報を観測 する技術[2]が存在する。以下にカラードプラ法を用いた技術の概要と結果を述べる。 Fig.1.2-2 がカラードプラを活用したその場可視化法の概要図、Fig.1.2-3 がシーケンス 図である。超音波映像装置では画像生成するために映像超音波を短時間の間に複数回照射 しており、この複数回の照射をまとめてパケット、その大きさをパケットサイズと呼んでい る。そのうちのある一つの素子から複数回照射される映像超音波のうちの一つに同期をか け、気泡へ強力な超音波を照射することで、気泡キャビテーションを起こさせ、その際発生
6 する強力超音波照射時間分だけのキャビテーション信号をプローブで受信する。次に、先ほ ど同期をかけた同素子から 1 つ後に照射される映像超音波とそれに連続しない映像超音波 にそれぞれ同期をかけ、BIAS 信号と逆位相の BIAS 信号をそれぞれプローブに直接入射する ことで、BIAS 信号とキャビテーション信号の位相差を検出することができ、得られる流速 情報から瞬時周波数に換算することが出来る。 すなわち、この手法は以下の 3 つの条件を必要とする。 ①バイアス信号はキャビテーション信号の前後どちらかで取得する ②パケット内で逆位相のバイアス信号を取得する。 ③バイアス信号はキャビテーション信号またはバイアス信号の前後では信号を取得しない 条件①を満たすことにより、単一のキャビテーション信号の位相情報が検出不定になら ない。また、条件②の逆バイアス信号を付与することで全パケット間の信号の積算をキャビ テーション信号の成分のみにすることができ、バイアス信号を付与したことが MTI フィル タ処理時に問題ではなくなる。さらに、条件③を満たすことにより逆バイアス信号の位相は 検出されず最終的な流速値に影響を及ぼさなくなる。 Fig.1.2-2 その場可視化法概要
7 Fig.1.2-3 カラードプラを活用したその場可視化法のシーケンス図 また、この手法により取得可能な画像が Fig.1.2-4 であり、気泡導入位置に現れるカラー ドプラ画像は空間分解能を持つためSfimage、気泡導入位置と異なる位置に出現する気泡キ ャビテーション信号の周波数情報をもつカラードプラ画像をTfimageと呼ぶ。なお、パワー ドプラを用いたその場可視化法では空間分解能を持つものをSimage、時間分解能を持つも のをTimageと呼んでいる。 Fig.1.2-4 カラードプラを活用したその場可視化法の取得画像
8 Fig.1.2-5 にこの手法で得られる結果の一例を示す。左上図は駐車溶液濃度から 100 倍に 希釈したソナゾイドに音圧 1.0MPa、周波数 7.5MHz、照射時間 30µsec の強力な超音波を照射 した際に取得することが出来るTfimageを抜き出しフレーム方向に並べたものである。左下 図は 1000 倍に希釈したソナゾイドに先ほどと同様の強力な超音波を照射した際に取得でき る画像である。右のグラフはTfimageの時間方向の分散値の平均を縦軸に、強力超音波の照 射回数(フレーム数)横軸にしたものである。100 倍希釈では 13 照射目付近から分散値の変 化が減少したのに対して、1000 倍希釈では 4 フレーム付近から分散値の現象が減少してい る様子が観測できた。この原因として、気泡破壊によるキャビテーション信号はブロードバ ンドで様々な周波数成分をもっており、気泡の体積振動によるキャビテーション信号は N 次 高調波成分を多く持つことから[2]、分散値が高いフレームは気泡破壊が支配的で分散値が低 いフレームは気泡振動が支配的であることが推察できる。なお、この際使用した BIAS 信号 は音圧 3kPa、周波数 7.4MHz、照射時間 30µsec である。 Fig.1.2-5 その場可視化法の結果 1.3 研究課題 これまでに気泡キャビテーション信号の振幅情報、周波数情報の観測から気泡キャビテ ーション現象の解明を行ってきた。しかし、気泡の移動などを観測可能な空間分解能を持 つS𝑖𝑚𝑎𝑔𝑒、𝑆𝑓𝑖𝑚𝑎𝑔𝑒は、映像超音波の周波数に依存するためサブ mm オーダーの分解能し か持たず、超音波 DDS で使用される数 µm 程度の微小気泡に対して波長オーダー以下の分 解能で観測することは難しいという課題があった。そこで、新たに気泡キャビテーション
9 信号の位相情報を用いて、微小気泡のわずかな移動距離を観測する手法の開発を行う。こ れにより、これまで難しいとされていた気泡クラウドのダイナミクス解明やトラッピング の様子などが観測できることが期待される。更に、これまで時間分解能のみに着目した観 測を行ってきたが、気泡の状態や分布といった情報をSimage、Sfimageから解析することで 気泡量や気泡の動きの減少を観測できることが期待される。それらと共に過去に行ってき たTimage、Tfimageによって得られる情報を Fig1.2-6 に示す。
Fig1.2-6 その場可視化法の活用方法
1.4 目的
ドプラ法を用いた微小移動距離測定法の提案とこれまで開発されたT𝑖𝑚𝑎𝑔𝑒、𝑇𝑓𝑖𝑚𝑎𝑔𝑒の
情報とS𝑖𝑚𝑎𝑔𝑒、𝑆𝑓𝑖𝑚𝑎𝑔𝑒と本手法の組み合わせによる気泡ダイナミクスの特性評価を目指
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第 2 章 超音波場中の微小気泡のふるまい
2.1 気泡膜の振動(Rayleigh-Plesset 方程式) Fig.2-1 のように、超音波場中に単独で可圧縮の微小気泡が存在し、外部から正弦的な力 を受けて振動する場合について考える。 Fig.2.1-1 超音波場中での気泡膜の振動 この微小気泡が、非圧縮性の流体中に下記の条件で振動しているとする。 1. 微小気泡は形を保ったまま振動 2. 内部ガスは放出されない 3. 気泡は外部からの超音波による力を受けて非線形振動する 一般的に、半径 R の微小気泡が満たす運動方程式は、周囲流体の粘性や表面張力を考慮して 次のように与えられる。 R𝑅̈ +3 2(𝑅̇) 2 =1 𝜌{𝑝𝐵(𝑡) − 𝑝𝜔− 2𝜎 𝑅 − 4𝜇𝑅̇ 𝑅 } …(2-1) 式(2-1)の𝑝𝐵(𝑡)は外部超音波による気泡表面での圧力、𝑝𝜔は気泡から充分離れた位置で の静圧、𝜌は密度、𝜎は表面張力、𝜇は周囲液体のずれ粘性率である。この式は Rayleigh-Plesset 方程式[3]と呼ばれ、微小気泡が超音波から力を受けて振動しているとき、気泡には その振動を妨げるように表面張力や周囲の液体からの粘性力が働くことを示している。11 微小気泡の膜が、外部から照射された超音波により角周波数ωで振動させられているとき、 気泡から充分離れた位置における音圧𝑝𝜔(𝑡)は以下の式のように表される。 𝑝𝜔(𝑡) = 𝑝0− 𝑝𝐴sin(ωt) …(2-2) ここで、𝑝𝐴は微小振動であるこの式より先ほどの(2-1)式は、 R𝑅̈ +3 2(𝑅̇) 2 =1 𝜌{𝑝𝑔0( 𝑅0 𝑅) 3𝑘 − (𝑝0− 𝑝𝐴sin(ωt)) − 2𝜎 𝑅 − 4𝜇𝑅̇ 𝑅 } …(2-3) となる。このとき、𝑅0は平衡状態での気泡の半径であり、𝑝𝑔0は気泡の平衡状態での内部圧 力とする。k は平衡条件によって値が変化し、等温運動条件下、つまり発生した熱が周囲に 拡散する時間が充分に存在する程度以上の時間で振動する場合は 1 をとる。これに対して 断熱振動、つまり発生した熱が拡散するよりも早く振動する場合は 1.4 をとる。 よって、超音波場中の微小気泡は(2-3)式に従って振動するが、これを共振現象と呼び、 静圧𝑝ωが 𝑝ω(𝑡) = 𝑝0{1 − ε ∙ sin(ωt)} …(2-4) であり、ε ≪ 1条件を仮定すると、R について 𝑅 = 𝑅0(1 + ε𝑥1) …(2-5) と書き換えられる。 よってこの時の微小気泡の運動方程式(Rayleigh-Plesset 方程式)は以下のように示さ れ、エネルギー減衰を含む微小気泡の共振現象はこの式に従う。 𝑥1+ ( 4μ 𝑅02𝜌) ∙ 𝑥1+ 1 𝑅02𝜌(3𝑘𝑝𝑔0− 2𝜎 𝑅0 ) ∙ 𝑥1= 𝑝0 𝑅02𝜌sin(𝜔𝑡) …(2-6)
