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子どもの関心・意欲を育てる社会科授業構成と実践分析(VIII) : 小学校5年「国土を守る森林」を事例として

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(1)学校教育学研究, 2000,第12巻, pp.87-100. 87. 子どもの関心・意欲を育てる社会科授業構成と実践分析(Ⅷ) 一小学校5年「国土を守る森林」を事例として原田智仁・岩田一彦・草原和博(兵庫教育大学) 贋瀬憲雅・進藤憲司・松本浩・渡信雄(兵庫教育大学附属小学校) 堂本大明(福田小学校) 本継続研究は,子どもの関心・意欲を育てる社会科授業設計・実践・授業分析・評価方法の開発を目的としている。この目的を達 成するために,関心・意欲はどのような授業設計および実践のなかで育成できるのか,また関心・意欲の視点から授業を分析したり 評価することはどのようにして可能かを解明してきた。本研究Ⅶでは,学習内容に対する関心(知的好奇心) ・意欲(知的向上心) の育ちと,その育ちを規定する条件を把握するために,実験授業『国土を守る森林』を実施し,授業を受けた児童33名の変容につい て分析,評価を試みた。 データを解析した結果, ①教師の価値関係的な教材解釈- 「森林保護は大切である」に基づき授業設計をした場合,社会事象の原 因・本質- 「なぜ森林を守ることができないのか?」に迫ろうとする子どもの認識活動を阻害することがある, ②科学的な好奇心・ 向上心を満たすきっかけを逸した子どもは,実践的側面に係る好奇心・向上心- 「森林を守るために何かしなければ! 」をもって教 師の問いかけに応えようとする,という構造が明らかとなった。このように,実践者の授業設計論と,学習者の知識および関心・意 欲の成長との関わりを緻密に捉えることができたのが,本研究の成果である。 キーワード:関心・意欲,社会認乱社会科授業,評価,指導要録,国土,森林. 原田智仁:兵庫教育大学・社会系教育講座・助教授, 〒673-1494兵庫県加東郡社町下久米942-1 岩田一彦:兵庫教育大学・社会系教育講座・教授, 〒673-1494兵庫県加東郡社町下久米942-1 草原和博:兵庫教育大学・社会系教育講座・助手, 〒673-1494兵庫県加東郡社町下久米942-1 贋瀬憲雅・進藤憲司・松本浩・渡信雄:兵庫教育大学・附属小学校・教諭, 〒673-1421兵庫県加東郡社町山国2013-4 堂本大明:社町立福田小学校・教諭, 〒673-1444兵庫県加東郡社町沢部613-1.

(2) 学校教育学研究, 2000,第12巻. 88. Development and Analysis of Social Studies Lesson for Promoting Children s Interest and Volition CVDI) : In the Case of ``Forest Conserving Land" in the 5th Grade Tomohito Harada, Kazuhiko Iwata, Kazuhiro Kusahara {Hyogo University of Teacher Education) Norimasa Hirose, Kenji Shindo, Hiroshi Matsumoto, Nobuo Watari (Attached Elementary School, Hyogo University of Teacher Education) Daimei Doumoto (Fukuda Elementary School) This study is a continuation of "Development and Analysis of Social Studies Lesson for Promoting Children's Interest and Volition (I )-(VH)", which have made it clear that children's interest and volition can be promoted through enriching children's social cognition, and that promoted children's interest and volition can enrich children's social cognition. The purposes of this article are to develop Social Studies lesson plan for promoting children s interest and volition, and to propound a theory and methods for analyzing the practices and children's affective development. The hypotheses in this study are followings : 1. the children who have much interest in the social matters in terms of quality and quantity can promote a long-term social volition, and the children who firmed volition on a social research can promote own social interest in many areas, 2. the learning process of (a) investigation, (b) sympathy, and (c) expectation enables children to promote their interest and volition. Based on these hypotheses, we developed a lesson plan of "Forest Conserving Land" in the 5th grade, and then analyzed this practices, and evaluated children's interest and volition as well as their understandings. As a res-ult of this study, our hypotheses are supported. Key Words : interest and volition, social cognition, Social Studies, evaluation, the SHIDOUYOUROKU(the course of evaluation) in 1991, land, forest. Tomohito Harada is an Associate Professor of Department of Social Science, Hyogo University of Teacher Education, 942-1, Shimokume, Yashiro-cho, Kato-gun, Hyogo, 673-1494, Japan Kazuhiko Iwata is a Professor of Department of Social Science, Hyogo University of Teacher Education, 942-1, Shimokume, Yashiro-cho, Kat0-gun, Hyogo, 673-1494, Japan Kazuhiro Kusahara is a Research Associate of Department of Social Science, Hyogo University of Teacher Education, 942-1, Smmokume, Yashiro-cho, Kat0-gun, Hyogo, 673-1494, Japan Norimasa Hirose, Kenji Shindo, Hiroshi Matsumoto, and Nobuo Watari are Teachers of Attached Elementary School, Hyogo University of Teacher Education, 2013-4, Yamakuni, Yashiro-cho, Kat0-gun, Hyogo, 673-1421, Japan Daimei Doumoto is a Teacher of Fukuda Elementary School, 613-1, Sawabe, Yashiro-cho, Kat0-gun, Hyogo, 6731444, Japan.

(3) 子どもの関心・意欲を育てる社会授業構成と実践分析(Ⅶ). 1.序 本研究は,子どもの関心・意欲を育てる社会科授業構 成と実践分析-3年「社町の桃づくり」を事例として -1)同(n)一小学校4年「山地の人々の暮らし-安曇 野(穂高町,豊科町)に湧く良質で豊富な水を生かしたく らし-」を事例として-2)同cm)一小学校3年「ひと びとのくらしと商店一買い物を10倍楽しむ方法-」を事 例として-3),同(w)一小学校4年「菊づくりに生きる 沖縄の人々」を事例として-4)同(V)-小学校5年 「ビデオ『杉原紙』を作ろう」を事例として-サ, (VI)一 小学校4年「嬉野台地の開発」を事例として-o (vn)小学校4年「低地の人々のくらし-海津町-」を事例と して-7)の継続研究である。これらの研究では,認識 内容を深めさせることが,子どもの関心・意欲を育てる, との研究仮説に基づき研究を進めてきた。 これまでの研究成果から,とくに認識内容の成長が意 欲の継続には欠かせないこと,関心が事実的データに向 かっているときは「いろいろ調べたい」という意欲を生 み,関心が主題の特色を捉える概念に焦点化されている ときには「もっと深く知りたい」という意欲を育てるこ とが明らかとなった。また,関心・意欲を育てる社会科 授業設計の理論と,子どもの関心・意欲を評価するフレー ムワークを構築することできた。 本研究Ⅶでは,実験授業の結果,どのような性質の閲 JL、・意欲を育てることができたか,それには教師の授業 理論や子どもが獲得した知識内容がどのように影響して いるか, (》授業設計論⇔②社会認識⇔③関JL、・意欲の相 互関連を中心に分析を試みた。 1.1問題意識 実験授業を受けた結果, ①学級全体および個々の子どもには,どのような社会認 識が成立しているか。 (彭学級全体および個々の子どもには,どのような関心・ 意欲が育っているか。. 89. 意欲を効果的に伸ばすことができる。 ③教師の授業設計論や教材解釈は,子どもの獲得する社 会認識の質を,また関心・意欲の性格を左右する。 1.3研究方法 ①各次終了時に子どもが措いた「学習成果イラスト帳」 を分析し, Eg土に関わる認識内容を明らかにする。 ②各次終了時に行われた「知りたいこと」調査表を分析 し,関心の育ちを明らかにする。 ③各次終了時に行われた「分からないこと」調査表を分 析し,意欲の育ちを明らかにする。 ④特徴的な育ちをみせた子どもに注目し,学習展開に沿っ た認識内容の深まりの様子と,関心、・意欲の成長の姿 を再現する。 1.4研究Ⅵllの特徴・意義 本研究では,以上の手続きをもって関心・意欲の育ち を一層緻密に追いかけるとともに,関心・意欲を育てる 社会科授業を開発・実践し,その分析を試みた。 今回開発した単元では,学習対象に(D社町や東条町な どの身近な森林, (塾県内でも有数の木材生産地として知 られる多可郡加美町の林業, (診森林資源の保全を通じて 地域の経済的・文化的振興を図ろうとする宮崎県綾町と 山形県小国町のエコミュージアム,を取り上げた。そし てこれらの事象を徹底的に追究させることで,林業の発 展に取り組む人々の姿に関心を抱き,森林の開発・保全 事業の裏側にある苦労や努力をより深く理解しようとす る意欲を育てようとした。単元の終結部には,これまで の研究成果を踏まえて,日本の森林の将来像を予測する 場面を設けた。併せて森林保全のために私たちにもでき ることを討論させ,その具体的方策を提案させた。 今回の授業設計で工夫した点は,多可郡で林業に携わ る山口氏と林氏を授業に招き,林業従事者の悩みを子ど もたちが直接聞き取る場面を設けたところにある。これ には,森林や林業について経験知が乏しい子どもたちに, 当事者の語りを通じて豊かな情報を得させたいとする意 図がある。また同時に,森林保全の大切さや林業衰退の. ③広く社会的事象に関心をもち,学習課題を意欲的に追 究できた子どもには,どのような社会認識が育ってい るか。それはなぜ可能になったか。 ④過去・現代の社会を広く深く把握し,未来を科学的に 予測できた子どもには,どのような関心・意欲が育っ ているか。それはなぜ可能になったか。 これら4つの問題を,学級全体の変容過程と抽出児の 成長に注目しながら解明したい。 1.2研究仮説. 危機についての社会的関心と学習意欲を高める効果もね らっている。 授業分析と子どもの評価においても,これまでに開発 してきた手法をさらに発展させた。例えば今回新たに開 発,導入したものに,子どもの個性的な社会認識を象徴 的写実的な図像として表現させる「学習成果イラスト帳」 がある。また研究Ⅶから使っている「知りたいこと調査 表」と「分からないこと調査表」には,前回の反省を踏 まえて部分的修正を施した。これらの分析道具を駆使し,. ①認識内容の量的豊かさと質的高さは,関心の新たな芽 生えや意欲の持続的成長と,密接に関係している。 ②授業過程に,調べ学習や人物への共感,未来予測の場 面を適切に組み込めば,子どもの社会認識および関心・. 子どもの情意的側面の育ちを認知的側面との関わりにお いて明らかにしようとしたのが,方法論からみた研究Ⅷ の成果である。 (草原和博).

