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5. 在宅療養を患者・家族が選択することができた一症例の報告(第19回群馬緩和医療研究会<セッション4>)

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Academic year: 2021

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人暮らし. 長女と姉は看護師だが, 遠方に住んでいる. 【経 過】 1年前に腹膜播種を伴う胃癌と診断され, 化 学療法を行っていたが病状は進行していた. 平成 20年 X 月, 胸痛にて入院. 第 3胸椎に大きな転移あり, 脊髄損 傷の危険があるため, 体動はベッドアップ 30°と寝返り に制限された. モルヒネ持続皮下注で痛みは改善. 可能 なら化学療法を続けたいとの希望で 1回行ったが, 突然 A 氏は泣きながら「家に帰りたい. ずっとそう思ってい たけど,言い出せなかった」と訴えた.家族の同意を得て, 在宅療養の具体的プランを提示し, 準備を始めた. しか し, 化学療法による高度の副作用が出現してしまい, 中 断となった. 一度は前向きに えていた家族も, 主介護 者が男兄弟であること, 昼間は A 氏が一人になってしま い心配だ, と消極的になり, A 氏の容態が回復した後も, 態度を決めかねたまま 1か月以上が経過した. その間 A 氏は,穏やかだがはっきりと「帰りたい」と話していたが, ついに, 面会に来た姉の前で「うちに帰ってそこで死に たい! どうして連れて帰ってくれないの?」と怒りを露 わに訴えた. すかさず家族に, A 氏がどんな状態でも家 に帰れる準備はできている事を説明した結果, 在宅療養 への決心が付き, 翌日病院の救急車で退院となった. 10 日後, 家族に看取られながら自宅で永眠された. 【 察】 看護師は A 氏に,すぐにでも自宅に帰って,残りの 人生を家族とともに過ごしてほしいと思った. しかし, 家族の不安の大きさを えると, 焦って自宅に帰しても すぐに再入院になり, A 氏の希望を叶えることはできな いだろうと えた. そのため, 必要な準備を行いつつも 家族に無理強いはせず, 板挟みになりながらも, 家族の 決心がつくのをじっと待ったことで, A 氏の希望を叶え ることができたのではないかと えられる. 4.家族の意思を尊重し“在宅での看取り”が可能となっ た一事例 武井 浩之,設楽 理枝,増野 貴司 柳井 紀道 ( 立藤岡 合病院 西2階病棟) 岩井 隆子,黒澤磨由美,千木良直子 古池きよみ (同 緩和ケアチーム) 【はじめに】 老年期のがん患者の場合, がんになったこ とをきっかけに心身の機能低下を招きやすいという特徴 から, 家族は介護による時間的, 身体的制約が大きい. ま た, 症状の変化への対応の不安もあり生活面に大きな影 響を受ける. しかし, 適切な介入を行い在宅へ移行し, 家 族が協力して患者の闘病を支えられよい看取りができれ ば家族の満足度は高い. 