12 この式からは、与える音圧により、気泡の運動の様子が大きく異なることが確認できる。 ここで、与える超音波の共振周波数ω𝑟について考えると、 ω𝑟2= ω02− β …(2-7) ω02= 1 𝑅02𝜌[3𝑘 (𝑝0+ 2σ 𝑅0 ) −2σ 𝑅0 ] …(2-8) β = 4μ 𝑅02𝜌 …(2-9) となるが、(2-7)式から気泡径が小さくなる、また密度が小さくなるほど共振周波数が高く なる傾向が確認できる。例として、断熱変化条件かつ大気中を仮定すると、(2-7)式は下記 (2-10)式のようにまとめられる。 𝑓𝑟≅ 3.26 𝑅0 …(2-10) この式を利用して微小気泡の大きさに対しての共振周波数を求めると、以下の Fig.2.1-2 で示すような曲線を描く。 Fig.2.1-2 気泡半径と共振周波数の関係
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ここで、具体的に気泡半径に対する共振周波数を示すと、以下のようになる。
例 𝑅0 : 1μm → 𝑓𝑟= 3.26 MHz
𝑅0 : 1mm → 𝑓𝑟 = 3.26 KHz
2.2 Bjerknes force
2.2-1 Primary Bjerknes Force[4]
Fig.2.2-1 Primary Bjerknes force
超音波造影でよく用いられるマイクロオーダーの微小気泡など、周囲のインピーダンス と著しく異なる物体が超音波場中に存在する場合、(2-11)示されるような体積に比例した 力が働く。これを Primary Bjerknes force と呼ぶ。
𝐹𝐵= −〈𝑉(𝑡)∇p(𝑡)〉
…(2-11)
ここで示される V(t)は微小気泡の体積の時間変化、∇p(t)は微小気泡周囲の音圧勾配の 時間変化、:< は時間平均を示す。
2.2-2 Secondary Bjerknes Force[5]
Fig.2-5 で示されるように、超音波場中にある距離 r で 2 つの気泡が存在したとする。こ のとき、2つの気泡が外部からの力、すなわち超音波を受けて振動しており、その粒径が周 期的に変化しているとする。すると、2つの気泡間には以下の( 2-12)式で示される Secondary Bjerknes force が働くことが知られている。
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Fig.2.2-1 Secondary Bjerknes force
. . 0 1 2 , 34
B Sr
F
V
t V
t
r
… (2-12) ここで、𝑉1 𝑉2はそれぞれの気泡の体積、𝑟は気泡間の距離、𝜌0は周囲液体の密度を表している。この式から、Secondary Bjerknes force は気泡間の振動の位相によって力の働く方 向が異なることがわかる。例えば2つの気泡が
同期(In phase)して振動しているとき → 引力が働く 逆位相(Out phase)で振動しているとき → 斥力が働く といった挙動を示す
また、2 つの気泡半径を𝑅1および𝑅2とし、気泡が同位相で振動しているとした時の角周波
数をωとしたとき、Secondary Bjerknes force は次に示す(2-13)式でも表すことができ る。 𝐹𝐵,𝑆= 2π𝜌0 9 (𝜔𝑃𝑎) 2𝑘 1𝑘2 𝑅13𝑅23 𝑟02 ・・・(2-13) ここで、式中𝑃𝑎は超音波の音圧、𝑘1 𝑘2はそれぞれ気泡の圧縮率、𝑟2は2つの気泡間の距離 を示している。
15 2.3 微小気泡から照射される二次超音波[5] これまでに示したように、微小気泡は周囲の気泡膜の振動により発生する超音波や入力 した超音波を受けることによって拡大と縮小を周期的に繰り返す。低音圧の超音波を照射 下では線形振動を繰り返す。一方、高音圧の超音下の微小気泡は非線形振動を繰り返すこと で気泡破壊が発生し消失してしまう。この現象はキャビテーションといい、局所的に数千度 の高温、数百気圧の高圧が発生するとされ、この影響で、周囲にマイクロストリーミングと 呼ばれる流体運動やずり応力が発生するなどの流体力学的機械的作用を発生させる。また 気泡膜の振動からキャビテーションによる運動の際に微小気泡から発生する超音波は二次 超音波と呼ばれ、この超音波を解析することはキャビテーションプロセス観測解明のため に非常に重要なことである。 2.3-1 気泡膜の振動による発生 気泡膜の振動により発生する二次超音波が持つ周波数特性について、IEEE で配布されて いる Bubblesim[6]を用いて周波数解析を実施した。このシミュレーションは、先の(2-6)式 で示した Rayleigh-Plesset 方程式を用いた数値解析である。数値解析に利用したそれぞれ の値はソナゾイドの特性[7] [8]であり、その値を Table2.3-1 に示す。 Table.2.3-1 数値解析に用いた値 入射超音波周波数 2.5MHz 入射波音圧 1.5MPa 入射波サイクル数 20cycle 気泡半径 1.5µm Shell thickness 4nm Shell shear modulus 50MPa Shell viscosity 0.8Pa・s
入射超音波周波数 1.5MHz
入射波音圧 1.5MPa
入射波サイクル数 20cycle
気泡半径 1.5µm
Shell thickness 4nm Shell shear modulus 50MPa Shell viscosity 0.8Pa・s
16 Fig.2.3-1 は実際に Bubblesim を使用し、気泡から二次超音波の音圧を周波数成分ごと にパワースペクトラム表示したシミュレーション結果である。 Fig.2.3-1 二次超音波の周波数特性 この結果から入射した超音波が 1.5MHz の際には高調波が多く検出され、2.5MHz の際に は高調波のほかに分調波も多く検出されている。また、2.5MHz の時のみ分調波が検出され た。このことから、気泡の線形、非線形振動により発生する二次超音波の周波数成分は入 射する超音波の周波数に依存していることが確認された。 2.3-2 二次超音波に含まれる情報[2] これまでの研究から、二次超音波に含まれる気泡ダイナミクス解明のための情報として Fig2.3-2 が挙げられる。 Fig2.3-2 二次超音波に含まれる情報
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第 3 章 超音波ドプラ法を用いた微小移動距離測定法