(4) 学校教育学研究, 2000,第12巻. 90. 2.授業構成の実際 2.1教材解釈 筆者は,自らの力で積極的に社会的事象に関わり,社 会や自分のよりよいあり方を求めようとする未来予測型 の社会科授業を実践してきた。これまでの実践を通じて 浮び上がってきた5年生児童の特徴としては, 「社会的 事象の事実を関係的に捉え,多角的な観点で未来予測し ようする」傾向を指摘できる。 例えば,単元「日本の農業」では,終結時に未来予測 の過程を組む込むことで,社会的判断の根拠が数の上で 増加するという傾向が見られた。また判断の質にも成長 の跡が見られ, 「それぞれの農法は,良いところも悪い ところもあるけれど,環境のことやたくさんとれること を考えると『への字型農法』がいいと思う」などと,社 会事象を相互に関係付けて捉える姿も碓認できた。 これらのことから判断して,社会的思考力や判断力を 育成しようとすれば,社会的事象を「関係的に」捉えた り,自己の社会的判断を「多角的な根拠」をもって正当 化させる教授学習活動を用意することが不可欠であると 考える。本単元「国土を守る森林」においても,各地の 森林・林業が置かれた現状を理解させるとともに,自分 との関わりにおいて未来の森林の姿を予測させる学習を 設定することにした。 日本の森林面積は,国土の約70%に当たる2500万ha におよび,そのうち人工林が44%,天然林が56%を占め るo一見すると日本の国土は,森林に覆われた緑豊かな 土地のように見える。しかし,組織的に管理されていな い人工林に一歩足を踏み入れると,節だらけの木々が密 集し,地面には日の光も届かず寒々とした光景が広がる。 下草が生えないため,地表の栄養分は雨に削りとられ, 土はやせ衰えている。なぜここまで森林が荒廃してきた かというと,外材の輸入自由化で,安価な木材が輸入さ れるようになったからである。その結果,国内の木材需 要は低迷を続け,山林経営の魅力も薄れる。必然的に林 業従事者は激減し,高齢化や後継者の問題はますます深 刻化している。近年では酸性雨の被害も拡大しており, 高速道路沿いを中心に立ち枯れた木が目立つようになっ た。このように我が国の森林は, (D産業構造の転換と② 生態系の危機というダブルパンチの真っ只中にある訳で i** このように様々な問題を抱えている日本の森林である が,加美町林業家の山口氏のようにたった1人で山林を 管理し経営に努力している人もいれば,杉や槍の間伐材 を利用して独創的な家具づくりをしている林氏のような 人もいるOまた政府・自治体も,地球温暖化の原因物質: 二酸化炭素を吸収する森林の存在価値や,水を蓄え国土 を保全してくれる森林の諸機能,またリクリエーション. や憩いの場としての森林に注目し始めた。このような地 域の人々の暮らしぶりや日本社会の動向を踏まえ,森林 と自分との関わり方を考えさせる単元を設定することに した。 学習内容の中心には,地域の森林や自然をまるごと保 全しようとするエコミュ-ジアムの取り組みを据えた. また山口氏や林氏との意見交換の場を設けることで,両 氏の森や木に対する思いにも触れさせた。これらの教材・ 人物を中核に単元を構成することで,自分たちの力で地 域の森林を保全してゆこうとする意識を育てることがで きると考えたからである。 学習の流れは,おおよそ次の通りである。まず最初に, 昭和20年代と現在の森林の様子を比較させたり,高速道 路・宅地・ゴルフ場などの開発地区を白地図に着色させ ることで,地元の森林は戦後一貫して減少している状況 を把握させた(導入部)。次に,森林がどうして減少し てきたのか,その原因を探らせるとともに,森林保全に おいて特色ある地域を調べさせた。ここでは教師の側か らエコミュージアムに積極的に取り組む市町村を紹介し, 森林の可能性を問い直す手がかりを与えた(展開部)0 最後に,山口氏・林氏の話や日本各地の森林保全の様子 を参考にして,地域の森林が果たすべき役割やその将来 性を予測させた。そして最終的には,地元の森林保全に 自分はどうのように関わってゆくかを意思決定させるよ うにした(終結部)。 以上のような学習の流れを, 「①問題に触れる」 「②問題について調べる」 - 「③問題への関わり方を考 える」の学習過程に即して整理したものが,次頁の単元 計画である。各小単元の学習課題は,単元の主題「匡L土 を守る森林」に合わせて,次のように設定した。 「(D地 域の森林の現状を知ろう」 - 「(参森林を守るためにはど うすればよいか調べよう」 - 「(診地域の森林を守るため にはどうすればよいか考えよう」。次々頁に掲載した本 時案は,公開授業を行った第3次第3時のものである。 2.2単元の指導 2.2.1単元の目標 ・自分との関わりで地域の森林に関心を持ち,森林のは たらきや森林保全について,意欲的に調べることがで きる。 ・地域のエコミュージアムの核を構想,選定したり,他 の方法を吟味することで,森林保全の方策を多角的に 提案することができる。 ・地域の森林の未来を予測することで,自分なりの森林 への関わり方を考えることができる。.