今回チームで関わることで, 早 期に在宅へ移行することができ看取りが可能となった一 事例を経験した. 【事 例】 A 氏,95歳女性.大腸がん. 同年 X 月まで 1人暮らし.高血圧で近医受診,黄疸,腹水 貯留あったが, 高齢のため精密検査は行わず経過観察. 恥骨骨折のため整形外科入院. 胸腹水貯留, 血, 肝 変 の治療のため内科転科. 退院前日大量下血. 食事摂取可 能まで回復, 家族の希望で在宅へ退院. 自宅ではほぼ寝 たきり, 娘が介護. 1ヵ月後全身衰弱と腹痛強く, 救急車 で来院入院. 【経 過】 高齢であり, 侵襲的検査は行わ ず疼痛コントロールで経過をみる方針で塩酸モルヒネを 用. 患者, 家族が自宅に退院したいと強く希望. 家族に は末期肝 変, 大腸がんで治療しなければ生存は困難と 説明, それでも自宅で介護したいと希望. デュロテップ パッチに変 し, 往診医, 在宅看護を依頼, 全身状態不良 であったが自宅退院となった. 【 察】 病状悪化し ても在宅療養を継続できるように, ソーシャルワーカー から診療所の医師に連絡を行い, 訪問看護師が病室訪問 を行い, 家族と支援の確認を行った. こうした準備によ り, A 氏は退院の翌日に住み慣れた家で最期を迎えるこ とができた.娘は「よくしていただいて.面倒をみたから 悔いはないです.」と述べられ, 娘にとって人生の満足と なる療養となった. 老年期の患者と家族は様々な 康問 題や生活上の困難さが伴う. それらについてケアチーム に属するそれぞれが自 の専門 野から情報収集や提案 を行い, 合的に捉え援助していく必要がある. 5.在宅療養を患者・家族が選択することができた一症 例の報告 神宮 彩子,古関 雅美,柳澤千鶴子 高橋 和宏,吉永 輝夫,神田 大輔 山口亜樹子,平山 功,吉田 長英 河合 弘進,細内 康男,深澤 一昭 仁科 砂織,関根奈光子,望月 裕子 (群馬県済生会前橋病院 かんわケアチーム) 【はじめに】 がん終末期患者の多くは在宅での生活を希 望するが, 終末期患者を介護するという家族の不安は大 きく, 在宅への選択が困難な場合が多いと感じている. このような不安を明確にし, 支援したことで患者・家族 が自ら「在宅」を選択することができた一症例を報告す る. 【症 例】 70歳, 男性. 膵臓がん, 肺転移, 糖尿病. 化学療法を中断, 症状マネージメント中. 秘にて入院 となった. 秘の解消後, 全身衰弱, 環境の変化による見 当障害が生じ, 日中も傾眠であった. Ⅰ : 家族が強く入 院を希望していた時期 本人は力なく「帰りたい」と話 し, 妻, 娘は毎日面会して差し入れなどできることを 行っていたが「食べてくれない.日に日にやせていく.退 院なんて無理.」と話された. Ⅱ : 外泊後在宅に対する不 安が明確になってきた時期 状態も落ち着き, 外泊を提 案した. 帰院後の本人の表情もよく退院希望がより強く 68 第 19 回群馬緩和医療研究会