3.1 原理 反射物の移動前と移動後の散乱波(二次超音波)の位相差を比較し、微小気泡の移動距離 を測定する方法の概要図を Fig.3.1-1 に示す。この際、非線形振動が支配的な気泡の二次超 音波の周波数成分は強力超音波(h-US)の高調波成分が支配的である特性を利用する。そう することにより、受信プローブの帯域内の周波数で二次超音波を比較することが出来る。 Fig.3.1-1 超音波ドプラ法を用いた微小移動距離測定法概要図 Tfimageを用いた散乱体の移動前と移動後の散乱波(二次超音波)の位相差検出法として、 まず連続したパケット間で比較する方法が考えられる。しかし、この方法を使用すると二次 超音波の振幅成分を無視することが出来ず、単縦な位相差としての検出ができない。そこで カラードプラを用いたその場可視化法で取得した流速情報をフレーム間で比較する方法を とることによって二次超音波の振幅成分や、BIAS 信号の影響を無視して初期位相の差を導 出することが可能となる。 受信信号の例を以下の通りにする。 1:𝑦1(𝑡) = 𝑎1(𝑡) ∙ exp[𝑗{𝜔1(𝑡)𝑡 + 𝜑1}] 2:𝑦2(𝑡) = 𝑎𝑏∙ exp[𝑗{𝜔𝑏𝑡 + 𝜑𝑏}] 3~N-1:𝑦3(𝑡) = ⋯ = 𝑦𝑁−1(𝑡) = 0 N:𝑦𝑁(𝑡) = −𝑎𝑏∙ exp[𝑗{𝜔𝑏𝑡 + 𝜑𝑏}]18 N+1~P:𝑦𝑁+1(𝑡) = ⋯ = 𝑦𝑃(𝑡) = 0 …(3-1) ただし 𝑎1(𝑡) は気泡からの受信信号の振幅、𝑎𝑏 は BIAS 信号の最大振幅、𝜔1(𝑡) は気泡 からの受信信号の角周波数、𝜔𝑏 は BIAS 信号の角周波数、𝜑1 は気泡からの受信信号の初 期位相、𝜑𝑏 は BIAS 信号の初期位相、𝑁 は 3 < 𝑁 < 𝑃 の自然数、𝑃 はパケットサイズで ある。 また受信信号を参照信号𝐹(𝑡) = exp (𝑗𝜔0𝑡)により直交検波することで、 𝑦1 ̂(𝑡) = 𝑎1(𝑡) ∙ exp[𝑗{𝜔1(𝑡)𝑡 + 𝜑1}] ∙ exp (𝑗𝜔0𝑡) = 𝑎1(𝑡) ∙ exp[𝑗{[𝜔1(𝑡) − 𝜔0]𝑡 + 𝜑1}] 𝑦2 ̂(𝑡) = 𝑎𝑏∙ exp[𝑗{𝜔𝑏𝑡 + 𝜑𝑏}] ∙ exp (𝑗𝜔0𝑡) = 𝑎𝑏∙ exp[𝑗{[𝜔𝑏− 𝜔0]𝑡 + 𝜑𝑏}] 𝑦̂(𝑡) = ⋯ = 𝑦3 ̂ (𝑡) = 0 𝑁−1 𝑦̂(𝑡) = −exp[𝑗{𝜔𝑁 𝑏𝑡 + 𝜑𝑏}] ∙ exp (𝑗𝜔0𝑡) = −𝑎𝑏∙ exp[𝑗{[𝜔𝑏− 𝜔0]𝑡 + 𝜑𝑏}] 𝑦̂ (𝑡) = ⋯ = 𝑦𝑁+1 ̂(𝑡) = 0 𝑃 …(3-2) となる。ただし 𝜔0 は参照信号の周波数である。 次に MTI フィルタとして平均値=0 フィルタを適用すると 1 𝑃∑ 𝑦̂(𝑡)1 𝑁 1 =1 𝑃𝑦̂ 1 …(3-3) よって、 𝑦𝐹,1(𝑡) = 𝑦̂ −1 1 𝑃𝑦̂ =1 𝑃 − 1 𝑃 𝑦̂ 1 𝑦𝐹,2(𝑡) = 𝑦̂ −2 1 𝑃𝑦̂ = −1 1 𝑃𝑦̂ + 𝑦1 ̂ 2 𝑦𝐹,3(𝑡) = ⋯ = 𝑦𝐹,𝑁−1(𝑡) = − 1 𝑃𝑦̂ 1 𝑦𝐹,𝑁(𝑡) = −𝑦̂ −2 1 𝑃𝑦̂ = −1 1 𝑃𝑦̂ − 𝑦1 ̂ 2 𝑦𝐹,𝑁+1(𝑡) = ⋯ = 𝑦𝐹,𝑃(𝑡) = − 1 𝑃𝑦̂ 1 …(3-4)
19 である。 位相情報 Φ は、 Φ = tan−1(𝐼𝑚[𝑄̂] 𝑅𝑒[𝑄̂]) …(3-5) であるが、パケット間の位相情報 φ(𝑡) を求めるため、パケット間での受信信号 𝑦𝐹,𝑖(𝑡) に ついて考えると、 𝑦𝐹,𝑖(𝑡) = 𝐼𝐹,𝑖+ j𝑄𝐹,𝑖 𝑦𝐹,𝑖+1(𝑡) = 𝐼𝐹,𝑖+1+ j𝑄𝐹,𝑖+1 …(3-6) であり、複素共役の乗算を行うと、 𝑦𝐹,𝑖(𝑡)∗𝑦𝐹,𝑖+1(𝑡) = (𝐼𝐹,𝑖+1+ j𝑄𝐹,𝑖+1)(𝐼𝐹,𝑖+ j𝑄𝐹,𝑖) ∗ = (𝐼𝐹,𝑖+1+ j𝑄𝐹,𝑖+1)(𝐼𝐹,𝑖− j𝑄𝐹,𝑖) = 𝐼𝐹,𝑖+1𝐼𝐹,𝑖+ 𝑄𝐹,𝑖+1𝑄𝐹,𝑖+ j(𝐼𝐹,𝑖𝑄𝐹,𝑖+1− 𝐼𝐹,𝑖+1𝑄𝐹,𝑖) …(3-7) となる。よって、パケット間の位相情報 φ(𝑡) は、 φ(𝑡) = tan−1(𝐼𝑚[∑ 𝑦𝐹,𝑖 𝑃 𝑖=1 ] 𝑅𝑒[∑𝑃𝑖=1𝑦𝐹,𝑖] ) = tan−1(∑ (𝐼𝐹,𝑖𝑄𝐹,𝑖+1− 𝐼𝐹,𝑖+1𝑄𝐹,𝑖) 𝑃 𝑖=1 ∑𝑃𝑖=1(𝐼𝐹,𝑖𝐼𝐹,𝑖+1+ 𝑄𝐹,𝑖𝑄𝐹,𝑖+1) ) …(3-8) であり、 𝐼𝑚 [∑ 𝑦𝐹,𝑖 𝑃 𝑖=1 ] = (𝐼𝐹,1∙ 𝑄𝐹,2− 𝐼𝐹,2∙ 𝑄𝐹,1) + (𝐼𝐹,2∙ 𝑄𝐹,3− 𝐼𝐹,3∙ 𝑄𝐹,2) + ⋯ + (𝐼𝐹,𝑃−1∙ 𝑄𝐹,𝑃− 𝐼𝐹,𝑃∙ 𝑄𝐹,𝑃−1) = 𝑎1(𝑡)𝑎𝑏sin{(𝜔𝑏− 𝜔1(𝑡))𝑡 + 𝜑𝑏− 𝜑1} …(3-9) 𝑅𝑒 [∑ 𝑦𝐹,𝑖 𝑃 𝑖=1 ] = (𝐼𝐹,1∙ 𝐼𝐹,2+ 𝑄𝐹,1∙ 𝑄𝐹,2) + (𝐼𝐹,2∙ 𝐼𝐹,3+ 𝑄𝐹,2∙ 𝑄𝐹,3) + ⋯ + (𝐼𝐹,𝑃−1∙ 𝐼𝐹,𝑃+ 𝑄𝐹,𝑃−1∙ 𝑄𝐹,𝑃) = − 1 𝑃2∙ 𝑎12(𝑡) + 𝑎1(𝑡)𝑎𝑏cos{(𝜔𝑏− 𝜔1(𝑡))𝑡 + 𝜑𝑏− 𝜑1} …(3-10) φ(𝑡) = tan−1(𝐼𝑚[∑ 𝑦𝐹,𝑖 𝑃 𝑖=1 ] 𝑅𝑒[∑𝑃𝑖=1𝑦𝐹,𝑖] ) = tan−1( sin{(𝜔𝑏− 𝜔1(𝑡))𝑡 + 𝜑𝑏− 𝜑1} −𝑎1(𝑡) 𝑃2𝑎 𝑏+ cos{(𝜔𝑏− 𝜔1(𝑡))𝑡 + 𝜑𝑏− 𝜑1} ) …(3-11) このとき、𝑎1(𝑡) ≪ 𝑃2𝑎𝑏であれば、
20 φ(𝑡) = tan−1(sin{(𝜔𝑏− 𝜔1(𝑡))𝑡 + 𝜑𝑏− 𝜑1} cos{(𝜔𝑏− 𝜔1(𝑡))𝑡 + 𝜑𝑏− 𝜑1} ) = {𝜔𝑏− 𝜔1(𝑡)}𝑡 + 𝜑𝑏− 𝜑1 …(3-12) と簡単にすることができる。 なお、流速を導出すると 𝑣 = 𝑐 2𝜋𝑓0∙ 2∆𝑡 φ(𝑡) …(3-13) と表される。 ただし、𝑐 は音速、𝑓0 は参照信号の周波数、∆𝑡 はパケットの PRT である 同様に、φ′(𝑡)は位相情報、𝑎2(𝑡) は気泡からの受信信号の振幅、𝜔2(𝑡) は気泡からの受信信 号の角周波数、𝜑2 は気泡からの受信信号の初期位相とした時、二次超音波同士の位相は 𝜑𝑑𝑖𝑓(𝑡) = φ′(𝑡) − φ(𝑡) = [{𝜔𝑏− 𝜔2(𝑡)}𝑡 + 𝜑𝑏− 𝜑2] − [{𝜔𝑏− 𝜔1(𝑡)}𝑡 + 𝜑𝑏− 𝜑1] = {𝜔1(𝑡) − 𝜔2(𝑡)}𝑡 + 𝜑1− 𝜑2 ここで、非線形振動している気泡の周波数成分が高調波であるので𝜔1(𝑡) = 𝜔2(𝑡)とすると、 𝜑𝑑𝑖𝑓(𝑡) = 𝜑1− 𝜑2 となり、初期位相の差のみで表すことが出来る。
21 3.2 観測手法により得られる画像の解析法 観測手法により汎用超音波映像装置から得られたカラードプラ画像は輝度値で表示され ているため流速値に換算する必要がある。Fig.3.2-1 にTfimageを流速値に換算し、差を取 る過程を示した。この際、照射したバイアス信号は 7.4MHz で受信信号は針に 2.5MHz、1.0MPa の超音波を 30µsec 照射した際の散乱信号である。Tfimageが黄色から水色に変化している際 に流速値が大きく変化している原因は位相反転(位相がπから-πに変化する)が起きてい るからである。また、このTfimageは受信信号の 30µsec 分の時間変化を示しており、この区 間で位相反転が 3 回起こっていることはバイアス信号と受信信号の周波数差は約 0.1MHz で あることを意味している。 Fig.3.2-1 換算過程 換算する際には以下の処理を施している。また、①~③の番号と Fig.3.2-1 の番号は対応 している。