(5) 子どもの関心・意欲を育てる社会授業構成と実践分析(Ⅷ). 91. 2.2.2単元計画(全12時間) 第1次-2時間 第2次-6時間 第3次-4時間 学. 習. 活. 動. 社. 会. 認. 識. 地域の森林の現状を知ろう. 問題に触れる. 人 の 営 み. 社会 の しくみ. ○地域の森林の現状を知る。 ・昭和20年代の森林と現在 の森林の比較 ・森林の減少 ・ゴルフ場や高速道路 ○樹木の現状 ・広糞樹が少なく針葉樹が 多い ・商品価値の少ない木 ○林業従事者の現状 ・高齢化や後継者問題 ◎このままでは,森林や環境 はどうなってしまうのか?. 人の生き方 に触れる ・林業従事 者や森林 組合の人 ・営林署の 人. 単一事実認識 ・森林の減少 ・商品価値の 少ない木 ・立枯れの木 ・排気ガス ・林業従事者 の問題 ・荒れ果てた 森林. ○森林を守るためにどうして いくかを追究する。 ・植樹,植林. 生き方から. 問題について調べる. ・森林ボランティア ○国内の森林保全の様子を調 べる。. ・商養林 ・魚付き林 ・伐らずの森. '"fぶ. ・地域の森 林や山を 活用して 地域の活 性化に取 り組む人. ○エコミュージアムについて 調べる。 ・宮崎県綾町の「照葉樹林 都市」 ・山形県小国町の「山まる ごと自然博物館」など ◎地域の森林を守るためには, どうすればよいのだろうか?. 問題への関わり方を考える. ◎国内各地の森林保全の方法 を参考にして,地域の森林 を保全する方策を考えよう。. ・植林 ・エコミュージアム構想に 向けた具体的なアイデア ○森林を保全する方法を吟味 する。 ○未来予測に基づき,今後の 森林保全の方法,在り方を 最終的に決断する。. 単一事実認識 相互関係認識 ・森林ボラン ティア. ・魚付き林 ・伐らずの森. "」-* ^ ォ ー. 過去と と現在 の森林 写真や 地形図 貧弱な 針斐樹 を撮影 したビ デオ. ・教科書 ・資料集 ・聞き取 り調査 ・参考図 ∃聖 日. ・国内各地の. ・ビデオ. エコミュー. ・写真. ジアムの内 容比較. ・インター. 自分の生き 方を考える. Eg果関係認識 未来予測. 国内各 地のエ. ・エコミュー. ・エコミュー. ジアムに どの様に 閑わる. ジアムの再 吟味を通し て,地域の 未来を姿を 予測する. コミr ジアム につい. ネット. ての資 料. 教師の働 きか け. . 過去 と現在の森林面積を比較 さ せ, 森林面積の減少傾向を捉え させる0 . 森林面積は国土の70 % を占める が, 多 くは痩せ細 った木である ことを押さえる0 . 安価な外在の輸入により国内林 業が成 り立たなくなったため, 林業従事者の減少をきた してい ることを押さえる0 . 森林の破壊は環境破壊につなが り, 自分たちの問題でもあるこ とを実感 させる0. . 調べる情報がわか りに くい子 ど もには, 地域の林業従事者や宮 林署への連絡方法を知らせる0 . インターネットなどを活用 して 独自の情報ネットワークを もつ ようにア ドバイスする0 . より広い視野で国内の森林保全 の状況を調べさせる0. . 森林を守る一手法としてエコミュー ジアムの考えを紹介する0 . 森林保全のために努力 している 人々の生き方に注目させる0. . 地域の森林保全を多角的に検討 させ, 自分が考える最 も優れた 保全方法を提案させる0 . 提案 された保全方法を相互に吟 昧させ, どの様な方法が未来の 地域の森林保全に適 しているか を考えさせる0 . エコ ミュージアムや他の森林保 全の方法を考えることにより, 自分 自身の森林保全への関わ り 方を検討させる0.

(6) 学校教育学研究, 2000,第12巻. 92. 2.2.3本時の学習(第3次3時) (1)目標 ・エコミュージアムの核を構想したり他の森林保全の方法を吟味することを通じて,森林保全の在り方や方向性を多 角的に考えることができる。 ・森林保全の未来の姿を予測し,自分なりの森林への関わりを考えることができる。 (2)展開 学. 習. 活. 動. 予 想 さ れ る子 ど も の 反 応. 教師の働 きか け (○行 動 ◎ 内容 ). 1 . 前時までの学習活動を振り ◎様々な地域の森林保全の方法を振 り ○今までの主な意見を整理 し, まとめる0 返り, 学習課題を掴む0 返 りつつ, 自分の提案を再確認する0 ○友達の意見 と比較 させ, 相違点 を明確 にさせる0 学習課題 :地域の森林を守 るためにはどうすればよし 、 か考えよう 2 . 森林保全の方法をお互いに 吟味 しあう0 . 現状維持派 .植 林 派 . 森林ボランティア派 . エコミユl ジアム派 . 広葉樹の里派 . 地域マンパワI の活用派 . うれ しの森林公園派 . うれ しの木工教室派 など. 3 . 林業の山口氏と地域の森林 保全の在 り方について話 し合 う0 山口氏にも話 し合いの輪に加 わつてもらい, 森林を守る方 法について子ども達と意見を 交換する0. ○提案の吟味を通 じて, 実現可能な森 林保全の方法を求めていく。 ○これまでに調べた内容を根拠に, 提 案の妥当性を吟味する0 ◎地域の森林資源を守るためには, 地 域のあった植林をしなければ0 ◎エコミュージアムの考え方を取 り入 れて, 社町にもサテライト やコアミュー ジアムを作 ろう0 ◎地域の森林を守るために, 様々な努. ○森林保全 の方法を具体的な根拠 を もと に話 し合わせる○ ◎ 1 つの観点か ら判断するのではなく, 様々な観点 の吟味を通 して具体的な森. ○林業家の山口氏と一緒に, 地域の森 林保全について考える0 ○地域の森林の現状を克服するための アイデアを出 し合 う0 ◎森林 は, 木材資源の供給だけでなく, 地域の自然や環境を守る重要な働き をしている0 ◎税金などの面か らも林業や森林を支. ◎山口氏には, 厳 しい現状だけではなく, 様々な工夫 や未来の展望 について も話 して もらい, 子 どもには出来 るだけ林 業の明るい将来像を描かせる0 ◎エコ ミユI ジアムの構想や地域 の林業 従事者 との交流 を通 して考 えた ことな どを多角的 に関係づ けさせ, 地域 の未. 林保全あり方を追究 させる0 ◎相互関係 や因果関係 的な事実認識 に基 づ く意見を評価す る0 ◎各地の森林 を保全す るために努力 して いる人を紹介 し, 彼 らの生 き方 に も目 を向けさせる0 ○森林保全派の意見が多いようであれば, 刀, 工夫をしている人がいる0 ◎高速道路や工業団地などの開発の結 開発によ って人々の生活 がどのよ うに 莱, 地域 は便利になり, 経済的にも 変わ って きたかを考 えるよ うに示唆す 豊かになってきた面は無視できない0 る0. 釆の姿を予想させ る0. える必要があるのではないか0 4 . これまでの学習をまとめ次 時に向けた課題を もつ0. ○友だちや山口氏との交流によって深 まった考えを参考に, 自分なら森林 保全にどのように関わってゆくかを 具体的にまとめる。. ◎ 1 人 1 人 の森林保全への関わ りが, 地 域の森林を守 ることにつながることを 再認識 させる0. (贋瀬憲雅).