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なり, 家族も自宅では見当障害なく過ごせたことに驚き, 退院を視野にいれた話がでてきたため MSW と共に面談 を実施. 在宅に対する不安が明確になった. Ⅲ : 本人, 家 族共に在宅療養希望に至った時期 明確になった不安は 通院, 患者の状態に対しての対応で, 在宅では家族で全 て介護を行うものと思っていた. 社会支援を取り入れ, 状態に合わせ介護ができることを伝え, 往診医と面談, 本人, 家族共に自ら在宅を希望し在宅療養, 在宅での看 取りとなった. 【 察・まとめ】 変化していく患者状態, その患者に自 たちは何ができるのかという不安, また 在宅療養は全て家族で行うという誤認があった. 外泊で の体験から, 家族の不安も明確にすることができ, その 不安に応え, 必要としていた情報を提供することができ たため患者, 家族共に療養の場を意思決定できたと え た. 在宅療養に限らず患者, 家族が体験を通じていく中 で生じる不安を軽減できるよう支援し, 療養生活の場を 自己決定できることが望ましい.

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座長:笹本 肇(原町赤十字病院) 1.緩和ケアチームにおける臨床心理士の役割 ―伊勢 崎市民病院での 1 年目の取り組み― 新井麻沙美,金井 直子(伊勢崎市民病院 緩和ケアチーム 臨床心理士) 毛呂 裕臣 (同 心療内科) 【はじめに】 平成 19 年にがん対策基本法が施行され, がん医療の てん化の促進が図られている. その中で緩 和ケアの領域においては, 緩和ケアチームを構成する一 員として心理職が加えられるようになってきている. 当 病院では平成 20年 4月より,臨床心理士 (以下 CP)も緩 和ケアチームの一員として患者さん (以下 Pt) やその家 族への支援にあたっている. 本発表においては緩和ケア チームにおける CPの活動について報告し, その役割に ついて 察したい. 【当病院緩和ケアチームでのCP業 務】 ① Ptの精神症状のアセスメント…不安,抑うつ,焦 燥感, せん妄, 睡眠について聴取. 必要があれば心療内科 受診へとつなげる. ②心理面接. ③多職種カンファレン スでのスタッフとの情報 換. 【結果と 察】 ① 2008 年 12月 に CPが Pt本 人 と 面 接 し た ケース は 25件 で あった. このうち精神的支援や治療が必要と思われた ケースは 5件あり, うち 2件が心療内科受診となった. ②心療内科受診とはならなかった 3ケースについては, CPが週に 1∼ 2回の面接を継続的に行うことで精神的 な支援を行っている. 不安や病気についての思いを聞く ことは Ptを精神的に支えることに役立っていると思わ れる. また, 面接の中で Ptや家族の要望を聞くことので きたケースもあった. ③そして担当看護師を中心とする スタッフとの話し合いや多職種カンファレンス, 電子カ ルテの閲覧を通して, CPが聞き取った Ptや家族の思 い、要望などの情報を病棟スタッフが共有することがで きた.このことはスタッフが Ptや家族への理解を深める ことに役立ち、結果として有効な支援を行うことができ たのではないかと える. 【まとめ】 緩和ケアチーム における CPの役割は, ① Ptや家族のニーズや思いを把 握しスタッフ全体で共有することで理解を深めること, ② Ptと家族に精神的な支援を行うことである. 今後は CP介入の効果を明確な形で評価する方法を検討するこ とも必要と思われる. 2.緩和ケアにおける栄養士の役割 ―当院緩和ケア病 棟の活動を通して見えたもの― 勅 河原かをり( 立富岡 合病院 栄養サポートチーム 栄養士) 野田 大地 (同 外科) 石塚 裕子,津金沢理恵子 (同 看護師) 【はじめに】 緩和ケア病棟入院中の患者の多くは, 病状 の進行に伴う食欲不振があり経口摂取が困難な状況であ る. 医療者は栄養摂取に主眼を置くだけではなく, 患者 の嗜好に合わせた食事提供を行う必要がある. そこで, 緩和ケア病棟での終末期の患者・家族への介入を通して 見えた栄養士の役割について報告する. 【目 的】 緩 和ケア病棟での「食」へのケアにおける栄養士の役割を 検討する. 【事例紹介】 (1) A 氏,60歳代男性.胃癌・癌 性腹膜炎. (2) B氏, 30歳代女性. 乳がん・多発肝転移・ 骨転移.夫,子供 (2名),本人の両親の 6人暮らし 【結果 (介入内容と反応)】 (1) A 氏「食べないと体力が落ち てしまう」と話し, 食事の種類や形態への要望が多かっ た. 病状と嗜好に合わせた食事内容を相談, 時には栄養 士自身が調理し, より患者の要望に近い食事内容となる ように工夫, A 氏の意思を尊重するように努めた. 徐々 に A 氏は笑顔をみせ, 食の味を楽しむようになった. (2) B氏 傾眠傾向ながら, 夫の 生日を家族で祝いたいと 話した. 当日に, 幼い子供が喜びそうな 生日膳を え て提供. 食事を通して家族との時間を共有できるように した. B氏は「ありがとうございます.」と話した. 【 察】 A 氏の繰り返される要望の裏には, 口から食べる ことへの強い思いがあった. 食べることで 生 を実感 していたと思われる. その思いを栄養士が受け容れ, 内 容を工夫した事で信頼感を築くきっかけとなった. この 関わりにより A 氏は食への欲求を満たし, 味わう楽しみ を通して 生 を実感するようになったと思われる.B氏 の事例では, 妻として夫の 生日を祝う事で, 家族との 69

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