22 ① 輝度値を流速値へ換算 Fig.3-5 の左図は使用しているカラーバーを RGB それぞれで解析した値である。換算時に は Fig.3-5 の右図は流速が負の時、すなわち B 値が R 値よりも大きいときに(3-15)式を使 用し、流速が正の時、すなわち B 値が R 値よりも小さいときには(3-16)式を使用し換算し た。ただし、v は流速値、R は輝度値の赤、B は輝度値の青、G は輝度値の緑である。なお、 流速値はTfimage上の白いラインの部分を抜き出した。 Fig.3.2-2 輝度値から流速への換算式 ② 流速差の導出 換算した流速値の差は時間方向の平均値(グラフ上の赤いライン)を導出する。この際位 相反転の影響を無視する必要があるので、灰色の範囲(-6cm/s<流速値<+6cm/s)の範囲は含 んでいない。位相差を導出する際は、式(3-13)を使用する。
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第 4 章 実験に利用する機器・装置
4.1 超音波造影剤 実験に使用する微小気泡は、臨床研究への展開や実用化に向けたハードルなどを考慮し て、既に肝臓等の超音波造影に利用されているソナゾイドを使用した。ソナゾイドは気泡径 が 3μm であり、ペルフルブタンガスをホスファジルセリンナトリウムによって内包する微 小気泡である。 Fig.4.1-1 超音波造影に利用される微小気泡 4.2 超音波診断装置 4.2-1 研究開発用 研究開発用超音波映像装置を用いた気泡キャビテーションプロセス観測には、マイクロソ ニック社製「RSYS0003」を利用した。リニア型プローブを備え、映像用プローブから照射 される映像超音波の PRT や出力などあらゆるパラメータを変更し測定できる。また、リニ アプローブの各素子で受信した超音波の AD 変換器出力をバイナリデータとして取得する ことが可能となっていると同時に、同期用トリガを外部に出力することが可能となってい る。表 4.2-1 にこの装置の諸元(今回の実験系における設定値)について示す。24 Table.4.2-1RSYS0003 の諸元 プローブ中心周波数 7.5MHz 映像超音波の音圧 0.1 MPa 素子ピッチ 0.6mm チャネル数 16ch PRT 80μsec Fig.4.2-1 研究開発用超音波映像装置 RSYS0003 4.2-2 汎用装置[9] 汎用超音波映像装置を用いた気泡キャビテーションプロセス観測には、臨床で利用され ている株式会社日立製作所製超音波映像装置「ProSound α7」を利用した。ドプラ、カラー フローマッピング機能などの超音波機能を備え、画質に関わる回路をすべてデジタル化し たコンパクトな多機能超音波診断装置である。リニア形、コンベックス型プローブをはじめ として、電子セクタプローブにも対応しており、あらゆる診断に利用できる。シネメモリや 心機能計測、ペイシェントレポート機能など超音波に係る部分以外の各種機能も備えてい る。
25
Fig.4.2-2 汎用超音波映像装置 Prosounad α7
また、今回行ったすべての実験は汎用超音波映像装置の設定を、フレームレート 9fps、 depth50mm、中心周波数 7.5MHz、流速最大値±6.0cm/s、Color Gain30 で行った。
今回、超音波映像装置の超音波照射タイミングと気泡破壊用超音波照射タイミングを同期 させるために、論理回路を用いた同期回路を自作した。回路と回路概要をそれぞれ Fig.4-2.3、Fig4.2-4 に示す。 超音波映像装置のプローブから照射される映像用超音波は B モードと CFI モードで照射シ ーケンスが異なる。今回、同期させるのは CFI モードの超音波のみである。 同期方法 ① センサで超音波映像プローブから照射される B モードと CFI モードの信号を同時に取
26 得する。 ② コンパレータ回路で信号を二値化する。 ③ 単安定マルチバイブレーターを 2 つ用いて B モードと CFI モードの信号を区別する。 ④ カウンタ回路を用いてパケットサイズ分だけの信号を取得する。 ⑤ D-FF 回路を用いてパケットの最初の信号と同期する。 最終的に発振器のトリガ端子に同期信号を入力し、発振器内で遅延して照射する。 Fig.4.2-3 汎用超音波映像装置用同期回路
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28 4.3 高速度カメラ
今回の実験で使用した高速度カメラの概要を Table.4-1 に示す。 Table.4.3-1 高速度カメラ概要
機器名 Miro M310(Ametek グループ Vision Research 社:アメリカ)
総画素数 1280×800 撮影速度 フルフレーム 24~1630 コマ/秒 最高撮影速度 セグメントフレーム 400000 コマ/秒 画素ピッチ 20μm センサーサイズ 25.6×16.0mm 濃度階調 モノクロ 12 ビット カラー36 ビット 最短露光時間 1 マイクロ秒 感度(ISO/ASA) 13000(モノクロ) 3900(カラー) 変更可能画素数 64×8 ピクセル単位 内蔵メモリ 3GB , 6GB , 12GB レンズマウント 標準:F マウント(絞り環なしレンズ対応) オプション:C マウント , EOS マウント , PL マウント レンズコントロール EOS レンズにおいて、 フォーカス及び絞りの遠隔操作可能(オプション) バッテリ 標準:Sony BP-U30(45 分駆動) オプション:Sony BP-U60(90 分駆動) シネフラッシュ 標準 フレームストラドリング(PIV モード) 500 ナノ秒間隔 メカニカルシャッタ 標準装備 冷却機構 TE ベルチェ冷却素子と強制空冷方式 バーストモード 標準装備 PIV におけるダブルパルス撮影や エンジンクランク角同期撮影が可能 モーショントリガ 標準装備 画面上の動きを検知して自動撮影。トリガ出力も可能。 EDR 露光 標準装備 露光時間を 2 段階に設定し、飽和したピクセルを検出し、 さらに短い露光時間で再露光を行う機能。 メモリセグメント 最大 16 分割可能 各種信号入出力 カメラ本体:トリガ入力・出力、同期信号入力・出力 キャプチャケーブル:ビデオ映像信号(NTSC、PAL)、Ready 信号、 IRIG 入力・出力、AUX(イベントもしくはストロボ) RCU(リモートコントローラ) 5 インチ高精細タッチスクリーン 日本語対応。 各種カメラ制御、ライブ及び再生画像確認可能。(オプション)