(7) 子どもの関心・意欲を育てる社会授業構成と実践分析(Ⅷ). 93. を減らさないと,本当の死の星になってしまう」 -. 3.育成された認識内容とその評価. 「さん性雨をはっておくと作物がかれたりコンクリー. 本実験授業で育成された認識内容を評価するために, 「イラスト」 「説明文」を単元展開の途中で2回,事後 1匝l書かせた。その指示内容は,次の通りである。. トも溶けて死の星になってしまう」 この単元の性格からか現状認識を深め,認識内容の深 まりも見られるにもかかわらず,森林保護に全体的価値 をおいている子どもが,大半を占めた。単元終了時の説. 学 習 成 果 イ ラ ス ト帳. 明文の事例から,その傾向を拾ってみよう。. 1 . これ ま で の学 習 で わ か っ た こ とを イ ラ ス トに描. 森林に絶対的価値をおいた説明文(単元終了後). い てみ よ う0 イ ラ ス トに は必 ず題 名 をつ け る こと0 友 達 と イ ラ ス トを 交 換 して ご らん な さい0 友達 は,. ①森は二酸化炭素だけでなく,心を安らかにしてく. 自分 と は ち が う どん な イ ラ ス トを描 いて い るだ ろ. れる。しかも,森を守るためには,人の心自体を かえなければならない。そのためには森が必要。. う0 交 換 した友 達 の 名 前 (. ). (塾木と自然の素晴らしさを本物の木で実感してもら い,それでみんなに木の大切さを教え森林を守る。 (彭これからは,人々が協力し合って今までをくつが えすほどに森林を増やしてなんとか努力し,二酸. 題. 化炭素をできるだけへらして豊かにする。 ④木のことをほっといたりどうでもいいと思ってい ると,しっぺ返しをくらう。地球をだめにしてし. 2 . 今 度 は イ ラス トの 内 容 を文 章 で 書 いて み よ う0 こ の イ ラス トで あ な たが 伝 え た か った こ とは何 で すか ? 言 葉 で 説 明 して下 さ い0. まう。 ⑤日本の人達が協力したら,森林はゼッタイに守れ る。 ⑧私は,自分ができることは,木のよさをみんなに 知らせることだと思う。私はゼッタイに家族に知 らせる。. 5年の「国土を守る森林」の授業においては,一般的 に森林の重要性が憩調され,森林の保護育成を絶対的な 価値であるとする展開になりがちである。 本実験授業では,一方的な価値判断に陥らないで,多 様な可能性を探る方向での展開がなされた。分析結果を, クラス全体の傾向性と,ティピカルな事例の検討に分け て述べていこう。 3.1認識内容の傾向性. クラス全体の認識内容の育ちでは,ほとんど深まりを 見せない子と的確な現状分析を踏まえた未来社会の予測 まで深まっている子が見られた。これは授業内容への関 心の育ちとの関わりで生じてきた現象であろう。 A : 「地球温暖化で南極のペンギンが危ない」 - 「木 がだんだんなくなってしまう」 - 「人が山を削るか らハゲ山になる」 授業の中で使われた用語には強い関心をもっている。. 森林が大切であることは誰でも容易に分かる。社会科 授業において大切なのは,大切であることが分かってい るにもかかわらず,森林面積が減少を続けているのはな ぜかという追究である。森林の重要性と日々の生活維持 のためのやむを得ない現実に関する具体的事象の認識が 不可欠である。 認識内容の育ちの評価結果において,上記①∼⑥のよ うな表現が大半を占めたと言うことは,社会の厳しい現 実に関する認識内容が十分には保証されていなかったと 判断できる。 3.2認識内容の育ちの具体的事例 3次にわたるイラスト及び説明文においてどのような 認識内容の育ちが見られたのかについて,典型例を取り 上げてみよう。 幅広い事象から自然破壊へ関心が焦点化されている事例 イメージ画の変化 (第1次)題「どうなっちゃうの?」. それにもかかわらず短絡的な結論に行ってしまっている 例も幾つか存在する。次の例はその典型である。 B : 「木を切ると-ゲ山になり,どしゃくずれがおき,. ・外国からの木材運搬船-安い輸入木材⇔国内産. ひがいがでる」 - 「二酸化たんその原因のい黄とか. ・解ける氷の上のペンギン-禿山-日本の暑い夏. の木材 ・工場からの煙-大気汚染に苦しむ人間.

(8) 学校教育学研究, 2000,第12巻. m. (地球の温暖化) (第2次)題「ゴメンナサイ∼! !」 ・森の木々,草木の悲鳴(カエセ・コール)-泣い て謝っている子,怖がっている子 (第3次)題「できるか?」 ・自然を守ろう⇔守れない(皿拭きにティッシュ, ティッシュの山). C02をへらすようにくふうをしなければという こと。. (第2次) みんなでがんばって保護すれば,木も答えてくれ る。. (第3次) 森を守るためにこんなことをしています。みなさ んもしませんか。かんきょうのことを自覚しましょ. イメージ画の説明文の変化 (第1次) ・ごちゃごちゃな絵だけど「温だん化」や「空気 の悪い」,それに山口さんの言っていた「木」 のことです。この旗は,私のイメ-ジです。 「どうなっちゃう?」てぐらいに???の絵を 表わしたっもりです。 (第2次) とうとう自然がおこって人間をこらしめようとし ている所なのだ。ほんとにおきたりして-0. (第3次) 授業であった「本当にできるか?」というのを取っ たイラストです。. う,ということ。. <コメント>. 昔の事実と現状を分析して,森林の保護の重要性を述 べている。そして,どうすれば森林が守れるのかについ ての考察に至っている。森林破壊の現状の生々しい現実 に関する認識内容が保証されれば,科学的な追究に至る 認識内容を育てることが可能な例である。 3.3小結 イラスト及び説明文の分析の結果,関心及び態度形成 の側面は,順調に育っていることが分かった。しかし, 厳しい社会の現実に関する認識内容の保証が不十分であっ たことも明らかになった。 (岩田一彦) 4.関心の成長過程とその評価. <コメント>. 幅広い関心から自然破壊に関心が絞り込まれている。 そして,最終的には,日常生活での環境保全意識を行動 へ向ける方向で,学習成果が進んでいる。授業でねらっ ていた認識内容は育っている。具体的事実への関心がも う少し育っていくことが必要か。 認識内容が順調に育っている事例 イメージ画の変化 (第1次)題「今と昔の地球」 ・緑豊かな昔の地球と二酸化炭素にあふれオゾン 層の破壊された今の地球 (第2次)題「ボランティアをしよう」 ・皆で協力して森林を守ろうとしている(立ち枯 れ防止,ゴルフ場制限,国から補助を,植林を しよう). (第3次)題「森を変えよう」 ・森(キャンプ場で環境保全)で,役場(市長と 対談)で,家(テレビ,ラジオのキャンペーン) で「森を変えよう」 イメージ画の説明文の変化 (第1次) 今と昔の地球はぜんぜんちがう。だから,みんな で,きをうえたりしてかえしていこうということ や,今は,自然どころか地球があぶないから,. 4.1関心の定義と評価法 本継続研究では,一貫して関心を「問題関心」と定義 し,子どもが社会事象に抱く問いとその育ちを評価する 方法の開発に努めてきた。研究Ⅶでは,この方法を踏襲 しながらも,子どもの問題意識の知的性格を把握するた めに,関心を「知的好奇心」と規定し直した。研究Ⅶで もこの規定を引き継ぐことにしたい。 子どもの知的好奇心を評価する調査表は,ほぼ次の3 段階を踏まえて作成した。 まず社会科学習を進める過程で子どもが好奇心を示す であろう内容を,仮説的に次の3領域に類型化したO. I.学習対象の事実を構成する要素 (例:多可郡森林組合,東条ゴルフクラブなど) II.学習対象の事実を記述,説明するデータ (例:針葉樹と広葉樹の割合,林業従事者の変化など) Ⅲ.学習対象の課題やその解決策を示唆する概念 (例:環境破壊,エコミュージアムなど) 次に上の3領域に対応する項目を具体化していった。 今回は(I)森林の開発・保全に係わる16の集団・施設, (Ⅱ)国土や林業の実態を表わす18のデータ, (ffl)森林保 全を取り巻く社会的課題やその解決策を示唆する18の概 念を選定した。各領域の約半分の項目は,単元計画とは 直接関係のない「ダミー」項目とし,子どもが関心を寄.