29 カメラ制御ソフトウェア「PCC」 日本語対応コントロールソフトウェア。マルチウィンドウ対応で、 複数台カメラを使用した際も、画像の複数表示、同期再生が可能。 画像の撮影、撮影条件の設定・保存・読み込み、 撮影画像の再生、動画の指定範囲、各種画像処理、 距離・速度・加速度・角度・角速度の計測、各種ファイル変換 寸法(L×W×H) 重量 19×8.4×10cm 1.4kg(シネフラッシュ、バッテリ除く) 動作環境 温度:0~40℃ 湿度:8~80%(結露なきこと) 標準付属品 カメラ本体、電源アダプタ、イーサネットケーブル、キャプチャケーブル、 BP-U30 バッテリ・受電器、シネフラッシュ 60GB、 シネドック(シネフラッシュリーダ)、PCC ソフトウェア、日本語マニュアル 実験系の概略図を Fig4.3-1 に示す。模擬血管ファントムとして使用する NIPA ゲル (Fig.4.3-2)はその管の入出力口にシリコンチューブを接着し、実験中に NIPA ゲルが浮遊 しないようにアルミの板上に接着して使用した。NIPA ゲル内の流路は 2 つの凹面超音波振 動子の収束点を通るように設置した。 シリコンチューブの片方をローラーポンプに取り付け、もう一方から気泡を含んだ水溶 液を模擬血管内に引き込む。充分に流路に引き込んだ後、超音波を照射し、模擬血管内の気 泡の様子を光学顕微鏡による観察系に取り付けた高速度カメラ(Ametek グループ Vision Research 社Miro M310)によって観察した。短時間での十分な露光を可能にするため、LED 照明に高輝度白色 LED(CBT-90,Luminus Devices)を用い、結像レンズ(プラスチック非球面 ハイブリッドレンズ,Edmund Optics)及び対物レンズ(Apo SL 10x,ミツトヨ)によって観察 領域に集光可能なユニットを作成した(Fig.4.3-4)。このユニットを複数設置し、光量を確 保した。 気泡破壊実験後に共焦点レーザー顕微鏡(OLYMPUS OLS4000)を用いて観測した。超音波振 動子はリレー回路とパワーアンプを通して発振器に接続されている。リレー回路(Fig.4.3-3)を用いてパワーアンプと発振器を切り替えているのは一組のパワーアンプと発振器では 音圧の範囲が気泡捕捉用の音圧と気泡破壊用の高音圧の両方をカバーすることはできない からである。リレー回路は USB で PC に接続したテクノウェーブ社の USBM3069F(Fig.4.3-3) からのデジタル信号で切り替える。 <高速度撮影用実験系を用いたソノポレーション実験手順> 1. 流路内に微小気泡を導入する。 ソナゾイド水溶液濃度:100 倍 2. 平均流速を 0.55mm/sec と設定。 3. 高音圧超音波を照射し、キャビテーションを起こす。 4. 3 の様子を高速度カメラにより連続撮影し、記録する。
30 撮影機器:Miro M310
Fig.4.3-1 高速度撮影用実験系
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Fig.4.3-3 リレー回路及び装置制御用インターフェイス(USBM3069f)
32
33 4.4 収束超音波プローブ 微小気泡に超音波を照射する際に、生体内の病巣部分などのごく限られた領域のみに対 して、的確に超音波を照射することを目的とし、実験に用いた球面超音波振動子のパラメー タを以下に示す。富士セラミック社製凹面型超音波振動子で設計上の直径は 22mm、曲率半 径は 42mm、共振周波数は 2.5MHz、焦点距離 40mm である。この凹面型超音波振動子の背面に アクリル製の振動子ホルダを取り付けている(Fig.4.4-1)。 Fig.4.4-1 収束超音波プローブ この振動子の入力インピーダンスの周波数特性を Fig.4.4-2 に示す。 Fig.4.4-2 2.5MHz 振動子のインピーダンス特性
34 この振動子の電圧-音圧特性を Fig.4.4-3 に示す。 Fig.4.4-3 電圧-音圧特性 Fig.4.4-3 の電圧-音圧特性の測定においてはハイドロフォンプローブ HNR1000(イー ステック株式会社)を使用して、凹面超音波振動子からのビーム軸上の 40mm 先にハイド ロフォンプローブを対向させる形で配置して行った。ここで、この凹面振動子のビーム軸 方向の出力音圧分布をシミュレーションした結果を Fig.4.4-4 に示す。このグラフの青線 が凹面超音波振動子の音圧分布であり、このグラフが示すように振動子から 40mm の位置 において出力音圧が最も強くなることを考慮し、振動子から 40mm の位置での出力超音波 を使用している。 Fig.4.4-4 振動子のビーム軸方向の音圧分布
35 前述の円形凹面振動子の音圧分布のシミュレーションは式(4.1)により行った。この式は 円形凹面振動子のビーム軸(
𝑥
軸)方向の音圧分布を与える。ここで「正規化」とは、ρ、c及 びVmをそれぞれ媒質の密度、音速及び振動子面上の体積速度の最大値とするとき、それら の積 𝜌𝑐|𝑉𝑚| で音圧pの絶対値 |𝑝| を割ることをいう。 正規化音圧|𝑃
𝐼(𝑥)| =
|𝑝| 𝜌𝑐|𝑉𝑚|= |
2𝐴 𝐴−𝑥sin
𝑘 2(√𝑎
2+ (𝑥 − 𝐴 + √𝐴
2− 𝑎
2)
2− 𝑥)|
ただし焦点(𝑥
= A )において、|𝑃
𝐼(𝐴)| = 𝑘ℎ
…(4.1) (4.1)式のp、ρ、c及びVmはそれぞれ音圧、媒質の密度、音速および振動子面上の体積速 度の最大値である。式(5.1)における各パラメ-タの詳細は表 4-2 の通り。 Table4.4-1 式(4.1)のパラメ-タ 曲率半径 𝐴[m] 0.042 半径 𝑎[m] 0.011 位相定数𝑘[𝑟𝑎𝑑/𝑚]
10471.976 振動子の深さ ℎ[m] 0.001466 出力する超音波の音圧や周波数、位相等の制御は、振動子に接続した発振器によって行な う。発振器には株式会社 NF 回路設計ブロック社製の WF1968 を使用した。この発振器の出 力をパワーアンプ(株式会社 NF 回路設計ブロック社製 HSA4101)に接続して、その出力を 超音波振動子の端子間に印加することで強力超音波を出力している。 4.5 ピエゾフィルムセンサ ピエゾフィルムセンサは圧電効果をもつプラスチック PVDF(PolyVinylidene DiFluotide)から作られた圧電素子である。本研究ではバイアス信号照射用の発信素子を ピエゾフィルムセンサ 1 とし、超音波映像装置の映像用超音波と強力超音波の同期をとる 際のセンサをピエゾフィルムセンサ 2 とした。どちらもメジャメント スペシャリティー ズ社の NDT1-220K を使用したが、センサとして使用する場合、超音波映像装置のある 1 ラ インの走査のみを検出するために一部を切り取って使用した。使用したピエゾフィルムの 画像を Fig.4.5-1 に示し、インピーダンス特性を Fig.4.5-2 に示した36 Fig.4.5-1 一部を切り取ったピエゾフィルムセンサ Fig.4.5-2 ピエゾフィルムセンサのインピーダンス特性 4.6 生体模擬ファントム 4.6-1 寒天ファントム 生体模擬ファントムとして、弾性特性が生体に近く、作り易いという点から、寒天を使用 した。寒天ファントム作成法を以下に示し、完成した寒天ファントムの画像を Fig.4.6-1 に 示した。 ① 水に所定の量の寒天粉末を加えて沸騰するまで加熱する。 ② 沸騰したら、かき混ぜながら、約 40℃になるまでゆっくり冷却する。 ③ 約 40℃になったら、型に入れて、冷蔵庫で完全に固まるまで冷却する。