(9) 子どもの関心・意欲を育てる社会授業構成と実践分析(Ⅷ). 95. めに,全体としてみたとき,いずれの項目に関心のピー. 4.2.2関心の特質-実践的好奇心一 表2は,指導計画から判断して子ども達の関心を集め ると予想されたが,予想に反して反応が鈍かった項目を 拾ったものである(数字は延べ人数)。以下,表1と表 2のデータに基づき,学級全体の好奇心の傾向を探って. クがあるのかを確定できないという課題が残った。今回. ゆく。. せる対象に教師の意図がどの程度反映しているかを読み 取れるように工夫した。 最後に子どもの好奇心の所在を探る設問を開発した。 研究Ⅶでは,各個別項日ごとに好奇心の強さを問うたた. 表2予想に反して関心が低かった項目. はi・n・mの各領域から「あなたがとても知りたい」 項目と「どうでもいい」項目を3つ以内で選ばせること で,子どもの好奇心がどこに焦点化されているかを把握. I. 山形県小 国町 4 ,. Ⅱ. 林 野 庁 の 予 算 10, 輸 入 材 と国 産 材 の 価 格 の 違 い 20. 皿. 土 壌 保 全 1, 下 草 刈 り2 , 洪 水 の 防 止 11, 働 き手 の 高 齢 化 12, 枝 打 ち 14. できるようにした。 回収した調査表は,次の2つの視点からデータを整理. 宮 崎県綾町 5. し,分析を試みた。第1に,学級全体からみた好奇心の 対象とその質。好奇心の対象については,児童33名のう ちの大多数が「とても知りたい」と支持した項目を基準 に判断したい。好奇心の質については,なぜ大多数の児 童がそれらの項目を「とても知りたい」と考えたのか (なぜ少数の児童しか「とても知りたい」と思わなかっ たのか),選択の背後にある社会的見方を解釈すること で評価したい。第2に,子ども一人一人の好奇心の成長 過程。授業の流れに沿って児童の好奇心がどのように変 化しているかを追いかけることで,関心の育ちを把握す る。. 4.2学級全体の関心の育ち 4.2.1.関心の対象一学習内容との合致4回の調査を通じて,本学級の児童が強い好奇心を示 した項目と,ほとんど好奇心を示さなかった項目を整理 すると表1のようになる(数字は延べ人数)0 表1学級全体の好奇心の対象 「ど うで も い いで す 」. 「と って も知 りた い で す 」. I. ①多可郡 森林組合. 61. (Zl-7 V - > T ③ B IO / ジ ャ ス コ. 54 44. I. ① B IO / ジ ャ ス コ ②杜 税務署 ③ 東 条 ゴル フ ク ラ ブ. 48 46 35. ①森林面積 の変化. 62. Ⅱ (訂海 の川 の 汚 れ ③ 木 材 の輸 入 先 . 量. 55 42. (9 トラックと普 通 車割 合 49 32 Ⅱ ② 防衛 庁 の 予 算 (彭運 動 公 園 の 場 所 32. ① 自然 環 境 破 壊 Ⅱ ② ボ ラ ンテ ィア 活 動 ③ エコ ミュー ジアム計 画. 94 63 49. ① チ ュー リップ栽 培 IⅡ (診牡 蛎 の 養殖 ③下草 刈 り. 51 27 26. 基本的には本単元で教師が敢り扱いを予定した内容項 目-II章の単元計画を参照一に好奇心が集まっているこ とが分かる。 なお「BIO/ジャスコ」は, 「とても知りたい」と. <I :国土・森林の事実を構成する要素> 林業が盛んな地元:多可郡と,世界的な木材輸出国: マレーシアに対してバランス良く好奇心が形成されてい る。エコミュージアムの先進地として知られる宮崎県綾 町や山形県小国町の取り組みには,関心は集まらなかっ た。 <Ⅱ :国土・森林の事実を記述,説明するデータ> 森林面積の変化や川・海の汚染など,自然破壊が進ん でいる事実を具体的に記述するデ-夕に好奇心が向いて いる0 -万,国内の林業が衰退している理由を説明する データ,例えば,木材の内外価格差や政府の営林予算な ど国の政治・経済に関するデータを調べたいとする意識 は,それほど広く共有されていない。 <Ⅲ :国土・森林保全の課題,解決策を示唆する概念> 森林破壊を林業という第一次産業の衰退として捉え, その原因を枝打ちや下草刈りなどの労働の厳しさ,林業 従事者の高齢化などの社会的経済的な条件にみい出す 「知的好奇心」は低調だった。一方,森林破壊を,人間 の過度な自然開発が引き起こした環境問題の一種とみな し,その解決策をボランティアやエコミュージアム運動 などの市民の自発的積極的な社会参加に求めようとする 「実践的好奇心」が,クラスの主流を形成していた。 これらの結果は,本単元の実質的なねらいが,森林保 全の大切さを訴えるところにあったことを示している。 単元の随所で林業従事者の山口さんを登場させ,氏の立 場や苦境に理解を求める。そして,林業の発展のために 私たちに何ができるかを問おうとした本学習の授業構成 が,上述のような好奇心の育ちに繋がったと解される。 4. 3抽出児にみられる関心の育ち. ジャスコを林業とは全く関わりのない商業施設とみ.なし. 4.3. 1関心の対象一教師主導か学習者主導か子どもが「何に好奇心を示したか」を個人レベルで検 討すると,大きくは2つのパターンをみい出すことがで. た児童群と,森林保護に積極的に貢献している企業とい. きる。 1つは,好奇心の対象が,教師の問題提示に影響. う視点からジャスコを捉えた児童群の2グループがあっ. されやすI、タイプであり,もう1つは,子どもの問題関 心が好奇心の対象に色濃く出てくるタイプである。前者 の典型例がNo.16のY児であり,後者にはNo.17のY児. 「どうでもいい」の両方の上位に上がっている。これは,. たためと推察される。.

(10) 学校教育学研究, 2000,第12巻. 96. が相当する。表3には,それぞれの児童が計4回の調査 時に「とても知りたい」項目として選択したものを整理 した。 Pはプレテスト,数字は第1次・第2次・第3次 終了時の結果を示す。本単元の学習内容と密接に関係す る語句については,ゴチック字で表現した。 表3抽出児の好奇心の対象(上:Na16,下:Notl7) P. l. 2. 3. P. 当する。表4には,それぞれの児童が「とても知りたい」 項目を,前節と同じ方法で整理した。ゴチック字は,各 次で新たに関心が芽生えた項目を意味している。 表4抽出児の好奇心の変化(上:M2,下:NalO) 加 古 川 漁 業 組 合 , 多 可 郡 森 林 組 合 , マ レー シア P. 海 や 川 の汚 れ , 森 林 面 積 の 変 化 , 針 . 広 葉 樹 の 割 合 牡 蛎 養 殖 , 水 源 滴 養 , 自然 環 境 破 壊. 加 古 川 漁 業 組 合 , 中 国 自 動 車 道 , B IO / ジ ャ ス コ 自動 車 の 輸 出 先 . 台 数 , ダ ム 建 設 の 費 用 , 防 衛 庁 の 予 算 , 牡 塘 養 殖, 洪 水 防 止 , 自然 環 境 破 壊. l. 加 古 川 漁 業 組 合 , 多 可 郡 森 林 組 合 , マ レー シア 海 や 川 の 汚 れ , 森 林 面 積 の 変 化, 針 . 広 葉 樹 の 割 合 牡 蛎 養 殖 , 水 源 滴 養 , 自然 環 境 破 壊. 加 古 川 漁業 組 合, 多 可 郡 森 林 組 合 , 中国 自動 車 道 ダ ム 建 設 の 費 用 , 外 国 車 .国 産 車 の 燃 費 , 輸 入 材 . 国 産 材 の 価 格 , ハ ウス栽 培 , エ コ ミ ュー ジ アム 計 画 , 自 然 環 境 破 壊. 2. 加 古 川 漁 業 組 合 , 多 可 郡 森 林 組 合 , マ レー シ ア 海 や 川 の 汚 れ, 雨 水 の P H の値 , 針 . 広 葉 樹 の割 合 牡 嫡 養 殖 , 水 源 滴 養 , 自然 環 境 破 壊. 間 伐 , エ コ ミ ユ- ジ7 ム 計 画 , 自 然環 境 破 壊. 3. 加 古 川 漁 業組 合 , 多 可 郡 森 林 組 合 , マ レー シ ア 海 や 川 の 汚 れ, 森 林 面 積 の 変 化 , 針 . 広 葉 樹 の 割 合 牡 蛎 養殖 , 水源 滴 養 , 自然 環 境 破 壊. 加古川漁業組合, 多可郡 森林組合, 宮 崎県綾町 木材の輸入先 .隻, 林業 従事者の数, 針 . 広葉樹 の割 合, 枝 打 ち . 間 伐 , エ コ ミ ュー ジ アム 計 画. P. 加古川漁業組合, 兵 庫教育大学, 東条 ゴルフクラブ 木 材 の 輸 入 先 . 隻 , 林 業 従 事 者 の 数, 針 . 広 葉 樹 の 割 合 ▼. 中国 自動 車 道 , B IO / ジャスコ, オ ランダ, 運 動 公 園 の分 布 , 海 や 川 の 流 れ , 防 衛 庁 の 予 算 エ コ ミユ I ジ ア ム 計 画 , 洪 水 防 止 , 自然 環 境 破 壊. B IO / ジ ャ ス コ, オ ラ ンF , 運 動 公 園 の 分 布 , 防 衛 庁 の 予 算 牡 嘱 養 殖 , 洪 水 の 防 止 , 自 然環 境 破 壊 1. B IO / ジ ャスコ, オ ランダ, 運 動 公 園 の分 布 , 海 や川 の 流 れ , 森 林 面 積 の変 化 農 薬 の 散 布 , ボ ラ ン テ ィア 活 動 , 自然 環 境 破壊. 1. 兵 庫 教 育 大 学 , B IO / ジ ャス コ, オ ラ ンF , 運 動 公 園 の 分 布 防衛 庁 の 予 算 , 牡 嘱 養 殖 , 自然 環 境 破 壊 2. 2. B IO / ジ ャ ス コ , オ ラ ン ダ , 運 動 公 園 の分 布 , 森 林 面 積 の変 化 , 防 衛 庁 の予 算 , ボ ラ ン テ ィア活 動, 働 き手 の高 齢 化 , 自然 環 境 破壊. 多 可 郡 森 林 組 合 , B IO / ジャス コ, オラ ンダ, 海 や 川 の 流 れ , ダ ム 建 設 の費 用 , 森 林 面 積 の変 化 農 薬 の 散 布 , エ コ ミ ュ ー ジ ア ム 計 画 , 自然 環 境 破 壊. 3. 3. B IO / ジ ャ ス コ, マ レ ー シ ア , オ ラ ン ダ , 運 動 公 園 の分 布 , 防 衛 庁 の 予 算 , 海 や 川 の汚 れ, エ コ ミ ユl ジ ア ム計 画 , 働 き手 の高 齢 化 , 自然 環 境 破 壊. B IO / ジャスコ, マレI シ7 , オ ランダ, 海 や 川 の 流 れ, 林 業 従 事 者 の 数 , 森 林 面 積 の変 化 農 薬 の散 布, 水 源 の 面 責 , 自然 環 境 破 壊. 児童No.16は,初めはダムや防衛庁,自動車などに好 奇心を示している。しかしそれも時間とともに次第に薄 らぎ,各次で学級が取り組んだ学習課題に関心が向いて いる。その対象も極めて的確で,林業が直面する課題や 林業従事者の仕事に好奇心を寄せている。教師が提示す る学習内容に導かれながら,好奇心の対象を焦点化して いったケースといえるO 児童No.17は,ジャスコやオランダ,防衛庁の予算, 運動公園の分布,牡堀養殖などに,最初から最後まで一 貫した好奇心を示している。ただし,林業従事者の高齢 化や環境破壊の問題などのポイントは押さえられており, 森林に関する認識もある程度深まっていると予想される. 個人の社会的興味を関心の源泉としつつも,子どもなり に教師のねらいを受けとめているケースである. 4. 3. 2関心の持続性-停滞か連続的成長か一 好奇心の対象が「時間経過に伴ってどのように変化し ているか」を個人レベルで分析すると,特徴的な2つの パターンを抽出できる。 1つは,好奇心の対象が余り変 化せず継続してゆくタイプであり,もう1つは,好奇心 の対象が連続的に更新されてゆくタイプである。前者の 典型がNo.12のH児であり,後者にはNo.10のF児が相. 児童No.12は,関心を示す対象が,最初から最後まで ほとんど変化していないo好奇心のターゲットは碓かに 森林や環境問題に向けられてはいるが,特定の項目への 執着が際立っている。データからは,関心の育ち-学習 成果を読み取ることのできない稀なケースである。事実, 学習成果イラスト帳を分析してみても,子どもの認識に は深まりが認められない。 一方,イラスト帳を分析した結果,歴史と現状認識を 踏まえて的確な未来予測ができていたのが, No.10の児 童である。同児童の場合,毎次3項目ずつ新たな好奇心 が芽生え,関心の対象を少しづっ入れ替えていいる。そ して最終的には,森林の水源葡養機能や林業従事者の実 態,エコミュージアム等に注目している。途中,ダムや 農薬の問題に気持ちが揺れるときもあるが,それは一時 的なものに過ぎない。 No.12・No.10の各児童のデー タは,過去と現在の社会についての認識の深まりが,千 どもの知的・実践的な好奇心を喚起し,好奇心の持続的 な成長が,子どもの未来予測の精度を向上させることを 示唆していよう。 (草原和博).

(11) 子どもの関心・意欲を育てる社会授業構成と実践分析(Ⅶ). 5.意欲の成長過程 5.1意欲の定義と評価法 研究Ⅶで示した評価方法を踏襲し,意欲- 「知的向上 心」と規定し,以下の3段階で捉えることにした。 〇第 1 段階 : 知的 な困難状況, 問題 の自覚 ……向上 の動機付 け 〇第 2 段 階 : 困難状況 を打開す るための仮説 の提案 .…‥追究内容 の向上 〇第 3 段 階 = 仮説 を検証す る資料 . 学習活動 の提案 ……追究方法 の向上. 「知りたいこと調査表」には,知的向上心の3段階に 対応させて,以下の3つの問いを設定した。 問1.これまでの学習で不思議に思ったこと,疑問 に感じたことをできるだけたくさんかいてみよう。 問2. 1で出した不思議や疑問に対して,自分なり に答えを予想してみよう。 問3.不思議に思ったこと,疑問に感じたことをもっ と深く勉強するために,次の時間には,さらにど んなことを調べてみたいですか。どんな資料をさ がしてみるつもりですか。. 意欲の量的側面は,問1に複数の疑問を記述している かどうかによって,また質的側面は,問2・問3に問1と 論理的に整合する内容・方法を記述しているかどうかに よって評価した。単元を通した意欲の育ちは,授業展開 の各段階ごとの意欲を量的に比較することで評価する。 意欲の成長過程は,まず学級全体の意欲の育ちを確定し, 次に抽出児を設定して意欲の質的側面の変化を把捉する ことで明らかにしたい。 5_2学級全体の意欲の育ち 学級全体の子どもがこの授業過程で,どのように意欲 を成長させているのかについて,問1および問2 ・問3 の記述内容の分析を通してみていく。 まず,意欲の量的な側面に関しては,問1に複数の疑 問を記述しているかどうかによって評価した。学習過程 の各段階ごとの意欲を比較すると,第1次終了後(平均. 3.7個)-第2次終了後(平均3.5個)-第3次終了後(平均 3.8個)となった。 次に,質的な側面から学級全体の意欲の育ちを探って みたい。第1次終了後の回答内容を分析した結果,問1 で多い回答は次の通りであった。 ①なぜ外材は安いか (9人), ②なぜ林業をしている人が少ないのか,なぜ林 業を続けるのか(9人) ③温暖化の理由(9人) ④用材 自給率が下がっているのはなぜか(8人)。問2 ・問3の. 97. 記述を見ると, (Dについては, 「手間をかけていない, 質がよくない,木の種類が違う」 - 「本で日本と外国の 木を比べて調べる」 (4人)など,木の種類や育て方の違 いに着目した子が多く,農業経営の規模や性格の違いに 気づく子はいなかった。 ②の問いに対しては, 「もうか らない」 - 「林業をしている人に聞く」と答える子がほ とんどであり,インタビューを含めた調べ方まで学習意 欲が高まっていることがうかがえた。 ③の問いには, 「二酸化炭素が増えると温暖化が起きる」 - 「資料で調 べる」と既有の理科的知識をもとに仮説を出していた。 ④の問いには, 「値段の違い,何でも使おうとしている, 外国がもうけるため」 - 「輸入している人に聞く,輸入 材が何に使われているか,値段の違いについて電話で聞 く,本で調べる」と答えており,概ね適切な予想と調べ 方を掴んでいるようだ。 このように第1次においては,林業従事者や日本の林 業の構造など,社会科に関する本質的な問いだけでなく, 現在の社会問題である「地球温暖化と森林との関係」に まで問いを広げている子が多く見られた。これは,子ど もの意欲が,学習課題の追究に関わるものと,日常生活 上の問題意識の拡大に関わるものとに分かれていったた めと推察される。 次に第2次終了後の回答内容を分析すると, (彰森林ボ ランティアの活動について(延べ17人), ②針葉樹と広葉 樹について(延べ8人), ③立ち枯れの原因(延べ6人), ④ェコミュージアムとは何か(延べ5人)と,林業そのも のに関する疑問は減り,森林保護の問題へと意識が流れ ていることが明らかとなったoまた6)足尾の森林復帰へ の取り組み(延べ5人), ⑥山口さんの取り組み(2人), ⑦営林署はなぜ減るのか(2人)などの問いに見られるよ うに,子どもたちの調べたい項目はますます分散する傾 向にある。 すなわち,追究意欲の対象は森林保護問題に焦点化さ れてはいるが,森林について子どもが抱く好奇心は一人 ひとり微妙に異なり,それに応じて意欲も多様に現れた ということであろう。ただし「外材が安い理由」を疑問 に挙げる者が依然として延べ3人おり,林業に関する問 いは解決されることなく第1次から継続していることが 分かる。第2次から教師の学習指導は自然保護の問題に 向かったため,産業・貿易問題について十分に思考を深 めることができなかったのだろう。結果として子どもが 出してきた仮説は,思いつきレベルのものが多数を占め た。しかし,検証の方法に目を向けると, 「インターネッ トで調べる」 「友だちの調べ方の良い所を自分の調べ方 に取り入れる」など調べる媒体に幅が出てきたり, 「森 林組合に聞く」 「山口さんに聞く」 「昔の森林の状況につ いて資料で調べる」というように調べる方法がより具体 性・直接性を帯びてきている点は,評価されて良い。.