37 実験に使用したファントムは、一般的な生体硬さをもとに寒天濃度 1.50%とした。 Fig.4.6-1 生体模擬寒天ファントム 4.6-2 NIPA ゲルファントム NIPA ゲルは、高分子ゲルの一種である。高分子ゲルとは高分子が架橋されることで三次 元的な網目構造を構成していて、内部が溶媒によって膨潤されたゲルである。NIPA ゲルは 透明度が高いため、外部から内部の観察が可能であり、高い加工性や自立性を持つ。また、 生体組織に近い音響特性(2-3%以下)、弾性(8-20Pa)を持ち、可逆的な温度応答性を有する。 これは、NIPA ゲルが 33~35℃程度に相転移温度があり、それ以下では親水性で溶媒を吸収し 膨潤、それ以上では疎水性となり溶媒を放出するので体積が縮小し、白く変化する。 実験に用いた NIPA ゲルは、厚さ 4mm の NIPA ゲルの板に直径 2mm の円柱状の穴が空いた 構造であり、水中における超音波反射率が約 2.7%のものである。具体的な NIPA ゲルの作成 方法を以下に示す。 <薬剤分量> NIPA(N-イソプロピルアクリルアミド) : 9.0520[g] (1 mol/l) MBAA N-N(メチレンビス) : 0.2480[g] (2 mol%) APS(ペルオキソ二硫酸アンモニウム) : 0.0405[g] (0.2 mol%) TEMED(テトラメチルエチレンジアミン) : 80[ L] (1 l/ml) 超純水 : 約 80[ml]
38 1.NIPA,MBAA,APS を純水に溶解させ、体積が 80ml になるように純水の量を調整する。 2.溶液中の酸素を減らすため、窒素バブリングを約 1 時間行なう。 3.TEMED を加え、型に注ぐ。 4.ゲル化後(約 20 時間後)型から取り出し、溶媒交換(4 日間以上)。 Fig.4.6-2 ゲル作成用容器 Fig.4.6-3 NIPA ゲルファントム 4.7 電気機器 4.7-1 アンプ 信号増幅器として以下のアンプを使用した。 アンプ a ・・・ エヌエフ回路設計ブロック社 HSA4101
39 帯域(DC~10MHz)、電圧出力(最大 300Vp-p) アンプ b ・・・ TOKYO HY-POWER 社 HL-450B 帯域(3.5MHz~28MHz)、電力出力(最大 400W) 4.7-2 発信器 トランスデューサへの信号供給のために、エヌエフ回路設計ブロック社の WF1974 と HSA4101 を使用した。 4.7-3 電圧源 同期回路への電圧供給のため TEXIO 社の PW18-1.8AQ を使用した。 4.7-4 自動ステージ 中央精機株式会社のハイグレード X ステージ ALS-6012-G1M-SA を使用した。 スケール分解能 0.1µm、最高速度 16mm/s、位置決め精度 0.001mm
40
第 5 章 ドプラ法を用いた微小移動距離測定法
5.1 実験概要 Fig5.1-1 は提案手法の正確さを確認するための実験系である。構成は映像超音波プロー ブと生体を模擬した寒天ファントムの間に、映像超音波に対して同期をとるためのセンサ とバイアス信号を照射する超音波照射フィルムを設置した。センサは同期回路と、同期回路 は発振器と、発振器はアンプと、アンプは BIAS 照射フィルムとそれぞれつながっている。 また、超音波プローブからは映像用超音波、超音波振動子からは強力超音波がそれぞれ照射 される。超音波の散乱体として直径 0.5mm シャーペンの芯を使用し、電動ステージを使用 し、移動させた。 Fig.5.1-1 実験系 この実験は以下のような流れで実施した。 ① センサで受信した映像超音波 8 パケットの内 2 パケット目に強力超音波照射用、3 パ ケット目に BIAS 信号照射用、5 パケット目に逆位相の BIAS 信号照射用の同期をかけ た。このセンサは第 4 章で述べたピエゾフィルムセンサ 1 を使用した。 ② 回路内で遅延をかけ、それぞれのパケットに対して強力超音波、BIAS 信号、逆 BIAS 信号照射用のトリガをそれぞれ出力した。 ③ 発振器 HSA4101 に強力超音波用のトリガを入れ、任意の波形を出力させアンプ a に 通した。発振器 WF1974 には BIAS、逆 BIAS 用のトリガを入れ、任意の波形を出力さ せアンプ b に通した。 ④ 強力超音波は超音波振動子からシャーペンの芯へ照射し、BIAS 信号と逆位相の BIAS 信号は BIAS 照射フィルムからからプローブへと直接入射し。この照射フィルムはピ41 エゾフィルムセンサ 2 を使用した。 5.2 移動距離測定精度 5.2-1 測定方法 下記に示した手順で実験を行った。概要図は Fig.5.2-1 に示した。 (1) 超音波照射フィルムから、周波数 7.4MHz、音圧 3kPa、BIAS 信号、逆 BIAS 信号をそれ ぞれ 30µsec 超音波振動子からは周波数 2.5MHz、音圧 1.0MPa、強力超音波 30µsec を照 射した。 (2) 二次超音波と BIAS 信号がカラードプラ画像上で重なるように両者の遅延時間を調整し た。 (3) 電動ステージを使用し、シャーペンの芯をそれぞれ Depth 方向に速度 0.5mm/s で 0.5mm、 Lateral 方向に速度 0.25mm/s で 1mm 往復させた。 便宜上以降、プローブから遠ざかる向きを Depth 方向正の向き、超音波振動子から遠ざか る向きを Lateral 方向性の向きと定義する。移動速度が Lateral 方向と Depth 方向で異な るのは位相差のずれと移動距離の対応が Lateral 方向ほうが小さいことが考えられるので、 速度を Depth に対して遅くした。
42 5.2-2 結果 シャーペンの芯を Depth 方向に移動させた際に取得したTfimageを切り出し、フレーム方 向に並べたものを Fig5.2-2 に示した。右の図はカラーバーである。 Fig.5.2-2 Depth 方向へ芯を移動させた際の流速変化 0.5mm に達するまではほぼ等間隔で縞が上方向に移動し、その後は先ほどと同じ間隔で 下方向に移動していることが確認できる。なお、この時シャーペンの芯は Depth の負の方向 へ移動した後、正の方向へ移動している。この際のシャーペンの芯の移動距離と流速差の関 係を Fig5.2-3 に示した。 Fig.5.2-3 Depth 方向の移動における移動距離と流速差の対応 移動距離が増えるごとに流速差が正、負の方向共に増加していることが観測できた。
43 次にシャーペンの芯を Lateral 方向に移動させた際に取得したTfimageを切り出し、並べ たものを Fig5.2-4 に示した。 Fig.5.2-4 Lateral 方向へシャーペンの芯を移動させた際の流速変化 Depth の時と同様に 1.0mm に達するまではほぼ等間隔で縞が上方向に移動し、その後は同 じ間隔で下方向に移動していることが確認できる。なお、この時シャーペンの芯は Lateral の負の方向へ移動した後、正の方向へ移動している。この際のシャーペンの芯の移動距離と 流速差の関係を Fig5.2-5 に示した。 Fig.5.2-5 Depth 方向の移動における移動距離と流速差の対応
Depth 方向と Lateral 方向の結果を Fig5.2-6 にまとめた。また、近似式を導出し、予測 値と実測値を Fig5.2-7 にまとめた。
44 Fig.5.2-6 実測値と近似式 Fig.5.2-7 予測値と誤差率 (誤差率) 以上の結果から今回の測定範囲内では、誤差率平均 23%で移動変化を測定できることが観 測できた。また、移動距離が低いほど誤差率が上がることはないため 25µm 以内の範囲でも 移動距離観測が可能であることが期待される。
45
第 6 章 各ドプラ法を用いた微小気泡実験
6.1 実験概要 Fig.6.1-1 は実験系である。まず、模擬生体ファントムである寒天に金属棒を用いて、 直径 2mm 深さ 25mm の円柱の導入孔を作製する。導入孔に対して外部から強力超音波を照 射するために使用するトランスデューサ(中心周波数:2.5MHz)を導入孔から 40mm(超音 波の収束点)離れた位置に置き、そのビームの軸が導入孔の中心軸と直交するように設置 した。次に気泡から放射された二次超音波を受信するために使用するリニアプローブ(中 心周波数:7.5MHz)を気泡導入孔から 20mm 離れた位置に配置し、リニアプローブのプロ ーブ面の法線方向とトランスデューサのビーム軸が直角に交わるように調整した。 Fig.6.1-1 実験系 また、主な実験の流れは以下の通りである。46 1. リニアプローブから周期的に映像超音波が照射される 2. 映像超音波の照射タイミングに合わせて研究用超音波測定装置から同期トリガが出力 されるので、これを発振器のトリガ入力に入れる。 3. 寒天上の導入孔に 100 倍に希釈したソナゾイド用液を導入する 4. 同期トリガに遅延をかけた上で発振器出力を ON 状態にして周波数 2.5MHz、音圧 1.0MPa、強力超音波を照射時間 30µsec 照射する 5. 気泡から放射された二次超音波をリニアプローブで受信する 6. リニアプローブの各素子の AD 変換器出力を PC 上で取得 7. 取得 RF データを用いてプログラム上で書くドプラ法を用いた解析を行う。なお、 BIAS 信号の付与はプログラム上で行う。 6.2 その場可視化法による観測
実験によって得られたTimage、Simage、Tfimage、Sfimageをそれぞれフレーム方向に 2 枚
おきに抜き出した典型的な結果を Fig6.2-1 に示す。なお、Simageは下方向、左方向がそれ ぞれ Depth、Lateral 方向の正側になる。 Fig6.2-1 各手法での取得情報例 6.2-1 パワードプラ法による解析 実験により得られたTimage、Simageの振幅値の平均をそれぞれ 13 データまとめたものを
47
Fig6.2-2、Fig6.2-3 に示す。それぞれ横がフレーム数、縦軸が振幅値となっている。
Fig6.2-2 Timageの振幅平均
Fig6.2-3 Simageの振幅平均
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Fig6.2-4 Simageの振幅平均 VS Timageの振幅値平均
Fig6.2-4 から照射回数によって大きく 3 段階に分けることが出来る。 以下に傾向と原因を考察する。 ・1F~9F…Simageの振幅値平均に対するTimageの振幅値平均の変化量が大きいため、二次 超音波と気泡の散乱信号の振幅値が大きく減少していることが観測できた。すなわち、気泡 破壊による大幅な気泡量の減少が考えられる。 ・10F~14F…1~9F に対し変化量は小さいがSimageの変化量は大きく変わっていないこと が観測できた。一般的に気泡破壊による信号振幅>非線形振動による信号振幅であることと、 クラウド化によって大きくなった気泡は共振周波数を外れ振動しにくくなることから、気 泡破壊は少なくなっているが気泡のクラウド化が活発に起きていることが考察できる。 ・15F~…Timage,Simage共に変化も振幅値の減少も小さいことが観測できた。10F~14F の 時と同様の理由から、非線形振動による信号が支配的なこととクラウド化などの現象も起 きにくくなっていることが考えられる。
49 6.2-2 カラードプラ法による解析 実験により得られたTfimageの時間方向の瞬時周波数の分散値の平均とSfimageの空間分 散の平均をそれぞれ 13 データまとめたものを Fig6.2-5、Fig6.2-6 に示す。それぞれ横がフ レーム数、縦軸が分散値となっている。 Fig6.2-5 Tfimageの瞬時周波数の分散 Fig6.2-6 Sfimageの流速の分散
50
また、Tfimageの分散値を縦軸、Sfimageの分散値を横軸にしたものを Fig6.2-7 に示す。
Fig6.2-7 Sfimageの流速の分散 Fig6.2-7 から照射回数によって大きく 3 パターンに分けることが出来る。 以下に傾向と原因を考察する。 ・1F~11F…Tfimage、Sfimage共に分散値が共に高い様子が観測できた。ここから、気泡破壊 が支配的であることと気泡の動きが激しいことが考えられる。 ・13F~18F…分散値が他の 2 パターンの中間に位置していることから、気泡破壊と非線形 振動がどちらも起こっていることや気泡の移動が減少していることが考えられる。減少の 理由として、気泡のクラウド化が挙げられる。 ・19F~…Tfimage、Sfimage共に分散値が低く、変化もあまりない。 また、Fig6.2-6 の赤丸の範囲においてSfimageの分散値が徐々に増加する現象が観測できた。 これに関しては 6.4 で考察する。
51 6.3 微小移動距離測定法による観測 ここで、これまでと同条件の実験で得られたTfimageをフレーム方向に並べたものを 2 例 Fig6.3-1 に示す。この結果から、強力超音波照射後半の非線形振動が支配的なフレームで はTfimageの縞模様が右下がりになっている様子が観測できた。これは第 5 章の結果より Depth、Lateral の正の方向への移動を表している。また、①は②と比較して傾きが大きい ことがわかる。これは流速差が大きいことを表しているので、気泡が②より大きく移動して いることがわかる。 Fig6.3-1 Tfimageのフレーム方向の変化 また、Fig6.3-2 にSimageの振幅値の等高線図を示した。この結果から強力超音波の照射 が進むにつれて、気泡の分布が Lateral、Depth 方向共に正方向へ移動している様子が観測 できる。また、①は②と比較して①のほうが分布の移動が激しいことから、本手法とSimage の対応が見られた。
52 Fig6.3-2 Simageのフレーム方向の振幅変化 6.3-1 クラウド化による影響 次に、強力な超音波を照射する前に、あらかじめクラウド化をさせるための超音波を照射 した際の、強力超音波照射後半の気泡の影響について微小移動距離測定法を用いて確かめ る。なお、希釈率は 100 倍,1000 倍の二種類を用意し、強力超音波は 2.5MHz、1.0MPa を 30µsec 照射し、それぞれ全て 13 回行った。また、気泡の移動距離を測定するために高調波成分(照 射超音波の周波数である 2.5MHz の 3 次高調波の 7.5MHz)を通すフィルタを使用した。 クラウド化用の超音波は 2 パターン用意し、それぞれ以下のような条件とした。 クラウド化用超音波 1:音圧 100kPa×照射時間 1S×照射回数 3 回 クラウド化用超音波 2:音圧 100kPa×照射時間 5S×照射回数 2 回 Fig6.3-3 に 1000 倍希釈の実験におけるクラウド化あり、なしの代表例を示した。
53 Fig6.3-3 クラウド用超音波の有無による影響 Tfimageのフレーム方向の流速変化から、クラウド化していないものは強力超音波照射後 半でも気泡が移動している様子が、しているものは 20F 以降付近から気泡の動きが見られ ない様子が観測できた。クラウド化の有無による流速変化の平均をそれぞれ Fig6.3-4 に示 し、その結果を Fig6.3-5 にまとめた。流速差の平均導出には全て非線形振動が支配的とな ると考えられる 12F 以降のデータのみを使用した。 Fig6.3-4 クラウド用超音波の有無による影響(フレーム方向の変化)