(12) 98. 学校教育学研究, 2000,第12巻. 最後に,第3次終了後では,子どもの疑問は, Q)森林 保護はどうすべきか(延べ14人), ②森林の未来はどうな るか(延べ12人), ③山口さんの森林はどうなるのか(延 べ9人), ④なぜ外国からの木材の輸入をやめないのか (延べ8人)などに集中している。 第3次では,林業家の一例として取り上げた山口さん の生き方に共感したり,森林保護はいかにあるべきかと いう今後の社会のあり方についての問いを挙げている者 が多い。また,改めて日本の林業に立ち返り,その行く 末や在り方について問いを出す子どもがいる点も注目さ れる。林業に関する学習意欲を絶やすことなく,自分と の関わりにおいて森林の問題を捉えようとする点では共 通しており,クラスの学習意欲-知的向上心を育てるこ とには概ね成功したといえよう。 単元全体を振り返ると,仮説の内容については,焦点 の定まらない,根拠不足のものが目立った点で課題を残 した。検証の方法については, 「自分にできる方法で活 動していく」というように,個人的な社会参加の場面を 通じて自己の仮説を捉え直そうとする回答が多かったの が特徴である。教師が教育内容を統制することなく,千 どもの自由な発想や主体的な学習活動をできる限り尊重 したいとする実践者の社会科授業への思い・考え方が, これらの結果に頚れていると言えよう. 5.3抽出児にみられる意欲の育ち 個々の子どもが授業過程を通じて意欲をどのように成 長させているか,前述の間3の記述内容を中心に検討し てゆきたい。. 5.3.1 N.O児 <1次終了後> (9温暖化の一番の問題を見つけて,温暖化のこと で,森はどうなっているのか調べたい。 ②外材を 輸出している国で,なぜそんなに安くしているか 調べたい。 ③林業をしている人の数はなぜこんなに少ないの か。 ④用材自給率の減っている理由。 < 2次終了後> ①森林のボランティア活動の悪い所はどこか。 ② 日本の有名な森林。 ③外国の広葉樹と針葉樹につ いて。 ④なぜ立ち枯れになったのか。 <3次終了後> ①林さんのような方が,世界にどれくらいいるの か。木の製品はリサイクルできるのか。 ②森林ボ ランティアは本当に意味があるのか。 ③世界の林 業と日本の林業の違い。 <内容の変化> 日本の林業のあり方-森林・森林保護-森林ボラ ンティア・林業のあり方. <調べ活動の変化> 本一本,インターネット,実際に行く一本,イン タビュー,インターネット. <コメント>. 林業のあり方に関する疑問が,単元終了時まで継続し て出されている。単元の前半で十分な知識を獲得できな かったためだろうか。一方,調べ活動は多様であり,目 的に合わせた選択がなされている。 5.3.2 Y.T児 <1次終了後> ①温暖化の原因。 ②人工林と天然林の増加の原因。 ③日本の用材の自給率が減っている原因。 ④林業 で1本の木が約3000円と安い理由。 <2次終了後> (Dボランティアでは,森林のためにどんなことを しているか。 (塾日本の広葉樹と針葉樹の割合の比 較(今と10年前)0 ③日本と外国の広葉樹と針葉 樹の割合の違い。 (彰日本で外国から木を輸入して いる輸入先。 <3次終了後> ①木の製品のできてから捨てられるまで。 ②外国 の林業がどんなものか。 (彭日本の森林がある面積 の変わり方。 ④日本各地で行われている森林のた めのボランティア活動 <内容の変化> 温暖化,人工林,天然林,用材自給率-針葉樹と 広葉樹の割合,輸入先,ボランティア活動一木の 製品のリサイクル,林業,ボランティア活動 <調べ活動の変化>インターネット,資料集,敬 科書,電話-E]的に応じた資料の選択-ビデオ <コメント>. 第1次では,追究したい対象に幾分ばらつきが見られ る。しかし,林業に関する本質的内容に迫りたい,知り たいという意欲が育っていることは確かなようだ。第2 次になると,林業から森林ボランティアへ追究の対象を 拡大させている。問いの幅を広げながら,最後まで自身 の学習意欲を持続,成長させていったケースである。 5.4小結 ○第1次から第2次にかけて教師が積極的に知識提示, 指導をしなかった場合,その分だけ子どもの問いは広が りを見せるが,必ずしも問いの知的解決を保証するもの ではない。意欲の成長にも停滞が見られる。 ○子どもの疑問の所在を絶えず予測,把起し,それを踏 まえて教師の指導計画を吟味,修正してゆく必要がある。 (松本浩・進藤憲司・渡信雄).