54 Fig6.3-5 クラウド用超音波の有無と希釈率による流速差の違い クラウド化の有無によって流速差に明確な違いが見られた。更に、1000 倍希釈の際には クラウド化用超音波 1 を照射した際にしていない場合と明確な差が見られるが、100 倍希釈 の際には差があまり見られないため、希釈率によって照射後半の移動距離にどの程度クラ ウド化用の超音波の影響が出るかが違うことが観測された。また、移動距離のから Depth、 Lateral の正方向に移動していることが観測できた。 参考資料として、高音圧の超音波照射時における光学観測の結果としてクラウド化用の 超音波ありのデータを Fig.6.3-6、クラウド化用超音波なしのデータを Fig.6.3-7 に示し た。 Fig.6.3-6 クラウド化ありの高速度カメラの結果
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Fig.6.3-7 クラウド化なしの高速度カメラの結果
こちらは1回のフレーム間で 1 回、クラウド化用の超音波として音圧 50kPa、周波数 2.5MHz、30µsec×20 回を照射した後 1.0MPa、2.5MHz の強力超音波 30µsec だけ 100 倍希釈 のソナゾイドに照射した様子をフレームレート 5000fps で撮影した実験の結果である。今 回の実験と条件は異なるが、気泡はクラウド化用の超音波を照射したものは、していないも のに対して照射後半でも動きや気泡数が多いことが観測できた。この原因として気泡クラ ウド用の超音波をあらかじめ照射しておくことで、トラッピング現象によって壁面に押さ えつけられること(希釈率が高いほどトラッピングされやすい)やさらに大きなクラウドに なることが考えられる。なお、あらかじめクラウド化用の超音波を照射した場合、30F 以内 でクラウド化が完了している様子が観測できているので、気泡数が少ない 1000 倍希釈でも 同様の現象が観測できることが推察される。 6.4 気泡ダイナミクス考察 これまでの結果から考察される 100 倍に希釈した際の気泡ダイナミクスを Fig6.4-1 にまと めた。また、𝑆𝑓𝑖𝑚𝑎𝑔𝑒の分散値が 1~7F で増加することに関して、Fig6.3-7 より超音波が逆 の壁面に到達しておらず、振動子側に近い気泡が超音波の到達を妨げていることが原因だ と考えられる。なお、希釈率が 1000 倍の場合、過去の研究より[10]非線形振動が支配的にな るフレームが 12F から 4F 程度になるので希釈率によって強力超音波の照射回数が変化する ことが考えられる。
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第 7 章 まとめ
7.1 結論 微小移動距離測定法の結果は以下のようになった。 ① 原理確認実験の結果、今回使用した製超音波映像装置「Prosoundα7」を Table.7.1-1 の数値に設定し、中心周波数 7.5MHz の超音波映像プローブを使用し、バイアス信号の 周波数及び音圧は 7.4MHz、3kP とした際の、移動距離 25~150µm 位相差検出誤差平均が 23.1%となった。 Table.7.1-1 使用した映像装置の設定 流速最大値 ±6.0cm/s Color Gain 30 中心周波数 7.5MHz depth 50mm ② 気泡への応用実験の結果、気泡の移動とSimageの分布の変化との対応から本手法は正 確に気泡の移動を観測できていることが確認できた。また、クラウド化用の超音波をあ らかじめ照射することで強力超音波照射後半のクラウド気泡の動きに影響を与えるこ とが確認できた。 以上の結果より、汎用超音波映像装置に本手法を適用した際に、従来のその場可視化法で は観測できなかった気泡クラウドの特性を評価することができた。すなわち、これまで難し いとされてきた、気泡クラウドを用いた DDS 治療が可能になることが期待される。 7.2 今後の課題 微小移動距離測定法の精度を向上させ、より細かい視点で気泡の動きを観測可能にさせ る。クラウド化用の超音波の条件によって、強力超音波照射後半の気泡クラウドに与える影 響を観測することで、更なる気泡ダイナミクスの解明を目指す。58
参考文献
[1] 永井隼人 キャビテーションによる極微少気泡の高感度その場検出法 群馬大学大 学院修士論文 2016 [2] 中島俊貴 超音波カラードプラ法を用いた気泡キャビテーションの観測 群馬大学大 学院修士論文 2018[3] Sascha Hilgenfeldt, Michael P.Brenner, Siegfriend Grossmann, Detlef Lohse, Analysis of Rayleigh–Plesset dynamics for sonoluminescing bubbles, J.Fluid Mech., vol.365, pp.171-204, (1998)
[4] T G Leighton, A J Walton and M J W Pickworth Eur. J. Phys. 11 pp.47-50, (1990)
[5] R.Mettin, I.Akhatov, U.Parlitz, C.D.Ohl, and W.Lauterborn, Effect of static pressure on acoustic energy radiated by cavitation bubbles in viscous liquids under ultrasound, Phys.Rev.E, 56 pp.2924-2931, (1997)
[6] 山崎卓爾 キャビテーション工学 1978
[7] Lars Hoff, Ultrasound Contrast Bubble Simulation. Bubblesim,(2004)
[8] Elizabeth Huynh, Jonathan F. Lovell, Brandon L. Helfield, Mansik Jeon, Chulhong Kim, David E. Goertz, Brian C. Wilson, and Gang Zheng, Porphyrin Shell Microbubbles with Intrinsic Ultrasound and Photoacoustic Properties,Journal of the American chemical society, Volume134, pp 16464–16467, (2012)
[9]日立製作所製 ProSound α7 取り扱い説明書
[10]Ren Koda, Toshitaka Nakajima, Hiroki Horiuchi, and Yoshiki Yamakoshi,
Real-time visualization of instantaneous frequency from bubble cavitation
using color Doppler ultrasound imaging, Volume58,
pp 117001-1- 117009-959