(13) 子どもの関JL、 ・意欲を育てる社会授業構成と実践分析(Ⅷ). 6.結 6.1成果と課題 ここでは,序に示した研究仮説を評価することにより, 本研究の成果と課題を明らかにする。 (彰第一仮説の評価:認識内容と関心・意欲 まず,関心については,全体的に見て実践的好奇心を 育てることには成功したが,社会事象に対する知的好奇 心の育ちの点では不十分なことが明らかとなった。その 理由として,認識内容が森林の保護育成という価値的側 面に偏り,森林や林業の直面する問題状況を因果的に追 究してゆく科学性に欠けていたことが挙げられる。また, 抽出児の分析からは,個人的な関心へのこだわりも見ら れるものの,総じて教師の提示する学習内容によって関 心を成長させてゆくことが明らかになった。したがって, 認識内容に系統性をもたせることが関心の連続的成長に は不可欠となるが,その点でも課題は残った。 次に,意欲については,各小単元のレベルでは学級全 体にしても抽出児にしても,一定の成果が確認できた。 特に,第1次においては,知的向上の動機付けとなる問 題把握の点で意欲の高まりが顕著であった。第2次以降 になると,調べ活動に関してより直接的で具体的な提案 がなされるなど,追究方法の向上の点で意欲の高まりが 見られた。ただし,意欲の質的側面,ことに単元全体を 通じた意欲の育ちの点では課題が残った。例えば,第1 次では仮説の十分な吟味を経ないまま調べ活動に移り, 第2次・第3次では問題の重大さを十分自覚しないまま, 安易に仮説を提案していることなどがその現れである。 それは,子どもの主体的な調べ活動や提案を重視しよう とする教師の姿勢の反映でもあるが,改めて関心・意欲 の育ちと認識内容との相関が実証されたといえよう。 ②第二仮説の評価:授業過程と認識,関心・意欲 本実験授業では,第2次を問題について調べる過程と 位置付け, 「森林を守るためにはどうすればよいか」を追 究させた。その結果,聞き取り調査やインターネットの 利用など,多様な方法で調べ活動が展開され,関心・意 欲の高まりは確認されたが,認識内容に深まりは見られ なかった。つまり,認識内容の質を左右するのは,子ど もが主体的に調べ活動を行うかどうかではなく,何につ いて調べるかにあるということを示唆していよう。 次に,第2次と第3次にそれぞれ1回,地元の林業家 である山口さんと木製家具の製造に携わる林さんを教室 に招き,彼らの苦労や工夫,未来への夢などを聞く機会 を設定したところ,子どもの森林保護への関心と調べ活 動への意欲は大いに高まった。授業過程に人物への共感 を組み込むことの有効性が改めて検証されたといえる。 ただし,ここでも認識内容の深まりは確認されなかった ことから,共感をバネにしつつも,社会事象の本質に迫. 99. るような問題の設定が不可欠だといえよう。 また,第3次には,エコミュージアム構想の吟味を通 して地域の未来を予測する場面を組み込んだ結果,実践 的な側面での好奇心や向上心に進展が見られた。未来予 測が子どもの関心・意欲と密接な関係にあることの証左 であろう。だが,認識内容との相関は検証できなかった。 ③第三仮説の評価:授業設計論と認識,関心・意欲 すでに第一,第二の両仮説の評価において明らかにし たように,本実験授業では子どもの実践的関心と活動へ の意欲を育てることには成功したものの,知的好奇心や 科学的な認識内容の形成に関しては不十分であった。そ の理由は,教師の教材解釈の質と授業設計論に求めるこ とができる。つまり,教師にはまず森林保護の大切さを 子どもに伝えたいという願いが前提としてあった。それ は,単元の主題「国土を守る森林」にも端的に示されてい る。次に,この願いに沿って, 「I.地域の森林の現状 を知ろう」-「Ⅱ.森林を守るためにはどうしたらよい か調べよう」 - 「Ⅲ.地域の森林を守るためにはどうす ればよいか考えよう」という3段階からなる学習過程を 組織した。この第2段階の問題の立て方に,認識内容を 深めることに失敗した最大の原因を見て取ることができ よう。 ここでは,第1段階で森林の危機的現状を子どもに知 らせ,第2段階でその対策を調べさせているが,問題は 「どうすれば森林を守れるのか」ではなく, 「なぜそうし た現状を招いたのか」 「森林の大切さがわかっていても, なぜ守ることができないのか」にあるのではないか。マ ルクス主義は今や色槌せた感もするが,マルクスが自ら の社会主義論を「科学的」と称しえたのも,単に社会を 変えたいとか,こうしたら社会はよくなると主張したか らではなく,なぜそうなっているのかについて現実の資 本主義社会の仕組みを徹底的に分析し,そこから問題解 決への糸口を探ろうとしたからであろう。 その意味で,本実験授業でも第2段階で日本の林業や 森林の直面する状況を子どもたちに徹底的に調べさせ, 議論させることが必要だったといえよう。第1次終了後 の子どもに,そうした問題関心がかなり見られたにもか かわらず,教師はそれを汲み取ることができなかった。 それも,教師の教材解釈や関心が現状分析よりも森林保 護に向けられていたからである。まさに反面教師的にで はあるが,第三仮説の有効性を証明していよう。 6.2本継続研究の総括. 本継続研究は,平成元年の学習指導要領の改訂におい て,いわゆる新学力観が提起されたのを受けて始められ た。社会科における「関心・意欲」を現実に即して定義 し,その育成の手立てと評価に関する仮説を明示して具 体的な授業モデルを開発し,実験授業を通してその是非 を吟味するとともに,仮説そのものの検討も行ってきた。.

(14) 100. 学校教育学研究, 2000,第12巻. 研究成果については,その都度本誌で公表しており,詳 細はそれらの論文を参照していただきたい。 特に,関心・意欲の評価について多様な手法を開発し たが,いずれもかなりの精度で実態を解明することがで きた。毎時間,あるいは小単元終了ごとに子どもの実態 を調査するのは容易ではないし,分析にもかなりの時間 を要する。だが,関心・意欲を単に感覚的に捉えるので はなく事実として把握し,次の学習に生かしてゆこうと するのであれば,やはり間主観的に観察可能な形で子ど もの実態を記録に留め,分析してゆくことは不可欠であ ろう。もちろん,改良・工夫の必要なものもあり,今後 も検討してゆくつもりである。 さて, 8次に及ぶ継続研究を通じて実感されたのは, 社会科教育の意義はより確かでより質の高い社会認識を 形成することにあり,新学力観として注目された関心・ 意欲も,認識内容抜きには高めることも継続的に成長さ せることもできないということであった。平成10年暮れ に新学習指導要領が告示され,小学校社会科では「生き る力」の育成とも相侯って, 「調べ,考える」学習が一 層重視されることになった。それは,本研究Ⅶで報告し た授業の趣旨とまさに重なっており,ここで明らかにし た成果と課題は,そのまま新しい社会科にも生かされる 必要があろう。ややもすると形式主義的な調べ活動や思 考活動に目を奪われ,社会科の本質をなす認識内容の科 学性を等閑視しがちになることを戒めたいものである。 「関心・意欲の育成」に関わる課題はまだまだ残され ているが,意図した仮説の有効性ははぼ検証され,評価. 法の開発も一段落した.そこで,学習指導要領の改訂を 一つの区切りとし,本稿をもって本継続研究のまとめと したい。. (原田智仁). m; 1)岩田一彦他,子どもの関JL、・意欲を育てる社会科授業構成 と実践分析-3年「社町の桃づくり」を事例として,学校教 育学研究(兵庫教育大学学校教育研究センター)第5亀i99a pp.143-161. 2)岩田一彦他,子どもの関心・意欲を育てる社会科授業構成 と実践分析(n)一小学校4年「山地の人々のくらし-安曇野 (穂高町・豊科町)に湧く良質で豊富な水を生かしたくらし-」 を事例として,同上紀要第6巻1994, pp.67-82 3)岩田一彦他,子どもの関心・意欲を育てる社会科授業構成 と実践分析(in)一小学校3年「ひとびとのくらしと商店一買 い物を10倍楽しむ方法-」を事例として,同上紀要第7巻, 1995, pp.81-94. 4)原由智仁他,子どもの関心・意欲を育てる社会科授業構成 と実践分析(IV)一小学校4年「菊づくりに生きる沖縄の人々」 を事例として,同上紀要第8巻1996, pp.63-74 5)原田智仁他,子どもの関心・意欲を育てる社会科授業構成 と実践分析(V)一小学校5年「ビデオ『杉原紙』を作ろう」 を事例として,同上紀要第9巻1997, pp.61-72 6)原田智仁他,子どもの関心・意欲を育てる社会科授業構成 と実践分析(vI)一小学校4年「嬉野台地の開発」を事例とし て,同上紀要第10巻1998, pp.19-31 7)原田智仁他,子どもの関心・意欲を育てる社会科授業構成 と実践分析(vn)一小学校4年「低地の人々のくらし-海津町-」 を事例として,同上紀要第11巻1999, pp.39-51. (1999. 7.29受稿, 1999. 8.31受理).

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